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天笠啓祐:なぜ動物皆殺し政策を続けるのか

 7月27日、山田正彦農水大臣は、口蹄疫の問題について述べた際、「家畜伝染病予防法」の改正にふれた。当日の記者会見の速記録によると、宮崎県との間で意見の相違があり対策に影響が出たため「国の危機管理体制を強化する」方向で改正を考えている、という発言内容だった。さらに国の権限を強化して、家畜の皆処分を迅速に進めたい、とも述べていた。これに対して新聞記者から反論はなかった。

 家畜伝染病予防法は、病気をなくすために、罹患した動物はもちろん、周辺の動物も皆殺しにする考え方の上に成り立っている。「病気を見て動物や農家を見ない」考え方である。市民感覚では、なぜ家畜をあれほどまでに大規模に殺さなければいけないのか、という思いがある。この点について、考えてみたい。

 口蹄疫は、きわめて感染力の強い口蹄疫ウイルスが引き起こす病気である。感染すると発熱したり、口の中や蹄の付け根に水膨れが出たりするなどの症状が出る。そのためこの名前が付けられた。しかし、死亡率は高くない。健康な家畜であれば、まず死ぬことはありえない。

 ではなぜ口蹄疫の牛や豚を、なぜ殺すようになったのか。この点について、山内一也東大名誉教授がその経緯を述べている。この病気は、元々、英国で地方病として定着し、農民に大きな被害をもたらしてきた。社会防衛の観点から、病気が広がらないように、1892年以来、その周辺の家畜を含め、すべて殺処分する方式が始まった。

 ところが1920年に発生した病気は、殺処分対象が多すぎて、殺す順番が回ってくる前に直る動物が出始め、農民の間で殺処分方式に疑問が広がったという。この病気は、免疫力がついて自然に治癒することが判明したのである。農民の間で、治癒するのだから殺す必要はないのでは、という声が強まり、議会で議論が進められた。投票の結果、僅差で殺処分方式継続が採用された。殺処分方式は、議会による多数決で決定されたということである。

 この殺す方式を、国際的なものにしたのがOIE(国際獣疫事務局)で、1957年に口蹄疫予防のための国際条約を作り、この殺処分方式を国際的に採用させていった。日本では、1951年に施行された「家畜伝染病予防法」によって先行して、口蹄疫にかかった牛や豚を、強制的に殺処分することになった。殺さなければ、法律に違反することになる。宮崎県の種牛を飼育していた農家が、最後まで殺処分に抵抗した。しかし、国は強制的に殺処分に踏み切った。国としては、法律に基づいた執行措置であり、この法律がある限り殺処分は繰り返される。

 グローバル化によって、もはや口蹄疫から逃れられる国がなくなってきた。この病気と共存していく仕組みが求められているはずだ。そのため、これまでのような、農家に負担を強い、動物をいたずらに殺す、時代遅れの殺処分方式を止めることが必要である。病気発生を確認したら、時間をかけ直るのを待ち、農家に負担を強いないように転換をはかる必要がある。そのためには、国際条約を改正させるとともに、家畜伝染病予防法を改正させる必要がある。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

【関連記事】
■DNA鑑定は誰の利益に資するべきか(神保哲生の「マル激トーク」)
http://www.the-journal.jp/contents/jimbo/2009/06/dna.html

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【プロフィール】 天笠啓祐(あまがさ・けいすけ)
1947年東京都生まれ。1970年早稲田大学理工学部卒業。01年より市民バイオテクノロジー情報室代表。科学ジャーナリスト。著書に「DNA鑑定―科学の名による冤罪」(共著)、「生物多様性と食・農」、「世界食料戦争」など。

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病気に感染した牛を食べたがる人がいないので、商品価値が落ちてしまい売り物にならない。結果として清浄国政策をとっていることと合わせて殺処分にしていると聞いたことがあります。冷静にみれば、肉に脂の刺しの入った牛なんて明らかに病気であるにも関わらず、商品価値が高く高値で取引される。なんと人間の身勝手なことか。そんなことに振り回される家畜も家畜農家も不憫で仕方ないです。人は食べるために生物の命を奪っているのだから、もう少し寛容になるように努力するとともに、いたずらに危険を煽ることなく、正しい病気の知識を広めることで(マスゴミはこの点でも終わっているので期待はできないが)、無駄な殺生することの無いように願うばかりです。

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