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2010年9月30日

「特捜部」体制を支えるのは絶対服従の精神?

森達也氏(映画監督・ドキュメンタリー作家)

 いまこの原稿を書こうとしている9月27日の段階で、大阪地検の前田恒彦主任検事が証拠を改ざんした事件についての報道は、急激に少なくなっている。

 ある意味で仕方がない。事件は日々起きる。その後に起きた(やはり検察がらみの)尖閣沖衝突事件の中国人船長釈放の経緯や中国の対応に報道の比重が移ることは当たり前だ。

 でもすべての事件が時間の経過とともに忘れ去られてよいわけではない。起きた事件を端緒にして、取材や調査をさらに重ねなくてはならない事件はたくさんある。

 大阪地検の証拠改ざんは、まさしくそんな事件だ。



2010年9月29日

中国漁船衝突事件で検察の「独自外交」が問題に

 中国漁船衝突事件で那覇地検が「日中関係への考慮」を理由に船長を釈放したことについて、批判の声が高まっている。

 川勝平太静岡県知事は26日、那覇地検の判断について「政治的判断を含めた見解を出したことは地検の越権だ」と非難。28日に開かれた参院外交防衛委員会でも自民党の佐藤正久参院議員が「(検察官の裁量で訴追しないことを認める)刑事訴訟法248条の裁量権を越えている。検察が、のりを越えて外交的な判断をした」(毎日)と政府を追及した。

 一方、政府側は今回の判断について「検察の越権行為とは考えていない」(前原外相)との見方で、那覇地検の対応を問題視しない考えだ。ただ、24日の釈放が検察独自の判断で決定されたとは考えにくく、外務省も首相官邸側と相談した上で23日に職員を地検に派遣し、日中関係の現状について説明したことを認めている。

 元検事である三井環元大阪高検公安部長は今回の検察の動きについて、「政府が『日本の法律に基づいて処分する』と言ったので、検察は勾留延長までした。それを途中で釈放することなど、(検察という組織形態では)ありえない。菅直人政権の意向であることは100%間違いない」と断言する。

 国際関係では今年7月のアメリカとロシアのスパイ交換事件のように、問題解決のために「超法規的措置」がとられることは珍しくはない。だが、今回の場合は「船長解放のタイミング」という高度な政治判断が求められる場面で、菅政権が結果として「中国側の脅しに屈して"検察"を楯に問題の収束をはかった」と捉えられかねず、一連の対応についてその妥当性が問われることは間違いない。

【関連記事】
■参院:外交防衛委 中国人船長釈放の妥当性、激論(毎日)
■オバマ米政権の"超法規的措置"に批判続々―ロシアとスパイ交換(読売)

2010年9月27日

《録画版UP!》サラリーマン化する政治家に告ぐ ── 村上正邦・中曽根康弘らが現役政治家を憂う

9月28日、「躍進日本! 春風の会」が発足する。村上正邦氏や中曽根康弘元首相らが、政局一辺倒の政治構造と、サラリーマン化する政治家に警鐘を鳴らすものだ。では、高度経済日本を支えた"大物政治家たち"は、今の政界をどう見ているのか・・・。

★   ★   ★

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村上正邦元参議院議員

村上:まず、今の政界には2つの問題があると考えています。

 1つは新人議員。最近の政治家は、当選したらすぐに「赤坂の料亭で飲み食いできる」とか「いい車に乗れる」などと言う。

 歳費さえもらえれば良い、という考え方の人間が多すぎる。挙句、ボーナス(期末手当)までもらえる始末。

 そうした状況に、「自分は政治家になって国の仕事をする身分なのに、サラリーマンのようにボーナスまでもらっている」と、疑問も感じていない。

 それに、2世議員。親の地盤(支援者)・看板(知名度)・かばん(選挙資金)を引き継いで、半ば政治が家業になっている。新人議員と一緒で、こちらもそうした現状に疑問を持っていない。

 政治家としての矜持、志をもってまつりごとに取り組んでいるのか? と思います。

「国民目線で」と言うが、自分の選挙民の利益だけ考えて行動しているかのようにしか見えないのです。そこに国家観はあるのか!? ということです。そして、それを具現化することで得られる政治家としての達成感は? と......。

 今の政治家は言葉だけで遊んでいるようなものです。

 私はこの「春風の会」を組織する前、比叡山の座主だった渡辺氏にお会いし、ネーミングのアイディアを頂こうとしました。そのとき、こんなことを言われました。

「私は政治家が嫌いです。政治家の言葉に"誠(まこと)"がないからです」と。

 言ったことを成し遂げることで初めてその人に対して誠を感じ、それによって人の信頼が生まれます。命を捨ててでも良いからこのことをなさなければ、と思って行動することで初めて言ったことが誠となるものです。

 聖書にも「言葉ありて万物なる」とあるくらい、言葉は大切なものです。その意味を知って言葉を使う政治家が今いるのか? と感じています。

 私には、今の政治家の言葉が物売りの口上のように聞こえます。誰にでも迎合する物売りのようです。そして、集まった人々に、やれ「子ども手当てだ」などとパンダのような見世物を与える......。モノやカネで人の心を買おうとしているようにしか見えません。

 私は、「深い歴史観と哲学に裏打ちされた大局観。潮目を見る直観力と、それを実行に移す判断力」、こうした次代の政治を担う草莽(そうもう)の士が活躍する場を作りたいと思います。

★   ★   ★

 こうした問題意識を持って発足する「躍進日本! 春風の会」の記念シンポジウムが開催される。詳細は次の通り。参加ご希望の方は、事前に以下に連絡、もしくは直接会場にお運び下さい。

日時:平成22年9月28日(火)17:00~
場所:明治記念館
   東京都港区元赤坂2-2-23
記念講演:中曽根康弘元首相、米長邦雄氏
会費:1万円(1部の講演と2部の懇親会込み)
連絡先:03-3500-2200(電話)
    09-3500-2206(FAX)

2010年9月26日

和田等:初の女性首相下の豪議会は「初づくし」─初のイスラム教徒議員、先住民議員、緑の党議員

 オーストラリア議会は初の女性首相、ジュリア・ギラード政権下で9月28日に開会するが、首相だけでなく新議員にも「初」の顔ぶれが続々誕生、話題を呼んでいる。マレーシアの国営通信ベルナマによれば、そのひとつが初のイスラム教徒の国会議員が選出されたことだ。

 8月21日に行われた下院総選挙では、与党・労働党と野党・保守連合とも単独過半数を制することができず、70年ぶり「ハング・パーラメント」(中ぶらりんの議会)状態が現出した。保守連合との息詰まるような綱引きの結果、無所属議員2人の協力をとりつけた労働党が多数派工作に成功、ギラード首相が引き続き政権を担うことになった。

 初のイスラム教徒国会議員となったのは、シドニー西郊のチーフライ選挙区で当選を果たした労働党のエド・フシック氏。
 フシック新議員の両親(イスラム教徒)は、1960年代に旧ユーゴスラビアからオーストラリアに移住したが、当時は英語を理解できず、専門的な技能や知識を持つわけではなく、まさに「庶民」と呼ぶにふさわしい存在。ただただ、子どもたちがよりよい生活を送れるようになることを夢見て移民した。フシック氏はそんな両親の夢をかなえたのだ。同氏の母ハシバさんは「私はこんな日のために生きてきたのよ」とわが子の当選を喜んだ。

 また先住民アボリジニが国会議員に選出されるのも同国初だ。初のアボリジニ議員となるのはケン・ワイアット氏(自由党)。1970年代にはアボリジニの上院議員が存在したが、議会(下院)ではワイアット氏が初の議員に就任する。

 緑の党の国会議員が誕生するのも初めて。メルボルン選挙区で当選を果たしたアダム・ブラント氏が同党初の議員となる。

 さらにブリスベン北郊のロングマン選挙区では、弱冠20歳のワイアット・ロイ候補(自由党)が当選を果たし、同国最年少の国会議員が誕生することになった。豪州の議会には、「新しい風」が吹き込んできたようだ。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2010年9月24日

《緊急記者レク》郷原信郎:最高検の調査に客観性を担保する第三者性を持ったチームを構築せよ

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 22日におこなわれた、郷原信郎(名城大学教授・弁護士)氏による緊急記者レクです。大阪地検の前田恒彦検事が郵便不正事件の証拠資料を改竄した事件について、郷原氏のコメントをテキスト化しました。

2010年9月22日、名城大学コンプライアンス研究センター
構成・文責:《THE JOURNAL》編集部

★    ★    ★

 21日付朝日新聞で報じられた大阪地検検事によるフロッピーデータ改竄問題は、予想されていたとおり21日夜、前田恒彦検事が証拠隠滅の罪で逮捕されました。この逮捕を受けて緊急記者レクという形でお話をしたいと思います。

 まず、現職検事が証拠隠滅の罪で逮捕されたということは絶対にあってはならず、検察官として許し難い行為です。データの改竄が故意かどうかについては本人がまだ弁解しているという話もありますけれども、これは意図的にやったとしか考えられないというのが常識的な見方だと思います。いずれにしても、客観的な証拠を検察官の立証の優位な方向に改ざんするという行為は絶対許し難いことです。

 ただ、私がかねてから言っていることですが、この問題を単に前田検事個人だけの問題として見ることは適切ではありません。私は昨年に『検察の正義』、今年4月に『検察が危ない』、6月に『特捜神話の終焉』と、この1年間に3冊の本を出版し、「特捜検察が社会にとって非常に危ない存在になっている」ということをずっと訴えてきました。その問題が、今回の事件で顕在化したと見るべきです。

 もちろん、前田検事の検察官にあるまじき行為を厳正に処罰するのは当然のことです。が、決してそれだけで終わらせてはならない。この機会に特捜検察を巡る問題の事実関係をしっかり調査して、組織全体にどういう問題があるのかを明らかにし、今後の検察の独自捜査のあり方、特捜検察のあり方を全面的に見直すことにつなげていかなければと思います。

 その観点から考えて、21日夜の前田検事の逮捕をどう評価するのか。朝日新聞のスクープ報道が21日朝で、それからわずか半日の間に逮捕したことは極めて速やかに検察が対応したと言えます。途中で調べを中断して自宅に帰した場合におこりうる様々な混乱を考えると、犯罪を犯した疑いが濃厚であれば、すみやかに身柄を確保する必要性があったことは理解できます。一方、こういう形で最高検の調査チームが乗り出したことで、そのまま捜査の主体になることが確定したとすれば、これは少し問題があるのではという気がします。

 迅速に対応すること自体は評価できますが、迅速であるとともに、この問題について「適正かつ公正な捜査」が行われるよう、そしてさきほどもお話したように、特捜検察の組織的な問題として全面的に事実を明らかにしていくような体制で本格的な捜査に着手する必要があります。しかし、21日夜の逮捕まででその面での配慮が十分になされたようには思えません。

 最高検は、少なくとも村木氏の今回の事件で、村木氏の逮捕と強制捜査についてゴーサインを出した当事者です。その最高検のゴーサイン自体に問題がなかったのかについては、今回の証拠隠滅行為の共犯になるかどうかは別の問題として、慎重に検討しなければなりません。

 また、22日の読売などで報じられていますが、フロッピーデータの改竄について地検の幹部が報告を受けていたと報じられています。報じられる間でもなく、きわめて重要な証拠であるフロッピーディスクを、なぜ証拠請求しないで上村氏に返却したのか。普通は考えられない。そこに何か、地検サイドで検討が行われたのではないかという疑いが十分に考えられます。考えてみれば(郵便不正事件は)虚偽公文書作成の事件ですから、その文書自体が最も重要な証拠物であって、しかも被疑者が否認している事件です。となれば、いつ、どういう形で虚偽の文書が作成されたのかを解明することが捜査の核心部分です。なぜ、そのプロセスでフロッピーのデータが問題とならなかったのか。これは非常に不可解なところです。こういったことをもろもろ考えると、この事件については地検幹部、高検、最高検のそれぞれに問題にすべき点が多々あります。

 それが、そういった問題を抱えた当事者である最高検が捜査の主体になり、最高検だけで捜査をすることは私には適切なやり方とは思えません。また、このままでは捜査結果が出た段階でいろんな問題が指摘されることになるでしょう。

 たとえば、改竄の事実がどこまで報告されていたのかということに関して、仮に「地検幹部、高検にまでは報告されていたが、最高検には報告されていなかった」という捜査結果が出たとしたら、最高検の調査チームの結果では誰も信じないですよね。そこで信じてもらえなかったら、もう終わりです。

 ということは、今からいかなる捜査結果が出たとしても、国民が「この捜査結果を信頼できる」と受け止められるような客観性を持った捜査体制を組まないと、一つ間違えるとこの問題は解決不可能ということになりかねません。その意味で、客観性を持った体制づくりの話がないまま、逮捕の事実だけが先行して出てくるところに問題があるのではと思っています。今からでも遅くないので、客観性・第三者性を持った捜査体制の構築をしなくてはいけません。

 とはいっても、私がよくお引き受けするような企業や官庁関係の一般的な第三者委員会のようなものは、今回は捜査として行われなければなりませんので、その形ではできないでしょう。考え得るとすれば、捜査としてやることですから、検事として実行せざるをえない。ただ、そこになんとか客観性を持たせるとすれば、ひとつ考えられるのは捜査経験のある弁護士を何人か集め、その方を任期付きで検事に任官させ、特別チームをつくるということです。もちろんその中に検察内部の現職検事が入ることも差し支えないと思います。そういう形で外部の人間が加わったチームをつくる。

 そして、捜査結果のまとめと、それに基づいてどのような処分をするのかということに関しては第三者委員会をつくる。それをどこの場につくるのかも問題なのですが、検察総長の諮問機関のような形で検察の中につくるのでは検察の中に取り込まれることになるかもしれません。であるならば、問題について刑事事件の処分は別として、組織的な問題も含めた捜査結果の検討を行うための特別チームを、法務大臣の諮問機関として位置づけることも一つのやり方として考えられるでしょう。

 そもそも検察庁法14条では重要な事件については法務大臣に対して報告が行われるわけですから、そういう形での報告を受けて第三者による委員会で検討・評価を行うということです。

 極めて異例なことですので「この方式がいい」とは簡単には言えないのですが、今、考えなくてはならないのは、捜査の客観化と捜査および捜査結果をまとめるに際して第三者性をいかに持たせ、公正で適正な捜査を確保していくのかだと思います。

郵政不正事件 ── 証拠改竄は組織体質の問題である

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『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』

■以下、佐藤栄佐久公式サイトより転載
http://eisaku-sato.jp/blg/2010/09/000045.html

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佐藤栄佐久氏(元福島県知事)
郵政不正事件 ── 証拠改竄は組織体質の問題である

村木氏の無罪判決についてのブログ草稿を書いているとき、村木事件の主任検察官によるFD証拠改竄が明らかになったと報道がありました。

新聞でもテレビでも「信じられない」「ありえない」「検察の信頼は」等のコメント、見出しが躍っていますが、検察と直接対峙した経験のある者としては、全く意外ではなく、さもありなん、というのが正直な思いです。

見立てに沿わない供述は決して認めず真実とは離れたところで供述を作文するのですから、その延長線上にこのような行為があるのは、十分推察できるところです。

私の事件では、参考人として呼ばれた多くの人が、たとえ真実を貫こうとしても、逮捕をちらつかせられ、「すぐにでも会社をつぶせるぞ」「嘘でもいいから言え」「作ってでも言え」と恫喝され、深夜まで帰してもらえなかったのは以前のエントリーでも記述した通りです。

弟は精神的に苛め抜く取調べに耐え兼ね、「検事の意向に沿う証言をした」と自分が認識している17日も前の日付で、「自白調書」が複数存在し、これは一審の法廷でも「掠め取り調書」=捏造自白調書ではないかと争いになりました。

参考人として呼ばれた友人は、取り調べ検事に「上司に報告しなければならぬので何か一つ悪口を言ってくれ」と懇願されたといいます。

取り調べを指揮する上司=主任検事/特捜部長が真面目な検事を真実から遠さけているとしか思えません。検察が組織として証拠を捏造し得る証左です。

ですから、村木氏の、決して「信じ難い」ではなく、「ここまでやるか」という言葉は理解できます。

あらかじめ決めた結論に向かい、無理やり事実を歪めてつぎはぎし、供述調書を作成していく、検察がそのような手法をとるのは身に染みてわかった。その流れで証拠物にまで手を付けていたのか、という思いです。

村木氏の一審無罪直後からNHKの「追跡!A to Z」をはじめとして多くのメディアが事件全体を大阪地検のが生んだ取り調べの異常さ、という観点で報じてきました。

「大阪地検を無くすんじゃないかという話も出ている」とテレビで語る元検事の弁護士の方もいましたが東京地検でも同じことが起こっているという事実を身を以て知っている私としては信じがたい見方です。

下位組織固有の特殊性に帰結させようとする力が非常に強く働いているのを感じておりました。

そこで今回の証拠改竄事件が発覚です。夜のニュースでは、前田検事の映像を洪水のように流し、個別のFDディスクデータの改竄手法や意味づけを事細かに報道していました。

個人と具体性に強くフォーカスすることで、すでに組織の体質という全体像がぼやけはじめています。

直接の面識はありませんが、前田検事は東京地検が捜査を行った私の事件でも取り調べを行っていました。(一審後、虚偽の証言をしたのは間違いであった、控訴審で真実を述べたいと宗像主任弁護士に連絡してきた水谷氏の取調べを担当していました。)

この点を取り上げるだけでも、決して大阪地検固有の問題ではありません。

このようなメンタリティを持った検事が高く評価され、「エース」として全国の重要事件の捜査を飛び回り、リーダー的地位を占めている、その事実の指し示す意味は自明です。

村木氏の無罪は、当然の結果です。当然の結果でありながら幸運な事例であるとも、私は考えています。

今回の改竄事件の報道を通じ、菅家さんの事件、爪はがし事件など無罪を勝ち取った冤罪事件が例として挙げられていますが、このFDは村木氏の有罪、無罪を左右するほどの力を持つ証拠物であることを考えれば、すでに有罪として確定している事件の中にこそ、本当の悲劇、被害者が隠れているはず、というところまで洞察を働かせる必要があるのではないでしょうか。

特捜検事をやめた方がテレビに出ることが多くなっています。注意深く聞けばソフトにコメントしている言葉の端々に、検察に連綿と現在も流れている体質の問題点が垣間見えます。

先日書いた、熊崎勝彦元東京地検特捜部長の「黒を決して逃がすことはあってはならない」という、推定無罪の原則を軽視する言葉もその例ですが、今回も22日の「朝ズバ」で元東京地検特捜副部長 石川達紘氏が、検察内でなぜこのような改竄が起こりうるのか、という文脈の中で「最近は調べられるほうも権利意識が高まっているので、(捜査は)難しい部分もある」とさらりと話していました。

この言葉は捜査する側にいかに人権意識が希薄であるか、聴取される側が、無知で大人しい相手ならば、供述を得るためには何でもやってよい、と考えていることを間接的に示しているのではないでしょうか。

その意識こそが、特捜検察の体質、村木氏の事件、そして私の事件をはじめとする無理筋事件の暴走の根となっているような気がいたします。

検察一体の原則、そのトップである最高検が捜査にあたるそうですが、「前田検事の特殊な犯罪」「大阪地検固有の体質」を断罪して全てが終了しないか、注意深く推移を見守りたいと思います。

────────────────────

■佐藤栄佐久氏のプロフィール
http://eisaku-sato.jp/blg/profile/

■原文URL
http://eisaku-sato.jp/blg/2010/09/000045.html

■佐藤栄佐久 公式サイト
http://eisaku-sato.jp/

2010年9月22日

【インタビュー】結城登美雄:日本の農業に未来はあるか─農業人口が5年で75万人減

農林水産省が7日発表した2010年の農林業センサス(速報値)で、農業人口の減少が加速化している実態が明らかになりました。

農業就業人口は5年間で75万人減少し、260万人になり、減少率22.4%は今までで最大でした。

日本の農業は、私たちの食料はどうなってしまうのか、本誌ブロガーでお馴染みの結城登美雄氏にインタビューしました。

* * * * *

結城登美雄氏(民俗研究家)
「都合のいい情報にまどわされるな」
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━「日本の農業」の現状は産業論でとらえると厳しい数字です。

22%も雇用人口が減る農業を産業と言えますか。産業論としてとらえても、「6次産業化(※)」「輸出入促進」など対策止まりで根本的な問題は残ります。

人は食べなきゃ生きられないのですから、人の生存に関わる問題として食料、農業を考えなければいけません。

─今回の農林業センサスをどう見たらいいのでしょうか。

今39歳以下の農家は何人いると思いますか。2009年の時点では約23.5万人でした。農家は全体の約7%しかいません。

さて、39歳以下の食べる人は何人でしょう。約5,600万人です。39歳以下では、3人の農家が1000人分の食料をまかなう計算になります。

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1970年の農業人口は1000万人を超えていた(出典:農水省 農業構造動態調査結果)

この現状のままで10年は持たないのではないでしょうか。

正確な情報さえ伝わっていれば、おのずと「自分たちの食べものは大丈夫?」という問いになるはずなのですが、どうも本当のことを伝えられてないように思えて仕方ありません。農林業センサスは都合のいいところを強調するだけの嘘つき情報になっています(2010年度最新版は現在"暫定版"のみ公開中)。

━「自分たちの食べものは大丈夫?」と考えても、土地がなければ自分で作ることもできず、次の一歩が見当たらないように思います。

農家という呼び方をやめて、「私に代わって食べものを作ってくれる人」と言い換えれば意識は変わりませんか。土地がなくても自分の代わりにつくってくれる人を買い支えればいいのです。

農家の意識も変えるといいと思います。鳴子の米プロジェクト(過去のブログ参照)は消費者に対して「あなたの"食べる力"を貸してほしい」という姿勢で生まれたプロジェクトです。

まず両者がお互いの意識を変えていけば、そこに新しい関係ができあがります。センサスの一部の数字を追って他人事のように「日本の農業」を論じるよりも正確に情報をつかんで自分のこととして考え、身の回りで「食べものネットワーク」を作っていくところから始めるといいでしょう。

(文責・構成:《THE JOURNAL》編集部)

※ 生産(1次産業)から加工(2次)サービス(3次)を連携させて付加価値や雇用の創出を狙う政策で、戸別所得補償政策と並び民主党農政の柱の1つ。

【関連記事】
■結城登美雄:日本農政への代替案「CSA」─参加と負担が担い手をつくる
http://www.the-journal.jp/contents/yuuki/2010/07/csa.html

こうして調書は捏造される

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鈴木宗男氏(新党大地代表)

 朝日新聞1面トップに「検事、押収資料改ざんか 郵便不正事件 捜査の見立て通りに FDデータ書き換え」、34面、35面には「証拠の重み 軽視 捜査、判決でも批判」、「検察に都合いい日付 郵便不正 押収FD 検事、同僚に『改ざん』告白 弁解『遊んでいるうちに』」という見出し記事がある。

 読者の皆さんには、検察の調書の取り方、やり方がこれだけデタラメであることを、よくわかってほしい。密室で強圧的に自白させたり、誘導したりして、調書は作られていく。

 私に賄賂を持っていったとされたやまりんの山田哲社長は、調書を取られる時のやり取りを詳細に述べている。密室での検事の生々しい誘導がよく出ているので、是非ともご一読戴きたい。

陳述書

平成14年6月17日作成

山田 哲


1 私は、やまりん株式会社の代表取締役社長をしているものです。


2 やまりんとその関連企業各社が、平成10年8月4日に、鈴木宗男代議士側に内閣官房副長官の就任祝いとして政治資金規正法にのっとって献金した400万円に関し、これを賄賂であった疑いがあるとして東京地検特捜部の取り調べをうけておりますので、その状況などについてお話しいたします。


3 私が初めてこの件に関し、東京地検特捜部の取り調べを受けたのは、今年の5月18日のことでした。

 取り調べの場所は釧路地方検察庁帯広支部の取調室で、取調担当検事は稲川検事でした。
 この時の取り調べの際、稲川検事は、まず

贈側は時効だから、協力してくれ。
数多くの事件の中の一つにすぎない。
鈴木側の政治資金収支報告書に基づいて全国一斉に調べているんだ。

などと私を安心させるような言い方をし、さらに、

狙いは、鈴木一人だ。

などと言いました。

 狙いは鈴木一人だという言葉の意味は、8月4日及び翌5日の日に、自民党の松岡代議士や松下代議士にも献金しているのですが、この二人については捜査立件の対象にしないという意味だと理解いたしました。

 一方でこのように言いつつ、稲川検事は、さらに、

我々特捜の前に、障害になるものは排除する。

などと言いました。

 そればかりではなく、稲川検事は、

4年前の盗伐の事件では、釧路地検のやり方は甘いと思っている。
我々だったら、会長も社長も同罪にした。
今からでも遅くはない。
役員会議で、歩留まり140%とか、150%という資料がある。
だから、会長社長は盗伐のことを知らないということにならない。
組織ぐるみの犯罪ということになる。
他にも、文書違反のことがある。
時効は10年だ。
上士幌の件で田村が営林署の連中と都合のいいように文書を改竄している。
これをやったら営林署はめちゃくちゃになり、必ず自殺者もでるだろう。

などと、私を明らかに脅すようなことを言ってきました。

 私は、正直な話、相手が東京地検特捜部だと言うだけでも恐怖心を持っておりました。

 その特捜部の検事さんから4年前の盗伐事件を、再び捜査するなどと言われると本当にそうされてしまうのではないかという恐怖感を感じました。

 自分としては、やまりんの4年間の盗伐事件については、全く関与した事実もありませんし、既にこの件については、1億円以上もの賠償金も支払われてもおりますし、なんと言っても4年以上も前の話であり、犯人も既に処罰されて、事件としては終わっているという認識でいたのですが、日本最強の捜査機関と言われる東京地検特捜部の検事さんから自信たっぷりに、具体的な証拠があるとしつつ、「我々だったら会長も社長も同罪にした。今からでも遅くない」などと言われると、本当にこの件で、やまりんの社長である私が逮捕されたり、起訴されたりするのではないかという恐怖心でいっぱいになってしまったのでした。

 稲川検事は、そのようなことと言って私を脅した後、

今から調書を作る。
違っているところがあったら、言いなさい。

などと言って、事務官に向かって、いきなり調書の内容を言い始め、事務官がその内容をパソコンで打っていきました。

 その中には、平成10年8月4日の鈴木代議士側への献金について、内閣官房副長官の就任祝いの名目である、あるいは、就任祝いをかねるというような表現も入っておりました。

