【第9回】竹中ナミの郵便不正事件公判傍聴記:何を明らかにし、何を裁こうとしているのか
実態のない障害者団体に郵便料金の割引を受けるための偽の証明書を発行したとして逮捕された村木厚子被告の裁判が、検察側主張を裏付ける供述調書の中身がことごとく覆され注目を集めている。
《THE JOURNAL》主宰・高野孟の友人で、現在社会福祉法人プロップ・ステーションの理事長を務める竹中ナミ氏は、「村木厚子さんの完全な名誉回復を願う」サイトを立ち上げ、2010年1月27日の初公判から毎回公判記録を公開している。今回は特別に公判傍聴記の転載許可を頂いた。
竹中氏は村木元局長の共犯として起訴された上村勉被告が出廷する3月3日にも傍聴を予定している。今後の傍聴記は《THE JOURNAL》でも随時アップしていく。
【第9回】村木厚子さん公判の傍聴記
2010年2月25日(木)。
今日は2月というのに春のように暖かく、大阪の街はコート不要。北区西天満の大阪地方裁判所に、開廷15分前の、am9:45到着。
今日の午前の公判は、1時間半検事側尋問、30分が弁護側。午後も傍聴したかったが、神戸市内での講演活動が入っていたので、お昼休みに裁判所を後にした。
昨日・今日の公判で、上村氏の証言から、密室の取調室において検察官が「筋書き通りの供述を引き出し、調書に残すノウハウ」が明瞭になったので、上村氏の証言を再現しながら、綴ってみよう。
おそらくこのような事情聴取や取調べが行われたら、小心な人でなくても「落ちてしまい」その結果「事実と全く違う調書ができあがる」可能性が非常に高いと思う。実に練られた、冷酷なノウハウである。
ノウハウその1
「事件に関係無い一般的な会話(いわゆる世間話)の内容を、検察の筋書きにジグソーパズルのように嵌め込んで行く」
上村氏は、キャリアとノンキャリの一般的な関係について聞かれ「交流が殆どない」「軍隊的な上下関係もある」など、率直に感じていることを話した。
すると...「従って、課長からの指示に従うほかなかった。」「そのような厚労省の悪しき体質を改善するため、自分が捨石になろうと思って、(共謀したという)本当のことを話しました。」などという調書が作成された。
自分の性格が小心であることや、通院歴があって睡眠薬が必要なことなどを指摘され、それに同意すると「だから自分には、証明書の偽造を独断で行う 度胸はなかった(つまりこの犯罪は、村木課長の指示による組織ぐるみのものである)」という調書が出来上がった。そのうえ不安から睡眠薬を求めても「医師 の診断により」ということで却下され、眠れない夜が続いた。
ノウハウその2
「瑣末なことは、しっかり正しく調書に書く」
上村氏の「公的証明書の偽造は、自分ひとりでやった」との訴えに、検事は全く耳をかさず(本当に、全く無視するのだそう)、検事の誘導によって引 き出された文言のみ調書にする。しかし「○○課長は、筆頭課長という職責だ。」というような、事件の中ではどうでも良い瑣末なことを口にしたら、検事は書 記にわざわざ声をかけ、それをさも重要案件であるかのように記録させたうえで「修正文」として調書に添付した。どんな細かい証言も、きちんと記録している のだよ、という体裁を装うのだ。
ノウハウその3
「暴力(腕力)は使わない。言葉で脅す」
本当のことを喋っても、検事のストーリーと違っていると「正直に話さなければ拘留期限が長引くぞ」とか「再逮捕するぞ」とか、言われる。また「河野はキチンと話さなかったので、酷い目に遭ったなぁ」などと、さりげなく、暗にお前もそうなると匂わす。
たしかに暴力(腕力)は振るわないし、ペンを持つ手を無理やり引っ張って調書にサインさせたりもしないが、囚われているものにとって「勾留延長や再逮捕」は非常に恐ろしいことであり、実際の暴力を振るわれる以上の恐怖を感じる。
ノウハウその4
「弁護人のアドバイスに従わせない」
弁護人から「自分の言っていないことが書かれた調書にサインする必要はない」と言われたが、取調室ではサインするまで、上記のような言葉の暴力を浴び続ける。
検事はどうしても単独犯ではなく「村木課長からの指示あり」「組織ぐるみ」という調書を作文したいのだな・・・と感じて「弁護人に相談させて下さ い」と言って抵抗してみたが、やはり「保釈できないな」「勾留が長引くぞ」などと脅され、ついには諦めて言いなりになった。弁護人から「抗議文を出せば良 い」とのアドバイスもあったが、怖くて出せなかった。それどころか、最後には「反省文」まで書かされた。
