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THE JOURNALとInfoseek楽天が新しいニュース媒体を創設 ――ブログ・ジャーナリズムの実験、新展開へ

takanoron.png  本誌が中心となって運営するブログによるニュースサイト《THE JOURNAL》は今年9月の創刊以来、急速にアクセス数・読者数を伸ばしてきたが、その3カ月間の実績を背景に、このほど楽天のポータルサイト《Infoseek楽天》のニュース部門と提携し、Infoseek上で「THE JOURNAL×Infoseekニュース/内憂外患~これでいいのかニッポン」と題した新媒体を立ち上げることになった。12月18日に正式にプレス発表が行われる。

 THE JOURNALは今後とも、独立したブログサイトとしてコンテンツの充実を図りつつ、主にネット広告とサポーター企業募集によって運営を進めていくが、同時にInfoseekに対してコンテンツを独占的に供給し、THE JOURNAL記事の中から選択された記事の転用、Infoseek向けに独自に編集された記事の提供、Infoseekと共同で制作するネットテレビ特番の放映などを手がけていく。

 日本初の本格的なブログ・ジャーナリズムの実験であることを自負してはいるものの未だ広がりという点では初歩的な成果しか収めていないTHE JOURNALは、大手ポータルサイト「Infosek楽天」内において、月間総ページビュー1億超、月間利用者約300万人を誇る(注)「Infoseek ニュース」という新しい舞台を得ることで、飛躍的な展開に入ることになる。

(注)「Infoseekニュース」のみの数字。Infoseek楽天独自調査

●INSIDER~東京万華鏡~ざ・こもんず~THE JOURNALの歩み

 INSIDERは1975年に故・山川暁夫を編集長に、私=高野孟を唯一の補佐に、しかし多くのジャーナリスト仲間の支援を得て、東京・赤坂の4畳半のアパートで創刊された、当時としては先駆的な超硬派のニュースレターで、途中山川が引退、高野が引き継いで80年に(株)インサイダーを設立して、2000年末まで弛むことなく月2回1日と15日に郵送でお届けする紙媒体として刊行を続けた。21世紀に入ってからは、Eメールによる不定期配信に形を変えたが、マスメディアが撒き散らす情報(インフォメーション)の洪水の中で、それらの真偽を判定し、日本と世界の行く末を考える上で大事な情報(インテリジェンス)を選び抜いて提供する数少ない独立メディアとしての信条は、変わることなく今日まで続いている。

 紙版のニュースレターは、創刊当時としては、資金も大組織の支援もない個人や小集団が誰にも煩わされることなく自由に主張を展開できる唯一の表現形態だった。しかし、手書きで原稿を書いて、写植で打ってレイアウトして、紙に印刷して、折り畳んで封筒に入れて、郵便局に運んで……というアナログ作業の負担は大変なもので、いずれネットによる電子的民主主義の時代が到来してそこから開放される時が訪れると確信していた我々は、80年代半ばに「パソコン通信」が始まるとすぐに、その先駆者だったアスキーネットの西和彦社長(当時)と語らって同ネット上にINSIDERのコンテンツを提供する実験を開始した。が、当時のパソ通にアクセスするのはパソコンオタクばかりで、我々のコンテンツは大きな支持を得られることなく数年で撤退した。その頃私は、モデムを通じて電話線で米国のCompuServeにアクセスしてニュースを検索していた数少ない日本人ユーザーの1人で、ある時、西社長に「米国では“検索”が1つの文化になっている。これからネットが発展すると必ず検索が勝負になる時が来るから、今から研究しておいたほうがいいよ」と言い、彼は「そうか」と言ってメモをしていた。その時はまさかGoegleのような検索のお化けが登場するとは想像もしていなかったが、見通しては基本的に正しかった。

 1990年に米国でインターネットが解禁され、さっそく私は、Mosaicと呼ばれた初期のブラウザーを入手して、ベンチャー企業として独立する前、未だスタンフォード大学の研究室にあったYahooにアクセスしたり、米国のネット企業を取材したりして、インターネットが世界を変えるという確信を持った。94年に日本でもようやくインターネットが開放されると、すぐにNHK会長を辞めてブラブラしていた故・島桂次、ネット世界の伝道者の伊藤穣一らと共に(株)島メディアネットワーク(後に(株)ウェブキャスター)を設立して、日英両文による日本初の硬派ネット週刊誌「東京万華鏡」を設立した。私がコンテンツを担当し、島が営業を担当して(と言ってもNHKの元ワンマン会長が営業なんか出来るわけがなく、NHK時代から知り合いの大企業経営者のところに乗り込んで「おい、金を出せ」と強盗みたいなことを言っていた)たぶん日本初のバナー広告による経営を成り立たせ、伊藤が技術面を担当した。94年末に立ち上げて、年が明けてすぐに阪神淡路大震災が起き、さらに続いてオウム真理教の地下鉄サリン事件も起きて、「東京万華鏡」はその精力的な報道で一躍世界的に有名なサイトとなった。が、3年後に島が病で急逝し、その後このサイトは自然消滅的に衰退し、何人かの書き手による(今で言う)ブログとINSIDERへのリンクで細々と存続した。

