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2009年1月29日

麻生施政方針演説は「落第点」 ――“負の求心力”だけが政権の支え?

takanoron.png 28日行われた麻生太郎首相の施政方針演説は、与党内からも「迫力も力強さもない」(自民党閣僚経験者)、「国民に訴える力、明るさ、さわやかさという点からすると、落第だ」(公明党幹部、いずれも読売新聞29日付による)と酷評される体のもので、「政権浮揚のきっかけにしたい」という事前の意気込みとはほど遠い中身の薄いものになり終わった。

 29日付各紙の社説も「信なき人の言葉の弱さ」(朝日)、「“麻生シナリオ”がうつろに響く」(毎日)、「“政府の役割”を着実に果たせ」(読売)、「首相は百年に一度の危機への構想を示せ」(日経)など、総じて低い評価しか与えていない。

 朝日は「内閣支持率が低迷する中で、解散はしたくない。さりとて9月までにはある政治決戦をにらめば、(野党に)妥協もしたくない。演説には、そんな首相の苦境が色濃く表れていた」と指摘した。その通りで、解散・総選挙を唯一の使命として与えられながら敗北が怖くて解散に打って出られない主体的な矛盾を、「100年に一度の経済危機」が襲っている時に解散どころではないだろうがという論法で客観的な矛盾にすり替えることで自分の弱さを糊塗し、しかしそうすればするほど、景気対策で人気を挽回しようとしてバラマキ的になって、改革すなわち官僚権力専横の打破という時代の課題からは遠ざかり、かえって国民の信を失うという、どうにもならないディレンマに填り込んでいるのが麻生である。

●支持率も危機ラインへ

 内閣支持率も軒並み2割を切って、その数字だけから見れば、いつ政権が崩壊してもおかしくない状態である。1月の報道各社調査による内閣支持率・不支持率は次の通り。支持率の低さもさることながら不支持率の高さが特徴的で、国民の約7割が麻生の退場を求めていることになる。

090129sijiritsu.png

 にもかかわらず与党内は驚くほど平穏で、公然たる造反は今のところ渡辺喜美衆議院議員の自民党離党のみ。消費税増税の時期を来年度税制改正法案の付則に明記するかどうかをめぐっての中川秀直ら“上げ潮派”の反対も、決定的な対立にまでは至らず、むしろ早々に玉虫色の表現で折り合いをつけるのに忙しかった。また海上自衛隊のソマリア沖派遣問題では、反対のはずの公明党があっさりと麻生の方針に同調し、その理由について同党幹部は「今は首相の足を引っ張るわけにはいかない」と語った。

 公明党幹部の言葉が象徴するように、与党内を支配しているのは、それでなくとも首に縄が掛かっているに等しい麻生の足を引っ張るような揉め事を起こせば、弾みで内閣崩壊、解散・総選挙、大敗で自分も落選、政権喪失という急坂に転がり込んで行きかねないという恐怖心である。麻生が日々淡々として艶々した顔に笑みさえ浮かべて職務に励んでいるのは、「お前ら、俺と一緒に地獄に堕ちてもいいのか」という開き直った恫喝が利いているからで、その意味でこの内閣を支えているのは与党全員の恐怖心に付け込んだ“負の求心力”だけである。

●塩崎らの動きに注目

 とはいえ、この恐怖の均衡はいつまでも続かない。自民党執行部は、渡辺喜美の離党が意味のない単独行動であると印象づけようとしていて、事実、渡辺の言う「国民運動」は今のところ無所属の江田憲司議員の合流を得たに止まっているものの、蟻の一穴という言葉の通り、近い将来自民党に大惨事を引き起こす導火線になるかもしれない可能性を持っている。

 注目される動きの1つは、塩崎恭久元官房長官、茂木敏充元金融相ら衆参の中堅・若手49人が渡辺離党の3日後、1月16日に「速やかな政策実現を求める有志議員の会(速やか議連)」を結成、経済危機対応の提言を発表したことで、それを一言で言えば、麻生に対して小泉以来の「改革」路線への復帰を迫るものである。

 「経済危機対応特別予算勘定10兆円の創設」と題したその提言は、この経済危機に直面して「各省庁の施策を積み上げた従来型の景気対策は無力」だと麻生流の景気対策をはっきりと批判し、「今こそ政治主導により、バラマキではない、未来を見据えた積極投資の前倒しによって日本経済を果敢に再生し、内需拡大、雇用創造を急ぐべき時」だとして、通常予算とは別枠で10兆円規模の「経済危機対応特別予算勘定」を創設し、内閣に「経済危機・緊急雇用対策本部」を設置して官民の英知を結集して「新たな国のかたち」に向けて未来投資をすべきだとしている。

 小泉時代から(実績はともかく)その後継を標榜した安倍時代にかけて引き立てられた“改革派”が中心で、塩崎は政局絡みで興味本位に捉えられるのを嫌って「反麻生と考えたことは一度もない」と言いつつも、渡辺喜美に関して「1998年の金融危機以来の仲間だ。国を良くしたいという志は同じで、連携もあり得る」と語っている(17日付読売)。50人近い麻生批判グループの出現は馬鹿にしたものではなく、今後の成り行き次第では渡辺が点火した導火線から引火して爆発する可能性を秘めている。

 ここで彼が「1998年の金融危機以来の仲間」と言い、また提言の中で「党内ヒラバ議論の復活(例:98年『金融再生トータルプラン調査会』)」と述べているのは1つの大事なポイントで、小渕政権が発足した直後の同年秋の「金融国会」では、野党=民主党と自民党内の塩崎、渡辺、茂木、石原伸晃(現自民党幹事長代理)ら政策通の若手からなる同調査会とが事実上、手を組んで改革的な法案を次々に繰り出して小渕政権を追い詰めた。その意味では塩崎や茂木は、小泉登場以前からの筋金入りの改革派であり、麻生の反改革姿勢に我慢できなくなったのも当然と言える。

 3月から4月にかけて予算とその関連法案の審議が山場を迎えた時に彼らが爆発すれば、加藤紘一、山崎拓ら長老級や中川秀直らベテラン組の反麻生勢力が一気に燃え上がって連動する場面があり得ると見ておくべきだろう。▲

朝日新聞襲撃事件の犯人が実名告白手記を発表

 1987年5月に朝日新聞を襲撃し、散弾銃で記者2人を殺傷させた「赤報隊事件(警察庁指定116号)」の犯人が、29日発売の週刊新潮で実名告白手記を発表した。

 手記を発表した男の名は島村征憲氏(65)。手記では、計画の段階から犯行に至るまでの過程を詳細に告白している。

 なかでも注目すべきは、手記の中で「私は〈実行犯〉だ」と述べ、犯行の指示は「ある人物から〈朝日を狙ってくれ〉と頼まれ」たと語っていることだ。この人物は誰もが知っている「ある公的な組織」に属する人物で、本人はその人物から金銭を受け取ることで犯行を決意したという。

 赤報隊事件は2003年に時効となっているが、今回の手記が真実であった場合、これまで謎に包まれていた言論テロ事件の真相解明が急速に進むことになる。この独占手記は、次号にも続編が掲載される。

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鈴木邦男氏(一水会顧問)
「朝日に対する恨みが伝わってこない」(2/2)

─まず、記事を読んだ感想をお聞かせください

 (記事の中に)思想的なことを全く書いてないでので、「どうなのかな」と感じました。

 手記を書いた本人によると、事件はある人物から指示され、彼は末端の実行部隊ということですが、金でやった事件ではないと僕は思います。2回目以降の記事がどう展開するのかはまだわかりませんが、普通であれば金目当てだったら(事件は)一回で終わるはずです。それが何回も何回も朝日を襲撃しているわけですから、(実行犯には)思想的な動機があったはずです。記事からは、そういう朝日に対する恨みが伝わってきません。

 だから、1000万円で頼まれて事件をおこしたというのは、私は違うと思います。そんなんだったら、どこのヤクザだとかは人間関係ですぐにわかってしまいます。

 朝日も、なぜこの男が真犯人ではないと思ったのかということをはっきり示すべき。ひょっとしたら、本人が持っている情報よりも、朝日の情報のほうが具体性があったのかもしれない。

─手記ではある公的な組織に頼まれたと語っていますが

 戦前であれば、そういった犯罪で捕まっても、その組織が犯人の面倒を一生見たでしょうが、いまはそんなことはないですよ。また、彼がその公的機関に忠誠心があるとは思えない。警察も何かの事件がおこったときに新右翼をつぶそうとすることはあっても、(警察が)自分自身で事件を作るということはないでしょうね。

─では、この手記では信憑性が判断できないということでしょうか?

 来週号でも続きが発表されるということですが、これでは(信憑性の判断は)ちょっと難しいのではないでしょうか。

2009年1月27日

特集:どーなる!?オバマ大統領誕生後の世界と日本

1月20日正午(日本時間21日午前2時)、バラク・オバマ氏(47)は、ワシントンの連邦議会議事堂前の特設会場で行われた大統領就任式で宣誓し、正式に第44代アメリカ大統領に就任した。

アフガニスタンとイラクで継続中の対テロ戦争、アメリカ発の金融危機を発端とした世界同時不況、国内では自動車産業のビッグ3が破綻寸前という、就任直後から“戦時大統領”となったオバマ大統領が、どのような政治を行うかが注目される。

THE JOURNALでは、『どーなる!?オバマ大統領誕生で変わる世界と日本』と題する緊急特集を実施。世界史新時代の行方と展望を緊急分析する!

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【記事一覧】
■中尾茂夫氏:今回の危機をどう見るか?(1/27)
■岸井成格氏:オバマ新大統領就任と「宇宙船地球号」(1/25)
■金平茂紀氏:アメリカ新時代の幕開け(1/24)
■森本敏氏:オバマ政権の外交手法と戦略(1/23)
■高野孟氏:危機の海に漕ぎ出したオバマ政権――就任演説の読み方(1/22)
■田中良紹氏:日米の政治リーダーは正反対(1/21)
■渡部恒雄氏:民主主義社会の進歩となるか(1/21)
■金平茂紀氏:インターネット・ネーション(1/20)
■若林秀樹氏:祝オバマ政権誕生(1/18)
■辺真一氏:いよいよオバマ政権が誕生する(1/15)

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中尾茂夫氏(明治学院大学経済学部教授)
「今回の危機をどう見るか?」(1/27)

 「Change」を掲げる米オバマ新政権の手腕への期待が高まっている。アメリカ史上初の黒人大統領誕生に、世論が沸くのは分からないではない。だが、オバマ政権が誕生したからといって、すべてが解決するわけではない。金融不安の鎮静化からはほど遠い。所得税減税のクーポンを配布し、政策金利をゼロにし、公的資金を注入し、不良債権を買い取り、さらにはビッグスリー救済で合意しても、消費と雇用は落ち込み、実体経済の後退も深刻である。さらに、それは、ヨーロッパや新興国を含む世界中を巻き込む世界同時不況の色合を強めている。オバマが新大統領に就任したからと言って、この危機が払拭されるわけではない。

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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「オバマ新大統領就任と 『宇宙船地球号』」(1/25)

1月20日、バラク・オバマ大統領が誕生した。44代目で初の黒人出身の大統領ということで時代の変化、歴史の変わり目を印象づける就任式となった。その冷静で淡々とした演説ぶりは見ている人達を「おやっ?」と思わせたが、毎日新聞が解説で「高揚感から現実直視へ」としたように、これまでの大統領選挙の最中、そして勝利宣言の時のように国民に期待を持たせるような高揚感を遮断した。

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金平茂紀氏(在京テレビ局記者)
「アメリカ新時代の幕開け」(1/24)

今、この時点で何を言うべきなのか。「新しい責任の時代」という見出しが21日付の日本の新聞で踊っていたようだが、寒空の下、モールに集った200万分の1としてオバマの就任演説を聞いていた限りでは(寒かった!)、ちょっとニュアンスが違っていて、「再生・再建」(Remaking of America)とか「新時代」(New era)という言葉が頭の中に残った。美辞麗句を連ねることよりも、オバマはこの厳しい現実を直視する道を選んだかのような演説だったと思う。

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森本敏氏(拓殖大学海外事情研究所所長・大学院教授)
「オバマ政権の外交手法と戦略」(1/23)

オバマ大統領の就任演説を読むと、この政権の対外政策はブッシュ政権の基本的な政策と異なり、国際協調とグローバルな問題に取り組む方針を打ち出しています。

もう少し広い意味でオバマ政権の対外政策を考えれば、たんなる国際協調主義ではなく、これまで築き上げた同盟関係をできるだけ活用し、アメリカの国際的リーダーシップを取り戻すということです。

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「危機の海に漕ぎ出したオバマ政権――就任演説の読み方」(1/22)

空前のお祭り騒ぎに送られて、オバマ新政権が出帆した。が、新大統領が漕ぎ出したのは荒れ狂う危機の海であり、一身に寄せられた過剰なまでの期待に応えて船を正しく導くことが出来るかどうかは、全く保証の限りではない。何しろオバマは、米国政治史上で言えば「黒人初の大統領」に違いないが、より大きな世界史的・文明論的次元では「アメリカ帝国が崩壊し始めて初の大統領」なのだから。

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田中良紹氏(ジャーナリスト)
「日米の政治リーダーは正反対」(1/20)

1月21日未明に行われたアメリカ大統領就任式をテレビで見ながら、全く正反対の日米の政治リーダーについて何がそうさせるのかを考えた。

オバマ新大統領の就任式は初の黒人大統領の誕生という意味で、はじめから十分に歴史的意味を持っていたが、就任演説の内容にばかり異常な期待を寄せるメディアの報道に「うるさい」を通り越して辟易していた。ところがオバマの演説はそうしたメディアの浅はかさに肩すかしを食わせるように、パフォーマンスを意識しない「重心の低い」演説だった。

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渡部恒雄 (1/21)

オバマの誕生は、ブッシュがイラク戦争を正当化するために使い、手垢にまみれてしまった「民主主義」という価値を、蘇らせ、新たな価値をもって米国人に共有されるようになった。重要なことは、裕福な家庭に生まれなくても、親族が政治家でなくとも、肌が黒くても、そして4年前には全米の誰もその存在を知らなかった人間でも、意思と努力と言葉の力で、米国の指導者になれること、そして米国民にはそのような選択を行うだけの勇気と知恵があるということだ。

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金平茂紀氏(在京テレビ局記者)
「インターネット・ネーション」(1/20)

オバマ大統領就任の祝賀会、パーティーが公式、非公式を問わず、草の根も含めて、ここワシントンDCで連日連夜行われている。その数も150を超えている。タキシードやドレスを着た人々が、街に繰り出している。警備とパーティーが同時進行していて奇妙な感じだ。前夜と当夜は、今度の大統領選挙の特色を物語るような異色のイベントをのぞいてみたいと思い、前夜の19日は、インターネットに集う人々の集合体である「Net Roots Nation Yes We Can Party」というのに参加してみた。

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若林秀樹
(財)日本国際フォーラム常勤参与/ CSIS(戦略国際問題研究所)非常勤客員研究員

「祝オバマ政権誕生」(1/18)

いよいよ1月20日、第44代米国大統領に黒人で初めてバラク・フセイン・オバマ氏が就任する。大統領選が始まった2年前、誰が今日のオバマ大統領の誕生を予想したであろう。へムリ戦略国際問題研究所(CSIS)会長は、大統領選におけるオバマ氏の当選をアメリカ民主主義の勝利であると称えた。改めてオバマ新大統領の誕生に対し、心よりお祝い申し上げたい。

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辺真一氏(コリアレポート編集長)
「いよいよオバマ政権が誕生する」(1/15)

オバマ政権が1月20日に正式に発足します。世界中の耳目がワシントンでの就任式に集まるものと思われますが、北朝鮮も例外ではありません。オバマ政権は北朝鮮にとっては待ちに待った政権であるが故です。

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今回の危機をどう見るか?