 私は、稲川検事のこの日の取り調べの中でそのようにお話ししたことはありませんでした。

 私としては、あくまでも、就任祝いだけのつもりでいたのに、そのような調書をいきなり作られたのですが、稲川検事から脅されたことによる恐怖心があって、それは事実とは違うとはとても言い出せない雰囲気でした。

 その他にも、私が全く話していない内容や私の意に添わないような部分が多々ありましたが、稲川検事にその調書に署名を求められると、その調書に署名するしかないという気持ちになり、結局、嘘の調書に署名をしてしまいました。


4 その二日くらい後の取り調べのときのことだったと記憶しておりますが、稲川検事が、さらに、その調書に肉付けをしたような内容の調書をいきなり私に示してきました。

 内容的にはやはり、私の言っていないことや事実と違うことがたくさん盛り込まれておりました。

 この調書も結局、前回同様、署名するしかない気持ちになり、事実と違うなと思いながらも、署名してしまいました。

 なお、一回目の調書だったか二回目の調書だったかはっきりしませんが、稲川検事の方から、直すところがあったら直してもいいというようなことを言われ、調書の案を見せられました。

 しかし、贈収賄の成否に関わるような重要な部分は直してもらえないという雰囲気がありありであり、その点については、あきらめに近い気持ちになっておりました。

 とはいえ、稲川検事からそのように言われたことから、一部について訂正を申し立てたのですが、訂正してもらえた部分ともらえなかった部分がありました。

 贈収賄に関わるような本質的な部分については、異議を申し立てても、直してもらえない雰囲気であり、実際、直してもらえませんでした。


5 このころの私の気持ちは真っ暗でした。

 しかし、私がこれまでにとられた調書は、簡単な内容であり、これから本格的な調書を作ろうとしてくるのだろうとも思っておりました。

 私は

そのときが勝負だ。
そのとき事実と違う内容だと言って署名を拒むしかない。
それしか特捜部には対抗できない。

と考えておりました。

 しかし、そうは言っても、

実際に特捜部に最後まで抵抗するのは難しいだろう。

とも考えており、まさにこの時の私の心境は

荒れ狂う大海の中で小舟を一人でこいでいる。

というような心境でした。

 私が、ちょうどそのように考えていたころ、弁護士さんにアドバイスをいただくことができました。

 その時の弁護士の話は、

特捜部の調べはなにが真実であるかを聞き出すというよりは、あらかじめ特捜部が想定したストーリーにあてはめてくるような調べかたです。
特捜部の検事は皆良心を削りながら仕事をしている。
特捜部の検事は皆一流だから、口裏合わせをしても必ず特捜部には突破されるから意味はない。
むしろ事実ベース、真実ベース、記憶ベースが一番強い記憶や事実に反する調書にどうしても署名しろと言う検事の立場の方がむしろつらい。

という内容のものでした。

 私は、その話を聞いて、目から鱗が落ちるような気持ちでした。

 それなら、ひょっとして、私でも記憶や事実に反する調書に署名しないでいられるかもしれないという気持ちになったのでした。


6 それでは、次に、私が平成14年6月9日の午後2時30分から同日午後3時ころまでの30分くらいの間、東京地検特捜部の稲川検事から取り調べを受けた状況についてお話しします。


7 私は、当初、稲川検事の取り調べを受けた後、坂本検事、ついで吉田検事の取り調べを受けるようになりました。

 当初は、釧路地検の帯広支部で取り調べを受けていたのですが、やまりんの件がマスコミにでたため、沈静化させるとの理由で、帯広にいた特捜部の検事が急遽東京に引き上げて行きました。

 その後、稲川検事から

やまりん事件が中途半端な形になっている。
社長が一回東京にきてくれれば、事件を終わらせることができるので、東京に一度出てきて欲しい。

などと言われ、今年の6月8日と翌9日に、東京地検での事情聴取に応じることになり、その日、私は、上京したのでした。

 そして、その両日、東京地検において、特捜部の吉田検事の取り調べを受け、その取り調べの中で吉田検事からいきなり調書の案を見せられたりしたのでした。

 吉田検事は、なんとかこの調書で納得してくれと言ってきたりしたのですが、その調書の内容は、私が全く取り調べの中で言ってない内容であり、事実に反する内容であったため、結局、8日も9日も、調書に署名しませんでした。

 なお、この時に吉田検事から見せられた調書の案は、私の印象では、私の供述調書というものではなく、私の父で、やまりん会長である山田勇雄の調書という感じでした。

 そこで私は、吉田検事に、

これは私の調書と言うよりは親父の調書ですね。
親父に聞いてもらうしかないんじゃないですか。

と言いました。

 すると、吉田検事は、いろいろ弁解がましいことを言いながら、

この事件は、脚本監督主役は山田勇雄だ。
それは確かだ。
あとの人は脇役にすぎない。
国のことを考えて、この調書で納得してもらうしかない。

などと言ったのを記憶しております。

 そのように言われても、私としてはとても納得できず、結局8日の日には夜中の12時過ぎまで押し問答をしましたが、結局調書に署名しなかったという経緯もあったのです。

 このような取り調べ状況であったため、9日の日も調書に署名しなかったところ、その日の午後2時30分ころ、吉田検事が、一旦取調室から出て、その後、しばらくして戻ってきたのです。

 そして、私に

稲川検事のところにいってくれ。

というようなことを言ってきたため、私は、吉田検事とともに稲川検事の室に行きました。

 そして、私と吉田検事が稲川検事の取調室に入り、私が稲川検事の前の椅子に座ると、吉田検事はその取調室から出て行かれました。

 そのときには、検察事務官もその取調室にはおらず、私と稲川検事の二人だけとなりました。

 稲川検事は、私と二人っきりになると、まず、

調書をとるわけではない。

と、その日は調書をとるつもりはないという意味のことを言いました。

 そして、その後、私に

今までは、特捜側の協力者だと考えていたが、違うようだ。
前から言っているように、我々特捜に協力するか、鈴木に協力するか、二つに一つだ。
協力するとしないとではずいぶん違う。
いずれにせよ、強制捜査は避けられないが、マスコミに対する我々特捜部の対応の仕方も違う。
我々のマスコミへの言い方次第によっては、社長を極悪人に仕立て上げることもできる。
協力さえすれば、この件だけで終了する。
協力しなければ、それだけでは終わらない。
人間誰でもたたけばほこりが出る。
社長もほこりが出る。
赤堀、高信、三宅、徳田だけではない。
社長の母親、兄貴、全部だ。
4年前の盗伐の件でやることも可能だ。

などと、ドスの効いた低い声で言って、私を脅し始めました。

 私は、稲川検事からまた脅されるということはある程度予期しておりましたが、実際の稲川検事はとても迫力があり、このようなことを言われて、大変な恐怖心を感じました。

 このままでは、本当に私ばかりでなく、赤堀社長、高信室長、三宅社長、徳田社長、さらには、私の兄の山田麟太郎や母親まで特捜部に徹底的に個人的な事件を捜査され、逮捕などされることになるかもしれないとも思いましたし、マスコミに、あることないことをリークされて、大変なことになるとも思ったのです。

 私は、ただ黙って稲川検事の脅しを聞いているしかありませんでした。

 その後も稲川検事は、私に、

やまりん関連会社に、本日別件で家宅捜査が、今頃入っているはずだ。
明日もあるだろう。

などと言ってきたのです。

 私はその言葉を聞いた瞬間、三宅社長のところの山洋建設か、徳田社長のさんわ(平成10年当時の名称は山和道路)に、特捜部が別件でいわゆるガサ入れをしているのかなと思いました。

 実際、後で聞いたところによると、その時、三宅社長の山洋建設に宮野明秘書に対する政治資金規正法違反の容疑で、家宅捜査が行われていたことを知りました。

 この家宅捜査は、あくまでも特捜部の言いなりにならないことに対する嫌がらせであると感じました。

 これは平成14年6月17日、国会に提出し、私が議院運営委員会でも話したものだが、当時の国会議員は理解してくれなかった。

 何が真実か、公平、公正とは何か、お互い冷静に考えていきたいものである。

 大阪地検特捜部のこの検事は、トカゲのしっぽ切り宜しく、仲間から組織防衛のため、断罪されることだろう。

 こうした検事をつくったのが特捜部であり、歴代特捜部長はじめ検察の体質が一番の問題であることを指摘しなくてはならない。

 午前中旭川市内回り。12時から旭川市で上川中央地区の新党大地・鈴木宗男後援会の昼食会。15時から留萌市で、留萌管内新党大地・鈴木宗男後援会の会合。

 「鈴木宗男が政治活動をする限り、最後まで鈴木宗男と行動を共にする」という決議をして戴く。後援会の皆さんに感謝の思いで一杯である。

 どの地域でも、後援会の結束は強く、意気軒昂である。新しい勇気やエネルギーを戴き、やる気が湧いてくる。

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※この記事は9月21日付「ムネオ日記」より転載しました。(タイトルは本誌編集部がつけました)

2010年9月21日

郵便不正事件で検察が押収資料を改竄 主任検事がデータ書き換えを認める

 障害者団体への郵便割引制度を受けるために偽の証明書を発行した事件で、大阪地検特捜部が証拠として押収した資料を改竄していたことが朝日新聞の報道によって明らかとなった。

 問題となっている資料は、上村被告が2004年6月に発行したとされる偽の証明書が入っているフロッピー・ディスクで、村木厚子厚労省元局長(一審・無罪)の元部下で係長だった上村勉被告の自宅から押収された。

 フロッピーディスクのデータの最終更新日時は6月1日から6月8日に変更されていて、書き換えは昨年7月13日午後だったことも判明している。最終更新日時が6月8日に変更されたのは、特捜部が「村木氏による上村氏への指示は6月上旬」と考えていたためで、6月1日の最終更新であれば村木氏の関与を裏付ける証拠となりえず、特捜部の描いたシナリオが崩れることになり、改竄を行ったものと思われる。改竄は捜査主任を務めた前田恒彦検事(43)が行い、本人はデータの書き換えを認めたうえで、「故意ではなかった」と話しているという。

 村木氏の主任弁護人の弘中惇一郎弁護士は「事実ならば前代未聞。検察の捜査の根幹を揺るがすものだ」(時事)と厳しく批判している。

【関連記事】
検事、押収資料改ざんか 捜査見立て通りに 郵便不正(朝日)

根本行雄:布川事件と袴田事件で新しい展開 証拠の全面開示の重要性を示す

 9月10日、水戸地裁土浦支部で開かれた布川事件の再審第3回公判において、43年前の目撃証人として利根町の女性(77)が出廷し、当時の記憶を証言した。9月13日、「袴田事件」の第2次再審請求で静岡地検は、公判に未提出の証拠7項目を弁護団に開示した。布川事件と袴田事件、どちらにも新しい展開があり、冤罪の発生を防止するためには、検察に対して証拠の全面開示を義務付ける必要があることが明白になった。

◆布川事件─被告に有利な証拠を隠した検察─

 以下に、毎日新聞の記事を引用する。

「布川事件」の再審第3回公判が9月10日、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)で開かれた。強盗殺人罪で無期懲役がいったん確定した後、仮釈放された杉山卓男さん(64)と桜井昌司さん(63)の無罪を立証するため、事件当時に現場近くで人を見たという女性(77)が弁護側の証人として出廷し、「当時見たのは杉山さんではなく、近所に住む知人の男性」と別人の名前を挙げた。
 杉山さんと桜井さんや弁護側からは、不利な証拠を開示しない検察の姿勢に怒りの声が相次いだ。
 今年、再審の手続きに入ってから検察側は、事件発覚当日に女性から話を聞いた捜査員の捜査報告書を初めて開示した。この報告書でも、女性は事件現場で犯行時間帯に杉山さんと異なる特徴の男を見たと証言していた。が、これまで弁護側の要請に対し、検察は「不見当」と報告書の存在を否定し続けてきた。
 再審請求審で一度開示した女性の供述調書についても、検察は再審の法廷で証拠として調べることを拒否。10日の公判になって、ようやく証拠として採用することに応じた。桜井さんは「もっと隠している証拠があるだろうと言いたくなる」と検察の証拠の取り扱い方に怒りをぶつけた。

 今回の証拠開示で、杉山さんと桜井さんの無罪方向の証拠(女性の証言)が隠蔽されていたことが明らかになった。検察は過去の冤罪事件においても、無罪方向の証拠を隠すという不正を行っている。事実審である一審において、全面的な証拠開示が行われていれば、冤罪事件は大幅に減少させることができるはずだ。

 検察には、被告人が有罪であると立証する責務がある。しかし、無罪を示す証拠を隠したり、証拠を捏造したりする責務はない。下村幸雄(元裁判官)さんは『刑事裁判を問う』(勁草書房)のなかで、「刑事裁判の目的は無実の発見である」と述べられている。検察の存在とその責務は、犯罪者を処罰することを最優先の目的にはしていないのである。刑事裁判もまた、主権者である国民の基本的人権を擁護し、公共の福祉を保持するための方策なのである。

*過去の冤罪事件については、拙著『司法殺人―「波崎事件」と冤罪を生む構造』(影書房刊)205〜210ページを参照していただきたい。

◆袴田事件−検察、未提出の証拠の一部を初めて開示−

 9月6日、毎日新聞の報道で、「袴田事件」で、無実を訴えている袴田巌死刑囚(74)の第2次再審請求をめぐる静岡地裁、静岡地検、弁護団の3者協議で、検察側は13日の次回協議で証拠を一部開示する方針を固めたという毎日新聞の報道があった。9月13日、「袴田事件」の第2次再審請求で静岡地検は、公判に未提出の証拠7項目を弁護団に開示した。

 以下は、毎日新聞からの引用である。

 昨年7月から始まった三者協議で弁護団は、▽犯行時の着衣とされる5点の衣類が発見された、みそタンクに当時残っていたみその量▽みそ工場の捜索時の写真や報告書─など13点の証拠開示を検察側に求めてきた。
 これに対し検察側は5月の前回協議で「3カ月ほど検討する時間がほしい。任意で開示できるものは開示したい」と述べ、開示の可能性に初めて言及していた。
 3者協議の関係者によると、検察側は6日、開示予定の証拠一覧を弁護団側に提示した。その際、一覧には当時の捜査報告書のほか、衣類5点の捜査にかかわった警察官、衣類の製造元や販売者の調書などが含まれ、事件当時の工場を撮影した写真なども項目に含まれていたという。
 弁護団関係者は「これまで検察側は一切、証拠の開示に応じてこなかった。証拠が開示されれば、内容から捜査当時の工場の様子が明らかになる可能性があり、再審に向けて大きな前進になる」と話した。

 9月13日、静岡地裁・地検・弁護団の非公開の3者協議で開示された。弁護団が求めた26項目の一部で▽犯行時の着衣で被害者の返り血が付いたとされるズボンなど衣類5点の発見時のカラー写真や捜査報告書▽事件当時に現場のみそ工場を写した写真18枚─など7項目29点。弁護団は「衣類のカラー写真は血液の付着状況などを明らかにする有益な資料」と述べた。

 今回の開示で再審の門が開けるかどうかは、依然として不明である。しかし、弁護団は引き続き、証拠の全面開示を要求していくことで、再審の門が開く日は確実に近づいていくだろう。
 袴田事件については、『はけないズボンで死刑判決―検証・袴田事件 (GENJINブックレット (37))』(現代人文社)がおすすめである。とてもわかりやすいブックレットである。

◆波崎事件─「物証がないのは完全犯罪の証拠」なのか─

 波崎事件対策連絡会議の発行している「波崎事件 再審運動ニュース」第40号(2010年9月10日発行)より、内藤武さんの書かれた「波崎事件 第3次再審(死後再審)請求の主旨」の一部を抜粋する。

 第2次再審請求棄却決定に対する異議申立て審半ばで冨山常喜死刑囚は無念にも獄死した。第3次再審(死後再審)請求ではこれまで解明してきた全ての問題点を出し切る。市民参加の裁判員制度の開始により、もはや職業裁判官が事実認定を独占する時代は終わった。証拠の裏づけがない「仮定」・「可能性」・「推断」などによる事実認定は「刑事訴訟法違反」に当たる。もはや、裁判官は自由心証主義を大義名分に、市民常識や論理法則、人間の経験則を無視した恣意的事実認定の世界に安住することはできない。第3次再審請求(死後再審)では市民感覚・市民の経験則(常識)から納得のいかない点(合理的疑い、非科学的証明、違法捜査)を取り上げて冨山さんの無実を証明する。「夫は亡くなる前に箱屋(冨山常喜さん)に薬を飲まされたと言った」(伝聞証言)のみを警察・検察が根拠無しに100%信じたところから出発している。市民感覚からして、保険金の受取人であるN子の伝聞証言を鵜呑みにした警察・検察の不公平な捜査のあり方(初動捜査)は認めることはできない。この点を批判する。
 冨山被疑者の自白が得られない中、警察・検察は「保険金目的の毒入りカプセルを利用した自動車事故死偽装殺人」と勝手な想像でストーリーを考え、この筋書きに合う情況証拠のみを集め、物証のないのは被疑者が完全犯罪を計画したからだと冨山被疑者に全責任を押し付け逃げた。「青酸化合物の入手経路、その所持の事実、これらを証かすべき証人、これを与えたとの目撃者等のいずれもが不明であるが、それでも被告人を有罪とするのを妨げない」と恐るべき論理で死刑判決を下した。自らの推論で描いた犯罪ストーリーに対してすら立証責任を一切果たしていない。これは裁判ではない。市民が参加する裁判員裁判で審議したなら「疑わしきは被告人の利益に」の原則が100%適用され、完全無罪が勝ち取れる内容である。起訴は明らかに刑事訴訟法違反、憲法違反である点を批判する。
 死後再審請求で取り上げる項目でなによりも最優先するのは、
①権利書の行方と
②石橋康雄の経済状態である。次に
③謎の多い死因の鑑定書の問題、
④石橋康雄の妻N子証言の信用性、
⑤石橋康雄の冨山宅12時15分辞去、12時20分帰宅の疑問と目撃証言の矛盾である。そして、過去の裁判闘争の中で一度も行ってこなかった
⑥証拠開示請求を提出する。

※「波崎事件 再審運動ニュース」第40号(2010年9月10日発行)を入手を希望される方は、波崎事件対策連絡会議の代表である、篠原道夫さんまで、お問い合わせください。ニュースは、カンパをいただいたことがある方にはお送りしています。
住所:郵便番号203−0044 東京都東久留米市柳窪1−10−37 篠原方
電話:0424−73−9782 篠原方です。
カンパは下記の郵便振替口座へ
00130−3−400650 波崎事件対策連絡会議

◆検察は証拠を全面開示すべきだ

 過去の冤罪事件においては、無罪を示す証拠が意図的に隠されたり、証拠や証人を捏造したりしている。検察は、被告人が有罪であると立証する責務を担っている。しかし、無罪を示す証拠を隠したり、証拠を捏造したりする責務はない。 警察官も、検察官も、当然のことながら、「公務員」である。公務員だということは、その給与は税金であるということだ。そして、捜査等の活動のための費用もまた、税金で賄われているということである。

 税金によって支えられている捜査活動によって獲得された証拠は、有罪方向の証拠も、無罪方向の証拠、どちらの証拠も、全面的に開示されるべきなのだ。検察には、すべての証拠を全面的に開示することを義務付けるべきである。これもまた、冤罪の発生を防止するためには不可欠の方策である。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

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【プロフィール】
根本行雄(ねもとゆきお)
1953年、千葉県銚子市に生まれる。1976年、龍谷大学文学部哲学科哲学専攻卒業。1979年、「松岸学習塾」を開設し、近隣に住む小学生に算数と国語(作文)、中学生に英語と数学と作文などを教えながら、哲学および文学(創作行為)の研究と市民運動をしている。『科学の本っておもしろい2003‐2009』(連合出版)第3集、第4集、『新 科学の本っておもしろい』(連合出版)に執筆、著書に『司法殺人―「波崎事件」と冤罪を生む構造』(影書房)がある。

2010年9月20日

田中利幸:広島オリンピック代替案──国際平和芸術文化際の定期的開催を!

 2020年夏のオリンピックの招致を目指す広島市は、基本計画の焦点とされている財政計画案を進めています。20日のNHKでは「大会の経費の総額は既存の施設を活用することなどでおよそ5,500億円に抑えた」と財政問題を焦点にした報道がありました。

■広島 五輪招致へ経費圧縮の案(9.20/NHK)
http://www.nhk.or.jp/news/html/20100920/t10014088841000.html

 本誌に記事を寄せていただいている広島平和研究所教授・田中利幸氏は「単に財政的なものだけではない」と広島へのオリンピック誘致を批判をしています。7月にはその田中氏のもとに、広島市役所のオリンピック誘致担当職員のうち2名が説得のため「ご説明」に訪れたそうです。今回は田中氏がその時、市に対して提案した代替案を紹介します。

* * * * *
オリンピック代替案─国際平和芸術文化際の定期的開催を! 広島市民球場跡地利用への展望も含めて
広島平和研究所教授 田中利幸

◆市役所の無謀な計画

 広島市、と言うよりは、秋葉市長が熱望している2020年オリンピック開催についての様々な問題点については、すでに拙論「オリンピック広島誘致批判 -- 税金の浪費、政治腐敗の原因、まやかしの「平和祭典」--」で批判を試みた。

 広島市のオリンピック招致検討担当部の説明によると、「最小の経費で最大の効果を挙げる」ことを目的に、できるだけ簡素なオリンンピックの開催を計画すると言う。

 すでに批判したように、問題は、単に財政的なものだけではなく、そもそも現在のオリンピックが「平和の祭典」などでは決してないこと、したがって、被爆者をはじめ広島市民が市の根本理念と考える「核廃絶・反戦・平和構築」とはむしろ相反する「国力・ナショナリズム誇示」という要素が、現在のオリンピックの主たる性格であることをまず強く認識しておく必要がある。オリンピック招致検討担当部が今年4月に作成した「2020ヒロシマ・オリンピッック開催基本方針」なる資料では、なぜゆえにオリンピックが「平和の祭典」であるのか、その根拠がほとんど説明されておらず、競技会場、選手村、宿泊施設、交通輸送といったインフラ問題をどうするのかという問題に対する、極めて漠然とした対応策について説明することにとどまっている。

「最小の経費」という目的を達成するための手段として、競技会場や選手村を「仮設施設として新設」し、オリンピック終了後にはそれらを解体し、必要に応じて再利用すると言う。例えば、競技会場は次回以降のオリンピックに、選手村の仮設ユニットも次回以降のオリンピックや災害時の避難住宅等として活用する、と言うのである。メインスタジアムとして、アジア競技大会のメインスタジアムであった(5万人収容)広島ビッグアーチの利用可能性を検討する、と「2020ヒロシマ・オリンピッック開催基本方針」では記されている。しかし、オリンピック招致検討担当部の説明によると、10万人収容が必要なメインスタジアムとしては、広島ビッグアーチは小さすぎるため、仮設の大規模スタジアムの建設を構想しているという。仮設とは言え、これほど大規模なスタジアムの建設には莫大な予算が必要であり、オリンピック終了後に解体しても、このような巨大な建物の再利用が果たして可能なのか、という疑問が当然わく。しかも、次回の再利用までに解体した鉄骨その他の大量の資材をどこに備蓄しておくのか、備蓄用倉庫のために毎年嵩む費用だけでも膨大なものになるはずである。次回オリンピック決定都市が、そのような仮設スタジアムを再利用するという保証は全くないし、おそらく現実にはそのような可能性はほとんどないであろう。選手村の仮設ユニットにしても、再利用のメドがたたずに、長期間の資材備蓄が必要となり、これまた多額の予算が毎年必要となる。なんという税金の無駄使いであろうか。「仮設利用」という言葉は合理的に聞こえるが、実際には中身の伴わない空論にしか過ぎない。

 オリンピックを開催するにあたって、すでに競技施設の多くが整っている東京都の場合、2016年オリンピック推定必要経費が7,089億円であった。福岡市の場合は、7,754億円という必要経費を算定していた。したがって、インフレ率を考慮すれば、どんなに少なく見積もっても広島市は、2020年オリンピック開催のために7,000億円を用意しなければならないであろう。周知のように、日本政府の累積赤字が1,000兆円という目がくらむような驚愕的な額になっている。したがって、政府からどれほど財政支援を得られるかひじょうに疑問が多いし、あまりあてにしない方がよいであろう。本年度の広島市の一般会計歳入予算は5,916億円、そのうち税収入が2,000億円に満たない。このような財政状況にある小都市が、6〜7,000億円もの必要経費をどうやって調達するというのであろうか。あまりにも無謀である。

 しかも、すでに別稿で述べたように、オリンピックは極めて一過性的なものであり、オリンピックが終了すれば、すぐに忘れ去られてしまう。2年前の北京オリンピックについていまだ熱っぽく語る人は、どれだけいるであろうか。そのようなオリンピックに、長期持続的で地道な努力が必要な核廃絶のメッセージ発信を託そうなどと考えること自体が、はなはだ浅はかな考えである。

◆反核の持続的メッセージ発信源としての国際平和芸術祭を!

