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2010年6月26日

菅政権に仕事をさせるかさせないかという選択 ── 参院選に問われていること

takanoron.png この参議院選挙には白か黒かというような鮮やかな政策的対立軸はほとんどないに等しく、結局のところ、

▼菅直人政権に参院の単独過半数に届く60かそれに近い議席を与えて、ともかくもここは落ち着いて思う存分仕事に取り組んで貰って、その結果は3年後の総選挙もしくはダブル選挙で厳しく判定し、気に入らなければ菅のみならず民主党から政権を取り上げればいいと考えるか、

▼それとも、どうせこの内閣ではダメだと分かっているから、民主党には現有54以下の議席しか与えずに衆参ネジレの地獄に追いやって、早ければ9月の同党代表選、遅くとも来春の予算審議までの間に小沢グループや自民から分裂した小党群を含めてガラガラポンの政界再編が起こって、何かしらヨリマシな政権が生まれることに期待するのか、

 ──という選択である。

●"非常時"にドタバタは止めよう!

 私の立場はハッキリしていて、「もうドタバタはいい加減にして貰いたい」ということであり、国民の多数の気持も同じではないかと推測する。

 選挙戦である以上、各党党首はじめ候補者も、唾を飛ばし声を嗄らして自分らの政策を主張し他党のそれを批判するのは当然だろう。しかし、少なくともこの選挙に関する限り、マニフェストなどどうでもいいと言ったら北川正恭=元三重県知事に叱られるが、あれこれの個別政策を比較してどちらがよさそうかを選ぶというような"平時"の選挙とは訳が違う。日本はいま"非常時"である。

 第1に、この国では06年以来、4代の総理が1年間かそこらの任期でコロコロと代わって、国難ともいうべき状況下で政治それ自体がロクに機能せず、そのことが国民の不信どころか世界の嘲笑を招いている。何党の誰政権であるにせよ、こんなことを4年間に5度までも、しかももっと短い周期で繰り返すようでは、この国は奈落に沈む。

 第2に、自民党3代の総理の辞め方と民主党鳩山前総理の辞め方では"非常時"の意味が違う。自民党にとっては、そもそも小泉純一郎が"最後の切り札"であって、「自民党をブッ壊す」の名言が象徴するように、自民党総裁が反自民を偽装するというトリックによって長期政権の延命を図ったのだったが、その小泉が去った後にもう1枚も2枚も別の"最後の切り札"などあるはずがなく、つまりはその後3代のコロコロ辞任は半世紀を超える同党支配体制の断末魔状態を表していた。それに対して鳩山(と小沢)の辞任は、始まったばかりの革命過程のほんの緒戦における最初の政治的殉教者であって、後に続く者に貴重な教訓を残すことが出来た。一言で言って、米国・官僚・自民党・マスコミなど反革命的な旧体制による総掛かりの抵抗と戦って21世紀の扉を押し開くには、もっともっと巧妙な知恵と緻密な戦略・戦術が必要だということである。

 これを国民側から見れば、昨年9月の政権交代の歴史的な意義を踏まえて、その後9カ月の鳩山(と小沢)の失態にもかかわらず、そして菅政権へのあれこれの不満や不安にもかかわらず、「民主党革命再スタート!」(週刊朝日6月18日号の特集見出し)を菅に託して、少なくとも13年総選挙もしくはダブル選挙までの3年間、我慢強くこれを守り育てようとするのかどうか、である。

●政界再編なんてあるのか?

 第3に、そうでないとすれば、自民党にそこそこの票を与えて同党の政権復帰に道を拓くものとしてこの選挙を位置づけるのか、それもダメなら、群生した小新党に力を貸すことを通じて自民・民主それぞれの分裂による政界再編のきっかけを作り出すものと位置づけるのか、ということになる。

 自民党を今のままで政権に復帰させるなど、私に言わせれば論外で、この党は選挙後もさらに分解を続けながら一旦は壊滅して、そのどん底から(ヨーロッパにあるような)現代的な保守党として再生してくるのでなければ、2大政党制の一翼を担うものとはならないだろう。自民党は、「明治以来100 年余りの官僚主導体制」(小沢)の随伴者であって、そのままでは「革命的改革」(同)の対象ではあってもその担い手となることなど出来るはずがない。とはいえ、国民から見ればここで自民党を励まして保守再生に期待するという投票態度を示すことは1つの選択肢で、それを1つの流れにするには、谷垣禎一総裁は民主党の枝葉末節を批判してばかりいるのでなく、5年後10年後を睨んだ自民党復活の道筋を堂々と示さなければならないだろう。

 他方、政界再編とは結局、民主党から小沢グループが離脱して小新党群の一部や国民新党などを糾合して自民党の分裂を促すということだろうが、これらの小党はいずれも本質的にシングルイシュー政党であって、その全部もしくは一部や自民党からの更なる離脱者を糾合したところでどういう旗印が立つのかは見えてこない。旗印なしにそれを仕掛けてもただのドタバタに過ぎず、多くの国民は今の日本にそんなことをやっている暇はないと思うだろう。しかし、旗印がなく政界再編の形も見えていない中でも、民主・自民両党への不満や不信に基づく批判票の受け皿として小党群が一定の支持を集めることは大いにあり得よう。それに対して社民党、共産党、公明党は基本的に政局の外にあり、批判票の受け皿としても新鮮さを欠いているため、既存の支持基盤をどこまで維持できるかが課題となるだろう。▲

2010年6月25日

《対談》普天間基地問題の根源を考える(後編)〜吉元政矩(元沖縄県副知事)×高野孟

《普天間問題の節目 9月名護市議会選挙と民主党代表選》

吉元:普天間問題をめぐり、沖縄担当大臣が水面下で前市長を呼んで汚い工作をしました。いわゆる誘致賛成派に対してです。沖縄の人はオープンですから、前市長は「会いました」と言っていました。

高野:みんなわかってしまうわけですか。つまり9月に名護市議会選挙があります。今まで26人の市会議員のうち積極的な賛成派は4、5名で、その数を増やそうというわけですね。

吉元:10~12名まで増えていると言われています。

高野:きわどいところですね。市長は反対と言っているけれど、賛成派の議員を増やすことで突破しようとしているわけですね。

吉元:誘致するかどうか決められないという構図ができます。そうなれば決めるのは沖縄県知事です。

高野:11月の沖縄県知事選はどうなりますか。

吉元:まだ公表されていませんし、本人も立候補表明をしていませんが、次の知事候補は現宜野湾市長の伊波洋一氏を推す声が高まっています。 6月の宜野湾市議会選挙で市長が何を表現するかが注目です。地元側から県内移設反対をうったえれば、普天間基地は固定すると外務大臣がはっきり言いました。

高野:一種の脅しですね。

吉元:防衛大臣も、平野官邸サイドもそれらしい言い方をしています。

 宜野湾市長は4月からの新年度予算で日米政府を裁判で訴えますと表明しました。現在の普天間空港は安全基準に違反しています。日本の航空法さえクリアしておらず、日本が黙認していることも問題です。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落する事故が起こりましたし、日常的には爆音で人権問題になっています。

 6月の議会で訴えることを表明した後、伊波市長が知事選に立候補すれば8月ごろ市長の補欠選挙があります。普天間問題の実務者協議の結果が8月末に出て、9月に臨時国会、名護市議会選挙、そして民主党代表選挙と続きます。この時期が普天間問題の節目になります。

《米軍再編の本音と普天間問題失敗の原因》

吉元:2010年5月に「2プラス2」の共同声明が発表されました。普天間基地が辺野古へ移設されるにあたって、米海兵隊だけでなく自衛隊も入ると書かれていました。やっと日本政府から本音が出ました。近々航空自衛隊は嘉手納基地に入り、嘉手納基地の菅理運営まで任されます。

 これからは米軍基地、自衛隊基地どちらかではなく、共同で菅理運営するようになります。常駐するかは別として、有事の際にはいつでも統合された基地を使える状態をつくっておくことが米軍再編の本音だと思います。

高野:名目上は自衛隊基地になるわけですね。自衛隊が日常菅理して、有事の際には米国も使えるということですか。

吉元:統合されていけば、日本が米軍基地に支払う土地代がいらなくなります。思いやり予算で払われている米軍基地の労働者賃金も払わなくてよくなるのです。今回普天間問題をめぐる混乱は、思いやり予算の整理などを通した日米軍事同盟の将来像を描ききれなかったところに原因があったと思います。

高野:旧ソ連の上陸侵攻に備えていた陸上自衛隊は、目標がなくなった後行き場所がなくなって、南西諸島の島嶼防衛を新たな任務にしようとしているという話を防衛省筋から聞きました。島嶼防衛はまずは海上保安庁の役割であり、それで間に合わなければ海上自衛隊が出て行くことで、陸上自衛隊の話ではないでしょう。

《東アジア安保構想と在日米軍ゼロ計画》

吉元:米国を中心に世界を見てみると、米国は大西洋をはさんで右手でイギリスとかたく手を結び、左手では太平洋をはさんで少しフラフラした日本と手をとっています。2者と手をつないでいる限り、ユーラシア大陸に対する影響力を発揮できるというのが地政学的な米国の発想です。米国と距離を持ちたいのが独自通貨までつくったEUです。イギリスはその間で中途半端になり、イラク戦争にもつながりました。

 日米関係については、日本側に主体的に論議する力が小さかったと言えます。在日米軍が引こうとすると、北朝鮮が危ない、中国が危ないと言います。つい先月、ヒラリー・クリントン米国国務長官は約200名の官僚を連れて中国に行き、戦略経済対話をしました。その中国を危険だと騒ぎ立てている日本はおかしいでしょう。「日米が安定していないと困る」と中国のシンクタンクからも私に情報がきています。

 政権交代したのですから、基礎を整理し直して、安全保障の問題、とりわけ過重な負担をしている沖縄の問題に取り組んでほしいです。沖縄の海兵隊が必要かどうなるかどうかといった矮小化された議論に引きずり込まれた結果、鳩山氏の「海兵隊の存在に学べば学ぶにつけ、米軍全体の中での役割と抑止力に思い至った」との発言に至ったのだと思います。

