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鈴木亘:民主党年金改革案の3つのアキレス腱 »

相川俊英:総選挙の裏側 地方分権は誰が進めるのか

 民主党が政権交代を果たした8月30日。歴史的な日となったその前日のことだ。夜6時半すぎ、場所は水戸市内のJR駅前。薄暮の中、有権者が三々五々集まり、街頭演説が始まった。応援のマイクを握ったのは、地元水戸の市議たち。それも自民党と民主党の面々である。命懸けの戦いを展開中の与野党の地方議員がなぜ、同じマイクで応援演説を行うのか。あり得ない話だと驚く人もいると思うが、地元茨城ではこうした光景がごく自然に受け止められていた。政権交代をめぐり与野党が激しく火花を散らした衆議院選挙ではなく、同日選挙となった茨城県知事選の街頭演説だからだ。

 自民党市議はこう口火を切った。
「茨城県政を変えなければならない。変えられるのは、県政を熟知する橋本知事だ」
 民主党市議がそれに呼応した。
「保革を問わず橋本知事を推薦した。16年間やってきてスキャンダルが全くなかった。その手腕を高く評価している」
 司会役を務めた自民党市議がこう話をつなげていった。
「水戸市議会は橋本知事ならばということで保革が一本化した。保革一本化なんて水戸市議会ではこれまでなかったことだ」

 総選挙と同日選挙となった茨城県知事選の争点は、多選の是非であった。現職の橋本昌氏は旧自治省出身で、いわゆる官僚天下り知事である。自民党の推薦で、これまで4回の知事選を難なく勝ち抜いてきた。しかし、後ろ盾となっていた自民党県連が「4期16年の県政は独断とマンネリズム」と断じ、国土交通省の元事務次官を知事候補に擁立した。旗印は「チェンジ茨城」で、自民党県議団がその下に結集した。県政のドンといわれる長老県議(14期)が差配した。

 最大の支援組織に三行半を突き付けられた現職。その去就が注目されたが、市町村長や市町村議、さらには自民党に反旗を翻した県医師政治連盟などの後押しを受け、5選出馬を決意した。キャッチフレーズは「生活大県にチャレンジ」だった。4期務めた後にチャレンジ?それまで何をしてきたのかと、問わずにはいられないが、陣営は臆面もなくチャレンジを連発した。

 こうして「チェンジ」と「チャレンジ」に保守が分裂し、政権交代を懸けた国政選挙とは異質の戦いが茨城県内で展開された。もちろん、分裂した二つの保守陣営の政策に大きな違いはなかった。国政レベルで争点となった大型公共事業についてのスタンスは変わらず、茨城空港や霞ヶ浦導水事業、八ッ場ダムなども共に推進だ。自民党の支持団体である農協や土地改良団体、各種業界団体が、現職と自民党推薦の新人に分裂して争う事態となった。つまり、既得権益をもつ権力構造の内部抗争となり、一般県民はいつもの通り枠の外に置かれたままとなった。

 分裂選挙の結果は、現職の圧倒的な勝利に終わった。自民党推薦候補にダブルスコア以上の大差をつけ、見事に5選を果たしたのである。その勝利に貢献したもののひとつに独自候補を立てなかった民主党があげられる。民主党の最大の支持組織である連合茨城がいち早く現職推薦を決めたため、不戦敗の道を選んでいた。国政選挙での党公認候補の勝利を優先し、連合や医師連盟のご機嫌を損なうことはやめようと考えたと思われる。

 もっとも、冒頭で紹介したように、民主党の地方議員の多くは現職候補を応援し、党としては実質的に現職を支援する様相が鮮明になっていた。民主党が掲げる政権交代や脱官僚依存、地域主権といったキャッチフレーズが茨城では空疎に聞こえてならない。つまり、国政選挙に勝つためには地方の問題には目をつぶってしまう体質があるように思えてならないからだ。足元の改革に本気になって取り組まずに、どうして国の改革がすすめられるのか、疑問が膨らむばかりだ。そればかりか、民主党の地方組織自体が既得権益の構成員となっているのではないか。中央でしがらみを断ち切るといいながら、地方ではしがらみそのものとなっていないか。そんなねじれた組織に真の改革が可能なのだろうか?民主党が掲げる地方分権は地方の力で進めるものなのではないか。中央の力で地方分権を断行するつもりなのだろうか?

