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2008年12月31日

井上トシユキ:ネット社会の大人化が進んだ08年、09年はユーザーが主導権を

 2008年のネットを振り返ると、2つの大きなことが明らかになったと思う。

 ひとつは、ネット利用のマルチ世代化、つまり生活インフラとしての定着だ。「情報通信白書2008」によれば、04年から07年にかけて、50代から70代のネット利用が軒並み10%以上も増加している。若年層にはもはや普及の余地そのものがないから、これはかなり高い数字である。

 12月にJR東海道線で「ケータイメールのマナーをめぐって車内で殴り合った二人の男」は、ともに50代だったし、高齢者の利用が急速に進んでいるとなると、3月にネットバンクを騙ったフィッシング詐欺が問題となったのも理解できる。

 わが国で最初にフィッシング詐欺が認知されたのは03年のこと。当時、散々報道され、警戒が呼びかけられたが、04年以降にネットに親しんだ人たちは単純にそのことを知らず、簡単に被害者となってしまったのだろう。

 03年から04年というと韓流や『電車男』に端を発する純愛ブーム、それにブログブームの頃。さらにはケータイの機能やサービスの高度化が進み、01年から始まったパソコン回線のブロードバンド化が一般にも浸透し、高齢者に向けた強引な商法が問題化した時期でもある。
 
 つまり、ネットビジネスやネット文化の勃興ではなく、人々の生活へのネットの定着という点では、ようやく昨年あたりから本格化したといってよいのではないだろうか。

 2009年も、引き続き遅れて来た大人のユーザーがネット上でのレトロな犯罪の被害に遭うケースが出てくるだろう。投資詐欺やワンクリック詐欺の変形などが増えるかもしれない。

 そして、もうひとつがネット接続にあたって、ケータイが端末の主流となりはじめたことだ。実際、「平成一九年通信利用動向調査」をひもとくと、パソコンからのネット利用者が06年から07年にかけて200万人ほど減り、そのままケータイなど移動端末利用者が増えている。さらに、移動端末のみからの利用者は300万人も増加した。「情報通信白書2008」を見ると、実際に各世代ともケータイからのネット利用が顕著に進んでいることがわかる。6~12歳では四人に一人、13~20歳では4人のうち3人、20代、30代、40代となると8割がケータイからのネット接続利用者だ。

 秋葉原連続殺傷事件の犯人も異常なペースでケータイ掲示板に書き込みをしていたが、ケータイの機能やサービスの高度化によってユビキタス社会の実現が進み、より便利になる反面、誹謗中傷や犯行予告を脊髄反射的にネットへ書き込む行為も激化している。

 見過ごせないのは、これまで多かった20代、30代の無職者やフリーターのみならず、40代、50代が目立つようになってきたことだ。

 かつてネット上で犯行予告を行った人物の話を聞く機会があった。この人物は犯行予告について「むしゃくしゃして物を投げるのと同じ感じ」と言った。「たまたま手元にケータイがあって、ネットの掲示板やブログに接続できるから犯行予告を書いた」

 この人物は未成年だったが、世事や悪知恵に長けた大人が不景気により職を失ったり、賃金をカットされたりしたあげく、「むしゃくしゃして」「カッとなって」ネット上で好き放題やりはじめたら、どうなるだろう。屋上屋を架すような法律をいくつもつくり、天下り先にしかならないような組織、団体をたくさんつくってネット上の安全を監視したり認証したりするのだろうか。

 このように見ていくと、教育再生懇談会や一部の自治体が打ち出しているような「ネット犯罪被害に遭わせないため子供にケータイを持たせない」というのは、まるで時代の逆を行くものと思える。ネット犯罪被害の事前防止のためならば、むしろ遅れてきたユーザーを含めた大人をケータイから隔離したほうが効果があるに違いない。
 
 実際に講演の終了後や取材などで話を聞いても、学校での教育が奏効してか、親よりも子供のほうがネットやケータイの知識があると話す家庭が多い。そもそも、援助交際や詐欺、違法サイト運営などを行っているのは大人である。そして、今後、さらにネットやケータイユーザーの大人化が進む。

 授業中は学校で預かるというのは理解できる。だが、臭いものに蓋をするように子供から端末を取り上げ、ネットやケータイから引き離したとしても、新たなデジタルディバイド=ケータイディバイドの子供が増えるだけだろう。

 連絡用なら公衆電話を設置しなおせば良いという意見を聞くが、設置費用は誰が負担するのか。また、撤去された公衆電話機は、すでに廃棄されたものも多い。新しくラインをつくって製造するコストは誰が負担するのか。当然、われわれの利用料金として跳ね返ってくるだけだ。

 そのような愚念な無駄をする積極的な理由がどこにあるのだろうか。

 ショッピングモール、ホームページなどと呼びならわすように、ネット社会(ケータイ社会)は現実社会を模すようなところがある。となれば、いまネットやケータイで起こっていることはわれわれが生きている社会そのものの写像であるといえる。また、現実社会にいる人々が現実に使わなければネット社会は存在しえない。

 ネットもケータイも、われわれの生活や現実の一部、あるいは延長線上であり、何も特別なものではない。現実の社会と同じように悪人もいれば、ヤミの部分もある。それだけのことだ。

 ネットのリソースもケータイの電波帯域も、国民の共有財産だ。
「どのようなネット利用、ネット社会を望むのか」
「さまざまな理由で疎外され、疲弊し、憤懣を鬱積させながら、安上がりで簡単な意思表示、暇つぶし、あるいはコミュニケーションの場であるネットを通じてしか社会と繋がれない人たちと、どのように向き合っていくのか」

 待ったなしでわれわれが直面するこうした問題は、公僕である役人や御用学者によって上から目線でどうこう言われるものではない。

 主権者である国民が「こうしたい」と積極的に意思表示を行い、解決への道程を歩んでいくものだ。
 2009年、ネットとケータイ利用において、ユーザー=国民が主導権を握る元年となることを期待したい。

2008年12月26日

2009年の世界(その1) ――これから始まるオバマの“大変”

takanoron.png●オバマが背負い込む“老大国”

 バラク・オバマは1月20日に第44代米国大統領に就任する。2年間近い激しい選挙戦で彼に最終的勝利をもたらしたのは「チェンジ」というシンプル極まりないスローガンで、それが日本で“変”がこの年を象徴する漢字に選ばれた有力な理由の1つともなったのだが、ブッシュの8年間への米国民の余りに深い絶望に“変”の1字を以て希望の火を点したのはそれで大成功だったとして、さて実際に大統領となって現実に直面して、その希望に具体的な政策で裏打ちを与えて行くとなると、これはもう“大変”である。なにしろ彼が引き受ける米国は、建国から2世紀余りを経て世界最強の帝国として栄華と驕慢の頂点を極めたその瞬間に、アッという間に全世界からの非難と侮蔑の中へと転げ落ちて、行く先も定かならずオロオロと衰弱に向かうことになるかもしれない老大国なのだから。

 CIAはじめ米国の全情報機関の情報分析・予測を統括する米国家情報評議会(NIC)が12月20日発表した「世界潮流2025」報告書は、中国、インドなどの台頭により世界の富と影響力の重心は「西から東へ」と移動し「第2次大戦後に構築された国際体制はほとんど跡形もなくなる」と予測し、その多極化した世界で米国は経済力も軍事力も低下した「主要国の1つ」として振る舞わなければならず、ドルも唯一の基軸通貨としての地位を失いかねないと、自らに言い聞かせるような調子で未来展望を述べている。4年前にNICが出した同種の報告書「2020年の世界」では、米国が「ワン・オブ・ゼム」となっていくことを予感しつつも、まだ支配的な影響力を維持し続ける覚悟を表明していた(本誌05年1月27日号、および高野『滅びゆくアメリカ帝国』[にんげん出版、06年刊]P.213、257参照)。チェンジ、すなわちブッシュの8年間でズタズタになった米国を立て直すというのは、過去の栄光を取り戻すことではなく、21世紀の多極世界とそれに伴うユーラシア大陸への重心移動という新しい現実に米国をいかにして軟着陸的に適合させていくかということであり、それに失敗すれば米国は硬着陸的に破滅に突き進む。そこにオバマ政権の基本的な課題がある。

 まずはイラクとアフガニスタンである。選挙戦を通じてオバマが主張してきたのは、イラクからは早々(16カ月以内)に撤退し、その分、アフガニスタンに対しては兵力を倍増して軍事的決着をつける、という基本戦略である。この前提には、イラクの戦争は間違っていたが、アフガニスタンの戦争は間違っていなかったという認識があるのだろうが、残念ながらこの戦争は両方とも間違っていたのであって、オバマがブッシュの間違いを正して米国の尊厳を取り戻そうとするなら、そもそもテロという見えない敵が企む国際犯罪に対するに“国家間戦争”という手段を採用したことの根本的な筋違いという問題にまで遡らざるを得ない。そのように問題を設定していないところに、すでにオバマの限界が垣間見えている。

●イラクから撤退開始

 イラクでは、09年1月1日に2011年末までの2年間、米軍のイラク駐留を認める米イラク地位協定が発効する。日本を含む十数カ国の軍隊の駐留の根拠とされてきた国連安保理決議が08年末で失効することへの代替措置で、これに従って15万人の米軍は、09年6月末までにまず都市部から戦闘部隊を撤収させた上、11年末までに全土から完全撤収することになる。また4000人の英国軍のほか豪州、ルーマニア、エルサルバドルなどの軍隊も、別途の協定により09年7月末までは駐留する。

 この米イ協定をめぐっては、「3年間でイラク治安部隊が全責任を負うなど到底無理で、米軍駐留はあと10年間は必要」とするマリキ首相ら政府首脳の現実論と、「即時撤退」を主張する反米派の感情論が激しく対立、結果的に、任務外で重罪を犯した米兵に対するイラク側の裁判権の保証、米軍がイラクを周辺国(イランという意味)攻撃の出撃基地とすることの禁止、11年末を「無条件完全撤退」の期限とすること、さらに09年7月末までにこの協定の是非を問う国民投票を実施することなど、反米派の主張に基づく規定が次々に盛り込まれた。

 問題は、マリキが言うように、米軍撤退後の国内治安を確保する目処が立っていないどころか、米軍が引き始めた途端にシーア派とスンニ派の武装対立が激化し、その隙に乗じて北部のクルド族が独立を画策して、泥沼の内戦状態に陥る可能性が大きいことである。仮にそれほど酷いことにならなかったとしても、イラクはシーア派が支配するイランの従属国家となっていくことになる。米国としては、例えどうなっても「イラクが早く撤退しろと言ったからだ」と米イ協定を口実として開き直ることが出来るには違いないが、それで米国が責任を逃れられる訳ではない。

 イラクのさらなる国家崩壊と周辺国を巻き込んだ中東動乱を防止しながら米軍撤退を実現するには、ブッシュが手酷く傷つけた国連との関係を修復し、国連の旗の下でのPKO型の治安回復の新たな枠組みを作って国際社会の支持を得る努力をしなければならないだろう。多国間主義への転換の最初の試金石となるはずのその努力が始まっていないうちに米イ協定が発効してしまうという手順前後が問題で、なおかつオバマ自身とバイデン副大統領とヒラリー・クリントン国務長官のイラク戦争評価は微妙に違っていて、新政権がこれに整然・迅速に対処できるかどうかは未知数である。

●アフガンは一層の泥沼へ

 アフガニスタンの旧タリバン政権がアル・カイーダと直接的関係があったのは事実で、それと間接的関係さえなかったイラクに比べて攻撃対象とする妥当性があったというのがオバマの認識なのだろうが、当時タリバンが「ビン・ラーディンが9・11の犯人である証拠を示せば身柄を引き渡す」と冷静な司法的解決を申し出たにもかかわらず、ブッシュは激情に任せてそれを一蹴し軍事攻撃によってアフガンを国家崩壊させる道を選んだ。結果はイラクよりも深刻な泥沼状態で、ビン・ラーディンは捉まらず、タリバンは復活し、それで焦った米軍が06年央からパキスタンに越境攻撃をして多数の住民を爆死させていることによってパキスタンに“アフガン的泥沼”が拡大し、激高した同国の過激派がインドに向かってテロを激発させるという最悪事態を招いた。教訓は、戦争ではテロはなくならないどころか拡散してしまうということであるはずで、だとするとアフガンの兵力を倍増させるというオバマの選挙公約は何の勝算があって言ったことなのか、理解しにくい。米タイム誌12月22日号で現地を取材したジョー・クライン記者は「オバマが戦って勝利すると主張しているアフガン戦争は、すでに目的を失った不条理となり果てている」と書いた。

 ここでも手順は前後しているなどというものではなくめちゃくちゃで、そもそも米国が間違った戦争を仕掛け国家崩壊を招いておきながら、早々に “勝利”を宣言し、国連の枠組みでNATOを中心とする国際治安支援部隊(ISAF)を導入したものの、実際には激しい内戦が続いていて治安回復に取り組む条件がなく、そのためISAFは当初は治安回復や経済復興のための支援スタッフを防護するために軍隊を送り込み、やがてその本来任務そっちのけで米中心の多国籍軍と一緒になってタリバンなどと戦闘しなければならない羽目に陥った。それでも(それだからこそ?)事態は悪化の一途を辿り、焦ったブッシュは、タリバンの基地となりアル・カイーダの潜伏先となっているとされるパキスタンの部族の集落に対して越境攻撃を命令した。この上3万人の新たな兵力を投入してもこの「目的を失った不条理」を拡大するだけになるのではないかという内外の疑問にオバマは答えることが出来るのかどうか。恐らくは、米国の単なる傀儡と見なされているカルザイ大統領の首と引き替えのタリバンとの停戦交渉、破滅したISAFとは別の新しい国連の枠組みによる国家再建しか道はないはずだが、新政権がその方向に進む可能性を選択肢に入れているのかどうか。

●ビッグ3の救済の後に?