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■特集:どーなる!?オバマ大統領誕生後の世界と日本
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中尾茂夫氏(明治学院大学経済学部教授)(1/27)

 「Change」を掲げる米オバマ新政権の手腕への期待が高まっている。アメリカ史上初の黒人大統領誕生に、世論が沸くのは分からないではない。だが、オバマ政権が誕生したからといって、すべてが解決するわけではない。金融不安の鎮静化からはほど遠い。所得税減税のクーポンを配布し、政策金利をゼロにし、公的資金を注入し、不良債権を買い取り、さらにはビッグスリー救済で合意しても、消費と雇用は落ち込み、実体経済の後退も深刻である。さらに、それは、ヨーロッパや新興国を含む世界中を巻き込む世界同時不況の色合を強めている。オバマが新大統領に就任したからと言って、この危機が払拭されるわけではない。

 今回の金融危機の恐怖は、不透明性と増幅したレバレッジ・リスクである。証券化された中身に、いったいどれだけの不良債権が含まれているのかは判然としない。各種の債権のミックスであるCDO(担保債務証券)も、負債返済の保険を掛けたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も、はたしてその総額がいったいいくらなのかは誰も確定できていない。元々の問題の発端は、アメリカにおける低所得者向け住宅ローン(サブプライム)の不良債権化だったが、それが証券化を媒介に、世界中に伝播し、しかも、何十倍にまで膨脹した負債によって投資が支えられているというのが現状である。各種ファンドには商業銀行とは異なり、自己資本比率規制はない。したがって、その不良債権総額の確定は困難を極めるのである。

 三菱東京UFJ銀行がモルガン・スタンレーに巨大な出資をしたからとか、野村證券が倒産したリーマン・ブラザーズのスタッフを大量に再雇用したからといって、それがジャパンマネー復活の証しにはまったくならない。現に、毎日新聞(2009年1月1日付)の1面トップニュースが伝えたように、三菱のモルガン出資の裏には、モルガン倒産を怖れたFRB等の政治絡みの、三菱のモルガンに対する出資誘導があったことが報じられている。一方の野村證券では、買収された側のリーマンのスタッフが、買収した側の野村のスタッフよりもはるかに高所得という屈辱的契約が、野村社内の不協和音を生み出すことは避けられまい。

 市場原理主義を唱える向きが退場し、国家の再登場を喧伝することが、普通の庶民にとってはたして幸いなのかどうか、判断を下すのは容易ではない。悪徳経営者やハゲタカ株主が退場するのはいいとしても、とはいえ、官僚や役人が跋扈する時代が明るいとは決して言えないからである。巨大化しグローバル化した市場を国家がマネージできるのかどうか、不安と期待が錯綜する。今回の危機に唯一の救いがあるとすれば、単純な市場原理主義が失墜し、福祉国家とか社会民主主義といった、これまで不遇を強いられてきた理念が復権しつつある点だろうか。

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【プロフィール】中尾茂夫(なかお・しげお)
1954年生まれ、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程退学、大阪市立大学経済研究所教授等をへて、2003年より明治学院大学経済学部教授。著書に『ジャパンマネーの内幕』岩波書店(エコノミスト賞)、『トライアングル資本主義』東洋経済新報社など。世界の現場での体験やインタビューを素材にした国際金融や世界経済に関する著作が多い。

2009年1月26日

"虚構"の静岡空港 県民が知らされていない大問題(後編)

静岡空港のマイナス要因を報道しない静岡新聞
─なぜ、静岡県民は空港建設のマイナス要因について知らされていないのでしょうか?

 私は、静岡県で最も高いシェアを持っている静岡新聞が空港推進の旗ふり役をしているため、空港のマイナス点を指摘する記事を紙面に掲載しないからだと考えます。立ち木問題がその象徴です。

 今の時代、役所が隠蔽工作やろうとしても、当事者だけで成功させることは不可能です。静岡空港にはたくさんの問題点があることは今では明らかなのに、静岡県で最大のシェアを保つ静岡新聞がそうした事実をきちんと報じないため、県民に正しく情報が伝わってこなかったのではないでしょうか。

─相川さんの記事に対して、静岡新聞はどのような反応をしているのですか?

 具体的な例をあげましょう。週刊ダイヤモンドの広告は、静岡新聞には事実上掲載できません。

 週刊ダイヤモンドとしては、静岡特集を企画したときには、当然静岡の人に記事を読んでもらいたいので、静岡新聞に広告の掲載をお願いします。もちろん、広告は正規のルート、正規の値段を条件にしてのお願いです。にもかかわらず、広告の掲載内容について注文が入るのです。静岡の人にも「なぜ静岡新聞に広告出さないの?」とよく言われるのですが、無理なのです。

─広告内容に細かな注文が入るようになったのはいつ頃ですか?

 静岡特集を始めた最初の1〜2回は通常通りに掲載されました。しかし、「知事の御乱心」というタイトルの記事を出した頃から、その表現が知事を刺激したのでしょうか? 静岡新聞から広告の掲載にクレームが入るようになりました。社説でもこちらの記事を意識したようなものが掲載されるようになりました。

 そういった経緯から、伝えるべき情報を実は静岡新聞が抑えつけているのではないかと疑いを持つようになり、空港問題に関する静岡新聞の姿勢を検証した12月6日号の特集につながりました。

─全国紙は空港問題について書かないのでしょうか?

 全国紙の記者は地方に就任してからだいたい2〜3年で異動してしまいます。静岡空港に関心を持って、一生懸命勉強して、ようやく問題の本質や所在がわかってきたころには転勤になってしまいます。静岡空港のような継続的な問題を扱うには、記者個人による取材の蓄積が必要なのに、新しい人がかわりにやってきたら、また一から勉強をはじめないといけない。

 その意味では、全国紙は地方を軽視していると思います。地方分権や地域主権をさかんに主張する一方で、自社のシステムは今でも中央集権、中央重視です。これは新聞社が記者を育成するシステムの問題で、全国紙の記者でも地方の問題を継続的にちゃんとフォローできるようにする必要があります。各地方のメディアが行政の監視をちゃんと行わなければ、地方による問題解決能力の低下につながってしまうと思うからです。

>>前編を読む

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aikawa_toshihide.png【プロフィール】 相川俊英(あいかわ・としひで)
1956年群馬県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1992年よりフリージャーナリストに。1998年から週刊ダイヤモンド委嘱記者に。地方自治を主なテーマとして全国を取材・執筆、サンデープロジェクトの特集レポーターも務めている。主な著書に「長野オリンピック騒動記」「東京外国人アパート物語」「コメ業界は闇の中」「ボケボケパラダイス」など。

"虚構"の静岡空港 県民に知らされていない大問題(前編)

 09年6月に開港が予定されている富士山静岡空港(以下、静岡空港)。静岡県にとって長年の悲願である開港だが、日本各地の地方空港が赤字に悩むなか、同空港は「最後の地方空港」とも呼ばれているのが実情だ。また、当初は3月の開港予定だったが、県のずさんな土地収用により、航空法の定める高さ制限を超える「立ち木」が残っていたことが発覚。開港を延期せざるをえない不始末も明らかになった。はたして、静岡空港は無事に離陸できるのか。この問題を長年追いかけているジャーナリストの相川俊英氏に聞いた。
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急ピッチの工事が進むものの、開港が延期となった静岡空港

─「最後の地方空港」といわれている静岡空港ですが、そもそも静岡空港の問題点はどこにあるのでしょうか?

 静岡空港は「一県一空港」という過去の空港政策による「最後の地方空港」といわれています。

 実は、一県一空港政策はアメリカからの内需拡大要求が始まりで、日米構造協議での合意がもとです。当時の日本は欧米に比べて人口、国土面積、経済規模を勘案した総滑走路延長指標の値が低かったため、空港整備をするようアメリカから要請されていました。ですが、需要が高い羽田空港は、当時は拡張が難しかった。そこで、「拠点空港の拡張整備ができないのなら、空港の数を増やせばいい」ということで、国の政策が地方空港の建設に向かいました。一県一空港政策は宮沢内閣から始まったのですが、静岡県はそれにうまく乗ったわけです。

新幹線も高速もある静岡には、すでに潜在需要がない
─開港によって県内の経済が活性化する可能性はあるのでしょうか?

 空港建設に必要な条件は何といっても需要があるかどうかです。滑走路を建設すれば飛行機が必ず就航するわけでもありません。需要の低い地方に空港を建設したところで、人の移動がより活発になることはないでしょう。

 静岡には東名高速があり、新幹線があり、2005年2月には中部国際空港も完成しました。こんなに交通の利便性が高いところに空港を建設しても、潜在需要が出てくる可能性は低いのです。

 つまり、静岡空港はその必要性について総合的な検討を十分になされないまま、走り出したものです。"虚構の世界"の上に空港が建設されています。

 実は、当時、静岡以外にも滋賀などでも空港を作りたいという要望がありました。ですが、それらはいずれも計画段階で断念されています。

─では、静岡県は空港の建設理由をどのように説明しているのでしょうか

 かつて、石川嘉延静岡県知事はこう説明していました。「静岡県のGDPは北陸3県、もしくは東北6県に匹敵する。にもかかわらず、県内には空港が一つもない。北陸には3つの空港があるのに、静岡に一つもないのはおかしい」と。私もその説明を知事から直接聞いたことがあります。

 ですが、よく考えてみるとこれはおかしな論理ですよね。GDPや人口などを持ち出し、それに比例して空港が必要とするのなら、東京は羽田だけでは明らかに不十分で、都内に空港をもっとたくさん建設しないといけない。静岡に空港を建設する理由にはならないのです。

 その後、国は一県一空港政策を見直すのですが、それにより静岡県の主張も変わりました。次は「羽田空港のキャパシティーが限界にきているので、首都圏の空港需要を補完する第三空港の位置づけで静岡空港は必要だ」と主張するようになりました。これを聞いたときは「最初の根拠と違うじゃないか」と思いましたが、それはさておき、この論理にも問題があります。首都圏の空港が一杯だからといって静岡に空港を建設しても、首都圏の需要が補完できるとは考えにくいし、そもそも首都圏でキャパシティーの限界がきているのなら、首都圏の中で問題を解決すべきです。

空港のマイナス要因が静岡県民に知らされていない
─とはいうものの、静岡県民としては静岡空港の開港に期待している人も多いのではないでしょうか?

 そうでしょうか。私は、静岡空港を建設することのすべてに反対しているのではありません。これまで10年以上にわたって静岡空港に関する記事を書いてきましたが、「反対のための反対」を書いたつもりはありません。むしろ、静岡空港の未来を危惧する思いで記事を書いています。

 静岡の人たちが地元の空港が欲しいという気持ちはよくわかります。空港があるとたしかに便利になるかもしれません。その思いの全てを否定するつもりはありません。

 しかし、実際に空港を設置したら、さまざまなマイナス要因も出てきます。そうであるならば、静岡県民は静岡空港に関するいい情報も悪い情報もすべて知らされた上で、空港を建設するかどうかの判断をしなければなりません。

 ところが、静岡空港のマイナス要因に関する情報は、県民にきちんと伝えられていない。バラ色の話ばかりです。ここが問題で、そうであるなら私が静岡空港の問題点をきちんと伝えようと思い、これまで記事を書いてきたわけです。

>>後編を読む

2009年1月23日

オバマ政権の外交手法と戦略

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■特集:どーなる!?オバマ大統領誕生後の世界と日本
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森本敏氏(拓殖大学海外事情研究所所長・大学院教授)

 オバマ大統領の就任演説を読むと、この政権の対外政策はブッシュ政権の基本的な政策と異なり、国際協調とグローバルな問題に取り組む方針を打ち出しています。

 もう少し広い意味でオバマ政権の対外政策を考えれば、たんなる国際協調主義ではなく、これまで築き上げた同盟関係をできるだけ活用し、アメリカの国際的リーダーシップを取り戻すということです。

■就任演説で見えてきたオバマ外交

 就任演説で語られた政策方針には、いくつかの政策の導線が平易に語られています。

 イラクの今後のあり方については国民に委ね、撤退を望むのであれば、アメリカは段階的に撤退する。アフガニスタンについては平和構築に務める。「平和構築」は、オバマ政権の一つのキーワードになると思います。

 そのほか、差し迫った問題として中東湾岸、イラク、アフガニスタン、あるいはパレスチナもある。また、「核の脅威を軽減する」という言葉が就任演説にあり、イランと北朝鮮の核問題についても取り組むでしょう。また、地球環境問題、気候変動問題、「貧しい国」についても語ったことからアフリカの開発も行うものと思われます。

 おそらくオバマが考えている外交は、全体を貫く理想と目の前にある現実をどのように融合していくのかが外交政策の基本になると思います。理想を抱えながらも現実の問題には現実的な対応をする。そのために、政権が「チーム・オブ・ライバルズ」という、パワーバランスを考慮した構成となっています。

 たとえば、元国務次官補のスーザン・ライスはヒラリー・クリントンと関係が悪いため、ライスを国連大使にして、ヒラリーを国務長官にする。では、ヒラリーが自由に動けるかというと、バイデン副大統領は外交委員長を務めるほどの外交の専門家で、ジェームズ・ジョーンズ国家安全保障担当大統領補佐官も大変な大物。ヒラリーが思ったよう外交ができるわけではありません。

■オバマ政権の外交手法は「特使外交」

 また、オバマ政権は「特使外交」といって、問題ごとに担当の特使を決めて外交を行うのではないでしょうか。

 いま言われていることは、中東湾岸政策をデニス・ロス元中東和平特使、アフガニスタン・パキスタン政策をリチャード・ホルブルック元国連大使が担当する。北朝鮮の担当はウェンディー・シャーマン。重要なイシューに大物を使って外交を行い、それぞれが自分の実績、功績を競い合う。それを全体としてオバマがマネジメントするという、これまでとは少し異なる手法で外交を行うと思います。

■オバマ政権と日本

 ヒラリーは議会証言で、「日本との同盟は米国のアジア政策の要石」と言いましたが、それはどういう意味かというと、中国やロシアとの協調や多国間協力主義をすすめるときに、もっと同盟国に積極的に関与させ、アメリカの負担を軽くしようという考え方です。

 ですので、オバマ政権が日本を重視するというのは「日本の思い通りにアメリカが動く」という意味ではありません。実際は「同盟国として責任をちゃんと果たしてくれ」ということであり、日本にとって現実問題としては厳しい政権になる。そう考えることがが正しい理解だと思います。

(インタビュー・文:THE JOURNAL編集部)

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morimotosatoshi.png【プロフィール】 森本 敏(もりもと・さとし)
昭和16年生まれ。防衛大学理工学部卒業後、防衛庁入省。昭和52年に外務省アメリカ局安全保障課に出向。昭和54年外務省入省。在米日本国大使館一等書記官、情報調査局安全保障政策室長など一貫して安全保障の実務を担当。専門は安全保障、軍備管理、防衛問題、国際政治。平成4年より野村総研主席研究員(平成13年3月退職)。平成7年より慶應大学・同大学院にて非常勤講師を兼任。平成9年より中央大学・同大学院にて客員教授(平成14年退任)。平成11年より政策研究大学院大学(平成15年退任)、聖心女子大学非常勤講師を兼任。平成12年より拓殖大学国際学部教授。平成17年より拓殖大学海外事情研究所所長兼同大学院教授。主な著書に「日本防衛再考論―自分の国を守るということ」(海竜社、平成20年5月)ほか多数。

ホリエモンが再び登場!!