 核廃絶という目的をあと10年で達成することは、残念ながら、現在の世界状況を考えてみるならば、極めて困難である。したがって、我々は地道な反戦・反核運動を持続させていくことが大切である。しかし、運動の方法としては、「平和構築は、夢のある、楽しい活動である」ということをできるだけ多くの人、とくに若者に体感してもらい、「平和構築のために自分の想像力を存分に発展させ、それを使うことの喜び、快感を味わう」という経験を、国内外の多くの人たちと共有することができるようなやり方を、私たちは熟慮してみる必要がある。

 平和を創造するということは、広い意味では、楽しい「芸術活動」であるべきだというのが私の個人的な考えである。そこで、私たちの同じ貴重な税金を使うのであれば、平和創造につながるようなエキサイティングな文化活動のために使うことを私は提唱したい。

 具体的には、国際平和芸術祭の定期的、持続的開催である。2年に一度、夏の終わり、あるいは秋の初めという気候が良い時期の3〜4週間ほどにわたり、広島で、オペラ、音楽、演劇、映画、ダンス、絵画・彫刻、文学など芸術の多面にわたる総合芸術祭を広島で開催し、国内・国外から一流のアーティストを毎回招待して、パフォーマンスあるいは作品を披露してもらうという企画である。毎回、各分野での最高賞を市民の投票で決め、分野ごとに「ヒロシマ賞」を授与するということを考えてもよいであろう。作品は「広義の意味での平和」に関連するものなら、古典作品であろうと現代作品、あるいは新作であろうと、世界のどの国や地域のものであろうと、いかなるものも公演あるいは展示の対象とするという文化的寛容さを示す多文化的芸術祭であって欲しい。文学の分野では、「writers week (作家週間)」という期間をもうけ、世界トップの作家を複数招待し、聴衆の前で自分の作品(一部分でもよい)を読み上げてもらい、聴衆との意見交換を行うというような企画も可能であろう。

 こうした様々な深みのある芸術活動を通して、多くの聴衆や観覧者に平和について考えてもらい、創造的芸術活動を通して平和のメッセージを持続的に広島から発信し続けることができるのが芸術祭の特徴である。プロの芸術家だけではなく、市民や子どもたちが、それぞれの想像力を活かした作品を、一流のプロの前で紹介できるような企画も必要である。そのことによって、市民や子どもが仲間たちと共同でなにかを創造する楽しさを知ることは、平和的な人間関係の構築にとっては根本的に重要なことである。また、この芸術祭開催の時期を利用して、原爆写真展や核問題に関する講演会を開くことも、もちろん考慮すべきであろう。

 この種の持続的な、しかも世界に注目されるような芸術祭を定期的に開催するためには、常設の企画準備組織とスタッフ、とくに世界的に活躍している芸術ディレクターを、例えば4年契約で高額の年俸で雇うということが必要かもしれない。一人のディレクターによるマンネリ化を防ぐために、こうした柔軟な運営方式が理想的である。また、そうした芸術祭を定期的に行うには、それに見合った施設 -- オペラ・ハウス、コンサート・ホール、演劇場、野外音楽堂/劇場 -- といったものを整える必要がある。これらの施設の建設には、もちろん多額の予算が必要であるが、オリンピック必要経費と比較すれば格段に少ない額の予算ですむし、しかも、オリンピックのような一過性ではなく、芸術祭の時期以外にも、継続して使える性質の施設である。芸術祭が回を重ねるごとに、広島市は、招待された芸術家の名声と共に、「平和芸術文化都市」として世界に知られるようになるであろう。観客も国内、海外の様々な国々からこの芸術際を目的に、観光をかねて広島を訪れるようになり、彼らを通して、反核・反戦・平和のメッセージが世界に、静かにではあるが着実に浸透していくであろう。

 実は、人口100万人ほどの地方都市がこの種の芸術祭で大成功をおさめている具体的な例として、南オーストラリア州の州都アデレード市を挙げることができる。2年に1度開かれるアデレード芸術祭は50年近く続いているが、開催期間中は国内外から、世界トップの芸術家のパフォーマンスを見るために、あるいは作家の話をじかに聞くために、観光客がおしかける。

◆広島市民球場跡地を「平和芸術公園」に!

 現在、その跡地利用の方法をめぐって論争が起きている旧広島市民球場も、こうした国際芸術祭の計画との関連で活用することを考えてもよいのではなかろうか。

 広島市には、残念ながら、多くの観客が集える野外音楽堂/劇場が存在しない。現在の平和公園は「祈りの場所」=「静寂の場所」という性格を色濃く持っている。平和には、そのような平和的安らぎの「祈り・静寂」という要素と、平和創造という「躍動・喜び」という要素がある。したがって、平和公園に隣接する場所に、「静」と対照的な「動」の空間が存在すべきではなかろうか。それゆえ、旧広島市民球場の跡地を、「平和創造の躍動・喜び」の空間とするという提案を私はしたい。その中心となるものが「野外音楽堂/劇場」であるが、しかし公園全体が「平和創造の躍動・喜び」という要素を強くもつようなデザインとなることが理想的である。(私個人が考えているのは、例えば、フランク・ゲーリーがデザインしたシカゴの野外コンサート・ホールのある公園Millennium Parkのような楽しい公園である。)

 公園ならびに「野外音楽堂/劇場」のデザインは、平和公園のデザインがコンペ形式をとり、その結果、丹下健三のデザインが採用されたのと同様に、これもまた、建築家のコンペ方式で世界の建築家に応募を呼びかける、というのが私の提案である。その審査には、安藤忠雄、磯崎新、槙文彦、伊藤豊雄といった、現在、世界各地の様々な建築デザインで活躍しており注目を集めている日本の代表的な建築家や、彼らが親しくしている海外の有名建築家(例えば、ダニエル・リーベスキント)で構成するグループに審査委員になってもらい、彼らに最優秀デザインを選ばせるという方式をとることを考えてもよいであろう。

 ただし、選考の際に最も重要視すべき点は、すでに述べたように「平和創造の躍動・喜び」といった基本理念がデザインに深く強く含まれていることである。また、極力、多額の金を使わなくても、環境にやさしい、自然と調和するようなデザインにすることなど、といった基本原則をコンペの条件として入れること。さらには、日本全国のみならず世界各地から公園建設のための募金を募り、募金者の名前と短い反核メッセージを公園のどこかの場所に、なんらかの形で残すことを建築デザインの条件にいれる、などというアイデアがあってよい。世界に知られる丹下健三がデザインし、イサム野口のデザインした橋が架かっている平和公園と併存する場所に自分のデザインした公園拡張地ができるとなれば、これは世界各国から建築家がコンペに参加するはずである。とくに、まだ名前の知られていない若手建築家は、こぞって応募するであろう。採用されれば報酬ゼロでもやってもよいという建築家が現れても不思議ではない。こうした企画は、世界に名前が知られている「ヒロシマ」だからこそできることで、 他の都市にはできない。「ヒロシマ」の名前を、こういうところで多いに利用すべきである。

 いずれにせよ、「オリンピックは是か非か」といった議論を市民が多いに、しかも公開の場所でできるような機会を、市長ならびに市役所はもっと積極的に作っていくべきであろう。そのとき、オリンピックに替わる斬新なアイデアも同時に市民から募集するという、開かれた且つ柔軟な姿勢で市長には対処してもらいたい。

【関連記事】
■田中利幸:オリンピック広島誘致批判(前編)─オリンピックの「祭典化」とナチスの「神話化」
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/08/post_613.html

■田中利幸:核兵器廃絶へ「市民による平和宣言2010」
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/08/2010_2.html

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【プロフィール】
田中利幸(たなか・としゆき)
広島市立大学広島平和研究所教授。西オーストラリア大学にて博士号取得。オーストラリアの大学で教員を長く務めた後、敬和学園大学教授を経て現職。第2次大戦期における戦争犯罪の比較分析を研究テーマとしている。著書に『空の戦争史』(講談社現代新書)、『戦争犯罪の構造―日本軍はなぜ民間人を殺したのか』(大月書店)などがある。

2010年9月19日

【インタビュー】高野孟推薦!菅野芳秀氏の新刊『玉子と土といのちと』が発売

「土とは何かは日本文明論の大きなテーマだ」(「高野孟の遊戯自在録005(8月4日)」より)

 《THE JOURNAL》主宰・高野孟がブログで『土の文明史』(築地書館)とともに紹介したのは山形県の農家・菅野芳秀さんの著書でした。今回の著者インタビューのお相手は菅野さんです。

 菅野さんは山形県長井市で養鶏農家を営む一方、市内全世帯を巻き込んだ生ゴミ・リサイクルのシステム「レインボー・プラン」を実現して全国で名を知られた地域リーダーです。

 明治大学農学部時代は学生運動に明け暮れ三里塚闘争裁判の被告となり、「パトカーが自宅の前に常駐し、隣近所に迷惑をかけた」というほどの「活躍」ぶりだったようです。

 現在は息子さんとともに約1000羽のニワトリを放し飼いで育てています。ついつい忘れがちな「暮らし」の視点が、新著『玉子と土といのちと』(創森社)の中にたくさん散りばめられています。ぜひ手にとって一読下さい!

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玉子と土といのちと

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菅野芳秀氏(農家)
「暮らし」中心の農業を
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 ニワトリと共に暮らした30年間で目にした「ええっ!?そうなんだぁ」という驚きや発見、そこから見えたニッポンなどを百姓仕事の合間に書き綴ってきました。

 みなさんが読むときは肩の力をすっと抜いて、日本酒を口に含みつつ、ペラペラとページをめくってくれたらいいかなと思います。そんな気楽な本ですよ。

─菅野さんの生活と、土とのふれあいがよく描かれていますね

 人々は長い間、畑や田んぼに堆肥をまき、土の栄養分を使い尽くすことなく暮らしてきました。小さな日本の中で農業を通して人々が暮らせた背景には、こうした土との持続的なつきあいがありました。

 今は土が疲弊しています。作物を育てる農業に必要な資源は土。土なくして私たちは生き続けることができません。土は私たちだけでなく、はるか未来に向かって種を撒き続けていく人々との共有資源です。しかし今、最小のコストで最大利益をあげようとする農法のなかで土の使い捨てが繰り返され、まさに枯渇しようとしてると思います。

─農家人口の減少や高齢化などの問題が山積しています。未来の農業には何が求められますか?

  これからの農業の母体となるのは「暮らしとともにある農業」だと思います。
 「暮らしとともにある農業」は家族農業です。家族といっても血縁関係とは限りません。NPOや人々の寄合も含めた「暮らし」を中心とした家族"型"農業です。暮らしがある以上、そこには子どもや孫がいます。子ども達を常に見ながら畑を耕し土と関わっていけることがいいと思います。そうすれば自然に、土の持続性を考える農業になっていくにちがいありません。

(文責・構成:《THE JOURNAL》編集部)

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 『玉子と土といのちと』は創森社より好評発売中です。ぜひ一読下さい。

【関連記事】
■菅野芳秀:夢の続き (よろんず)
http://www.the-journal.jp/contents/yoronz/2010/05/post_75.html

■高野孟の遊戯自在録006(高野孟の「極私的情報曼荼羅」8月21日に著書紹介あり)
http://www.the-journal.jp/contents/takano/

【関連映像】

(「土はいのちのみなもと」by zachoice)

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【プロフィール】菅野芳秀(かんの・よしひで)
1949年生まれ。養鶏農家を営む一方、山形県長井市の全世帯を巻き込んだ生ゴミ・リサイクルのシステム「レインボー・プラン」を実現。著書に『土はいのちのみなもと 生ゴミは よみがえる』(講談社)

2010年9月18日

[記者レク]郷原信郎:村木厚子さんへの無罪判決で裁判所が検察批判をしなかった理由

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 16日におこなわれた、郷原信郎(名城大学教授・弁護士)氏による定例記者レクです。その中で、村木厚子さんの無罪判決で、裁判所が検察批判をしなかったことについて郷原氏が述べていますので、テキスト化しました。

2010年9月16日、名城大学コンプライアンス研究センター
構成・文責:《THE JOURNAL》編集部

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郷原信郎氏(名城大学教授・弁護士)
「この判決は裁判官が検察に投げたインコースギリギリのクセ球」

 村木厚子さんへの無罪判決についてですが、無罪という結論は予想外でもなく、当然の結果です。それよりも私が関心があったのは、裁判官がこの判決の中でどこまで検察批判をするのか、検察の捜査に関する問題がどこまで指摘されるのか、ということでした。

 そこで200ページ以上にわたる判決文を読みましたが、どこにも検察批判らしき文言はありませんでした。全体として、淡々と検察官側の証拠と弁護人側の指摘する証拠との信用性比較、証拠評価を行っています。その結果、村木さんの犯罪を証明するだけの証拠がないといういう結論を淡々と導いている。いささか拍子抜けをしたようなところもありました。検察官請求証拠の却下決定の時も検察の捜査手法の問題をいろいろと指摘されていましたので、これまでの経過を考え、検察が勝手にストーリーを積み上げ、それに合う調書を無理矢理取ろうとしたことに問題があると思っていました。なので、その部分への指摘がまったく出てこないというのは物足りなさを感じたわけです。

 裁判所がこういった冷静で客観的な判決を下して、検察批判をしなかった理由には2つ考えられます。

 一つは、検察と裁判所の関係に配慮して、検察を刺激したくなかったということ。いままで特捜が起訴した事件はほとんど有罪だったわけで、たとえ一審で無罪でも控訴審でひっくり返る。その意味で、裁判所は特捜の事件に対して検察に甘く、今回もそうだったということです。これが一つ。

 もう一つは、検察批判を控えた判決の方が検察を控訴断念に持ち込む上で最も効果的で、戦略的にベターだと考えたという可能性です。判決の最大の目標について「一審で確定させたい」という強い目的意識から、淡々と証拠評価をするだけにとどめた。それ以外のことは一切書かなかい。その方が検察からケチをつけられて反発される余地もなく、検察も控訴しにくくなるというのがもう一つの可能性です。

 問題はどちらがメインの目的なのかということですが、もちろん、第一の理由もある程度考えられていることは否定できないと思う。従来の検察と裁判所の関係から考え、裁判所としては必要以上に検察を刺激したくないという配慮が働いていることは間違いない。

 しかし、私は第二の理由が重要ではないかと考えています。検察の立場に立って考えたとき、この淡々と、本当に冷めた筆致で200ページも書かれた判決文を見て、「控訴趣意書を書け」と言われるとつらい。これまで村木さんの事件に関する本も出ていますが、新聞でも書かれているように「検察が思い違いしていた」「捜査経過が不自然」という点を指摘すると、証拠そのものではなくて捜査に関わる問題となります。そこのところは、自分たちの(捜査方法という)テリトリーの問題ですから、検察からの反論が可能なのです。

 検察批判を徹底的にした例が(日歯連ヤミ献金事件の)村岡兼造さんに対する判決ですが、ああいう判決は検察から批判される余地がある。それで高裁で見事に逆転されてしまった。そういう意味では、主観的な要素をいっさい排除し、冷めた目で検察の証拠と弁護側の反証を比較し、公判の証拠と検察の証拠とを比較して「無罪」と言われた方が検察にとってはこたえる。控訴するのも大変だと思います。

 そう考えると、この判決を「検察との勝負を避けた敬遠気味のボール」と見るか、あるいは「インコースギリギリを狙ったクセ球」とで見方が分かれると思います。そこは私は、裁判所がむしろ「検察にとって一番打ちにくい球を投げた」と評価しています。たしかに、もっと検察批判をしてほしいという気持ちはありますが、控訴されないことを優先したときには、こういう判決の書き方もあるのだろうと思います。

2010年9月17日

《録画放送中》「無縁社会」から「人と人をつなぐ」社会を目指して~孤独死年間3万人時代に私たちができること~

 孤独死をテーマにしたシンポジウムが本日開催されます。《THE JOURNAL》ではその模様を生中継します。(パネルディスカッションは14:50〜)

 NHKが今年1月に放送した番組「無縁社会」は、ひとり誰にも看取られず孤独に死んでいく高齢者の方々の姿がブラウン管に映し出され、若い世代にも「未来の自分の姿だ!」と衝撃を与えました。

 現代社会では少子高齢化が急激に進み、血縁・地縁・社縁の崩壊も加速しています。もはや「孤独死」は他人事ではなく、世代を超えて誰の身にも起こりえる可能性があります。

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 しかし、「いざ」という時、私たちには誰か頼れる人がいるのでしょうか?

 孤独死を考えることで、生と死、日本のこれからについて、皆様と共に考えてみたいと思います。

【詳細】
<時間>
14:50~17:00 パネルディスカッション

<パネリスト>
北九州市立大学法学部政策科学科教授:楢原真二
雑誌「百歳万歳」編集長:植松紀子
トーコー商事株式会社代表取締役:肘井哲也
在宅看護研究センターLLP代表:村松静子
患者の生活・就労をつむぐ会代表:山本 創
東日本国際大学福祉環境学部准教授:菅野道生
コーディネーター:
中下大樹(いのちのフォーラム代表・明治大学講師)

<主催>
いのちのフォーラム・NPO法人 人と人をつなぐ会

なお、プログラムなど詳細は、下記HPをご覧ください。
http://www.inochi.or.jp/forum.html

鈴木宗男議員からのメッセージ

すでに、最高裁が異議申し立てを棄却し、実刑(懲役2年・追徴金1,100万円)が確定した鈴木宗男議員ですが、9月15日にお会いし、メッセージをいただきました。

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先日、読者のみなさんからは数多くのコメントをいただきましたが、責任をもって、鈴木議員にお届けします。

《あなたの声を鈴木宗男さんに届けます》最高裁が鈴木宗男衆院議員の上告を棄却 実刑確定へ
http://www.the-journal.jp/contents/yoronz/2010/09/post_82.html

※この映像は9月15日午後1時15分頃に撮影したものです。

【インタビュー】玉城デニー:菅政権に普天間問題は1%も期待していない

「小沢氏587票、菅氏212票」(※)

沖縄県の党員・サポーター票は、小沢氏への支持で固まっていた。「日米合意を踏まえて沖縄の負担軽減に全力を尽くす」(代表選直後の菅首相の記者会見)という3ヶ月間変わらない菅政権の基地政策に対して、沖縄は「ノー」を突きつけた。

菅政権はこのメッセージをどう受け止めるのか。

12日の名護市議会選挙では基地移設反対派が圧勝し、市長と市議会による「反対」スクラムが組まれることになった。名護市の現状や、11月に控える沖縄県知事選に向けた民主党の動きについて、名護市を選挙区に持つ玉城デニー衆院議員にインタビューした。

玉城氏は「菅政権に普天間問題は1%も期待していない」と批判し、今後菅政権に期待することや、問題に対する自身の取り組み方についても語ってくれた。

※沖縄1区:121vs 44 同2区:88 vs 39 同3区:237 vs 44 同4区:141 vs 85(代表選後に配布されたサポーター得票数一覧より。票数はすべて小沢氏、菅氏の順)

■【第24回】政治家に訊く:玉城デニー
http://www.the-journal.jp/contents/politician/2010/01/24.html

[記者レク]郷原信郎:民主党代表選の勝敗を分けたのは?

昨日16日におこなわれた、郷原信郎(名城大学教授・弁護士)氏による定例記者レクです。

その中で、民主党代表選について述べられていますので、ノーカット配信します。

2010年9月16日、名城大学コンプライアンス研究センター:《THE JOURNAL》編集部撮影

2010年9月16日

"小沢神話"は終わった ── 民主党代表選の結果

takanoron.png 14日に行われた民主党代表選は、大方の予想に反する大差で菅直人首相の勝利に終わった。何よりも予想外だったのは、国会議員票で菅が412票(206人)を得たのに対して小沢一郎前幹事長が400票(200人)に止まったことである。それが僅差だったことを以て、小沢側近からは「党内をほぼ二分する健闘を示したのだから菅も小沢を無視できまい」とする強気の意見も漏れ伝わるが、それは戯れ言で、国会議員票で小沢が菅を上回ることが出来なかったのは、ほとんど致命的な敗北である。

 考えても見よう。党内最大の小沢グループ150人、早々に小沢を支持した鳩山グループ50人と羽田グループ20人を合わせれば、それだけで220人で、緒戦段階ですでに過半数を制している上、輿石東参院議員会長や赤松広隆元農相ら旧社民党系の過半や松木謙公など旧民社党系の一部も小沢支持である。もちろん、同党のいわゆるグループは、カネとポストで結束するかつての自民党の派閥とは違って、勉強会に出席する登録メンバーにすぎず、1人で2つ3つのグループに属している者もいるようなまことに緩やかなものだが、それは菅支持の各グループとて同じことで、差し引きトントンというところではないのか。

 加えて、選挙での虱潰しの組織工作には練達している小沢陣営のことであるから、投票の1週間ほど前だったろうか、山岡賢次副代表が「小沢支持が[国会議員の数で]50人以上、上回っている」と豪語するのを聞いても、「たぶんそのくらいの開きがあるのだろうな」と思っていた。

 山岡が正しいとすると、国会議員票はおよそ230人(460票)対180人(360票)になるから、それから逆算して、地方議員票50:50、党員・サポーター票100:200くらいになると想定して両者610票前後で拮抗、どちらが勝ってもおかしくないというのが私の事前判断だったし、実際に前日まで両陣営の要所のどちらに聞いても「本当に分からないんですよ。国会議員票で小沢が上回るのを菅が地方票でどれだけカバーするのか、いずれにしても51:49といった僅差で、どちらが勝ってもおかしくない」とのことだったので、私は内外メディアからの取材にそのように答えていた。

 開けてみればこの結果で、これがもし小沢が負けはしたけれども国会議員票では菅を上回っていたということであれば、菅側としては、小沢自身を実権あるポストに処遇し、まさか幹事長を渡すわけにはいかないけれども、まあ小沢が我慢できる中間派の誰かを据えると言った妥協策を講じなければならなかったろう。しかしこれで少なくとも小沢自身に関しては、(「最高顧問」への就任を要請し、小沢が断るという手順を踏んだ上で、結果的にそうなったという形をとって)「しばらく静かにしていて頂く」ことになるのではないか。

●狭義の「政治とカネ」の問題

 党員・サポーター票が大きな差となったのは、300選挙区ごとに総取り方式を採っていることによるもので、実数は、地方議員票と同様、菅が小沢の1.5倍を得ているに過ぎない。しかし、それにしても小沢がこの壁を突破できなかったのは、「政治とカネ」の問題について党内・支持者・国民に対する「説得責任」を果たしてこなかったからである。

 検察に対する「説明責任」ということであれば、彼はこれまで充分に果たしてきたし、検察審査会の再議決を前に4度目の聴取を請われればそれにも応じるつもりだろう。この件に関して説明責任が問われるのはむしろ検察とその言いなりで悪質報道を垂れ流してきたマスコミである。とは言え、だからといって小沢がただ「検察が散々調べて不起訴と言っているのだから、私にやましいところはない」とだけ言い放っていても、ならば秘書と元秘書が起訴されたのは検察が正しかったのかということにもなってしまうし、一向に国民の胸にわだかまる疑念を晴らすことにはならない。

 本論説が繰り返し述べてきたように、いくら捏造と歪曲によって作られたものであっても世論は世論なのであるから、それを小沢と民主党政権にとっての所与の環境と見据えて正面から突破する作戦を採らなければならなかった。それには小沢は記者会見を開いて、問題とされた土地の購入にまつわる資金の出し入れと帳簿への記載について自分の言葉で余すことなく説明し、何時間でも質問に応じ、もう明日から誰もこのことを話題にもしなくなるというところまで、完全にケリをつけるべきだった。が、実際にはそれをせずに、本論説などの「小沢辞めるな!」の叫びを無視して疑似世論に屈し、昨年は代表を、今年は幹事長をと2度までも辞任し、そしてまた今回は敗北した。

 仮に今回、小沢が勝って首相になったとしても、その問題にケリをつけていない以上は、状況は同じかもっと悪くなるはずで、それが分かっているから彼は最後まで立候補をためらった。彼が出馬表明をしたのは8月26日だが、その前日にこういうことがあった(9月1日付読売)。

「出馬表明前日の25日夕、小沢氏はひそかに衆院第2会館にある旧民社党系グループの田中慶秋衆院議員の部屋を訪ねた。『今は出るべきではない。"政治とカネ"の問題は予算委員会で追及されるし、(参院で)問責決議が可決したら、衆院解散に追い込まれますよ』と助言する田中氏に、小沢氏は『よく分かっている』と慎重な面持ちで答えた。そして『民社党系グループで、誰か代わりに擁立してもらえないだろうか』と続け、ある議員を名指しして調整を要請した。結局、名指しされた議員が拒否し、この構想は幻に終わった」

 小沢が名指したのが川端達夫か中野寛成か松木謙公か誰かは分からないが、ともかく彼は自分で出たくなくて、最後の最後までダミーを立てようと足掻いた。同じ読売記事によると、30日に小沢は連合幹部からの電話に答えて「若い連中がヒートアップしてしまっているので、のっぴきならないのかな、という感じだ」とも言っている。

 この問題に足を取られていつまでもそんな思いをするくらいなら、なぜ小沢は自分できっぱりとケリをつけなかったのか。私は小沢の信者ではないが相当な理解者だと思っているけれども、このことばかりは終始、理解不能である。

●広義の「政治とカネ」の問題

 以上は、狭義の「政治とカネ」の問題である。が、それとは相対的に別に広義の「政治とカネ」の問題があって、それは「政治文化」ということに関わっている。

 狭義の「政治とカネ」問題、すなわち陸山会事件には、小沢本人はもとより秘書や元秘書も逮捕されたり起訴されたりしなければならないような違法な事実はなく、村木局長事件と同様、検察によるデッチ上げである。しかし、陸山会とその活動そのものは架空でも何でもなく、小沢の"剛腕"を支える実体構造である。小沢が個人で建設業界など企業から巨額な献金を集めて、書生まで含めると50人に及ぶとされる秘書軍団を抱え、それらを住まわせるマンションだかアパートまで所有して育成し、いざ選挙となればそれらを選挙活動や組織工作のプロとして自派候補の重点区に投入して当選を確実にして勢力を拡大していくという、まさにかつて自民党内で猛威をふるった田中角栄軍団のそれと瓜二つの仕掛けを、我々はこの一件を通じて垣間見ることになった。

 加えて「組織対策費」の問題がある。そのようにして勢力を拡大してやがて党首や幹事長のポストを握るということは党財政を握るということであり、そうすると今度は、個人や派閥のカネだけでなく党のカネの一部をも「組織対策費」という名目で裏に回して、党首もしくは幹事長の裁量で誰にも妨げられることなくダイナミックに活用してますます党内権力基盤を固めていく。小沢は自民党を離れて以降も一貫してこのやり方を続けてきていて、報道されただけで自由党時代に35億円、新進党時代に41億円、民主党代表になった06年から今年6月までに36億円という「組織対策費」を操っている。

 そこに貫かれているのは、政治とは力であり、力とは数であり、数とは詰まるところカネであるという田中角栄由来の明確な政治哲学である。「当たり前だ。何が悪いんだ。民主党のヒヨコどもに何とか政権を獲らせるために小沢が全部自分で引っ被ってやっているだけのことじゃないか」という声が聞こえてきそうで、それはそれで民主党の現実を見れば一理あるのだが、敢えて奇麗事を言えば、これはいかにも旧態依然の「古い政治文化」であって、民主党に限らず日本の政治がいつまでもこういう手法に頼らなければ動かないということでいいのかどうか。党のカネをダイナミックに動かし、選挙や組織工作の(昔風の言葉では)「オルグ」機能を持ったプロを育てることも必要だが、それは近代的な組織政党として当然やるべきことであって、誰か特別の剛腕者個人に託さなければならないことではない。

 鳩山由紀夫前首相が辞任に際して小沢を道連れにした上で「クリーンな民主党に戻したい」と言ったのはそのことであり(しかしこの辞め方は正しくなかった)、また後を継いだ菅が「1つの時代を築いた小沢氏をこれからも頼っていくのか、みんなで1つの時代を乗り越えていくのか、時代の節目に立っている」と語ったのもそのことである。小沢はそれに怒り、幹事長ポストを取り戻そうと謀り、それに失敗して自ら立候補せざるを得なくなり、そして敗れた。ということは「1つの時代」が確実に終わり始めたのである。

●小沢一郎という矛盾

 考えてみれば、小沢一郎も矛盾に満ちた存在である。共同通信の西川孝純=特別編集委員が「拝啓小沢一郎様」という今回代表選の後のコメントで引用していたので思い出したのだが、私も親交があった故早坂茂三がよく「小沢一郎の悲劇」という話をしたものだった。西川は、小沢がこの20年間、常に政局の舞台回しを演じてその存在感で右に出る者はなく、昨年の政権交代もその手腕によるところが大きいと述べた上で、次のように言う。

「あなたの政治の師である田中角栄元首相の秘書だった早坂茂三氏(故人)の著書に『政治家は"悪党"に限る』があります。同氏は『日本の政治家で職人と呼べるのは小沢一郎だけだ。だが、これは悲劇だ。他に誰もいないため、52歳の一郎がキングコングのように虚像化され、実体以上に騒がれ、冷酷、非情、金権という目で見られている』と書きました」

「68歳になった現在まで、あなたを取り巻く状況は変わっていませんね。実像を伝えきれないのはマスコミの努力不足であり、さまざまな局面で説明を怠ってきたあなた自身の責任でもあります」

 その通りで、小沢が政局を動かす職人的達人であることは確かだが、その剛腕ぶりが実像以上に虚像化されて、彼を非難する者は「諸悪の根源は小沢だ」と言い、賛美する者は「小沢が立てばすべてがたちまち解決する」かのごとく言うけれども、実はどちらも同じ虚像を反対側から見ているに過ぎなかったのではないか。小沢自身は、自分自身について言われているいいことと悪いことの全部とは言わないが少なくとも半分は神話であることを熟知していて、だからこそ自民党時代も民主党時代も、進んでNo.1の座を獲りに行くよりもNo.2にいて裏で操ることを選ぼうとしてきたのではないか。今回、周知のような経緯で広義の「政治とカネ」の実体構造までが露頭し始めたこともあって立たざるを得なくなり、ということはしかし、自らNo.1となればよくも悪しくも一層その実体を晒さなければならないということであり、そこに最後の最後まで彼が立候補をためらった理由があったのではないか。

 小沢神話は終わっても、もちろん政治家=小沢はまだ終わらないし、周辺には「どうせ菅は長くもたないから次のチャンスを待とう」という考えが強い。上述の西川は「あなたのキャリアと知見は貴重です。負けた悔しさをぐっとのみ込み、菅さんを支えてこそ大政治家です」「融和のために率先して小沢グループを解消する度量をみせてほしい」と勧告するが、なかなかそんなふうには収まらないのが小沢である。かと言って、グループを率いて反主流化して菅下ろしを仕掛け、再び小沢が立って敗れれば党分裂、政界再編成......といった『日刊ゲンダイ』あたりが大好きなドタバタのシナリオは、国民の多くはうんざりで、見たいとは思っていない。その狭間にあって、しかも菅率いる民主党が「小沢が築いた1つの時代を乗り越えて」行こうとする"脱小沢"ならぬ"超小沢"の方向へと布石を打ってくるのを眼前にして、小沢は果たしてどう次の一手を編み出すのだろうか。▲

2010年9月15日

田原総一朗×高野孟:民主党、今後の動きは?