ノウハウその5
「言いなりになったら褒める」
恐怖心や諦めの境地から、検事の望むような態度や発言をするようになると、「良い表情になってきたね。」「本当のことを話したからだね。」などと優しく言われる。また調書にもそのように記載される。
今日までの、9回にわたる公判で、殆ど全ての証人が「事件は検察が創り上げたストーリー」「100%作文」「壮大な虚構」「でっちあげ」などと語るという、まさに異常な情景が展開されている。
この裁判は、いったい何を明らかにし、何を裁こうとしているのか。
この裁判に、これから求められるのは「虚偽有印公文書作成事件」の解明以上に、「この事件を利用して、何かを成し遂げようとした巨大な企図」を、明らかにすることではないかと思う。そしてその企図こそが、厚生労働省現役局長であった村木厚子さんが「巨悪を成した犯罪者であること」を、必要としたのではないだろうか。
私たちは、裁判の行方を見誤ってはいけないと、思う。
【関連記事リンク】
◆なみねえのtwitter(公判速報はコチラから)
http://twitter.com/nami_takenaka
◆「村木厚子さんの完全な名誉回復を願う」(プロップ・ステーション)
http://www.prop.or.jp/news/topics/2009/20090727_01.html
◆村木厚子さんを支援する会
http://www.airinkai.or.jp/muraki_sien/index.html
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【プロフィール】 竹中ナミ(たけなか・なみ)
1948年兵庫県神戸市生まれ。神戸市立本山中学校卒。重症心身障害の長女を授かったことから、独学で障害児医療・福祉・教育を学ぶ。1991年、草の根のグループとしてプロップ・ステーションを発足、98年厚生大臣認可の社会福祉法人格を取得、理事長に。著書に「プロップ・ステーションの挑戦」(筑摩書房)、「ラッキーウーマン〜マイナスこそプラスの種」(飛鳥新社)。

コメント (22)
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投稿者: 《THE JOURNAL》編集部 | 2010年3月 2日 23:39
捏造のオンパレードですね。許されない暴挙だともいます。
江川女史の言うように特捜は必要ない組織であると断言できます。
それにしても、やり口が日曜日のテレビ〇日に出てるあの人みたいですよね。
投稿者: ならし | 2010年3月 3日 00:12
だから、取り調べの完全可視化が必要なんですが、なぜか現政権も及び腰ですね。
前政権には期待すら出来なかったことを思えば今のところマシですが。
投稿者: 片山 | 2010年3月 3日 07:17
「己の弱さ」から特捜検事作成の供述調書に署名させられた経験をもつ一人として、村木さんの毅然として無実を貫いた姿勢に最高の敬意を表するものです。
「完全なる名誉を回復する会」が、村木さんが無罪になった暁には、厚生労働省の官僚の鑑として更なる高みに就いて頂けるよう活躍されることを期待しています。
裁判所もしたたかだから、予断を許さないが、いままでの経緯からこれを「有罪」とすることの方が
より勇気が要るでしょう。
舛添前大臣は嫌いですが、村木さんを「正当に評価」している点は素直に「確かな目をもつ上司」としてほめたい。
投稿者: 元牢名主 | 2010年3月 3日 10:12
<竹中ナミ様>
なみねえのツイッターをフォローしています。ご苦労様です。
さて、村木さんは可哀相でしたね。東大の法学部出身ではないから、狙われたんですかね?男の嫉妬ほど始末におえないものはありません。
元秘書ビジネスの実態を大阪地検特捜が知らないはずはなく、丁度郵政会社のカンポの宿の問題が世間を騒がしており、どうしても郵政に対する政治介入は悪=民営化は良を世間にアピールする必要があったのでしょう。
裏には郵政利権をアメリカに渡す約束を果たそうとする清和会があったと想像できます。所謂、JCIA(自民党調査機関)が、躍起になってスキャンダル探しをしていると噂されました。
その様な背景もあり、村木さんは「いけにえ」になりました。一人の女性の人生をメチャクチャにして、何の痛みも感じないどころか、自らの出世の踏み台にしようとする検察という生き物は、エリートではなく人間性のカケラもない唾棄すべき存在です。