12月に行われた高野孟×堀江貴文対談が、TOKYO FM・JFN系全国31局ネットでオンエア中の「PEOPLE 〜高野孟のラジオ万華鏡〜」で再び実現しました!

今回は、「メディア論:テレビ、ラジオ、雑誌はどうなってゆくのか?」という、ここ数年あちこちで論じられている核心的テーマですを、堀江氏自らが語ります!

本放送は2009年1月25日(日)AM5:00〜6:00 / 東京はAM5:00〜5:45です。
お聞き逃しなく!

■映像ダイジェスト

2009年1月22日

危機の海に漕ぎ出したオバマ政権――就任演説の読み方

takanoron.png 空前のお祭り騒ぎに送られて、オバマ新政権が出帆した。が、新大統領が漕ぎ出したのは荒れ狂う危機の海であり、一身に寄せられた過剰なまでの期待に応えて船を正しく導くことが出来るかどうかは、全く保証の限りではない。何しろオバマは、米国政治史上で言えば「黒人初の大統領」に違いないが、より大きな世界史的・文明論的次元では「アメリカ帝国が崩壊し始めて初の大統領」なのだから。

●危機の認識

《我々が危機のまっただ中にいることは、今はよく理解されている。我が国は、暴力と憎悪の広範囲にわたるネットワークに対する戦争の最中にある。我が経済は酷く衰弱していて、それは一部の人々の強欲と無責任の結果であるけれども、同時にまた、我々皆が困難な選択を行ってこの国の新しい時代を準備することに失敗した結果でもある。》(高野仮訳、以下同)

 米国が直面する危機の根源が、イラクとアフガニスタンでの戦争と強欲的な金融資本主義の破綻の2つであるという認識は、もちろん正しい。

 戦争についての言い回しはなかなか微妙で、「テロに対する戦争」というブッシュの常套文句を避けて「暴力と憎悪のネットワークに対する戦争」と言ったのは、一方では、ペンタゴン直結の有力シンクタンク=ランド・コーポレーションが昨年、「対テロ戦争という言葉はもう使わないほうがいい」「テロを解決できる戦場は存在しない。軍事力は通常、その狙いとは正反対の効果をもたらす」と勧告している(INSIDER No.453)のに半ば従いながら、他方では、オバマが(後述のように)イラクは別としてアフガニスタンは依然として「テロを解決できる戦場」だと考えているという中途半端の表れである。この点に関する私の評価はC。

 金融資本主義の破綻を「一部(金融界)の人々の強欲と無責任」だけでなく、それを許した「我々皆…の失敗(our collective..failure)」のせいでもあるとしているのは、彼一流のバランス感覚と言えようか。評価B。

 さらに続けて彼は、住宅喪失、雇用切り捨て、企業倒産、医療高額化、教育破綻、エネルギー過剰消費などの問題を列記し、次にように言う。

《これらは、データや統計によって量れる危機の指標である。もっと量りにくいけれども劣らず深刻なのは、全土に広がる自信の喪失、すなわち米国の衰退は避けられず、次の世代は将来に希望を持てなくなるに違いないという、つきまとって離れない不安である。今日、私は皆さんに申し上げる。我々が直面するこれらの課題は現実的なものである。それらは深刻であり、多岐にわたる。それらは短期間で簡単に解決されることはないだろう。しかしこのことは分かって欲しい、アメリカよ、それらは解決されるだろう。》

 オバマが、米国の衰退の不安とその深刻さについて就任演説で言及した初めての大統領であることは認めよう。その率直さこそ彼の身上である。評価A。しかし、それが「解決可能である」と主張するにはその論拠は極めて抽象的に過ぎる。

●解決は可能か?

 彼は言う。

《この日、我々がここに集まったのは、恐怖よりも希望を、対立や不和よりも目的の共有を、選らんだがゆえである。この日、我々がここに来たのは、あまりに長く我が国の政治を縛ってきた卑小な立腹や間違った約束、鸚鵡返しの非難や古くさいドグマに、終止符を打つことを宣言するためである。我々は依然若い国家だが、聖書の言葉に従えば、子供じみたことは止めるべき時が来た。全ての人々が平等であり自由であり、最大限の幸福を追求する機会を与えられているという、神が与え給えた約束を再確認すべき時が来た。》

 これは言うまでもなく、ブッシュへの辛辣な批判である。しかしブッシュ的な《対立や不和》《卑小な立腹や間違った約束》《非難やドグマ》といった《子供じみたこと》のすべてを、オバマ的な《目的の共有》《平等・自由・幸福への神の約束》といった抽象的な美辞麗句に置き換えただけでは何事も起こらないだろう。評価C。

 そこで彼は続けて語る。

《我が国の偉大さを再確認するについて理解すべきなのは、偉大さは決して与えられるものではなく、自ら獲得しなければならないものだということである。我々の旅に近道や妥協はなかった。仕事より娯楽を好み、富と名声の喜びだけを求めるような臆病者の道ではなかった。むしろ、リスクを恐れない者、実行する者、物を生産する者、その中には有名人になった人もいるけれども多くは黙々と労働に従事した者、そのような人々こそが長く険しい道を経て今日の我々の繁栄と自由を築いたのである。》

《この人々が飽くことなく闘い、犠牲を払い、手の皮が剥けるまで働いたからこそ、我々はよりましな生活を得ることが出来た。彼らは米国を、個人的な野心の総和よりも大きなもの、出自や貧富や党派の違いよりももっと偉大なものと見ていた。》

《これが、今日も我々が続けている旅である。我々は依然として、地球上で最も繁栄した、強力な国家である。我々の労働者たちは、この危機が始まった時と比べて生産性が下がっているわけではない。先週、先月、あるいは昨年と比べて、我々の精神の創造性が下がっているわけでも、我々の製品やサービスの需要が下がっているわけでもない。我々の能力は衰えていない。ただしかし、同じところに止まって、狭い利益を守り、不愉快な決断を先延ばしするような時代は確実に過ぎ去った。我々は自らを奮い立たせ、ほこりを叩き落として、米国を再生させる仕事を再び始めなければならない。それを今日から始めよう。》

 一言で言って、汗して働く資本主義への回帰宣言である。世界中の人々を詐欺まがいの手段で手玉にとって金で金を生み、一握りの経営者ばかりが数十億、数百億どころか数千億円もの年収を得て《富と名声》を恣にしたような《強欲と無責任》の金融資本主義は終わりにしなければならないということを、オバマはここで言いたかったのだろう。それはそのとおりだが、さて米国は本当に、黙々と手の皮が剥けるまで働いて《物を生産する》まっとうな資本主義に戻ることが出来るのか、決意や覚悟だけではどうにもならないその道筋は、この演説からは見えてこない。評価B。

 なぜなら、金融的強欲資本主義の暴走の根底にあるのは、単に一部経営者のふしだらというだけでなく、米国が世界中から金を借りまくって世界一の贅沢消費を楽しみ、それゆえにまた全世界から商品とサービスを買いまくってドルを垂れ流し、それをまた米国に向かって投資させるという“帝国循環”の構造であって、その下での政府と企業と国民の過剰消費体質を正面から見つめ直すことなしには米国の回帰も再生もありえない。サブプライム問題とは、まさにその過剰消費体質を汗して働く低所得者層にまで拡張して無理にでも住宅を買わせて、結果的にその生活を破滅に追い込むことだったわけで、そこまで深々と傷つけられた古き良き米国的価値観をどのようにして癒すのかの具体策なしには何も始まらない。

●政府と市場

 大不況を回避するための経済政策の中心は、ケインズ的な公共事業の思い切った増発である。

《経済状況は大胆かつ迅速な行動を求めている。我々は、単に新しい雇用を生み出すだけでなく、成長のための新しい基礎を築くために行動する。》

 道路や橋、送電網やデジタル回線の建設、科学の再建、技術の力による医療の質の向上とコストの引き下げ、自然エネルギーの利用、学校や大学の変革、等々。この中では特に自然エネルギーへの転換が(ここでその言葉は使われていないが)「グリーン・ニューディール政策」として具体化され、オバマ流ケインズ政策の主柱となるかもしれない。評価A。

《今日問うべきは、政府が大きすぎるか小さすぎるかということではなくて、政府が機能するかどうかだ。政府が各家庭を助けて、まともな賃金を得られる仕事や、支払い可能な医療・福祉、尊厳ある隠退生活を手に入れられるように出来るかどうかだ。答えがイエスなら前進しよう。答えがノーなら計画は終わりにしよう。我々公共のドルを管理する者は、賢明な支出をし、悪い習慣を改め、公明正大に仕事を進めるだろう。それによってのみ、我々は国民と政府の間の真の信頼を再建することが出来るからだ。》

《あるいは、市場が善の力なのか悪の力なのかというのも我々の問うべきことではない。富を生み出し自由を拡大する市場の力は比類なきものである。しかし、今回の危機が我々に思い起こさせたのは、注意深い監視の目なくしては市場は制御不能になるかもしれず、また富裕者だけを優遇するのでは一国の繁栄を持続させることは出来ないということだ。》

 この政府と市場についての原理的な考え方は、妥当というか、まあ常識論の範囲だろう。評価B。問題は、史上空前の財政赤字を抱える中で、現実にどれだけの公共事業支出を繰り出すことが出来るのか、またかつてクリントン政権が失敗した医療・保険改革に手を付けることが出来るのかだが、その具体策はこれからである。

●外交と国防

《国防に関しては、我々は、自国の安全と理想とのどちらかを選択するという誤りは犯さない。》

《建国の父たちが掲げた法の支配と人権の理想は今も世界を照らしており、我々がそれを捨てることはない。》

《米国は、平和と尊厳に満ちた未来を求めるすべての国民、あらゆる男性、女性、子供らの友人であり、もう一度主導的な役割を果たす用意がある。》

 神の命により米国式民主主義を全世界に布教するといったブッシュの宗教的な妄想が影を潜め、建国者たちの法の支配と人権の思想を《理想》に掲げているところは好感が持てる。評価A。

《先輩諸世代がファシズムや共産主義を打ち負かしたのは、ミサイルや戦車によってだけでなく、頼もしい同盟国と強固な信念によってであったことを思い返そう。先人たちは、力だけでは自分たちを守ることは出来ないこと、その力が我々の思うがままに振る舞うことを許しているわけではないことを理解していた。そうではなくて、先人たちは、力は分別ある使い方をすることを通じて増大するものであること、我々の安全は大義の正当さ、模範を示す力、謙虚さと自制心から生み出されるものであることを知っていた。》

《私たちはこの遺産の継承者である。もう一度この原理に導かれることによって、我々は、より一層のの努力、諸国とのより一層の協力と理解を必要とする新たな脅威に立ち向かうことが出来る。》

 もちろんこれは、ブッシュの軍事優先と単独行動主義に対する否定、ソフトパワー重視と多国間協調への転換の宣言である。当然のことである。評価A。しかし彼はすぐに続けて言う。

《我々は、責任あるやり方でイラクを同国の国民に委ね、アフガニスタンで苦労して手に入れた平和を固める作業を始めるだろう。》

 たったこれだけ? オバマが選挙中に公約したような「16カ月以内にイラクから米軍を撤退させる」ことがどうして可能なのか。タリバンが大復活し、ビンラーディンは行方知れず、パキスタンが反米化して「単なる不条理」(タイム誌)と化しているアフガニスタンの戦争を「テロとの戦いの主戦場」と位置づけて米軍兵力を倍増させるという方針を本当に実行するのか。それは《力だけでは守れない》という原理と矛盾しないのか。答えは何もなかった。評価C。

 オバマ丸の難破の危険は、まずイラクとアフガンの対応をめぐって訪れるのではないか。▲

2009年1月21日

オバマ新政権とアメリカ

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■特集:どーなる!?オバマ大統領誕生後の世界と日本
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渡部恒雄氏(東京財団 研究員)(1/26)

オバマの誕生は、ブッシュがイラク戦争を正当化するために使い、手垢にまみれてしまった「民主主義」という価値を、蘇らせ、新たな価値をもって米国人に共有されるようになった。重要なことは、裕福な家庭に生まれなくても、親族が政治家でなくとも、肌が黒くても、そして4年前には全米の誰もその存在を知らなかった人間でも、意思と努力と言葉の力で、米国の指導者になれること、そして米国民にはそのような選択を行うだけの勇気と知恵があるということだ。これは米国人に大いなる希望を与える。米国人は、これから景気のさらなる悪化とイラクとアフガニスタンの二つの戦争に苦しめられ、簡単な出口はみつからないだろう。しかし苦しい戦いに対し、出口を指し示して米国人を鼓舞し、一緒に闘う資格と能力のあるリーダーは、自身が這い上がってきたオバマのような人物しかいないだろう。米国人のオバマへの支持率は80%を超えるほど高い。しかし、同時に米国人は、米国の社会の欠陥が一朝一夕には変わらないことも肌身にしみて理解しているはずだ。日本の国民健康保険のようなセーフティーネットのない米国での、不況の恐怖は想像を絶する。だからこそ、オバマなのだろう。オバマはよくそれを理解し、米国人個人のコミュニティーレベルでのボランティアと協力を訴えている。今こそ、米国の民主主義社会が進歩に向けて、一歩足を踏み出すときなのかもしれない。

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watanabe_tsuneo01.png【プロフィール】渡部恒雄(わたなべ・つねお)
1963年福島県生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師となる。社会科学への情熱を捨てきれず米国留学、ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士課程修了。1996年より、ワシントンDCのCSIS戦略国際問題研究所、日本部の客員研究員となり、研究員、主任研究員を経て2003年3月より上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係の分析を担当。2005年4月に日本に帰国以来、三井物産戦略研究所主任研究員を経て、2008年10月より現職。日本と米国の政治と外交・安全保障政策の分析、研究に携わる。
現在、CSIS戦略国際問題研究所の非常勤研究員、沖縄平和協力センター上席研究員、三井物産戦略研究所研究フェローを兼任。テレビ朝日系列の報道番組「サンデープロジェクト」でコメンテーターを務める。ウェブサイト「日経ネットPLUS」に「米国大統領選ウォッチ」を連載中。
1997年11月、「シビルミリタリー関係の向上で空気支配を防げ」で読売論壇新人賞佳作入選。近著に「米軍再編と日米安全保障協力:同盟摩擦の中で変化する沖縄の役割」(共著、2008年 福村出版)「いまのアメリカがわかる本」(2007年 三笠書房 知的生きかた文庫)。その他、「『同時多発テロ』の日本への挑戦:ワシントン戦略シンクタンクからの警告」(2002年 財界21)、「The Rise of China in Asia: Security Implication」(共著 2002年 Strategic Studies Institute, Army War College)、「安全保障のビッグバン」(共著 1998年 読売新聞社)等。