9月14日に決着した民主党代表選。

様々な見方がされたが、結局は491ポイント VS 721ポイントで菅直人氏が再選するという結末に終わった。

これから注目されるのは、小沢前幹事長の処遇や、野党との連立に関する動きだろう。

高野孟が田原総一朗氏に訊く!

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高野:代表選の結果、ひと言でどうですか?

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田原:菅さんが勝つと思っていたけれども、国会議員票では小沢さんが勝つと思っていた。でも実際は菅さんが勝った。これはとても予想外だった。これはポイントです。国会議員票で菅さんが勝ったということは、これからの民主党のあり方に大きな影響を与える。極端に言うと、幹事長をどうするかということ。

小沢さんが上回っていたら幹事長は小沢さん寄り、もしくは小沢派に近い中間派からだと思っていた。けど、(今回の結果を踏まえると)菅支持派から幹事長は選ぶと思う。岡田さんみたいなね。それで国対委員長を中間派から選ぶと思う。もしくは旧民社党グループ。旧民社党は小沢派だったのに、仙谷が(小沢支持を)割った。だから、旧民社党から(菅支持に)来てくれた御礼の意味も込めて旧民社党から出すかもしれない。

高野:小沢さんはどうするでしょうかね?

田原:菅さんはおそらく、例えば最高顧問という名誉職を進呈しようとしていると思うけど、小沢さんは受けないし、菅さんは「受けてくれないのが最高」と思っている。

高野:確かに、渡部恒三さんも、「小沢君も鳩山君も僕も最高顧問として一生懸命働けばいいんだ」なんて言ってますね。

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田原:渡部さんは最高顧問じゃないからね。小沢さんに降ろされたんだよ(笑)。

高野:立候補のときに、菅さんから最高顧問会議の話なども出ましたけどね。

田原:小沢さんは冗談じゃない、と断っています。

高野:それは受けないですね。まだ終わってない、ということです。そうなると、いずれ行き詰るであろう菅内閣。小沢さんがもう一度出てくる機会はありますかね?

田原:菅内閣の問題は、予算。それも、本予算ではなく予算関連法案だね。本予算は衆院で通せばいいけど、予算関連法案は参議院を通さないといけない。だから民主党としては、部分的に自民党や公明党などの野党と組むしかない。

でも、これを先に小沢さんが組んでしまうかもしれないね。組んで(関連法案に対して)反対。

高野:そうするとたちまち政局になりますよ。党内闘争ですからね。共同通信の西川さんという特別編集委員は「拝啓 小沢一郎様」という記事で、「ここで小沢さんが菅さんを支えるようだったら大政治家だ」と書いていました。

田原:そんなことはない。そんなのは期待だよ。それで収まればこんなに長く小沢の時代は続かなかった。ヘタをすると、小沢が離党して(自民党と組んで)谷垣総理の誕生、なんてことも考えていると思う。

高野:それ、自民党にとって得なのかな?

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田原:谷垣総理なら悪くないんじゃないかな(笑)。でも、そうしないと小沢らしくない。

高野:まだ離党の可能性あるのかな......。そうすると民主党から30~40人くらい連れて行かないといけないですね。

田原:当然、発想の1つとして考えている、ということ。でも、小沢・鳩山グループは210人以上いたのにあの国会議員得票数。裏切ったのがいた、ということだね。

高野:大量の裏切りがあったということですね。これまでなら、その裏切った人間を側近たちが調べて歩く、みたいなことになる。

田原:朝、石井一さんがテレビ番組で「おとといまで菅さんが負けていたけど、最後の日になって6~7人逆転した」と言っていました。

高野:山岡さんは1週間前まで50人くらい差がある、と豪語していましたね。

田原:あれはPRだからね(笑)。いずれにしても、国対委員長と幹事長の人事が焦点だね。

text by Infoseek 内憂外患

2010年9月14日

《録画放送中》菅直人 vs 小沢一郎 決戦の日!

【ニュース】
14日に行われた民主党代表選挙で、菅直人代表の再選が確定した。

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■臨時党大会 録画放送中

《配信:民主党本部》

■党大会終了後に行われた菅直人代表の記者会見
http://www.ustream.tv/recorded/9562887

2010年9月13日

[内憂外患特別企画]拝啓 民主党代表選候補者様~子ども手当て編(2)

 9月14日に行われる民主党代表選。事実上、次の首相を決める選挙だが、有権者すべてが参加できる選挙ではない。この制度に異論・反論はあるが、現在の仕組みではいかんともし難いのが現実だ。そこで、Infoseek 内憂外患編集部では、毎週実施している2,000人への世論調査に加え、次のような質問を実施した。

*  *  *  *  *  *

 Infoseek 内憂外患では、「拝啓 民主党代表候補者様」と題した記事を企画しています。みなさんの日頃の生活に根ざした「リアルな声」を届けたいと考えています。あなたが新しい首相に対して、「今度の政権でこれだけはやってほしい!」または「これだけはやらないでほしい!」など、みなさんの声を、菅・小沢両候補者に手紙を書く気持ちでお寄せください。

*  *  *  *  *  *

 任意フリーアンサー方式(書いても書かなくても良い、という回答形式)の質問に対し、ほぼ2,000人全員から意見をお寄せいただいた。お忙しいところご参加いただいたことを深謝し、今回の質問の趣旨により近いものを抜粋して紹介したい。

今回は、「その(2/2)」です。

●どこのお宅も同じだと思いますが、毎日毎日頑張っています
 わたしは中学生・高校生の子供を持つ母です。このところの不況で主人のお給料は100万ほど減り、パートにでたくてもなかなか採用されず、受験生の高校生の娘の進路も主人の会社の先行きも心配でなかなか家計も今年の夏のように厳しく少ない蓄えをも切り崩しつつ、どこのお宅も同じだと思いますが、毎日毎日頑張っています。

 国を動かす国会議員のみなさまも同じように大変だと思いますが、議員さんに当選されると同時に、選挙の時の苦しさや国民の声も忘れてしまうのでしょうか?

 豪華な会館や立地条件に似合わないくらいの宿舎・簡単に入れる保育所など、わたしたち庶民とはかけ離れた環境で、庶民の生活のことを考えられるとは思えません。

 議員のみなさんは事務所費や秘書をやとったりと、私たちにはわからないくらいの費用がかかるのかもしれません。でも大きなお屋敷にお住まいになり、たくさんの不動産を所有されておられる方もたくさんおられますよね。そんな方々に庶民のくらしの細かいことまでわかるわけないと思います。

 その不動産をお買いになるぶんのお金でもっと困っている方に寄付されたり、学校や施設などに役立ててくださる方はおられないのでしょうか?学校では子供たちに配るプリントの用紙にも困って、裏表印刷したり、新しい本が図書館にいれられないで困っているという事情もあるんですよ。

 料亭やバーなどでお金を使えるんだったら、ちょっと歳費を縮減してそちらのほうに予算をつけてくださらないと、みなさんのような立派な学識をもった大人は育たないと思います。議員のみなさんのお子様方は小さいころからしっかりとした教育をつけていらっしゃるんでしょう?国民の不公平感を少しでも軽減してくださる方の登場を心から望んでいます。どうか、いち公務員として、自分の幸せより、国民ひとりひとりの幸せを考えてくださる方にこの国のほんとうのトップになっていただきたいと思います。

●子供を持ちながら再就職が可能なのか
 2人の子供の母親です。子供手当、ありがたいと思います。代わって、配偶者の扶養控除が無くなっても、筋が通っていると思います。育児に余裕ができたら、働かなくてはな、と思えます。

 理想としては、主人と子どもに「いってらっしゃい」を言って送り出した後に、勤めに出ても、ちゃんと子供を「おかえりなさい」と迎えてあげられる、というスタイルで働きたいです。なにより家庭第一で、ちゃんと仕事もできるという環境に、現状なっているのでしょうか?退職して9年目になる身としては、子供を持ちながら再就職が可能なのか、不安に思っています。

●今の庶民の状況を本当にわかっていらっしゃいますか?
 歯科の勤務医です。保険点数の改悪とともに昨今の不況のあおりを受けて、歯科業界は青息吐息の状態です。ウチはまだ地域でも「老舗」の部類なので、なんとかもってますが、ご近所では廃業する医院も出てきました。

 直接、生命にかかわることのない歯は、痛みさえとれればどんどん後回しになっていきます。患者さんのなかには「お金ができてからでもいいですか?」などと、こっそり訊く方もいらっしゃいます。

 歯や口腔はQOLを落とさないために最低限必要な器官だと考えます。その改善や修復を後回しにするということは、QOLに多大な悪影響を及ぼすということです。気が付いたら、他の臓器にまで弊害が及んでいた、ということがおこっても不思議ではありません。

「食べていく」ために働いてお金を稼ぐ。当たり前のことです。でも働きたいのに働けない、働いてもお金にならない、といったケースは特に私の住んでいる地方都市ではまま見受けられることなんです。そのために「生活の質の向上」は後回しで、とりあえず食べることに目を向けざるを得ない、今の庶民の状況を本当にわかっていらっしゃいますか?

 首相が誰か、ましてや民主党の党首が誰かなんてはっきり言って興味はありません。極端な話、「日本」という会社の経営者が誰であろうと、今の閉塞感から脱却できるのであれば、宇宙人でもかまわないとさえ思います。

 政権をとるとかとらないとか党首になるとかならないとか、そんなことより大事なことが山ほどあると思うのに、民主党になっても国民の声は届かないのか、と残念です。かといって、他政党に政権が移ってもそう変わらないでしょう。

 せっかく与党になったのなら最低限失望させないでください。「やっぱり自民党と一緒か」と思うことほど、歯がゆいことはないんです。

●フルタイムでの共働きでは苦労する
 子どもを保育園に預け共働きしているが、同じような子育て中の友人の中では働きたいけれど、保育園が待機児童になっており働けない。

 保育園に預けて働いても、保育料が高くて収支が悪い。保育園の対応時間が短く、フルタイムでの共働きでは苦労するなどの現状があり。子ども手当ての拡充もよいが、政治家がわからない庶民の目線での本当に困っていることの改善を望みます。

●給食費の未納生徒が多く毎夜集金に悩まされている
 私の娘はマンモス中学校の栄養士をしている。給食費の未納生徒が多く毎夜集金に悩まされている。子供手当てを個人に出すのならば、給食費などに当てるとかしてほしい。子供手当てを貰っているにかかわらず、今の親は学校に出すべきお金を出さない人が比較的目立つ。子供手当て等出すべきではない。

●本当に底辺で生活している人の生活はご存知ですか?
 日本を変えるといって変化しないまま過ぎている気がします。本当に底辺で生活している人の生活はご存知ですか? 少子化対策をするのであれば、未婚の母として生活している人をもっと保護するべきです。

 ちゃんと所得を申請できないような仕事をしている人が大半です。未婚だろうが既婚だろうがこどもは国の宝です。手当てを増やすのではなくて、お金がかからないようにしていただきたい。私利私欲ばかりの政治家だらけでうんざりです。

●拝啓 民主党代表候補様
 私は40歳で子供を産みました。現在、子育てと、親の介護で板挟みです。少しでも、この状況が改善される様願っています。

●子供を産み、育てる環境の整備を進めて欲しい
 少子化対策として、「こども手当」という名のお金のばら撒きではなく、待機児童数の多い地域での認可保育園の増設、任意接種のワクチン(小児肺炎球菌、Hib等)の接種費補助、出産一時金の増額(値上げはされているが、それに伴い産科の出産費用の値上げがされているため産婦には何の意味も成さないので)など子供を産み、育てる環境の整備を進めて欲しいと思います。

 国内居住の外国人に参政権を与えるのは日本が日本でなくなるので絶対にやめて欲しいと思います。

●朝食はビスケット2枚、夕飯はカップラーメン
 教員をやっています。子供手当てがどのように使われるかはその家庭しだいだとは思いますが、学費、子供の食事など子供に使われるようにしてほしい。

 実際、親の酒・タバコ代に消え、朝食はビスケット2枚、夕飯はカップラーメン。これでは子供の生育に問題が出てしまうと考えます。私の勤務する学校に通う生徒は長男であり、学校を辞めて働かなければならないとまで考えてしまっています。このような子供がいることを忘れないでほしいです。

●子供たちはサービス業の道具ではない
 私は保育園に勤務している。今厚生労働省は保育の根本を改正しようとしている。公的責任をなくし各保育園自由に競争してくださいというものだ。厚生労働省は親は自由に保育園を選べるし規制を緩和し待機児童を減らせるとしているがはたしてそうだろうか?

 子供たちはサービス業の道具ではない。国が子供たちの責任をおえない国に未来はあるのか?

 同じような制度に高齢者私設があるが国が管理していたころとくらべ格段によくなったのか?結果は要介護度の低い人はほとんど入所できていない。お金持ちだけが優遇される。それは当たり前のことで企業はお金を稼ぐために会社をしている。だからお金がより入る人をいれたい。やはり子供たちは国がしっかりとセーフティネットを引き。一番困っている生活保護、母子家庭、障害児の家庭など一番弱いひとたちをたすけるために尽力してほしい。

 あなたたちはコンクリートから人へといっていたではないか。子供たちのために多くの予算をつかってほしい。日本は先進国で子供にかける予算は韓国につぎ下から2番目である。未来の日本をささえる子供たちに予算をつかってください。

●いつか自分も虐待に走るんじゃないかという不安も常にあります
 3歳の息子を育てしながら、在宅ワーカーしている主婦です。保育料が高すぎて子供を預けることもできず、正直寝る時間もないです。家事育児仕事に追われ、いつか自分も虐待に走るんじゃないかという不安も常にあります。せめて、週に一日でも無料で預かってもらえれば家事と仕事もはかどるのに。

 無駄な財団など、早急に売却処分して下さい。そしsて、国会議員の給料と選挙システムの見直しをして下さい。国会議員のみなさん、お金もらいすぎです。選挙にお金使い過ぎです。

 公共の電波やネットを平等に利用した活動に限定して、政党助成金など不要なシステムにして下さい。お金持ちしか政治家になれないようなシステムは早急にやめてほしいです徹底的に無駄を省いて、子供手当はせめて一人5万円まで出してほしいです。そうなれば、安心してもう一人生んでもいいかなという気持ちになれます。

●待機児童が減るように対策を打ってください
 育休を取得して子育て中のママです。今度の政権では今後の保育園待機児童対策をどうするかを早急に決めていただきたいです! こども手当増額しなくてもいいので、待機児童が減るように対策を打ってください。よろしくお願いします!

●先生方が気を使いすぎているように感じます
 子供が小学生です。最近の小学校は、問題が起こらないようにと、先生方が気を使いすぎているように感じます。保護者説明会では「○○してください」ではなく、「できるだけ○○してくださるようご協力お願いします」とおっしゃいます。新政権ではもう少し自由に子供を指導できる環境を作って欲しいと思います。

●恒久に安心して一生を送れるような日本にしてください
 4月に出産を終えた一児の母です。主人はバスの運転士ですが、同じ仕事内容をしていても雇い主(市の職員か民間か)によって、条件や収入に大きな格差があります。世間では、公務員の給与が高すぎるなどと言われていますが、公務員の給与カットもされている現代、彼らの労働条件、給与基準が本来の正当な報酬だと思います。

 その削減に目くじらを立てるより、民間の生活水準を上げるような努力をしてほしい。もちろん、私たちに見えない部分に、多大な無駄がはびこっていると思います。本当の無駄は徹底的に一律排除し、子供手当などの一時的な政策ではなく、恒久に安心して一生を送れるような日本にしてください。子供だましは、腹が立ちます。気持が冷めます。

text by Infoseek 内憂外患

[内憂外患特別企画]拝啓 民主党代表選候補者様~子ども手当て編(1)

 9月14日に行われる民主党代表選。事実上、次の首相を決める選挙だが、有権者すべてが参加できる選挙ではない。この制度に異論・反論はあるが、現在の仕組みではいかんともし難いのが現実だ。そこで、Infoseek 内憂外患編集部では、毎週実施している2,000人への世論調査に加え、次のような質問を実施した。

*  *  *  *  *  *

 Infoseek 内憂外患では、「拝啓 民主党代表候補者様」と題した記事を企画しています。みなさんの日頃の生活に根ざした「リアルな声」を届けたいと考えています。あなたが新しい首相に対して、「今度の政権でこれだけはやってほしい!」または「これだけはやらないでほしい!」など、みなさんの声を、菅・小沢両候補者に手紙を書く気持ちでお寄せください。

*  *  *  *  *  *

 任意フリーアンサー方式(書いても書かなくても良い、という回答形式)の質問に対し、ほぼ2,000人全員から意見をお寄せいただいた。お忙しいところご参加いただいたことを深謝し、今回の質問の趣旨により近いものを抜粋して紹介したい。

今回は、「その(1/2)」です。

●諸手を挙げて賛成できません
 40代独身女性です。子育て支援のことについて皆さんいろんなご意見をお持ちだと思います。確かに少子化に至った原因の1つに育児への負担が大きいことは理解できます。

 ただ、現金で解決できることだとはおもえません。親の手元に渡ったあと、どんな用途に使われるかわからないお金です。それが私たちの税金だとおもうと諸手を挙げて賛成できません。教育環境の充実や地域環境のために使うような政策に使っていただきたいです。

●子供手当ては早く満額支給して欲しいです
 二人の子供がいるサラリーマンですが、子供手当ては早く満額支給して欲しいです。 今後、子供達が進学していくにつれて教育費も増えていくのでお願いします。

 消費税の生活必需品以外のものへの増税は財源確保の為に必要だと思います。やっと政権交代出来たのだから自民党の長かっただめな政治を払拭して下さい。

●よい物は取り込んでいくだけの度量をもって欲しい
 子供手当てのような馬鹿げたばら撒き政策は即刻廃止して欲しい。もっと大局的に給食費を無料化するとか保育所を増やすとか、で子育て世代を応援して欲しい。

 また、無駄使いの官僚達に上手く丸め込まれることのないような優秀な人材をスタッフに入れてほしい。只人気取りの為のタレント候補のような人を立てたりしないで欲しい。自民党政権時に決められたからという理由だけで廃止したりせず、他政党の政策でもよい物は取り込んでいくだけの度量をもって欲しいです。

●義務教育以下の子供だけに支給しないでください
 子供手当を廃止してください。子供にお金が掛かるのは15歳以下ではなく、高校生からです。大学に通い勉強をしたり、資格を取得したくても金銭的に諦めている子が多いことも考えてください。

 高校生以上の子供の親は年齢的にも40代50代でリストラや倒産などに合ったり、給料を下げられたりで生活が困窮している家庭が多い。15歳以下の子供にだけ補助するのは腹が立ちます。微々たる給与から払っている税金を義務教育以下の子供だけに支給しないでください。

●中学生時代よりむしろ支出が多い
 私は3人の子供を持つ専業主婦の母親です。子どもの健やかで豊かな成長を見守りたいため第1子の出産直前で出産退職をし、以来専業です。

 財源確保のため必要なのかもしれませんが、扶養控除廃止/配偶者控除廃止は反対です。子ども手当てがマニフェストどおり満額支給されないのであればなおさら。いっそうのこと子ども手当てはいらないので、これらの控除廃止をやめてほしい。

 公立高校無償化とはいうものの、今春第1子が高校生になり授業料以外の集金がとても多くびっくりした。中学生時代よりむしろ支出が多い。この先高校~大学と、とても負担が大きいのに子ども手当ては中学生まで。児童手当時代には所得制限でもらえなかったが、同じ所得でも子どもが1人世帯と3人世帯では家計状況がまったく違うことも理解してほしい。

●託児所増やすとかに使うべき
 私は子供ナシ、パートタイマー、夫の健康保険で、130万円の枠内で働いています。この枠をもう10万くらい上げてほしい、上らない時給で働いているので、手取りが増えないと労働意欲が低下します。あと、子供手当を個人に配るのは反対、子供手当で旅行したとか、聞くと腹立つ、託児所増やすとかに使うべき。

●私利私欲は捨てて国の為に働いてください
 私には3歳の子がいます。いずれは2人目も欲しいと思っています。しかし、今の日本を見ていると子ども達の将来に明るい希望が持てません。日本という国が破綻することのないようにして下さい。問題を先送りにして、子ども達に負担を押し付けるような事はしないで下さい。

 私利私欲は捨てて国の為に働いてください。きちんと働けば生活していける、老後の保障もしっかりした国にしてください。

●素直にできない理由を正直に国民にはなし理解を得るべき
 子供2人成人してはいますがまだ学生ですし片親なので正直暮らしはきびしいです。子どもは、成長するほどお金がかかるという現状を政治家の皆さんは御存じでしょうか!

 現政党はマニュフェストにこだわりすぎて現状が見えていない気がします。今できないことは、素直にできない理由を正直に国民にはなし理解を得るべきでなにがなんでもマニュフェストという考えかたは、改めてほしい。

 また子供手当などばらまくばかりでなく現物支給(給食費等)などに充てるなどもっと有効に使える方法を考えるべきだと思います。これから就職活動をひかえるこどもたちの現状を見るにつけ日本に未来はあるのかと問いたいです。

●暑い日も寒い日も風の強い日でも安いお店を自転車でハシゴして生活している主婦です
 節約の為に値引きシールのはってある食料品を買います。暑い日も寒い日も風の強い日でも安いお店を自転車でハシゴして生活している主婦です。議員の皆様はそんな買い物行動された事ありますか?

●保育園から高校まで無償化にしたら、もっと子供が増えるのでは??
 産みたくても経済面で「もうひとりは無理...」と思っている人がいると思います。教育にお金がかからなければ(教育費にあてていた分のお金が)他の物を買うお金にまわって景気が良くなるので良いのでは?

 子供の教育費の為に働きに出る主婦(主夫)が減って、本当に働きたくても仕事がなくて困っている人に仕事が回るのでは?カギっ子が減って母と子が一緒にいる時間が増えたら会話も増えて、不安定な精神状態の子や切れやすい子が減って、働きたい人は働いてお金が稼げて...強盗や無差別殺人やらの悪い事件が減るのでは?

 暮らしやすい社会になってストレスが減ったら女性はもっと妊娠しやすい身体になるのでは?お金の面でも精神面でもゆとりのある生活の中で子供が大きくなったら働く意欲のある常識ある社会人になって税金もきちんと回収出来て、子供が増えたら回収額も増えて良い方向になるのでは??

 小手先だけの政策で国を良くしようとしても時間もお金も無駄が多すぎです。いっその事、根本から大きく変えてみて欲しいです。子供の学校に無駄なお金がかかる国なんて日本くらいなものです。

 あと、地震の国です。台風等の災害も多いです。自然の驚異には勝てません。馬鹿な事に税金を使わずに、この先も、永遠に無くならない災害...そんな時に国のお金が惜しげなく使えるように、他国にいい顔をして外国に対して大金を使わずに、これ以上、国の借金を増やさずに減らす努力をしてください。

 議員の給料も半額でも十分生きていけます。人脈関係にお金がかかると言っていますが、そもそも人材やら付き合いにお金をかけてまで政治家でいる必要はありません。議員本人に魅力があればそれだけで自然と力になってくれる人々が集まります。そんな人達が支持してくれます。議員が恨まれなければ警護に大金使わなくてすみます。立派な高い金額の公用車でなくても普通の車で移動できます。高い給料で血税を無駄にする仕事をしているから恨まれるのです。飽きられるのです。もっと透明性のある政治を!スウェーデン等を見習ってください!!!