 オバマ政権の経済チームがまず取り組むのは、ブッシュの「つなぎ融資」によって取り敢えず破綻を免れたものの何ら再建の目処も立っていない自動車ビッグ3を引き続き救済し続けるのかどうかという難問である。もちろん、米国のシンボルである自動車産業を没落するままに放置することは出来るはずがなく、またそうすれば景気の底が抜けるので、それを不況対策の中心に据えて取り組まざるを得ないが、そこで早くも問われるのは、政府に救済を願い出ながら 10億円を超える報酬を貪って自家用飛行機などを乗り回してきた経営者のみならず、日本の自動車メーカーに比べて倍近い賃金を得てきた労働者や手厚すぎる退職金や退職者向け医療費支給を得てきた退職者も含めた米国的ライフスタイルの水膨れ状態そのものである。

 ノーベル賞を受賞したばかりの経済学者ポール・クルーグマンは23日付のNYタイムズに「バブルなき生活」と題したコラムを寄せ、「向こう1年間は経済的地獄に陥るだろうが、オバマ政権の景気刺激策によって09年末には経済は安定に向かい、2010年については楽観的に見てさしつかえあるまい」と述べながら、「しかしその後には何が来るのか?」と問うている。多くの人々は景気対策が効を奏せば米国人はまた数年前までのようなビジネスに戻ることが出来ると考えているが、実際には、「物事が現在の危機の前の状態に戻ることはあり得ない。そして私はオバマ政権がそのことを理解するよう希望する」と。「米国経済がバブルなしに生きていかなければならないことを悟るには長い時間がかかるだろう。それまでの間、経済は政府の援助に頼らなければならないだろう」と。

 新自由主義の破滅の後には「新社会主義」がやってくるのかも知れない。その問題は、ヨーロッパ人には「第3の道」という共通テーマとその各国ごとの試行錯誤としてとっくにお馴染みのものだが、米国人には考えたこともない新しい問題で、そこで例えば前出のNICの2025報告書も、米欧型の経済発展モデルは力を失って「中国、インド、ロシアのような“国家資本主義”モデルが途上国の人気を集めるだろう」といういささかとんちんかんな予測を描くことにもなる。中国が「社会主義市場経済」を目指しているのは事実だし、「社会主義こそ市場経済を管理できる」(温家宝首相)という実験を行っている事に自負を持っているのも事実だが、それを“国家資本主義”と呼ぶことにさしたる意味はなく、市場が米国で放埒を極めて失敗した後に「市場と政府」という古くて新しい問題への欧州や中国やインドやロシア、それに末席ながら日本も含めた多様な取り組みが対等の価値のあるものとして研究されなければならないという、経済モデルの多極化が始まっているというだけのことである。

●金融資本主義の後始末

 11月のG20緊急金融サミットが「あらゆる規制」を講じると決議したその具体策は、09年3月までに国際的な合意を達成しなければならず、オバマ政権としても全力を挙げてそれを推進することになるが、そこでは単なる“行き過ぎ”の是正というに止まらない、人々の暮らしや実際にモノを作りサービスを提供して価値を生み出している産業にとって「金融はいかなる役目を果たすべきなのか」という原理的な問題を避けて通ることが出来ない。スーザン・ストレンジが20年以上も前に指摘していたように、「大銀行と大証券会社が総元締めとなったこの24時間営業の金融カジノが何より問題なのは、ゲームに参加している銀行家、証券セールスマン、相場師、予想屋といった当事者だけでなく、すべての人々にその影響が及び、……将来何が起きるかは全くの運によって左右されるようになり、熟練や努力、創意、決断、勤勉がだんだん評価されなくなる。そうなると社会体制や政治体制への信念や信頼が急速に消えていく。自由な民主社会が最終的に依拠している倫理的価値への尊敬が薄らいでいく」(『カジノ資本主義』、岩波現代文庫)。

 米国は自由な市場と民主主義を売り物に戦争までしてそれを世界に押し売りしようとしてきたが、それによって実は「自由な民主社会」の倫理的基礎を自ら破壊してきたことに気が付かなければならない。“帝国”でもないし、“超”も付かない、単なる“大国”(ではあるが十分に世界最大の経済大国でありうるのだが)として米国へ向かっての軟着陸が成功するかどうかは、まさにこの倫理的・文明論的次元での米国の自覚に懸かっている。

 このことは、イラクやアフガンの戦争の後始末とも深々と関わっていて、なぜなら、フランスの皮肉屋の知識人エマニュエル・トッドが言うように、米国が戦争にのめり込む理由の1つは、全世界から大借金をしまくってあらんかぎりの贅沢を楽しむというこの国のあり方を維持しようとして、二流三流の独裁国を相手にテレビ映りのいい戦争ゲームを仕掛けて世界に“強さ”を見せつけようとするところにあるからだ(『帝国以後』、藤原書店)。

 オバマ政権の不況対策もまた、金融哲学の再建と密接に関わっている。GMやフォードの経営者や労働者や退職者に問われるのは、まさに彼らが「熟練や努力、創意、決断、勤勉」といった価値観を大事にして、額に汗してモノを作ることを通じて世の中の役に立って初めてお客様から応分のものを頂いて自分らの暮らしを立てることが出来るという考えを持ったことがあるのかということであり、それを抜きにして、「ビッグ3が倒れたら関連まで含めて300万人が失業するぞ」などと政府を脅して救済融資を引き出すことではないはずだ。しかもビッグ3の破綻の原因の一部は、経営者がモノづくりよりも金融資産の運用や自動車ローンのサブプライム化=証券化で儲けることに血道をあげたことによるもので、こんなことを米国民がいつまでも許しておくわけがない。

 米国式金融資本主義がダメになったとしても、金融がダメになった訳ではなく、もちろんそうなっては困る。となると、金融はどこまで戻るのかという議論になっていく。金融機関がマネーそのものを商品化してカネがカネを生む自己増殖に邁進するという銀行の体質に対して規制が加えられるのは当然だが、より基本的には、BISによる自己資本比率の規制、時価会計制度の導入などによって、余計に金融機関が実体経済とかけ離れて、「晴れたら傘を貸し、雨が降ると傘を奪う」と言われるように、不況時にこそ実体経済を支える企業活動や消費者行動を助け、好況時にゆっくり返済して貰うような具合に、長い目でお客様と付き合っていくという金融本来の役目を果たさなくなるという制度上の問題も検討の課題となるだろう。ビッグ3の問題も、なぜ金融機関から支援が得られずに政府の救済を受けなければならないのかを世間に説明しなければならないはずで、それには自動車メーカー側の問題と金融機関の問題とがあるに違いない。そこを明らかにせずに単に救済しても果てしのないことである。

 こうして、米国民のみならず全世界に希望を与えたオバマの当選ではあったが、いざ現実にホワイトハウスに入ってみれば、そこで待っているのはほとんど呪われた出発でしかない。その心配を払拭するような歴史に残る名演説でオバマは就任を飾ることが出来るのかどうか。2009年のまず最初の注目点がそこである。

2008年12月25日

総理大臣の“ご乱心”に渡辺元行革相が造反!

麻生首相が衆院解散に踏み切れず、政局ばかりが目立った臨時国会が今日閉幕する。

与野党ともに今国会は麻生首相の「解散やろうかな発言」に終始振り回された。
百年に一度の経済危機と言われているにもかかわらず、既定路線となっていた衆院解散は最後まで行われなかったため、与野党は中盤から全面対決モードになってしまった。

24日午後の衆院本会議では、野党が提出した衆院解散要求決議案に元行革大臣である渡辺喜美氏がついに賛成にまわり、党執行部に堂々と反旗を翻した。

ところが、政局を引き起こした張本人である麻生首相自身はこの異常事態を収拾する気はさらさらないようだ。

24日午前に開かれた09年度予算案に関する記者会見では、野党が第二次補正予算案と分離して審議することを求めている定額給付金について「定額給付金の分離ですか。いま、その考えはありません(朝日新聞)」と否定。この発言により、1月5日に召集予定の通常国会で民主党が反発することは確実。年明け早々、国会が大荒れの展開となることは必至だ。
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二木啓孝氏(ジャーナリスト)
「衆議院の本予算審議が開けない状態が続くことも」(12/25)

自民党のいろんな人に話を聞いても、来年1月の通常国会の絵がかけないと言う。

一つは第二次補正予算。開会して衆議院から参議院にまわし、衆議院で来年度本予算をやるとしても、予算には総理と担当大臣が出席しないといけないので、衆議院と参議院で(二つの予算を)同時にやった場合、どちらかの大臣が常に欠けることになる。逆に言えば、野党側が参議院の第二次補正の審議で総理か財務大臣の出席を要請すれば、衆議院の本予算は開けない状態が続く。

さらに、本予算の方の衆議院で、民主党側が定額給付2兆円の目的変更を求める修正案を出す。つまり、給付金を国民にバラ撒くのではなくて、たとえば子どもの医療費を無料にするとか、小中学校の耐震補強工事に回すという提案をする。すでに麻生内閣ではそれぞれ校舎の耐震補強の予算をつけているが、「耐震工事の費用はこれで足りるのか」という議論になると、ここも立ち往生になる可能性がある。

さらに、今年の4月におきたように、たとえ本予算が通っても、予算関連法案・日切れ法案は参議院でストップさせることができるため、年度内成立はまず無理。関連法案が通らないと予算執行ができないので、暫定を組みながら、さらに予算執行が延びる。今年の4月にガソリンが25円下がったような事態が生じる。

そうなると、3月にこのゴールのない予算審議について、麻生首相が立ち往生してしまい、ここで「立ち往生解散」がおきる可能性がある。さらに、予算が決まっても関連法案が上げられなければ執行できなくなるので、最終的には関連法案をあげるかわりに、解散をするという与野党の「話し合い解散」の可能性もある。

もう一つは造反組。現在与党は衆議院の3分の2を閉めているが、17人の造反が出れば3分の2条項が使えない。そのため、麻生の弱体化を見越した形で17人が造反をし、今後の政界再編のキャスティングボートを握る可能性がある。

そこで思い起こされるのが、93年宮沢政権のときに野党の内閣不信任案に同調した小沢一郎だ。宮沢内閣の不信任案に同調して以降の政界再編は、すべて小沢が主導した。つまり、自民党から飛び出す、あるいは自民党に反旗を翻したものが主導権をとるとなれば、麻生の弱体化を見越した形で、政界再編の主導権をとるグループが17人以上集まり、動き始める可能性がある。

つまり、どこにも解散の地雷が埋まっている。それが来年の国会の風景である。
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futatsuki_photo.jpg【プロフィール】 二木啓孝(ふたつき・ひろたか)
1949年鹿児島県生まれ。明治大学在学中から出版社勤務。79年、小学館「週刊ポスト」専属記者。83年、「日刊現代」入社し、編集局に配属。95年、日刊ゲンダイニュース編集部長に。政治、企業事件、宗教問題をテーマに取材・執筆。2007年、「日刊現代」を退社。フリーに。現在は日本BS放送取締役もつとめる。

2008年12月23日

ひまつぶし国会 最後は雇用問題で激突演出

麻生首相による民主党への逆質問という異例の所信表明で幕を開けた臨時国会が25日に閉幕する。

だが、今国会は当初から「解散ありき」で予定が組まれていたため、百年に一度といわれる経済危機にもかかわらず、法案審議は低調に終わった。日経新聞によると、今国会で政府が新規に提出した法案は15本で例年並だったものの、解散時期が不透明ななか与党の段取りが遅れ、また解散延期によって野党が対決姿勢に転じたため、法案の成立本数は10本、成立率は過去10年で最低の67%となった。

こういった事情を察してか、民主党は国会が終盤にさしかかったところで雇用対策関連法案を提出し、19日に参議院で強行採決を行った。だが、参議院で強硬採決をしてしまえば衆議院で多数を占める自民・公明の両党が賛成に転じる可能性は低く、同法案は24日以降に衆議院で否決され、廃案となる見通し。
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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「“政争の具”と言われてもしょうがない」(12/23)


国会の会期がいよいよ25日で切れる。本来であれば第二次補正予算を審議しているはずだったが、麻生総理と小沢民主党代表による党首討論でもあったように、解散もしない、それでは経済対策を優先してやるのかと思ったら、補正予算も麻生総理は先延ばしした。それではまた元の考え方に戻って解散したらどうかという小沢さんの追及があったことは記憶に新しい。

今国会は、テロ特措法や金融機能強化法といった時間を急がなければならない法案を上げた後は、実質はやることが何も無い空白となった。そこで、野党は雇用が深刻な状況になってきたことから雇用関連4法案を提出し、参院厚労委では審議をほとんどせず、強行採決を行った。

“審議抜き強行採決”はこれまで自民党の手法だったが、それを突然野党がやりだし、今度は自民党が民主党に対して「横暴だ」と怒る状況になっていて、攻守が完全に逆転してしまった格好だ。

なぜこんなことがおきたのかというと、国会に空白ができたからだ。国民から「国会は何もやっていないじゃないか」と言われるのが嫌で、野党は法案を出した。では、これが国会を通過できるのかと言えば、通らないことは明らか。そもそも審議もきちんとしないようなやり方でいいのか。

自民党側から言わせれば、今回野党が提出した内容はすでに第一次補正予算に入っているものがたくさんある。さらに、第二次補正予算案に自民党のプロジェクトチームが盛り込むものまで野党が雇用関連4法案に盛り込んでいて、「やっているぞ~」と格好つけただけと言われてもしょうがない。となると、自民党としては「ふざけるな、そんなものは認められない、それ以前の対策も細かく手を打っているから第二次補正と一緒に全部やれば十分雇用対策になるじゃないか」と言って拒否する。

これに関連し、先週の毎日新聞一面では自民と民主の対決を見出しに関連させ「雇用を政争の具に」といった趣旨の記事を掲載した。普段はニュースの事実だけを伝えるのが見出しの常識だが、「与野党ともふざけるな、政争の具にするな」といった主張を入れるのは珍しい。

結論としては、政治空白を作ってしまったために、お互いにアリバイ証明をやっているだけ。与野党共にそう言われてもしょうがない。

2008年12月22日

ホリエモンがTHE JOURNALに登場!

12月某日、堀江貴文氏と高野孟(THE JOURNAL主幹)による対談が行われました。

対談では「メディアに出るようになった理由」「麻生政権」「秋葉原事件」などなど、縦横無尽に今の日本を語ります。お見逃しなく!

※配信は全5回です。

堀江貴文×高野孟《THE JOURNAL》対談(08年12月収録) 1/5

堀江貴文×高野孟《THE JOURNAL》対談(08年12月収録) 2/5

堀江貴文×高野孟《THE JOURNAL》対談(08年12月収録) 3/5

堀江貴文×高野孟《THE JOURNAL》対談(08年12月収録) 4/5

堀江貴文×高野孟《THE JOURNAL》対談(08年12月収録) 5/5

2008年12月20日

ソマリア海賊を軍艦で制圧することが出来るのか? ――国家再建と地域航行安全体制への支援が先決

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【コメント】
■水島朝穂氏(早稲田大学法学学術院教授)「米国は空爆を含む軍事作戦を狙っている」

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takanoron.png ソマリア沖の海賊による商船やタンカーの襲撃、その船舶と船員を人質に取った身代金要求の被害が深刻化する中で、国際社会共同の海上・陸上の軍事作戦によってこれを一気に制圧しようとする機運が高まっており、それに呼応して日本でも、海上自衛隊の艦船を派遣・参加させる方向で自民・民主両党の合意が形作られようとしている。しかし、この海域で海賊が跋扈する根本原因は、20年以上も続く内戦を通じてソマリアが国家も経済も崩壊状態に陥り、その下で仕事を失った漁民が止むに止まれず身代金稼業に転身したことにあるのであって、結果としての海賊行為を軍事力によって物理的に制圧しようとするだけでは、モグラ叩きのようになって何の解決にもならないのではないか。

●世界最大の海賊スポットとして急浮上

 世界の海賊出没の2大スポットは、マラッカ海峡を中心とする東南アジアとソマリア沖をはじめアフリカ大陸周辺で、近年の傾向として、東南アジアがASEAN諸国の対策が効を奏して減少し、その分アフリカ大陸が増加している。国際海事局のデータによると(外務省HP=海賊問題の現状と我が国の取組)、発生件数とその割合は次の通り。世界全体の件数に付した〈〉内は日本船被害件数。

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 04年には東南アジアが世界全体の半分近くを占めていたのが07年には2割まで減り、アフリカ大陸周辺が逆に2割程度から5~6割程度に増え、その約半分がソマリア沖ということになる。ちなみに、アフリカ大陸ではナイジェリア沖がソマリア沖と同じくらい件数が多く、またタンザニア沖にも出る。ナイジェリアに軍艦を出そうかという話が起こらないのはどうしたわけなのか。