 21世紀に入ってアメリカでブログという新しい発信ツールが登場し、それを活用したブログ・ジャーナリズムが始まった。それは登場早々から、テレビ3大ネットの報道番組を批判して著名キャスターを退陣に追い込むなどめざましい成果をあげ、デジタル民主主義の可能性を示唆した。そのことに大いに刺激を受けながら、05年11月にはブログ・ジャーナリズムの実験の最初の試みとして《ざ・こもんず》のサイトを立ち上げた。これはそこそこには話題となったが、著名ジャーナリスト・書き手のブログを編集なしに単に並べただけでは思ったほどのインパクトにならなかったことに加えて、主として中小企業を対象にサポーター企業を募集し月々低額のサポーター料を頂くというビジネスモデルが有効に作動しなかったことから行き詰まりを来たし、そのため本年8月末をもって閉鎖してTHE JOURNALとして再スタートを切ることになった。

 THE JOURNALでは、メインに《News Spiral》と題したデイリーのニュースを配し、従来のざ・こもんずの著名人のブログは《Commons》と題したコーナーに存続しつつなおブロガー数の拡大を目指すという形に転換した。News Spiralでは、編集部が内外のメディアのニュースから重要なものをピックアップし、また時には独自取材によるオリジナル報道を繰り出していきながら、その記事に対してブロガーやその他各界の著名人によるコメントを付けていくという、ニュース&コメントというスタイルを採用し、また読者からの自由な(しかし節度と見識ある)コメントも受け付けることにした。これらの全体が新しいブログ・ジャーナリズムの実験である。また、営業面では、(株)CKDコンサルティングと提携し、THE JOURNALを(株)インサイダーと同社との共同事業として運営することになった。今回のInfoseek楽天との提携も、CKDコンサルティングによる営業活動の最初の大きな成果である。

●Huffington Postが面白い

 さて米国では今ブログ・ジャーナリズムが真っ盛りと言っていい。とりわけオバマ勝利との関連で注目を集めているのはHuffington Post(ハフィントン・ポスト=略称HuffPost)である。

 米ニュースサイトの08年10月度のユニークユーザー数(注)ランキングで対前年同月比448%という他の10倍以上の伸び率を示し810万人で堂々18位に入ったこのサイトは、4年半前にアリアナ・ハフィントンというギリシャ生まれの女性ジャーナリストが友人から集めた250万ドルの資金で始めたもので、その中心は、大手ばかりでなく地方や特殊な専門分野で働くジャーナリストや学者、ユーモア作家、ベンチャー経営者、ビジネスマン、NPOなど数百人の有名・無名の人々のブログで、現在のリストを見るとその数は235人に及んでいる(www.huffingtonpost.com/theblog/index/を参照)。中には例えば、アバスPLO議長やヨルダンのフセイン国王などもいて、それぞれ過去に1回か数回寄稿しただけだが、そういう人も含めて強力なラインアップで、それが人名別、分野別、アクセス・ランキング順などで自由に検索・閲覧できるようになっている。

(注・ユニークユーザーはサイトの人気度を測る手法の1つで、同じ人が一定期間に繰り返しアクセスしても1人と数えるので、より正確な人気度が分かるということになっている。)

 スタンスは(そこが米国らしいところだが)あからさまに民主党寄りで、例えば今アクセス・ランキングのトップに座っているのは、かつてオバマの上院議員選挙のキャンペーン・マネージャーだった政治コンサルタントのスティーブ・ヒルデブランドの「オバマへの左からの批判に答える」というブログで、14日現在14万2752ページビューと2190人からのコメントが付いている。2番目はヴィッキー・ワードのペイリン前共和党副大統領候補に同党が支払った16万5000ドルのスタイリスト料の内訳についてのNYタイムズ報道への皮肉たっぷりのコメントで、12万5140ページビューと190のコメントが付いている。

 HuffPostはどんどんコンテンツを拡大していて、その全体を紹介する暇はないが、「BIG NEWS PAGES」と題して大手メディアの注目ページを紹介するだけでなく、独自の調査報道によるオリジナル記事を重視し、またローカル報道とのリンクにも力を入れ始めている様子が窺える。ジャンルも、政治がメインであることに変わりはないが、メディア、ビジネス、娯楽、生活、スタイル、グリーン(環境)、国際などの分野を開発しつつある。