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【関連記事】
■相川俊英:ムダを知る住民を無視してムダはなくせない(8/26)

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aikawa_toshihide.png【プロフィール】 相川俊英(あいかわ・としひで)
1956年群馬県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1992年よりフリージャーナリストに。1998年から週刊ダイヤモンド委嘱記者に。地方自治を主なテーマとして全国を取材・執筆、サンデープロジェクトの特集レポーターも務めている。主な著書に「長野オリンピック騒動記」「東京外国人アパート物語」「コメ業界は闇の中」「ボケボケパラダイス」など。

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相川さんの危惧、その通りだと思います。国民は今までと大きく舵を切ろうという結論を出しました。国が舵を切れば、地方もそういった首長や議員達が徐々に選ばれていくのではないでしょうか。

ところで橋下府知事。彼はどの党の政策が良いかという選択で、最終的に民主党を選びました。自分的には大きな驚きです。
選んだとたんにテレビや新聞が彼のことを取り上げなくなったのには、唖然としましたが。。。
今日の記事に、橋下知事には「候補者とのポスター撮影も断られた」と中山太郎御大がえらくご立腹だったと書かれています。
以前、彼は信用できないと書きましたが、しっかり筋を通したことに、大きく信用度うp。

■現職知事は利権政治を拒否してきた方だと推測します■
相川様の本論説で,初めて茨城県知事選の詳細を知りました.
起ったことは自民党推薦候補が落選し,民主系候補が当選した,というだけだと思うのですが,如何ですか.要は,自民党が負け,民主党が勝ったと言うことです.
相川様の趣旨は,「多選即ち利権温存」の様ですが,飛躍した論理です.私は,現自民党を利権まみれの,偽装,謀略の政党だと思っております.ですから自民党から「三行半を突き付けられた」現職知事は,きっと,自民党への利権誘導政治を拒否してきた方だと推測します.だから,民主党員及び良心的な自民党員が応援したのだと思います.そして選挙の結果も順当なもので有ったのではないでしょうか.
状況は以上の分析以外には無いと思います.ところが,相川様は,これと地方分権あるいは地方主権の話をからめて,その整合性に疑問を呈しています.
ジャーナリストの相川様が何故,敢えてこの無理筋の論理展開をされるのか,そのことに疑問を感じます.相川様の経歴を拝見すると「サンデープロジェクトの特集レポーター」とのことですが,私から見れば,「サンデープロジェクト」は司会の田原総一郎氏を筆頭に,「常識はずれ」だと思います.この論説もそうした流れでの「常識はずれ」の指摘だろうと,勝手に想像しているところです.

<地方政治は未だオール与党体制>
民主党の掲げる「地域主権の推進」で危惧・危険視されることは国政と違って「地方政治」は未だ与野党の区別がクリアではない,という点です。これは全国的な傾向です。ここに「地域主権型道州制推進」の問題点の一つがあります。つまり,国政における対決の構図が地方政治ではない,ということが非常に危険だということです。

相川さま
初めてコメントします。民主党は早急に地域主権に着手するとは言っていませんから、この手の杞憂はおかしいと思います。たしかにおっしゃるとおり地方の状況は、茨城と五十歩百歩です。大都市を除き、まだまだ意識的にも、現状的にも、地方主権が危ぶまれる状況でありますが、どのみち少子高齢化に急激な歯止めがかかるようにも思えないですし、地方行政スリム化、人口集約は、まだまだ必要と考えます。が、今回の選挙で、多くの人が政治に関心を持ち、生活のデザインを描き始めたのは、始まったばかりです。いたずらに、優先順位の低い問題を指摘し、不安をかき立てる事が、メディア人としてなすべき事とはとても思えません。地方の現状に多くの人は、生活に密着した問題とは知りながら、両目をふさぎ、あるいは、よそ見をして諦めてきました。しかし、今回の選挙で自分たちが、何かをかえる事が出来ると知ったのは確かです。地方分権への意識萌芽は、まだまだ始まったばかりです。多くの地方都市が、市民自身が議会をコントロールし地方の旧体制に迎合しなくなれば、黙っていても地方主権は動き出します。その時まで、報道は、現状リポートを提示して頂くだけで、十分です。不必要な現政権への批判はいらないかと思います。

相川様
貴方の危惧する地方は、その土地で暮らす住民の民意を信じるしかありません。
先ずは、国政選挙での政権交代で地方分権への扉をこじ開けました。先日、選ばれた民主党国会議員が行えることは、国の予算を省庁から取り上げて、直接自由に使えるお金にすること。地方整備局なる、二重行政の無駄を無くすこと。
そして高速道路無料化を実現し日本のインフラ整備をすすめ地方に企業誘致をしやすくさせて活性化を目指すこと。

今までの自民党国会議員が行ってきた 【地方に道路や新幹線、ダムや施設などの予算】を分捕ってきて優秀だとか、大先生だとか有難がるような住民のままでは何の為に政権交代したのだか解りませんよね。