「可視化法案」だけでは不十分で、「冤罪防止法案」の制定が不可欠です。取り調べだけでなく、参考人聴取の可視化と公開。証拠の保管と全面開示の義務付け、弁護士同席の義務化、再審認定の緩和などは、最低限必要です。
アメリカではDNA鑑定他の科学捜査の進歩に基づき、次々に再捜査が行われ、冤罪が明らかになるとともに、真犯人の逮捕が行われています。
日本は、警察も検察も一般人より身分が上だと思っているから、一般人の人権を守るより自身の立場を守る事が優先です。
官尊民卑の思想そのものが、日本を腐らせています。この病巣を取り除かなければ、検察官僚による冤罪や薬害他の無責任行政もまた繰り返されます。
民主党にやる気がないなら、誰ができるのでしょう。
前向きなのは今の所、民主党内小沢派だけです。だから小沢さんは繰り返し狙われている。検察vs小沢ではなく、私たちは、国民と検察及び官僚組織との闘いと心せねばなりません。
投稿者: em5467-2こと恵美 | 2010年3月 3日 11:59
検察を正義と言うけども、正義とは真実を導き出し、その悪性に対し相応の罪を与える。それは被害者に対する国の義務なのだ。そう思うと今の検察は、真実なんて関係ない、検察と云う権力を悪用して、自分の出世を目論むことなのか?大鶴検事は、前福島県知事の周りの人間を、自殺に追い込み、未だに社会復帰出来ない人、会社を潰された弟さん、権力者にはこれが正義なのか。一般人が全く同じ事やったら必ず訴えられ罪を課せられ監獄に入れられる。正義とは一体何なのだ。こいつはこれで出世した。鳩山首相!これが正義なんですか?これが命を救う政治の基本なのですか?これでは検察権力に反省も改革もないでしょう。戦後の特高警察から何も変わっていない。政治を変えるならまずココから変えて欲しい。鈴木宗男氏、佐藤優し、石川議員、大久保秘書、池田秘書、全く同じ手法でやられている、これでは民野健治も同じ事やっていると反省もしないでしょう。
投稿者: H、MIYAUCHI | 2010年3月 3日 12:13
大阪地検のHPの「ご意見」が送れないようになっています。抗議が多いための処置でしょうか。
投稿者: 許せん | 2010年3月 3日 12:28
検察特捜、恐ろしい組織ですね。
政治不信を煽る事で官僚の力を相対的に上げ、同時に政治家に対する無言の恫喝に利用するやり方に吐き気をもよおします。
投稿者: ノモトSABOユウジ | 2010年3月 3日 12:53
この特捜の重大犯罪は誰が責任を取るのか。でっち上げシナリオを描いた首謀者は逮捕されるべきであろう。
投稿者: 匿名 | 2010年3月 3日 13:27
地検特捜部メンバーの個人情報を公開して家族が職場、学校などに行けないようにするべきだ。
法的に罰を与えないなら、国民がやるべきだ。マスコミはいつも民間人はそのようにやって叩くくせになぜ検察だけしない。同じ穴の狢だから出来ない。だったら民間人がしよう。
投稿者: vodka | 2010年3月 3日 13:52
検察の取り調べの後に、よく自殺した人がいたけれど、それは、その人が罪の重さに耐えきれなくなって自殺したのでなく、検察の執拗でむちゃくちゃな尋問にあい、その精神的苦痛に耐えきれなくなり、ラクになりたい一心で自殺した人も多くいたのではないか、と今回の裁判を見て思う。
投稿者: 日の出 | 2010年3月 3日 14:20
<vodka様>
つまりは「家族を含めて村八分にしよう運動」でしょうか?実際2chでは「民野健治の自宅を特定するスレ」もあるようです。難しいところですね。実際、私はむしろ逮捕されただけで、自宅に押しかけ、親や親戚や同級生にまでインタビューを行うマスコミの在り方が問題ではないかと考えています。マスコミのお陰で推定無罪も個人情報保護も機能していない事に歯止めをかけるべきだと考えています。また、練炭殺人の木嶋容疑者は警察官僚の親戚との話で、殺人で起訴されるまで木嶋という名前は記者クラブのマスコミでは曝されませんでした。現在でもテレビにおいては「この女」とアナウンサーは言い、画面に木嶋容疑者とかろうじて表記されているケースが散見されています。また、通常この手の事件では、親戚・同級生に遠慮なく取材攻勢をかけるマスコミは妙に静かです。
このようなマスコミのダブルスタンダードこそ、糾弾されるべきと思います。