●いよいよ生活が、成り立っていきません
 年老いた、両親をかかえ、介護の日々の為、仕事にも出れません。子供手当や高速無料化を行うために、消費税を上げられると、いよいよ生活が、成り立っていきません。子供手当を実行するなら、所得制限を設けるなり、現金手当では無く、給食を無料や、教科書、教材の無料、修学旅行の無料化等、子供に直接関連する部分に使うべきではないでしょうか?私の知り合いは、子供手当で、テレビを買ったり、旅行に行ったりしています。これでは私達の税金はうかばれません。

●平凡な夢も厳しいのが現状
 家を持ち、子供を育ててそれなりの生活をしたいと思う。現実夫婦共働きでないとそんな平凡な夢も厳しいのが現状。結果、子供との接点や過ごす時間が希薄になり、目が届きにくくなったりきちきちの生活でこどもに良い環境が保ちにくくなっています。

 核家族化の典型でもありますが、子育て支援の一環としてよい政策をと願います。本当は子供は沢山欲しいです。

●小中学校の授業料免除および給食費の無料化を実施してください
 家庭の事情で仕事につけない者です。子ども手当より、小中学校の授業料免除および給食費の無料化を実施してください。ネグレクト等で食事をとれない子ども達の救いになります。

 また、議員数が多すぎます。会社でまずリストラをするように、議員にもリストラを導入すべきだと思います。

●少数精鋭の日本人のみでならねばと考えています
 44歳子供なしです。少子化大賛成です。対策を打つ必要はないと考えています。親になるには、そのための免許を得ないとなれないようにすればいいと思います。健全な教育が行き届くには、少数精鋭の日本人のみでならねばと考えています。現在の格差社会は民主主義の限界を示していると思います。極論ですが、格差をなくすには民主主義をやめないとと考えています。

text by Infoseek 内憂外患

2010年9月12日

【インタビュー】石川知裕:検察の焦り─鈴木宗男上告棄却と村木裁判の関係性

 受託収賄の罪などに問われた鈴木宗男(すずき・むねお)議員は9月10日、上告を退けた最高裁判所の決定に対し、異議を申し立てました。申し立てが退けられれば、鈴木議員は懲役2年の実刑が確定し、今後、収監されます。

 鈴木宗男氏上告棄却のタイミングや、村木裁判との関係性、鈴木宗男氏が世の中に与えた影響について、鈴木氏と同じ足寄町出身の石川知裕(いしかわ・ともひろ)議員に語っていただきました。

「今後鈴木氏に対して我々は何ができますか」との質問には、先日まで拘置所に入っていた石川氏ならではの意外な答えが待っていました。ぜひご覧下さい。

【関連記事】
■郷原信郎:鈴木宗男議員上告棄却の意図的なタイミング
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/09/post_646.html

■鈴木宗男議員:帯広のシンポで気炎 出席者は「特捜部批判」一色(毎日新聞)
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20100912hog00m040010000c.html

■鈴木宗男議員、異議申し立て 最高裁の上告棄却「不服」(47ニュース)
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010091001000542.html

■障害者郵便割引不正:村木元局長無罪 「もっと丁寧に捜査を」「周囲の支え、感謝」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100911ddm041040184000c.html

2010年9月11日

竹中ナミの郵便不正事件公判傍聴記《判決の日》:検察が控訴しないよう、これからも応援をお願いします

 2010年9月10日(金)台風一過、秋晴れの大阪地裁。傍聴券を求めて数百名の人が参集。空には取材ヘリが飛び交い、地裁中庭には中継車両が10台も! 取材陣の中から「小室哲哉の判決でも、こんなに集まらなかったかも。芸能人の裁判以外で、こんなに集まったのは初めてちゃうか!?」との声が聞こえる。

 抽選を待つ間に、TV取材を2つ受ける。マイクを向けて記者が聞く。

「支援者として、今どのようなお気持ちですか?」

「厚子さんが無罪であり、冤罪事件であることは明らかやけど、検察が控訴するという噂を聞いている。そのような暴挙が行われないことを祈るとともに、厚子さんが一日も早く職場復帰できることを願っています。」

 とコメントさせてもらった。

 籤運の悪い私は、プロップのチャレンジド仲間たち6名に「抽選要員」をお願いして同行してもらい、抽選に挑む。あぁぁ・・・やっぱり私はハズレ!!(>_<)でも仲間が下二桁「73(ナミ)」の番号を引当て、なんとそれが当たりクジ!!

 厚子さんのご家族(ご主人のお父さんも、北海道から出てこられてた)も、仲間の応援でクジに当たり、ホッとしながら201号法廷に入る。

 午後2時。開廷。

 横田信之裁判長の「被告人、前へ」との声で、グレーのシックなスーツに身を包み、いつものように髪を後ろに束ねた清楚な趣の厚子さんが、法廷の中央に立つ。

「主文、無罪!」

 横田裁判長の声が静かな法廷に響き渡る。おぉぉ・・・という声が、さざ波のように傍聴席に広がる。思わず私は、大きな拍手をしてしまった!!報道記者たちが、一報を送るため、どっと法廷から走りだす。

 その後なんと、4時間弱にわたり、横田裁判長が判決文を読み上げた。あまりに論理的で詳細な判決文に、素人の私は頭がウニ状態やったけど、検察が挙げた一つ一つの「証拠や調書」を論破しているんや、ということだけはしっかり伝わって来る。心のなかで「横田裁判長に、座布団10枚!!!」と叫ぶわたし。

 厚子さんは弁護団と並んで座り、静かにメモを取り続けている。検察側も、すでにこのような展開は想定していたようで、少し呆然とした表情ながらも、身じろぎせずに座っている。

 午後6時前、閉廷。

 大阪地裁司法記者クラブで、弁護団と厚子さんの記者会見が始まる。厚子さんの表情は、いつも以上に穏やかで、愁眉が開いて温かい。

「無罪、の判決を聞いた時は、どのようなお気持ちでしたか?」と質問が飛ぶ。

「心臓が、一つ大きな鼓動を打ちました。」と、厚子さんが答える。

 そして「無罪を信じてやってきました。支えてくれた友人・知人や家族に感謝しています」と笑顔で答える。

「検察に対して言いたいことは?」

「二度とこのようなことが起きないよう、そしてなぜこのようなことが起きたのか、検察はしっかり考え、正しい信頼できる組織に戻って欲しい。私は多くの貴重な時間が奪われたが、これ以上奪わないで欲しい」と、静かな、でも切実な声で厚子さんが訴える。

「マスコミに言いたいことは?」

「初期には、あまりに酷い報道がなされ、自宅や職場にも押しかけられた恐い思いをした。家族にも辛い目を合わせた。でもマスコミは大きな力を持っているので、これからは検察が正しい組織に戻るよう、報道の力を発揮して戴きたい。」と、きっぱり。

 記者会見が終わり、記者クラブを出る厚子さんに思わず駆け寄ってハグしながら「おめでとう!」と声をかける。

 「ありがとう」と答えながら、厚子さんはすぐに記者たちにもみくちゃにされ、会見場を後に。

 「厚子さん、今夜はゆっくりご家族、弁護団の皆さんと祝杯を上げてね!!」と心のなかでつぶやきながら私も地裁を後にしようとしたけど、「竹中さん、支援者としてのコメントを!」「ナミさん、お話聞かせて下さい」という何社かの記者たちに声をかけられ、「検察が絶対控訴しないよう、厚子さんをこれ以上苦しめないよう、メディアの応援をよろしくお願いします。世論の高まりに力を貸して下さい。」と答えて帰路に着く。

 自宅に戻って、母と弟を誘い3人で晩ご飯を食べながら、明日からまた始まる「控訴許すまじ」の闘いに向けて、でも今夜はやっぱり祝杯じゃ~!!」と、乾杯する。

 厚子さんのご主人からも「家族、弁護団で祝杯あげてます。」と、携帯メールが届く。

 友人、知人、ツイッター仲間からも、続々「おめでとう!」「まだ道半ばやけど、がんばろ~」のメールが。嬉しい!!

 アルコールに強い、高知の女、厚子さんが、心からの笑顔がとり戻せる日。一緒に「ホンマモンの祝杯」があげられる日まで、明日からまた頑張ろうと決意しながら、長かった一日が終わる。

 支援者の皆さん、ありがとう。
 弘中弁護団の皆さん、最後までよろしくお願いします。
 そして横田信之裁判長、あんたはエライ!!!

 慣習を破るというのが、どんなに大変なことか、私は骨身にしみて知っている。あなたの公平な感覚は、きっとこれからの裁判を変えて行く、起爆剤になることでしょう。

 検察が控訴すれば、二週間後に高裁での裁判となります。厚子さんの生活と貴重な時間を、これ以上奪ってはなりません。二度とこのような冤罪事件を起こさないためにも、世論のうねりが起きますように。

 台風一過、少し涼しい風の吹く神戸の片隅で、願いをこめるナミねぇでした。

<文責:ナミねぇ>


【関連記事リンク】
◆過去の公判傍聴記(村木厚子さんを支援する会)
http://www.airinkai.or.jp/muraki_sien/index.html

◆なみねえのtwitter(公判速報はコチラから)
http://twitter.com/nami_takenaka

◆「村木厚子さんの完全な名誉回復を願う」(プロップ・ステーション)
http://www.prop.or.jp/news/topics/2009/20090727_01.html

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【プロフィール】 竹中ナミ(たけなか・なみ)
1948年兵庫県神戸市生まれ。神戸市立本山中学校卒。重症心身障害の長女を授かったことから、独学で障害児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年、草の根のグループとしてプロップ・ステーションを発足、98年厚生大臣認可の社会福祉法人格を取得、理事長に。著書に「プロップ・ステーションの挑戦」(筑摩書房)、「ラッキーウーマン〜マイナスこそプラスの種」(飛鳥新社)。

2010年9月10日

[インタビュー]郷原信郎:鈴木宗男議員上告棄却の意図的なタイミング

 最高裁は受託収賄の罪に問われた鈴木宗男(すずき・むねお、62)衆院議員の上告棄却を決定した。

 なぜ最高裁は民主党代表選を来週に控えたこのタイミングで上告棄却を決定したのか。郷原信郎氏にはニュースを聞いた瞬間の感想とともに、今のタイミングで決定した要因を聞いた。映像の後半の「鈴木議員へのメッセージ」は必見です!

2010年9月9日、名城大学コンプライアンス研究センター:《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

《録画放送中》菅直人 vs. 小沢一郎 民主党代表選挙 公開討論会!


《撮影・配信:民主党本部》

 本日15時45分より、民主党所属議員の有志が主催となって代表選両候補者による公開討論会が行われました。これまで何度となく行われてきた討論会ですが、今回は菅直人氏と小沢一郎氏が政策を中心した激論を交わしました。代表選の帰趨を決するとも言われている討論会の模様をぜひご覧ください。

[記者レク]郷原信郎:鈴木宗男議員の上告棄却について

昨日9日におこなわれた、郷原信郎(名城大学教授・弁護士)氏による記者レクです。

当日は3つのテーマについて述べられましたが、今回はその中の、「鈴木宗男議員の上告棄却について/「国策捜査」と言われた鈴木宗男事件をどう見るか・上告棄却のタイミングについて」を配信します。

2010年9月9日、名城大学コンプライアンス研究センター:《THE JOURNAL》編集部撮影

2010年9月 9日

《録画放送中》菅直人 vs 小沢一郎 民主党代表選挙合同立会演説会! @北海道・札幌大通り4丁目公園


《撮影・配信:民主党本部》


 いよいよ終盤戦にさしかかった民主党代表選。本日は北海道・札幌で最後の合同立ち会い演説会が行われました。菅直人首相と小沢一郎前幹事長の両候補が訴えます!

本当に日本は民主主義国家なのか

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鈴木宗男氏(新党大地代表)

 最高裁第一小法廷から11時半、「上告を棄却する」という特別送達が自宅に届いたと家内から連絡が入る。

 昨夜から今朝にかけて、マスコミ関係者から最高裁が特別送達を出したという話があったので、心の準備はできていた。最高裁の理由は、職務権限にだけ触れて、政治資金規正法違反、議院証言法違反については何も触れていない。

 検察が善良な市民を密室で誘導し、でっち上げの調書を作り、その調書を持って判決を下す裁判所が、真に公正公平で、真実を明らかにする司法としての責任を果たしているのかどうか、疑問である。いや、果たしていないと言った方が正しいだろう。公判で「賄賂はもらっていません」と言うと、判決文では「反省の情皆無」と一方的に断じる裁判所も、官僚化しているのである。

 読者の皆さんに、やまりん事件の山田哲社長が東京高等裁判所に出した陳述書の一部を紹介したい。


 私を取り調べた吉田正喜検事(以下、吉田検事といいます)から「業者が政治家にお金を渡すのは『お礼』か『お願い』しかない」とこまごまと説明され、「どちらなのだ」と言われて、この件は「お礼」という趣旨では通らないと思い、「お願い」としてしまったのです。

 やまりん関係者一同の気持ちは、官房副長官就任のお祝いであり、だからこそ、官房副長官室で堂々と祝儀袋を机の上に並べたのであり、賄賂だと思っていたとすれば、人の出入りのあった官房副長官室でそのようなことをすることにはならないと思います。

(中略)

 平成15年に裁判所で証言する前に、証人尋問の4日前から毎日東京地検に出向いて尋問のリハーサルを行いましたが、その際、吉田検事から不正な行為の働きかけをお願いした旨の答えが予め書き込まれた尋問事項書を渡され、答えに間違いはないか何度も念を押されたからです。

 なお、用意された尋問事項書は、リハーサルの終了時に、返すように言われ、私の手元には存在しません。


 また、島田建設事件では、島田社長が検察のプレッシャーから、公判に証人として出た翌日、脳梗塞で倒れられ、話もできない状態になった。その島田社長が奥さんに話していたことについて、奥さんは陳述書を作ってくれた。一部紹介したい。

 夫の話では、検察官はあらかじめ文章を作っていて、その表現内容が夫の認識と違うと言っても受付けてくれず、どのように対応をしたらよいか困っているということでした。

(中略)

 夫は、納得のいく形での調書を作ってもらえず、そのあげく、鈴木宗男代議士は逮捕され、また島田建設も賄賂行為をした企業とされて9ヶ月の指名停止の処分を受けてしまいました。

(中略)

 俺が検事の言うままにサインしたのが悪かったのかな、申し訳ないことをしたな、などため息混じりに愚痴っていました。


 検察、裁判所が、私が賄賂をもらったと判決しようが、届けた側が明確に否定していることこそが真実ではないか。官僚化し、小さな出世欲にとらわれ、自分のことしか考えない一部青年将校化した検察官、また自分の出世しか頭にない心ない裁判官がいることに、「本当に日本は民主主義国家なのか」と、自問自答するものである。

 弁護士は異議申し立てを10日にするというので、今後のことは弁護士に任せたい。

 私は淡々と、与えられた立場で最後の最後まで仕事をしていく。有難いことに、事務所には非難や批判の電話、FAXはなく、激励の電話、FAXがいっぱいくる。

 8年前と風向きは間違いなく変わっていると実感しながら、声なき声に耳を傾け、絶えず後ろを見ながら、弱い人のために政治があることをいかなる立場でも訴えていきたい。

 「心友」松山千春さんは、報道機関に次の様なコメントを出してくれる。

 報道各位様

 今回の鈴木宗男さんに対する最高裁の判決に関しては、大変残念に思います。

 「真実」というのは、なかなか裁判では明らかにならないんだなぁと感じました。

 宗男さんは収監ということになりますが、ガンの再発など無いように健康に気をつけて頂きたいと思います。

 また家族や事務所のスタッフなど周りにいる人たちも心配です。自分にとって宗男さんという人は、自分がどんなに傷ついたとしても守りたいと思う人ですので、出来る限りのことをさせて頂こうと思っています。

 自分はこれからも鈴木宗男さんを信頼し、支持していきます。

 国政選挙ではありませんが、次の総理大臣が決まる選挙をやっているこの時期に判決が出るのが不可解であると同時に、あらためて、この判決には権力側からのメッセージ性を感じましたし、怖いなぁと感じました。

 次の総理大臣はどのかたになるのか判りませんが、権力を持つことがどういうことかを正しく理解して頂けるかたに総理大臣になって頂きたいと思います。

 権力は本来国民の正義の中にあるはず。だからこそ裁判員制度もでき、国民も参加しているのですから。国民の方も関心をもってどこに正義があるのか、また「真実」を見抜く、何事にも左右されない、正しい力を持って頂きたいなと感じました。

 これからも変わらず音楽活動などを淡々とこなしていきますが、フォークシンガーとして、もっともっといいものを作って、皆さんに訴えていきたいと思います。

 ますます燃えてきました。

松山千春


 「困った時の友人こそ真の友人」。千春は別格だと手を合わせるのみである。

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※この記事は9月8日付「ムネオ日記」より事務所関係者の許可を得て転載しました。

2010年9月 8日

郷原信郎:「政治とカネ」を代表選の争点にするな!

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 次期首相の座をめぐって激しい選挙戦が繰り広げられている民主党代表選。ところが、議論されている中身はといえば「政治とカネ」の話ばかりで、世論の動向にも大きな影響を与えている。その問題点について、名城大学教授・コンプライアンス研究センター長である郷原信郎氏が本誌編集部のインタビューに応じた。(9月3日取材)

(文責:《THE JOURNAL》編集部)

※動画バージョンは以下のURLにアップされています。
www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/09/post_638.html

★   ★   ★

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検察が危ない (ベスト新書)

郷原信郎氏(名城大学教授・コンプライアンス研究センター長)

──民主党代表選で「政治とカネ」が大きな争点となっています。事実上の首相を選ぶ選挙に「政治とカネ」は論ずべきテーマなのでしょうか

 昨年3月に西松事件、そして今年1月には小沢一郎氏の政治資金管理団体である陸山会の不動産取得問題が発覚しました。この間、検察は一貫して小沢さんをターゲットに捜査を行い、それをメディアが大きく報道しました。結果として、世の中には「小沢はカネに汚い政治家」というイメージが作られました。

 ところがその実態は何だったのか。少なくとも西松事件に関しては犯罪事実としての中身がなく、陸山会の不動産取得問題については元秘書である石川知裕議員は起訴されたものの、小沢さんは不起訴となっています。一連の流れを冷静に見てみると、これまで大騒ぎされた「政治とカネ」という問題は、今回の代表選を判断するほどの決定的な実態はありません。

──「実態がない」とは具体的にどういうことでしょうか?

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 今回の代表選で議論となっているのは、世田谷の不動産取得問題に関連するものですが、検察の判断ではすでに小沢さんは不起訴になっています。ただ、その不起訴に対して検察審査会に申し立てが行われたため、審議の結果として起訴相当の議決が出ました。しかし、市民の声を受けて検察は再捜査したものの、結果として再度不起訴にしました。これは、検察が短期間で結論が動かないと判断したことを意味します。ただ、検察審査会はもう一度審議を行うことになりますので、再度「起訴相当」の議決が出る可能性はあり、その場合は強制的に起訴されることになります。

 たしかに小沢氏が起訴される可能性はあるけれども、この被疑事実の中身とは、不動産の取得時期と代金支払時期がたった2ヶ月あまりずれた「期ズレ」の話で、そもそもこのこと自体が政治資金規正法上の違反に問えるのかどうかも疑問です。仮に、当時の会計担当者である石川さんが違反と判断されても、小沢さんが共謀したという立証は極めて難しい。そう判断して検察は不起訴にしたのです。つまり、検察が2回も不起訴にしたということは、小沢さんに「政治とカネ」で問題となるような中身はほとんどなかったということなのです。

検察審査会が首相への拒否権を持ってはならない

 もちろん、一般市民である検察審査会の審査員がどう判断されるかは自由です。ただ、訴追機関である検察が2回不起訴したにもかかわらず、それが審査員の判断で起訴となったとしても「検察限りの判断で終わりせず、裁判所の判断を仰ぐべき」ということにすぎません。

 ところが、いまのメディアは検察の起訴と検察審査会の2度の起訴相当議決による強制起訴を一緒にしているのです。コンサートにたとえるなら、検察の処分までは事前に発表されている正式な曲目で、検察審査会はアンコールのようなものです。起訴相当の議決も「おまけ」のようなものと捉えているのならいいのですが、そうでないから困るのです。

──残念ながら、現実には「政治とカネ」が代表選の争点の一つとなっています

 すでに法的にはほとんど決着がついている問題を再度掘り出して代表選の争点にすることは、明らかにアンフェアです。私は「政治とカネ」を代表選の争点にすべきでないということを強く言いたい。

 「政治とカネ」というとき、具体的な問題の中身を理解しないまま、イメージだけで判断してしまっています。これは非常に危険なことです。このような曖昧なイメージで首相になる資格が失われてしまうということになれば、特定の政治家に「カネに汚い」というイメージを植えつけるだけで、その政治家が首相になることを防げます。つまり、検察審査会に選ばれた11人の審査員のなかのわずか8人が、首相への拒否権を持つということになるのです。

検察審査会が民主主義のバランスを崩しかねない

──小沢氏は3日午前に出演したテレビ朝日の番組内で検察審査会のあり方について将来的には議論がおこるだろうとの主旨の発言をしました

 当然のことです。これは小沢さんの事件に限らず、検察審査会の議決に起訴の拘束力を持たせた現在の制度が、日本の刑事司法にとって、または検察制度にとってどのような影響があるのかを考え直さなければなりません。特に、政治資金規正法違反のような政治的な事件に対してこの制度を適用すれば、民主主義のバランスを崩す可能性があることも議論されなければなりません。

──明石の花火大会歩道橋事故の件も含め、本来は検察を審査するはずの検察審査会が被疑者を審査しているような形になっています

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 現状では検察審査会が「第二検察庁」のようになっています。検察審査会は「検察の処分が正当か」を審査することが本来の目的ですが、検察審査会の処分が2段ロケットの2段目のようになってしまっています。これは検察審査会の制度趣旨からしておかしい話で、考え直さなければなりません。

──西松事件で小沢さんは民主党代表の座を辞任し、陸山会事件では幹事長を辞任せざるをえなくなりました。次は、検察審査会が代表選に大きな影響を与えようとしています。この1年半の間、常に検察の動向が政局の中心となっていることについてどのように思われますか?

 極めて不健全な状態です。検察官は政治のキャスティングボートを握れるような世の中の民意を反映した組織ではありません。しかも、検察とは国家機関として捜査権限や訴追権限を行使する立場です。説明責任も情報開示義務も負っていません。検察内部で意思決定したことが政治に大きな影響を与えているという現状は、民主主義の基本である「権力分立」の観点から見ると、とても異常な事態だと言わざるをえません。

菅首相はホームベースにボールを投げろ!

──「政治とカネ」が繰り返し取り上げられることによって、特に序盤戦では本来代表選で取り上げられるべき政策論議が脇に追いやられてしまいました

 「政治とカネ」の問題とは何なのか。実は、ほとんどの人がその中身について理解していません。これは何を言っているのかわからないのに、なぜか効果が出ている「呪文」のようなものです。

 たしかに「政治とカネ」には法律的な意味と政治家としての倫理的な意味があります。「検察審査会が...」というのは法律上の問題で、法律的にはさきほどもお話したように何の問題もありません。一方、それとは別に政治倫理上の問題があるのかもしれません。であるならば、問題の中身を具体的に言えばいい。ところがそれも明確に指摘されることはありません。一体何が問題となっているのかすらわからない。

 ただ、憲法75条との関係では問題があると言えます。憲法75条では内閣総理大臣は、本人が同意しない限り訴追されないことになっています。小沢さんは検察審査会の2度目の起訴相当の議決によって起訴される可能性が残っている状況で、この条文を利用すれば、総理大臣の職を失うまで起訴が先送りされる効果が生じることは間違いありません。たとえ起訴されても有罪の可能性はほとんどないとしても、「首相になろうとしたのは訴追を逃れるためではないか」と疑われることは避けられません。

 なので、私は「あとは小沢さんの姿勢次第だ」と言ってきました。「訴追逃れ」と見られないためには、代表選への立候補を発表した時点から「訴追には同意する」と宣言すればいい。そうすれば「訴追逃れ」という批判を跳ね返し、「政治とカネ」が代表選の争点から消えるからです。

 それが、討論会の場で憲法75条について問われたとき、小沢さんが「逃げない」と発言しました。訴追を受ける意思を明らかにしたもので、これで「政治とカネ」の問題は今回の代表選の争点からは基本的に排除されました。「政治とカネ」の呪文はいまや完全に廃れた。これからは堂々と政策論争をやって、残りの代表選を盛り上げてほしいと思います。

──今後の代表選には何を望みますか?

 私は、これまで小沢さんがどのような政策を考えているのか明確に聞いたことがありませんでした。漠然とした印象では、小沢さんは積極財政論者で、公共工事や子ども手当てなどで国債を増発する方向ではないかと感じています。緊縮財政的な政策をすすめる菅政権とは政策が大きく違うという印象でした。また、小沢さんは官僚主導の今の国のあり方を変えていくという強い意志を持っていると感じています。ただ、これは小沢氏だけではなく、民主党全体がこれまで言ってきたことですので、具体的に「官僚主導をどう脱却していくのか」という観点から、今の日本に必要なことを菅さんと小沢さんの間で政策論議を闘わせることが必要だと思います。

 その意味では、小沢さんは自らの政策を今回の代表選で積極的に表に出しています。ところが、菅さんは「政治とカネ」の話を繰り返し持ち出し、ホームベースにボールを投げないといけないのに、一塁方向に向かって牽制球ばかり投げていました。しかも、その牽制球は暴投で大量失点。菅さんはちゃんとホームベースに向かってストライクを投げないと勝負にならない。

 だから、菅さんにはもっと頑張ってほしい。今までのように「政治とカネ」で揚げ足をとるようなことをしてほしくない。一塁に牽制球ばかり投げていたのでは「8年ぶりの民主党代表選はいったい何だったのか」ということになってしまいます。多くの人は菅さんは財務省べったりで、官主導からの脱却ができていないと思っているわけだから、一発逆転を狙うのであればここは一つ、財務省中心の官僚組織に対して「こうやって正面から戦いを挑む」ということを主張して「官主導からの脱却は私でないとできない」と示してほしい。日本には財政制度、単年度予算主義、補助金のあり方など、根本的な部分で変わらなくてはいけないものが残っています。財務省中心にこの国が動いてきて、その財務省の支配から脱却し、本物の政治主導・民間主導という、新しい日本の社会をつくりあげないといけない。このことを主張できたとき、菅さんははじめて小沢さんを逆転できると思います。政策論議で勝負することが、あるべき代表選の姿です。

2010年9月 7日

民主党関係者からのメール、民主党代表選挙合同立会演説会!@大阪梅田

9月5日におこなわれた、大阪梅田での民主党代表選挙合同立会演説会を見に行った民主党関係者の方から、メールが送られてきました。

《THE JOURNAL》のコメント欄でも、"実際の様子と報道内容の誤差"を指摘されていますので、参考までにそのメールを全文掲載したいと思います。

送信主は編集部とは知人関係ですが、菅直人派であることをおことわりしておきます。

ちなみに「携帯メール」です。

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今日の演説会は、場所のせいもあり大混雑でした。

途中まで通路整理をしていましたが、身の危険を感じるほどでした。

やはり、小沢さんへの熱烈な声援が凄かったです。

たまたま小沢さんのビラを預かったら、全部、ひったくるように持っていかれました。

ひったくられたビラ(画像は編集部でスキャン)
↓ ↓ ↓
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マスコミもマナーが悪かった、必死なんですね。

街頭だけを見ていたら、小沢さん優勢に見えますね。

サポーターさんからも、「どっちにいれたらいいの?」という電話が毎日かかってきます。

そういえば、どこかのテレビ局が、聴衆にインタビューしていましたが、「菅支持が撮れない」と言っていました。

2010年9月 5日

《録画放送中》小沢 vs 菅 民主党代表選挙合同立会演説会! @大阪 梅田ヨドバシカメラ前


《撮影・配信:民主党本部》  

4日に引き続き、5日15時ごろより「民主党代表選挙合同立会演説会」が行われました。今日は大阪・梅田ヨドバシカメラ前です!

