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田中利幸:「2010 NPT 再検討会議」の結果とオバマ政権の核政策批判(前編)

 広島平和研究所教授で『空の戦争史』の著者でもある田中利幸氏がオバマ政権の核政策についての文書を寄せて下さいました。オバマ政権が発表してきた関連政策を客観的に分析することで、いかに「核廃絶の夢」が「幻想」であるかを批判しています。「核軍縮・核廃絶を目指す、すばらしい大統領、オバマ」という「オバマ神話」を崩し、市民社会側が今後どのように核廃絶運動を進めて行けばよいかを示したものです。(前・後編にわけて掲載)

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NPT再検討会議の失敗

 ブッシュ政権によるCTBTの批准拒否、ABM条約からの脱退、新型核兵器の開発という米国の核兵器拡大政策と「対テロ戦争」遂行政策という影響をもろに受けてNPT再検討会議が大失敗に終わった5年前と比較して、今回は、昨年4月5日のオバマ大統領のプラハ演説による核軍縮政策の提唱と、それに続く米露間の核削減にむけての具体的交渉の推進、オバマのノーベル平和賞受賞といった比較的明るい条件のために、今年のNPT再検討では核廃絶という最終目的に向けて、なんらかの進展が見られるのではないかという期待が一般に強かった。とくに、「核兵器禁止条約 Nuclear Weapons Convention(以下NWCと略)」の早期締結をこの数年強く訴えてきた市民社会側としては、NWCの設定に向けて、今回の再検討会議では、かなりの進展があるのではないかという希望的な観測を持っていた。

 例えば、今年2月に長崎市で開催された「第4回 核兵器廃絶・地球市民集会ナガサキ」で採択された長崎アピール2010(pdfデータ)においても、再検討会議に向けてNWCの必要性について次のように言及された。

「核兵器を禁止し、廃絶する条約の準備のために話し合うことを目的として、志を同じくする国家と市民社会の代表が参加するプロセスを創り出そう。そのようなプロセスは潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が提案した5項目提案(※1)を手掛かりとすべきである。この提案には核兵器禁止条約又は諸条約の枠組みについて話し合いを始めるように求めた呼びかけも含まれる。」

 5月初旬、実際に再検討会議が開かれ、「最終文書」に含むべき事項についての議論が始まると、期待していたごとくNWCの必要性を訴える声が聞かれるようになり、5月14日段階での主委員会の議長草案にはNWCに関して次のような明確な提言が含まれた。すなわち、「核兵器国は核軍縮の最終段階と核兵器のない世界の維持に必要な法的枠組みを確立するために特別の努力を払うべきである。この目的には、国連事務総長の5項目提案、とりわけ核兵器禁止条約や相互に補強し合う条約の枠組みが役立つ」のであり、「核兵器国は(戦術核を含めた核軍縮、非核国に配備された核兵器の問題など)7項目を含む具体的措置について2011年までに協議し、その結果を2012年の準備委員会に報告すべきである。この協議を踏まえて、国連事務総長は時間枠を決めて核兵器を完全廃棄するためのロードマップに合意する方法と手段について協議する国際会議を2014年に招集すべきである」というものであった。

 ところが、日が経つごとに草案の内容が骨抜きにされ、核兵器禁止条約実に向けて当初設定されていた明確な期限が外されてしまった。しかも、さらに、米露仏英の核大国は、具体的期限を取り除いてしまった「核軍縮過程の最終段階や関連措置は期限を決めた法的枠組みで追求する必要があることを確認する」という修正表現にすら反対。米英仏は「期限をきめた」という文言の削除を求め、ロシアは全文の削除を求めた。これに対して新アジェンダ連合国などからの巻き返し活動がみられたものの、結局、最終文書は我々が当初期待していたものとは極めて遠いものとなってしまった。すなわち、NPT再検討会議は、「核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、全ての加盟国が特別な努力を払うことの必要性を強調する。同会議は、国連事務総長による核軍縮のための5項目提案、とりわけ同提案が強固な検証システムに裏打ちされた、核兵器禁止条約についての交渉、あるいは相互に補強しあう別々の条約の枠組みに関する合意の検討を提案したことに留意する」、というものである。明確な期限としては、「核兵器国は、条規の履行状況について、2014年の準備委員会に報告するよう求められる」というものだけになってしまった。

