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山下惣一:「誤解」だらけの農業問題(2)

 「農業は過保護」というのは私たち農家が一番アタマにくる「誤解」ですね。くどくどと弁解はいたしません。私の質問にひとつだけ答えてください。「それほど大切に保護されている農業をやる人がいなくなるのはなぜですか。保護される側から保護されない側へ雪崩をうて移っていくのはなぜですか?」さ、答えてください。

 「農業の産出額はGDPの1%程度だから農業が無くなったとしても日本経済からみればたいした問題ではない」こう主張する経済学者がいます。つい数年前、FTA(自由貿易協定)EPA(経済連携協定)推進ムードのころに農業が足枷になっているとして盛んに喧伝された論です。いづれまたむし返されることでしょう。こういう主張をするアホな経済学者が世間に通用し、それを信じて農業を「誤解」する人が多いことが私には信じられませんね。ちなみに同比率の国際比較ではアメリカ・ドイツが0.9%、イギリスは0.8%です。

 まぁ、そんなわけで農業・農村の実態を知らないただの無知からくる誤解なのか、曲解なのか、それとも意図的な攻撃なのかはともかくとして、この国の農業は国民の誤解の大海の中で溺死させられているのです。

「農業構造改革による零細農業からの脱却」という最大の幻想

 そして、最大の誤解、錯覚、幻想は国の農業政策の方向だと私は考えています。いったい農業をどうしようというのでしょうか。

 「農業構造改革による零細農業からの脱却」というのは日本の農政の長年の悲願です。零細農家が多いために兼業化、高齢化がすすみ自立も産業化もできず国際競争力もなく補助金頼みにならざるを得ないというわけです。

 日本の農業が零細なのは日本の国土のせいであって農家の責任ではありません。飛行機の窓から眼下の風景を見てください。山また山のつらなりで、国土の7割近くが森林、山林です。山と山との間を川が流れ、川沿いに水田と民家が並び、やがて河口の平野と都市につながる。国土に占める耕地面積はわずかに12.5%しかありません。北海道や八郎潟など一部の地域を除けば日本の農業は自給農業だと私は考えています。売るためではなく食うための農業です。

 だから昔から日本の農家は農業生産だけでなく、山仕事、炭焼き、わら細工などもやって、これを「副業」と称したのです。日本の伝統工芸のほとんどは農家の副業から始まったといわれています。このようにカネもうけではなく、暮らしを目的としてそれに必要なことは何でもこなす人のことを、私は自分もそうありたいという願望をこめて「百姓」と呼ぶのです。

 日本の村社会はいまもなお基本的に血縁関係であり、何百年も同じところに住み続ける定住社会です。住んでいるのは「百姓」です。高齢化した百姓衆が村を支え、乏しい年金をつぎ込んで、赤字の農業を守っているのです。農家が農業を守っているのが実感です。その根っこ、核、コアとなっているのは稲作に使う「水」なのです。田んぼは個人の所有ですが、水は個人のものはなくみんなの共有財産です。この水の共同利用こそが日本の農村の土台でもあり、畑作農業地帯とは異なるところでしょう。何よりも公平、平等、和が尊重されないと維持できない社会で個よりも集団が優先します。たとえば溜池の水を落とす、川の井堰で流れをせき止めて田んぼに水を入れるなどの日を決めるのは総意であり、個人の自由は許されません。つまり、一人の百歩ではなく、百人の一歩前進がルールです。
 経営規模の大小というのは個人の立場での話であって、集団でみれば全体のパイには変わりはないわけで大した意味はないのです。

 集団内ではゼロサムゲームですから一方に大きくなる人がいれば他方に小さくなる人が出る。そういう変化は好まないのです。人がいなければシステムそのものが維持できないからです。ですから、農家はやり方が下手だから農業がもうからないのではなく、もともと「もうけ」を目的としていないのです。私が尊敬する百姓の大先輩は、若いころ世襲に際して父親から「いいか、大きくなるな、小さくもなるな」と教わったそうです。これが村の論理なのです。

 長い間農政が進めてきた「構造改革」は「村こわし」「村つぶし」なわけでその結果生まれたのが、「限界集落」です。農家の数が減って、残った人の経営規模が大きくなるどころか、結局みんな滅びるのです。