[現場ルポ]小沢コール一色だった代表選合同演説会初日

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9月1日に告示された民主党代表選。

初めての合同立会演説会が9月4日、新宿駅西口でおこなわれました。

《THE JOURNAL》編集部は、発表では3,500人といわれる聴衆の中で反応をうかがっていました。

小沢氏がマイクを握ると同時に"大小沢コール"が沸き起こり、一瞬緊張ムードが漂いましたが、最後まで、小沢コールが会場を包み込んでいました。

途中、TVメディアの実況中継アナウンサーに対し、年配のご夫婦が「あなたたち、ちゃんと事実を伝えなさいよ!ジャーナリストの端くれなんだったら」と詰め寄る一幕もあり、今回の代表選と、それをとりまく報道に対する有権者の真剣な姿勢を感じました。

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このあと小沢氏は池袋駅西口にて演説をおこないました。

この気温がまだ一週間は続くとのことで、まさに"暑い戦い"となります。

次の合同立会演説会は、9月9日(木)、札幌大通駅です。

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会場の雰囲気をお伝えするために、動画もアップいたしました。

"手持ち"で撮影しましたので"手ぶれ"がひどいですが、我慢してください。

代表選!菅 VS 小沢、合同立会演説会[新宿駅西口、2010年9月4日](1/3)
http://www.youtube.com/watch?v=uLEpYhNGj-k

代表選!菅 VS 小沢、合同立会演説会[新宿駅西口、2010年9月4日](2/3)
http://www.youtube.com/watch?v=AuQzZLXqdQU

代表選!菅 VS 小沢、合同立会演説会[新宿駅西口、2010年9月4日](3/3)
http://www.youtube.com/watch?v=zE5NuSmDqk8

2010年9月4日、新宿駅西口・池袋駅西口:《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

2010年9月 4日

《録画放送中》小沢 vs 菅 民主党代表選挙合同立会演説会!



《撮影・配信:民主党本部》  

東京・新宿駅西口で4日13時ごろより行われた「民主党代表選挙合同立会演説会」の模様がインターネットで録画放送中です。もちろん、小沢一郎氏、菅直人氏の両候補者が同じ舞台に立って演説を行っています!

[インタビュー]郷原信郎:「政治とカネ」を代表選の争点にするな!

[前編]

[後編]

民主党代表選の「争点」について、名城大学教授・コンプライアンス研究センター長:郷原信郎(ごうはら・のぶお)氏が、その問題点を指摘。

今回も、"ノーカット"で配信します。

2010年9月3日、コンプライアンス研究センター:《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

田中利幸:「2010 NPT 再検討会議」の結果とオバマ政権の核政策批判(後編)

増大する軍事予算と戦費=オバマ政権の軍事戦略の実相

 増大したのは核兵器関連予算だけではない。2010年度に国防省に配分された予算額は6,800億ドル(約61兆円 比較:日本の国家予算85兆円)であるが、これがアメリカが使う軍事費の総額ではない。この数字には、前述の核兵器関連予算や、国内警備関連予算、情報収集関連予算、退役軍人年金など諸々の国防省以外に配分されている予算は含まれていない。したがって、実質的には、アメリカの軍事支出は国防省予算の倍額になると言われている。その上、アフガニスタンでの戦費200億ドルもまた、これとは別建ての予算である。2009年ブッシュ政権下での国防省予算・核兵器関連予算・戦費の合計が6,810億ドルであったので、今年度のオバマ政権の軍事費は、それをはるかに超える金額となっている。2011年度国防省予算として、オバマは7,080億ドルを要求している。かくして、実に皮肉なことに、ノーベル平和賞を授与された大統領の下で、軍事費が史上最大のものとなっているのである。

 なぜこれほどまでに多額の軍事費が必要なのか。それを理解するためには、4年ごとに国防省が発表する『Quadrennial Defense Review (以下QDRと略)』を見てみる必要がある。最も最近のQDRは今年2月に出されている。それによれば、現在、世界中に1,000以上の数に上る米軍基地が存在し、常にこれらの基地設備がアップグレードされているのみならず、基地の数も増加している。例えば、つい最近、南米コロンビアには6つの新しい基地が設置された。アメリカの目的は言うまでもなく、これらの基地を活用しての「世界支配」である。国防長官ゲーツは、このQDRの中で、「我々の最優先事項は、アフガニスタン、パキスタン、イラク、イエメンでの現在の戦争に勝利すること」であり、「将来の戦争の成功は、現在のこれらの戦争が成功するかどうかにかかっている」と述べている。

「将来の戦争 "wars to come"」とはいったいどんな戦争を想定しているのであろうか。最大の仮想敵国は中国とロシア、とくに中国であることが、QDRには明確に述べられている。核兵器を使わないとしても、最新の航空宇宙技術とミサイル防衛システムで中国とロシアを封じ込めるという戦略であり、この戦略の背後には、ますます減少していく石油をはじめとする資源供給源の支配という目的がある(詳しくは、ブルース・ギャグノン著「宇宙的視野から核兵器廃絶の展望を考える」私と藤岡惇の共訳『世界』2010年6月号参照)。資源供給源の確保と支配の目的のためには、世界のどの地域であろうとも、必要であれば、航空宇宙技術と長距離ミサイル攻撃システムを駆使して1時間以内で壊滅的な攻撃を敵に加えることができるシステム、「即時世界攻撃Prompt Global Strike(PGS)」と呼ばれるシステムを構築することをアメリカは目下企てている。このPGS開発研究のために、オバマ政権は2億4,000万ドルを2011年度要求予算の中に含ませている。

 すなわち、高性能・高能力核兵器攻撃力維持とPGSは、オバマ政権の軍事戦略の2つの柱をなすものであって、その2つは相互に補完し合っている重要不可欠な戦略として認識され位置づけられていることを、我々は忘れてはならない。核兵器もPGSも、「抑止力」だけではなく、明らかに「攻撃力」としてとらえられているのである。

 アフガニスタンにおける戦争も、本質的には、アルカイダやタリバンという「テロ集団」に対する戦争という背後に、中央アジアにおける石油資源供給源の確保・支配というアメリカの野望があることはあらためて説明するまでもないであろう。オバマは昨年の春、大統領就任直後に2万1,000人の兵員増派を行い、さらに現在3万人の増派が進行中である。この増派によって、アフガニスタン駐留米軍の兵員数は10万人を超える大軍となる。この6月末、アメリカ連邦議会上院は、オバマが要求した330億ドル(約2兆9,000億円)の補正予算を5票差というきわどい賛成多数で承認。これは、すでに、議会が承認しているアフガン・イラク戦費1,300億ドルに、さらに上乗せされる金額である。

 オバマ政権になってから、アフガニスタンに駐留する米軍兵士の数はほぼ3倍に増大。米軍死亡者は今年の最初の数ヶ月で倍増、負傷者は3倍に増えている。しかし増えているのは米軍やNATOを中心とした他国籍軍の兵員の死傷者数だけではない。確認できないほど多数の市民が犠牲となっており、その多くが、米軍の無差別攻撃、とりわけプレデター(略奪者)やリーパー(死神)と名付けられた無人空爆機(通称「ドゥローン」)による空爆の犠牲者である。オバマが大統領就任後に最初にアフガニスタンに送り込んだのがこの無人空爆機であった。ネバダ州にあるネリス空軍基地で、操縦するパイロット、カメラを操作するセンサー・オペレイター、情報収集官の3人が一組となってこの無人空爆機を操作する。パイロットは画面を見ながら、爆撃ミサイル発射ボタンを押す。まさに、コンピューター・ゲーム感覚の操作である。オバマ政権は、2011年度アフガン戦費の要求額の中に、この無人爆撃機の数を現在の37機から次の2年間で67機にまで増やすための予算を組み込んでいる。

 毎月のように、この無人爆撃機による市民の犠牲者が今も続いているが、その一例を紹介しておこう。昨年5月初旬、アフガニスタンのファラア県にある一村落が米軍による空爆を受けた。空爆の理由は、「タリバン兵士が村に入り込んでいた」というものであった。アフガニスタン政府の公式発表によれば死者147人、負傷者25人、破壊された家屋12軒。アフガン人権モニターというNGOの調査によると、死者は少なくとも117人、そのうち26人が婦人、61人が子供。爆撃の威力が凄まじく、死者の身体がバラバラになって吹き飛ばされたため、誰の身体か確認ができないひどい状態との報告。こうした無差別空爆による市民虐殺は、明らかにジュネーブ協定に違反する戦争犯罪である。タリバン勢力がパキスタン領土内に拡大するにつれて、被害者も、アフガニスタンからパキスタン国境地域へと広がっている。「核廃絶」をたとえ「夢」であろうと口にする人は、「市民の無差別大量虐殺」ということを念頭において「核廃絶」を主張するはずである。その人物が、自分が最高司令官を務める自国軍隊が毎月のごとく無差別殺戮していることにほとんどなにも言及しないという事実を、私たちはどう考えたら良いのであろうか。

 つい最近、アフガン駐留米軍のマクリスタル司令官が、オバマ政権のアフガニスタン政策を批判したため解任された。不思議なことに、アメリカのメディアのみならず各国のメディアがこの「批判」の内容についてほとんど何も詳しく報道していないことである。実は、マクリスタルの批判の中には、この「市民無差別殺戮」が含まれていた。マクリスタルは、「米軍が市民一人を殺害すれば、そのことが市民を敵に回し、一人の新しい敵を産み出す」と唱え、これを彼は「叛徒(増加)の数学理論 "insurgent math"」と呼んだのである。そのため、現地の実戦部隊員に、市民かどうか判断がつかない場合は、疑わしくとも発砲しないことを徹底させる命令を出し、厳しく検証する方法をとったため、現地部隊員からひじょうに嫌われた。こともあろうか、オバマ大統領はこうしたマクリスタルの戦闘方法を支持するどころか、解任してしまったのである。

 激しい無差別空爆が市民を敵に回してしまい、結局は戦争に負けるという苦い経験をアメリカはベトナム、カンボジアで学んだはずである。タリバン勢力がますます拡大し、パキスタンの核兵器略奪の危険性まで国防省が心配する今、オバマはもう一度、この歴史を勉強し直してみる必要があろう。

 かくして、昨年秋頃から、オバマ大統領の核政策ならびに軍事政策は、プラハ演説で表明された目標に対して逆行し、ますます遠ざかるような内容になっているのが現実であるが、これは単にオバマ個人の考え方の変化に帰するものではない。70年以上という長い歴史を持ち、今や巨大な政治経済力でアメリカ経済を支配する「軍産複合体制」というアメリカの政治経済構造そのものが、大統領が誰であれ、どのような個人的な考えを持っていようとも、国防省を巻き込んで最終的には政策方針を決定づける力を持っているという事実が、オバマ政権の政策にも如実に表れているのである。

オバマの中近東政策=核拡散への危険性

 オバマ大統領は、2008年7月、選挙キャンペーン中にイスラエルを訪れた際、「もしも、私の娘2人が寝ている我家がロケット弾攻撃を受けるならば、私は自分の全力を使ってそのような攻撃を停止させる」と演説した。ところが、その年の12月から2009年1月にかけてのガザ攻撃で、多くのパレスチナ市民が空爆で死傷した際には、沈黙を通した。しかも、この攻撃に使われた多くの兵器や爆弾がアメリカ製である。(イスラエルに対する最大の武器輸出国はアメリカである。)この攻撃でのパレスチナ人死亡者は1,400人を超え、負傷者は5,400人以上となった。1月6日、イスラエル軍は国連避難所として使われていた学校を攻撃し、700名の市民を殺傷したが、そのうちの220名が子供であった。オバマにとっては、ハマスによるロケット弾による市民攻撃は犯罪であっても(明らかに犯罪であることに間違いはないが)、イスラエルによるパレスチナ市民の無差別大量殺戮は「犯罪」ではないらしい。因に、イスラエル側の死者は、民間人を含め13人であった。

 イスラエルによるたびたびの攻撃で、ガザ地区の農地の8割が破壊され、鉄条網で分断されたイスラエルとの境界線地区近くで作物を植えたり土を耕そうとでもするならば、イスラエル兵の銃で狙い撃ちされる。同じように、ガザ沿岸では漁業も全くできない状況である。現在、140万人のガザ地区の住民の96パーセントが、自分たちの生活必需品の入手を人道支援に頼っているが、その援助も全く不十分なものである。政治的にも経済的にも孤立を強いられているガザ地区は、文字通り「世界最大の刑務所」なのである。こうした状況にあるパレスチナ住民を少しでも助けようと、生活必需品の輸送に当たっていた非武装貨物船団である自由艦隊(フリーダム ・フロティラ)を銃撃し、船員数名を殺害した上で船を乗っ取った6月初旬のイスラエルの行動は、明白に国際法に触れる重大な犯罪である。この事件に関しても、オバマはほとんどコメントを控えた。

 オバマは、平和交渉のために必要な明確な条件をハマスが満たさなければならないと主張する。その条件とは、「イスラエル国家存続の権利を認めること、暴力行為を放棄すること、そして過去の同意事項を守ること」であると言う。ではイスラエルは「パレスチナ国家存続の権利を認め、暴力行為を止め、過去の同意事項」を守ったことがあるとでもオバマは言うのであろうか。イスラエルは「パレスチナの国家存続の権利を認める」どころか、パレスチナ民族を事実上潰滅させるような行為を繰り返し長年にわたり行っている。オバマはまた、「アメリカはイスラエルの安全保障のために全力を尽くす。そして脅威に対するイスラエルの自己防衛の権利を常に支持する」とも述べる。自己防衛の権利は誰にでもあることで、パレスチナ人民にもあるはずだが、そのことについて彼は言及しない。問題にしなければならないのは、自己防衛の権利と称して強力な軍事力を使い、自己防衛能力をもたない他民族の市民を殺傷するイスラエルの「自己防衛」の無法なやり方であろう。

 その無法身勝手な「自己防衛」のためにはイスラエルが使用する用意がある核兵器の問題についても、オバマは黙して語らない。したがって、イスラエルが国際法に違反するどのような行為を行っても、公に批判し支援を停止することがないという点で、オバマは歴代のアメリカ大統領と少しも変わらない。中近東の永続的な政治不安定は、まさに、こうしたイスラエルの不法行為とそれをあくまでも支えて止まないアメリカ政府の政策にその最大の原因があることは誰の目にも明らかなところである。今回のNNPT再検討会議の最終文書では、中東非核地帯構想に関して国際会議を2012年に開催することが明記されたが、イスラエルはこれに参加することを拒否。このイスラエルの態度を支持して、オバマは「イスラエルだけに焦点を当てる動きには強く反対する」との見解を発表した。このような状態では、中東非核地帯の実現どころか、2012年の会議開催すらおぼつかない。

 イランが核兵器開発をほのめかすような言動をとって止まないのも、あらためて述べるまでもなく、これまでの核兵器保有国イスラエルの言動と、それを全面的に支援して止まないアメリカ政府の政策に最も大きな原因があるとは明らかである。

 さらに、周知のように、アメリカはイランの石油支配を目的に、これまで様々な企てを行ってきた。1953年、アメリカはイギリスと共謀して、石油利権を国営化しようとしていたモサデック政権を倒しシャー国王を帰国させるクーデター計画を、CIAの秘密作戦「アイアス作戦」で行ったが失敗。しかし、その後も同様の企てが試みられて成功し、シャーは専制君主として返り咲いた。1979年、イスラーム革命が勃発し、シャーは亡命。アメリカのイラン支配力も急落。その年の11月には、アメリカ大使館によるスパイ行為が発覚して、アメリカとイランの国交は断絶した。その後、アメリカ政府はアメリカ国内にあるイラン資産120億ドルあまりを凍結した。イラン・イラク戦争中の1988年3月には、イラク空軍がイランのハラブジャの町を化学兵器で爆撃し多くの市民が犠牲になったが、この化学兵器はアメリカ企業の支援で開発製造されたものであった。1988年7月には、アメリカの巡洋艦ヴィンセンスがイラン航空のエアバスを撃墜し、子供66人を含む6カ国の市民290名(うちイラン人犠牲者248名)が死亡した。(1996年にアメリカはイラン人犠牲者に6,180万ドルの補償金を支払うことに同意。)イランがアメリカ政府を信用せず、常に敵視してきたことは、このような歴史的背景を考えてみれば全く不思議ではない。

 世界の1日の石油需要量の40パーセントが、イラン沿岸のホルムズ海峡を通過すると言われている。経済地理的に極めて重要なこの石油産出国であるイランを封じ込め、孤立化させ、最終的に支配したいというのがアメリカの最終目的であることも周知のところである。オバマ政権もこの点で、これまでのアメリカ国家政策をそのまま踏襲していることを忘れてはならない。

 イランの核兵器開発疑惑問題の背景には、このような複雑な政治経済問題が絡んでいるため、核兵器開発の真偽のほどを判断するのはひじょうに難しい。2003年以来、アメリカはイランが核兵器開発を企てていると主張しているのに対し、イラン側は核開発は平和利用である原子力発電のみを目的としていると反論し続けている。しかし、アメリカをはじめ他の国連安保理事会常任理事国であり核兵器国でもあるロシア、中国、イギリス、フランスは、イランは軍事目的の核兵器開発の偽装工作を行っているとし、国連安保理で、2006年12月、2007年3月、2008年3月、イランに対する制裁決議を採択した。これに対し、イラン政府は、イランには核の平和利用の権利があるとあくまでも主張し、国連安保理の制裁決議の拒否を表明した。アメリカの国家情報会議(National Intelligence Council)が、2003年にイランは核兵器開発を中止しており、アメリカ政府が主張するイランの核兵器開発疑惑は事実ではないと政府に報告しているにもかかわらず、オバマ政権は相変わらずイラン政府を「偽装工作」で非難し続けている。

 去る5月17日、イランはトルコとブラジルの仲介により、低濃縮ウラン1,200kgを国内からトルコに搬出、その見返りに研究用原子炉に必要な高濃縮ウラン燃料棒(医療用)1,200kgを受け取ることで合意した。ところがアメリカ側がこの提案を拒否し、平和的解決のせっかくの好機をつぶしてしまった。しかも、6月9日には、国連安保理で4回目のイラン制裁決議を採択。これに続き、オバマ大統領が、7月1日、イランの金融・エネルギー部門と取引関係のある企業に対する制裁強化を目的とする制裁法案に署名して、アメリカが独自に制裁措置を導入することとなった。制裁対象にはイランに精製石油を輸出する企業が含まれているが、イランは産油国ではあっても精製設備を持っていないので、精製石油の輸入ができなくなれば経済的に大打撃を受ける。

 この経済制裁措置と歩調を合わせるがごとく、オバマは、ごく最近、ディエゴ・ガルシア島の米軍基地に(核弾頭のとりつけ可能な)トマホークミサイルを搭載した原子力潜水艦を結集させており、イギリスの『サンデー・ヘラルド紙』によると、すでに387個のバンカー・バスターズもここに運び込まれているとのこと。ディエゴ・ガルシア島は、インド洋にあるイギリスの属領であるが、島全体がアメリカ政府に貸与されており、ここにアメリカ海軍の大規模な基地が置かれている。インド洋にあるアメリカ軍最大の拠点であり、軍事戦略上の要衝とされている。湾岸戦争、アフガニスタン攻撃、イラク戦争の際には、ここからB-52爆撃機やB-2ステルス爆撃機が出撃している。また、いまや、ペルシャ湾にはイージス艦を含む多数の米軍艦船が常時動き回っているという状況である。さらには、いったん計画を中止した、ポーランドへのミサイル防衛網配備(迎撃ミサイルSM3配備)も行うとことが発表された。

 これらは、事実上アメリカが「臨戦態勢」をひいたことを意味している。イランの防衛費はアメリカの防衛費のわずか2パーセント。いかにアハマディネジャド大統領が非民主的で対外的にも敵対的な発言をし続けているとはいえ、オバマ政権のイランに対する政策はあまりにも強引で、これでは、軍事的に弱小国であるイランに戦争を意図的に引き起こさせることを目的に、イランへの締め付けを強めているのではないかとすら疑わせるような態度である。こうした一連のアメリカのイラクに対する軍事行動は、国連憲章(特に第6章「紛争の平和的解決」)に違反する行為である。

 1992年、ブッシュ(父親)政権が「2つの朝鮮」、すなわち「南北共存」を拒否し、核エネルギー問題で北朝鮮に圧迫を加えたため、クリントン政権が発足するや間もなく、北朝鮮は「核拡散防止条約(NPT)脱退宣言」という強硬手段をとった。その後もアメリカは北朝鮮圧迫という強硬政策を次々と押し進めたため、結局は北朝鮮を核兵器保有国にしてしまった。現在のオバマ政権のイランに対する政策も、92年段階のアメリカ政府の北朝鮮に対する姿勢と類似しており、このような武力使用をちらつかせた脅迫的外交政策では、イラン政府を交渉のテーブルにつかせるどころか、核兵器生産へと追いやる危険性が極めて高い。

 さらに問題なのは、アメリカ政府の「原子力エネルギー協力」をめぐるインドに対する姿勢である。周知のように、2007年7月、ブッシュ政権は、NPTに加盟しないインドとの原子力協定を禁止してきたそれまでのアメリカ政府の政策を転換して、「米印原子力協定」を締結した。政策転換の理由としては、アフガン戦争のためにインド,パキスタンとの協力が必要となったこと、アジアで台頭してきた中国に対抗するためインドを戦略的なパートナーにすること、めざましい経済発展を遂げているインドがアメリカ経済にもたらすと期待される利益効果などが挙げられる。アメリカは、この協定は、インドの「核平和利用の推進」援助を目的とするものであると主張しているが、平和目的の供給核燃料が軍事転用されない保証はどこにもない。かくして、NPTに加盟していないイスラエル、パキスタンの核兵器保有を黙認、インドには積極的協力、加盟しているイランには敵対的姿勢、NPTを脱退した北朝鮮にも敵対的姿勢、と二重、三重と全く不統一な基準をとってきたが、オバマ政権もこの点でこれまでの政権と何も変化していない。

 一方、パキスタンはアフガン戦争でアメリカに協力しながらも、核問題では以前から中国と密接な関係を維持しており、パキスタンは核弾頭の設計図を中国から入手したと言われている。さらに、原発建設でも中国から支援を受けており、2000年から稼働中のチャシマ原発1号と来年完成予定の2号機では中国政府がすでに協力しており、さらにこれから建設予定の3、4号機でも中国企業2社と建設契約を締結した。さらに、パキスタンは石油輸入ではイランとの接近政策をすすめており、最近、イランとパキスタンの間に石油パイプラインを建設することで合意している。

 原子力技術の輸出にあたっては、その管理に取り組んでいる原子力供給国グループ(NSG)の承認が必要で、NSGの指針では核兵器開発を行っているNPT非加盟国には技術協力を禁止しているが、アメリカも中国もこれを全くなし崩しにする政策を押し進めてきた。最近は、インドに対する原子力技術輸出競争に、米露仏加の上に日本、韓国までもが加わり、核軍縮どころか、企業利益のためなら核拡散など構っていられないという、なりふりかまわぬ状況をますます強めているのが現状である。

F) オバマ政権の「極東政策」=核抑止力の維持

 日本政府が長年とってきた「非核三原則」政策が、実際にはなんら実体をともなわないものであることが最近明らかとなった。1965年1月、当時の佐藤栄作首相がリンドン・ジョンソン大統領と会談したおり、佐藤の側から、日米安保条約に基づき日本をアメリカの核の傘下に入れてくれるようにとの要請があり、これをジョンソンが即時受け入れるという回答を行った。67年末、偽善的にも、佐藤は「非核三原則」を政策とすることを国会で発表。69年11月のニクソン大統領との会談では、沖縄返還交渉をめぐって、「緊急時の場合には、事前通告無しにアメリカは日本に核兵器を自由に持ち込むことができる」という密約を佐藤は結んだ。皮肉なことに、佐藤は後に、この「非核三原則」を打ち立てたことでノーベル平和賞を受賞している。さらに、我々が推測していた通り、核兵器を搭載した艦船が頻繁に日本に立ち寄っていたことも明らかとなった。最近の調査では、米軍核搭載艦船の日本領海の通過、寄港を容認する密約は、1960年の安保条約改定時に岸信介(佐藤栄作の実兄)内閣の藤山愛一郎が米国とすでに交わしていたことが判明した。

 これらの事実は、すなわち、日米安保条約、したがって「日米安保同盟」の中心的な柱の一つが「核抑止政策」であるということを如実に表している。換言すれば、安保条約自体が破棄されなければ、あるいは日米安保同盟の根本的な改革なしには、日本が、さらには東北アジアが非核地帯になることは不可能であるということである。したがって、普天間基地の問題に限らず、日本領土にあるいかなる米軍基地の問題と言えども、日米安保同盟のあり方自体が根本的に問われ、真の意味での日米平等関係が築かれない限り、最終的解決は不可能である。最近、普天間問題の紛糾のために、ようやくこのことが、日本国民に理解され始めたようではあるが。