 2012年に中国の国家主席がかわります。ロシアと韓国は大統領選挙をむかえ、台湾では総統選挙があります。そして同じ年に米国の大統領選挙です。解散がなければその翌年に日本では総選挙が予定されています。民主党は2国間だけでなく、東アジア全体の集団的安全保障をつくりあげられるか、東アジアにおける日本の役割を描けるかが問われています。マニフェストの中にきちっと明記し、国民に問うべきだと思います。

 2014年には沖縄から海兵隊が8,000名が移り、嘉手納以南の中南部の基地はすべて解放されます。2015年はASEANが共同体へと移行し、経済の共同体ができます。日本と中国と韓国、いわゆる「ASEANプラス3」を引き込んで東アジア経済をつくるところまで具体化できていますから、それを頭に置いて、在日米軍をどうするかを考えれば日本の将来像はきれいに描けます。在日米軍を計画的にゼロにし、東アジアにおける安全保障ができれば国民は安心できるでしょう。

《東アジアの"結び目"としての再スタート》


《対談(再生時間:9分29秒)》

高野:菅首相は日米合意を受け継ぐとだけ言いました。これからは米国を背にして沖縄県民に向かうのか、沖縄を背にして米国と再交渉するのかが決定的に問われます。厳しい選択だと思います。

吉元:沖縄をこのままにしてはダメで、放っておけばもっと厳しい情勢になることを知っているはずです。単に鳩山氏の流れを受け継ぐのでなく、菅首相自身がスタンスを明確にしてほしいです。そして菅首相本人でなくても、官房長官などの周辺が沖縄と接触する機会を増やし、米国を背中にして沖縄県民に向かうのでなく、沖縄を背にして米国と再交渉してほしいです。

高野:次の総選挙で外交政策の問題は「東アジア共同体」であり、冷戦の遺物としての日米同盟だけに頼るのでないという方向性を示せるか。そして国内問題は「地域主権国家への転換」です。この2点で総選挙に臨まなくてはいけないと思います。総選挙の争点に、沖縄の特別州構想がスポッとはまらないといけません。

吉元:菅政権では地域主権国家は先行すると思っています。関係省庁だけでなく、党側に出して議論してもらいたいです。沖縄に関する問題は普天間問題で矮小化されてしまいました。地域主権構想が始まっているのだから普天間の問題を早く解決してくれという視点で進めたいです。

高野:沖縄の将来構想と結びついて、東アジアの協力関係の拠点は沖縄であるとなれば、沖縄が日本を変えるというイメージがわきます。

吉元:1995、6年ごろに一国二制度や国際都市構想の説明をしていた頃、官僚に「沖縄の北に日本がある」と言ったことがあります。日本はアジアの中で北部に位置しています。日本は世界からアジアの中心とはみられていません。沖縄の西、鹿児島と同じ距離には人口約13億人の国、南には10カ国の途上国、東には米国があります。沖縄は日本の南ではなく、東アジアの中心、"結び目"だという見方をしてくれれば、冷戦の終焉と将来を見通す基本になります。沖縄は遅れているのではありません。

高野:一番わかっていないのが東京ですよ。地域主権なんて言ってますけど、自分の地域のことを自分で考えられるのは沖縄ぐらいしかないです。

吉元:東京は米国ばかりみて情報を集めています。東京は遅れています。菅政権が鳩山政権から学ぶべきことは、情報の集め方でなく、使い方です。

 沖縄が地域主権を進めるためには、まず中央から権限を下ろすことから始めなければいけません。中央政府の「許容の範囲」ではなく、財務省が菅理する金融、国有財産以外は沖縄に全部渡してほしいと思います。

 そして40年もの間、国の計画としてつくられた沖縄振興計画が適用されてきましたが、2011年に期限を迎えます。2012年には新しい特別法に移ります。自主外交をできるようにして、地方政府をつくっていきます。約40年前の琉球政府時代にやっていたことを、地域主権として再現していきたいと思います。

2010年6月9日、《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

【関連記事】
《対談》普天間基地問題の根源を考える(前編) 吉元政矩×高野孟(6/24)

2010年6月24日

《対談》普天間基地問題の根源を考える(前編)~吉元政矩(元沖縄県副知事)×高野孟


《対談1(再生時間:9分05秒)》

「沖縄県の米軍基地を県外に移す努力を続けるのが大切」

 首相最後の演説で鳩山氏はそう述べて新政権にバトンを渡した。昨年の政権交代以後沖縄の基地問題に尽力してきた鳩山氏だが、自らの目標であった「最低でも県外」は実現できずに首相の座を降りた。

 鳩山氏は96年旧民主党結成当時から「沖縄・本土の米軍基地の整理・縮小・撤去」と明言し、米軍基地の国外移設への構想を練っていた。

 鳩山氏がその目標を描いたきっかけには、ひとつの"プログラム"があった。民主党結党時代からの「常時駐留なき安保論」の原点でもある「基地返還アクションプログラム」だ。今回のNewsspiralでは、かつて大田昌秀(おおた・まさひで)元沖縄県知事の知恵袋として「基地返還アクションプログラム」を策定した吉元政矩(よしもと・まさのり)氏に、基地問題が抱える諸問題とその解決方法を聞いた。

*   *   *   *   *

《普天間移設の原点「基地返還プログラム」》

高野:旧民主党結成の過程は1995年の寒い頃に始まりました。同年沖縄で少女暴行事件が起こり、当時大田昌秀沖縄県政のもとで吉元さんが中心となって「基地返還アクションプログラム」を発表されておりました。

 私は民主党の政策論議に加わっており、「基地返還アクションプログラム」を学びサポートしていこうと思いました。この考え方が1996年の旧民主党結成時に掲げた「常時駐留なき安保」論へとつながっていきます。

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元沖縄県副知事の吉元政矩(よしもと・まさのり)氏

吉元:1989年に天安門事件があり、11月にはベルリンの壁が崩壊しました。沖縄では1987年、1990年に嘉手納包囲行動があり、1990年11月に「21世紀、基地のない沖縄を、若者のために」をスローガンに掲げた大田昌秀知事が誕生しました。

 私は大田県政のもとで政策調整官として仕事に就きました。冷戦終焉後、米軍基地の負担を抱えた県民に対して撤退を含む「平和の配当」があるべきとの考えが当然起こり、その政策化に動き出しました。

 当時問われていたのは、沖縄の将来像をどう描き上げるかということでした。米軍基地をすべてなくすだけでなく、基地の後利用計画が必要でした。日本の独立と引き替えに米国に売り渡され、27年間米国の支配におかれてきた沖縄をつくり直せるかが課題でした。

 香港返還を目前に控え、東アジアは変化が起こる情勢下にありました。沖縄はかつての琉球王国のように交易を中心とした拠点・都市国家をつくろうと「国際都市形成構想」を中心政策に掲げました。それを実現するために米軍基地返還を求め、在沖米軍基地が集中する中南部地区を描き直し、一国二制度で全県をフリートレードゾーンにする計画をつくりました。

 「基地返還アクションプログラム」はメインではありませんでした。それが突出したかたちになっているのは、1995年の少女暴行事件があったからです。連合沖縄が中心となって翌年に県民投票をし、沖縄県民の意志が出されました。当時の村山政権にその問題を持ち込み、閣議決定で沖縄米軍基地問題協議会をつくってもらい、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)ができました。

 「基地返還アクションプログラム」は1995年から2015年までの20年間で在沖米軍基地をゼロにしようという計画です。基地返還された後どうなるのか、1つずつチェックしていくことが必要だという理解が与野党問わず広がり、県議会が支持していきました。

《普天間基地移設問題 「国外」発言を最初にした民主党代表》

吉元:旧民主党時代から鳩山氏は、いつまでも沖縄に海兵隊はいらないだろうと考えていました。そして苫小牧東部(苫東)に海兵隊を全部移したらどうかというイメージを描き出します。ただ単にアイデアを出すのでなく、地元の北海道に計画を表明していました。政府関係のシンクタンクに依頼して調査し、有事駐留の構想になります。

高野:鳩山さんの過剰な基地の問題意識は思いつきでなく、自分の問題としてうけとめて考えているということですね。

吉元:1995,6年の段階で、彼は安保や米軍基地問題についてかなり詳しかったと思います。とりわけ戦後占領軍がいすわっていることに対する怒りや不合理さを感じ、日米軍事同盟が大事とはいえ現状のままでいいのかという問題提起をしていました。部分的な論議でなく、将来を見通した枠組みの話です。

高野:旧民主党発足時は「常時駐留なき安保」はスローガン止まりでした。鳩山氏は地元のことも含めてどう具体化するかを自分の中で煮詰めていました。

吉元:私が副知事を辞めた翌年の1998年、知人に呼ばれて北海道を訪れ、北海道開発局の責任者が苫東を案内してくれました。北海道開発局が調査に積極的で、データをシンクタンクに提供していたことは驚きました。

高野:私は鳩山氏の気持ちの流れを見ていましたので、普天間基地移設の問題は自分でイニシアティブをとり、落としどころをつくって内容を詰めていくのかと期待してみていました。しかし結局構想はバラバラになってしまいました。

吉元:普天間基地問題について、民主党の代表として一番最初に沖縄に来て発言したのは菅直人氏です。菅氏は明確に「普天間は国外に」と言っていました。2番目に言ったのは岡田克也氏です。2005年、普天間基地抗議行動の時に来て、県民大会の場で「県外」と明確に言いました。一番遅かったのが昨年2009年総選挙前に来た鳩山氏です。マニフェストにも書かれていないと言われていますが、民主党は米軍基地問題、とりわけ普天間基地移設問題に関する発言は一貫しています。

 鳩山氏が首相になって基地問題を検討すると言ったときは、民主党総体が1つの方向性をもって進むと思っていました。鳩山氏の足りなかったところはガバナンスです。本人はまさか関係する大臣がバラバラの意見を出すとは想定してなかったでしょう。