 これまでNPT再検討会議の最終文書でNWCについて言及されたことはなく、今回が初めてであったため、これを比較的高く評価するような論評が市民社会の側にも見られるのであるが、果たしてこれがそれほどまでに評価されるべき事柄であろうか。10年前の2000年NPT再検討会議の最終文書と比較してみれば、ほとんど何も進展が見られないのは明らかであり、いったいこの10年間、核兵器国は言うまでもなく、各国政府と我々市民社会も何をしてきたのかと、自己批判的に問わなければならない状況にある。その意味で、私は、今回のNPT再検討会議は明らかに失敗に終わったと判断すべきだと考えている。ただし、付言しておかなければならないのは、元々NPT体制そのものは、安保理5常任理事国による核の独占保有を永続化し、同時に原子力産業を推進させるという目的のもとに、核大国によって設置されたものであるということである。したがって、NPT体制そのものに核廃絶実現を可能にするような機能を期待すること自体が誤りであり、NPT体制を活用しながらも、NPT体制の外での核廃絶運動を推進していくことが重要であることを忘れてはならない。

失敗の一原因=オバマ政権の核・軍事政策に対する分析と警告の甘さ

 NPT再検討会議への期待過剰、すなわち判断の誤りは、オバマ大統領が創り出した「核兵器廃絶目標に向けての世界的コンセンサス」という神話に市民社会が踊らされ、なにか具体的な変革の兆しが見えてくるのではないかという幻想を我々がもってしまったことに、かなりの原因があるように私には思える。その典型的な一例が、広島市長秋葉忠利氏が率先してすすめてきた「オバマジョリティー」という運動であろう。「核廃絶の夢」をプラハ演説でぶち上げたオバマを、税金を使ってまで「オバマジョリティー」という造語を市職員の名札に付けさせ、ポスターやTシャツまで作ってオバマを賛美し、オバマを支持すれば核軍縮や核廃絶に容易につながってくるはずという幻想を産み出した市長の罪は決して軽くはない。(市民の税金を使って一政治家を支援すること自体が違法行為であると思われる。)しかし、こうした幻想にとらわれたのは広島市民だけではなく、程度の差はあれ、世界各国の反核平和活動家の中にもかなり広く見られた現象であった。

 オバマの「核廃絶の夢」が、「夢」どころか、いかに内実を伴わない、人を惑わす「幻想」であるかは、NPT再検討会議の数ヶ月前からオバマ政権が次々と発表してきた幾つかの重要な関連政策内容を客観的に分析してみれば自明なのであるが、なぜか、私自身を含め市民社会の側で、この点についてNPT再検討会議前に強く批判を展開し、市民に警告を発することを怠ってしまった。

 その重要事項とは、

(1)昨年10月末にオバマが署名した2010年度核兵器関連予算の額と内容
(2)今年2月にオバマが出した2011年度核兵器関連予算の要求額と内容
(3)今年4月に発表された米国政府の「核体勢見直し Nuclear Posture Review(以下NPR)の内容
(4)2010年度国防費ならびに2011年度国防費要求額の驚くべき増加と、非核兵器戦略である「即時世界攻撃Prompt Global Strike(以下PGSと略)」の内容
(5)オバマ政権のアフガン戦争政策
(6)オバマ政権のNPT非加盟国である核兵器国、すなわちイスラエル、インド、パキスタンに対する姿勢と、それと密接に関連する対イラン政策
(7)オバマ政権の日米安保同盟政策と米軍基地問題に対する姿勢
(8)オバマ政権の北朝鮮に対する姿勢

 時間的制約から各項目を詳細に説明している余裕がないので、できるだけ簡潔に述べるが、これらを総体的に見てみれば、オバマの「核削減」政策の背後にある実相が明らかになる。