 核兵器と基地との問題では、これまで日本でもアメリカでもほとんど報道されていない重大な問題がある。それは、アメリカが、日本にある米軍基地をアジアにおける核戦争計画のための重要な拠点ととらえているということである。1967年、米軍太平洋司令部は、府中の米空軍基地の第5空軍内に、「太平洋作戦連絡事務所」(Pacific Operation Liaison Office 以下POLOと略)を設置した。その後、POLOは、太平洋地域で空海両軍を駆使して核戦争を遂行するSingle Integration Operation Planなる統一作戦計画を立て、訓練を行う任務を負った。その訓練の中には、横田基地ならびに嘉手納基地を使い、これらの基地から飛び立つ飛行機から、日本の近辺海域で行動する原子力潜水艦や爆撃機に核攻撃の命令を発信する「ブルー・イーグル作戦」呼ばれる実戦訓練があり、この訓練が70年代から90年代に頻繁に行われたし、現在も行われている可能性が極めて高いのである。

 米軍核戦略ならびに核密約に関連した米軍基地問題には、こうした背景があるのであるが、それでは、「核軍縮」を唱えるオバマ政権は、どのような具体的な「核軍縮案」を日本に対して提供したであろうか。答えは明瞭である。全く何らの具体的な提案もないどころか、相変わらず東北アジアにおける「核抑止力」の維持と、米軍基地の維持というこれまでのアメリカ政府の政策をそのまま踏襲しており、普天間問題でも一歩も譲歩しようとはしない、かたくなな姿勢を示している。

 最後に、北朝鮮の核兵器問題に対するオバマの政策について考察してみよう。

 1980年代末から90年代初期にかけて冷戦が終焉を迎えると、北朝鮮もまた南北対話政策を打ち出し、90年秋には南北首脳会談を開き、相互尊重ならびに共存をめざす努力を開始。翌91年末には「南北基本合意書」を取り交わし、韓国との共存のみならず、その同盟国であるアメリカや日本との修交にも努めた。91年末には「朝鮮半島の非核化共同宣言」を採択し、「核兵器の実験、制作、製造、受領、所有、貯蔵、配備及び使用」を一切行なわず、「原子力エネルギーは平和目的のみに利用する」ことを、北朝鮮は韓国と共に約束したのである。しかも、この宣言を足がかりに、92年1月には米国との交渉にも乗り出し、南北が統一されるならば、それ以後も米軍の駐屯を認めてもよいという、驚くべき条件まで北朝鮮は米国に提示して譲歩した。現在の北朝鮮をめぐる政治危機を考える時、この90年代初期の状況を私たちはもう一度思い起こし、なぜ現在のような危機的状況に変化してしまったのかを深く考察すべきである。

 詳しく述べている時間がないが、すでに言及したように、1992年、ブッシュ(父親)政権の北朝鮮敵視政策以来、いろいろ紆余曲折はあるが、基本的には、アメリカの北朝鮮に対する圧迫・封じ込め、敵視政策のために、北朝鮮をますます窮地に追い込んでしまい、結局は核兵器開発・保有という最悪の状況を作り出してしまった。

 オバマが米国大統領になって、米朝関係は好転するかと期待されたが、オバマは基本的に北朝鮮とイランを「ならず者国家」視するブッシュ政策をそのまま継承し、一方で「核兵器廃絶」という理想を掲げながら、他方では北朝鮮との交渉継続を怠った。したがって、昨年4月の北朝鮮ロケット発射は、こうしたオバマ政権に対する北朝鮮の不満の繰り返し表明であった。このロケット発射に対して、日本側は、あたかも北朝鮮がミサイル攻撃をしかけてくるがごとくに国民の恐怖感を煽り、この機会をミサイル防衛システム配置と軍備拡張の正当化のために多いに利用した。オバマ大統領も、この発射を「挑発行為」であり「国際法違反」と批難した。では、毎年のごとく、米兵2万5,000人あまりを動員し、原子力空母や原潜を使って、北朝鮮との戦争を想定して行う大規模な米韓合同軍事演習は、北朝鮮に対する「挑発行為」ではないのか。長距離大陸間弾道ミサイルを多数保有する国家の大統領が、北朝鮮のロケット発射を「違法」と主張する権利があるのかだろうか、という疑問が起きてくる。

 こうした日米韓3国の反応が、さらに北朝鮮をして、2回目の核実験を強行させるまでに追いつめてしまった。その核実験に対して、オバマ大統領は「核抑止力」で自国と同盟国を防衛すると公言し、日本でも核武装必要論を唱える政治家も現れるという事態を生み出し、核のカードには核のカードで対応するという、全く非生産的で馬鹿げた悪循環の繰り返しである。

 つい最近も、韓国と米国は、韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没を、ひじょうに疑惑の多い「証拠」で北朝鮮による軍事挑発と決めつけ、この「北の挑発」に警告するとして米韓合同軍事演習を日本海で行った。動員された兵員は8千人、航空機は最新鋭ステルス戦闘機F22を含む200 機、そのうえ、米空母ジョージ・ワシントンやイージス艦など20隻という大規模なものであり、この米韓の動きこそ「軍事挑発」と呼ぶべき超圧的なものであった。これに対する北朝鮮の反応は、予期されたごとく、「核抑止力」を使っての対抗であり、オバマの核抑止力政策には核抑止力で応酬するという、悪循環をまたしても強めてしまった。

G) これからの展望:問題にどう対処すべきか

 以上のような核とアメリカのオバマ政権をめぐる現状を外観した上で、我々市民社会側は、今後どのように核廃絶運動を進めて行けばよいのであろうか。問題は山積みで、どの問題も解決は簡単ではない。いくつかの重要な問題点を箇条書きして考えてみよう。

1)「核軍縮・核廃絶を目指す、すばらしい大統領、オバマ」という「オバマ神話」をいかに崩すか。
アメリカ大統領になるためには、どうしても必要不可欠な2つの要素がある。それは、アメリカ愛国主義と資本主義イデオロギーである。この点で、オバマもその例外ではありえない。核兵器保有は、大統領であるために欠かせないこの2つの要素と密接に連結している問題であり、したがって、アメリカ大統領が「核軍縮」や「核廃絶」を唱えることをナイーブにそのまま信じることがいかに危険であるか、そのことを我々は警告し続ける必要がある。しかし、これは究極的にはアメリカ資本主義が「軍産複合体制」によって支配されており、この体制に真っ向から反抗しようとする政治家は大統領にはもちろんなれないというのが厳然たる事実である。「軍産複合体制」をいかに崩すか、これはひじょうに難しい問題であるが、この問題を避けて反戦・反核・平和運動を推進することはできない。

2)核問題は、核軍縮や核廃絶だけに焦点を当てていかに議論を展開しても、解決策を見いだすことは不可能である。
とくに、中近東の紛争問題、それと絡んだ印パ紛争、アフガン戦争問題、これらの根本的な解決なくして、核問題の解決は不可能であることをはっきりと認識し、我々市民社会側が、これらの紛争解決=平和構築に貢献できるような平和運動を展開して行く必要がある。反核運動(反核運動に携わる活動家、研究者)は、なぜか核問題のみに焦点を当てて、紛争解決問題を無視ないし軽視する傾向があるが、その点での反省が必要。とくに、無差別爆撃は通常爆弾であろうと核兵器であろうと「人道に対する罪」であるという視点から、今もアフガニスタンやパレスチナで続く無差別爆撃に対する批判運動の展開が必要である。

3)核兵器使用は許せないが、「核抑止力」はしかたがないのではないかという一般的な考え方をいかに変革するか。
「核抑止」思想そのものが徹底的に否定されない限り、核廃絶は不可能であることは言うまでもない。「核抑止」思想を否定する思想を世界の多数派にするためには、「核抑止政策」と呼ばれるものが、実際は「政策」などではなく、重大な「犯罪行為」であるという認識を普遍化する必要がある。「核抑止政策」は、ニュールンベルグ原則によって規定されている「平和に対する罪」である。なぜなら、「核抑止力」の実態は、核兵器を使って無差別大量虐殺=「人道に対する罪」を犯す計画を立て、且つその準備をしているということに他ならない。このことを、我々は市民運動の中で繰り返し言い続け、ことあるごとに強調し、一般市民の考え方を変革していかなくてはならない。

4)核兵器禁止のための具体的且つ実現可能な提案を、我々市民側が積極的に行うことが必要。
反核・核廃絶をいかに心情的に強く訴えても、残念ながら、現在の核兵器をめぐる世界状況を変革することはできない。これまでの反核・核廃絶運動は、具体的提案ということでは不十分であった。幸いにして、我々には今や、IALANA(国際反核法律家協会)、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)、INESAP(拡散に反対する技術者と科学者の国際ネットワーク)が中心となって作成した、核兵器の開発、実験、生産、貯蔵、移譲、使用および使用の威嚇の禁止、ならびに全廃といった様々な面にわたる総合的なモデル条約があり、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が現在その普及に努力している。と同時に、HANWA(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会)は、核兵器使用禁止条約の早期実現化のために、1977年ジュネーブ条約追加議定書を利用するという提案を行い、赤十字社をこの運動に巻き込む努力を行っている。HANWAが提唱しているのは、とにかく核兵器の使用を禁止だけは早期に実現するために、すでに市民への無差別攻撃や環境破壊を禁止している1977年ジュネーブ条約追加議定書に、核兵器を含むあらゆる大量破壊兵器の使用禁止条項を付加するというものである。このような形での具体的提案と、それに対する市民社会側の広い支援を拡大していく必要がある。

5)核大国=国連安保理で拒否権を持つ常任理事5カ国という事実が、核兵器廃絶に向けての大きな妨げになっているが、これを解決する方策はないか。
核問題解決に対する積極的な提案が国連安保理に提出されても、結局は、常任理事国が拒否権を使うことで、いつも実現しないという状況が続いている。こうした事態をなんとか変えることができるような国連改革案の作成と、そうした案を実現するための運動の展開を真剣に考える必要がある。実は、今では信じられないようなことだが、1946年、当時はアメリカしか保有していなかった核兵器を国連に移譲し、国連の「国際管理」の下に置くという案が、アメリカ政府内で議論されたことがある。この方式は、もう一度よく考慮してみる価値がある。核保有国の核兵器の削減を各国の自主的行動にまかせていては、「備蓄」する核兵器の数はいつまでたっても減らない。各国が、全ての核兵器を徐々に国連に移譲し、国連の権限で完全廃棄処分していくという方法が議論されてもよいのではなかろうか。

 以上のような提案を、「夢のような話である」と批判する人が必ずいる。しかし、実現が少しでも可能な「夢」をもち、それを少しでも現実化していく努力がなければ、現実世界は変わらないどころか、ますます悪化するばかりである。我々は、今後も「夢」をもって、積極的に行動していかなければならない。

【関連記事】
■「2010 NPT 再検討会議」の結果とオバマ政権の核政策批判(前編)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/09/2010_npt.html

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【プロフィール】
田中利幸(たなか・としゆき)
広島市立大学広島平和研究所教授。西オーストラリア大学にて博士号取得。オーストラリアの大学で教員を長く務めた後、敬和学園大学教授を経て現職。第2次大戦期における戦争犯罪の比較分析を研究テーマとしている。著書に『空の戦争史』(講談社現代新書)、『戦争犯罪の構造―日本軍はなぜ民間人を殺したのか』(大月書店)などがある。

2010年9月 3日

小沢氏による記者会見オープン化についての全発言

 3日午前、テレビ朝日の番組内で小沢一郎氏が記者会見のオープン化について語った内容について編集部のTwitterで速報しましたが、内容に不正確な表現がありました。多くの方にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。下記に小沢氏が記者会見オープン化について語った全内容を文字おこししましたので、訂正記事とさせていただきます。(文中敬称略)

★  ★  ★

■テレビ朝日『スーパーモーニング』より(2010年9月3日放送)

山口一臣:これはちょっと経済から離れてですね、けっこう民主党政治の根幹に関わることなんだと思うんですけれども、やっぱり政権交代に期待したひとつはさっきの予算の組み替えもあったともうんですけど、もうひとつはやっぱり政治の「見える化」というんですかね、公開性、オープン化というものをすごく多くの人は期待したと思うんですね。

ところがですね、さっき私が申し上げたように、鳩山さんのときも菅さんのときも、たとえばその全閣僚の記者会見をオープンにするということをですね、小沢さんが代表のときにですね、民主党の記者会見で約束してたと思うんですね。それが実現されていない。それからたとえば取調べの可視化であるとか、あるいは官房機密費の使途を公開するということを08年の段階でおっしゃってたと思うんですけれども、たとえば菅さんは、菅さんの時で言うと、最初の記者会見で「公開する」とおっしゃった。ところが次は「検討します」に変わった。次の会見ではですね、「官房長官にまかせています」と変わった。

つまり、公開・オープンという状況がどんどん後退しているような印象が私にはあるんですね。その点小沢さんはどうされますか?

小沢一郎:政治もね、行政も、あるいは民間も、あらゆる面でクローズドな社会なんですね。日本は。ほとんど知らないです。

たとえば政治家が大臣になっても、役所が本当に信用するという人は別としても、ほとんど教えないです。本当のことは。だから、ましてや一般国民、あるいは野党なんかの場合は情報がまったくないわけです。僕は行政だけじゃない、会社だってそうだと思いますよ。よくわからない。ですから、そういう意味で、もう少し、アメリカほどにする必要はないけれども、僕はヨーロッパぐらいのオープンな社会にしなきゃいけない。

僕、一生懸命政治資金の話されますけれども、僕はずっと前から政治資金はオープンにすればいいんだと。どっからもらって、何に使ったか、これをオープンにすればあとは判断は国民がすればいい。こんなところからもらってけしからんとか、これに使ってけしからんとか。それは国民がすればいい。そのためにはオープンにする。だから僕は一度不動産の購入のことでいろいろ指摘されましたから、僕は法律上は公開する必要のない事務費も全部公開しました。マスコミにも。

ですから、クリーン、クリーンが必要だという人は、全部オープンにしたらいいんじゃないかと思う。

司会:総理大臣になったら、政治資金も含めて、全部オープンにしますよという法律に変えたらどうですか?

小沢:僕はそう思う。

鳥越俊太郎:記者会見はオープンにしますか?

小沢:記者会見はオープンにします。僕はもう自民党時代からそうしてます。

大谷昭宏:小沢さんは前、「記者会見なんてものは記者に対するサービスなんだ、これはサービスでやってるんだ」とおっしゃって、だいぶ記者とやりあったことがありましたよね。

小沢:はい。

大谷:私は、小沢さんが総理になるとぶら下がりも含めて、むしろ逆に小沢さんの方がむしろクローズになってしまうのではと思うんですよ。

小沢:僕はね、ぶら下がりはというよりも、定期的にちゃんと会見したらいいじゃないかと思う。

山口:総理が。

小沢:そう。官房長官が毎日毎日会見するというのも、官房長官がすべきかどうかも僕はわかりません。

大谷:いままでからすると小沢さんというのはオープンというよりもクローズだと。記者会見も嫌いだと。

小沢:別に好きではないですけど。オホホホホ(笑)

鳥越:小沢さんはね、オープンにしてるんですよ。雑誌の記者も外国人の記者もみんな入ってる。

小沢:どうぞどうぞ。

鳥越:これをまず第一に実現されたのは小沢さんなんです。だから今度総理大臣になった場合にね、官邸の官邸記者クラブ、これはなかなか既得権があるので難しいんです。どうします?

小沢:僕は今までどおりオープンにしたいと思います。

山口:週刊誌も行っても大丈夫ですか(笑)

発言者不明:ぶら下がりはやらない方がいい?

小沢:やったっていいけど、あれは単純にただちょこっとした言葉だけでしょ。やりとりできないでしょ。ですから僕は、毎週かどうかは別として、可能な限り月に一ぺんでも二へんでもいいから、僕は総理が会見をしたらいいと思う。あるいはこういうテレビを使って総理がしゃべるとか。

《情報公開についてのやりとりはここで終了》

小沢氏 検察審査会で強制起訴に同意を明言

 民主党代表選に立候補している小沢一郎前幹事長は3日、テレビ朝日の「スーパーモーニング」に出演し、収支報告書虚偽記載の事件で検察審査会が2度目の起訴相当の議決を出して強制起訴となった場合、「堂々と受けて自分の潔白を主張したい」と述べた。ただ、仮に検察審査会の議決を出した場合に強制起訴となっても小沢氏が裁判で有罪となる可能性は限りなくゼロに近く、小沢氏は、無罪が確定した後には検察審査会のあり方についての議論が出てくるだろうとの見通しを述べた。

 また、番組内で山口一臣週刊朝日編集長に記者会見のオープン化について問われた小沢氏は、「ぶら下がり」を減らして定例会見を増やす意向であることを明らかにした。

2010年9月 2日

田中利幸:「2010 NPT 再検討会議」の結果とオバマ政権の核政策批判(前編)

 広島平和研究所教授で『空の戦争史』の著者でもある田中利幸氏がオバマ政権の核政策についての文書を寄せて下さいました。オバマ政権が発表してきた関連政策を客観的に分析することで、いかに「核廃絶の夢」が「幻想」であるかを批判しています。「核軍縮・核廃絶を目指す、すばらしい大統領、オバマ」という「オバマ神話」を崩し、市民社会側が今後どのように核廃絶運動を進めて行けばよいかを示したものです。(前・後編にわけて掲載)

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NPT再検討会議の失敗

 ブッシュ政権によるCTBTの批准拒否、ABM条約からの脱退、新型核兵器の開発という米国の核兵器拡大政策と「対テロ戦争」遂行政策という影響をもろに受けてNPT再検討会議が大失敗に終わった5年前と比較して、今回は、昨年4月5日のオバマ大統領のプラハ演説による核軍縮政策の提唱と、それに続く米露間の核削減にむけての具体的交渉の推進、オバマのノーベル平和賞受賞といった比較的明るい条件のために、今年のNPT再検討では核廃絶という最終目的に向けて、なんらかの進展が見られるのではないかという期待が一般に強かった。とくに、「核兵器禁止条約 Nuclear Weapons Convention(以下NWCと略)」の早期締結をこの数年強く訴えてきた市民社会側としては、NWCの設定に向けて、今回の再検討会議では、かなりの進展があるのではないかという希望的な観測を持っていた。

 例えば、今年2月に長崎市で開催された「第4回 核兵器廃絶・地球市民集会ナガサキ」で採択された長崎アピール2010(pdfデータ)においても、再検討会議に向けてNWCの必要性について次のように言及された。

「核兵器を禁止し、廃絶する条約の準備のために話し合うことを目的として、志を同じくする国家と市民社会の代表が参加するプロセスを創り出そう。そのようなプロセスは潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が提案した5項目提案(※1)を手掛かりとすべきである。この提案には核兵器禁止条約又は諸条約の枠組みについて話し合いを始めるように求めた呼びかけも含まれる。」

 5月初旬、実際に再検討会議が開かれ、「最終文書」に含むべき事項についての議論が始まると、期待していたごとくNWCの必要性を訴える声が聞かれるようになり、5月14日段階での主委員会の議長草案にはNWCに関して次のような明確な提言が含まれた。すなわち、「核兵器国は核軍縮の最終段階と核兵器のない世界の維持に必要な法的枠組みを確立するために特別の努力を払うべきである。この目的には、国連事務総長の5項目提案、とりわけ核兵器禁止条約や相互に補強し合う条約の枠組みが役立つ」のであり、「核兵器国は(戦術核を含めた核軍縮、非核国に配備された核兵器の問題など)7項目を含む具体的措置について2011年までに協議し、その結果を2012年の準備委員会に報告すべきである。この協議を踏まえて、国連事務総長は時間枠を決めて核兵器を完全廃棄するためのロードマップに合意する方法と手段について協議する国際会議を2014年に招集すべきである」というものであった。

 ところが、日が経つごとに草案の内容が骨抜きにされ、核兵器禁止条約実に向けて当初設定されていた明確な期限が外されてしまった。しかも、さらに、米露仏英の核大国は、具体的期限を取り除いてしまった「核軍縮過程の最終段階や関連措置は期限を決めた法的枠組みで追求する必要があることを確認する」という修正表現にすら反対。米英仏は「期限をきめた」という文言の削除を求め、ロシアは全文の削除を求めた。これに対して新アジェンダ連合国などからの巻き返し活動がみられたものの、結局、最終文書は我々が当初期待していたものとは極めて遠いものとなってしまった。すなわち、NPT再検討会議は、「核兵器のない世界を実現、維持する上で必要な枠組みを確立すべく、全ての加盟国が特別な努力を払うことの必要性を強調する。同会議は、国連事務総長による核軍縮のための5項目提案、とりわけ同提案が強固な検証システムに裏打ちされた、核兵器禁止条約についての交渉、あるいは相互に補強しあう別々の条約の枠組みに関する合意の検討を提案したことに留意する」、というものである。明確な期限としては、「核兵器国は、条規の履行状況について、2014年の準備委員会に報告するよう求められる」というものだけになってしまった。

 これまでNPT再検討会議の最終文書でNWCについて言及されたことはなく、今回が初めてであったため、これを比較的高く評価するような論評が市民社会の側にも見られるのであるが、果たしてこれがそれほどまでに評価されるべき事柄であろうか。10年前の2000年NPT再検討会議の最終文書と比較してみれば、ほとんど何も進展が見られないのは明らかであり、いったいこの10年間、核兵器国は言うまでもなく、各国政府と我々市民社会も何をしてきたのかと、自己批判的に問わなければならない状況にある。その意味で、私は、今回のNPT再検討会議は明らかに失敗に終わったと判断すべきだと考えている。ただし、付言しておかなければならないのは、元々NPT体制そのものは、安保理5常任理事国による核の独占保有を永続化し、同時に原子力産業を推進させるという目的のもとに、核大国によって設置されたものであるということである。したがって、NPT体制そのものに核廃絶実現を可能にするような機能を期待すること自体が誤りであり、NPT体制を活用しながらも、NPT体制の外での核廃絶運動を推進していくことが重要であることを忘れてはならない。

失敗の一原因=オバマ政権の核・軍事政策に対する分析と警告の甘さ

 NPT再検討会議への期待過剰、すなわち判断の誤りは、オバマ大統領が創り出した「核兵器廃絶目標に向けての世界的コンセンサス」という神話に市民社会が踊らされ、なにか具体的な変革の兆しが見えてくるのではないかという幻想を我々がもってしまったことに、かなりの原因があるように私には思える。その典型的な一例が、広島市長秋葉忠利氏が率先してすすめてきた「オバマジョリティー」という運動であろう。「核廃絶の夢」をプラハ演説でぶち上げたオバマを、税金を使ってまで「オバマジョリティー」という造語を市職員の名札に付けさせ、ポスターやTシャツまで作ってオバマを賛美し、オバマを支持すれば核軍縮や核廃絶に容易につながってくるはずという幻想を産み出した市長の罪は決して軽くはない。(市民の税金を使って一政治家を支援すること自体が違法行為であると思われる。)しかし、こうした幻想にとらわれたのは広島市民だけではなく、程度の差はあれ、世界各国の反核平和活動家の中にもかなり広く見られた現象であった。

 オバマの「核廃絶の夢」が、「夢」どころか、いかに内実を伴わない、人を惑わす「幻想」であるかは、NPT再検討会議の数ヶ月前からオバマ政権が次々と発表してきた幾つかの重要な関連政策内容を客観的に分析してみれば自明なのであるが、なぜか、私自身を含め市民社会の側で、この点についてNPT再検討会議前に強く批判を展開し、市民に警告を発することを怠ってしまった。

 その重要事項とは、

(1)昨年10月末にオバマが署名した2010年度核兵器関連予算の額と内容
(2)今年2月にオバマが出した2011年度核兵器関連予算の要求額と内容
(3)今年4月に発表された米国政府の「核体勢見直し Nuclear Posture Review(以下NPR)の内容
(4)2010年度国防費ならびに2011年度国防費要求額の驚くべき増加と、非核兵器戦略である「即時世界攻撃Prompt Global Strike(以下PGSと略)」の内容
(5)オバマ政権のアフガン戦争政策
(6)オバマ政権のNPT非加盟国である核兵器国、すなわちイスラエル、インド、パキスタンに対する姿勢と、それと密接に関連する対イラン政策
(7)オバマ政権の日米安保同盟政策と米軍基地問題に対する姿勢
(8)オバマ政権の北朝鮮に対する姿勢

 時間的制約から各項目を詳細に説明している余裕がないので、できるだけ簡潔に述べるが、これらを総体的に見てみれば、オバマの「核削減」政策の背後にある実相が明らかになる。

オバマ政権の核兵器関連予算の実態とNPR

 オバマが大統領に就任して間もなくの昨年2月末に出された2010会計年度予算教書では、ブッシュ前政権が2006年に着手したが08年以降は議会の反対で凍結されている「信頼性代替核弾頭 (PRW)」(=長期保管・配備可能な高性能小型核弾頭)開発計画を、引き続き凍結すると発表。しかし、それに代わる措置として、「寿命延長計画(LEP)」(=老朽化し、2040年までに寿命を終える現存の核兵器を、単純で堅牢な新型弾頭で置き換えるという計画)の継続を提案した。この提案に基づいて昨年5月にエネルギー省が議会に提出した核兵器関連予算の説明では、「現在の能力の維持」を計りつつも、「今後の核戦略政策決定により変動する」こともあるというフレキシブルな方針が明らかにされた。

 その結果、昨年10月末にオバマが署名した核兵器関連予算額は前年と同水準の63.8億ドル(約6,400億円)とされた。そのうち、「核兵器備蓄活動」には総額約15億ドルが当てられたが、その中には、トライデント潜水艦発射弾道ミサイル用核弾頭W76のLEPプログラム(2億2,320万ドル)、爆撃機・戦闘機搭載用B61核爆弾の非核部品に関する研究(3,250万ドル)、新しいプルトニュウム生産施設であるロスアラモスの化学冶金施設建替え計画第1段階(9,700万ドル)、核弾頭の2次爆発部分を組み立てるオークリッジのY-12ウラニュウム処理施設設計費(1億600万ドル)などが含まれていた。

 今年2月に出した2011年度の核兵器関連予算要求額は、今年度より9.8パーセントも増額の70.1億ドルである。その中には、化学冶金施設建替え計画第2段階(2億2,500万ドル=今年度予算の2.3倍)、Y-12ウラニュウム処理施設建設(1億1,900万ドル、さらに2012-15年の4年間で8億8,500万ドルを投入する予定)、巡航ミサイル用核弾頭W80のLEPプログラム(3,400万ドル)が含まれている。さらには、長距離飛行爆撃機搭載用の核弾頭搭載可能な新しいクルーズミサイル開発のための必要予算が8億ドルと見込んでおり、来年度はその最初の研究プロジェクトのために363万ドルを要求している。年間70億ドルという予算額は、前ブッシュ政権の予算額をはるかに超える史上最大の核兵器関連予算である。

