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2008年9月29日

三菱、野村は米金融危機で“漁夫の利”を得るのか?

 三菱UFJフィナンシャル・グループが米証券第2位のモルガン・スタンレーに最大9000億円を出資して役員も送り込むことになったのに続いて、野村ホールディングスは破綻した米証券第4位のリーマン・ブラザーズのアジア太平洋部門、欧州・中東部門を買収することになった。それに先だってすでに今年前半には、みずほコーポレート銀行が米証券第3位のメリルリンチに1000億円、三井住友銀行が英銀バークレイズに1000億円を出資している。9月の危機勃発の中で、そのメリルリンチは米銀行第3位のバンク・オブ・アメリカに約5兆2000億円で救済合併され、またリーマンの北米投資銀行部門はバークレイズに1800億円で買収されている。

 80年代のバブルとその崩壊期に国際展開に失敗し、結果的にその後のサブプライム関連の金融商品ブームに乗り遅れて、その分だけ傷も少なかった日本の金融機関が、ここへ来て一気に世界的な金融大再編の嵐の中に飛び込んだ恰好だが、果たして日本勢は漁夫の利を得て「一周遅れのトップランナー」のように国際金融界の上層に躍り出ることになるのか、それともまたかつてのように、国際化と言いながらも外国人ディーラーなどを超高給で雇って単に食い物にされただけという経営管理能力の欠如を再び露呈することになるのか。
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【コメント】
■須田慎一郎「イカサマ賭博に手を出した」
■高野孟「三菱UFJは大丈夫か?」
■財部誠一「アジア、ヨーロッパでの営業拡大を一気に進めるためのインフラを買った」
■田原総一朗「野村はリーマンの社員を格安で雇う」

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須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)
「イカサマ賭博に手を出した」 (9/29)

東京三菱UFJがモルガンスタンレーに出資した9000億円は「エイ、ヤッ!」でバクチを打ったようなもの。しかもその賭博場はプロから見れば「とんでもないところにバクチを打ったな」と思わせるイカサマ賭博が疑われているところで、そこに東京三菱UFJは投資にまわせる余剰資金2兆円の約半分をつぎ込んだ。私は、このバクチに負ける可能性は十分にあると思う。

たしかに株式の取得が20%を超えた場合には、将来的にモルガンの経営が安定して利益が再び発生すれば、その利益は自動的に東京三菱UFJの決算に加算される。また、9000億円であの名門金融機関のモルガンスタンレーの経営権を握ることもできる。経営陣は「これはグローバルな金融機関になるための千載一遇のチャンスだ」と感じたんでしょう。ですが、逆に言えばこの考え方が浅はかなのです。

なぜなら、9000億円の出資なんてモルガンが抱えているリスクに比べればわずかなもの。1兆円程度の出資で経営が本当に落ち着いてくれればいいが、モルガンにはまだまだ現実化していないリスクがあるかもしれず、最終的には数十兆円の規模に上る可能性もある。

そこを考えていくと、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という金融取引があって、これが全てのガンとなっている。これが昨年の12月末で6200兆円の元本があるとされていて、場合によっては7000兆円を超えているとも言われています。この種の取引をあらわす数字では、兆の上の単位である「京」が使われたほどです。

CDSというデリバティブ取引の規模はもはやそういったレベルに達していて、それにどっぷりつかっていたのがリーマンやモルガンであり、あるいはつぶれたベアスターンズやAIGだったのです。
現在、どこにどれだけのリスクがあり、どの会社がどれだけ損をするのかが全くわからない。これが、今回の金融危機の本質なのです。

そういった状況にもかかわらず、(モルガンの株式の)20%を握ったことで、将来的に20%の利益が入ってくると考えているのはまったくのナンセンス。たった3日間でモルガンの損失をすべて確定させ、9000億円で救済できると見極めることは不可能だし、彼らもそこまでは言っていない。

しかも東京三菱UFJは博打に関しては素人同然で、もしかしたらイカサマ賭博かもしれないところに「よくもまあ9000億円も出しましたね」というところです。博打場に誘い込まれた若旦那が莫大な掛け金を出してしまった。はたして、丁が出るのか半が出るのか。いま、そのサイコロが振られたところです。
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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「三菱UFJは大丈夫か?」 (9/29)

財部コメントの、野村と三菱の金の出し方が違うという指摘は、極めて重要だ。マスコミでもこのような観点はこれまで全く出ていない。

昨日のサンプロの第1コーナー「どうなる?金融危機」では、武者隆司=ドイツ証券副会長が出演。この人は前から「金融危機はすぐに収まる」という楽観論で、私はおかしいんじゃないかと思っていたが、前日まで米国金融事情を視察して帰ってきたら打って変わって悲観論になって、「金融市場はほとんど麻痺状態で、今や大恐慌前夜」だという論調。私は「ほら、やっぱりそうでしょう」と言いたかったが黙っていた。