2009年1月20日

衝撃の内部調査結果!次の総選挙は自民150議席、民主268議席

自民党が定期的に行っている選挙情勢調査の最新結果が永田町で話題となっている。

田原総一朗氏がJFNのラジオ番組『タブーに挑戦』で明らかにしたところによると、自民党の獲得議席数が150議席前後、民主党は268議席だという。(衆院の総議席数は480)

ただ、この調査結果通りに民主党が衆院で単独過半数を獲得したとしても、現時点の参院では国民新党と社民党の議席を合わせなければ過半数に達しないため、総選挙後は民主党中心の連立政権となる可能性が高い。

調査結果は永田町関係者やマスコミにも広まりつつあり、解散の日程や反麻生の動きに影響を与えることは間違いない。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
■2010年には衆参同時選挙の可能性も(1/20)
JFNのラジオ番組『タブーに挑戦』より

調査結果によると、自民党の獲得議席は過半数を大きく下回る150議席前後にしか達しない。一方、民主党は268議席を獲得し、過半数を突破する。となると、選挙をすれば当然民主党政権となり、小沢代表が総理大臣となる。

その後、自民・民主に所属する議員の多くが考えているのは、来年(2010年)の参議院選挙が衆参同日選挙になるだろうということだ。この頃には政界再編の動きがはっきりしてくるのではないかと考えている。

国会の主戦場は定額給付金から消費税に

やはり、自民党を揺さぶっているのは民主党ではなく、党内の反麻生勢力だった。

政府は、麻生首相の意向を受けて消費税増税の時期を税制関連法案の付則に明記する方針を固めた。

これに対し中川秀直元幹事長は、19日にTBSの番組に出演し、政府方針通りの法案が衆院本会議で採決されれば、造反することを示唆した。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「麻生政権が話し合い解散に応じることも」(1/20)

渡辺喜美さんは、実は離党前に中川秀直さんに相談していた。そこで渡辺さんは中川さんに「骨は拾ってくださいよ」と言ったという。それで「骨を拾う」と(中川さんが)こたえたから、渡辺さんは自民党を離党した。離党騒動はたんなる個人プレーではない。

そこにきて、麻生首相は「景気が回復すれば」という条件付きではあるが、消費税増税を含む税制改正関連法案に入れると主張している。中川さんは消費税増税に反対しているので、採決のときには相当な数の造反が出る可能性も出てきた。となると、ここで渡辺さんと一緒に水面下で一緒に活動している人たちが中川さんと合流することも考えられる。

こうなると麻生政権は大変だ。今後、ひょっとしたら小沢さんが表明している「話し合い解散」に応じることがあるかもしれない。

2009年1月15日

死者の41%が子どもと女性 ──ガザから届いたノルウェー医療チームの声

イスラエル軍によるガザ攻撃が続いている。読売新聞によると、死者の数はすでに1038人に達し、300人以上のこどもが死亡している。6日には国連が運営する学校に爆撃があったが、8日には国連の援助物資を積んだトラックが砲撃を受け、3人が死亡している。

ガザのシファ病院で活動している麻酔看護師のビョルクリードさんは、「状況が今後どうなるかは不明だ。しかし、まだまだエスカレートすると感じる」という。

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「パレスチナ子どものキャンペーン」から送られてきたメール

件名: ガザからノルウェー医療チームの声が届いています

転送転載大歓迎 BCCお許しください

パレスチナ子どものキャンペーンです。

ガザの状況は日増しに悪化しています。
すでに、死者は900人以上に達し、負傷者も4000人を超えました。

ここ数日、ガザとの電話連絡が途切れていたのですが、今日は
シファ病院で活動しているノルウェー医療チームの一人で、麻酔看護師のビョルクリードさんと話ができました。

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★ノルウェー医療チームの声が聞けます
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「昨12日の夜は、一晩中攻撃が続き、シファ病院では約200人の負傷者の手術が行われた。手術は明け方まで続いた」と彼は語ってくれました。

「シファ病院では死者のうち41%が子どもたちや女性、負傷者 の50%はやはり子どもたちや女性だ。また、その傷は、爆発物によるものがほとんどで、銃創はほとんどない。」ということです。

ビョルクリードさんは、「ノルウェー救援会」というNGOのスタッフです。

昨年12月20日にパレスチナ子どものキャンペーンが東京で主催した「市民にできることは何だ!」というシンポジウムに参加するために来日。ノルウェーの中東政策とNGOの活動についてお話してくれたばかりです。

日本からオスロに戻ってすぐ、今回の空爆が始まり、エジプト経由で、ノルウェーの医療チームはガザ入りしました。数日前に何人かが交代しましたが、ビョルクリードさんは、まだガザにとどまっています。

パレスチナ子どものキャンペーンは、レバノンの難民キャンプやガザでこれまで、ノルウェーのNGOと連携した活動をしてきた経緯があります。

今回、ガザでの医療支援活動としては、このノルウェー救援会を通して実施しています。ぜひ、支援活動にご協力ください。

ダグフィンさんへの前回のインタビュー(1月8日)は、当会のホームページからお聞きになることができます。(日本語字幕つき)

また、当会では、パレスチナ農業委員会に協力して、ガザの4000世帯への食料ならびに生活物資の配布の一端を担っています。この物資は、いま搬入許可を待っているところです。

緊急支援募金を呼びかけていますので、ぜひご協力ください。

詳しくは、
http://ccp-ngo.jp/bokin-gaza.html


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★白燐弾使用に抗議します
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また、11日に海外メディアが報じた白燐弾についての声明もお読みください。
http://ccpreport.blog90.fc2.com/blog-entry-85.html


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★ガザ封鎖解除署名を継続しています
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ガザへの軍事侵攻が始まる以前の12月1日から開始した、「日本政府に対してガザの封鎖解除への積極的な働きかけを求める」NGO共同署名は継続中です。

戦争状態になって、逃げることもできないし、物資も入ってこないという封鎖のむごたらしさがようやく世界に知られるようになりました。この封鎖の解除を求める署名は、いままで以上に強い意味を持っています。

まだ署名をしていない方はぜひ、ご協力ください。
いま署名は、ネット上だけでも3600人を突破しています。
また毎日たくさんの署名用紙も届いています。

★PCからの署名 
http://www.shomei.tv/project-433.html

★携帯電話からの署名
http://www.shomei.tv/m/project-433.html

★署名用紙のダウンロード
http://ccpnews.blog57.fc2.com/blog-entry-10.html#youshi


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★緊急募金にご協力ください
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上記の医療と食料の支援を広げるための緊急募金を呼びかけていますので、ぜひご協力ください。

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*郵便払込*
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加入者名: パレスチナ子供のキャンペーン
口座番号: 00160-7-177367

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*銀行振込*
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みずほ銀行 高田馬場支店 普通8030448
口座:パレスチナ子どものキャンペーン

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ジャパンネット銀行による決済
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オンライン寄付サイトGive One → http://www.giveone.net/
クレジットカードによる寄付が可能です

またはNGOサポート募金 → http://www.janic.org/bokin/index.php

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詳しくは、http://ccp-ngo.jp/bokin.html

2009年1月13日

これが絶縁状の中身だ! 渡辺喜美氏が自民党を離党

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自民党の離党を表明していた渡辺喜美氏は、13日午後、秘書を通じて離党届を提出した。渡辺氏は今後、地方の首長らと連携して国民運動をおこし、政界再編の軸となることを目指す。

一方、面目をつぶされた格好となった自民党は、渡辺氏の地盤である衆院栃木3区に公認候補者擁立作業に着手する考えを示した。

渡辺氏が麻生氏に提出した事実上の絶縁状である7つの提言は下記の通り。

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■麻生総裁へ物申す

 自由民主党総裁
 麻生 太郎殿


為政者が確乎たる主義・信念に基づいた政策によって政治を動かさぬ限り国家国民は崩壊の危機を免れない。私は政治生命を賭して麻生総理に提言する。

1.衆議院を早期に解散すべきである。総選挙後すみやかに危機管理内閣を立ち上げるべきである。

2.定額給付金を撤回し、2兆円を地方による緊急弱者対策に振り向けるなど、2次補正予算案の修正を国会において行なうべきである。

3.今国会における内閣人事局関連法案の中に、任用・給与制度改革法を入れること。給与法改正を行い、国家公務員人件費を来年度よりカット(目標2割)すべきである。

4.各省による天下り斡旋の総理による承認と、渡り斡旋を容認した政令等を撤回すべきである。雇用能力開発機構を統合する閣議決定を撤回し、福田内閣当時の廃止・解体・整理の方針にそって決定し直すべきである。

5.国家戦略スタッフを官邸に配し、経済危機対応特別予算勘定を創設し、その企画立案にあたらせる。政府紙幣を発行し財源とする。

6.平成復興銀行を創設し倒産隔離と産業再生を行なう。同行において上場株式の市場買取を行い、塩漬け金庫株とする。財源は政府紙幣とする。

7.社会保障個人口座を創設し、国民本位の仕組みを作る。年金・医療・介護のお好みメニュー方式を導入し、納税者番号とセットで低所得者層への給付付き税額控除制度を作る。

以上の提言が速やかかつ真摯に検討及び審議されない場合、私は政治家としての義命により自由民主党を離党する。

絶縁状の全文:http://www.nasu-net.or.jp/~yoshimi/2009/090105monomousu.html
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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「過激派を外せと言った麻生首相」(1/15)

渡辺喜美さんが行革担当大臣として公務員制度改革をやっていたとき、途中で彼を大臣から外したのは福田康夫前首相だった。そこで、私が渡辺さんに「福田さんに嫌われたのですか?」と聞いたら、彼はこう答えた。「過激派を外せと言ったのは麻生さんです」

当時の福田内閣で過激派の大臣は渡辺さんだけ。つまり、麻生さんが渡辺さんを公務員制度改革のメンバーから外したのだ。こういった経緯から、当時から渡辺さんは反麻生だったのだ。

麻生内閣が発足して、渡辺さんが行った公務員制度改革は次第に骨抜きにされた。我慢に我慢を重ねてはいたけれど、もう我慢できなくなったというのが離党を決意した一つの理由だろう。
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二木啓孝氏(ジャーナリスト)
「離党の理由は麻生内閣が公務員制度改革を骨抜きにしたことにある」(1/14)

渡辺喜美氏が自民党を離党した理由は、定額給付金の問題以上に、官僚の天下りを麻生首相が事実上認め、公務員制度改革を骨抜きにしたことにある。

実は、政府は昨年12月、官僚OBたちが天下りを繰り返す「渡り」を事実上容認する政令を閣議決定している。

ポイントは“政令”という考え方だ。政令とは法律の施行を円滑に進めるために政府が法律とは別に定めるものだ。しかし、12月に決定された政令は法律の趣旨とはまったく逆のもので、法律で決定したことを政令でひっくり返してしまったのだ。もちろん、この政令を提案したのは官僚である。

麻生首相は所信表明演説で「官僚を使いこなす」と言ったにもかかわらず、これが見事に官僚に使いこなされ、長期的にみても麻生政権は官僚政治であることが明らかになった。

多くの評論家が渡辺氏の行動について「時期尚早で、たいしたことない」と考えているが、そんなことはない。渡辺氏が出した7つの提言を読んでみると、誰もが納得のできる提言がほとんどだ。現実には、正論を通して自民党を離党することができなかった連中に根性がないだけだ。

私は、渡辺氏が一人で離党したことは勇気ある行動だと思う。

2009年1月12日

いよいよ危険水域に突入した麻生内閣

 明日の衆議院での第2次補正予算案の採決という通常国会 最初の山場を前に、朝日新聞が12日付に掲載した世論調査結果で、麻生内閣の支持率はついに20%ラインを割って19%(1カ月前から3ポイント減)、「支持率が2割を切って退陣に追い込まれなかった首相はいない」と言われる危険水域に突入した。不支持率は67%(3ポイント増)だった。

 朝日調査では、補正の目玉とされている総額2兆円の「定額給付金」について「やめたほうがいい」が63%、「やったほうがいい」の28%を大きく上回った。

 同日発表の読売新聞の調査でも、内閣支持率は20.4%(1カ月前から0.5ポイント減)でほぼ横ばいだったが、不支持率は72.3%(同5.6ポイント増)に上がった。読売調査でも、定額給付金を「取りやめて他の目的に使うべきだ」が78%に達し、「支給すべきだ」はわずか17%だった。

 麻生首相は明日、この世論に真っ向逆らって補正を与党単独採決する。

2009年1月 9日

反麻生派はいつ自民党を見切るのか?