 1つの目標に向かって公務員と一緒に物事を進めるためには、首相が信頼できる人を1人座らせて、官僚を集めるようにチームをつくっていかなければいけません。要になるのは官房長官です。


《対談2(再生時間:9分58秒)》

高野:官房長官にできることは、事務局長としてチームを運営することです。平野官房長官(当時)の場合は勘違いをして、自分が新しい案を出してこうとしていました。

吉元:沖縄には外務省が事務所を、防衛省も組織を持っています。各省庁の機能はすべて沖縄にあるにも関わらず、平野官房長官は沖縄に直轄の事務所をつくりました。私は違和感を感じました。

高野:理解ができません。内閣を組織図で描くと、総理大臣の直下に官房長官がいて、すべてはそこに集中するようになっています。平野氏は何を勘違いしたか自分がすべてを取り仕切り、自らの手柄にしようとしたようです。

《グアムに移転した方が抑止力は強まる》

高野:次の菅政権で官房長官に就任したのは仙谷氏です。菅政権としては沖縄の基地問題にどう向き合っていくのでしょうか。

吉元:民主党政権として鳩山政権の「2プラス2(日米安全保障協議委員会)」の共同声明を継承するのは当然です。しかしその声明は完成されたものでなく、検討過程にあるとすべきです。8月末には辺野古の移設場所を確定し、9月に再び開かれる「2プラス2」で日米間合意をとりつけて首相に判断を求める流れになります。遅くとも11月にオバマ米国大統領が来日して日米首脳会談が予定されています。

 鳩山元首相は海兵隊を「抑止力」として必要だと言いました。菅首相は決してそれを固定的に受け継ぐ必要はありません。本当に抑止力になっているのかをもう一度考えて欲しいです。私たちは海兵隊を抑止力とは考えていませんし、沖縄でそんなことを言ったら笑われます。

 鳩山氏が首相を辞めたことで、海兵隊の重要だという印象が広がったように感じます。「やはり沖縄でなければいけない」という考え方が、押しつけという形で出ているように思います。そうならないためにも日本全体に配置されている在日米軍をみて、どれぐらいが「抑止力」として認識できるのか、初歩的なところに戻って欲しいと思います。

高野:私も同意見です。私は昨秋から真正面から「抑止力」論争をやるべきだと言ってきました。沖縄の海兵隊が「抑止力」というのであれば何に対する抑止でしょうか。冷戦が終わり旧ソ連の陸軍機械化師団が日本に上陸陸侵攻する事態は非現実的となりました。

 日本を取り巻く東アジアのありうべき脅威のシナリオはどういうものかを議論し、それに対して「抑止力」を考える必要があります。自衛隊だけでは対処できない事態がありえるならば米軍が必要かというような合理的な脅威の見積りをし、その脅威に対する米軍と自衛隊の量と質を再検討されなければいけません。

吉元:まったくその通りです。その議論が欠落しています。日本政府は国民に知らせていませんでした。米国は1990年代、パパ・ブッシュの段階で陸軍の大量なリストラをしています。冷戦終焉後に米国の過剰な軍事力は減らす計画がすでに進んでいました。そしてクリントン政権で少女暴行事件が重なりました。

 1990年代は世界的な海外駐留米軍をその後どうするかという議論が出て、海外駐留米軍をあちこちで撤退させるようになります。米国とソ連の軍事的衝突はないという前提で、「駐留米軍は帰れ」という声があちこちに出てきます。イヤという場所には置かないというのが米軍の考え方であり、ドイツでも相当米軍が削減されました。

 つまり日本の米軍再編は、世界的な動きの1つだったのです。ところが少女暴行事件だけが突出した見方をされ、中心の問題として宣伝されてしまったことで、在日米軍の問題が矮小化されてしまいました。本質が隠蔽されました。

 日本では論議が日米間に限定される傾向があります。世界的な視点からの論議にもう一度なってほしいです。そうすれば日本や韓国から米軍を引き揚げさせ、陸・海・空・海兵隊の4軍の統合基地をつくっているグアムの意味が出てきます。海兵隊8,000名引き揚げても、逆に抑止力が強化されます。だからこそ「抑止力」論に落ち込んでしまったのかが私にはわかりません。

高野:今回海兵隊は8,000人が引き揚げます。8,000人は引き揚げても大丈夫というのであれば、残る5,000人は「抑止力」論からみるとどうなのでしょうか。海兵隊の艦隊は佐世保にあり、飛行機は岩国にあります。5,000人もまとめてグアムに持って行った方がむしろ抑止力として強化されるのではないですかという方向に持って行けばいいと思います。

吉元伊波洋一(いは・よういち)宜野湾市長のもとで米国の公表する情報を全部集めて調べてみました。すると沖縄の海兵隊は全部グアムに移ることになっていました。私は2008年ごろから外務省や防衛省に説明してきましたが発表しませんし、国会の委員会で質問しても"わかりません主義"を通しています。完全に隠しています。

高野:自民党政権時代に外務・防衛官僚の中に「在日米軍は国外に出て行ってもらっては困る」という意思がはたらき出しました。「米軍が引き揚げると日本では右翼が盛り上がり、『日本は自主防衛力を高めろ』『核武装しろ』と声を上げるから出て行かないで下さい」と依頼している実態があります。私は結局日本が引き留めているのではないかと思います。

吉元:沖縄海兵隊の全司令官は、駐留場所は沖縄に限らず日本のどこでもいいと発言しています。米国が一番心配していることは、海兵隊は全部国外に出て行けと言われたり、嘉手納基地まで出て行けと言われれることです。沖縄に残ってくれと願っているのは日本なんです。

後編へつづく)

【関連記事】
高野論説:普天間問題が「元に戻った」というのは本当か?(5.31)
田中良紹:普天間問題は終らない(5.26)
高野孟:鳩山首相の辺野古移設表明にモノ申す! 今こそ「抑止力」を議論せよ!(5.24)

《インタビュー》藤原和博:「天下り根絶」以後の官僚が生きる道

 先週各党が発表した政権公約には「天下り廃止」の文言が並んだ。

 官僚の天下り根絶など公務員制度改革をアピールして政権交代を果たした民主党は、2010年度予算の無駄を洗い出すために「事業仕分け」を行ってきた。省庁や公益法人のずさんな経営実態、天下りの構図を明らかにし、賛否両論さまざまな議論を巻き起こした。

 今回は実際に「事業仕分け」に参加し、評価者として官僚の天下りにメスを入れた元杉並区立和田中学校校長の藤原和博氏にインタビューした。

 *   *   *   *   * 

藤原和博氏(大阪府教委特別顧問)
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─民間出身の評価者として「事業仕分け」に参加して、新たな発見はありましたか?

 私が担当したグループは文部科学・農林水産・防衛で、そのうち自分が責任を持てる文部科学の文教だけに評価者として参加しました。

 「事業仕分け」が始まる前に内閣府でレクチャーがありました。そこで発見したのは、役人は自分が起こした事業に対して責任が問われないということです。

 一般企業が新規事業を始める場合、当事者はリターンが出るまで頑張り抜くことが基本です。しかし役人の世界では、優秀な人は仕事についてから2,3年後に別の部署へ異動があり、リターンが出る前に途中でやめてしまうのです。責任を背負わない役人に事業を任せられますか。私は役人に事業(ビジネス)をさせてはいけないと思いました。

 数100億円をつぎ込んで事業化しながら、赤字を出し続けた「私のしごと館」(2010年3月営業終了、管理運営:独立行政法人「雇用・能力開発機構」)がいい例です。事業を立ち上げた時点で「功績」になってしまう構造があるのです。

─各党の政権公約に「天下り根絶」をそろってうったえていることについてどう考えますか?

 「天下り根絶」はあまりにもパターン認識しすぎです。私が許せないのは、天下りそのものではなく、天下りの官僚OBが基金のお金、つまり税金で雇われていることです。

 事業仕分けに参加してわかったことは、50億円を1単位として「基金」をつくり、運用利息で給料が払われるような仕組みがあることです。天下りで役職に就くのであれば、税金からでなく自分で寄付を集めるなどして運営しなければいけません。

 業界事情に精通している人が役員になることは一般企業では当たり前ですし、給料を稼げば誰も文句は言わないでしょう。

─「天下り根絶」後の官僚OBが活躍する場所はありますか?

 例えば、和田中学校をモデルにして始まった「学校支援地域本部」が全国に約2000箇所あります。それは学校を支援するといって集結したボランティア組織が運営しており、政治家や官僚が叫び始めている「新しい公共」の実態だと思います。和田中の「学校支援地域本部」は、子どもだけでなく大人が学び公共心を養う場所になっています。

 地元で小中学校を盛り立てる「学校支援地域本部」の活動に力を貸してもらえれば、生き甲斐にもなり「学校を核にした地域社会の再生」に大いに貢献することになります。

 教育は法律や制度をかえてもすぐに功を奏することが少ないです。変えるには校長に、官僚出身でもいいから、民間人を据える手があります。故郷の出身中学校の民間校長として、官僚時代に養ったネットワークを子どもたちに繋ぎ替えてやる志があるのなら校長として給料をもらえるようになるのではないでしょうか

2010年6月18日、《THE JOURNAL》編集部取材
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【プロフィール】藤原和博(ふじはら・かずひろ)
1955年東京都生まれ。。東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任、96年から同社フェロー。03年に杉並区立和田中学校校長に就任、東京都内では義務教育初の民間人校長となる(08年退職)。「地域本部」という保護者と地域ボランティアによる学校支援組織を学内に立ち上げ、英検協会と提携した「英語アドベンチャーコース」や進学塾と連携した夜間塾「夜スペ」を提唱した。現在、大阪府教委特別顧問、東京学芸大学客員教授。

2010年6月23日

森本敏:菅政権による普天間基地問題への取り組み

 参院選挙は菅政権への信任選挙であろう。これに勝利すれば問題はないが、議席を減らすと、現在の議席は過半数ぎりぎりしかないので、多数派工作をする必要がある。その結果、内閣・与党の指導部メンバーの一部入れ替えという事態が起こるかも知れない。