オバマ政権の核兵器関連予算の実態とNPR

 オバマが大統領に就任して間もなくの昨年2月末に出された2010会計年度予算教書では、ブッシュ前政権が2006年に着手したが08年以降は議会の反対で凍結されている「信頼性代替核弾頭 (PRW)」(=長期保管・配備可能な高性能小型核弾頭)開発計画を、引き続き凍結すると発表。しかし、それに代わる措置として、「寿命延長計画(LEP)」(=老朽化し、2040年までに寿命を終える現存の核兵器を、単純で堅牢な新型弾頭で置き換えるという計画)の継続を提案した。この提案に基づいて昨年5月にエネルギー省が議会に提出した核兵器関連予算の説明では、「現在の能力の維持」を計りつつも、「今後の核戦略政策決定により変動する」こともあるというフレキシブルな方針が明らかにされた。

 その結果、昨年10月末にオバマが署名した核兵器関連予算額は前年と同水準の63.8億ドル(約6,400億円)とされた。そのうち、「核兵器備蓄活動」には総額約15億ドルが当てられたが、その中には、トライデント潜水艦発射弾道ミサイル用核弾頭W76のLEPプログラム(2億2,320万ドル)、爆撃機・戦闘機搭載用B61核爆弾の非核部品に関する研究(3,250万ドル)、新しいプルトニュウム生産施設であるロスアラモスの化学冶金施設建替え計画第1段階(9,700万ドル)、核弾頭の2次爆発部分を組み立てるオークリッジのY-12ウラニュウム処理施設設計費(1億600万ドル)などが含まれていた。

 今年2月に出した2011年度の核兵器関連予算要求額は、今年度より9.8パーセントも増額の70.1億ドルである。その中には、化学冶金施設建替え計画第2段階(2億2,500万ドル=今年度予算の2.3倍)、Y-12ウラニュウム処理施設建設(1億1,900万ドル、さらに2012-15年の4年間で8億8,500万ドルを投入する予定)、巡航ミサイル用核弾頭W80のLEPプログラム(3,400万ドル)が含まれている。さらには、長距離飛行爆撃機搭載用の核弾頭搭載可能な新しいクルーズミサイル開発のための必要予算が8億ドルと見込んでおり、来年度はその最初の研究プロジェクトのために363万ドルを要求している。年間70億ドルという予算額は、前ブッシュ政権の予算額をはるかに超える史上最大の核兵器関連予算である。

 長期計画によると、核兵器関連予算の総額として、2015年まで毎年平均3億ドルづつの増額を見込んでいる。今後10年間では、核兵器と関連施設の近代化のために800億ドル、運搬手段の近代化のために1,000億ドル、合計1,800億ドルという膨大な金額を投入する計画とのこと。しかも、その使途内容は、ブッシュ前政権が着手した「信頼性代替核弾頭 (PRW)」開発プログラムの事実上の復活に直結するようなものが多いのである。つまり、米露核削減交渉で作戦配備用の戦略核弾頭の数は大幅に減らすが、備蓄用の核兵器を維持するだけではなく、それらを高性能なものに取り替えて行こうという意図がここには明らかに見えるのである。「新しい核兵器の開発はしない」と繰り返し述べているオバマであるが、実質的には、それと同じようなプログラムを多額の予算で進めているのが実情である。すなわち、オバマがプラハ演説で「我々は安全かつ効果的な(核)兵器を維持して敵に対する抑止力を保つ」と述べた、その具体的な姿がここに如実に現れているのである。

 したがって、2月に出たこの核兵器関連予算要求額の詳細を見てみれば、4月6日に出されたNPRの内容は、2月段階で容易に推測できるものであった。NPRでは、核弾頭の削減を一方で強調しながらも、核抑止力の維持と、小規模ながら高性能で高能力("smaller and highly capable")の核兵器攻撃力という点が幾度も強調されている。核攻撃の対象となりうるのは、他の核兵器保有国、NPT非加盟国、そしてNPTに違反する国家とされており、核兵器保有国の中に北朝鮮、NPTに違反する可能性のある国としてイランやシリアが想定されているのである。しかも、「核兵器を持たないイラン対ししては、必要な場合には、核先制攻撃もありうる」というのが国防省の方針であり、オバマの「核抑止力にのみ限定」という公式政策と矛盾する。では、オバマがプラハで格調高く唱えた「核廃絶の目的」はどうなったのか。この問いに対して、エネルギー省のある高官は、NPRの中には、大統領の最終目的に向けての「全般的に哲学的な一歩が含まれている(There is this overall philosophical step)」と説明している。「哲学的一歩」とは、アメリカの官僚が産み出すなんとも巧妙な表現であるが、これは「具体的なものは何もない」ということの口実でしかない。