当初9日の採決が予定されていた定額給付金を含む第二次補正予算案が13日に延期され、強行採決される見通しとなった。

定額給付金についてはすでに党内にも反発が表に出るようになってきており、自民党の平沢勝栄氏も毎日新聞に寄せた手記で「国対副委員長という立場でなければ、私も多分、反対しただろう」と述べている。

また、すでに反麻生の姿勢を鮮明にしている渡辺喜美氏も、13日の採決を前に自民党を離党する可能性がある。

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二木啓孝氏(ジャーナリスト)
「次の世論調査の結果によっては造反議員が増えることも」(1/9)

現状としては、加藤紘一氏や山崎拓氏などの反麻生グループが党を飛び出す可能性は低い。となると、衆議院での3分の2の再可決が不可能となる渡辺喜美氏プラス16人の造反が出るのは、麻生首相の求心力がもう一段下がったときになるだろう。今週末から読売新聞が最新の世論調査を行う予定となっているが、内閣支持率が10%台前半という結果にでもなれば造反議員が増える可能性が高まる。

造反議員の賭けとして、衆議院の再可決ができなくなったことで麻生政権が立ち往生解散となれば、次の政界再編の軸になれる可能性はある。1993年の宮沢内閣時に野党が内閣不信任案を出したとき、小沢氏が賛成にまわったことで一挙に小沢氏が政界再編のキャスティングボートを握った。

現在の反麻生グループが本気で党を飛び出す気があるのならば、いま飛び出すべきだ。なぜかといえば、党を飛び出さずに次の総選挙で自民党の公認で戦うということは、麻生マニフェストで戦うということで、選挙後に政界再編をやることは有権者への裏切り行為となる。離党を考えている議員は、早く新党を作った方がいい。

2009年1月 8日

国連が運営する学校をイスラエル軍が攻撃 被害者多数

イスラエルは7日、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を住民への人道支援のために1日3時間中断すると発表したが、その宣言は停戦数分後に崩壊した。イスラエル国防省によると、攻撃の前にパレスチナ側がイスラエル軍を標的に攻撃を行ったためと説明しているが、その真偽は不明。
イスラエルは、前日6日に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校が攻撃したため、潘基文事務総長から「国連施設はすべてイスラエル当局に連絡済で、イスラエル軍もその場所を分かっているはず」と批判されたばかりだった。

1月5日のNews Spiral 『ガザに地上侵攻 ネットを通じて明らかになるイスラエルの嘘』でも報じたように、ガザ侵攻に関するインターネットを通じた情報発信の影響は大きく、今後、国際世論がイスラエルに反発することは必至だ。

■攻撃を受けた国連が運営する学校(AlJazeeraEnglish)

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【関連記事】
■ガザに地上侵攻 ネットを通じて明らかになるイスラエルの嘘(News Spiral)
■続くガザ住民の大虐殺――出口なきイスラエルの暴走を容認する米欧(高野孟)
■変わらない米メディアのイスラエル擁護報道(金平茂紀)
■歯切れの悪いオバマとヘレン・トーマスの記者魂(金平茂紀)

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【ガザの状況を伝える注目記事・リンクのまとめ】
■パレスチナ情報センター
■潘事務総長、国連学校への攻撃を怒りをこめて非難
■特集:ガザ侵攻(ロイター)
■日本の新聞テレビで報道されない写真で見る圧倒的軍事力の差! イスラエル軍ガザへ戦車で侵攻
■最近のパレスチナ
■ナブルス通信
■Picasaに公開されているガザの写真
■The Electronic Intifada(英語)

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【現地からのレポート】
サファ・ジューデー氏(ガザ在住フリージャーナリスト)
エレクトロニック・インティファーダ/Live from Palestine
「私たちに残された最後のものを守るために」

2009年1月5日

1月3日の夜、私たちは悟った。イスラエルの戦争大臣エフード・バラクの言葉に正しいと言えるものがあるとしたら、それは唯一、この侵攻が長いものになるということだ。こちらの時間で午後9時15分、イスラエル軍は3つの地点からガザ地区に入ってきた。F-16が上空から掩護する中、ガザ市の東、そして、北部のジャバリヤとベイト・ラヒヤから、パレスチナの人々が住む地域に戦車隊が進軍してきた。同じ時刻に、ガザ最南端のラファにも、東南から戦車と歩兵部隊が侵入した。ガザ市のミンタル地区には戦車砲と大砲の砲弾が雨あられと襲いかかり、海からもガザ市に向かって戦艦からの一斉砲撃が起こった。ガザ地区全域が包囲され、ミサイルと大砲の猛烈な攻撃が続いた。

多くの住人は、地上侵攻が始まったことさえ気づかず、その間ずっと、イスラエル軍の空爆が激しさを増しただけだと思っていた。ガザ市はこの数日間、停電が続いていて、どの家のラジオも電池が切れかかっていたのだ。すでに1週間以上、ガザ市のほぼ全住民が家に閉じ込められた状態で過ごし、開いている店など1軒もない。ニュースは口伝えで伝わってくる話に頼るしかなく、自家発電装置を持っていて、なおかつ燃料が残っているという幸運な人はごくごくわずかしかいない。

このうえなく厳しい、絶望的な状況に置かれたこの今、武器など持っていない一般の人たちに猛烈な爆撃が浴びせられている。地上戦に先立つ8日間、イスラエル軍は、完全に無防備な人々(その4分の3は女性と子供だ)相手に、世界で最も進んだ軍事力を、システマティックに、思う存分ふるいつづけた。気力・体力とも限界に達した状態で、住民たちは、途方もない喪失感と焦燥感にさいなまれながら必死に耐えている。言うまでもなく、18カ月に及ぶ封鎖で、ガザはすでに、これ以上持ちこたえるのもほとんど不可能な状態に追い込まれていた。

この数日間で、私たちは10以上のモスク、聖なる礼拝の場所が爆撃を受けるのをまのあたりにした。ほとんどが、中で人々が祈りを捧げている時のことだった。私たちは、瓦礫の下から子供たちが引きずり出されるのをまのあたりにした。その小さな体の中で折れていない骨はただの1本もないように見えた。私たちは、血まみれの死体と最後の息を引き取る人たちであふれかえっている病院をまのあたりにした。空爆を受けた現場で懸命の蘇生処置を受けている友人たちの姿をTVで見た。何家族もの家族全員がミサイルの一撃で地面もろとも吹き飛ばされるのを見た。私たちの街が、家が、近隣の地域一帯が、とてつもない破壊行為によって、何だったのかもわからない瓦礫の山に変じていくのをまのあたりにしてきた。

これだけのことをやっておきながら、イスラエルは声高に、この攻撃は民間人を対象にしたものではない、これはハマースの政治・軍事部門に対する戦争であると強固に言いつづけている。一方の私たち、ガザの住民は、全員が、およそ人間に耐えられようはずもない恐怖と暴力を一身に受けつづけている。もしかしたら、イスラエル軍は、自分たちが作り出した妄想を真実だと思い込むようになり、その妄想のもとに行動しているのではないか。そんな思いすら浮かびはじめている。

イスラエルは私たちの家に入り込み、私たちの街で私たちを攻撃し、私たちに向けて全開の暴虐さを発揮しつづけている。いったい、私たちは、どう対応するのが当然だと思われているのか?

今、ガザでは、パレスチナのすべての派が一致団結し、持てる限りの戦闘能力を結集して、敵に立ち向かっている。その戦闘能力は、イスラエルの軍事力に比べられるようなものでは到底ない。それでも、彼らの闘いは、私たちに、かつてないほど強く、パレスチナの人々は自分たちのものを守るために最後の最後まで闘うだろうという確信を与えてくれている。抵抗と勇気と愛がパレスチナ人のアイデンティティにとって不可欠のものなのだということを、それは、私たちが耐えている苦難がどれほどのものであろうと、決して変わることはないのだということを、示してくれている。彼らの闘いは私たちの心に力を与えてくれた。私たちが最も必要とする時に、心を支えてくれるものが出現したのだ。

パレスチナ解放人民戦線(PFLP)のアブー・アリー・ムスタファ旅団、イスラーム聖戦運動のアル・クゥドス旅団、ハマースのイッズッディーン・アル・カッサーム旅団、民衆抵抗委員会(PRC)のサラーフッディーン旅団、ファタハのアル・アクサ殉教者旅団、このすべてが結束し、統合されたひとつの最前線部隊として、100パーセントの危険が約束されている中、私たちの街を、私たちの家を守るために闘っている。彼らはみな、みずからの死が無力な子供の死をひとつでも阻むことできるのなら、それなら自分は死んでもかまわないという覚悟ができている。私たちはひとつだ。私たちはこれまで繰り返し繰り返し苛酷な運命を受け入れてきた。しかし、ガザの人たち(その80%は難民だ)は決して皆殺しにされるつもりはない。圧政と強欲に導かれるままによそからやってきた連中に今一度この地から追い立てられるつもりはない。

パレスチナ各派の統一レジスタンス部隊の人員が全部でどれくらいになるのか、いろいろな数字が出されているが、おそらくは数千というところだろう。一方、ガザ地区内・ガザ周囲にいるイスラエル軍は、現時点でおよそ3万3000。明日中には、さらに多くの予備役兵が招集されることになっている。圧倒的な軍事力の差は地上部隊の人員数にとどまらない。イスラエル陸軍はイスラエル海軍とイスラエル空軍に掩護されている。地上部隊には大砲があり、戦車があり、工兵隊があり、諜報機関のサポートがある。イスラエル兵は最新鋭の武器と情報機器を装備している。

一方のパレスチナの戦闘員はと言うと、イスラエルの軍事力に抗して自分自身とガザの人々を守るのに、手作りのロケット砲と最少限・最低レベルの武器で間に合わせなければならないのだ。

この今、攻撃のただ中にあっては、現在の状況を正しく判断することも今後を予測するのも難しい。死んだ人、怪我をした人の数も、私たちが失ったものがどのくらいなのかも把握するのが困難になっている。食べ物や水や暖かさや陽の光といった、生きていくための最低限の必需品が贅沢なものではなかったのがいつのことだったのか、それを思い出すのさえ難しい。今、この時点で機能しているのは、人間としての最低限の本能だけ。愛するものを守りたいという欲求、シェルターを確保したいという欲求、闘う本能、逃げようとする本能。私たちはもう長い間、逃げつづけてきた。ガザは私たちの最後の避難所、今イスラエルと呼ばれているものに取って代わられてしまったのちの、私たちの最後の家だ。このすべてが60年前に起こった。イスラエルは、これ以上、いったい何がほしいというのか。私たちにはもうどこにも行くところはない。イスラエルは、現在ある国際法の条項をことごとく無視してきた。今こそ、私たち自身を守る時、レジスタンスの時だ。
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サファ・ジューデーは、アメリカのストーニー・ブルック大学で学び、修士論文提出資格を得た。2007年9月にガザに戻り、現在はフリージャーナリストとして活動している。

Resisting to protect our own
Safa Joudeh writing from the occupied Gaza Strip, Live from Palestine, 5 January 2009

原文:http://electronicintifada.net/v2/diaries.shtml

エレクトロニック・インティファーダ:
http://electronicintifada.net/new.shtml

翻訳:山田和子

民主党280議席の絶対安定多数確保?『週刊文春』のビックリ予測

 7日発売の『週刊文春』は、宮川隆義=政治広報センター社長による「衆議院300選挙区完全予測」を掲載、

(1)現有305議席の自民党は半分以下の149議席、
(2)現有31議席の公明党も8小選挙区で全滅し比例区でも5減の18議席、
(3)その結果、自公合わせて現有336議席が167とほぼ半減、政権維持に必要な過半数241議席に74も及ばず、政権維持は不可能、
(4)それに対して現有114議席の民主党は、自公が失う169議席のほとんどに当たる166を奪取して280議席に躍進、単独過半数241を39、絶対安定多数269を11上回る、

 と予想した。絶対安定多数とは、民主が衆院の議長及び全委員長を独占しても全委員会で民主が過半数を確保できるということである。もちろん民主党は参院で単独過半数を制していないので、選挙協力相手である社民、国民新党、新党大地、新党日本と連立して安定政権を作ることになる。社民7、他の3党の各2、民主寄りの無 所属4の合計17議席を加えると、民主中心の新政権は297議席でほぼ300議席に近づく。この結果はそのまま10年参院選に直結し、参院でも自民党は壊滅的な連敗を喫し、「自民は消滅の一途をたどる」と宮川は展望する。

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「政界再編などあり得ない!」(1/8)

 福岡政行の選挙予測は余り当たらないが宮川隆義のそれはよく当たることで知られている。民主党が絶対安定多数を得てひとまず衆参ネジレを解消し、引き続き来年の参院選でも同党が圧勝してネジレを完全に解消して、しばらくは民主党の天下が続くと見て間違いない。

 この記事で宮川は「新聞、テレビが煽っている政党連立や政界再編成の根拠が今や消滅した」と言っているが、その通りである。単独過半数はおろか絶対安定多数による政権奪取を目前にしているというのに、民主党の全部にせよ一部にせよバタバタして自民党からの落ちこぼれ分子と新党騒動など起こす必要もないしその暇もない。

 私が主要紙の元旦社説の読み比べの記事で書いたように、読売新聞は「自民党、民主党とも、単独過半数を獲得するのは難しい」ので「政界再編、連立絡みの動き」が出てくると言うが、こんな分析が一体どこから出てくるのか。読者を惑わすにもほどがある。

2009年1月 7日

通常国会の最初の山場は9日 造反は出るのか?

 「政局より政策」を掲げる麻生首相だが、5日に開会した通常国会の話題は政局ばかりだ。その第一の山場が9日にやってくる。

 産経新聞によると、自民党の大島理森国対委員長は7日朝の国対会議で、平成20年度第2次補正予算案を9日に衆議院で強行採決する意向を示した。民主党はすでに第2次補正予算案に含まれている定額給付金を除外することを求めていたため、民主党の反発は必至。また、自民党内でも渡辺喜美氏が定額給付金の撤回を麻生首相に求めるなど、若手・中堅クラスを中心同法案に対する反発が強まっており、大量の造反がいつ発生してもおかしくない状況となっている。

続くガザ住民の大虐殺――出口なきイスラエルの暴走を容認する米欧

takanoron.png イスラエル軍のガザ地区に対する大規模空爆とそれに続く戦車部隊の地上侵攻を中心とする陸海空による総攻撃によって、7日未明までの11日間でパレスチナ人の死者は635人、負傷者は2300人に達し、なおその数は急増していくものと見られる。

●イスラエルの無茶と無理

 イスラエルのオルメルト政権の公式的な立場は、同地区を統治するハマスの軍事部門が過去3年間に3800発の手製ロケット弾を発射し10数人のイスラエル人が死亡したことへの“報復”とその根絶のため、ハマスの軍事拠点や武器庫を徹底的に破壊することが作戦目的であり、ただしそれらの目標は農場の納屋や果樹園、都市部の建物に紛れているので若干の「付随的損害(コラテラル・ダメージ)」が出るのはやむを得ない、というものである。しかし実際には、イスラエル軍の戦車砲はじめF16戦闘機やアパッチ攻撃ヘリコプターのミサイル、海軍艦船による艦砲射撃は、一般民家、モスク、大学校舎、病院、警察署、官庁、発電所、漁港などに容赦なく浴びせられており、無差別大量虐殺の様相を呈している。

 イスラエルの言う「ハマス壊滅」の意味が曖昧で、それがハマス軍事部門のロケット基地を破壊するという意味であれば、一応の合理性はないとは言えないが、現実には“人民の海”に紛れ込んでいる拠点を攻撃することで膨大な「付随的損害」が出続けることは避けられない。それがハマス政治部門のガザ実効支配そのものを止めさせようという意味であれば、ハマスは06年1月のアラブ世界で初めての民主的かつ公正な国会(立法評議会)選挙で西岸地区を含めて過半数を占めて第一党に選ばれた政党であって、それを外から軍事力によって物理的に壊滅させようとするのは無茶であるだけでなく無理である。それをやり遂げようとすればガザ地区の再占領しかないが、いくら何でもそれは許されない。

 とするとイスラエルの意図は、同地区のパレスチナ人の生活基盤そのものを破壊しつつ爆弾による死の恐怖の極限にまで追い詰めて、「こんなことになったのもハマスがガザを支配しているからだ」と思い知らせて、パレスチナ人が自分らでハマス統治を否定するよう仕向けることにあると考えられる。しかしこれは成功の見込みは薄い。

 ハマスのなお2000発は残っていると見られるロケット弾のすべてを破壊することが不可能である以上、イスラエルはその大半を破壊し「ハマスを十分に弱体化した」と判断した時点で攻撃を止めて事態収拾を図らざるを得ないが、弱体化はしても壊滅はしていないハマスは、その翌日にも何発かのロケット弾を象徴的に発射して“健在”をアピールし、イスラエルの未曾有の激しい破壊と虐殺に抗して多大の犠牲は出したけれども「我々は善戦し勝利した」と宣言するだろう。ハマスのパレスチナ人内部およびアラブ世界での評価は上がり、政治的影響力を広げる可能性さえあって、06年夏のイスラエル軍のレバノン侵攻でシーア派のヒズボラが互角に戦ってかえって「アラブの英雄」となったことの二の舞となりかねない。