 その後は、9月の民主党代表選挙の結果がどうなるかという問題になる。菅総理の続投になるか、あるいは、他の候補になるかは分からないが、民主党の次なる課題は総選挙であろうから、総選挙に勝てる態勢を作る必要がある。それを念頭にいれて代表選が行われるとすれば、今回の参院選挙結果が大きな影響を与えることになろう。そして代表選で選ばれた人が改めて本格政権を作ることになる。いずれにしても政治のリーダーが確定するのは9月以降になる。

 菅総理は普天間基地問題について「5月末の日米合意を踏まえつつ、沖縄の負担軽減に努力する」という方針を示している。5月28日の合意によれば、新たな施設の位置・配置・工法は8月末までに決めることになっている。

>>続きは「Infoseekニュース 内憂外患」で

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morimoto3.jpg【プロフィール】森本敏(もりもと・さとし)
昭和16年生まれ。防衛大学理工学部卒業後、防衛庁入省。昭和52年に外務省アメリカ局安全保障課に出向。昭和54年外務省入省。在米日本国大使館一等書記官、情報調査局安全保障政策室長など一貫して安全保障の実務を担当。専門は安全保障、軍備管理、防衛問題、国際政治。平成4年より野村総研主席研究員(平成13年3月退職)。慶應大学非常勤講師、中央大学客員教授などを経て平成17年より拓殖大学海外事情研究所所長兼同大学院教授(現職)。平成21年8月初代防衛大臣補佐官に就任(9月退官)。

《尾立源幸が語る、事業仕分けのホンネ!》第2回 事業仕分け人、かく戦えり。 ── その課題とこれから

 みなさん、こんにちは。"西の事業仕分け人"こと大阪選挙区選出の民主党参議院議員尾立源幸(おだち・もとゆき)です。

 事業仕分けの最前線にいた私 尾立源幸が、そのすべてを語る連載第2回目は、過去2回行われた事業仕分けの具体的なエピソードから、印象に残ったこと、そして実際にやってみて浮かび上がってきた課題、これから取り組まなければならない点などについて、お話したいと思います。

 私は政治家を志す以前、税理士・公認会計士として様々な企業の経営内容を見てきました。民間なら当たり前の話ですが、採算のとれない事業があれば撤退するし、企業の経営陣は、業績が悪ければその責任をとらされます。つまり、統治(ガバナンス)を強化し、従業員や株主に説明する責任が求められます。

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2010年6月22日

『ザ・コーヴ』上映中止に関するシンポジウムを録画放送中!

■第1部

■第2部

 『ザ・コーブ』上映中止に関するシンポジウムが21日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれ、ジャーナリストの田原総一朗氏、映画監督の崔洋一氏、漫画家の石坂啓氏、一水会顧問の鈴木邦男氏らをゲストに迎えて上映中止問題について激論を交わしました。

 シンポジウムは、第1部が『ザ・コーブ』上映館の現状について、第2部は田原氏、崔氏も加わって熱く議論しています。ぜひご覧下さい!

【関連記事】
篠田博之:6月21日「ザ・コーヴ」めぐるシンポジウムを弁護士会館で開催
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/2010/06/621.html

2010年6月21日

高野孟:民主党政権審判の日に向けて参院選がはじまる!

 昨年8月30日の歴史的な政権交代から、はや10ヶ月。政権発足当初に7割を超える支持率を得ていた鳩山内閣はあっけなく崩壊し、問題山積の民主党政権は首相を菅直人氏に交代して、24日の参院選公示日を迎えることになりました。民主党政権初の審判の日となる7月11日に向けて、高野孟が参院選の見どころを語ります!

2010年6月14日

《尾立源幸が語る、事業仕分けのホンネ!》第1回 事業仕分けはこうして実現した ── 前例のない政治の一大棚卸し!

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 みなさん。こんにちは。"西の事業仕分け人"こと大阪選挙区選出の民主党参議院議員 尾立源幸(おだち・もとゆき)です。

 事業仕分けの最前線にいた私、尾立源幸が、そのすべてを語る連載第1回目は、事業仕分け人として選ばれた経緯、そして事業仕分けの意義、それから過去2回行われた事業仕分けの選定基準などを、事業仕分け人の目線でお話したいと思います。

 皆さんもご存知のように、自民党による長期政権のもとでは政治・行政そして特定の業界・団体は癒着し、甘い汁を吸う構造は国民のチェックを受けることなく温存されてきました。事業仕分けによる最大の成果は、この構造にメスを入れ、予算・税金の使い方を国民の手に取り戻せたことです。すなわち、長年にわたる自民党政権で行われてきた数多くの税金の無駄遣い、そして天下りのシステムを、国民の皆さんの前に公開し、議論し、取り戻したお金を国民のための「平成22年度 命を守る予算」に組み替えたことです

 私は、事業仕分けとは「戦後政治の棚卸し」だと考えています。

 事業仕分けが本当に目指しているところはどこか? それは、予算を持つ歳出官庁(1府12省庁)が、常に自浄能力を発揮し、国民本位で予算を使うことにあります。すなわち国民の血税である予算を本当に必要な事業に使っているか、省庁が自らチェックするような体質改善を成し遂げるために、先ずは、私たちは事業仕分け人が率先して頑張っているわけです。そして、政府全体では、国家戦略局による予算編成と、行政刷新会議による事業仕分けが、クルマの両輪のように、それぞれの役割を果たしながら予算を編成することが必要です。

 民主党は野党時代から、事業仕分けを行っていましたが、大きな権限がないため、大胆に切り込むことができず、大変くやしい思いをしていました。例えば、「国が所管する公益法人のリストが見たい」と、言っても出てこない・・・、省庁に問い合わせても、何ヶ月も待たされる・・・、そんなことばかりが繰り返されていました。

 昨年の政権交代前から、私は民主党の特命チームの一員として、政権交代後に「いかにして財源を捻出するのか?」「どうやって予算を全面的に組み直すか?」をマニュアル化する作業にたずさわっていました。いわば、政権交代後の「政権移行チーム」の行政刷新の設計者のうちの一人でした。(残念ながら、正式な「政権移行チーム」は組織されませんでした。)

 そんな伏線もあり、自らが事業仕分け人としての最前線に立つことになったわけですが、与党になってみたらびっくり!先ほどの「公益法人リスト」などの内部資料がすぐに手元に届くようになったのです!あらためて、政府の内側と、外側の差に愕然とし、政権交代により情報が公開されるようになって本当に良かったと思いました。

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 昨年の秋、行政刷新会議が立ち上がり、事業仕分けが本格的にスタートしました。

 私は政治家を志す以前から、税理士・公認会計士として、企業のお金の使いみちを見てきました。決算書を見れば、社長や企業が何を考え、行動しているか、また、どこに問題点があるかがすぐにわかります。

 私の政治家としての信条は、税金のむだをなくしたい!財政再建がしたい!です。税の論議に入る前に、まず徹底的にムダを無くさなくてはならない!という決意のもと、事業仕分けに臨み、過去の政治では前例のない、一大棚卸しをスタートしました。

 過去2回の仕分け結果を、あらためて記しますと、昨年11月の事業仕分け第1弾では、国の約3000もの事業のうち449事業を仕分け、50を廃止、その他削減で約1兆円の財源を捻出し、基金の返納で約1兆円の埋蔵金を発掘しました。この2兆円は、早速、今年度予算に組み入れることができました。

 次に、今年5月の事業仕分け第2弾前半戦では、まず104ある独立行政法人のうち、47法人の151の事業を仕分けし、42事業を廃止、15事業の不要資産のを国庫に返納する決定をしました。

 後半戦では、6625もの公益法人、特別民間法人のうち、70法人の82事業を仕分け、38事業を廃止しました。あきれた天下りの実態や役員の高すぎる報酬、縦割り行政の弊害ともいえる類似する事業など、メディアを通じて皆さんに見ていただけたと思います。

 事業仕分けをするにあたってどんな基準で、法人や事業を選定したかをお話しますと、例えば、公益法人を仕分け対象にする際には、

(1)国または独立行政法人から1000万円以上の公費支出を受けている
(2)法令で国から権限を付与されている
(3)収入に占める公費からの支出が5割以上を占めている
(4)「天下りを受け入れている
(5)財産が10億円を超えている
(6)地方自治体から支出を受けている
(7)国からの公費支出を受けた法人のうち、事業をさらに外部に委託している

といった7つの基準を設定しました。これらに基づき6625法人のうち、70法人の82の事業について仕分けし、38事業を廃止しました。

 事業仕分けが終わると、即、「お金が浮いた!」と思われがちですが、実際は、国の事業であれば夏以降の省庁の概算要求のとき、独立行政法人であれば、所管する省庁が事業仕分けの結果をどこまで忠実に受け入れるか、などいくつかの課題があります。公益法人・特別民間法人の場合、国の予算と違って、仕分けの結果で削減できたお金を取り戻すのに、さらに時間と仕組みが必要です。

 だからこそ、私たち仕分け人は、日本の行政システムを変えるまで、きちんとフォローアップしなければならないと考えています。

 まさに、私の思いは、今「中途半端じゃ終われない!」です。

(次回第2回は、「事業仕分け人、かく戦えり ── その課題とこれから」をお届けします)

鳩山政権への挽歌 ── 『週刊朝日』への寄稿

takanoron.png 私は、鳩山辞任が決まったばかりの6月4日の時点で、『週刊朝日』の求めに応じて、普天間問題に焦点を合わせた以下のような原稿を書き、8日発売の同誌に掲載された。ややout of dateだが、同誌を買い損ねた読者のためにここに再録する。

その後、鳩山周辺から漏れ伝わるところでは、鳩山の気持ちの中では普天間問題は(苦悩はしたけれども)それで辞任しなければならない事柄とはほとんど思っておらず、政治とカネの問題を綺麗さっぱりクリアして参院選を迎えたいという思いのほうが「8割を占めていた」とのことである。それが本当なら、普天間の挫折に焦点を当てた本稿はやや的外れということになるが、しかしこの問題が一層難しい形で菅政権にのしかかってくることは間違いない。