 ソマリアが世界最大の海賊スポットになった背景の第1は、同国の国家崩壊と経済壊滅である。

 ソマリアは、日本の約2倍の面積の国土に約800万人のソマリ人がバナナを中心とする農業と遊牧を糧にのんびりと暮らしてきたブラック・イスラム国である。1000年にもわたって6大氏族が共存しつつイスラム法に基づいて秩序を保ち、統一国家が形成されたことはなかった。が、約100年前に北部を英国が、南部をイタリアが侵略・支配し、1960年にそれぞれが英伊から独立した後、南北統合して無理矢理に「ソマリア共和国」を創建しようとして失敗したことが、長きにわたる内戦の遠因を作った。

 ソマリア共和国では、氏族や準氏族が60以上もの政党を結成してドロドロの政争を繰り返して政治的混乱が続き、それに乗じて69年に旧ソ連の支援を得たバーレ将軍がクーデターで政権を奪取、社会主義国家の建設をめざして強力な軍事独裁体制を敷いた。それなりのつかの間の安定が生まれたが、77年にバーレ政権が「大ソマリア主義」を掲げてエチオピアのオガデン地方に軍事侵攻、これをめぐってエチオピアの社会主義政権との関係を重視する旧ソ連と対立したため、バーレは一夜にして社会主義を放棄し、米国の軍事援助を受け入れた。バーレが自らの属するダロッド氏族による支配を目論見て他の氏族を抑圧したため、旧ソ連はじめエチオピア、リビアなどは他の氏族の武装抵抗を支援し、80年代を通じて入り乱れての内戦が広がった。

 91年にバーレ政権が崩壊するとますます無政府状態が酷くなり、北部の旧英領ではソマリ国民運動が「ソマリランド共和国」として分離・独立を宣言した。00年にエチオピアはじめ他の周辺諸国の支援で「暫定連邦政府」が作られたが、06年それに反発するイスラム原理主義に立つ聖職者たちの「イスラム法廷会議」が一時、首都モガデシュを制圧、それをまたエチオピアの後ろ盾を得た暫定政府軍が奪回、07年1月までに南部を一応平定したことになってはいるものの、氏族単位の武装集団による抵抗は鎮まらず、また北部ソマリランドの分離・独立問題は未解決のままである。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、現在、国内避難民37万人が重大な人道的懸念の対象となっているほか、国外難民は43万人を数え、少なくとも25万人がケニアやイエメン、ジブチ、エチオピアなどの近隣諸国で暮らしている。

 このように、古くは英伊の植民地支配、冷戦時代を通じては米ソの利害対立によってズタズタにされた挙げ句に放り出された格好になっているのがソマリアで(アフガニスタンとイラクの将来を暗示!)、もはや打つ手がないような状況の中で、1隻当たり1~数億円の身代金を要求し今年だけでも20~30 億円が転がり込んだと推計される海賊ビジネスがほとんど唯一の「地場産業」(『選択』11月号の表現)となっているのである。

●海賊の実態は仕事を失った漁師

 もう1つの背景は、91年の政府崩壊に伴って、ソマリアの3300キロもあるアフリカ諸国で最長の海岸線とその沖の200カイリ経済水域を守衛する沿岸警備隊が消滅し、またそれをいいことに沿岸を支配する軍閥などが“漁業権”を外国漁業会社に切り売りしたり、国際的な闇船団が勝手に漁場に入り込んだりしたために、マグロやエビをはじめ水産資源の豊富な漁場であるソマリア沖海域が外国の大型漁船団による乱獲に晒され、その結果、地元の零細漁民や漁業会社が収入源を失ったという事情がある。また、欧州諸国などによる違法な廃棄物の投棄も問題になっており、国連環境計画(UNEP)スポークスマンによると「欧州国内で1トンの廃棄物を処理するのに 1000ドルかかるのに対して、アフリカの角に投棄すれば2.5ドルで済む」とされる。化学物質や放射性廃棄物が投棄されている疑いも指摘されている。

 ここ数年で急増した海賊は、漁業会社が手持ちの漁船と船員を使いって転業したケースがほとんどで、失業した元沿岸警備隊員を雇ってリーダーに仕立て上げているケースもある。各漁港を本拠に数グループ約300人がこれに携わっているという。陸上には、かつて米ソが競って提供した自動小銃やロケット砲が溢れかえっていて安く入手出来るし、最近は奪った金を元にGPS機器を備えた高速モーターボートを購入して高速・俊敏に行動するグループも出現しつつあるという。

 驚くべきことに、有力なグループの中には衛星電話を窓口に外国メディアの取材に応じる“広報担当者”を置いているところもある。11月15日付朝日新聞がインタビューを掲載したスグレ・アリと名乗る広報担当者はその1人で、T72型戦車33台など武器を満載したウクライナ船を20人の船員ごと乗っ取って中部の漁港ホビョで拘束し続けているグループの所属である。「どういう集団なのか?」と問われてアリはこう語っている。

「みんな漁師だった。政府が機能しなくなり、外国漁船が魚を取り尽くした。ごみも捨てる。我々も仕事を失ったので、昨年から海軍の代わりを始めた。海賊ではない。アフリカ一豊かなソマリアの海を守り、問題のある船を逮捕して罰金を取っている。ソマリア有志海兵隊(SVM)という名前もある」

 海賊行為を働いているのは外国船団であり自分らはそれに対する自警団であるとする彼の主張を、盗人の開き直りと切り捨てるのは恐らく大きな間違いで、むしろここに、ソマリアの内戦終結と政府再建、無政府状態につけ込んだ先進国を含む外国の船団の乱獲や違法投棄の中止、現地漁民らの生活条件の確保こそが根本的解決であることが示唆されている。

●軍艦では海賊はなくならない

 国連安保理は繰り返し、ソマリア沖の海賊横行への懸念を表明し、その取り締まりのために各国が「あらゆる措置」をとるよう決議している。そのように安保理を促しているのは主として米国とフランスで、両国はその「あらゆる措置」とは即ち軍艦の派遣であるという立場を採っていて、NATOを動かして大規模な海上軍事作戦に打って出る準備を急いでいる。ロシアもすでに軍艦を派遣し、また12月18日付NYタイムズによると中国の国営メディアも同国が近くこの海域に軍艦を送り出す方針であると伝えている。ロシアや中国の意図は、一応国連の旗の下に行われるこのような国際行動に象徴的なプレゼンスを示すことで中東地域に重大な関心を抱いていることを印象づけることにあるのだろう。

 特に米国が軍事作戦に熱心なのは、06年に一時ソマリアを支配したイスラム原理主義勢力が海賊を操っていて、海賊を装ったテロリスト集団がタンカーを沈めるなどして年間2万隻が通過するこの最重要の海路を遮断する「海の9・11」を狙っているのではないかと想定しているからである。しかし、それはあくまで推測にすぎず、現にイスラム原理主義が首都を支配して一時的に治安が回復した06年にはむしろ海賊は減っている。前出のアリ広報担当も「イスラム系武装勢力の資金源との指摘があるが」という問いに対して、

「関係ない。金は船の維持や、武器購入、仲間の給料に使っている。国を守って給料を貰えるこの仕事に誇りを持っている」

 と答えている。実際、海賊たちはこれまでのところ、船員を殺すような真似は一切していないし、乗っ取った船と共に交流した船員はむしろ大事な人質として厚遇しており、食事は専用のレストランで提供し、時には一緒にトランプをして遊ぶなど「人間として接している」(アリ)という。もちろん、海賊にテロリストが紛れ込む可能性が絶無とは誰も言い切れないとしても、海賊を直ちにテロリストと同一視して軍事的に壊滅しようとするのは過剰な対応になりかねない。

 もっと言えば、本誌が繰り返し主張しているように、テロは(どんなに被害が甚大でも)基本的に犯罪であり、それを軍事力で、しかも国家間戦争の形で対処しようとしても、テロをなくすことが出来ないばかりか、テロの温床となっていると米国が判断したアフガニスタンもイラクも国家崩壊してどうにもならないことになってしまった。海賊も犯罪であり、それを軍艦でたたきつぶそうとしても原理的に無理で、かえってソマリア問題の根本的な解決を遠ざける危険がある。従って、「海賊に軍艦を」という米国主導で国連をも巻き込んだ国際社会の対応が正しいかどうか、戦略論の次元で極めて疑問である。

 また戦術論の次元でも、幅が平均50キロ、長さ1500キロに及ぶアフリカの角の海路を軍艦を並べて物理的に防護しようとするのは無茶である。通常のフリゲート艦などより僅かながらでも高速で、機動性に富み、この海域を熟知して航海術にも長けた操縦者を乗せた海賊船は、神出鬼没的で、襲われた船から知らせを受けて急行した軍艦が遙か水平線上に姿を現したとたんに逃げ出すであろうから、数十隻程度の軍艦が海域を哨戒したところで防ぐことも捕まえることも難しい。しかも、最初から船を撃沈したり船員を殺したりする意図が明白ではないので、近づいてきたからといっていきなり攻撃して撃沈したりすれば、国際法的に過剰防衛になったり誤認攻撃を犯して無実の漁船に被害を与えたりする危険も大きい。さらに、首尾よく海賊を捕まえた場合も、ソマリアにはそれを裁く法律がなく、また関係国と犯人引き渡し協定も結んでいないので関係国が犯人を本国で裁くことにも疑問が生じる。『選択』の記事によると、現にデンマーク艦が9月に初めて海賊船を拿捕するお手柄を上げたがソマリア政府はそれを裁く国内法がないという理由で犯人を釈放した。またフランス船を乗っ取った海賊を仏特殊部隊が急襲し実行犯を逮捕したが、被告側の弁護人はフランス本国で裁くのは違法と主張しているという。

 たぶん現実的なのは、犯罪には主として警察的手段によって対処する――この場合、海賊という犯罪行為には海上警察もしくは沿岸警備の強化によって対処する――という極めて常識的な原則に立ち返って、なおかつ、地域的な脅威はまずもって域内各国の協力体制を強化することを通じて取り除き、それで手に負えない場合にのみ国連や先進国が乗り出すが、それまでの間、先進国は地域的努力を資金面・技術面から惜しみなく支援することに徹するという(私に言わせればであるが)21世紀型の安保原理に従って、対処すべきである。

 ソマリアの沿岸警備が機能しなくなって以降、アフリカの角の海上警備は専ら対岸のイエメン沿岸警備隊が担当している。同隊は総勢2300人で、今年9月にはオーストラリアから調達した16隻の高速艇にそれぞれ60名の訓練された海兵を乗せた海賊防止専門の部隊も新たに創設した。しかしそれでカバーできるのは同国の海岸線1200キロのせいぜい3分の1が精一杯で、イエメン沿岸警備隊のアルマフディ作戦局長が11月に来日して、基地5カ所の増設と高速艇10隻の調達に資金援助を要請した。このイエメンの努力を中核として、さらに東隣のオマーンや紅海に面するサウジアラビアやエジプトも協力して地域的な共同対処の体制を作り上げ、米欧日印中ASEANなどアデン湾の安全航行に利害が懸かっている諸国が資金や技術、人員訓練などで全面的にバックアップするという仕組みを作るべきではないか。特にエジプトは、アデン湾の不安のためにスエズ運河の航行量が減って経済的に打撃を受けており、地域協力を推進することに大きなメリットがあるはずだ。

 アルマフディ局長は朝日新聞11月15日付朝日新聞で、日本が検討している海自艦艇の派遣について、

「高い効果は期待できず、必要ない。むしろ我々の警備活動強化に支援をしてほしい。……日本から自衛艦を派遣すれば費用がかかるはず。現場をよく知る我々が高性能の警備艇で取り締まった方が効果が上がる」

 と語っている。その通りである。

●馬鹿げている自衛艦派遣

 このように、問題の本質と現実的に有効な対策を自分の頭で考えることなく、「米国から言われたから」「国連もやれと言っているから」と、押っ取り刀でいきなり自衛隊の派遣の是非論に突入していくという短絡的なパターンは、アフガニスタン沖への海自艦派遣やイラク“復興支援”への陸自・空自派遣ですでにお馴染みのものであるけれども、今回は民主党が前のめりになって、11月18日には同党の長島昭久=衆院議員が自民党の中谷元=元防衛庁長官と一緒に麻生太郎首相を官邸に訪ね、海自艦のソマリア沖派遣促進を申し入れたりしていて、なおさら国を挙げて馬鹿げた間違いを犯す危険が高まっている。

 自民党が検討を急いでいるのは、自衛艦が海賊取り締まりのために武器を使用することが憲法が禁じる武力行使に当たらないかという法匪的な問題で、これまでのところ「違憲ではない」という見解に達しているようである。相手が国や国に準じる組織であればそれを攻撃すると「武力行使」となり違憲だが、海賊は私的集団だから攻撃しても武力行使とは言えないが、その場合の攻撃は、内閣法制局によれば、「海上警備行動が発令された場合に、自衛官が警察官職務執行法の範囲内で行う武器使用であれば合憲」なのだそうだ。この議論が法匪的なのは、相手が国家すなわち軍隊でないのに軍艦が出て行くのはいかがなものかというそもそもを論じることなく、出て行って武力をふるった場合に合憲か違憲かという話に流れていく点である。

 民主党はこの罠に嵌れば、せっかくの政権獲得の絶好機を前に国民の信頼を損なうことになろう。同党がこの問題に関してなすべきなのは、繰り返すが、第1に、ソマリアの内戦終結と政府再建、無政府状態につけ込んだ先進国を含む外国の船団の乱獲や違法投棄の中止、現地漁民らの生活条件の緊急確保など、漁民たちが海賊をやらなくて済むような環境をどうしたら作り出すことが出来るかのそもそも論を、国連はじめあらゆる国際舞台を通じて巻き起こすことであり、第2に、イエメンを軸とした紅海・アデン湾岸の海上航行安全確保のための地域協力体制の樹立とそのための率先した資金・技術の提供について積極的な提案を打ち出すことである。日本は、ロシアや中国のように、軍艦派遣によってではなく知恵のある外交でこの地域への存在感を示すのでなければならない。▲
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水島朝穂氏(早稲田大学法学学術院教授 憲法・法政策論)
「米国は空爆を含む軍事作戦を狙っている」(12/20)

 ドイツ連邦議会は19日、ソマリア沖海賊対策で、海軍艦艇の派遣を承認しました。連邦軍協会(軍人組合)のU.キルシュ会長は、このミッションの危険性を警告しています。海賊の装備がよくなっていることと、派遣の長期化も危惧されています。議会の審議のなかでも、軍艦で対応することに対する反対意見もありました。

 そもそも海賊行為は戦争行為ではなく犯罪であり、通常は沿岸警備隊(日本でいう海上保安庁)が逮捕して裁判にかけるものです。海賊がRPG7という対戦車 ロケットを装備しているからといって、軍艦がただちに海賊船を沈めていいということにはならない。また、軍艦に野戦憲兵か連邦警察官を乗せて、海賊を逮捕したとしても、いったいどこで裁判を行えばいいのか。軍艦を派遣すればそれで問題が解決するわけではありません。ドイツではこういったことが議論されています。