一方、私は検察官は社会的に村八分にすべきと考えています。逮捕されない程度に慇懃無礼に接するべきと思います。秋霜烈日(旭日と菊の花弁と葉)というバッジをして、踏ん反り返っている奴を見たら迷わず、ニヤニヤと軽蔑の目線を送りたいと思います。
また、クラブやキャバクラなどにお勤めのお姉さん方、検察官が来店したら、ぜひとも「小さな子供を抱える母親を拷問した」女性の敵に、それなりの扱いをして頂きたい。どうせマスコミの金で飲んでいるのだから、構うことはありません。男としてのダメージを与えて頂ければ幸いです。
<日の出様>
チャップリンの殺人狂時代を思いだします。彼ら検察は、合法的な殺人を行ってもなお出世します。許し難い人種です。何せ検察のバッジは旭日と菊の花と葉をデザインした「秋霜烈日」を胸に付けていますので、天皇に継ぐ政治家の上に君臨していると思っているのでしょう。
戦争に国民を狩り出して多数の命を奪っても何とも思わなかった内務官僚のDNAをしっかり受け継ついじゃっています。
投稿者: em5467-2こと恵美 | 2010年3月 3日 16:10
みんなで、民主党サイトへ行こう。
みんなで書き込みをしよう。
「検察の暴走をなぜ許すのか?」
「国民の為の政治はウソだったのか?」
「世の中に喧伝されている部分だけでも、検察の真相を追及せよ」
投稿者: 元株や | 2010年3月 3日 16:25
vodka さん
《録画放送中!!》「小沢vs検察」にみる検察と報道のあり方の、
投稿者: 1077さん | 2010年3月 3日 16:31のコメントを良く読んだらどうかな。
投稿者: 匿名 | 2010年3月 3日 17:50
おやおやさん等のコメントを待っています。
投稿者: ヒゲ達磨 | 2010年3月 3日 17:57
これほど,IT技術が発達した現代において、自白調書が優先されているために、自白させるための手法が尊重される。取調べも密室で行われているために、今や不信感をもたれるのであると思う。少なくとも、その捜査過程は、すべて録画・録音することが、裁判員制度の充実において必要でないだろうか。そうした声が、司法に関わる人達からも大きな声では聞こえない。
マスコミが意図的に、こうした声すらあえて取り上げないのか?
そのように思えるから、マスコミが検察・警察のポチと罵られても仕方が無いと思う。
自らすねに傷を持ち、その矛先が己が身に降り掛かってくることを恐れているのでないかとさえ、疑ってしまうのです。
投稿者: 本田 勉 | 2010年3月 3日 19:32
<元株や>様
今、民主党と小沢幹事長のサイトに投稿しました。
衆議院の308議席を獲得したのに、何を恐れて逡巡しているのか、だらしないと付け加えています。
投稿者: 清水 | 2010年3月 3日 20:12
清水さん
俺たち一般大衆だけでも、頑張ろう。
投稿者: 元株や | 2010年3月 4日 10:02
em5467-2こと恵美様
>秋霜烈日(旭日と菊の花弁と葉)というバッジをして、踏ん反り返っている奴を見たら迷わず、ニヤニヤと軽蔑の目線を送りたいと思います。
本当になんだか悲しくなりますね。秋霜烈日のバッジ付けている人たちにこそ、佐藤一斎の心を持って欲しいですね。
以春風接人 以秋霜自粛
投稿者: sirokuma | 2010年3月 4日 10:17
<sirokuma様>
レスありがとうございます。私は歴史に疎いのですが、佐藤一斉が偉大な儒学者で門下生が明治維新で活躍したこと位は知っています。
ただ、厳格な彼がなぜ冤罪に落とされた渡辺崋山を積極的に救いだそうとしなかったのか?
秋霜烈日が、冤罪で塗られた歴史のスタートかも・・・。
スレ違いの書き込み、ご容赦ください。
投稿者: em5467-2こと恵美 | 2010年3月 4日 11:04
石井ピンよ。検察の目的はアンタだっただろ。徹底的に闘えよ。可視可が進んでいないけど、危機感を持って取り組めよ。
投稿者: 風 | 2010年3月 4日 11:12
被告も証人も、宣誓して裁判に臨むのではありません。
検察も「調書は、被告に強要して虚偽を書かせていません。もし、そのようなことがあれば、被告への求刑相当の罰を受けます」と宣誓して、裁判を始めたらいい。
マスメヂアは、この人権侵害こそ、”蜂の巣をつついた様に、大騒ぎして茶の間を賑わすテーマ”の筈。撃ち方止め!のままですね。本当に、許せない!
投稿者: ゴンゲン | 2010年3月 4日 11:36