 菅とて妙策があるわけではないだろうが、仙谷官房長官がインタビューに対して次のように語っているのは、鳩山の行き詰まりを正しい方向でリセットしようとしていることを示すもので好ましい(12日付日経より要約)。

▼沖縄の普天間基地移設問題をめぐっては、5月までは移設先をどこにするかの議論しかなかった。アジアの安定のための在日米軍や日米同盟の役割を再確認する必要がある。

▼沖縄における基地の意義、役割を考え直さないといけない。米国との戦略的な対話をしたい。辺野古の移設先の具体化や工法決定を8月末までに決めるが、これに関しては米国とも堂々たる議論をしたい。▲

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普天間問題でアメリカと戦えるか/解決へ問われる菅さんの覚悟
(週刊朝日6月18日号より)

 鳩山由紀夫さんは木に例えれば柳で、確かに風が吹けば枝は揺れるが幹は芯が粘り強くてめったなことでは折れたり倒れたりしない人だと思っていたので、この結末には驚いた。しかし決してクシャッと崩れ落ちるような辞め方ではなくて、最後の演説ではその芯の強さを全身にみなぎらせて、言うべきことを言い、切るべき者を切って、毅然としたところを示した。私の知人にも「最後の最後になって鳩山を見直したよ」と言う人が多く、その度に私は「だから、最初からこういうふうにやっていればよかったのにね」と力のない言葉を返すのだった。

 鳩山さんの無念さは、「私たち政権与党の仕事が国民の皆さんの心に映っていない。国民の皆さんが徐々に聞く耳を持たなくなってきてしまった」という一句に表れている。それはとりわけ普天間問題において顕著であったはずで、彼は「本当に沖縄の外に米軍の基地をできる限り移すために努力しなきゃいけない、今までのように沖縄の中に基地を求めることが当たり前じゃないだろう、その思いで半年間、努力してきた」が結果を得られず、社民党や沖縄県民の怒りを買った。結果を出せなかったことには責めを負わねばならないが、この8カ月間、毎日のようにメディアに「どうなるんだ」「本当にできるのか」と棒で突き回すように責め立てられた挙げ句、「こんなことなら最初から見直しなんて言わなけりゃよかったんだ」とまで言われ、彼の「なんとしても少しでも県外にと思ってきたその思い」の真剣さまで疑われるようになったのは、耐え難いことだったに違いない。

 『美味しんぼ』の原作者・雁屋哲氏はブログ「美味しんぼ日記」で5月25日、「敵を間違えるな」と題して要旨次のように書いている。

「『ほら、鳩山は出来なかった』と、新聞・テレビははやし立て、沖縄の人びとは『鳩山は裏切った』とか『嘘をついた』などと言って怒っている。私は鳩山氏を支持する者ではないが......鳩山氏が公約を守れなかったのは、氏個人だけの責任ではない。日本人全体の責任だ」

「私の考えをまとめよう。(1)鳩山氏はアメリカに負けた。(2)基地問題に於いて、日本人が戦うべき相手はアメリカである。アメリカと戦おうとしている鳩山氏の足を掬い背中から攻撃をする。日本人は、自分たちの敵を間違えている。......鳩山氏が戦後の日本の首相として初めてアメリカと戦おうとしているのに、日本人は一致協力するどころか、鳩山氏の足を引っ張った。(3)日本人は、アメリカの基地問題に本気で取り組む気概を失っている。沖縄県人の苦しみを、他県の人間は自分の物とせず、他人事のように思っている」

 まさにそのようにして国民は、鳩山さんの「思い」に耳も心も傾けようとはせず、それどころか彼の苦闘を笑いものにした。これを米国から見れば、6月4日付『ヘラルド・トリビューン』の東京発の記事がやや得意げな口調で書いているように、「鳩山の支持率急落は、冷戦時代の日米同盟を再考しようとした彼の試みを日本の公衆が拒絶したことを意味している」と映る。その通りで、日本人は鳩山政権を潰すことで、私共には沖縄をはじめとする基地問題の解決を米国に迫る「気概」などありません、今後ともご主人様に従って参りますのでよろしく、というメッセージを太平洋の対岸に送ったのである。

 しかし鳩山さんはまだ諦めていない。自分の時代にはここまでしか出来なかったけれども、「これからもできる限り、県外に米軍基地を少しずつでも移すことが出来るように、新政権としては努力を続けていくのが何より大切」と言い、同じ趣旨をあの演説の中で3回も繰り返している。これこそが菅直人政権に対する最大の申し送りと言えるだろう。

 菅さんが鳩山さんと同じ沖縄そして基地への思いを共有しているのかどうかは分からない。が、新日米合意を執行する責任は否応なく菅さんに降りかかるわけで、それにはまず地元の合意をどうやって取り付けるのかが大問題となる。かつて一旦は、アメ(地元振興費)とムチ(恫喝)で辺野古移設を渋々呑まされた名護市の人びとが、鳩山さんの「思い」に励まされて勇気をふるって今年1月には移設反対派の市長を選び、しかし結果はこういうことになって絶望の淵に沈んだ後で、政府がいかにアメを振る舞いムチを振るったところで、再び渋々ながら移設を受け入れるということはありえず、断固拒否を貫くだろう。

 すると菅さんは、米国の意向を背中にして県民と対面し、座り込みでも何でもして基地建設を阻止しようとする人びとを蹴散らしてでも強行するのか、逆に県民の怒りを背中にして米国と対面し、「やっぱり沖縄にはもちろん本土にも海兵隊基地の受け入れ先はありません。米国としても、流血の惨事を引き起こしてまで住民の敵意の真ん中に基地を作ることは望まないでしょう」と再交渉するのか----という重大選択に直面することになるだろう。

 夢多き理想主義者の鳩山さんとは違って、リアルな権力主義者という一面を持つ菅さんは、前者の選択も真剣に検討するだろう。しかしそれは、日米の守旧的外交・防衛官僚に政治が屈服する道であり、結局は、後者の選択をせざるを得ないのではないか。そうなると、鳩山さんのように単に「思い」を抱いているだけではダメで、その思いを現実に繋げる冷徹・巧妙な戦略・戦術を立て、それで内閣と党とを一本に結束させる統率力と求心力を発揮し、目先のことばかり追う馬鹿なマスコミを切り裂いて国民に直接協力を訴えかけて、「アメリカと戦う」のでなければならないだろう。

 副総理時代にはこの問題について(たぶん意図的に)一言も発言してこなかった菅さんは、4日夕の会見で初めて「国と国の合意をしっかり踏まえることが、引き継いだ私たちの責任だ」と述べたが、これだけでは、5月末の新合意を何が何でも押し通すつもりなのか、それとも鳩山さんの「思い」を引き継いでこれからも「県外」の可能性を追求していくつもりなのか、真意は読み取れない。菅さんの覚悟は一体どこにあるのだろうか。▲

2010年6月12日

ダブル辞任はどちらが仕掛けたのか? ── それはともかく、さあ、菅政権!

takanoron.png ダブル辞任を鳩山由紀夫前総理と小沢一郎幹事長のどちら側が仕掛けたのかの論議が、本サイトを含めて盛んである。真相はいずれ漏れてくるだろうが、今のところ主流をなすのは「鳩山が小沢を道連れにした」という見方で、新聞のほとんどや今週の『週刊現代』などがそれ。

(1)小沢は普天間問題で鳩山が完全に行き詰まったのを見て、

(2)鳩山を説得して自発的に辞任させるか、それに応じなければ両院議員総会で手下に党代表の解任動議を出してでも辞職させた上、

(3)内閣は官房長官を代えるくらいでほとんど居抜きで素早く菅直人前副総理に切り替えて、

(4)自分は引き続き幹事長に留まって参院選を何が何でも勝利に導くというシナリオを描いていたが、

(5)鳩山から「あなたも一緒に辞めてもらいたい。ついでに北教組事件の小林千代美議員にも辞めてもらって、この際、『政治とカネ』でマスコミから突き回される要因を全部除去して参院選を迎えたい」という風に切り替えされて、

(6)虚をつかれた小沢はダブル辞任を受け入れざるを得なかった......。

 それに対して非主流的なのは「すべては小沢が仕組んだ」という見方で、典型は今週の『週刊ポスト』の「差し違え?抱き合い心中?とんでもない!新闇将軍小沢一郎、次なる謀略」。小沢は初めから、イザとなったら鳩山を抱きかかえて自分という爆弾を破裂させる作戦で「政治とカネ」批判を封じて菅政権に切り替え、参院選勝利を確実にした上で、9月代表選で菅が言うことを聞くようならそのままでいいし、そうでなければわずか3カ月で切って捨てて自分の思いのままになる総理を据える、と......。

 平凡で申し訳ないが、私はどちらかというと主流的な見方が推測として正しいと思う。たぶん小沢には二重の誤算があった。彼は鳩山と菅の両方を甘く見ていて、鳩山がダブル辞任という逆襲をしてくるとは思わず、それをはね返す理屈を用意していなかったし、また菅はこの間ずっと小沢に対して恭順の意を示していたので思い通りに操れると思ったが、菅は意外にも素早く動いて(しかも恐らくは鳩山と気脈を通じて)2人が信頼を寄せる仙谷由人を軸とする独自の人事構想を進め出した。菅の昇格しか考えていなかった小沢は、自分で田中真紀子に電話を掛けて代表選出馬を働きかけて即座に断られ、また側近を通じて海江田万里や原口一博にも声をかけて断られるというドタバタを演じた。この国難の時に、外相もまともに務まらなかった真紀子を日本の総理にしようとするなど、ほとんど狂気の沙汰で、その慌てぶりに、この事態が小沢によって周到に準備された謀略などではないことが暗示されている。

●小沢はしてやられた

 もちろん、ダブル辞任という自爆的シナリオを構想し仕掛けたのは小沢側で、鳩山を辞任に追い込んだまではよかったが、その瞬間に菅が"小沢離れ"の動きに出たのが想定外だったというケースもありえよう。その場合、小沢の誤算は二重でなく一重だったことになるが、それでも結論は同じで、小沢は菅にしてやられたということである。