 もう1つ最近注目のサイトはNewserで、これは老舗ファッション・文化雑誌Vanity Fairの元編集者マイケル・ウォルフ、元NYマガジン編集長キャロライン・ミラーらが創立したもので、大手始め内外の数百のメディアをウォッチして編集部独特の感覚でピックアップし、それらをタイトルもしくは画像と「2パラグラフ、120語前後」に要約して伝える
という形を中心にしている(これもHuffPostも版権問題をどうクリアしているのか知りたいところである:誰か知りませんかね?)。このスローガンは「Read less, know more(もっと少なく読んで、もっと多く知ろう)」である。

 これらのサイトに共通しているのは、個性ある編集者が独自の視点でメディアのニュースを野次馬新聞的に選択し2次加工し、またそれに深みを与える手段としてブログの形を活用していることである。

 翻って日本のネット・ニュースの現状を見れば、YahooはじめInfoseekも含めて、どのニュースサイトも、大手新聞社・通信社などの配信記事を要約して伝えるだけに止まっていて、その選択や要約の仕方にもプロの観点からして問題が残るというだけでなく、そのサイト自体として社説も解説欄も独自取材記事もあるわけではなく、つまりは読者の深いニーズに応えるメディアとはなり得ていない。今読者が必要としているのは、ニュースそのものよりもその読み方、意味づけ、それから発展する主張の展開であり、縮めて言えば、インフォメーションの量ではなくインテリジェンスの質である。

 その意味で、InfoseekニュースとTHE JOURNALの提携は、日本のネットニュースの世界に新しい何事かを引き起こす最初の試みとなるかもしれない。お断りしておくが、我々もInfoseek側も、あわてず騒がず、じっくりとこの共同作業を進めていくつもりでいるので、性急な成果を期待されても困る。それぞれに持てる力を出し合って、ともかく面白いことを始めてしまうことがまず大事である。▲

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コメント (7)

「Congratulations!」
THE JOURNALは今までで一番信頼できるnewssourseですし、そうそうたるメンバーのコメントを日々楽しみにしております。
Infoseekとの提携による更なるブログ・ジャーナリズムの発展を祈ります。
高野さん言われるところの“インフォメーションの量ではなくインテリジェンスの質”を引き続き、追求してください。
今後のますますの発展を祈念し、期待しております。

素晴らしいWEB展開にはいるんですね、私が公開してきたオリジナルフォトサイトの高野孟氏、田原総一朗氏、田中康夫氏等のページも”Infoseek楽天”がHPスポンサーのサイトですから興味深いWEBまわりに期待がもてます。

こんにちは。「日刊ベリタ」のサイトからこちらに飛びました。私自身もニュースサイトの立ち上げを準備しています。2009年は、日本で「本気の独立系ニュースサイト」の爆発年になるかもしれませんね!!!

ブログ・ジャーナリズムは次世代の中核的なメディアに成長すると、私は信じています。その要因は、独立性と双方向性にあります。経営・運営の面で様々なご苦労があるかとも想像いたしますが、頑張ってください。真摯なジャーナリストとしての高野様のご活躍も心より期待いたしております。

謹賀新年。
益々の発展を期待しています。

>ブログ・ジャーナリズムは次世代の中核的なメディアに成長すると、私は信じています。その要因は、独立性と双方向性にあります。

とのhal2001さんのコメント、同感です。なのに、このサイトのコメント欄で双方向のコミュニケーションが成立していないことがとても残念です。

知人の時事通信社の湯川さんは「ネットは新聞を殺すのか」というブログをやっていらっしゃったんですが、リアルでお会いしたとき、彼は書き込まれたコメントに返事をする前に、「理論武装してからでないと…」と仰っていました。湯川さんに限らず、プロのジャーナリスト・マスコミ人はそういう部分があるのではないでしょうか。とはいえ、理論武装も武装のひとつではないですか。
議論を闘争ととらえるのではなく、対話と考え、お互いの気づきの中から、新しいものを構築していく。そういう新しい文化ができないものでしょうか。

高野さんは、このサイトを実験室と位置づけられていらっしゃいますよね。とすれば、いろいろと実験をしてみましょうよ。私も、オーディエンスの一人として積極的に参加しますから…。

*

苦言ばかりで、私の印象は最悪。すでにクレーマーとして判断されているのかもしれませんね。とはいえ、旧来のメディアが斜陽していく今、なんとか対話を成立させていきたいものです。

本年もよろしくお願いもうしあげます。

ビクターの映像プロデューサーとして「ビデオインサイダー」編集部へ毎日通っていた頃1990年頃のあの「初期の勢い」を懐かしく思い出しました。
米国中心の世界観と既存メディア
の人間がプライドを捨てきれるか、
送り手受け手間の双方性、日本と
世界のインとアウトの流れができるか、の3点が「鍵」になると
思っています。
注目しています。

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