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〈著者インタビュー〉森功:『腐った翼─JAL消滅への60年』

 発売直後に増刷が決まった注目作品『腐った翼―JAL消滅への60年』の著者・森功(もり・いさお)氏が、JALが再生できなかった最大の理由や今後の課題などについてインタビューでたっぷり話していただきました。

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腐った翼―JAL消滅への60年』(2010年6月、幻冬舎)

*   *   *   *   *

森功氏(ノンフィクションライター)
「JALが生まれ変われなかった最大の理由」
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─発売直後に増刷が決定され、読者からたくさん反応が来ていることと思います。特にJAL内部の方から反響が大きいのではないでしょうか

「JALはこのままでは潰れるのではないか」

 本書ではそのような書き方をしています。「JALがよくなるように取材協力してきたのにJALがなくなったら元も子もないじゃないか」と協力者から怒られるケースがありました。

 取材に協力いただいた人に対して心苦しい気持ちはなくもありませんが、私はJALのために執筆しているわけではありません。JALのあり方を伝えることが本書の目的であり、主眼です。お怒りは甘んじて受けます。その一方で、「よく書いてくれた」という声や「現在のJALの状態まできてしまったら、色んな意味で清算すべきだ」という冷静な意見も、JAL内部から寄せられています。

─前回執筆された『血税空港』は空港政策が問題点でした

 私は以前からJALの取材をしていました。取材を進めていくにつれて、JALの経営の足を引っぱる要因の1つに航空行政の問題点が浮かび上がってきました。それをまとめた本が「血税空港」です。もともとはJALの取材から派生した作品でした。

─航空業界の「政官業」のつながりの強さが非常に伝わってきました

 世界中の航空会社は軍事目的の国策企業として始まり、民間経営になってからの歴史はまだ浅いです。

 JALは民間経営に移行した後も政・官とのつながりが強く、最後まで国策企業として体制を保っていました。

─JALが民間企業として生まれ変われなかった最大の理由はなんでしょうか

 稲盛和夫(元京セラ代表)氏がJAL会長に就任し、「部長以上の人たちは当てにならない」と言いました。

 JALが生まれ変われなかった最大の理由は、経営者が育たなかったことでしょう。確かに優秀な人は多いです。しかしJALは官僚が経営してきた会社であり、1987年の民営化以降に育った民間人経営者についても民間会社の経営者とは違います。国策会社の中の経営者です。経営者の意識が薄く、結局民間会社として一本立ちできなかったのです。

 社内には問題が起こればあいまいにするという経営手法が踏襲され、サービス業としての経営視点が不足していました。

─本書の「JALと自民党」では、民間企業では考えられないような政治家への営業の実態が綴られていますね

 JALの営業は一般企業の法人営業とは違います。民間企業の法人営業は、営業部隊が法人にアプローチします。JALは代理店営業方式をとっていて、代理店任せの殿様営業を展開していました。

 その一方で政治家に対しては無料の搭乗チケットを渡すなど、根深い癒着構造があります。独占企業のようなものですから、政治家を取り込み、路線配分や機材購入時に便宜をはかってもらい経営が成り立っていたのです。「親方日の丸」体質と言われる所以です。

─昨年8月に政権交代が起こりました。政権が代わりJALの処理に変化はありましたか

 2009年夏に同年4月から6月までの第1四半期決算で史上空前の赤字が判明しました。1000億円近い赤字は、苦労して取り付けた政策投資銀行からの緊急融資額とほぼ同額で、ここからJALの経営陣や国交省は大慌てしていきます。

 JALの臨界点、つまりどうしようもなくなる時期と政権交代の時期がたまたま重なりました。当時の民主党政権は自民党とは違う方法でJALを処理しようといままで裏に隠されてきた腐敗を表に出し、新たに再生させる期待が持たれました。