 もっとも、小沢のこうした政局の修羅場での判断はこれまでも大体において余り正しかった例(ためし)はない。(1)93年に細川政権を作って自民党長期政権を終わらせたのは見事だったが、同政権を支えることが出来ず、(奇しくも今回と同様)8カ月で崩壊させた。(2)その末期に自民党から渡辺美智雄を引っ張り出そうとして失敗した。(3)羽田孜政権を支えきれず2カ月で崩壊させた。(4)その末期に自民党から海部俊樹を引っ張り出して海部政権を作ろうとしたが亀井静香にしてやられ、村山=自社さ政権による自民党復権を許した。(5)94年12月に新進党を結成し「保守2大政党制」を標榜したが、自民党の切り崩しと旧民主党の結成に押されて3年間でバラバラに分解した。(6)99年1月に小渕恵三=自民党との自自連立、自自公連立に走ったが、自由党は分裂し、保守党が誕生したが後に自民党に吸収され、結局、自公連立による自民党政権の10年間延命に手を貸しただけとなった。(7)07年11月に福田康夫=自民党と民主党による「大連立」密謀に乗ったが一人芝居に終わった。(8)09年8月の総選挙で民主党=鳩山政権を実現したのは見事だったが、またもやこれを支えきれず、8カ月で潰した......。

 私は、93年の彼の著書『日本改造計画』に代表される小沢の理念力は(細部での意見の違いは別として)極めて高く評価していて、彼が06年4月に民主党代表に就任した直後から何度も「小沢さん、『新・日本改造計画』を書いて、その小沢理念で政権交代を実現して下さい」と言い、その度に彼も「おお、そうしようと思っているんだ」とは言ったが、今に至るも実現していない。それでも私は「小沢政権を見てみたい!」という強烈な願望を抱き続けていて、今なお昨年5月の代表辞任を残念に思っている。しかし、その理念力とは裏腹に、理念をじっくりと党内にも世論にも滲透させ1つ1つ煉瓦を積み上げるように実現していく忍耐力、説得力、統合力に欠けているのは事実で、「こんなことも分からないのか、バカめ」という調子で出るべき時に出ず動くべき時に動かず、結局、状況が煮詰まってどうにもならなくなってから政局戦術的にバタバタして、潰さなくてもいいものを潰してしまうということの連続だった。

 この小沢の欠陥については、内田樹『日本辺境論』(09年、新潮新書)で日本語の特殊性について語っている中の次の記述が参考になる。

▼自説への支持者を増やすためのいちばん正統的な方法は、「あなたが私と同じ情報を持ち、私と同じ程度の合理的推論ができるのであれば、私と同じ結論に達するはずである」というしかたで説得することです。私と聞き手の間に原理的には知的な位階差がないという擬制をもってこないと説得という仕事は始まらない。

▼けれども、私たちの政治風土で用いられているのは説得の言語ではありません。もっとも広範に用いられているのは、「私はあなたより多くの情報を有しており、あなたよりも合理的に推論することができるのであるから、あなたがどのような結論に達しようと、私の結論の方が常に正しい」という恫喝の語法です。自分の方が立場が上であるということを相手にまず認めさせさえすれば、メッセージの審議や当否はもう問われない。

▼「私はつねに正しい政策判断をすることのできる人間であり、あなたはそうではない」という立場の差を構築することが、政策そのものの吟味よりも優先する......。

 よく言われるように、東北人特有の「口下手」などという問題ではなく、最初から「説得の言語」を持とうともせずに「恫喝の語法」に頼り、そしてさらに言えば、その恫喝の語法を貫徹するために、言語そのものを用いることさえも放棄して、組織や人事や選挙を通じて力をみせつけて、自分が「最高実力者」であり「闇将軍」であることを有無を言わせず認めさせ、「立場の差を構築」しようとするのが小沢流と言えるかもしれない。

 本論説が3月以来繰り返してきたように、「政治とカネ」の問題も「普天間移設」の問題も、正面突破作戦を採らない限り、官僚とマスコミの連合軍が作り出す疑似世論に囲まれて政権が行き詰まることは目に見えていた。本来、こんなことで2人が揃って辞めなければならない論理的な理由などあるはずがなく、しかしだからと言って政治が相手にするのは大衆の情動であって、論理的に正しいとか説明など必要ないなどと言い張っていても通らない。鳩山と小沢は毎日でも会って状況を分析し方針を立て「説得の言語」を工夫して、内閣と党にそれを滲透させ、すべての力を結集して反革命的包囲網を切り裂いていく先頭に立たなければならなかったが、実際にはその反対で、2人の間には同志的な結束がないばかりか、危機が深まるほどますます他人行儀のようなことになってすべてが後手後手に回ることになった。2人それぞれの資質と能力の問題もあるが、「政策は内閣、選挙は党」という小沢式の二元論が極端がなおさら事態を悪化させた。

 どちらが仕掛けたのかという政局次元の話はともかく、トップの2人が結束して血路を開くことが出来なかったことは事実で、こうなれば2人がダブル辞任すること以外に政権交代の果実を守る手立てはなかった、ということである。

●要は仙谷官房長官

 菅直人総理が8日組閣後の会見で「内閣の一体性確保」を強調したのは、前政権の失敗の教訓を踏まえたことであるのは言うまでもない。彼は言った。

▼新たな私の内閣は、官房長官を軸とした内閣の一体性を考えて構成した。官房長官とはまさに内閣の番頭役であり、場合によっては総理大臣に対しても「ここはまずいですよ」と言える人物でなければならない。よく中曽根政権の下の後藤田(正晴)先生の名が出るが、そうした力を持った人でなければならない。

▼仙谷さんは長いつきあいだが、同時にある意味では私にとって煙たい存在。煙たいけれども力のある人に官房長官になっていただくことが、この政権の一体性を作っていく上での最初の一歩と考えた......。

 鳩山の人事面での最大の失敗が、野党代表の秘書役としては便利だったかもしれないが、総理にモノ申すわけでもなく与党幹事長とのパイプ役を担えるわけでもない平野博文のような無能者を官房長官に据えたことにあったことは、衆目の一致するところで、それに比べて菅が真っ先に仙谷を要に組閣を考えたのは適切な判断だと思う。

 菅と仙谷の本格的なつきあいは、政策集団「シリウス」が最初だと思う。仙谷は1990年2月の総選挙で社会党から初当選するや、直ちに同じ1年生の池田元久(現財務副大臣)、筒井信隆(現衆院農水委員長)、細川律夫(現厚労副大臣)らと「ニューウェーブの会」を結成、党執行部に対して改革案を突きつけるなど目覚ましい活動を始めた。やがて仙谷らは、当時「社民連」所属の菅と語らって92年11月、社会党ニューウェーブ21人、社民連2人、連合参議院4人で江田五月(現参院議長)を代表として政策集団シリウスを結成、私も仙谷や大学同期の筒井との付き合いから唯一の非議員メンバーとして参加したが、これは政策集団とは表向きで、実は社民連を社会党と合体させ江田を委員長に押し立てて社会党を乗っ取ろうという陰謀集団だった。が、結局は江田の優柔不断で決起が果たせず、大いに落胆した菅は、翌年、宮沢内閣崩壊、自民党分裂という大変動の中で「新党さきがけ」に合流した。

 仙谷は、東大法学部在学中に司法試験に合格した秀才で、憲法論や行政法改革論はじめ制度論ばかりでなく、安全保障、経済戦略、医療などどんな政策分野でも自説を展開できる「説得の言語」を持つ民主党きっての論客であって、同じ論客タイプの菅が一目置く数少ない人物である。しかも、菅が論法鋭いあまりに同僚や若手を完膚無きまでに論破して傷つけてしまいやすく、結果、党内の信望が薄いという点では小沢に似ているのに対して、仙谷は逆で、党人派的な親分肌のところがあって、党内グループの壁を超えて中堅・若手の相談相手として信頼を集めている。マスコミが作るグループ分けの一覧表で、仙谷を「前原グループ」の一員であるかに分類しているのはとんでもない話で、彼は確かに同グループの後見役ではあるけれども、それに止まらず、小沢系と言われる一部を含めた中堅・若手のほぼ全体にとっての後見役である。

 その仙谷が最も信用する弟分が枝野幸男で、この2人は一心同体と考えていい。それを幹事長に据えたのも菅の英断で、これによって内閣と党の奇妙な二元論は解消される。2人は1日に10回でも連絡を取り合って内閣と党をシンクロさせるだろう。加えて、これも小沢の二元論によって阻まれていた党政策調査会も復活させられ、その会長の玄葉光一郎が内閣にも入ることで、なおさら内閣と党の一体化は促されるだろう。

 蓮舫を行政刷新大臣にしたのも菅のセンスのよさである。彼女が事業仕分けでテレビ的にも活躍し、選挙向けの"顔"として有用であるという戦術的理由もさることながら、事業仕分けは、公務員制度改革や天下り禁止、特殊法人改革などとも相まって、民主党政権の本源的な戦略である「中央集権体制の解体」=「地域主権国家への転換」を成し遂げるための地ならしであって、その作業は前政権下で、仙谷=行政刷新相、枝野=仕分け人主任、蓮舫=副主任で始まり、やがて仙谷=国家戦略相、枝野=行政刷新相、蓮舫=主任となって今春に継続された。蓮舫は仙谷と枝野を"兄"と慕っており、実はこの仙谷〜枝野〜蓮舫というラインが重用されたところにこの内閣の戦略性が表現されている。

 加えて、この内閣・党人事の最大の特徴として「世代交代」がある。党に関して言えば、トップの枝野が46歳、幹事長代理の細野豪志は38歳で、その平均年齢が清新さを印象づけるというに止まらず、もはや68歳の小沢が何もかも取り仕切るという時代は戻ってこないという暗喩的なメッセージとなっている。もちろん、小沢がいなくて民主党は大丈夫なのかという不安は残る。が、小沢自身が理念力と「説得の言語」によって民主党を導くことを選ばず、自民党由来の権謀術策と「恫喝の語法」によって勝負をかけて失敗したのだとすれば、民主党は小沢を超えて前に進むしかない。福島瑞穂、小沢一郎、亀井静香と、良くも悪しくも「55年体制」的な要素が剥離していくことで民主党らしい政権が育って行くのでなければならない。