後編につづく)

※補注1 潘基文国連事務総長が提案した5項目提案
(1)核不拡散条約(NPT)加盟国に核軍縮交渉を誠実に行うよう求める

(2)安保理が核軍縮首脳会議の開催など軍縮プロセスを強化する措置を検討する

(3)非核地帯条約など多国間条約を普及する

(4)核兵器保有国の責務と公開性の増進

(5)その他の大量破壊兵器の廃絶、ミサイル・宇宙兵器通常兵器の制限

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【プロフィール】
田中利幸(たなか・としゆき)
広島市立大学広島平和研究所教授。西オーストラリア大学にて博士号取得。オーストラリアの大学で教員を長く務めた後、敬和学園大学教授を経て現職。第2次大戦期における戦争犯罪の比較分析を研究テーマとしている。著書に『空の戦争史』(講談社現代新書)、『戦争犯罪の構造―日本軍はなぜ民間人を殺したのか』(大月書店)などがある。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

オバマ氏の核廃絶宣言は、最初から欺瞞だったことが明らかで、私のブログでも何度も書いていますが、現実に核廃絶は全くの幻想だ。

オバマ氏のあのプラハ演説の直後、アメリカは新しい核兵器の開発に着手することを発表したし、またオバマ氏自身、アメリカは防衛に必要な核武装は保持すると明言している。

それは核保有国すべてに言えることであり、結局世界中が一斉に核を廃棄しない限り核廃絶などあり得ず、そして核保有国はどの国もも、他の保有国すべてが核を捨ててから、自らも捨てるかどうか考えるだけだ。実際は、唯一の核保有国としてその優位性を保とうとするだろう。

オバマ氏の演説を受けて、長崎市長などは、自分たちはこれからオバマジョリティと名乗って非核運動を続けると、高らかに宣言した。

むろん、形だけの核兵器の数削減は進行するだろう。それは、古くて不確実、安全性が低く、維持費がかかり、扱いが難しい古い核兵器は常に処分しなければならないからだ。旧型の核兵器は常に処分し、新型に置き換える。新型は精度が高く、旧型よりも少ない数で核戦力としてはまったく減少しないどころか、増強になる。

米ロはこの旧型核兵器の削減に合意したのだが、これは合意しようがしまいが、双方しなければならない作業だ。これをいかにも核削減であるかの様なパフォーマンスとして使い、世界を騙し、実際はそして日本の民主政権や叔母マジョリティたちだけが騙されたわけだ。

岡田外相など、アメリカに核の先制不使用を宣言してくれと申し入れ、即座に拒否されている。先制使用をしないと宣言した核抑止力は半減する。

むろん、世界中で核先制不使用を明確に宣言している国など無い。

さらに岡田氏は、印度に対し、核実験をするなら核技術協力を拒否すると言っている。それも印度にしてみれば単なる内政干渉、横暴であり、日本に対しとうぜん拒否し、これから印度の代わりとして重要視しなければならない印度を不必要に敵に回した。

さらに、イランに対し、核保有志向を理由に様々な日本独自の経済政策を実行し、西側先進国では唯一と言っていいほどイスラム圏との良好な関係を築いていたのにそれをぶちこわした。

核廃絶などあり得ず、日本はその嘘に踊らされ世界で孤立しつつある。イランや印度に制裁を加えるなら、どうして中国に対して最大の制裁を加えないのか。なぜ、アメリカに制裁を加えないのか。

挙げ句の果てに非核三原則を法制化するとも言っている。

これをお花畑思想という。自分の理想が世界を動かし、世界はきっと核廃絶を実現すると信じ切っているのだ。

オバマ氏自身はもしかしたら核廃絶を実現したいのかも知れないが、彼がアメリカ大統領である間はそれは出来ないし、大統領でなくなったらもっと出来なくなる。

とうぜん、民主党のお花畑宣言など、世界ではまったく相手にされない。口先では、日本の理想に賛意を示すだろうが、もちろん、それを実行するなどするはずがない。単に日本の今の政権のピエロ振りを笑い物にしているだけだ。

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