─本書の中で政権交代直後の民主党政権の動き批判していますね
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 新しく大臣に就任した前原は新たに「JAL再生タスクフォース」を結成しますが、わずか1カ月で解散させています。その迷走ぶりはJALの先行きをますます不透明な状態に陥らせました。企業再生支援機構に処理を委ねられたJALは、年明けには会社更生法の申請をして倒産します。

 結局自民党とやっていることはかわっていません。法的整理に踏み切ったことは今までにないことです。では法的整理によってJALの負の部分を明るみに出し、膿を出せたかというと、十分に出し切れていません。

 JALを破綻に追い込んだ経営責任はどうなっているでしょうか。誰が何をしたのか、責任の所在はどこか、未だに明らかにされていません。スポーツでも、まずは反省すべき点を明らかにすることが次の試合に向けた改善の第一歩になります。反省すべき点をうやむやにしたまま次に行き、さらに進むということを繰り返すのがJALの特徴です。1985年の御巣鷹山事故以降続いている最大の問題点です。

─今後のJALの課題は

 JALはこれからが大変です。

 8月末提出期限の更生計画づくりに四苦八苦してきました。結局、新聞などでは銀行団との協議が合意したと書いていますが、実態は合意決着にはほど遠い内容です。肝心な問題解決を秋以降に先送りすることになりました。事態はさほど変わっていません。

─マスメディアは十分に伝えきれていませんか?

 なぜか甘いですね。問題点を指摘していません。この本にはJALがいかに同じ過ちを繰り返してきたかが書かれています。新聞社も当然わかっているはずなのに伝えきれていません。なぜなんでしょう。遠慮しているとしか考えられません。

─不要と言われ続けてきた静岡空港が昨年6月に開港しました。開港前に県行政のミスがあったにも関わらず、県内で圧倒的なシェアを誇る静岡新聞は批判をしませんでした。一地域における政官業と、広告費を受け取る報道のもたれ合いがわかりやすい構造でしたが、全国紙となると別の問題があるのでしょうか。

 それに近いことでしょう。例えばJALが新聞記者に対して接待してきたり、新聞記者を始めマスメディアと経営層が一蓮托生になっている部分があります。本来チェックしなければいけないはずのメディアが企業の派閥抗争にまで荷担しています。メディアとしてあまりにも距離感のとり方がおかしいです。JAL報道に関してはいくつも見られました。

─森さんが取材する際に気をつけていること、取材スタイルなどありますか

「隠された部分をのぞき見る」というイメージを持って取材をし続けています。

 私が育った週刊誌ではいろんな分野の取材をやらされます。政界、経済界、ヤクザ、芸能界や相撲業界など、一見別分野に見えて、意外と何でもつながっているものです。幅広く取材しなければそのつながりはわかりません。

 とはいえ、最近は興味をそそられる取材対象が減ってきています。政治家も面白い人がいないでしょう。相変わらず小沢氏の動向が雑誌で取り上げられているのはそれだけ魅力があるからです。菅直人総理や鳩山由紀夫氏ではダメなのです。

─本書をどんな方に読んでもらいたいですか

 典型的な日本の古いタイプの会社のあり方を書いたつもりです。そういう意味では、ビジネスマンであれば思い当たる方も多いと思いますので、航空業界に限らず幅広く読んでいただきたいです。

─最後に、これからどのようなことを執筆する予定ですか

 航空業界は政界との競争もあり、航空行政の行方も気になります。引き続き取材して伝えていきたいと思います。

2010年7月22日《THE JOURNAL》編集部取材&撮影 

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isao_mori100722_3.jpgのサムネール画像【プロフィール】 森功(もり・いさお)
1961年福岡県生まれ。ノンフィクションライター。
ヤメ検―司法エリートが利欲に転ぶとき」「同和と銀行」(ともに「月刊現代」連載)が2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」受賞。その他著書に『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人』『サラリーマン政商 宮内義彦の光と影』『血税空港 本日も遠く高く不便な空の便 (幻冬舎新書)』がある。

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JALを残す必要があるかどうか。誰も口にしないが、本当は、そこが問われているのである。 [詳しくはこちら]

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