 ところが、日本でよく言われるの「ソマリア近海には日本の船も通るから、国際貢献をすべきだ」といった議論です。これは、上から目線の、安易な議論と言わざるをえません。
 この海域で海賊が増えている背景には、過去十数年にわたってソマリアが無政府状態にあったとき、欧米や日本などの漁船がソマリアの領海深く入り込んで魚を乱獲し、あるいはゴミを不法投棄してきたことにあります。その怒りが元沿岸警備員や漁民たち海賊化させているという面も見逃せません。海賊側からすると、世界各国がやってきた不法行為に対する代金請求を暴力的に行っているということかもしれません。もちろん海賊行為は許されませんが、単純に「軍艦で叩けばいい」という議論にはなりません。実際、海賊行為はすでにビジネス化していて、人質が殺害されるようなことはなく、対応も非常に紳士的です。それならば、こちらも高等戦略でもって対応すべきです。

 一方、アメリカは16日に安保理決議1851を強引に採択させました。この決議により、ソマリア暫定政府の合意があればソマリア領土・領空内での軍事作戦が可能になりました。報道によると、この決議の前にCIAが「海賊とアルカイダとつながっている」という情報を流し、それが1851の決議につながったとされています。

 注意しなければならないのは、アメリカは湾岸戦争を始めたとき、安保理決議678(1990年11月採択)にあった「必要なあらゆる手段」を拡大解釈しました。決議はイラクに対する経済制裁の実効性を強めることをだけで、バグダッド空爆まで認めたものではありませんでした。今回の決議1851にも「ソマリアにおける適切な手段」というのがあり、領空まで含むという米国の解釈には疑問も出されています。いずれにせよ、安保理決議1851により、米国は空爆を含む軍事作戦を狙っています。これは大きな問題です。

 こういったことに対して日本はどのように対応するか。ドイツでは地上攻撃には参加しないことをすでに決定していて、海賊対策を名目にして「テロとの戦い」を拡大しようとするアメリカと一線を画しています。

 日本は海上保安庁を軸に、周辺諸国の沿岸警備隊に協力することなどを行うとともに、ソマリア近海での乱獲や不法投棄の問題を解決し、ソマリアの復興や政府の安定化に協力するような支援をすべきでしょう。海賊対策の名目ならば、護衛艦を本格的に派遣できるとばかり、洋上給油の欲求不満をはらすかのような悪のりはやめるべきです。

オバマ政権になったとしても、海賊問題でアメリカは日本に協力を求めてくるでしょう。そのとき、アメリカによる権益拡大の動きに日本が乗ってしまえば、ますますアラブ社会から日本は非難を浴びることになるのではないでしょうか。
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【関連記事】
■ソマリア沖の海賊と自衛隊(水島朝穂氏オフィシャルオフィシャルページコラム)12/8

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2008年12月19日

ゼロ金利政策は意味があるのか?

日銀は19日、政策委員会・金融政策決定会合を開き、政策金利である短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を現行の0.3%から0.2%引き下げ、0.1%にすることを決めた。

アメリカでは、すでに16日に連邦連邦準備制度理事会(FRB)が主要な政策金利であるFF(フェデラルファンド)の誘導目標をアメリカ史上最低の0~0.25%に引き下げており、日銀に対する利下げ圧力が高まっていた。

また、日銀は追加の金融緩和策として、長期国債の買い入れの増額やCP(コマーシャルペーパー)の買い取りも決めた。CPとは、信用力のある大企業が短期資金を調達する社債のようなもので、景気が悪化したことで発行が難しくなっている。そのため、大企業の資金調達が銀行融資にシフトし、中小企業まで銀行融資が届きにくい状態になっていた。

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水野和夫氏(三菱UFJ証券 チーフエコノミスト)
「ゼロ金利も対症療法でしかない」(12/19)

ゼロ金利で景気が回復することはないでしょう。オバマ次期米大統領の7000億~1兆ドルをかける景気対策も、落ち込むスピードをやわらげることはできますが、それ以上は財政金融政策では無理だと思います。

経済がバブルになって過剰債務ができた以上、財政金融政策で不良債権の解消ができることはなく、ゼロ金利政策も対症療法でしかありません。

アメリカには現在、約4兆ドルの過剰債務があります。
昔であれば、インフレと一緒に賃金が上がったので債務の解消ができました。しかし、現代でそれをやるのは難しいとなると、4兆ドルの過剰債務は国が面倒をみることになります。では、4兆ドルの財源をどこから持ってくるのか。方法としては国債を発行するか、あるいは増税しかない。ですが、不良債権をいったんは国が引き受けたとしても、結果的には増税で返すことになります。97年に橋本内閣が増税をしたように、結局は増税しないと財政がもたなくなるからです。

日銀が金利引き下げやCP買い取りを実施したのも、これはお付き合いのようなもの。グローバル化の中心国であるアメリカが利下げをすると、周辺国も付き合わざるをえない状況です。

結論としては、資本主義や株式会社の基本である複式簿記において、バブルで過大な債務をつくってしまえば、それを消すマジックはありません。あとは対症療法によって、過剰な債務を一生懸命返すしかないでしょう。
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政府系金融機関関係者
「国民の金がまわりまわってCPの買い取りに使われる」(12/19)

日銀が利下げに踏み切ったのは、アメリカが利下げを決めた以上、各国が足並みをそろえる必要があったからだと思います。また、これ以上の円高を回避する狙いもあったでしょう。

とはいうものの、これまで日銀の金利誘導目標は0.3%だったにもかかわらず、マーケットではすでに0.1~0.2%程度で動いていました。ここで日銀が0.1%に金利目標を設定したところで、市場に与える影響はゼロに近い。あるとすれば、日銀が金利を0.3%に上げるようなオペレーションを行う必要がなくなったことだけでしょうね。

日銀は同時にCPの買い取りを公表しましたが、すでに政策投資銀行もCPの買い取りを表明しています。政策投資銀行は100%政府の持株会社で財務省の支配下にありますので、これは政府の意思と考えていい。

政策投資銀行がCPに投入する資金は、財務省から渡ってくる補正予算と特別会計の財政投融資です。そもそも財政投融資は郵便局(現ゆうちょ銀行)や国の出先機関のお金が資金ですので、結局は国民のお金が回りまわってCPの買い取りに使われます。

政策投資銀行としてはCP買い取りによるリスクに耐える体力がまだ残っていると判断したのでしょう。ただ、結果としては民間の金融機関がデフォルトのリスクを怖れてCPを買えないため、政府系の金融機関が国民の資金を使ってリスクがあるCPを買うということです。

2008年12月18日

THE JOURNALとInfoseek楽天が新しいニュース媒体を創設 ――ブログ・ジャーナリズムの実験、新展開へ

takanoron.png  本誌が中心となって運営するブログによるニュースサイト《THE JOURNAL》は今年9月の創刊以来、急速にアクセス数・読者数を伸ばしてきたが、その3カ月間の実績を背景に、このほど楽天のポータルサイト《Infoseek楽天》のニュース部門と提携し、Infoseek上で「THE JOURNAL×Infoseekニュース/内憂外患~これでいいのかニッポン」と題した新媒体を立ち上げることになった。12月18日に正式にプレス発表が行われる。

 THE JOURNALは今後とも、独立したブログサイトとしてコンテンツの充実を図りつつ、主にネット広告とサポーター企業募集によって運営を進めていくが、同時にInfoseekに対してコンテンツを独占的に供給し、THE JOURNAL記事の中から選択された記事の転用、Infoseek向けに独自に編集された記事の提供、Infoseekと共同で制作するネットテレビ特番の放映などを手がけていく。

 日本初の本格的なブログ・ジャーナリズムの実験であることを自負してはいるものの未だ広がりという点では初歩的な成果しか収めていないTHE JOURNALは、大手ポータルサイト「Infosek楽天」内において、月間総ページビュー1億超、月間利用者約300万人を誇る(注)「Infoseek ニュース」という新しい舞台を得ることで、飛躍的な展開に入ることになる。

(注)「Infoseekニュース」のみの数字。Infoseek楽天独自調査

●INSIDER~東京万華鏡~ざ・こもんず~THE JOURNALの歩み

 INSIDERは1975年に故・山川暁夫を編集長に、私=高野孟を唯一の補佐に、しかし多くのジャーナリスト仲間の支援を得て、東京・赤坂の4畳半のアパートで創刊された、当時としては先駆的な超硬派のニュースレターで、途中山川が引退、高野が引き継いで80年に(株)インサイダーを設立して、2000年末まで弛むことなく月2回1日と15日に郵送でお届けする紙媒体として刊行を続けた。21世紀に入ってからは、Eメールによる不定期配信に形を変えたが、マスメディアが撒き散らす情報(インフォメーション)の洪水の中で、それらの真偽を判定し、日本と世界の行く末を考える上で大事な情報(インテリジェンス)を選び抜いて提供する数少ない独立メディアとしての信条は、変わることなく今日まで続いている。

 紙版のニュースレターは、創刊当時としては、資金も大組織の支援もない個人や小集団が誰にも煩わされることなく自由に主張を展開できる唯一の表現形態だった。しかし、手書きで原稿を書いて、写植で打ってレイアウトして、紙に印刷して、折り畳んで封筒に入れて、郵便局に運んで……というアナログ作業の負担は大変なもので、いずれネットによる電子的民主主義の時代が到来してそこから開放される時が訪れると確信していた我々は、80年代半ばに「パソコン通信」が始まるとすぐに、その先駆者だったアスキーネットの西和彦社長(当時)と語らって同ネット上にINSIDERのコンテンツを提供する実験を開始した。が、当時のパソ通にアクセスするのはパソコンオタクばかりで、我々のコンテンツは大きな支持を得られることなく数年で撤退した。その頃私は、モデムを通じて電話線で米国のCompuServeにアクセスしてニュースを検索していた数少ない日本人ユーザーの1人で、ある時、西社長に「米国では“検索”が1つの文化になっている。これからネットが発展すると必ず検索が勝負になる時が来るから、今から研究しておいたほうがいいよ」と言い、彼は「そうか」と言ってメモをしていた。その時はまさかGoegleのような検索のお化けが登場するとは想像もしていなかったが、見通しては基本的に正しかった。

 1990年に米国でインターネットが解禁され、さっそく私は、Mosaicと呼ばれた初期のブラウザーを入手して、ベンチャー企業として独立する前、未だスタンフォード大学の研究室にあったYahooにアクセスしたり、米国のネット企業を取材したりして、インターネットが世界を変えるという確信を持った。94年に日本でもようやくインターネットが開放されると、すぐにNHK会長を辞めてブラブラしていた故・島桂次、ネット世界の伝道者の伊藤穣一らと共に(株)島メディアネットワーク(後に(株)ウェブキャスター)を設立して、日英両文による日本初の硬派ネット週刊誌「東京万華鏡」を設立した。私がコンテンツを担当し、島が営業を担当して(と言ってもNHKの元ワンマン会長が営業なんか出来るわけがなく、NHK時代から知り合いの大企業経営者のところに乗り込んで「おい、金を出せ」と強盗みたいなことを言っていた)たぶん日本初のバナー広告による経営を成り立たせ、伊藤が技術面を担当した。94年末に立ち上げて、年が明けてすぐに阪神淡路大震災が起き、さらに続いてオウム真理教の地下鉄サリン事件も起きて、「東京万華鏡」はその精力的な報道で一躍世界的に有名なサイトとなった。が、3年後に島が病で急逝し、その後このサイトは自然消滅的に衰退し、何人かの書き手による(今で言う)ブログとINSIDERへのリンクで細々と存続した。

 21世紀に入ってアメリカでブログという新しい発信ツールが登場し、それを活用したブログ・ジャーナリズムが始まった。それは登場早々から、テレビ3大ネットの報道番組を批判して著名キャスターを退陣に追い込むなどめざましい成果をあげ、デジタル民主主義の可能性を示唆した。そのことに大いに刺激を受けながら、05年11月にはブログ・ジャーナリズムの実験の最初の試みとして《ざ・こもんず》のサイトを立ち上げた。これはそこそこには話題となったが、著名ジャーナリスト・書き手のブログを編集なしに単に並べただけでは思ったほどのインパクトにならなかったことに加えて、主として中小企業を対象にサポーター企業を募集し月々低額のサポーター料を頂くというビジネスモデルが有効に作動しなかったことから行き詰まりを来たし、そのため本年8月末をもって閉鎖してTHE JOURNALとして再スタートを切ることになった。

 THE JOURNALでは、メインに《News Spiral》と題したデイリーのニュースを配し、従来のざ・こもんずの著名人のブログは《Commons》と題したコーナーに存続しつつなおブロガー数の拡大を目指すという形に転換した。News Spiralでは、編集部が内外のメディアのニュースから重要なものをピックアップし、また時には独自取材によるオリジナル報道を繰り出していきながら、その記事に対してブロガーやその他各界の著名人によるコメントを付けていくという、ニュース&コメントというスタイルを採用し、また読者からの自由な(しかし節度と見識ある)コメントも受け付けることにした。これらの全体が新しいブログ・ジャーナリズムの実験である。また、営業面では、(株)CKDコンサルティングと提携し、THE JOURNALを(株)インサイダーと同社との共同事業として運営することになった。今回のInfoseek楽天との提携も、CKDコンサルティングによる営業活動の最初の大きな成果である。

●Huffington Postが面白い

 さて米国では今ブログ・ジャーナリズムが真っ盛りと言っていい。とりわけオバマ勝利との関連で注目を集めているのはHuffington Post(ハフィントン・ポスト=略称HuffPost)である。

 米ニュースサイトの08年10月度のユニークユーザー数(注)ランキングで対前年同月比448%という他の10倍以上の伸び率を示し810万人で堂々18位に入ったこのサイトは、4年半前にアリアナ・ハフィントンというギリシャ生まれの女性ジャーナリストが友人から集めた250万ドルの資金で始めたもので、その中心は、大手ばかりでなく地方や特殊な専門分野で働くジャーナリストや学者、ユーモア作家、ベンチャー経営者、ビジネスマン、NPOなど数百人の有名・無名の人々のブログで、現在のリストを見るとその数は235人に及んでいる(www.huffingtonpost.com/theblog/index/を参照)。中には例えば、アバスPLO議長やヨルダンのフセイン国王などもいて、それぞれ過去に1回か数回寄稿しただけだが、そういう人も含めて強力なラインアップで、それが人名別、分野別、アクセス・ランキング順などで自由に検索・閲覧できるようになっている。

(注・ユニークユーザーはサイトの人気度を測る手法の1つで、同じ人が一定期間に繰り返しアクセスしても1人と数えるので、より正確な人気度が分かるということになっている。)

 スタンスは(そこが米国らしいところだが)あからさまに民主党寄りで、例えば今アクセス・ランキングのトップに座っているのは、かつてオバマの上院議員選挙のキャンペーン・マネージャーだった政治コンサルタントのスティーブ・ヒルデブランドの「オバマへの左からの批判に答える」というブログで、14日現在14万2752ページビューと2190人からのコメントが付いている。2番目はヴィッキー・ワードのペイリン前共和党副大統領候補に同党が支払った16万5000ドルのスタイリスト料の内訳についてのNYタイムズ報道への皮肉たっぷりのコメントで、12万5140ページビューと190のコメントが付いている。