 つまり、日本人の風土にアメリカ型の単作、単品専業モデルを導入したことが、とりわけ戦後農政の誤りではなかったのでしょうか。

 一例をあげれば畜産です。構造改革が進んだ分野で、小規模農家が淘汰されてどんどん大型化しています。それ単体ではロットが多いことが合理的でしょう。しかし、飼料用のトウモロコシだけで毎年1200万トンも輸入して食糧自給率低下の主因となり、糞尿は産業廃棄物として日本の環境に放出、処理されているのです。地球規模でみれば資源の一方通行であり、輸出国は国力の喪失、輸入国は汚染の輸入という構図で、こんなやり方が何百年も続くのでしょうか。これを逆に小規模にすれば里山や田んぼの稲わら等の地域資源で飼育でき、糞尿は貴重な有機物として活用する循環型社会となるのです。

 いま株式会社の農業参入が注目されており国はその方針のようですが、これはあくまで部分的、限定的と考えるべきでしょう。農林業の本体ともいうべき全国津々浦々の農山村の家族農業が担っているものをそっくり肩替わりするという話ではないのです。問題の本質は「本体」をどうするのかということです。「誤解」のないように願いたいものです。
(「熱風」2009年7月より)

>>「誤解」だらけの農業問題(1)を読む

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DSC_9965.jpgのサムネール画像【プロフィール】 山下惣一(やました・そういち)
1936年佐賀県唐津市生まれ。
農民作家。中学卒業後、家業の農業を継ぐ。
「生活者大学校」教頭、「農民連合九州」共同代表、「アジア農民交流センター」共同代表。1969年「海鳴り」で第13回農民文学賞、1979年「減反神社」で第7回地上文学賞を受賞。著書に「食べ方で地球が変わる」「身土不二の探究」「直売所だより」など。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

食う・働く・寝る、または働く・食う・遊ぶ・寝るの内食うのが根源。

百姓暮らし自体が時給自足だからほっといてくれ・・という事を言いたいのか?

と言われても、生産者がいないと消費者は困る。
要は、国の財政状況が分からないから、死なない程度の食糧確保にどれだけ金かけるのが適正か分からないという事。
大体、国の財務諸表とりわけ貸借対照表が無いんで評価のしようがない。
その推進部分としての損益計算書も無いに等しい。
国民の財産(私的)が一杯あるから国債はまだ100兆はいけるなんて、某榊原元大蔵省は言ってるが、あり得ない論理。

そもそも山下さんの言う、土着の百姓でない過半の国民は、企業よろしく、日本じゃしょうがないから海外移転なんて事もあるんでは。

食糧自給率にしても、カロリーべースだ、金額ベースだとか何だか実態が不明。
ともあれスゴイ量を捨てているという実態からして、食うには困っていない事は確か。

色んな事がらの数値が明らかでないこの国で、農家への保証が適正かどうかなんて評価するのは無理。
税金の収入構造(法人・サラリーマン・個人事業主・農・漁業者など)は多分分かるんだろう?
それの適正な配分でモメルのは当然だが、だれでも数値が分かれば、それの評価はそんなに違わないと思う。
感情論で無く、グランドデザインを示せばいいだけの話。

まず食うのが優先だから、エライ先生達はもっと数値を明らかにした上で、論理的に議論をしてもらいたい。
国民がnetで数値データ探して考えるのはナンセンス。

日本のありべき姿100年後を考えて国政の優先順位を決める、グランドデザインを描ける政党を選択したい。山下さんの活動に敬意を表します。

長い間、農業を続けてこられたことに、まず、敬意を表します。私の実家の周りもほとんどが兼業農家です。そして、そのほとんどが、人に貸すか、減反で、農協に卸しているのは、ごくわずかです。それでも、何か、作らずにはいられず、自分の家用に野菜を作り、子供や、勤め先の人たちにどんどんあげています。その人たちにとっては、作物を作るのが、生活そのもので、80歳のおばあちゃんでも、今年うまくいかなかった作物を、来年は、こうしてみようと、意欲を持って、取り組んでいます。大規模にしてコストを下げることより、生産者と消費者が、直接売り買いするほうが、双方を満足させると考えます。地産地消の本当の形での実行です。また、炭焼き、藁細工に変わって、脱化石エネルギーは、多くは、一次産業の中にあります。水力、風力、間伐財による火力発電、また、カーボン固体酸による植物繊維のエタノール化も、自然の多い所のほうが、適しています。このエネルギー政策で、若い人の雇用を、地方に作り出し、農繁期における人手不足を解消し、後継者を育てることが、できると思います。日本の国土の恵まれた土壌と水を、もっと日本人は、感謝した方がいいと思います。公共工事で土地が高く売れるのを、待っている農家ばかりでは、ありません。減反で、カネをもらって喜んでいる農家ばかりでは、ありません。作ることが、生活になっている人たちもいて、直に消費者とつなぐ、サポーターが必要なのです。農家の方たち、タネを取り続けてください。来年も再来年も育て続けてください。