我が石川県では、ご存知 元総理が地方政治に多大なる影響を与えていて、県会議員などは自民党王国のままです。対する民主党は複雑な事情でいまだに【新進石川】なる権力と民主党県連とが絡み合っています。そこでこんな記事がありましたが・・・
早くもまだ国会にも行っていない民主党議員を貶している様で不快でした。
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news.php?k_id=18000550909030001

今始まった革命的改革を、叩くのではなく 育てていく為にも地方住民の意識自体が変わらねば上手く行きません。
今の谷本知事は、自民党候補を破っての当選知事です。2期目より自民相乗りとは成りましたが一応民主党に近い改革知事だと思って期待しています。
何処の県でもいえる事ですが、先ず知事、そして県議を民主党の政策を理解し、推し進める候補を勝たせていくことが、この選挙の意味、国民の生活が良くなって行く道なのです。
ローカル話で、スミマセン。

相川さん 

  立てるべきは、問題なのか、課題なのか

1. 相川さんのSundayProjectでの特集コーナーは、興味深く拝見しています。
対象とする事象を、「広く深く掘り下げて、その原因を探り当てるのだ」という姿勢には、予ねて一定の評価をしておりました。

2. 「一定の」とは・・、一般の特集番組との比較ではジャーナリズムとしての「広さと深さ」を感じていたという意味ですが、他方で同時に、いま一つ「深さ広さが足りない」という意味を含意しています。更に言えば、対象の事象群夫々の「真の原因=真因」に辿り着くことなく、探索途中で「手打ち」をした如くに、手近な処にある(=誰でもが感じ知っている)原因でレポートを纏めて来られた、という認識があります。それはそれで、無いよりは益し=BetterThanNothingですが・・。真に、このレポートも全く同様の「深さというか浅さ」を感じました。SunProとは違いこのTheJournalの場では、間違いなく「浅いレポート」となりますが・・。

3. 今回の茨城県に限らず地方政治は東京都議会でさえも「オール与党」の状況が一般的であると、今回の政権交代を控えた昨今のメディアが報じています。長く続いた「オール与党」の一例を取り上げて、それが問題だということなら陳腐であってニュースバリューは無いのでしょうが、相川さんは流石に其処には止まらずに、引用【民主党の地方組織自体が既得権益の構成員となっているのではないか】とセンセーショナルな切り口に仕立てられている、上記の私の認識に戻れば、「手近な処にある(=誰でもが感じ知っている)」ことを、恰も鬼の首を取ったが如くに大問題のように騒ぎ立てている・・。

4. 私には、今の大変革の時代には、
1) 対象となる問題を、単に問題として扱うのではなく、その問題を解決する的確な方策を導き出すヒントを的確に示唆するのが、「今後の」日本のジャーナリズムには重要だと思います。(「今後の」とは、「過去以上に大変革の時代」を指す。)フリージャーナリストであれば尚更に重要でしょう。見識にも真摯さにも一層磨きを掛けることが要求されよう。私には、極く限定はされるが、一部の海外ジャーナリズムはその域に達していると観えているが・・。

2) そのためには、提起された問題を、「課題」として捉える事をお勧めします。私の座右の銘への我田引水になりますが、「問題は、解決されるために存在する」のですから・・(笑)。

茨城は田舎と認識しています。
30年近い前、町議会選では本当に金を配っていた・・と友人に聞きました。
土建屋の争いで、自派土建屋派が入るかどうかで次選挙までの受注が決まるという生活問題。
また受かると議員給与が田舎では馬鹿にならないレベルという認識。
都会人にはあの頃でも信じられない話でしたが、現在どれほど変わったのでしょうか?

今回茨城でも民主系が勝ったようですが、自民党が小選挙区で勝った選挙区を見ると、田舎なんだろうなあ・・と思うのは私だけでしょうか。
まだまだ、田舎の因習はありますね。

 茨城県知事選挙は保守の内紛に知事と一心同体の県職員である地方公務員が構成している連合が自民の推す候補に勝利した図式で民主党の衆議院議員候補者は自分の選挙の損得を考え何もしなかったというのが現実で反自民票が現職知事に流れたわけです。それでも銀メダリストさんにも相当数の票が投じられています。
 連合(主として自治労)は兵庫8区や長野県知事選挙等を見ると既得権益擁護派といわれて致し方ない側面を持っています。
 地方分権は誰が進めるか。
 千葉県等地方自治体の裏金問題、外郭団体への補助金、天下り等を見るにつけ抜本的改革の意思は見られず分権を進める体制にはなっていません。
 議会も、職員もぬるま湯で馴れ合い体質が100%体を汚染しており信頼感は0です。
 頭脳から手足の指先にいたる末端まで体質改善が必要で分権はそれからです。
 現状のまま制度だけ変えた場合最悪の結果が待っています。
 

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2009年11月、日刊工業新聞社

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