 長期計画によると、核兵器関連予算の総額として、2015年まで毎年平均3億ドルづつの増額を見込んでいる。今後10年間では、核兵器と関連施設の近代化のために800億ドル、運搬手段の近代化のために1,000億ドル、合計1,800億ドルという膨大な金額を投入する計画とのこと。しかも、その使途内容は、ブッシュ前政権が着手した「信頼性代替核弾頭 (PRW)」開発プログラムの事実上の復活に直結するようなものが多いのである。つまり、米露核削減交渉で作戦配備用の戦略核弾頭の数は大幅に減らすが、備蓄用の核兵器を維持するだけではなく、それらを高性能なものに取り替えて行こうという意図がここには明らかに見えるのである。「新しい核兵器の開発はしない」と繰り返し述べているオバマであるが、実質的には、それと同じようなプログラムを多額の予算で進めているのが実情である。すなわち、オバマがプラハ演説で「我々は安全かつ効果的な(核)兵器を維持して敵に対する抑止力を保つ」と述べた、その具体的な姿がここに如実に現れているのである。

 したがって、2月に出たこの核兵器関連予算要求額の詳細を見てみれば、4月6日に出されたNPRの内容は、2月段階で容易に推測できるものであった。NPRでは、核弾頭の削減を一方で強調しながらも、核抑止力の維持と、小規模ながら高性能で高能力("smaller and highly capable")の核兵器攻撃力という点が幾度も強調されている。核攻撃の対象となりうるのは、他の核兵器保有国、NPT非加盟国、そしてNPTに違反する国家とされており、核兵器保有国の中に北朝鮮、NPTに違反する可能性のある国としてイランやシリアが想定されているのである。しかも、「核兵器を持たないイラン対ししては、必要な場合には、核先制攻撃もありうる」というのが国防省の方針であり、オバマの「核抑止力にのみ限定」という公式政策と矛盾する。では、オバマがプラハで格調高く唱えた「核廃絶の目的」はどうなったのか。この問いに対して、エネルギー省のある高官は、NPRの中には、大統領の最終目的に向けての「全般的に哲学的な一歩が含まれている(There is this overall philosophical step)」と説明している。「哲学的一歩」とは、アメリカの官僚が産み出すなんとも巧妙な表現であるが、これは「具体的なものは何もない」ということの口実でしかない。

後編につづく)

※補注1 潘基文国連事務総長が提案した5項目提案
(1)核不拡散条約(NPT)加盟国に核軍縮交渉を誠実に行うよう求める

(2)安保理が核軍縮首脳会議の開催など軍縮プロセスを強化する措置を検討する

(3)非核地帯条約など多国間条約を普及する

(4)核兵器保有国の責務と公開性の増進

(5)その他の大量破壊兵器の廃絶、ミサイル・宇宙兵器通常兵器の制限

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【プロフィール】
田中利幸(たなか・としゆき)
広島市立大学広島平和研究所教授。西オーストラリア大学にて博士号取得。オーストラリアの大学で教員を長く務めた後、敬和学園大学教授を経て現職。第2次大戦期における戦争犯罪の比較分析を研究テーマとしている。著書に『空の戦争史』(講談社現代新書)、『戦争犯罪の構造―日本軍はなぜ民間人を殺したのか』(大月書店)などがある。

《録画放送中》 小沢 vs 菅 民主党代表選 公開討論会(2010年9月2日)



《撮影・配信:民主党本部》

 本日13時より行われた民主党代表選の公開討論会を録画放送中です。「急激な円高」「外交」「政治とカネ」などなど、多様なテーマで両候補者が議論を交わしています。ぜひご覧ください。(映像提供:民主党)

民主党代表選!菅直人総決起集会での挨拶[ノーカット版]

本日おこなわれた、民主党代表選へ向けての「菅直人総決起集会」での菅直人首相の挨拶(ノーカット版!)映像です。

9月1日、菅直人首相は、9月14日に行われる民主党代表選へ正式に立候補の届出をし、夕方5時より決意表明演説を行った。

会場には多くのマスコミのほか、菅直人首相を支持する1年生議員や、石井一氏などベテラン議員も多数集まった。

挨拶の内容は以下のとおりです。

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本当に厳しい環境で、1年生議員のみなさんに励ましを頂いていること。そして、渡部恒三先生、石井一先生など、先輩や大先輩に一同に会して頂き「日和るなよ、がんばれよ」という言葉を頂き、心から感謝します。

私が初めて衆議院に立候補した1976年、ロッキード選挙と言われていました。名簿が100しかなく、無所属でした。誰も当選しない、と思っていましたが、たった1人だけ当選を確信していた人がいました。それは菅直人自身です。

結果は落選でしたが、終わったときには当選したかのようにみんなが喜んでくれました。政治とカネを訴えれば、「簡単ではない」という人もいるけれど、応援してやろう、という人もいる。それが政治の世界に入った大きな大きな一歩でした。

いま、日本を変えるために、何が必要か。「政策が大事だ」「力が大事だ」いろいろあります。しかし、「国民みなさんからの信頼」なくしては何もできません。

民主党は、そうした国民のみなさんから「この党が言うんだから、ここまでがんばってやってきているんだから、それなら一緒にやろうじゃないか」という風に思ってもらえて初めて、この困難な状況から突破する道が開けると確信しています。

代表選は私と小沢さんと2人の候補です。国民のみなさんに、これからの「日本のかじ取り役」「信頼できる総理」、どちらの候補者を選んでいただけるのか、という選挙です。

ある人が「今度の代表選は、民主党の代表選だけでなく、『カネが大事』『数が大事』といった古い政治から、『カネも地盤もないけれど志があれば、国民との議論があれば政治は動くんだ』という新しい政治と、どちらを選ぶかという、いわば歴史を選ぶ戦いだ」と言われました。

歴史、時代を選ぶ戦いの先頭に立たせていただけることを本当に光栄に思います。私はとにかく、これまで言いたいことを言ってきました。しかし、これからは言ってきたことを命がけでやり抜こうと思います。

text by Infoseek 内憂外患

2010年9月1日、衆議院第二議員会館:《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

2010年9月 1日

民主党代表選!小沢一郎総決起集会での挨拶[ノーカット版]

本日おこなわれた、民主党代表選へ向けての「小沢一郎総決起集会」での小沢前幹事長の挨拶を"ノーカット"で配信します。

会場には多数のマスコミが多数詰めかけたほか、羽田孜元首相、輿石東参議院議員会長のほか、平野博文前官房長官や海江田万里氏など、小沢氏を支持する議員が集った。

挨拶の内容は以下のとおりです。

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今日(9月1日)から、「明日の民主党のリーダー」そして「明日の日本のリーダー」を決める代表選挙が始まりまった。今日集まった仲間の皆さん、そして多くの友人や全国からのご支援の声に支えられ、身の程をわきまえず出馬を決意した。

ここに至るまでに、多くの方々が「決意しろ」というお話を頂くたびに、日本の代表としてこの選挙に出るべきかどうか、自分の胸に何度か問いかけて熟慮をしてきた。

今日の政治的、危機的な状況にあって、それを乗り越えていく、という期待を込めてみなさんは民主党に政権を委ねたのだと思う。一員として国民のみなさんに訴えてきた。それを考えたとき、その使命や責任を果たさずに「ここから逃げようとするのか!? 逃げていいのか?」と自問した。微力であり、不肖ながら、そういい続けてきた以上、自身が先頭に立って、国民の期待と責任を負わなければならない、という思いで立候補を決意した。

民由合併ののち、前原代表の後を引き継いで民主党代表になった。まず直面したのは千葉7区の補選で、太田和美君の選挙戦だった。非常に厳しい状況だったが、「みんなで力を合わせれば必ず勝てる」と、本人を中心に努力し、勝利した。

参院の選挙、そして昨年の衆院選で、私ども、特に私は先頭にたって「政治とは国民の生活を守ることだ」という理念のなかから、「国民の生活が第一。」を掲げて選挙戦を戦った。その理想を実現するため、国民にいろいろな約束をした。

基本的に官僚に全てのことを丸投げしていた行政を、国民の代表たる政治家の手に、つまり国民主導に戻そう、ということだった。それができて初めて、国民の生活第一の政治ができる、ということだった。

そういう意味で、国民の皆さんに約束したことを一つひとつ、着実に実現していく責任がある。私は昨年の総選挙に戻り、政権運営の任に、政権与党として頑張らないといけないと考えている。

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鳩山前内閣に引き続いて、菅内閣も一生懸命にしていることだろうと思う。そのことはお互いに認識しつつ、与党一致で協力しなければならないのは当然だ。

しかし、あの選挙のとき国民から寄せられた期待が、今日の政治を行っていく中で、少しずつその期待感が希薄になっているように感じてならない。

私も長い間、自民党の政権中枢で毎年のように予算編成をやっていたが、結局は強大で膨大な数と力を誇る官僚組織の前に今日なかなか我々が約束した理想を貫くことは難しい現状が国民の皆様に映っているのではないだろうか。自民党時代と変わらないのが実態なのならば、我々が政権交代を目指し、託された意味はまったくない。

我々が政権を託された意味は、役所が全てを仕切っている、という仕組みを根本から変える、という前提に立ってこそ初めて、国民の生活が第一の政治ができる。

これまでと同じようにしていて、同じように完了の言うとおりにしていて、我々の改革、はできない。今回あえて選挙に出馬した意味はそこにある。自分の一身を省みず、今日を迎えている。我々が主張し、国民が期待したことを実現するため、そして私としては長い政治生活の集大成として、そして国民の皆さんへの最後のご奉公として頑張りたい。

多少政権の経験がある。また、心ある官僚諸君も十分今日の事態を認識している。政治の責任で筋道の通ったことを言えば必ず付いてくると確信している。

民主党代表選!小沢一郎総決起集会、山岡賢次
http://www.youtube.com/watch?v=Kkf1PARCzRc

民主党代表選!小沢一郎総決起集会、平野博文
http://www.youtube.com/watch?v=gZrxaaVOyQU

民主党代表選!小沢一郎総決起集会、赤松広隆
http://www.youtube.com/watch?v=1J09qcgQsRs

民主党代表選!小沢一郎総決起集会、海江田万里
http://www.youtube.com/watch?v=LK6GfUCTvyo

text by Infoseek 内憂外患

取材・撮影:Infoseek 内憂外患・《THE JOURNAL》編集部

《録画放送中》菅直人vs小沢一郎 共同記者会見


〈動画配信:民主党本部〉

昨日、民主党代表選挙に立候補することを正式に表明した小沢一郎前幹事長と菅直人総理の共同記者会見が、本日16:00からおこなわれました。

時間割は以下のとおりです。

16:00 開会
16:05 候補者決意表明(各5分)
16:15 統一質問
16:25 自由質問
16:45 候補者しめくくり(各3分)
17:00 あいさつ〜閉会

国民投票選挙ではないにしても、この会見での発言は、少なからず世論に影響を与えるものと思われます。

小沢前幹事長は本日午前中に、菅総理は17時から総決起集会をおこないました。

小沢前幹事長と菅総理の総決起集会での挨拶は、間もなくノーカットで配信します!!

菅直人:元気な日本の復活を目指して

※以下の文章は、民主党代表選の届出時に提出された菅直人氏の政見です。

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元気な日本の復活を目指して
(民主党代表選挙立候補政見)
菅 直人

 現下の円高・株安など経済情勢が厳しい中で代表選に立候補することとなりました。私は、総理大臣として国政の空白を絶対に作らない、という覚悟で臨みます。国民の皆様にはどうかご理解をいただきたいと思います。

立候補の決意
 日本は大きな転換点の真っただ中にあります。バブル経済の崩壊から20年も続く閉塞状況の中、我が国の疲弊は限界に達しています。一方、長い歴史で見れば、明治維新で近代化に突入してから右肩上がりを続けた成長路線に限界が生じていること、これも将来に対する不安の背景となっています。

 従来の「役所のための行政」を駆逐する「国民のための政治」が必要です。今こそ「政治の力」が求められています。我々民主党は、昨年の歴史的政権交代で新たな時代の扉を開きました。いよいよ、国民が本当の意味で主体的に参加する民主主義、クリーンで開かれた政治を掲げて歩んでいく時が到来しました。新しい政治への道のりを先導する力強いリーダーとなる決意を胸に、あの薬害エイズ問題のとき、金融国会のときの「闘う菅直人」として、今回の代表選に立候補します。

「雇用創造」と「不安解消」で元気な日本の復活を目指す
 私は、日本が直面する限界を打破し、「元気な日本の復活」を目指します。

 第一の柱が、「雇用」を起点とした国づくりです。国民全てが意欲と能力に応じて働ける社会を実現します。雇用が広がれば、所得が増え、消費を刺激し、経済が活性化します。仕事を通じて「居場所」を見出し、自分らしく生きることで社会に活気が溢れます。一に「雇用」、二に「雇用」、三に「雇用」で取り組みます。

 第二の柱が、私が「最小不幸社会」と表現してきた、貧困、病気、孤立化といった不安を取り除き、お年寄りも、女性も、子ども達も、国民全てが安心して暮らせる社会、誰一人として家庭・企業・地域から排除されない社会の実現です。

 排除の連鎖を断ち切り、参加の輪を広げる。これが、私が目指す国の姿です。実現に向け、自ら現場に出向き、陣頭に立って指揮します。

「熟議」の民主主義で難局を打開する〜「政局」より「政策」で臨む
 大きな岐路に立った今、この国の進むべき道を選ぶのは易しいことではありません。これを成し遂げる鍵は、民主党の中で、政党の間で、国民の意見を広く集めて議論を尽くす「熟議」の民主主義だと考えます。この努力を重ねれば、国会の「ねじれ」を乗り越え、国民の支持を得た合意形成が可能だと信じます。特に、社会保障改革や消費税を含む税制抜本改革には様々な考えがあります。多様な意見を抑えるのではなく、徹底した議論により国民の理解と納得をいただくのです。

 こうした基本姿勢に立ち、以下に掲げる取組を実現します。夢のある政治を次の世代に引き継ぐため、命を賭けて挑む覚悟です。

1.クリーンでオープンな民主党の原点へ
 民主党は結党以来、新しい時代の政治を目指し、地盤や資金がない中、熱意と努力で頑張った人たちが集まって成長してきました。政権を託した国民の期待に応え、この原点を改めて心に刻み、民主党らしい、クリーンでオープンな党運営を行います。

(1)適材適所による全員参加で「挙党態勢」の民主党へ
 ベテラン、中堅、若手それぞれの持ち味があり、これから取りかかる大仕事に欠くことのできない人材です。全員が適材適所で活躍できる党運営の舞台、それが復活した政策調査会です。みんなの意見を持ち寄って徹底的に議論し、必要があればワーキング・グループを特別に結成して具体的な政策提言を取りまとめます。党務・国対を含め多様なメンバーに党運営を担ってもらい、熟議の政治を民主党から発信します。ねじれ国会の下、より強い衆・参の連携を図ります。

(2)足腰の強い地方組織に向けた支援
 都道府県連の活動、特に地方選挙に万全の体制で臨むため、党本部事務局に地方組織強化、選挙支援チームを新設します。そのメンバーが頻繁に地方に出向き、各地域の実情にマッチした体制整備を進めます。来年の統一地方選挙に向けて選挙活動や地方組織強化のノウハウ豊かな人材を地方に派遣し、勝利を確実なものとします。また、党の資金は、各地域の声を正面で受け止め、透明なプロセスを経て配分します。

(3)クリーンな政治に向けた改革
 カネのかからないクリーンな政治の実現に向け、企業・団体献金の禁止、衆議院で80議席、参議院で40議席の国会議員の定数削減について党内で徹底的に議論し、年内に党の方針を取りまとめます。

2.「雇用創造」と「不安解消」を最優先に政策実現を本格稼働
 6月上旬から政権を担って3ヶ月足らず。その間、各地を視察し、現場の声に耳を傾け具体策の行程表を練ってきました。これから本格稼働の段階に突入します。
 私が描く国の姿の柱である「雇用創造」と「不安解消」には、総理大臣が主導し、最優先で取り組みます。

(1)雇用を起点に改革を推進
 私が策定した「新成長戦略」を、新設する「新成長戦略実現推進会議」で着実に実施し、医療・介護、2020年の温室効果ガス25%削減を見据えた環境分野などで新規雇用を創出します。地方の中小企業や農林水産業の現場には、やりがいのある仕事がまだまだあります。「新卒者雇用緊急対策」や「日本国内投資促進プログラム」で国内雇用を増やします。こうした雇用創造を起点として「経済成長改革」「財政健全化改革」「社会保障改革」の3つの改革を一体的に実現する「好循環のサイクル」を、協力に、速く回転させていきます。財政健全化からは一歩も逃げることなく取り組みます。社会保障改革は財源と一体で議論し、その中で消費税を含む税制の抜本改革についても検討します。税制の抜本改革の実施に当たっては、国民の信を問います。社会保障・納税者番号制度の導入も結論を出します。

(2)一人ひとりの悩みに向き合って不安を解消する
 急増する単身の高齢者を守るため介護保険制度を改革し、24時間地域巡回・随時訪問などの単身世帯向け「新型サービス3本柱」を整備します。また、乳がん・子宮頸がんから女性を守るため「女性がん克服3カ年集中戦略」を策定し、推進します。「安心子ども基金」を延長・拡充し、保育サービス整備の加速や児童虐待の防止を強化します。

(3)地域主権の設計図を国民参加で描く
 国民が政策の企画立案から参画する行政は、地域単位でこそ可能です。地域が描く設計図に沿って、新設する「地域主権推進会議」で権限・財源の移譲に結論を出し、併せて出先機関の統廃合を行います。さらに、国の役割を限定し、地方公共団体を行政の基本とするための法案を検討します。一方、国民参加の地域主権の土台となる住民同士の支え合いのネットワークづくりを、新設する「新しい公共推進会議」で応援します。優勢改革法案については早期の成立を図ります。

(4)2009マニフェストの実現に誠実に取り組む
 2009マニフェストは、政権交代実現のため、「国民の生活が第一」の理念に基づき、私たちが魂を込めてまとめたものです。これを疎かにはできません。子ども手当・出産支援などの子ども・子育て支援、高校の実質無償化、年金制度改革、農業の戸別所得補償を始め、盛り込まれた政策は、無駄削減に全力を挙げた上で、できる限り誠実に取り組みます。一方、財源の制約などで実現が困難な場合は、国民に率直に説明し理解を求めます。

(5)行政のムダ削減は最優先で断行
 行政のムダ削減は財政健全化の大前提です。与党議員の参加を増やし、事業仕分けを特別会計に広げるなど、行政刷新会議の活動を強化します。国家公務員人件費の2割削減に向け、人事院勧告を超えた削減を目指すとともに、労働基本権付与を含めた公務員制度改革を加速させます。また、独立行政法人や政府系公益法人改革を進め、国民にとって真に必要な事業に財源を集中させます。一方、行政が、セールスの発想、サービスの精神で変化に柔軟に対応して仕事をするよう徹底します。

(6)「平和創造国家」を標榜する外交
 世界平和という理想を求めつつ、現実主義に立脚した外交を展開します。日米関係の深化とともに、アジア諸国との信頼構築に努め、「東アジア共同体」構想を推進します。また、核不拡散・核廃絶、PKO等に積極的に取り組み、世界の平和実現に努めます。普天間基地移設問題については、日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄の負担軽減に全力を挙げます。何より沖縄の方々の理解を得るため、誠心誠意説明を尽くします。9月以降の国連総会、COP10、APECなどの外交日程に精力的に取り組み、日本の主張を世界に発信します。

3.行政の縦割りを打破する官邸主導・政治主導の貫徹
 以上の取組を、官邸主導・政治主導で進めます。我が国の行政には「縦割り・縄張り意識」が依然根強く存在しています。これを打破しなければ、国民の願いをかなえる政策は実現できません。

 官邸主導・政治主導を徹底するため、予算は総理大臣が直接指揮して編成します。国家戦略室は、局への格上げを念頭に、従来の垣根に囚われない自由な発想で政策を構想する組織に強化します。また、省庁間で合意できない課題があれば、機動的に関係閣僚会議を開催し、最後は私が結論を出していきます。


 これからも誠実に国民と向き合いながら、正直な政治を創っていくことが、私の原点です。よろしくお願いいたします。


以上

小沢一郎:「国民の生活が第一。」の政見政策

※以下の文章は、民主党代表選挙の届出時に提出された小沢一郎氏による政見です。

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「国民の生活が第一。」の政見政策

1、基本方針
日本は今、日本人の誇りであった「経済大国」という言葉が空しく響くほど経済が停滞を続け、一方では、就職できずに人生に絶望している若者や、自ら命を絶つ人たち、行方の知れない高齢者が相次ぎ、社会が急速に崩壊しつつある。そのような閉塞感の打破を国民に約束した昨年の総選挙のマニフェストと政権交代の原点に立ち返り、総選挙マニフェストを誠実に実行することに全力を挙げる。

それにより、すべての国民が安心して安定した生活を送り、日々の暮らしに夢と希望を取り戻すことができるようにする。

まず、「自立と共生」の理念と「国民の生活が第一」の原則に基づいて、政治、行政、経済、社会の仕組みを一新し、国家予算207兆円の全面組み替えを断行する。もって、行政の無駄を徹底的に省き、マニフェスト実行の財源に充て、日本経済、国民生活、地域社会を再生する。特に、あらゆる分野で日本型セーフティネットを構築しつつ、外需に頼らない成熟した経済・社会を実現する。そのために、民主党内の全員の力はもとより、党派を超え、官民を超えて、国民の総力を結集する。

2、日本経済の再生
(1)急激な円高に対処するため、緊急経済対策用の予備費として平成22年度予算に計上している2兆円(国庫債務負担行為を含む)を直ちに全額執行し、住宅ローン供給の円滑化、エコポイントの延長、学校・病院の耐震化をはじめとする景気対策を実施する。
(2)円高効果を生かす一方、今後の急激な円高については、日本経済を守るために、市場介入を含むあらゆる方策を果断に実施する。
(3)国の「ヒモつき補助金」を順次全て地方への一括交付金に改める。
(4)高速道路の建設は今後、国が建設費を支援して都道府県が自ら行うことのできる仕組みを創設する。それにより、全国の高速道路網を速やかに完成させる。
(5)緊急経済対策と補助金の一括交付金化、地方自治体による高速道路の建設などにより、地方の雇用を安定的に増やし、地方経済を活性化させることで、日本経済再生の起爆剤とする。

3、国民生活の再生
(1)全ての国民が同じ年金に加入する年金制度の一元化を実施し、最低保障年金(月額7万円)と加入者の報酬比例年金という2階建て年金制度をスタートさせる。それとともに、国民健康保険、介護保険、生活保護は実施を全て地方自治体が行っている実態を踏まえ、社会保障関係費としてまとめて地方に交付する。これにより、各地方の実情に応じて、かつ地方の知恵を生かして、より効果的な福祉が行える仕組みに改める。以上の制度創設に向けて国民的議論をおこし、年内に具体的方針を示す。
(2)地域の中核的な病院に必要な機能を集約し、病院・診療所間のネットワークを構築することで、地域医療を再生する。
(3)子ども手当ては、子育てをめぐる厳しい家庭環境に最大限配慮し、平成23年度に現行の月額13000円から20000円に引き上げ、平成24年度から満額の月額26000円を支給する。

4、地域経済・社会の再生
(1)「ヒモ付き補助金」の一括交付金化によって、地域のことは地域で決める真の地方分権(地域主権)を実現するとともに、地場産業を活性化させ、地方の雇用の場を拡大する。
(2)人口規模や集積力の大きい地方都市を中核都市(基礎自治体)と位置づけ、そこを中心に医療・介護・福祉のネットワークを整備し、地域に密着した新たな成長産業として育成する。
(3)日本の技術の宝庫である中小企業に対し、国内外での活動を積極的に支援する。
(4)一次産業の安定と地場産業の活性化を図り、食糧自給率を向上させるため、農業の戸別所得補償を拡充するほか、漁業についても平成23年度から段階的に所得補償を導入するとともに、農林漁業と加工・流通の一体化を促進する。
(5)農林漁業を再生し、中核都市を整備することで、都市と自然の共生という形で、均衡のとれた地域再生を実現する。

5、行政および政治の改革
(1)国家公務員の天下りは全面的に禁止する。
(2)公務員制度の抜本的改革を実施して、公務員が誇りを持てる処遇をし、公務員に労働基本権を認める。また、地域主権の実現に合わせて、国家公務員の定数を削減し、地方公務員への移転を進める。
(3)地域主権の確立に伴い、国の地方支分部局は廃止する。
(4)独立行政法人、特殊法人と特別会計は必要不可欠なものを除き廃止あるいは民営化する。またそれらの関係団体(公益法人、関連会社等)も原則として廃止あるいは民営化する。
(5)政府・与党の一体化を進めて、内閣の機能を強化し、国民主導の政治を実行する。
(6)国会の機能を強化すると共に、官僚答弁の禁止等により、国会も国民主導の仕組みに改める。

6、責任ある外交の確立
(1)日米同盟は最も重要な2国間関係であり、一層緊密な協力関係を構築する。同盟関係は従属関係ではなく、対等のパートナーであることから、日本は国際社会において、米国と共に今まで以上にその役割及び責任を分担する。
(2)日韓、日中関係は日米関係に次ぐ重要な2国間関係であり、長い関係史を踏まえて、政治、経済、文化等あらゆる分野で協力関係をさらに深める。
(3)日中韓3カ国の協力を前提として、環太平洋諸国も含む東アジア共同体構想を推進する。
(4)日本の平和と世界の平和を維持するため、日本国憲法の理念に基づき、国連を中心とする平和活動に積極的に参加する。
(5)米軍普天間基地移設問題は、沖縄県民と米国政府がともに理解し、納得し得る解決策を目指して、沖縄県、米政府と改めて話し合いを行う。

7、新しい公共
明治以降の国家形成の過程で、「公共」イコール「官」という意識が強まり、中央政府に権限や財源が集中した。その結果、社会や地域のつながりが薄れひとりひとりが孤立しがちな社会となった。「新しい公共」とは、人や地域の絆を作り直し、支え合いと活気がある社会をつくるための自発的な共同作業の場のことである。NGOやNPOをはじめ、ボランティアや企業の社会貢献活動を積極的に支援するとともに、政府の持つ情報もできる限り開示する。

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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