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北海道警裏金問題の報道をめぐる裁判とジャーナリズムのあり方〈2〉 »

北海道警裏金問題の報道をめぐる裁判とジャーナリズムのあり方〈1〉

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 『月刊マスコミ市民』2010年4月号に掲載されたインタビュー「北海道警裏金問題の報道をめぐる裁判とジャーナリズムのあり方」がメディア関係者の間で話題を集めている。語り手は本誌執筆陣の一人でもあるジャーナリストの高田昌幸氏で、北海道警の裏金問題を追及していた北海道新聞が、現場記者の知らないところで道警幹部と「手打ち交渉」を持ちかけていたことを明らかにしている。今回は「月刊マスコミ市民」編集部から特別に許可をいただき、3回にわたって本誌に全文掲載する。まさに、権力と癒着する現代のマスコミの本当の姿がここにある。

■『月刊マスコミ市民』ホームページ
http://masukomi-shimin.com/

(以下、『月刊マスコミ市民』2010年4月号より転載)

────────────────

 北海道新聞は2003年11月下旬から05年6月にかけて、北海道警察の裏金問題を追及した。一連の報道からは相当の年月が過ぎたが、実は北海道新聞取材班が記した2冊の書籍をめぐって、札幌で裁判が続いている。原告は、裏金問題が沸騰していた際、道警最高幹部の1人だった佐々木友善・元総務部長。被告は、取材班の責任者だった高田昌幸氏、道警キャップだった佐藤一氏、そして北海道新聞社、出版元の講談社、旬報社である。さらに、ジャーナリストの大谷昭宏氏、作家の宮崎学氏も補助参加人として訴訟に加わっている。裏金報道はその後、北海道新聞と北海道警が「手打ち」して終わったとも言われたが、一連の報道とは何だったのか。そこからメディアが汲み取るべき教訓は何か。当時、北海道新聞の本社報道本部次長(デスク)だった高田さんに、事件や裁判に関する経緯、裁判で輪郭が見えてきた「手打ち」の実態などについて、率直に語っていただいた。聞き手は、マスコミ市民フォーラムの川﨑泰資理事長。

★   ★   ★

■他社より遅れて報じた道警裏金事件

川﨑:北海道警察(以下「道警」という)の裏金問題(註1)が起きてから、かなりの月日が経ちましたね。

高田:裏金問題の報道は2005年夏に事実上終わっています。もっと追及しろという声を今も時々聞きますが、私自身は、いつまでも道警裏金問題でもあるまい、という気持ちがあります。ただ、北海警の佐々木友善元総務部長が私や会社、出版社を提訴したため(註2)、この問題は続くことになりました。提訴が「道警裏金報道のその後」というタイトルの「芝居」のスタートだとすると、まだ真ん中を過ぎたくらいでしょう。それと、最初にお断りしておきますが、きょうは、裁判の被告として、ここに来ました。答えられないことは答えられません。内容は、一審判決後の記者会見、その後の支援集会などで話したことばかりになりますが、構いませんか。

川﨑:はい。結構です。前半戦の裏金報道では北海道新聞(以下「道新」という)は快勝しました。ところが、その事件報道をきちんと追う社がなかったことが、今の事態を招いていると思うのです。

高田:本格的に追う社がなかったのは事実ですが、もともとは我々も「追った立場」でした。2003年の11月23日の夕方に、鳥越俊太郎さんがキャスターをしていた「ザ・スクープ」(テレビ朝日系)が、旭川中央署で捜査用報償費が裏金になっていたのではないかとの疑惑を見事にスクープしました。裏付けとなる内部資料も放映されました。それがすべての始まりです。その時点で、私たちは内部資料すら手に入ってなかった。翌朝、朝日新聞と毎日新聞の朝刊が報じ、道新は2日遅れて紙面化しましたので、3番手くらいでのスタートでした。