 菅=民主党は、余程のことがない限り、参院選で改選議席54は確保し、巧く行けば60を奪って過半数を確保するだろう。そうなれば9月にもう一度、形ばかりの総裁選を実施する理由は何もなく、菅体制が継続する。国民としても、「もう短期でゴタゴタしないでじっくり政策に取り組んで貰いたい」というのが本音だろう。とすると、『週刊ポスト』が期待するような新闇将軍による「9月の陰謀」など起こる余地はなく、菅政権は長続きし、3年後の総選挙もしくは衆参ダブル選挙では、国内=地域主権国家への100年目の大転換、対外=東アジア共同体の形成とそれに見合った日米安保体制の見直しを2大テーマに掲げて国民の同意を求め、それに成功すれば、それから約10年かかって2025年頃までに日本の「脱発展途上国」の平成革命を成し遂げるだろう。その総仕上げは憲法の改正である。

 私はそこまで生きているかどうか分からないが、それを夢見て、取り敢えずは菅=仙谷政権の健闘に期待をかけることにしよう。▲

2010年6月10日

石川知裕×高野孟:私がいま一番語りたいこと(完全版)

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 TOKYO FM・JFN系で大好評オンエア中の『高野孟のラジオ万華鏡』。

 今月のゲストコーナーには衆院議員の石川知裕(いしかわ・ともひろ)さんをお迎えし、2009年3月から世間を騒がせている政治資金事件の真相について語っていただきました。

 ことし1月に逮捕され、保釈後に無所属議員となった石川氏が、いま訴えたいこととは何か。検察の取調べや一連の異様なメディア報道の問題点など、たっぷりと語っていただきました。お聴き逃しなく!

◇   ◇   ◇   ◇

■石川知裕×高野孟「私がいま一番語りたいこと」(mp3)
http://pod.jfn.co.jp/people/scope/dl/takano_53.mp3
※音声が視聴できない場合は「右クリック→ファイルを保存」を選択してください

■高野孟のラジオ万華鏡 ホームページ
http://www2.jfn.co.jp/people/scope/voicecommons/

2010年6月 9日

《18時40分より》映画『ザ・コーヴ』を考えるシンポジウムを中継!

本日の配信は第一部と第二部にわかれています。

■第一部(18時40分〜19時00分)
■第二部(20時30分〜21時30分)

※開始時間は変更になる場合があります。また、会場のネット環境によっては生中継が行えない場合もあります。あらかじめご了承のほどお願いいたします。

追記
会場で電波はつながりましたが、接続状況が悪く、配信が途中で途切れるものと思われます。後日、録画版のURLをお知らせいたしますので、視聴しづらい場合は録画版をご覧下さい。誠に申し訳ございません。

Live TV : Ustream

●参考記事
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/

●アカデミー賞映画「ザ・コーヴ」上映とシンポジウム
6月9日(水) 18時40分~

【登壇者】
森達也(作家、監督)
綿井健陽(映像ジャーナリスト)
坂野正人(カメラマン・ディレクター)
鈴木邦男(一水会顧問)
司会:篠田博之(『創』編集長)

2010年6月 7日

《出演者インタビュー》嵐の中の⇒嵐の中だった小鳩政権!! ~ニッポンは何を守ろうとしているのか!?:宮崎学

 6月8日18:30ごろから生中継するシンポジウム「嵐の中の⇒嵐の中だった小鳩政権!! ~ニッポンは何 を守ろうとしているのか!?」。このパネラーであり、フォーラム神保町の発起人の一人でもある作家・宮崎学(みやざき・まなぶ)氏に見所を語ってもらった。

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写真:2010年1月18日、フォーラム神保町シンポジウム会場にて

―今回のシンポジウムのテーマについてお聞かせ下さい

 鳩山政権の崩壊過程を検証して、日本の政治権力とはどういうものかを考えてみたい。崩壊していく過程は一番「その権力がどういうものなのか」がよく見える。

 政治権力を作り上げる間はみんなが理想を盛り込んで国民の支持を得て、絵に描いたもちを作っていく。壊れていくときはその逆の動きをし、作られた権力が一体どういうものだったのかがよく分かる。

 例えば、建物を作るときは手順に沿って作られていく。壊すときには材料が何であったかわかってくる。今回の鳩山政権というものがどんな政治権力だったのか、そしてそれを壊したのは誰かを検証しようというのが今回のシンポジウムの趣旨だ。

 前回シンポジウム「『新撰組』化する警察&検察&官僚がニッポンを滅ぼす!」を開催した1月18日の時点では、鳩山政権の実際の中核である小沢一郎という人物を検察権力・東京地検特捜部がトップバッターとなってたたきに入り、つづく2番バッターは、日米交渉関係にあたる外務省だったと私は考えていた。霞ヶ関の総体が鳩山政権を心良しとしていなかった。

 では今回の崩壊の過程で、官僚たちはどんな立ち回りをしたのかを検証したい。私からみると官僚たちは今回役割を完全に果たし、その結果として菅内閣が生まれたのだと思う。

―普天間問題に対する鳩山前首相のスタンスをどう思いますか

 普天間問題は基地問題であり、その根底に安保問題がある。60年代の安保闘争の時代に、相当なデモ運動を展開しても何も起きなかった。私は口先だけの行動で、安保問題の中枢である基地問題が解決するとは思わない。問題を担当していた外務省官僚はアメリカとの交渉で何とかなるという誤解を与えたのではないか......。

 普天間問題、ひいては日米安保はもともとそんなに簡単な問題ではなかったのに、少し軽く考えすぎていたのではないかと思う。軽く考えていてもいいのかも知れないけど、一方の自民党はこれまでそんなことを考えることもなかったので、それに比べてはちょっとは考えたのかなと思う。いずれにしても、土台簡単に解決はムリだ。

―政治とカネが非常に注目された政権でしたね

 政治とカネの問題でいくと、鳩山は「自分のとこのカネを自分で使った」だけだ。国民が騒ぐような問題ではない。これはメディアの問題だ。おそらく霞ヶ関総体が民主党政権に対して違和感を持って接していたし、それ以上に日本のメディアは違和感を持って接したのだろう。政治とカネの問題が政治家の資質を決めるメルクマール(判断基準)になるのはきわめて劣悪な政治思想の国だ。

 「黒い猫でも白い猫でも、ねずみを捕る猫はいい猫だ」と鄧小平は言った。政治家の資質は「ねずみを取ってこられるか」の問題であって、「白か黒か」はどうでもいい。しかしねずみを捕らなくても白い猫がいい、というのが日本のメディアであり、政治家は無味無臭の同じような顔のデオドラント化したものになった。類型的な政治家しかいなくなったわけだ。

 与野党問わず、今の政治家は「しっかりと」をよく使うが、これは発想の類型化の表れだ。類型化しない政治家はメディアが叩く、という思考が、政治とカネの問題を生んだのだと思う。

 私自身は「クリーンな政治家」なんて口が裂けても言わない。報じる側のメディア自体がクリーンなのかと思う。日本のメディアほどクリーンじゃないものはない。だから最低限、日本のメディアは「クリーンな政治家」なんて言ってはならない。

―政治家に対してクリーンさを求める時代です

 普天間問題や政治とカネといった判断基準にするメルクマール(判断基準)が問題設定自体が大きな間違いだと思う。

 いまさら言っても仕方がないが、普天間問題がここまで複雑化した今日。もし、アメリカとの交渉が必要になった場合、日本の政治家の中で誰がその交渉ができるだろうか、と考えたら「黒い猫(=小沢一郎)」しかその交渉はできない。まだ、小沢のほうが可能性としてできたのでは......、と思う。そうした見方をしなければならないのに、「クリーンであるかどうか」なんて、まったくどうでも良い話だ。なのに、クリーンかどうかという基準でしか物事を見なくなった日本人の弱さが透けて見えるような出来事だ。

生中継はこちらからご覧いただけます。6月8日18:30ごろ~、お見逃しなく!
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高野孟:菅内閣発足へ!新首相は鳩山氏の"想い"を継承するのか!?

 菅直人新首相は官房長官に仙谷由人国家戦略担当相、党幹事長に枝野幸男行政刷新担当相をそれぞれ充てる人事を発表しました。明日8日にも組閣し、新内閣を正式に発足させます。

 今回はこのニュースについて、高野孟が語ります。お見逃しなく!

2010年6月 4日

《放送終了》菅直人新総理が初の記者会見!

Free Videos by Ustream.TV

本日、第94代内閣総理大臣に選出された菅直人新首相が、18時より民主党本部で記者会見を開きます!