 こうして、出口戦略が不明確なままのイスラエルの暴挙でパレスチナの一般市民の犠牲が増え続けることになろう。

●米国の政治空白を突いた

 イスラエルがこのタイミングを選んでガザ侵攻を発動したのは、1つには、広く指摘されているように、2月10日に予定された同国の総選挙を前に、これまでパレスチナに対して「弱腰だ」と右派から批判されて支持率を低下させていた与党のカディマと労働党が、一気に人気回復を目指そうとしたからである。事実、12月27日の空爆開始直後に行われた世論調査でイスラエル国民の80%が空爆を支持するという結果が出ていて、エフード・オルメルト首相(カディマ)とエフード・バラク国防相(労働党々首)はそれぞれに、この侵攻は自分が企画したものだと言って功を争っている有様である。とはいえ、上述のように出口がはっきりしないまま侵攻が長引いて泥沼化すれば、選挙前の収拾は難しく、かえって両党は指弾されるだろう。これは2人にとって危険な賭である。

 もう1つ、このタイミングが選ばれたのは、ブッシュ米大統領が「史上最低の大統領」と罵倒されながらオロオロとホワイトハウスを去ろうとし、オバマ次期大統領はまだ就任していないという米国の政治空白期を狙い定めて侵攻を発動し、米次期政権の中東政策をイスラエル寄りに引きつけようとする企図による。

 ブッシュ政権第1期の外交政策を牛耳ったネオコンとは、実体的にはイスラエル右派がホワイトハウスに送り込んだ“トロイの馬”であり、それがチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官(当時)ら白人タカ派と連携して暗愚の帝王ブッシュを騙してイラク戦争に引きずり込み、「中東全域に民主主義を広める」といった美辞の下、イランに対する戦争まで煽りながらイスラエルにとって安全な「中東新秩序」を作るべく米国を利用しようとした。が、それは失敗に終わり、ブッシュ第2期ではネオコンは政権から一掃され、ラムズフェルドは辞任し、チェイニーも影響力を失った。そこでイスラエルは再び自分が前面に立って軍事力に頼って新秩序を目指さなければならなくなり、それが06年のレバノン侵攻であり今回のガザ侵攻という形で表れた。

 オバマの中東政策はまだ輪郭がはっきりしていないが、一般論として彼がイスラエルとパレスチナをもう一度交渉のテーブルに着かせて話し合いによる調停を目論見るのはまず間違いなく、だとすれば新政権スタート前にイスラエルの力による中東支配への決意を見せつけて、「オバマがイスラエルの利益を軽視することは許さない」とのメッセージを届けることが必要だった。狙い通り、ブッシュはおずおずながら「自衛のためやむを得ない」とイスラエルの立場を支持し、オバマは事態の深刻化に戸惑って沈黙を続けている。

 オバマは選挙キャンペーンを通じて、繰り返し「イスラエルは米国の最も重要な同盟国だ」と断言し「イスラエルの安全保障を重視する」とも語っているが、多くの米国人はそれがユダヤ票目当てのリップサービスの側面もあることを知っており、実際に政権に就けばパレスチナ問題の打開のために積極的な調停工作を行おうとするだろうと期待もしていた。しかしこの長く続く沈黙で、ネットなどでは「オバマはブッシュと同じ穴の狢か」といった批判も広がりだしている。いずれにせよ、イラク戦争の収拾とアフガン戦争の重点化という困難な課題に加えて、それ以上の難題がオバマ政権発足にのしかかってくることになる。

●ハマスは「テロ集団」なのか

 今日の事態を招いた根源は、06年の選挙で第一党の地位を得たハマスを、イスラエルと米国、それに英国はじめ一部欧州諸国が一方的に「テロ集団」と決めつけてその正統性を認めないどころか、これを徹底的に締め上げる戦術を採ってきたことにある。

 もちろんハマス側にも問題はあって、政治指導部は旧来の「イスラエルの抹殺」路線を修正してイスラエルという「実体の存在」は認めて交渉にも応じる構えを見せたものの、特に軍事部門には昔ながらの強硬派がいてその勝手な行動を制御できないでいる。また政治部門もパレスチナ自治政府内部でのファタハとの抗争に熱心で、その結果、07年6月にはガザ地区を武力で制圧してファタハの治安部隊などを追い出すといった行動に出て、自治政府そのものを分解寸前の危機に陥れた。

 しかしそうしたファタハとの抗争も、そもそもは、イスラエルや米国のハマスに対する敵対政策にどう対処するかをめぐって激しくなったもので、例えば、06年3月にハマスのハニーヤ首相を中心とする内閣が成立した直後から、イスラエルがハマスの国会議員や地方首長約80人を拉致してイスラエル本国の刑務所に収監し、国会の機能を停止させてしまった暴挙についても、ハマス側はファタハがイスラエル諜報機関と通じて手引きをしたと疑っている。イスラエルはまた、その時期からパレスチナ自治政府に対する経済封鎖を徹底的に強化し、境界線に万里の長城のような醜悪な壁を建設するなどして、パレスチナ人の生きる権利そのものを奪ってきたが、ファタハはそれに対して無力だった。

 特にガザ地区は、10×40キロの種子島ほどの狭い土地に150万人が住み、そのうち100万人は家も仕事も失って国連の援助物資に頼るしかない難民であり、イスラエルによる封鎖でその国連の物資の輸送さえ著しく制限されてきた中で、今回の侵攻以前にも既に飢えが広がりつつあった。ハマスが08 年6月にエジプトの仲介で成立した6カ月間の停戦協定の延長を拒否してロケット弾攻撃を再開したのも、その停戦合意に含まれていた封鎖の解除をイスラエルが実行せず、住民の窮迫が始まっていたことを理由としており、やむを得ない一面もある。

 イスラエルは、封鎖は武器の搬入やテロリストの往来を防ぐためと主張し、それで仮にガザ住民が窮迫することがあっても「悪いのはハマスだ」と開き直り、米欧もその主張を支持してきた。このようにして、イスラエルがガザ地区の住民を追い詰めハマス追放に向かわざるを得ないように仕向ける作戦が積み重ねられ、それをファタハも党派的思惑から黙認し、米国はじめ欧州の一部も支持するという図式の下で、今回の事態に至ったのであり、根本は、ハマスを単なる「テロ集団」として押さえ込み壊滅させようとするだけで解決策はあるのかというところに帰着する。

 実際、06年にハマスが選挙で勝利したのは、その対イスラエル強硬策が支持を集めたというよりも、レバノンにおけるヒズボラと同様、生活の再建とコミュニティの回復、医療など行政サービスの復興を公約し、多くの人々がそれを実行する力があると認めたことによると言われている。ハマスの政治指導部には、英国をはじめ西側の大学でPh.Dを取った医師、科学者、技術者なども500人以上もいて、彼らの間には反西欧感情などないし、また宗教的に過激でもないので、パレスチナ人の間では西側のポピュラー音楽も自由に楽しむことが出来るし、女性がベールを被るかどうかも個人の好みに任されているなど、少なくともタリバン政権下のアフガンのようなことにはなっていない。

 オバマ政権がこのハマス=テロ集団という最初のボタンの掛け違えのところから交渉の枠組みを見直すことが出来るのかどうかが注目される。▲

2009年1月 6日

派遣切りは労働者の自己責任なの?

日比谷で緊急に開催された「年越し派遣村」が5日に終了した。しかし、派遣労働者の大量解雇問題はいまだ根本的な解決には至っておらず、失業者はこれからも寒い冬を過ごすことになる。

一方、5日には坂本哲志総務政務官(自民、衆院当選2回)が派遣村について「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」と発言。翌日に撤回・謝罪したものの、この問題に対する行政の対応の遅さの原因は、政府内部の現状認識に甘さがあることが明らかとなった。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「経営者の考え方が基本から間違っている」(1/6)

解雇されたある派遣労働者から聞いた話によると、解雇通告は勤務先のメーカーからではなく、派遣会社を通じて言い渡されたという。しかも、それらのメーカーは派遣労働者の管理を人事部で行っていないこともある。つまり、彼らは人間としてではなく、モノとして管理されている。

法律に違反していないとしても、派遣労働者を大量に解雇すれば生活できない人が街にあふれるのは明らか。そういう社会問題を引きおこすことに対して企業が何の責任も感じていないのなら、経営者の考え方が基本から間違っている。

経営者の言い分としては、日本は1990年代中ごろから、株主を大事にするために配当を増やし、株価を高くする経営者が「いい経営者」とされるようになったことがある。しかし、その結果として経営者は雇用調整が必要になれば労働者をすぐに解雇するようになった。一方、企業が保有している内部留保は過去最高で、経営陣への報酬はここ数年ずっと増えてきていた。時代が変わったとはいえ、これが当たり前の経営と考える価値観は問題だ。

実は、大晦日に放送した『朝まで生テレビ』でもこの問題を取り上げたのだが、経団連にも番組に出演するようお願いをしていた。ところが、「われわれはテレビに出る義務も責任もない」と出演を断ってきた。これでは「企業には社会的責任はない」と言ってるようなものではないか。

政府も、総額2兆円の定額給付金なんてくだらない政策はやめるべきだ。今は緊急事態である。たとえばこの2兆円を使って、解雇された派遣労働者に次の仕事が見つかるまでの社会保障や現金給付にあてるなど、思い切った政策を実行した方がいい。

2009年1月 5日

ガザに地上侵攻 ネットを通じて明らかになるイスラエルの嘘

イスラエル軍は3日夜(日本時間4日未明)、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスを攻撃するため、地上侵攻を始めた。AP通信によると、医療施設の情報としてすでにパレスチナ側の死者は少なくとも30人を超え、空爆開始からのガザの死者数は485人となっている。

一方、爆撃にさらされているガザからは新聞やテレビが伝えきれていない現地の様子や住民の声が各国の言葉に翻訳され、ブログやメールを通じて世界中に発信されている。

日本のメディアはイスラエル政府が発表した「ロケット弾発射拠点を制圧し、攻撃を阻止する」(読売新聞)という言い分をさかんに報道しているが、インターネットから伝わってくる情報では、イスラエル軍は大学施設や民事行政のビルなどの公共施設にも爆撃を行っており、侵攻の目的がガザり地区の生活基盤を破壊することにあるのは間違いない。

以下に、現時点でインターネット上に公開されている写真、映像、現地レポートなどを報告する。
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【ガザの状況を伝える注目記事・リンクのまとめ】
■日本の新聞テレビで報道されない写真で見る圧倒的軍事力の差! イスラエル軍ガザへ戦車で侵攻
■最近のパレスチナ
■ナブルス通信
■Picasaに公開されているガザの写真
■The Electronic Intifada(英語)

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【パブリックドメインで公開されているガザの写真】
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破壊されたハマスの施設 2008年12月30日(photo by Amir Farshad Ebrahimi)

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病院に運び込まれるパレスチナ人少女 2008年12月28日(photo by Amir Farshad Ebrahimi)

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パレスチナ保安部員の死体 2008年12月28日(photo by Amir Farshad Ebrahimi)

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ハマスの警察施設の横に横たわる死体 2008年12月27日(photo by Amir Farshad Ebrahimi)

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パレスチナ人のLama Hamdan(4歳)が埋葬される 2008年12月30日(photo by Amir Farshad Ebrahimi)
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【現地からのレポート】
サファ・ジューデー氏(ガザ在住フリージャーナリスト)
「果てしない爆撃の夜」
エレクトロニック・インティファーダ/Live from Palestine

2008年12月28日

今、ここで何が起こっているか。27日のレポート(「想像を絶する大量の死と破壊」)に続いて、攻撃2日目、28日未明のイスラエル軍のガザに対する空爆と海上攻撃について伝えます。

午前1時半。でも、私には、もう陽が昇っているように思えた。この数時間、ガザ市とガザ地区北部のいたるところで激しい空爆が続き、空は赤々と輝いていた。生まれてこのかた、こんなに長い夜は経験したことがない。私の家のある、ガザ市で最も人口密度の高い地区のひとつ、「アスコーラ」では、攻撃は作業場(通常、個人や家族の住居となっている建物の1階にある)、ガレージ、倉庫から始まった。

1時間ほど前にはイスラミック大学が爆撃を受け、研究棟が破壊された。
先のレポートで伝えたように、私の家はイスラミック大学のすぐそばにある。最初の爆弾の炸裂で窓が激しく震え、壁が大きく揺れた時には、本当に心臓が口から跳び出してきそうな気がした。両親と兄弟姉妹、昨日の空爆で家が破壊されてうちに来ていたいとこたちは、少しでも休もうとベッドに入っていたが、全員がこの攻撃でいっせいに、家の中で爆撃から一番遠い場所に逃げた。11歳の妹、ハラは麻痺したように動かなかったので、引きずっていかなければならなかった。その後、4回の爆発が続き、その間、13歳の従妹、アヤは必死で私の肩にしがみついていた。肩にあざができたほどだった。4回の攻撃はいずれもすさまじく、爆弾が炸裂するたびに心臓が止まる思いだった。一段落してから外をうかがってみると、夜の空は煙で青黒い汚い色になっていた。

ほんの少し前、イスラエルの戦艦がガザの唯一の港を攻撃した。15発のミサイルが炸裂し、多くの漁船と港の一部を破壊した。ラジオではまだ第一報しか流れていないので、実際の被害がどれくらいなのかはわからない。
でも、これだけははっきりしている。漁業がイスラエルの安全にとって脅威であるはずがない。そして、直接・間接に漁業に頼って暮らしている人は何千人もいるのだ。ラジオのレポーターが爆発の数を数えはじめた。6回以降、数え切れなくなったようだった。たった今も3回の爆発音が聞こえた。私は妹に「ヒュウウウウッシュが一番怖いね」と言った。着弾する前のミサイルの音のことだ。ヒュウウウウッシュの間は、いったいどこに落ちるのかと考えて、いても立ってもいられない気分になる。一連のヒュウウウウッシュと炸裂が一段落したところで、ラジオのレポーターが、魚市場(当然ながら無人だ)が爆破されたと伝えた。

たった今、ガザ地区北部のモスクが爆破され、モスクのすぐ近くのバルーシャ家の4人姉妹が死んだというニュースが流れた。

私には、爆発や煙や救急車のサイレンやヒュウウウウッシュよりももっと嫌なものがある。いっときとしてやむことのないアパッチ・ヘリの、不気味な、気が狂いそうになる音だ。頭上を飛びつづけるアパッチの低いうなりは、夜となく昼となく私の頭の中から消えることがない。聞こえてもいない音が聞こえているような気分になるけれど、でも、その音は間違いなく現実に聞こえているのだ。

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サファ・ジューデーは、アメリカのストーニー・ブルック大学で学び、修士論文提出資格を得た。2007年9月にガザに戻り、現在はフリージャーナリストとして活動している。