 旭川中央警察署の不正経理問題が発覚してから10日も経っていない2003年12月2日〜3日の段階で、我々は「裏金作りは全道警ぐるみで行われている」と、先に結論を書きました。その後の道新の報道は、この結論をどうやって道警に公式に認めさせるか、という内容だったのです。書きっぱなしにはしませんよ、ということです。あっちの警察署でも、こっちの警察署でも、と積み上げ方式で取材するのがふつうのパターンかもしれませんが、そうやって時間をかけていると道警内部で口裏合わせなどが進み、本格的な解明はできないと思いました。だから、最初に結論を書こうと。道警も他社も、そこまでやるとは考えていなかったでしょう。遅れてスタートしたものが、あっという間に何段跳びかで前に行ってしまい、他社は事件を追うこともしませんでした。

川﨑:道新の記事は、通常は北海道に居住していなければ見られませんね。

高田:この問題を、道新だけがガンガンやれば必ず孤立して「一人旅になってしまう」と、最初から思っていました。そこで、当時は珍しい試みでしたが、早い段階で社のホームページに道警の裏金関連の記事をすべてアップしたのです。それを見た全国各地の新聞社や市民から、問い合わせが寄せられました。警察問題に詳しいノンフィクション作家の小林道雄さんは、「毎朝、東京の自宅で道新のホームページをチェックするのが楽しみだった」とおっしゃっています。

川﨑:道新が快勝していた段階で、会社の上層部から「もういい加減にしてくれないか」という話があったのでしょうか。

高田:私かデスクとして采配をふるっている最中には、「書くのをやめろ」という圧力は一切ありませんでした。うわさの類は別にして、「やり過ぎだ」「道警との関係をどうするつもりだ」などと直接言ってくる人は、一人もいませんでした。編集局幹部もそろって「頑張れ」と言ってくれていましたし、ある地方の若い記者1人を除いて、直接疑問をぶつけてきた人はいません。その若い記者とは、いい議論ができました。

川﨑:そうだとしたら、道新の幹部は「何とかして高田さんを降ろしたい」と密かに考えたのでしょうか。

高田:それは分かりません。裏金報道が続いている間は、社内の圧力のようなものは本当に何もありませんでした。道新では、夕刊から朝刊への引き継ぎの午後2時前後に報道本部のデスクが集まる会議があります。その場で、「自分のやり方が100%正しいとは思っていないので、疑問や提案があればどんどん平場で言ってください」と、しょっちゅう言っていました。(続く)

[註1]北海道警裏金事問題
2003年11月に北海道警察旭川中央警察署が不正経理を行なっていたことが発覚、後に各部署、各課、ほとんどの警察署でも同様なことが判明して、関係幹部が大量に処分された。日本の警察史上初の大規模な不祥事。北海道新聞の警察担当デスクだった高田昌幸氏は、道警キャップの佐藤一氏ら道警記者クラブ所属の警察担当記者を取材に当たらせ、記者クラブに陣取ったまま、長期に渡ってキャンペーンを張った。

[註2]北海道警元総務部長の提訴
2006年5月31日、元道警本部総務部長の佐々木友善氏は、北海道新聞社、旬報社、講談社、北海道新聞記者高田昌幸氏と佐藤一氏の5者を相手取り、出版によって名誉を毀損されたなどとして、600万円の慰謝科の支払いと書籍の回収などを請求する民事訴訟を札幌地裁に起こした。また、旬報社から出版された「警察幹部を逮捕せよ!」の共著者である大谷昭宏氏と宮崎学氏は、内容に責任があるとして被告側の補助参加をしている。裁判の経緯は、「市民の目フォーラム北海道」のホームページ内の「道警vs道新訴訟」(http://www.geocities.jp/shimin_me/hokkaidou.htm)が詳しい。初回から傍聴を続けている元道警釧路方面本部長・原田宏二氏が記録を綴っている。

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群馬県警でも「裏金疑惑」があり、それを告発しようとした元警部補の大河原さんが不当逮捕されて起訴された事案が現在前橋地裁で係争中です。

こちらにも是非視線を向けてください。

【群馬県警の裏金問題を究明する大河原宗平さんを支える会】
http://happytown.orahoo.com/keiseikyou/

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