(映像配信:民主党本部)

《速報》菅直人が民主党代表選に勝利

 4日午前に行われた民主党代表選で、菅直人副総理・財務省が樽床伸二衆院環境委員長を退け、自身3度目の党代表に選出された。得票数は菅直人候補291票、樽床伸二候補129票、無効票2票。菅新代表は本日午後の衆参両院本会議の総理大臣指名選挙を経て、第94代内閣総理大臣に選ばれる。

《緊急インタビュー》喜納昌吉:鳩山総理辞任と沖縄のゆくえ


《インタビュー映像(再生時間:6分25秒)》

 「残念なことに、私たち政権与党の姿が国民の心に映っていません」「その原因を2つだけ申し上げます。1つは普天間の問題でしょう」

 6月2日に鳩山総理は最後の演説を行い、8ヶ月半の鳩山内閣退陣を表明した。退陣の理由の1つに上げたのは、普天間基地移設問題だった。

 本誌取材班は沖縄県連代表として政府と最後まで交渉してきた喜納昌吉(きな・しょうきち)氏をインタビューした。

 鳩山総理の辞任は喜納昌吉氏の目にはどう映ったのか。そして今後、沖縄の基地問題の道筋は描けているのか。

<インタビューの内容>
・総理との最後の会談
・普天間基地問題と世論
・基地問題解決までの道筋
・マスメディアの報道

───────【インタビュー記事】───────

─辞任理由は「政治とカネ」と「普天間問題」でした

 つまり政策として問題だったのは「普天間問題」で、外交政策ということです。しかし、私はよかったと思います。一番先頭に立って「おかしいもの」を壊すと言ったのですから。

─5月26日に喜納氏は官邸で鳩山総理と会い、普天間基地問題で「県外・国外」案をあきらめていないと話したようですね

 私が会ったとき、鳩山総理は秘書官と平野官房長官と一緒にいました。「まだ県外・国外はあきらめていない」「今回は日米合意では"辺野古周辺"と明記する。しかし閣議決定では明記しない」と言われ、どういうことか聞き返したところ「とにかく県外・国外はあきらめていないということ」と話されました。

 ふたを開ければ、対処方針には辺野古が明記されることになっていました。結局社民党が離脱しました。私たちも寝耳に水でした。誰が一体閣議決定に明記したのでしょうか。誰もわかりません。

─今後基地問題をどう解決していきますか

 これからが知恵の出しどころです。どうやって辺野古から基地を削っていくか、基地をどう縮小していくか考えなければいけません。

 現状は辺野古に移設する方向で、沖縄県民の感情としては基地をつくらないことが一番です。国民には閣議決定して、決着したように見えてしまうでしょう。日本国民の世論の熱が冷めていく気がします。

 社民党も共産党があおり立てて、ビジョンのない叫びだけの運動になっています。彼らは叫んで党勢拡大を考えればいいかもしれません。しかし沖縄に悲劇をそのまま置いて、県民の不満を党勢拡大につかわれるようではたまったものではありません。

─具体的な解決案はありますか

 9月の名護市議会選挙は注目です。民主党本部は我が県連が支持する側とは別の側を応援する可能性があります。民主党が単なる利権集団のいいなりになるかもしれません。

 日本の権力は沖縄をコントロールしやすくするために、自民党側を応援することもあります。信じられますか。我々はどこで生きたらいいのでしょう?

 11月には沖縄県知事選があります。官房機密費を出すかも知れません。今度の党首はいくらなんでもそんなことしないと思いますけどね。

 以前前原沖縄担当相がわざわざ島袋前市長を呼んで感謝の予算を出すと言いました。沖縄を植民地だと思っているのでしょうか。そのような人が日本のリーダーになっても日本に未来がありません。

 9月と11月、本当の戦いは今から始まります。放火された火は消されましたが、私がつけた火はゆっくり上がってきますよ。

>>マスメディアの報道など、つづきは映像でどうぞ
http://www.youtube.com/watch?v=Vh6fcExnIOg

2010年6月3日 取材&撮影:《THE JOURNAL》取材班

【関連記事】
菅氏会見 普天間「合意を踏襲」 改革に本腰(毎日新聞)

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沖縄担当相、前名護市長らと接触 新たな北部振興策提示(琉球新報)

2010年6月 2日

《緊急インタビュー》石井一:鳩山総理辞任の内幕


《インタビュー1(再生時間:9分22秒)》

 6月2日、突然の鳩山総理と小沢幹事長の辞任は各メディアを通じて報道された。

 本誌取材班は民主党幹部の一人だった前選対委員長・石井一(いしい・はじめ)氏にインタビューし、辞任劇の内幕をきいた。

 石井氏が辞意表明前の鳩山総理と交わした最後の言葉とは?鳩山総理と小沢一郎氏との関係は?そしていよいよ時間が迫った参院選への影響は?

<インタビュー1の内容>
・鳩山総理の辞意表明
・普天間基地移設問題&政治と金

*  *  *  *  *


《インタビュー2(再生時間:8分42秒)》

<インタビュー2の内容>
・メディアからのバッシング
・小沢一郎と鳩山由紀夫の関係
・参院選への影響

───────【インタビュー記事】───────

―鳩山総理の辞任表明を石井一氏はいつ耳にしましたか?

 聞いたのは今朝(6月2日)だ。昨日の小沢幹事長との会談前に私も鳩山総理に会い、「『参議院の運営が難しい、参院選は厳しいから辞任を』という声があるが、総理が辞任しても選挙に大きな影響はない」と伝えた。

 昨夏の総選挙で民主党は絶対多数の議席を与えられた。次の参院選に挑戦し、その結果議席を落とすようなことがあれば辞任すればいいと私自身は考えていた。少なくとも、昨日(6月1日)の夕方6時くらいに話したときには、総理も「辞任」とは考えていなかったのではないかと思う。

 内閣総理大臣のポストには責任が集中する。「したたかさ、厚顔、粘り強さ」が必要だ。最近の情勢を考えたとき、身のうち震えるような思いになり、「ここでムリに総理の座に居続けるより、自分の身を賭して党を生かそう」と鳩山さんは考えたのではないかと思う。

―衆参両院議員総会の招集があったとき、どのように感じましたか?

 続投の意思表明をするのかと思っていた。しかし、同僚の議員やマスコミなどから「辞任表明をするのではないか」と連絡が入った。

 両院議員総会に向かう途中で総理とエレベーターが一緒になり、私は「あなたの頭のなかにある原稿内容を180度転換して話なさいよ」と伝えた。総理は堅い顔をしながらニコっと笑い、私に握手をしてきた。その握る手の強さを感じ、「もうここまできたら総理の考えは改められない」と思った。

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―鳩山総理のスピーチについてどう思いましたか?

 鳩山さんはスピーチがうまくなったと思う。私がこんなことを言うのはおこがましいが、42年間議員として歴代総理を見ていても今日の話は洗練されていたし、率直ないまの総理の考えがまとめられたいいスピーチだったと思う。

 この8ヶ月は、これまで山積していた問題に直面した。特に、政治とカネの問題と普天間基地移設問題だ。普天間については、なんとか総理は努力を尽くしたが、8ヶ月で完結の域には達しなかった。

 日本の安全保障は他国に自衛を求める状態から自国で自衛する状態へと進化する過渡期にあり、総理はその時期に尽力したと言っている。私は評価できる点はあると思う。

 例えば、普天間に基地はなくなるし、辺野古でも「エメラルドの海を埋め立てる」のではなく基地の中に基地を作る、という話だ。それなのに各種マスコミから集中砲火を浴びている。確かに、鳩山総理は迷い、しかも5月末という短期で決着すると言った。自民党が14年間も放置していた問題を8ヶ月でなんとかするのは無理な話だ。この8ヶ月はきわめてこの問題は、前進したと考えている。

 「政治とカネ」の問題にしても、本当に犯罪性のあることをやったというわけではない。母親とはどんなに貧乏でも、自分のものを始末して子どもに何かを与えようとするものだ。総理にならなければ鳩山さんだってあんなに叩かれなかっただろう。

 どれだけ国会や委員会で頭を下げても、いつまでも「政治とカネ」の問題を的にされてしまう。そういう状況を払拭するためにも、「自民党とは違う、斬新で新鮮な民主党に戻る」と総理はスピーチで宣言したわけだ。

 後世に評価されるべきだし、どれだけの影響が出るか分からないけど選挙の情勢も今より悪くならないと思う。

 政権さえ批判すればいい、というような批評を聞くのは嫌になるけど、外交に関する密約や税金の無駄遣いについては事業仕分けなどでメスを入れている。 2~3年このまま民主党の政権が続けば政治は変わる。大きな負の遺産を引き継ぎ、先に説明した2つの大きな問題で鳩山政権は倒れたが、今後この国をどうしていくのか、という意思をスピーチでは示していたと考える。

―参院選や参院の運営について、輿石氏は厳しいといっていたようだが、それは社民党が離脱したせいですか?

 社民党の議席は次の参院選で2議席くらいになるんじゃないかと週刊誌などで報じられている。そんななかで沖縄問題に対する姿勢では評価されたかも知れない。選挙協力という点では、地方は地方でその状況に合わせたやり方を進めていくはずだし、中央がそれに口を出す気はない。

 今の世論で「民主党政権からまた自公政権に戻してほしい」という人はほとんどいないと思う。国民は自民党政権は2度と帰ってきてくれるな、と考えているだろう。

 確かに民主党はガタガタしているように見えるかもしれないが、党に対するネガティブな意見はそんなにない。とにかく時間を頂き、2~3回予算編成をすれば変わってくる。今日の出来事を大きな試練として乗り越えていく。

 いろいろと政党は出ているが、政権担当能力がある2大政党は自民と民主だけ。それを比べれば「月とすっぽん」ほどの違いがある。いまはとにかく変えるためにも時間がほしい。必ず国民が望む政治に変えていく。

2010年6月2日 取材&撮影:《THE JOURNAL》取材班

2010年6月 1日

《対談》蓮舫×高野孟:事業仕分けから見える間接支給から直接支援への道


《対談映像(再生時間:2分25秒)》

 5月31日、早稲田大学の講義にゲスト出演した蓮舫氏(民主党・参院議員)が高野孟氏と対談しました。

*  *  *  *  *

蓮舫 いい仕事をさせてもらいました。まだ入口なので、今後の制度設計まで携わりたいと思っています。野党時代に一番知りたくても知ることができなかったのが予算書です。その予算書をもとに税金の適正化を進めた「事業仕分け」はやりがいのある仕事でした。

高野 今まで100年かかってつくりあげてきたのが「間接支給」です。1つの事業につき1団体、都道府県支部が存在し、お金が流れてくると自分達の給料分を抜く「中抜きシステム」があらゆる領域にまん延しています。

蓮舫 ある国家資格のことです。国家資格を持っていると認める証明書を付与する公益法人、資格を持ち続けるために講習する公益法人などがあります。1つの国家資格に3つの公益法人がぶら下がっています。それぞれの公益法人に再就職者がいて、当然人件費が委託費に含まれています。中間搾取というより「官製市場」そのものです。民間に開放しなければいけないし、ある部分だけで特別なルールを設けることはできないと思います。

>>つづきは、映像でお楽しみ下さい

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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