 HuffPostはどんどんコンテンツを拡大していて、その全体を紹介する暇はないが、「BIG NEWS PAGES」と題して大手メディアの注目ページを紹介するだけでなく、独自の調査報道によるオリジナル記事を重視し、またローカル報道とのリンクにも力を入れ始めている様子が窺える。ジャンルも、政治がメインであることに変わりはないが、メディア、ビジネス、娯楽、生活、スタイル、グリーン(環境)、国際などの分野を開発しつつある。

 もう1つ最近注目のサイトはNewserで、これは老舗ファッション・文化雑誌Vanity Fairの元編集者マイケル・ウォルフ、元NYマガジン編集長キャロライン・ミラーらが創立したもので、大手始め内外の数百のメディアをウォッチして編集部独特の感覚でピックアップし、それらをタイトルもしくは画像と「2パラグラフ、120語前後」に要約して伝える
という形を中心にしている(これもHuffPostも版権問題をどうクリアしているのか知りたいところである:誰か知りませんかね?)。このスローガンは「Read less, know more(もっと少なく読んで、もっと多く知ろう)」である。

 これらのサイトに共通しているのは、個性ある編集者が独自の視点でメディアのニュースを野次馬新聞的に選択し2次加工し、またそれに深みを与える手段としてブログの形を活用していることである。

 翻って日本のネット・ニュースの現状を見れば、YahooはじめInfoseekも含めて、どのニュースサイトも、大手新聞社・通信社などの配信記事を要約して伝えるだけに止まっていて、その選択や要約の仕方にもプロの観点からして問題が残るというだけでなく、そのサイト自体として社説も解説欄も独自取材記事もあるわけではなく、つまりは読者の深いニーズに応えるメディアとはなり得ていない。今読者が必要としているのは、ニュースそのものよりもその読み方、意味づけ、それから発展する主張の展開であり、縮めて言えば、インフォメーションの量ではなくインテリジェンスの質である。

 その意味で、InfoseekニュースとTHE JOURNALの提携は、日本のネットニュースの世界に新しい何事かを引き起こす最初の試みとなるかもしれない。お断りしておくが、我々もInfoseek側も、あわてず騒がず、じっくりとこの共同作業を進めていくつもりでいるので、性急な成果を期待されても困る。それぞれに持てる力を出し合って、ともかく面白いことを始めてしまうことがまず大事である。▲

自動車産業沈没 日産が派遣社員をゼロに

アメリカのBIG3に続き、日本の自動車産業も窮地に立たされている。

日産自動車は17日、国内の派遣社員2000人と期間従業員50人の契約を4月以降くは更新しないことを発表した。朝日新聞によると、相次いで発表された自動車メーカー12社による派遣・期間労働者の削減数は、合計で約1万3000人にのぼる。

一方、ホンダは09年3月期連結決算の業績予想を大幅に下方修正し、下記(08年10月~09年3月)の営業損益は約1900億円の赤字とした。金融危機が世界中で消費マインドを冷え込ませるなか、急激な円高が業績悪化に拍車をかけた。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「経営者の理念の問題」(12/18)

そもそも派遣社員は特別な技術がある人だけに許されていた。ところが、バブルがはじけ、不況になったことから小泉内閣のときにほとんどの業種で派遣社員が働けるよう法改正された。

これが問題だった。当時はたしかに不景気で企業が倒産する可能性があり、給料の高い正社員をリストラして派遣社員を増やしたのはやむをえなかった部分もある。

ただ、景気がよくなれば、企業は派遣社員を正社員化しなければならない。企業側に正社員と派遣社員の両方が存在していることは不健全であり、そういう意識を経営者が持たなければならなかった。

ところが、不況のときに派遣社員を多く雇い、多くの経営者がこの状態が当たり前だと思った。ここが間違っている。健全な状態とは、景気がよくなれば派遣社員を正社員にすることで、経営者自身がこういった意識を持たなければならなかった。この問題は、経営者の理念の問題でもある。

また、テレビの報道にも疑問点がある。テレビは派遣労働者の解雇問題をさかんに報道しているが、実は派遣労働の実態がもっともひどいのはテレビ局だ。

東京のキーステーションだと3500~4000人ほどが働いているが、その中で正社員は1200~1300人ほど。もちろん、正社員の給料は高い。これほど派遣労働者を使っている会社は他にないのではないか。メディアはちゃんと自分の足元をちゃんと見るべきだ。

2008年12月17日

「公明党を切れば大勝する」 自民・選対幹部の発言が波紋

自民党の古賀誠選対委員長の発言が与党内で波紋を呼んでいる。

古賀氏は15日夜、各派閥の事務総長を集めた宴席で、出席者の一人から「宗教団体関係者から公明党を切るべきだと言われた。自民党の支持層が戻る」と指摘されると、「比例の180議席をみすみす公明党に渡していいのか。『小選挙区も自民、比例も自民』だ」と言い切り、“連立解消宣言”ともとれる発言をしたいう。

また、菅義偉選対副委員長も11日夜の麻生太郎首相との会合の席で、「公明党を切れば大勝するという説がある」と伝えたと報じられている。

自民党の選挙を取り仕切る立場である古賀氏と菅氏による公明党批判に、公明党の太田代表は「信頼関係ができあがってきている。協力は成熟段階に来ている」、自民党の細田博之幹事長は「個人の感想を言われたにすぎない。」と火消しに躍起になっている。

公明党は自民党の“生命維持装置”とこれまで散々皮肉を言われ続けてきたが、それでも自民党幹部が公然と公明党批判をすることはなかった。

今回の発言が連立解消への序章となるのか、それとも「定額給付金」「消費税増税反対」「解散時期」の3点セットで自民党を困らせていることへの牽制なのか。政界再編騒動にゆれる永田町に、またもや不安の種が増えた。

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【関連記事】
■自民 「比例は公明」解消も 古賀誠氏が発言 自公に波紋(西日本新聞)
■自公協力見直し示唆 公明が不快感 与党の新たな火種にも(毎日新聞)

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森田実氏(政治ジャーナリスト)
「自民党の曖昧戦略の象徴的な発言」(12/17)

宗教団体との関係性を含んだ問題が発言の原因だと思います。自民党を支持してきた宗教団体が自民党離れの気配を見せ始めている。民主党の保守系の議員に移り始めている。その宗教団体との会議で、「創価学会とだけやって生きていくのか、我々は必要ないのか」と、古賀さんは相当突き上げられたみたいですね。そこで、彼らをなだめる必要があった。それで、ああいう発言をしたということでしょう。発言の背景に戦略や思惑があってというよりも、発言をしなければ宗教団体との会合で会議を閉じることが出来なかったということです。それほど遠大な戦略をもとに、その場を利用して発言したということではないと思います。

実は、すでに半分、民主党に行きかかっている巨大な宗教団体があるんですよ。民主党議員の集まりに行きますと、控え室に巨大宗教団体の大幹部が出席していたり、綱引きが行われている。もし、これで、あくまで創価学会とだけやっていくと自民党が意思表示をすれば、これまでの曖昧な領域から、アウトサイダーになる恐れがある。ようするに自民党の曖昧戦略の象徴的な発言であったと思います。公明党・創価学会との選挙協力をやりながら、それに不満を持っている宗教団体も繋ぎ止めておこうということですね。創価学会は強力な票田を持っていますから、組織力もありますし、貢献度も高いけれども、しかし、これまで選挙運動をやって生き残ってきた、他の何百とある宗教団体が民主党に移ってしまう、あるいは国民新党に行ってしまうとなると、かなり危機的状況に自民党は陥る。その曖昧状態を維持するためには、その人たち向けにああいう発言をしなければいけなかった。自民党はあらゆるところを曖昧にしながら、過去の関係を切断しないように、あっちの穴を埋め、こっちの穴を埋め、右往左往する中で起こったことで、明確な戦略があっての発言ではないと思います。

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田中良紹氏(ジャーナリスト)
「自公の関係が終わった」(12/17)

はっきり言えば、すでに自公でやっていける時代ではなくなっている。もう政界再編の時代。「公明党と一緒にいるのだったら辞める」という議員が出てきてもおかしくない。そういう政界再編のようなことが簡単に想像できる状況ですよね。今度の選挙で自民党は公明党の協力がなければ落選する議員が大勢出てくることは間違いない。にもかかわらず、古賀選対委員長がああいう発言したということは、もう自公という枠組みが持たないことを彼自身も分かっているわけです。自民党が公明党と組んだことで、従来の自民党支持者が無党派になってしまった。それでも、無党派のなかには自民党を完全に見限れない層もいるから、そのときの状況によって自民党に入れたり、民主党に入れたりと、なんとかなっていた。でも、公明党と組んだことで自民支持者が離れていったことは間違いない。根っからの自民党ファンが。これまでは、なんとか過半数を維持することができたけれど、いまでは過半数が維持できないという状況に陥った。だから自民党には、すでに公明党と組むメリットがなくなってきている。

世論やメディアが騒ぐことが分かっているのに発言した背景には、麻生首相で選挙をやるのか、麻生首相理を下ろして選挙を行うのかという彼なりの思惑があるんだと思います。現状のままで選挙をやるとなると自公だけれど、でも、そうすると落選する議員が大勢出てきてしまう。自公で選挙をやらないという意識があったのならば、ああいう発言が出てきてもおかしくはない。公明党を切れば大勝するのかどうかは知らないけども、いってみれば、旧来の自民党支持者が戻るかもしれないという期待はしているんでしょう。

とにもかくにも、騒ぎの中心には定額給付金の問題があります。支持率が下がったのも定額給付金。やめるなら麻生首相を下ろすしかない。一番の問題は麻生首相を抱えているということ。自民党は、もう大連立をするしかない。でなければ民主党を分断させる。福田前首相は大連立の路線でやったけど人気がなかった。じゃあ分断が成功したかというと、分断も成功していない。ところが、麻生首相は喧嘩太郎だから、大連立をやるためには下ろさなければ出来ない。そういう思惑も、発言の背景にはあったのではないか。定額給付金のことやら、大連立のことやらを考えたうえで、「麻生をやめさせて、公明党もやめさせる」というような本音が発言には含まれていたかもしれない。

確かなことは、自公の関係が終わったということ。自公で勝てる状況ではない。

2008年12月16日

イラク国民から靴を投げられ、世界中からさじを投げられたブッシュ

イラクの首都バグダッドを14日に訪問したブッシュ大統領に贈られたのものは、「これがお別れのキスだ、犬野郎!("This is a goodbye kiss, you dog,")」という辛らつな言葉と履きつぶされた靴だった。

このニュースは全世界で大きな反響を呼んでいる。ニュース映像はYouTubeにすぐさまアップされ、50万回に迫るヒット数を記録。そのほか、ブッシュに靴を投げつけるゲームが次々に開発され、ノルウェーでは、靴をヒットさせると「Yes,We Can!」という勝利メッセージが流れるゲームが早くも人気となっている。

「靴のサイズは10(28センチ)だった」などとジョークを言ってこの珍事をかわそうとしたブッシュだが、アメリカのみならず、世界中からさじを投げられた大統領の悲哀はまだまだ続く。
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【関連記事】
■ノルウェー産の靴投げゲーム
■Bush's Boot Camp(飛んでくる靴を撃ち落すゲーム)
■記者から靴を投げつけられたブッシュ(金平茂紀:チェンジングアメリカ) 9/15
■米大統領に靴投げたイラク人記者の「意外な経歴」(産経新聞)
■ブッシュが靴を投げられたニュースの映像(YouTube)

2008年12月15日

Googleは社会の脅威なのか?

今年、ネット上で最も話題を集めたツールといえばgoogleの「ストリートビュー」だろう。ストリートビューとは、都市部を中心に道路上の風景や建物を360度閲覧できるサービスで、通行人の目線から現地の写真を確認することができる。

ウェブ制作会社のツーネクスト(東京都豊島区)では、今年8月から不動産物件データベースにストリートビューを組み込んだASP型不動産物件紹介データベース「ShowSpace 2008」の提供を開始した。利用者がストリートビューを使用して物件周辺の様子を見ることができる。
「ストリートビューを見た瞬間、『これだ!』と思いました。クライアントさんからも好評を得ています」(ツーネクスト広報)

しかし、その便利さの一方で、利用者からはプライバシー侵害や悪用の可能性などに対する戸惑いの声も聞こえてくる。
「自分の家の玄関や洗濯物、子供たちが写っていたらと考えると、怖いというか気持ち悪さを感じる。悪用される可能性は誰にも否定できない。とても不安ですね」(40代主婦・埼玉県主婦)

また、大阪北摂霊園(大阪府豊能郡)では、霊園内の私有地にグーグルの撮影車が無断で入り込み撮影され、グーグルに画像削除を要請した。
「撮影の前に事前にこちら側に何の連絡もありませんでした。すでに問題のある画像は削除されていますが、いまでも霊園の全体の景観がみられて、正直、PRに繋がるかもしれないという思いもあります。ただ、お墓の個人名まで見えるとなれば、やはり問題ですからね。プライバシーの問題もあるようですし、こちらとしても、今後の世論の推移を見て対応していきたい」(大阪北摂霊園・霊園管理室)

いまや世界有数の情報量を持つ組織となったgoogleは、ある意味ではストリートビューのような“不完全なツール”を続々と社会に提供することで成長していて、その便利さの影で生み出される負の影響については、企業としての対策が遅れている。便利さの追求か、セキュリティの強化か。新ツール登場の影で現れてきた問題の根は深い。

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井上トシユキ氏(ITジャーナリスト)
「日本の風土にはそぐわない」(12/15)

確かに、表札の名前が識別できたり、車のナンバープレートが読めたりと、ストリートビューは、いくつかの問題を抱えています。特に、幼い子供を持つ親御さんたちは不安を感じているようですね。

ただ、現状では閲覧できる地域が都心部に限られていて、田舎の裏通りの細部を閲覧することはできません。そのためなのか、国内ではストリートビューにまつわる問題に対して他人事だと考えている人が多いというのが現状でしょう。

また、被差別地域の問題もあります。将来的に国内全域の閲覧が当たり前になったときに、被差別地域の住民などから撮影反対の声が上がった場合、「あそこが写っていないのは被差別地域だから」という認識が使用者の中に生まれかねない。そういう逆のジレンマも抱えています。そういう観点からも、おそらく使用者たちも、一体どうやってクレームをつけるのが最適なのかを見計らっている状況にあるのではないでしょうか。

グーグル側の、「無許可で撮影して問題があれば削除する」というやり方は、ソフトウエアの開発のやり方と同じです。先に製品をリリースして不具合があれば、顧客からクレームが付くことによって改善していくというベータ版開発と同じですね。おそらく、米国では、受け手側が簡単に訴訟を起こすという国民性がありますから、その方法が通用したのでしょうが、日本の風土には、その方法がまったくそぐわないんですよね。

むしろ、グーグルはグーグル撮影車が走っていることが昨年末に話題になった段階で、この地域は○月○日に撮影しますだとか、目的などをきちんと会見するなり、リリースを出すべきだった。しかし実際は事前に何も行わないで、米国で問題になっていないだとか、目に映る風景を撮影しているだけだとか、ある意味、開き直りとも取れる対応しかしなかった。そうすると、ストリートビューに対して、受けて側は、どうしてもネガティブな見方から入ってしまう。そうなると、グーグルマップの情報漏えいの問題もあって、グーグルを使わないユーザーが増える可能性もある。