今、民主党は「地域主権」を唱えています。
農業も、同じなのではないでしょうか。

狭い農地ながらも、自然と対話し、工夫に工夫を重ねてきたのが日本の農業の歴史であり、こうして蓄え、伝承してきた智慧もまた大切な財産なのです。
大規模集約化は、合理化の名のもとに、この智慧という財産を無視するものです。

日本の農業が、大量生産・大量消費を追いかけるのは間違いです。大陸国と勝負しても負けるのが分かっているからです。

見てくれがよく、水っぽくて栄養分がスカスカの農産物は紛い物だと気づかれています。見てくれよりも、本来の味がして、本来の栄養分を含んだ農産物が求められてきています。

後継者問題にしても、「誰が作っても同じ」な大量生産農業では、魅力もやる気も感じないでしょう。
高品質化に重点を置き、農産物の地域ブランド化を目指した方がいいと思います。
政治はバックアップに徹すればよいのです。

拙者,当集落へ流着いて?,徳川幕府に強制定住させられての十三代目。
幕末並び明治の頃には凡そ1町2~3反歩を保有したれども,十一代目祖父,笈を抱いて離農。教育者たりとて其れなりの生涯を送り戦後帰郷,此の地で没す。
十二代目親父は異郷の地に生まれ,敗戦後の一時をこの地で過ごしたるも,其れなりの勤め人稼業の末,他郷で没す。
吾は異郷の地で生まれながら,戦争末期,この地に疎開,幼少の時を過ごしたれば,退職を機に帰郷。耕地整理,均分相続の果てとて残されたるは,5反歩余りの田畑と屋敷。
3反程の田は,集落に唯軒一残り,我家のみならず村内はおろか,隣の集落の田圃までをも引き受けて奮戦中の専業農家に託し,吾は家屋敷や畑の雑草と日夜奮戦中。
敗戦の時,不在地主とて父祖伝来の田地田畑を失うは畏れ多しとて,祖父を恐喝?説伏せ,帰郷を強行したるは祖母。
田舎に在っても敗戦直後,数年の間は餓えた,の思いは未だに消えざるも,老い先短い今,鮮魚,鶏卵,肉類,乳製品の外は,栽培したるか,自生したるかは判然とせざるもお天道様のお蔭,縄文人たるかの如くに毎朝の採取物で日を送るは,将に山下氏の言に在る農夫,百姓の暮らしならんか。とまれ,何の心配も無く年金で暮らし居り候も,将に祖母のお蔭ならん。
処で,8月18日,大野氏の「農業政策を考える(2)」に寄せたる如く,近い将来,水田のみが耕作可能地として地球上に残るは必定と見定め,我DNAを継ぐ後裔の生存の縁を残さんとて折々に,孫等を呼び寄せ,野良仕事する様を記憶に刷込まんとする,此のエゴイスティックな老村父子を諸賢は嗤うか。

ゼロサムゲームにはまった、周辺社会から背を向けて自分たちだけ生き残ればいいという態度の、どうしようもなく生産性の低い人たちを必死で救おうとして保護政策を打ってきた人たちを全否定するわけですか。なるほどなるほど。
あなたのおっしゃる日本農業の「循環性」など神話にすぎません。江戸時代だけをみても、何度もあなたのいう「百姓」の暴走を止めるための法整備がなされています。自然と調和して生きる百姓なんてのは、せいぜい戦後になって喧伝されるようになったファンタジー以外の何者でもありません。世界的に見ても、農業は一貫して自然からの収奪を基調とし、循環の思想はむしろ都市社会からもたらされました。
第一段落にも答えておきましょう。簡単です。「保護しても優遇しても人が逃げ出す超絶ダメ産業だから」以外に答えはありえません。その事実から目を背け、自分たちの論理だけを押しつけるのは怠惰でなければただの傲慢というものでしょう。

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