"The longest night of my life"
Safa Joudeh writing from the occupied Gaza Strip, Live from
Palestine, 28 December 2008

原文:http://electronicintifada.net/v2/article10065.shtml
エレクトロニック・インティファーダ:http://electronicintifada.net/new.shtml

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ISM(国際連帯運動) プレスリリース
「私たちはここに残る」
外国パスポート保持者、ガザにとどまることを決意
 2009年1月2日 ガザ

イスラエルは外国のパスポート所持者に対し例外措置として、安全のためガザを離れることを許可しているが、ガザにとどまりパレスチナ人と運命をともにすることを選んだ外国人たちがいる。

アルベルト・アルケ(スペイン)は救急車に同伴して病院から報告を続けてきた。

「イスラエルはガザの人々に対して自分たちがおかしている罪を目撃されたくないのです。国際ジャーナリストや支援団体はここにはいません。ぼくらがガザを去ってしまったら、いったい誰が、ぼくたちが今、目にしているこの戦争犯罪を証言するのですか。
12月28日、ぼくは、ラマとハヤー・ハムダーンの二人の姉妹の瀕死の目を見つめました。ラマは4歳、ハヤーは12歳、二人はイスラエルのミサイルに殺されました。ぼくがそこに認めた彼女たちの人間性は、ぼくたちの人間性と何一つ違ってなどいない。ぼくたちの命は彼女たちの命より価値があるのですか?」
アルベルト・アルケ――国際連帯運動

パレスチナ系南アフリカ人のハイダル・イード博士は言った。

「これは歴史的瞬間だと思う。このガザの大量虐殺は、南アフリカで1960年に起きたシャープヴィルの大量虐殺と類似している。この事件の結果、アパルトヘイトに対するBDS[ボイコット、投資引き上げ、制裁]キャンペーンが始まった。
2009年のガザの大量虐殺は、イスラエルのアパルトヘイトに対するBDSの運動をより激化させるだろう。南アフリカのアパルトヘイトでは、BDSキャンペーンによってついにはネルソン・マンデラを監獄から解放することに成功し、のちに彼は、民主的かつ多人種的かつ多文化的な南アフリカ共和国の、初の黒人大統領となった。
だから、イスラエルのアパルトヘイトに対するBDSキャンペーンも、すべての市民が平等に遇される一元的国家を生み出すにちがいない」

イード博士は、ガザのアル=アクサー大学の社会・文化研究の教授である。彼はまた、イスラエルに対する学術的・文化的ボイコットのためのパレスチナ・キャンペーン(PAGBI)の実行委員会のメンバーであり、「民主的一国家」 One Democratic Stateグループの創設メンバーの一人でもある。

ナタリー・アブー・シャクラ(レバノン)は語った。
「彼らはレバノンでも同じことをしました。でも、レバノンでは、激しく爆撃されたところもあったけれど、安全なところもありました。ガザでは、安全な場所などどこにもない。この人たちをどうして残して行けますか?生きるなら彼らとともに生きます。それができないなら、彼らと死をともにします」
ナタリー・アブー・シャクラ――国際連帯運動

「イスラエルが国際ジャーナリストの[ガザ立ち入りを]禁じているために、ガザの声はさらに押し殺されてきました。この地の現実を外の世界に発信することは、イスラエルによる攻撃の違法性に光を当てるために不可欠です。私たちは最近になって救急車に同伴するようになりました。医療従事者に対する攻撃を報告するためです。これはジュネーヴ協定違反です。苦しむ家族たちの姿を目にし、私もその苦しみを感じてきました。彼らをおいて出て行くことなどできません。すべての市民が、イスラエルの攻撃の前で身を守るすべがないのです。私たちはとどまって、ガザの人々に対するイスラエルの攻撃の本質をあばき続けるつもりです」
ジェニー・リネル――国際連帯運動

「イスラエルは、ガザを離れることができる者を決めているだけではありません。誰が入ることができるかも決めているのです。私は、家やモスクや大学が粉々に破壊されているのをこの目で見ました。
市街地でミサイル攻撃がどれほど人々を恐怖に陥れているかも分かりました。死んだ子どもたちの姿も目にしました。家から30メートルのところをイスラエルが爆撃しているのに、家のなかに閉じ込められてしまった家族が叫ぶのも聞きました。ガザの人々、150万の人々すべてが、これらの違法な攻撃から逃れることができないのです。
私たちの命が彼らの命以上に大切であるなどということはありません。彼らが苦しんでいるかぎり、私たちはとどまります。彼らと連帯するために、そして、イスラエルが邪魔して外国のジャーナリストに公表されまいとしていることを報告するために」
エヴァ・バートレット――国際連帯運動

「ガザのパレスチナ人は、イスラエルが課している封鎖のせいで世界から孤立しています。今、私たちにはここを離れる機会が与えられましたが、ガザの人々にそのような選択肢などないのです。ガザの家族たちと連帯してここにとどまること、それはイスラエルの暴力がおぞましいまでに増大しているなかで決定的に重要なことです。私は封鎖の影響をこの目で見ました。民間人に対して現在進行形で振るわれている暴力も見ています。私たちはイスラエルの違法な政策の犠牲者たちの側に立ち続けます」
シャロン・ロック――国際連帯運動

「イスラエルによって犯されている人道に対する罪を耐え忍んでいるガザの人々と連帯して、自分にはここにとどまる責任があると思います。ガザの全住民に対するこの物理的、心理的、政治的戦争を止めるために国際社会が行動しないのであれば、国際的監視者、ジャーナリスト、活動家がここガザにいなければならないのです。
私たちはこの目で見て、報告し、止めなければならないのです、どこであろうと、ガザの人々に対してイスラエル占領軍がおかしている戦争犯罪を。イスラエルは人道に対する自分たちの罪を目撃されたくないのです。でも、ガザの人たちは違います。彼らは言い続けています、『どうか、私たちの身に起きていることを世界に伝えてください、こんなことが起きるなんて信じられません』と。彼らは最悪の事態となることを恐れています。誰もが脅え、恐怖に突き落とされています。私はここを離れません。イスラエル占領軍こそ国際法に従って、パレスチナを去らねばならないのです」 
エヴァ・ジャシウィッツ――自由ガザ運動

「エレツ検問所は国際監視員や医薬品をガザに入れるために開放されるべきなのであって、〔私たちを〕外に出すためではありません。私たちは、封鎖およびこの間の爆撃で死ぬ人たちをじかに見てきました。イスラエルの違法な軍事行動によって私は大勢の友人をなくしました。私たちはパレスチナ人と連帯し、この暴虐非道を報告し続けます。国際的監視者である私たちには、国際社会がイスラエルによるガザ攻撃の現実について知ることができるよう保証する責任があるのです」
ヴィットリオ・アッリゴーニ――国際連帯運動

国際人権活動家たちは、12月31日、イスラエルのミサイルでインターンのムハンマド・アブー・ハセーラと医師のイハーブ・アル・マスーンが殺害されてから、ガザ地区の救急車に同伴するという活動を続けてきた。国際活動家たちはマスーン医師が亡くなったとき、ベイト・ハヌーンのカマール・アドァーン病院にいた。

■ガザにとどまっている人権活動家たち
アルベルト・アルケ(スペイン)、
エヴァ・ジャシウィッツ(ポーランド/英国)、
ハイダル・イード博士(南アフリカ)、
シャロン・ロック(オーストラリア)、
ヴィットリオ・アッリゴーニ(イタリア)、
ジェニー・リネル(英国)、
ナタリー・アブー・シャクラ(レバノン)、
エヴァ・バートレット(カナダ)

(訳:岡 真理)

2009年1月 4日

【特集】 “変”な年2008回顧、“大変”な年2009展望

 新年明けましておめでとうございます!

 暗いニュースばかりが目立った2008年もようやく終わりを告げました。とはいうものの、一休みついたののつかの間、年始から国会は大荒れになることは必至で、なんとか通常国会を乗り切ったとしても、2009年は戦後政治史史上初となる二大政党を中心とした政権交代選挙となる可能性が高くなってきました。激動の2008年に引き続き、2009年も日本の進路を決する1年になることは間違いありません。はてさて、今年はどーなるニッポン!?

 THE JOURNALでは、昨年末から引き続き、年末年始の特集として各ブロガー独自の視点で2008年を振り返ってもらい、2009年を展望してもらう「変な年2008回顧、大変な年2009展望」をお届けします。正月三が日も連日のようにブロガーが登場しますので、読者の皆さんも、2008年の重大ニュース、2009年に対する期待をコメント欄でお寄せください!

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【関連記事】
■暁玲華:2009年に込められた意味とは。(1/4)
■有田芳生:「世直し」宣言(1/2)
■石渡俊彦:謹賀新年(1/2)
■高野孟:元旦の新聞を読み比べる!――「100年に一度の危機」とは何か?(1/1)
■天野礼子:三知事の“ダム反対”(1/1)
■田原総一朗:麻生内閣は1月が限界(12/31)
■井上トシユキ:ネット社会の大人化が進んだ08年、09年はユーザーが主導権を(12/31)
■山口一臣:ダメだめ編集長の2008年日誌(12/30)
■甲斐良治:「小は大を兼ねる」――日本的転換で危機を希望に転じる(12/30)
■辺真一:2008年を回顧する(12/30)
■金平茂紀:極私的2008年重大ニュース(12/30)
■若林秀樹:2008年大統領選と金融危機を振り返る(12/29)
■財部誠一:敗北主義にお別れを(12/28)
■高野孟:2009年の世界(その1) ――これから始まるオバマの“大変”(12/26)

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暁玲華氏(スピリチュアルカウンセラー)
「2009年に込められた意味とは。」(1/4)

西暦2009年。まずこの数字に着目すると、2001年から続いてきた「00」と二つの0が並ぶ最後の年になります。「0」は存在が無いという現実的ではない数字なので、「00」は強い虚無感を感じさせ、混沌とした時代がまだ続くけれど、そろそろクライマックスだということがわかります。

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有田芳生氏(新党日本 副代表)
「『世直し』宣言」(1/2)

 2009年1月1日。50年前のこの日、世界史に新たな1ページが書き加えられた。キューバでバチスタ独裁政権が崩壊したのである。メキシコにいたフィデル・カストロやチェ・ゲバラたち82人が定員8人乗りのヨット「グランマ号」でキューバに向かったのは1956年11月。ハリケーンで海が大荒れの日の出発である。それから2年。内部の裏切り、スパイ潜入、ジャングルという環境で発生した病気の危機、銃撃戦などで、一時はわずか12人にまで減ってしまった「キューバ解放部隊」。そんな苦境にあっても「われわれはきっと勝つ」と語っていたのがフィデル・カストロである。まさに「ドン・キホーテ」のような行動であった。しかも特筆すべきは、マルクスやレーニンの理論に依拠しない革命であったことである。現在の日本であれば、ただの傍観者によって、揶揄、嘲笑、冷笑の声が浴びせられたことであろう。それから半世紀。亡命キューバ人からは全体主義との批判を受けても、医療や教育分野での成果を否定することはできない。

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石渡俊彦氏(プロゴルファー&フィジカルトレーナー)
「謹賀新年」(1/2)

 皆さん明けましておめでとうございます。

 2009年はほんとうに“おめでとう”となるのか?

 様々な業界で大きな再編・勢力分布の動きがある年になってもおかしくない情勢となりました。2008年春先までの景気が、わずか数カ月で世界的にここまで落ち込むと誰が予測したでしょうか?

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「元旦の新聞を読み比べる!――『100年に一度の危機』とは何か?」(1/1)

いつになく気分が晴れない重苦しい年明けで、主要各紙の元旦の紙面も、何とか暗鬱に陥らないよう苦心して編集しているようすが伺える。各紙の社説と1面トップ記事のタイトルは次の通り。

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天野礼子氏(アウトドアライター)
「三知事の“ダム反対”」(1/1)

2008年12月21日の朝日新聞朝刊には、“財務省「次年度以降もムリ」”、“国交省「補正予算 努力」”との見だしで、滋賀県の大戸川ダムについて、来年度予算の財務省原案では、事業費が一切認められず、「来年度の事業は休止」されることになったことが書かれています。前日の朝日夕刊では一面トップ記事で「大戸川ダム休止」とまず載っており、朝日は二日続き、他紙も同様の大きなあつかいです。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「麻生内閣は1月が限界!?」(12/31)

高野:日本の「変」な年の最大の理由が、福田さんが突然辞めて、麻生さんが総理になった。それですぐに選挙をやるのかと思ったら、やらない。となるとこのまま年越しとなるわけですが、いったい麻生内閣は来年どうなるのでしょう?

田原:麻生さん自身もよくわからないんじゃないかな。もともと麻生内閣というのは選挙をやるための内閣だったんで、閣僚も党三役もいいかげんなんですね。

高野:軽量ですね。

田原:軽量というよりも、すぐに解散するつもりだった。解散のつもりが長くやってる。官房長官の河村さんなんて、とても長く務める人ではない。麻生さんも秘書ぐらいにしか思ってないんじゃないかな。もともといいかげんな内閣だった。

高野:それが長くやってるから、余計にボロが出ちゃう。

田原:福田さんがそもそも何で辞めたかというと、理由は一つ。福田さんはジェントルマンだから。ただし、闘志がまったくない。だから、選挙が嫌い。

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井上トシユキ氏(ITジャーナリスト)
「ネット社会の大人化が進んだ08年、09年はユーザーが主導権を」(12/31)

 2008年のネットを振り返ると、2つの大きなことが明らかになったと思う。

 ひとつは、ネット利用のマルチ世代化、つまり生活インフラとしての定着だ。「情報通信白書2008」によれば、04年から07年にかけて、50代から70代のネット利用が軒並み10%以上も増加している。若年層にはもはや普及の余地そのものがないから、これはかなり高い数字である。

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山口一臣氏(週刊朝日編集長)
「ダメだめ編集長の2008年日誌」(12/30)

■メタミドホス
最初聞いたときは「痛み止めッス」(イタミドメッス)かと思いましたよ。でも、いまでは日本中で知らない人はいないほどの超有名農薬(殺虫剤)に……。日本では使用禁止です。

■橋下徹大阪府知事
とにかく、この人の人気には驚きます。以前、テレビ(スーパーモーニング)で橋下さんとバトルになったことがあって、視聴者からはまるで2人がケンカしているように見えたらしく、テレビ局には「早くあの男(私のこと)をやめさせろ」っていう電話が殺到したらしい(爆)。さらに、番組が終わって編集部へ戻ると、なんと編集部へも抗議の電話が入っていたんです。人気者を相手にすると、恐いなぁと。そんな橋下さんもアッと言う間に大阪府知事に。いろいろ物議をかもしているようですが、大阪府民の圧倒的な支持で勝ったのだから、しがらみにとらわれず思い通りにガンガンやって欲しいです。

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甲斐良治氏(増刊現代農業 編集主幹)
「「小は大を兼ねる」――日本的転換で危機を希望に転じる」(12/30)

■「100年に一度」の危機
 世界を震撼させている現在の金融危機は、「100年に一度」の危機だという。ならばただ不安におののくだけでなく、新年を迎えるにあたって100年の単位で歴史を見直してみてはどうだろう。