実際に、日本ではそういう認識になってきています。今回のケースは、あまりにも唐突すぎましたね。そもそも誰がそんなことを頼んだよという話ですよ。
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●井上トシユキ(井上俊幸)
1964年、京都市出身。1989年、同志社大学文学部卒業。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。各種メディアへの寄稿、コメント提供等多数。
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岡村久道氏(弁護士、) http://www.law.co.jp/
「規制を強めると逆に表現の自由が失われる可能性も」(12/16)

ストリートビューの問題は「プライバシー」と「個人情報」の両面で捉えることができます。

個人情報では、顔写真などで特定の個人が識別できるかどうかが問題になります。現在はデータベース形式や名簿形式になっているもの以外は無断で第三者に提供することについての法規制がない状態で、したがって、ストリートビューは個人情報の枠外ということになります。

かといって、個人情報保護法がケシカランということで締め付けがおこると、メディア規制の口実を与えることになります。そもそもこの法律ができるとき、これは不当なメディア規制ではないかということで散々問題になった法律ですので、法規制の枠を広げるのは難しい。では、プライバシー権についてはどうかというと、やはりこちらも個人が特定できて初めてプライバシーになります。となると、やはり個人情報保護と同じように簡単に規制はかけれません。

他方で、ストリートビューがストーカー行為などの犯罪に利用される可能性もあり、個人的には不気味に感じます。ただ、規制を強めると逆に表現の自由が失われる可能性があります。(プライバシー権は)新しい次元に入ってきたといえるのではないでしょうか。

「総選挙前に政界再編」というのは本当か? ――麻生政権断末魔の中で

takanoron.png 麻生政権がいよいよ断末魔の様相を呈する中で、総選挙前にも政界再編があるのではないかという観測が盛んに流れていて、その筋は、田原総一朗がTHE JOURNALへの最新のコメントで整理しているように、(1)YKKK(山崎拓、加藤紘一、菅直人、亀井静香)の接近の動き、(2)中川秀直元幹事長プラス渡辺喜美ら中堅どころの小泉改革の流れを組む人たちの半ば公然たる反麻生運動、それに(3)ナベツネ~中曽根大勲位が構想すると言われる与謝野馨と小沢一郎を組ませる「大連立v.2」の3つである。が、私の見るところ、少なくとも選挙前の再編はありえず、面白がってそれをあれこれ取り沙汰するのは、この総選挙がまずもって、自民党vs民主党が正面切って戦って正々堂々の政権交代を初めて実現すること自体にあるのだという歴史的位置づけを、かえって紛らわせる危険がある。

●民主党は再編を必要としない

 選挙前に政界再編は起きず、選挙後も起きる可能性が少ない最大の理由は、民主党側にそれを必要とする理由が皆無であり、そのことを民主党の議員は恐らく1人残らず認識していると思われるからである。

 14日のサンプロのメイン・コーナーは「YKKK総結集」で、田原から「民主党を飛び出す気はあるのか」と迫られた菅直人は、「いや、自民党に対して政権交代可能な勢力を作るために20年政治家をやってさんざん苦労してきた結果が今ですから」と答えていたが、その思いは同党全体のものだろう。

 麻生内閣は何もしなくても自壊を続けており、総選挙で民主党が単独過半数を制する可能性は日増しに高まっている。このような時は、じっくりと腰を落として真っ直ぐジリッジリッと押すだけの横綱相撲を取ればいいのであって、あえてバタバタと無意味な小技を繰り出す必要はない。民主党は、本来の支持層ばかりでなく、自民党はじめ他党の支持層まで含めて、この際はともかく一度政権交代を実現すべきだと考える多くの人々の票も大量に集めるはずで、そうであればなおさら、民主党はもとより、出来れば自民党も選挙前に分裂騒ぎなど起こさない状態のまま、四つ相撲で勝ち切ることに意味がある。政権奪取目前でわざわざ味方の戦線を掻き乱して勝負の行方を分からなくする馬鹿はいない。

 そうは言っても民主党の中は路線的にバラバラで、自民党の中の人たちと一緒になったほうがいいような連中もいるではないかという見方も根強く存在する。と言うか、それがマスコミに行き渡っている常識で、「民主党」と言えば「中身はバラバラ」という形容句を添えるのが習わしとなっているほどだ。が、これも大きな誤解である。

 この総選挙、そして起こる可能性が高い政権交代の最大の座標軸は、極めてハッキリしていて、民主党と自民党のどちらが明治以来の中央官僚による政治支配を打破して日本の経済社会を国家社会主義的な発展途上国丸出しの体制から解き放つのに役に立つかにある。本誌No.459(9月11日号)で詳しく分析しておいたように、小沢代表の無投票3選が決まった9月9日の会見で語ったことの核心は
次の言葉である。

「私は『革命的改革』という言葉を使っている。明治以来百数十年の官僚機構を変えるという、決死の思いを表現しているつもりだ。
官僚諸君は自分たちが政治・行政すべてをやってきたかのような錯覚とうぬぼれに囚われてきたが、最近は行政官と政治家の役割が違うことを認識してきている。我々が明確なビジョンと政策を示せば、心ある官僚諸君は必ず理解し、共に仕事をしてくれると自信を持っている」

 それを実現する具体的な手段として、代表選公約では、「国民自身が政治を行う仕組み」として、(1)国会審議は国民の代表である国会議員だけで行う、(2)与党議員を100人以上、副大臣、政務官などとして政府の中に入れる、(3)政府を担う議員が政策・法案の立案、作成、決定を主導する、を盛り込んでいた。私の見るところ、この核心部分について、民主党内で異論を唱える者はいないどころか、そこにこそ同党が政権を獲る最大の意義であることで全党が一致している。そうであれば、なおさら選挙前に分裂・再編騒動など起こす必要はない。

 もちろん、安保政策となると、前原誠司元代表のように自民党と近い考え方もないではないが、それとても、私の意見では、主として集団的自衛権の解禁が必要であるかどうかを巡って前原らに理論
的誤解が残っているくらいのことで、大筋では、小沢流の「日米安保条約に基づいて集団的自衛権の名によっていかなる対外軍事行動を行うのも違憲であり、国連もしくは地域の集団安全保障体制の下でそれを行うのは合憲である」という基本原理を右から左までのほとんどは受け入れていて、外で言われるほど大きな対立があるわけではない。それ以外にも、いろいろな政策的色合いの違いはあって
当然だが、重要なのは、この総選挙を戦って政権を獲りに行くその基軸であって、そこでいささかのブレもないのであるとすれば、少なくとも民主党側には再編の誘惑に動く者はいない。

●自民党には分裂の可能性がある

 他方、自民党側には、選挙で敗北した後に分裂が起きる可能性は十分にあり、その震度は負け方の度合いに左右されるだろう。

 自民党がそれほど大敗せず、その先の政局次第では(94年に細川・羽田両政権を潰して政権復帰したように)巻き返しの余地がないではないという場合は、分裂の可能性は少なくなる。大惨敗して民主
党単独政権の実現を許した場合には、麻生の辞任は確実で、ちょうど93年8月の細川政権発足後に野党となった自民党が河野洋平総裁~森喜朗幹事長を選んだのと同様のプロセスが進むが、15年前とは比較にならないほど自民党の構造的劣化が進んでいる今では、そのプロセスは粛々としたものとはならず、総裁選びそのものが混乱し、それをきっかけの四分五裂的な状態が生まれるかもしれない。少なくとも渡辺喜美ら中堅改革派は党を飛び出そうとし、それに中川秀直や加藤紘一らがどう呼応するかが焦点となる。大敗の場合、山崎拓は落選確実なので、この場面では出番がない。

 その時に辞任するのは麻生でない場合もあり得る。通常国会が行き詰まって麻生が辞意表明して総辞職し、自民党は総裁選を行うゆとりはないので、直ちに両院議員総会を開いて例えば与謝野馨=経済財政相を総裁に指名、総選挙を断行する。小沢が口にした「超大連立」もしくはナベツネ・中曽根の「大連立v.2」があり得るとするとこの時で、小沢の狙いは、麻生辞任後、自民党に総裁選を行うゆとりを与えることを完全に封殺するために、全政党参加による選挙管理内閣を作って直ちに解散という単純明快なものだが、ナベツネらは、与謝野を立てて小沢の言う超大連立に乗って、さらに選挙後の第1党=民主党と第2党=自民党の「大連立v.3」に繋げていこうという邪(よこしま)な狙いを潜ませているのでないか。しかし、恐らく超大連立も大連立v.2も実現する暇もなく政局が雪崩打つ公算のほうが大きい。

 選挙後に自民党分裂が深まる見通しが立つ場合には、亀井静香が14日のサンプロで挑発的に発言していたように、「そうなってから自民党を出て、民主党などと一緒にやりたいなどと言い出しても遅い。出るなら選挙前に出る度胸を持たないと」というのは本当で、どうせ分裂するなら先に出て、麻生を擁護しながら苦しい選挙をやって落選するよりも、自民党を批判しながら自分の選挙を戦ったほうが当選可能性が出てくる人がたくさんいるし、またそのように思い切りよく行動すれば小政党といえども民主党から連立相手として扱われる可能性もないではない。が、「クリスマス新党か」(サンデー毎日12月28日号)と囃されている加藤・山拓にしても、そこまでの思い切りはなく、サンプロでも口数少なかった。

 選挙前にせよ選挙後にせよ、自民党が分裂する可能性はあるが、だからと言ってそれに呼応して民主党側が割れる可能性はほとんどなく、従って自民党分裂は同党の崩壊の早まりではあっても政界再
編に繋がることはほとんどない、と見ておくべきだろう。麻生内閣は、普通に考えて、通常国会冒頭から始まる第2次補正予算案の目玉「定額給付金」を巡る審議で立ち往生する可能性が濃厚で、そこからいよいよ政局が大激動に入る。▲

2008年12月14日

メディアをにぎわせる政界再編騒動にナベツネの影

永田町の噂の流れは速い。すでに各メディアで話題となっている政界再編騒動についても、メディアでは報道されない水面下の動きが永田町関係者や事情通の間で盛んに情報交換されている。

なかでも最近注目されているのが、読売新聞社会長の渡辺恒雄氏の動きだ。渡辺氏には小沢一郎代表と福田康夫前首相に大連立を持ちかけた“前科”があるが、ここにきて再び大連立の活動を再開しているという。

現在、渡辺氏が自民党側のキーパーソンとして考えているのは与謝野馨氏。与謝野氏は、景気対策として話題になっている定額給付金に反発していて、それを拒否できなかった麻生首相にすでに見切りをつけたという情報も流れている。

その一方、当の与謝野氏は政界再編のキーパーソンとの噂が永田町に流されたことで逆に麻生首相への影響力が増し、11日に発表された税財政改革の道筋を示す「中期プログラム」では、消費税増税の時期を明記するよう麻生首相に決断させたことに成功している。

それぞれの政略が複雑にうずまく現在の状況では、今後の政局がどう動くのかは誰にも予想できない。このまま先行き不明瞭の状態で国会は終盤に向かい、永田町は不安定な年末を迎える。
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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「自民党は焦っている」(12/14)

現在、政界再編には3本の流れがある。

一本目は加藤紘一氏、山崎拓氏、亀井静香氏、菅直人氏の4人が中心となった「YKKK」。かつて、YKKといえば山崎、加藤、小泉の3人だったが、いまでは小泉元首相が外れて亀井さんと菅さんが参加している。このグループは、自民党と民主党を割って二つの政党がくっつけようと考えているようだ。仮に再編がうまくいけば、おそらく菅直人が総理大臣になるだろう。だが、動きはとても慎重である。

二本目は、中川秀直元幹事長が中心となっているグループ。中川氏は渡辺喜美氏や小池百合子氏と組み、民主党側の若手と組もう考えている。このグループの民主党側には、若手で将来有望な議員が多く含まれている。

実は、中川氏が狙っているのは岡田克也元代表である。だが、問題は岡田克也さんが政界再編の動きに慎重なことだ。それはなぜか。岡田さんは寝ていれば、自分が総理大臣になれると思っている。選挙で民主党で勝てば、首相になるのが好きではない小沢さんは、岡田さんに首相を依頼する・・・ 岡田さんはそう考えているのだろう。寝ていれば総理大臣になれるのに、政界再編を仕掛けて苦労することはないので、あえて動かない方がいいと考えている。

もう一つは、某新聞社のボスが動いている。某新聞社のボスと言っても一人しかいないのだが、彼は与謝野さんと小沢一郎さんを組ませようとしている。彼は前にも小沢さんと福田さんを組ませ、大連立を実現しようとした。その続編が地下で進行している。

では、これからこの3つの流れがどう動くのか。
結論から言うと、1番目と2番目はどうでもいい。ただ、3番目は小沢さんにとって一番願わしいのではないか。小沢さんは首相になるよりも、舞台裏で動く方が好きな政治家であるのはよく知られており、与謝野さんをかりそめの首相にすれば、小沢さんは舞台裏を仕切ることができるからだ。

いまの政界再編の動きで、焦っているのは自民党側であるのは間違いない。今のままでは次の選挙で負けることは決まっているので、自民党は、自民と民主を割り、新しい政党を作りたいとさかんに民主党にけしかけている。

だが、民主党はその動きに一見乗っているように見えながらも、政界再編にそれほど積極的ではない。黙っていても次の選挙では勝てる可能性は高いからだ。となると、政界再編に一番積極的なのは、実は小沢代表なのかもしれない。

2008年12月12日

天皇陛下 皇位継承問題の心労が胃腸炎症の原因

天皇陛下に心身のストレスが原因とみられる胃腸の炎症が見つかり、医師団が負担の軽減を宮内庁に要請したことについて、同庁の羽毛田信吾長官は11日、定例会見で所見を発表した。

羽毛田長官の発言の多くは雅子さまの健康について述べたものだったが、注目すべきは「陛下ご自身のお立場から常にお心を離れることのない将来にわたる皇統の問題をはじめとし、皇室にかかわるもろもろの問題を憂慮のご様子」(毎日新聞)と述べたことだ。

具体的な内容については「控えた方がいい」(毎日新聞)として詳細は明らかにされなかったものの、この発言は天皇陛下の心労の一つに皇位継承をめぐる皇室典範改正問題があることを示唆したものと思われる。

現在の皇室典範では皇位の継承が男系男子にしか認められておらず、安定的な皇位継承が難しい。小泉内閣時に、女系女子でも皇位が継承できるようにする皇室典範改正の機運が高まったものの、06年9月に秋篠宮ご夫妻に悠仁さまが誕生したことから、改正論議は棚上げとなっている。

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【関連記事】
■天皇陛下:皇位継承問題で心労…宮内庁長官が体調で所見(毎日新聞)
■宮内庁長官、定例会見での発言要旨(朝日新聞)

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鈴木邦男氏(一水会顧問)
「皇位継承は天皇家が自由に決めればいい」(12/17)

私は、天皇陛下が日本にいらっしゃるだけでありがたいと思っています。
ですので、(天皇陛下には)もっともっと楽にしてほしいと思います。

政治家がだらしなく首相も一年交代で代わってしまいますから、日本人は心のどこかで「やはり日本は天皇陛下だ」と考えていて、その反面、皇室に対して期待が大きすぎるのではないでしょうか。

国民のことなど気にされないで静養したり、行事が多すぎるのでしたらすべて必要ないのではないでしょうか。天皇陛下や皇室は、全国民の幸せや平和を祈っているという存在としてあります。なのに、あまりにも国民は天皇陛下に過酷な仕事を要求しているし、押し付けています。

ですので、天皇陛下は存在してくださるだけでいい。それ以外のところは全て自由にしてほしいと思います。普通であれば名誉毀損に当たるような記事もあり、いまの状況はあまりにもかわいそうです。残酷な制度を国民が押し付けているのではないでしょうか。

また、所見を発表した長官もこんなことを軽々しく言っていいのでしょうか。天皇陛下の心労を取り除くどころか自分の考えを言っているような気がします。言葉が軽くなっているのではないでしょうか。

●皇位継承について

現代では、皇室が政治にかかわることはありません。ですので、皇位継承は天皇家が自由に決めてくださればいいと思います。誰が天皇陛下になられても、日本人にとってそれだけでありがたいことだと思います。かつては誰が天皇になるかで戦争になったこともありました。ですが、現代ではそんなことはありえません。

そのほかにも極端な話、元号を変えてもいいと思いますよ。昔は「不景気だから元号を変えて気分一新しよう」といったこともあった。それは「首相を誰にするか」といったような政治的なことではなく、文化的なことです。文化的、伝統的なことであればこういったこともやっていいと思います。
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本田英世氏(本田医院医学博士)
「ストレス性のものである可能性が高い」(12/16)

宮内庁の発表によると、天皇は胃や十二指腸に炎症が確認され、出血の痕跡が見られたということですが、おそらく急性出血性胃腸炎だと思います。この病気には、痛みがある場合とない場合があります。痛みがない場合は、症状が表に出ることが少ないのですが、おそらく今回のケースでは内視鏡検査を行っているようなので、天皇は痛みを感じていたのではないでしょうか。特にひどい場合は胃部に激痛が走り、膨張感、嘔吐を伴いますが、今回の場合は、それほど深刻な病状ではないでしょう。いまでは非常に効果の高い薬がありますので、治癒にはそれほど時間はかからないかと思います。おそらく、薬の投与で2~3週間で治癒するでしょう。原因は、やはりストレス性のものである可能性が高い。ストレスを感じて胃酸が多く分泌され、胃の粘膜が刺激されたため出血を起こしたのだと思います。

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松崎敏弥氏(皇室ジャーナリスト)
「女性天皇を認めることを陛下は望んでおられる」(12/16)

羽毛田長官が会見で説明されていましたが、やはり皇太子夫妻に対する不信感というか、妃殿下が体調を崩したといいながら、長く公務を勤められないという状況を陛下が憂いてことは確かでしょう。それは当然のことだと思います。

そのほかにも、安定的な皇位継承を陛下が望んでおられることは確かで、安定のために女性天皇を認めることを陛下は望んでおられるのだと思います。

現在、皇室典範に関する議論は非常に不安定な状況ですから、陛下は皇室典範をもう一度見直すための議論を早く始めてほしいと思われているのではないでしょうか。

2008年12月11日

東金女児遺体事件 容疑者の実名報道は許されるのか

千葉県東金市の成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)の死体遺棄事件で、同市内に住む20代の無職男性が逮捕された。

その一方、事件が急速な展開をみせるなかで容疑者に関する報道がヒートアップしており、そこを問題視するする声も上がりはじめた。

すでに報道されているように、容疑者には「軽度の精神発達遅滞」がある。警察による取調べにも以前と異なる供述をすることがあり、犯行が事実であっても裁判で刑事責任を問えるかは現時点では不明だ。にもかかわらず、各メディアは一斉に容疑者の実名・写真を公開し、容疑者が通っていた特別支援学校の名前までが何の配慮もなく報道されている。

実名報道の基準についてはさまざまな議論があるものの、知的障害者や精神障害者の犯罪報道では匿名が基本。はたして今回の事件が実名報道にふさわしいものだったのか。今後、議論を呼びそうだ。
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【関連記事】
■「週刊上杉隆」東金女児遺体事件で容疑者を実名報道したメディアへの違和感(週刊ダイヤモンド)

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長谷川博一氏(東海学院大学大学院教授・臨床心理学)
「実名で報道すべきではない」(12/11)

「軽度の精神発達遅滞」とは、知能検査の結果で知能指数(IQ)が70を切る者のことで、いわゆる小学生レベルの認知能力しかありません。基本的には限定責任能力(責任能力が著しく減退している)とされます。稀に「責任能力なし」と判断される場合もありますが、通常、責任能力があるとされ、大幅に減免されるケースが多い。

彼はB2障害手帳を交付されています。B2は最も段階が軽いものですが、社会的な支援があって初めて社会適用可能だという基準で、ひとりでは社会適用困難とみなされます。ですから、私は障害があると分かった段階で実名で報道すべきではないと考えます。彼が障害を持っていることは確かですから。

2008年12月10日

世界経済成長が0%台に!

世界経済が急速に減速している。

世界銀行は9日、2009年の世界経済の実質成長率の見通しが前年比0.9%になると発表した。これは、データとして残っている1970年以降では過去最低の成長率予測で、アメリカ発の金融危機は確実に世界経済にダメージを与えている。

その影響は、すでに日本にも及んでいる。11月にはトヨタ自動車が09年3月期連結決算の営業利益見通しを前年比73.6%減の6000億円になると下方修正。しかも、先月より円高が進行したことで、さらなる下方修正を迫られる可能性もある。

また、ソニーは国内最大規模となる正社員8000人を含める1万6000人のリストラ策を9日に発表。現在57ある工場など製造拠点も約1割減らすという。

朝日新聞は同日2面の見出しで『産業界[パニック状態]』との記事を掲載し、アメリカだけではなく、すでに中国を中心としたアジア市場にも景気減速の影響が出ていると解説している。
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須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)
「0.9%でもまだまだ楽観的な予測」(12/12)

日本の経済はよくダムに例えられます。自動車、電機といった輸出関連企業がダムに貯めている水に相当し、水の流れは輸出関連企業に流れてくるお金のことです。

なぜダムに例えているのかというと、自動車会社や電機メーカーは、利益が出てもすぐに部品単価を上げるなどをして利益を吐き出す“放流”はしません。ダムの中流・下流に相当する、下請け・孫受けの中小零細企業は、大企業がある一定の利益を確保できなければ利益配分が始まらないのです。

ところが、ここ最近の金融危機でお金がどんどん枯渇していき、ダムの水位が下がり始めました。こうなると、中小企業に利益を“放出”するどころか、部品などの商品の発注数がさらに落ち込みます。したがって、中流・下流に流れている水もどんどん減っていき、中小企業でリストラが発生する。しかも、上流に位置する大企業のダムも水位が確保できないので、大企業もリストラに踏み切らざるをえなくなっている。

今後、アメリカの個人消費はさらに減退し、輸出は減少するでしょう。アメリカのGDPは約1400兆円で、その約7割が個人消費ですが、20年ほど前まではずっと約6割で推移していました。つまり、余計な1割に相当する約140兆円が消費バブルなのです。まだ140兆円の消費バブルは全部吹き飛んでいませんので、これから土地価格の下落などと一緒に急激に吹き飛んでいくだろうと思います。

アメリカの消費バブルが吹き飛んだときに、一体、日本は自動車やデジタル家電を売ることができるのか。まだ景気が底をうっていません。来年の世界の経済成長が0%台というのも、まだまだ楽観的なシナリオだと私は思っています。

今後、トヨタやソニーは生き残れるかもしれないけれども、中小企業は切り捨てられるでしょう。これから中小企業の倒産件数が激増することは十分にあります。

2008年12月 9日

年収3700億円! 米ファンドマネージャー高額所得番付

某金融関係者が作成した「2007年度ヘッジファンド・マネージャー高額所得番付」は次の通り。

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これはキャッシュで懐に入った報酬で、運用資産などは別。
年収3700億円!とは文明論的にどういうことなのだろうか。

2008年12月 8日

麻生内閣支持率激減 10%台が目前

読売・朝日・毎日・共同の4社は8日、麻生内閣についての最新全国世論調査の結果を発表した。(下記表を参照)

驚いたのは麻生内閣の支持率で、各社とも前回調査から15%以上の下落を記録。朝日22%、毎日21%、共同25.5%、読売にいたっては前回の40.5%からほぼ半減の21%にまで急落した。

また、日経と産経が先週発表した結果と同じく、麻生首相と小沢代表のどちらが首相にふさわしいかでは、4社すべてが小沢代表が上回った。

調査結果の見出しでは「一気に政権末期状態(朝日)」、「資質・人事 急落原因に(読売)」、「自民システム限界に(毎日)」といった厳しい言葉が並んだ。

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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「政局は、年明けから何が起きてもおかしくない」(12/9)

政権発足からわずか3か月足らずで、内閣支持率が一気に20%台前半になるという前例はあまりない。安倍、福田と連続で政権を投げ出し、「これで最後だ!」といって選挙の顔として麻生を選んだが、このままでは年内に20%を切るのではないか。しかし、「それならまた総裁選をやって顔を変えよう」といったことは、もはや考えられない事態だ。

客観的に見れば、すでに自民党は政権担当能力を失った。だが、それなら民主党に政権を交代すればいいのかといえば、世論調査の数字を見ると毎日でも日経でも、自民も民主も「単独で」というのは1割程度。逆に自民、民主による大連立を求める声が最大となっている。これには100年に一度といわれる金融経済危機を迎えた状況にあり、与野党で戦っている場合かといった問題も大きいのだろう。

とにかく、こうなってくると年明けから何が起きてもおかしくない、凄まじい政局になってくるのではないか。
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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「まさに下り坂などというものじゃなくて転落」(12/8)

麻生は、平成に入ってからの20年間で14人目の総理で、読売が載せている「近年の内閣の退陣直前の支持率」という一覧表を見ると、リクルート事件の泥沼の中で悶死した竹下内閣(89年6月)の8.0%、失言・暴言の連続で行き詰まった森内閣(01年4月)の8.6%、政治改革に取り組むことが出来ずに自民党大分裂・55年体制崩壊を招いた宮沢内閣(93年8月)の10.4%に続いて、麻生はすでに歴代で下から4位に位置していて、これはもう近々に崩壊するしかない運命にあることが分かる。芸者のお手当騒動で恥ずかしい辞め方をした宇野内閣(89年8月)よりも今の麻生が低い。もちろん安倍や福田の辞任直前よりも下だ。

ところで、この一覧表を見て気付くのは、福田までの平成の首相たち13人の中で、最後まで任期を全うしたのは小泉たった1人(06年9月)で、あとはみな任期途上で不本意な辞め方をしたという惨憺たる有様だ。小渕が病没(00年4月)なのは仕方がないとして、海部は結構人気もあり長続きもしたが最後は自民党内(特に竹下派)からの「海部下ろし」で引きずりお下ろされ(91年11月)、細川は他の誰よりも人気が高かったが野党=自民党から執拗にスキャンダルを突き回されてプッツン辞任(94年4月)、後継の羽田は少数与党の悲哀で2カ月で行き詰まり(94年6月)、村山は自社さ政権の運営に疲れての一種の衰弱死(96年1月)、橋本は参院選大敗で引責辞任(98年7月)、安倍と福田はご存じの通り、ということで、まともに勤め上げたのは小泉だけなのだ。改めて彼の“凄さ”が分かる。

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引用:読売新聞08年12月8日朝刊

2008年12月 6日

もはや政治空白状態 官僚からも見放された麻生内閣

ここ最近、麻生内閣に対する批判が永田町や霞ヶ関関係者からTHE JOURNAL編集部に続々と寄せられている。もはや麻生内閣が政権末期の状態であることは本誌でもたびたび指摘してきたが、ここまで公然と麻生批判が繰り広げられることは安倍内閣や福田内閣のときですらなかった。

麻生内閣批判を繰り広げているのは、与野党の議員だけではない。本来は新聞やテレビなどのメディアで表立って内閣を批判できない霞ヶ関官僚からも、麻生内閣に対する批判の声が上がっている。

いま、麻生内閣はどうなっているのか。

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霞ヶ関太郎氏(永田町・霞ヶ関事情通)
「今の日本は、すでに政治空白状態」(12/6)

「来年の通常国会は、いつ、どの段階で解散があるかまったく読めない。解散があれば審議中の法案はすべて廃案となってしまう。こんな状況では、どの省庁もちゃんとした政策を実現できない」

この発言は評論家やジャーナリストによるものではない。ある省庁で働くキャリア官僚が私にこう語ったのだ。すでに麻生内閣は政治空白状態に陥っている・・・ その事実を象徴するような言葉である。

麻生内閣が混迷している原因は単純ではないが、総務省出身の首相秘書官・岡本全勝氏への反発はなかでも強い。

そもそも首相秘書官とは、財務、外務、経済産業、警察の4省庁から1人ずつ任命され、財務省が取り仕切るのがこれまでの慣例だった。だが、麻生首相はこの慣例を無視し、5人目の首相秘書官として総務大臣時代に親しくなった岡本氏を抜擢した。しかも、麻生首相は彼に官邸を取り仕切る役割である筆頭に任命した。

ところが、岡本氏には官邸を仕切るような能力はなかった。これが麻生内閣迷走の始まりだった。
この人事の失敗は永田町に広く知れ渡ることとなり、麻生首相の二転三転する発言も、岡本氏の実力不足、調整不足を指摘する声が強い。岡本氏は今では、総務省に近い国会議員からも陰で「あのハゲ!」と呼ばれながら悪口を言われているありさまだ。

官邸の威厳が失われてしまったことを示す逸話はこれだけではない。

小泉内閣のときに竹中平蔵氏が中心となって権勢をふるった経済財政諮問会議は、往時の勢いはすでに失われ、いまや風前の灯となっている。

小泉内閣時代、経済財政諮問会議が各省庁に配布する通達に、各省庁の官僚たちは恐れおののいていた。自分達の主張する政策に対立する通達であっても、会議で一度決定したことはなかなか覆せなかったからだ。

ところが今では、経済財政諮問会議から通達が回ってきても、誰も読もうとしない。麻生首相は所信表明演説で官僚を使いこなすことを宣言したが、首相就任から2ヶ月たった現在、経済財政諮問会議は形骸化し、官邸の方針など誰も気にしないようになった。

「官邸の意向を無視するような官僚はケシカラン」と思われる読者もいるかもしれないが、こればかりは官僚だけを責めることもできない。

麻生首相の景気対策の目玉である定額給付金。この政策については、国民が反発している以上に官僚たちが「景気対策に意味がない」(前出のキャリア官僚)と考えている。こんな愚策を官邸主導として提示されては、官僚も本気で内閣のために働こうとは思うはずがない。このままでは、これから先も官邸の求心力が失われ続けるのは見えている。

だが、麻生内閣が崖っぷちから生き返る方法はただ一つだけある。言うもでもなく、それは解散総選挙を実施することだ。これ以外に官邸に求心力を復活させる方法はない。

ただし、麻生首相が選挙後に再び官邸の主となって戻ってくると考える人間はいないだろう。

2008年12月 5日

超大連立か政界再編か政権交代か・・・ 自壊する麻生政権

超大連立、反麻生議員連盟の結成、そして政界再編・・・
もはやレイムダックと化した麻生政権に対し、与野党を問わず、次の政局に向けた準備が着々と進められている。

自民党の中川秀直元幹事長は、社会保障に関する議員連盟のの結成を表明。同連盟には厳しい麻生批判を繰り広げる渡辺喜美元行政改革担当相も参加する方向だ。
「反麻生グループの決起か」との憶測が広まったことで5日に予定されていた旗揚げは来週以降に延期されたが、総裁選で小池百合子氏を総裁候補にして麻生陣営とバトルを展開した中川氏の動向が、今後注目される。