 ちょうど100年前の1909(明治42)年2月から7月にかけ、日本、朝鮮、中国の農村を旅した米国人土壌物理学者F・H・キングは、東アジア農業の自給力と永続性に驚嘆するとともに、自国の農業・文明をふり返って「人間は、この世の中で最も法外な浪費の促進者である。

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辺真一氏(コリアレポート 編集長)
「2008年を回顧する」(12/30)

今年(2008年)1年、朝鮮半島を振り返ると、前進したかと思うと、後退するという「一進一退の年」だったというのが正直な印象です。

 昨年(2007年)は、7年ぶりの南北首脳会談の開催、6か国核合意、53年ぶりの南北鉄道連結などの明るいニュースが相次ぎましたが、今年は、韓国の政権交代を機に南北関係が冷え、また、核問題も、6か国で合意した核無能力化が完了しませんでした。

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金平茂紀氏(在京テレビ局記者)
「極私的2008年重大ニュース」(12/29)

今年は、6月まで日本にいて、あとの半年はNYに移ったので、ニュースをまとめて概観するのがとても難しいが、それでも今現在の記憶だけに従って列記してみると、以下のようになる。
① 新大統領に選ばれたオバマのシカゴ演説
② 経済危機を呼号する人々の立ち位置の無自覚
③ 秋葉原・無差別殺傷事件での「派遣社員」という呼称
④ 漢字の読み書きが不自由な日本の首相
⑤ 防衛省幹部のトンデモ史観
⑥ 二代にわたり続いた「政権」放り出し
⑦ テレビ製作者における灯火の消滅
⑧ 日本における集会・デモ表現の不自由
⑨ 光市母子殺人事件と三浦和義氏の自殺
⑩ ブッシュに靴を投げつけた記者

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若林秀樹氏(戦略国際問題研究所 客員研究員)
「2008年大統領選と金融危機を振り返る」(12/29)

今年1年を振り返り絶対に外せないニュースは、何といってもアメリカ建国200年間で初めて黒人の大統領が選挙で選ばれたことであり、そして100年に一度と言われている金融危機の勃発です。どちらもアメリカのみならず世界に与えたインパクトは計り知れず、その起きた事実が歴史となり、好むと好まざるとにかかわらず、新たなアメリカを形づくっていくことになりましょう。

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財部誠一氏(経済ジャーナリスト)
「敗北主義にお別れを」(12/28)

 「米国がくしゃみをしたら日本が風邪をひく」

 日本の大人たちはそう信じ込んできた。日本人の対米依存症は政治、経済を超え、精神性そのものにまで染みこんでいる。アメリカン・スタンダードをグローバル・スタンダードに仕立て上げようという米国の思惑に、多くの日本人はなんの疑いも抱くことなくアメリカン・スタンダードこそが絶対正義と信じ込んできた。

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「2009年の世界(その1) ――これから始まるオバマの“大変”」(12/26)

バラク・オバマは1月20日に第44代米国大統領に就任する。2年間近い激しい選挙戦で彼に最終的勝利をもたらしたのは「チェンジ」というシンプル極まりないスローガンで、それが日本で“変”がこの年を象徴する漢字に選ばれた有力な理由の1つともなったのだが、ブッシュの8年間への米国民の余りに深い絶望に“変”の1字を以て希望の火を点したのはそれで大成功だったとして、さて実際に大統領となって現実に直面して、その希望に具体的な政策で裏打ちを与えて行くとなると、これはもう“大変”である。なにしろ彼が引き受ける米国は、建国から2世紀余りを経て世界最強の帝国として栄華と驕慢の頂点を極めたその瞬間に、アッという間に全世界からの非難と侮蔑の中へと転げ落ちて、行く先も定かならずオロオロと衰弱に向かうことになるかもしれない老大国なのだから。

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2009年1月 3日

【動画公開中!】「麻生太郎に告ぐ!」鳩山由紀夫×高野孟

ジャーナリスト 高野孟が「今、話を聞きたい!」と思う“時代のキーパーソン”を迎えてお届けする動画企画「檄論檄場」。第一回は「次の選挙でついに政権交代か!?」という流れの中、政権交代の“主役”となる民主党より、鳩山由紀夫幹事長をお招きし、お話をうかがうことになりました。

これまで語られなかった内容が満載。「代表・小沢一郎を一番近くで見てきた男」が明かす、政権交代への「本気度」を4つのキーポイントに分けてお送りします。

http://news.www.infoseek.co.jp/special/j-is/movie12_01.html

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2009年1月 1日

元旦の新聞を読み比べる!――「100年に一度の危機」とは何か?

takanoron.png いつになく気分が晴れない重苦しい年明けで、主要各紙の元旦の紙面も、何とか暗鬱に陥らないよう苦心して編集しているようすが伺える。各紙の社説と1面トップ記事のタイトルは次の通り。

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 アラン・グリーンスパン前米連銀議長が米国発の金融大破綻を「100年に一度の津波」と呼んだのが一人歩きして、「大変な」という形容詞の代わりに何によらず「100年に一度の」を被せるのが流行となっている。

 金融危機について言えば、金融がこれほどまでに膨張して破裂して全世界に大迷惑をかけたのは金融の(と言うよりも人類の)歴史始まって以来のことだから、100年に一度どころか「ベニスの商人」以来1000年に一度と言ってもおかしくはない。暴走し自壊したのは米国流の電子式もしくは金融工学的資本主義であるという観点からすれば、それが誕生したのは20年ほど前だから、100年に一度と言うことに意味はない。「30年代の大不況に匹敵するほどの」と言いたいのであれば、30年代からまだ80年ほどしか経っていないので「100年間に2度目の」と言うべきだろう。

 何が「100年に一度」なのか定義不明のままに、例えば週刊誌などが安易に「日本は100年に一度の大不況」などと叫んでいるのは、徒に人を脅すセンセーショナリズムでしかない。今の日本は、大銀行と一部大企業が米国流に追随して金融的ふしだらに耽った結果、その反動として過度の自己保身に走って経済全体に信用収縮の危険を及ぼしてはいるのは事実であるけれども、「100年に一度」はおろか「大不況」にも陥っている訳ではない。そのことは歳末のデパ地下やアメ横の賑わい1つを見ても分かる。もちろん人々はお金の使い方に慎重かつ賢くなっているが、それはバブル後遺症をようやく完全に脱却して、慎ましさの中にも目一杯知恵を働かせて楽しむ術を編み出すという日本人本来の暮らしぶりに立ち戻っていることを示すもので、大不況の証ではない。

●何が「100年に一度」なのか?

 東京新聞は、1面トップを「日本の選択点」と題したシリーズの第1回で飾り、「100年に一度の岐路」と大見出しを立てている。ところが、記事の中身で扱っているのは「ネットカフェ住民」が増えて大変だという問題で、これら困窮者に対して生活保護など福祉の安全網を充実させるのか、就労支援など雇用対策を優先するのが「日本の根幹を決める選択点だ」と言うが、そのどこが「100年に一度」なのだろうか。

 ホームレスも失業者も非正規労働者もフリーターも昔からいたし、私にしてからが20~30歳代にかけては明日の糧にも事欠く「フリー(ライ)ター」をやっていたのでその辛さは身に染みて分かる。高度成長からバブルの時期に比べて特に若い層にそのような人たちが増えているのは事実だが、他方では農林漁業、介護・医療・福祉、教育・保育、海外ボランティアなど、必ずしも市場原理で割り切れないが社会的にはますます重要になっている仕事の現場では人手不足が深刻だし、またタクシー、飲食店はじめ流通・サービス業でも少なくとも一部企業では人手不足が続いている。大企業の非正規社員に対する首切りも、不況の深刻さというよりも、マスコミが「100年に一度の大不況」と騒ぎ立てるので、それに便乗してお手軽にコスト削減を図ろうとする経営者の短視・軽薄・無能ぶりの現れという一面がある。

 ネットカフェ住民などには確かに対策は必要で、働く意志と能力がある人には十分な職業訓練の機会を保証して(ハローワーク任せでなく社会的に枢要な分野への誘導を含めて)働き口を斡旋する雇用対策が必要だし、健康上など何らかの理由でそれが出来ない人には生活保護などの福祉的な安全網を手厚くすることが必要で、その両者は二者択一的な「岐路」というものではないし、まして「100年に一度」とか言うことと関係ない。東京新聞は何を言っているのかよく分からない。ま、シリーズ連載の進展を待つことにしよう。

●どんな国にするのか

 朝日新聞は「人間主役に大きな絵を」と題した社説で、100年に一度というグリーンスパンの言葉を多くの人が引用するが「たじろぐ必要はない」と読者を励ましてくれる。ところが、なぜたじろがなくていいのかの理由は、こうだ。「なぜなら、私たちの国は過去1世紀半近い間に、それこそ国がひっくり返る危機に2度も直面し、克服してきたからだ」。もちろん、明治維新と第2次大戦の敗戦のことである。そういうことはあっても乗り越えてきたのだから今度も大丈夫だという訳なのだが、逆に言えば、今回の危機は維新や敗戦に匹敵するほどの危機なのだということになる。危機の内容は、社説によれば、「世界的な金融システムの行き詰まりと、様々な矛盾を抱えて立ち往生している国内の経済財政システムの行き詰まりとか重なった複合的な危機」ということのようだが、ここでも、それがなぜ「100年に一度」の事態であるのかの説明はない。しかも「グリーンスパンの言葉を多くの人が引用するが」と、自分でなく他の人が言うから自分も言うのだが、という形で定義を逃げている。

 で、その危機から脱するには、どんな国をつくっていくか、「人間主役の大きな絵」が必要で、「それは『環境大国』でも『教育大国』でも『福祉大国』でもありうるだろう」と主張する。確かに環境も教育も福祉も大事だが、こうやって平板に並べただけでは一見もっともらしいだけで実は意味がない。私は、農林漁業を底辺としIT、精密機械、環境技術などハイテクを最突端とする「モノづくり大国」を目指してそこに人材を含めた資源を集中投下することを軸心として、それに経済・財政政策も雇用政策も教育政策も環境政策も農業政策も結びつけていくことが出来れば、21世紀日本の新しい成長戦略の「絵」が立体的に描けるのではないかと思う。

●モノづくりを大切にする生き方

 その点では、産経の皿木喜久論説委員長の年頭論説「日本人の『流儀』にこそ活路」が一番共感できるものだった。日本と米国との関係を「蟻とキリギリス」の寓話にそのまま当てはめるのは乱暴ではあるけれども「米国の金融危機の背景には、企業がモノづくりを忘れて金もうけに走ったことがあ」り、「国民も借金してはモノを買うという『虚構』の舞台で踊ってき」て、「キリギリスに似ていなくはない」。日本でも、企業が苦しみ、資産運用で失敗した人も多いが、それでも世界的に見れば、実体経済への影響が少ない。「モノづくりを大切にするという蟻型の生き方を捨て切っていなかったからである」と。

 日経が1面トップで「世界この先」という連載を開始、その第1部サバイバビリティの第1回では、「危機が開く未来へ」と題して、危機の時こそ世界を変えるような技術革新が登場するバネが働いてきたという観点から、日本が今回の危機を生き延びる力を持つことの実例として、トヨタが密かに進める太陽電池車、東大とパナソニックなどが開発する高齢者支援ロボットなどを紹介している(のはいいとして、その次に味の素の営業マンがアフリカの雑貨店を訪ねて調味料を売って歩いている話を出しているのはどういう意味なのか?)。同紙はさらに中面でも多くのページを割いて日本の技術の「強さ」を示す事例をいくつも採り上げて、とりわけ環境技術の分野では日本の特許件数が欧州や米国を遙かに抜いて世界ナンバーワンになっていることを指摘している。

 毎日の菊池哲郎主筆の年頭論説「人に優しい社会を」は、まさにそのタイトル通りのことが今回の米国的価値観の崩壊から学んだ教訓だとして、「持てる日本の資源を最大限有効に生かすには、大きなデザインを描き、全体を効果的に融合する仕掛けを作ることが重要」で、それを通じて「一人ひとりが夢と生きがいの持てる状況を作っていく」ことが政治の任務だと、朝日と似たようなことを言っている。そのためには「2兆円ばらまくなど政策とは言えない」愚行で、「たとえば全額投入してがん治療特効薬を開発する、次の産業である航空機開発や介護用ロボットを完成する、アジアの学術の中心都市を作るなど有効なお金の使い方はいくらでもあります」とも言う。やはりここでも、日本の技術の潜在力をフル活用して挑戦することが中心課題と認識されている。

 読売の社説は、経済より政治に力点を置いていて、経済危機に対しては、日本の強みである「余剰貯蓄」を生かして社会保障や雇用対策など景気振興を行うよう「できれば超党派で知恵を絞るべき」であること、オバマ政権が「日本にもアフガン本土の治安回復活動への自衛隊参加を求めてきた場合」はどうするのか、ソマリア沖の海族対策に中国も軍艦を派遣するのに日本が明確な方針を打ち出せないでいて」米国からどう見られるのか、「日本が信頼できる同盟国だと思わせるだけの能動的な外交・安保政策で応えなくては」ならず、それには与野党が国内政局次元の争いに明け暮れることなく「政治空白を解消」すべきことを主張している。

●政界再編も大連立もない

 ちょっと面白いのは、ナベツネが中曽根康弘元首相らと組んで陰で盛んに立ち回っている「大連立」路線がこの社説では抑えられていて、次のような言い方になっていることである。

「次回総選挙では、自民党、民主党とも、単独過半数を獲得するのは難しいと見られている。すでに、与野党を通じ、そうした選挙結果を想定した政界再編、連立絡みの動きもある」

 これはどういうことなのだろうか。昨秋ならともかく、今では自・民両党とも単独過半数を獲れないという結果を想定する人は、自民党幹部も含めてほとんどいない。自民党が負けるのは仕方がないとして、何とか民主党に単独過半数を渡さない程度に踏みとどまって欲しい!というのが読売の願望なのだろうか。「と見られている」と、また新聞特有の他人事のようにして自らの主張に客観性があるかに装う手法だが、ここははっきりと、誰がそんな見通しを持っているのか言うべきだろう。

 ナベツネが政界再編含みの大連立構想を仕掛けるには、そういう流動的な状況でないと出番がなくなるということを言いたいのか。麻生政権の自壊が進む中で、民主党が単独過半数を得て正面から堂々と政権を獲れる可能性がますます強まっていて、だからこそ、民主党側には選挙前に政界再編に応じる必要はさらさらなく、ただ単に自民党側に選挙での敗北・混乱を予想して事前に離党しようという動きが出るかもしれないというだけである。まして単独で政権を獲ってしまえばなおさらそうで、参院で民主党が単独過半数を占めていない以上、共産党を含めた現在の野党各党との協調と自民党・公明党の切り崩しは不可欠だが、自民党を巻き込んだ再編や大連立が必要になることはない。

 時代遅れの「日米同盟」神聖論に立って、そのためには挙国一致政権を、というナベツネ=中曽根路線はもう終わっているのではないか。それに引き摺られていると、読売の論調はますます何を言っているのか分からないことになりかねない。▲

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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