そのほか、加藤紘一元幹事長や山崎拓前副総裁は、小沢一郎代表を含めた民主党幹部と接触しており、こちらも年末年始の政局をにらんだ動きをしているものと思われる。

一方、小沢代表は毎年元旦に私邸で開いている新年会を中止することを決定した。新人候補者などに「麻生首相はもうもたない。年末年始も気を抜くな」(読売新聞)と、来年1月の通常国会冒頭での衆院解散を念頭に入れて政治活動をするようハッパをかけた。

こうなると注目されるのは、いつ麻生首相が解散に踏み切るのかということだ。しかし、自民党内では解散延期を主張する声も根強く、麻生首相が解散権を自由に行使できるとは思えない。
麻生首相は、その声を押しのけて解散をするのか、それとも三人連続の内閣放り出し辞任となるのか、はたまた支持率が下がり続けても任期満了まで首相の座に居座り続け、民主党の息切れを待つ兵糧攻めに出るのか。いずれにしても、政局が麻生首相の思惑通りに動く可能性は低い。
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【関連記事】
■またもや出た自民・民主の大連立!小沢一郎の狙いは何か(12/4)

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鳩山由紀夫氏(民主党幹事長)
「超大連立は選挙管理だけをやる内閣」(12/5)

超大連立は選挙管理だけをやる内閣のことです。

11月28日の党首討論を見ても麻生首相はもう終わっている。これでは通常国会を望めるべく、途中で投げ出すだろう。その時にどういう状況になるかというと、今のままでいけば、
また4人目の総理を与党から出すという話になるが、それはとても国民が許さないだろう。

では、憲政の常道として野党に禅譲するといっても、(自民党は)なかなかできない。
となると考えられるのは、全党が参加する超大連立政権をつくって、その内閣で即座に選挙を行う。そういう仕組みが一時的にできる、というのが小沢代表の読みだと思います。

超大連立を組んだ後に何か仕事をしてしまったら、それこそ大連立になってしまいますから、そうではなくて選挙をやろうと。麻生内閣ではとてもじゃないけど(選挙が)できる状況ではなく、次の内閣も自民党ではつくれない。そのときの話として、(超大連立が)浮かび上がってくるのではないかと小沢代表は言っていました。

政界再編については小沢代表は考えていないですね。政界再編は民主党が勝てなかったときの話ですから。民主党が勝ったときは民主党を軸に当然政権を作りますから、それができなかったとき、つまり敗北してしまったときが政権再編になる。なので、今から敗北のことを考える必要はないと思います。
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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「自民党内で政界再編の動きが3本ある」(12/5)

政界再編の一番理想的な形は、自民党の良識的な議員が自民党から分裂し、民主党もどうしようもないのがたくさんいるので、良識的な議員が分裂し、自民党と民主党の良識的な議員がくっつく形。

だが、実際には自民党内でも政界再編の動きは一本化しておらず、3本ぐらいに分かれて行動している。しかも、この3本の流れは、民主党の同じ部分を狙っている。この3本が1本になればいいけれども、それぞれが政界再編の主導権を持ちたいので、はたしてそれができるかどうかだ。

政界再編になった場合には、総理大臣は岡田克也氏など、民主党から出したほうがいいだろう。
小沢代表は、仮に民主党が選挙で勝っても、総理大臣にはならないと思う。小沢代表が予算委員会で6時間も座っていられるとは思えない。

2008年12月 4日

またもや出た自民・民主の大連立!小沢一郎の狙いは何か

「空気が読めない」「漢字が読めない」KY首相として批判されてきた麻生首相が、さらに「景気よくならない」「解散やれない」リーダーとして窮地に立たされている。

そのことを見越してか、民主党の小沢一郎代表が大連立構想を再び打ち出し、自民党に揺さぶりをかけてきた。

産経新聞によると、29日に小沢氏が鳩山由紀夫幹事長と田中康夫新党日本代表とで都内のすし店で会食した際に、小沢氏は「いずれにしろ、(次の政権は)選挙管理内閣になる。全党入れた内閣になるかもしれない。超大連立だ」と語ったという。

一度は挫折した大連立構想だが、ここにきて自民党内部からも大連立を望むかのような発言も飛び出している。渡辺喜美元行政改革担当相は1日午後に行われた日本BS放送の番組収録で「早く選挙をやり、首相指名の1、2位コンビで話し合って危機管理内閣をつくるべきだ。その先は政界再編に向けばらけていくことがあってもいい」(時事通信)と語り、場合によっては民主党との大連立に参加すべきとの考えを表明している。

「壊し屋」の異名を持つ小沢氏は、今回の騒動で何を狙っているのか。年末に向けて政局が一気に動く気配が出てきた。

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【関連記事】
■超大連立か政界再編か政権交代か・・・ 自壊する麻生政権(12/5)
■小沢氏、選挙管理内閣提案へ 「全党参加で超大連立」(朝日新聞)

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二木啓孝氏(ジャーナリスト)
「自民・民主・小沢新党の連立政権ということも」(12/4)

小沢代表が本気で大連立に動けば、民主党内が分裂する。

大連立には“選挙前”大連立と“選挙後”大連立があって、選挙前大連立は基本的にありえない。というのは、小選挙区で1人通るわけだから、連立した相手と同じ選挙区で戦うことができないからだ。

では、選挙後大連立はというと、自民・民主の両党が過半数の241を取れなかった場合に可能性が出てくる。いわば、究極の経済危機突破大連立で、過半数割れした「自民・民主・公明で政権運営をやりましょう」ということ。

しかし、民主党内には「政権を獲ると言いながら敵と手を結ぶのは有権者に対する裏切りだ」という意見が根強い。おそらく、経済危機突破大連立を言い出すのは小沢代表だろうが、そうなると民主党内は小沢vs反小沢に割れるのではないか。

そうすると、可能性としてありうるのは、自民党は割れずに民主がちぎれるという「自民・公明・小沢新党」による連立政権で、現在活動している政党が一緒になって大連立を組むことはないだろう。

では、小沢代表の狙いは何か。昨年の大連立騒動の後、小沢代表は大連立は「封印する」と言っただけで、「捨てた」とは言っていない。現実としては現段階で大連立が実現する可能性は低くても、解散に追い込めないのであれば、自民党を揺さぶる手段として「大連立」を持ち出してきたのだろう。
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村田信之氏(ジャーナリスト)
「小沢氏のカードが増えた」(12/2)

超大連立は十分にありうる。

自民党とすれば9月の任期満了まで選挙を先延ばししたい。しかし、党内ではすでに麻生首相で選挙は戦えないと考えていて、そもそもこのまま麻生政権が持続できるとも思えない。では、誰かが代わりに首相になるかというと、それも現実的には不可能だ。

できない理由は2つある。一つは候補者がいない。もう一つはいくらなんでも選挙の洗礼を受けていない4人目の首相を立てることはできない。また、強引に新しい首相を立てたとしても、公明党が同意してくれるかどうかがわからない。

となると、自民党としては内閣をバラして超大連立の選挙管理内閣にし、それで選挙に打って出るという戦略もありうる。自民党にとっては羅針盤のない先の見えない航海のようなものだが、今の麻生内閣で選挙をやるよりはマシだという選択だ。

だが、自民党が仮に超大連立にのってきたとしても、民主党の内部がどう反応するかがいまだによくわからない。民主党にとっては総選挙で多数派になる政権交代が理想で、今、超大連立組んでも得することがないと考える議員は多い。民主党内部がどのように動くかによって、超大連立が実現するかどうかが分かれるのではないか。

ただ、大連立なしに正攻法の総選挙で政権交代が実現したとしても、その先には遅かれ早かれ政界再編がやってくる。小沢代表の本当の狙いは政界再編と同時におこる自民党解体だ。つまり、大連立は選挙前に政界再編を行う手段であり、総選挙での政権交代は選挙後の政界再編のための手段である。小沢代表は現在、政界再編に向けて2つのカードを持っているのだ。

少なくとも今回の騒動を通じて、小沢代表の政治的カードが増えたことだけは間違いない。

2008年12月 3日

ブッシュ大統領がイラク開戦に反省の弁

やはり、ブッシュ大統領はアメリカ建国232年の歴史で最低ランクの大統領だった。

ブッシュ大統領は1日にABCニュースで報じられたインタビュー内で「大統領の在任中で、最大の痛恨事はイラクの情報の誤りだった」と述べ、イラクが大量破壊兵器を保有していないにもかかわらず、イラク戦争に踏み切ったことを今さらになって悔やんでみせた。

ブッシュ大統領がイラクに侵攻した根拠は、旧フセイン政権が核兵器などの大量破壊兵器を保有しているとの情報があったため。だが、その情報は後に誤りであったことがすでに明らかになっている。

ブッシュ大統領自らが情報分析の失敗を認め、イラクの泥沼を招いた張本人であることをを正直に認めたとしても、ブッシュ大統領がアメリカ史に特筆されるべき歴代最低の大統領として永遠に語り継がれることは間違いない。
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【関連記事】
■Bush: 'I Did Not Compromise My Principles'(ABC)
■ブッシュ大統領「戦争の心構えなかった。誤情報が痛恨」

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「今更何を言ってるんだ!」(12/3)

今更何を言ってるんだ。米国民と全世界、とりわけイラク国民に謝罪をして辞任すべきだろう。

とりわけ気に入らないのは、「多くの人」も「多くの議員」も大量破壊兵器があるからフセインを排除すべきだと言っていたではないか、という弁解である。「僕だけが悪いんじゃないもん」という醜い開き直りで、指導者たるものこういうことだけは口にしてはならない。他の国もアジアを侵略したのだから日本が侵略したのもやむを得ないという田母神論文と同じ種類の卑劣さである。

もう1つ、「大量破壊兵器がないと知っていてもイラク戦争を起こしたか」という問いに「面白い質問だが、やり直しはできない。過程で考えるのは難しい」とブッシュの言い方もふざけている。面白い質問ではない。フセインを含む何十万か何百万のイラク人と数千人の米兵の死は無駄だったのか、という限りなく深刻な質問である。まともに答える義務があるはずだ。

産経の調査でも内閣支持率が27.5%に激減

産経新聞が2日発表した調査結果でも、麻生内閣の支持率は、9月 末の政権発足当初の44.6%から17ポイント下落して、27.5%となった。不支持も58.3%で6割に迫った。

麻生評価のポイントは、(1)「首相の言動」を評価しない=78.4%、(2)「定額給付金」を景気対策として適切だと思わない=76.9%、(3)「指導力」を評価しない=71.9%などで、国民が麻生にほとんど退場を命じているに等しい数字である。

また、先の党首討論を含め麻生と小沢一郎の比較では、「主張の説得力」「党首討論に強い」「政策がよい」のいずれでも小沢が麻生を上回り、「信頼できる」「選挙の顔として魅力的」では麻生が小沢を上回った。結論的にどちらが「首相にふさわしい」では、麻生の31.5%に対し小沢32.5%と、わずかながら小沢が上回った。
9月末には麻生51.3%、小沢26.9%とダブルスコアで麻生が勝っていただけに、その支持凋落ぶりが激しいことが分かる。

同日付の産経は、3ページを費やして調査結果とその分析を載せており、主な見出しを拾うと、「“麻生節”に冷たい目」「麻生内閣支持率、危険水域に」「“党首力”でも小沢氏に軍配」「自民に反麻生連合の兆し」など。
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【関連記事】
■麻生首相の支持率なぜ急落?(産経新聞)
■内閣支持率急落、27・5% 「首相にふさわしい」も小沢氏に軍配(産経新聞)
■内閣支持率30%切る 自民に反麻生連合の兆し(産経新聞)

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「自民党の役割は終わった」(12/4)

このままでは1月には麻生内閣の支持率は10%台になるだろう。

今の状況は森喜朗政権の末期に似てきた。現に、すでに自民党内では麻生批判が高まっていて、支持率が10%台になれば選挙はボロ負けするのがわかっているから、総選挙の前にもう一度総裁選を実施するというとんでもない可能性も出てくるだろう。

自民党というのはいいかげんな政党で、安倍さんを首相に選んだときは、ほとんどの議員が総裁選で安倍さんに投票したのに、首相になると批判した。福田さんのときも同じ。圧倒的な得票で自民党総裁に選ばれたのに、その後は福田批判。それなのに、また麻生さんを圧倒的多数の議員が総裁選で支持した。自民党はいかげんすぎる。

もはや、日本の政治における自民党の役割は終わった。

2008年12月 1日

「私が危険人物のタモガミです」 田母神元幕僚長の講演を公開!

アパグループ主催の民間懸賞論文に「日本が侵略国家というのは濡れ衣」と書いたことが問題とされ、航空幕僚長を事実上更迭された田母神俊雄氏が1日、都内の外国人記者クラブで記者会見を開いた。

会見の冒頭では「危険人物の田母神です」とユーモアを交えながら講演していたが、次第に持論である「白人国家の侵略の歴史はそっちのけで、日本だけが不利益を被っているのではないか」といった田母神史観を展開。真珠湾攻撃はルーズベルトの謀略、張作霖爆殺の首謀者は河本大作ではないといった自説も披露した。

■「私が危険人物のタモガミです」田母神元幕僚長記者会見1/4

■「白人国家が有色人種を侵略してきた」田母神元幕僚長記者会見2/4
■タモガミ謀略史観の全容! 田母神元幕僚長記者会見3/4
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内閣支持率急落、麻生内閣に黄信号

日本経済新聞の世論調査では、麻生内閣の支持率は前回10月末から何と17ポイント減の31%まで急落した。不支持率は19%増の62%で、同紙調査では初めて支持と不支持が逆転したばかりでなく、その差がダブルスコアになるという惨めな結果だった。支持率31%は、福田内閣崩壊直前の29%に近
い水準で、30%を割ると通常、内閣の先行きに黄信号が灯ったと判断される。

追加経済対策の目玉である「定額給付金」については「評価しない」が66%で、「評価する」の26%を大きく引き離した。「解散先送り」については「支持しない」52%、「支持する」26%で、麻生の政治姿勢がことごとく不評であることが分かる。

これを見て、自民党内や公明党側からは反麻生の動きが様々に始まり、内閣の運営はさらに難しくなると予想される。
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二木啓孝氏(ジャーナリスト)
「年内解散は遠のいた」(12/1)

支持率低下の原因は、党首討論が決定的だった。

というのは、日経の内閣支持率31%もさることながら、「次の首相にふさわしいのは」という質問で麻生首相と小沢代表が17%で並んだからだ。前回調査の同じ質問では、麻生首相が36%で小沢代表が16%。ダブルスコアだった。

支持率が低下するというのはある程度予想できていても、麻生首相にとっては小沢代表との比較で並んでしまったのはショックだっただろう。麻生首相は、小沢代表の東北出身の口下手さには唯一勝てると思っていたからだ。

ここが、今回の調査結果で一番大きかったところだ。これで年内解散は遠のいた。

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2009年11月、日刊工業新聞社

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