野村のリーマン・ブラザーズの一部買収や三菱UFJのモルガン・スタンレーに対する9000億円出資については、武者は、「モルガン・スタンレーもゴールドマン・サックスも銀行持株会社化する[預金の裏付けもなしに40~50倍ものレバレッジを利かせてマネー・ゲームを展開する投資銀行=証券会社から、自ら預金を持ちFRBの規制と同時にいざという場合の救済も受けられる商業銀行に転換する]ので日本にとってはチャンス」と述べた。そこで財部は、本サイトのコメントのような観点から「野村は分かるけれども、三菱の9000億円については、投資銀行のビジネス・モデルが崩壊した後に、一体何を得ようとしているのか疑問だ」と自説を述べたが、武者は「グローバルなホールセール・バンキングの成長性」[が見込めるのでそれに日本が乗るのは得策]を強調するにとどまり、田原さんもその点をそれ以上深めなかった。しかし、財部に番組中のヒソヒソ話で聞いたところでは、「三菱内部は深刻」だという。9000億円の決断はトップ数名だけで行われ、社内は全くの寝耳に水で疑問の声が噴出。何のための出資かの理屈付けはこれから取り組むのだという。余りに異常な話で、背後には日米政府間の“政治”が働いていた可能性もある。

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財部誠一氏(経済ジャーナリスト)
「アジア、ヨーロッパでの営業拡大を一気に進めるためのインフラを買った」(9/26)

「THE JAPANESE ARE BACK」

ウォールストリート・ジャーナルはこんな見出しで日本の金融機関による米国投資銀行への出資や買収を表現してみせた。80年代、バブル経済の頂点で日本企業はロックフェラー・センターなど米国を象徴する商業ビルを買いあさって顰蹙をかったことがある。その後バブル崩壊でまったく存在感を失っていた日本企業が久方ぶりに存在感を現したというわけだ。

これをどう評価したらいいのか。

最初に理解すべきは、この10年、世界の低金利、金余りの受け皿となってきた米国投資銀行のビジネスモデルそのものが終わったという現実である。自己資本の40倍も50倍ものマネー取引をすることで異常な高収益をあげてきた投資銀行はしょせんマーケットしだいで、マーケットがひとたび逆回転した瞬間、自己資本が吹き飛んでしまうというお粗末千万なビジネスモデルだった。名門投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻は、米国投資銀行というビジネスモデルそのものの終焉を意味している。ゴールドマン・サックスの商業銀行免許取得やメリルリンチが商業銀行のバンカメに身売りしたことからもわかるように、これまでの投資銀行ビジネスに彼ら自身が一線を画そうとしていることは明らかだ。

その前提にたって考えてみると、モルガン・スタンレーに出資する三菱UFJと、破綻したリーマン・ブラザーズのアジアとヨーロッパ部門を買収する野村とでは、その意味するところが随分と違う。
野村はリーマンのアジア、ヨーロッパを丸ごと買収するわけではない。必要な業務だけ絞込み、なおかつ「リーマン」の名前も残さない。いわばアジア、ヨーロッパでの営業拡大を一気に進めるためのインフラを買ったというニュアンスが非常に強い。これはこれでひとつの見識といえる。元リーマンの社員たちが大量に辞めなければ、それなりの効果をもたらすのではないか。

対照的に、いまひとつ意図をはかりかねるのが三菱UFJだ。彼らはモルガン・スタンレーが再び栄光を取り戻すと信じているのだろうか。はたまたモルガン・スタンレーから投資銀行業務を学ぶつもりなのか。あるいは20%の持株比率でモルガン・スタンレーを牛耳れるとでも思っているのだろうか。疑問ばかりがうかんでくる。

もっとも純投資だというなら、わかりやすい。
世界最強の投資家、ウォーレン・バフェット氏がゴールドマン・サックスに出資する理由は明快だ。株価が暴落した業界最大手の株式を大量保有することが資産形成の王道だというのがバフェット氏の投資哲学だ。要するに、安いから買っただけの話で、投資銀行業務を学ぼうなどというインセンティブはいっさいないはずだ。これはわかる。いまが史上最安値であるかどうかは神のみぞ知るところだが、歴史的安値圏であることは確実で、絶好の長期投資のチャンスだ。

いずれにしてもなんのための出資であり、買収であったのか。
その目的を当事者に聞いてみなければなるまい。

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田原総一朗氏(ジャーナリスト)
「野村はリーマンの社員を格安で雇う」(9/25)

リーマンの社員には、野村證券の5~6倍の給料を貰っている人間がたくさんいる。
だか、アメリカの金融業界では失業者があふれていて、辞めろと言われてもリーマンの社員には行く所がない。

ここを野村はチャンスとみた。野村はリーマンの社員の給料を大幅に下げて雇うだろう。これができるから野村はリーマンを買収した。

このように、今回の金融危機を通じて世界は一つのマーケットになりつつある。

モルガンスタンレーとゴールドマンサックスは銀行化され、証券と銀行の垣根もなくなった。銀行になるとFRBが金を貸してくれるからだ。これで証券と銀行の垣根も、そして国の垣根も全部吹っ飛んでしまった。

裏を返せば、そこまでしないといけないほどアメリカは行き詰まっているということだ。

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【関連記事】
高野孟、田原総一朗ほか:アメリカ発世界金融危機

2008年9月28日

失言で辞任した中山国交相の本音

中山成彬国土交通相は28日午前、首相官邸で麻生首相に辞表を提出し、受理された。
中山氏は成田空港の拡張が進まなかった原因を「(地元住民の)ごね得」、大分県の教職採用汚職については「日教組(が原因)ですよ」、はたまた「日本は単一民族」と語ったことが物議をかもし、辞任せざるをえない状況に追い込まれた。

中山氏は「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の会長で、従軍慰安婦や南京事件などの歴史教科書の記述を修正するための発言を積極的に行っていたが、皮肉にも「日本は単一民族」と述べる程度の日本史の教養の浅さを露呈し、就任からわずか5日で辞任することになった。なお、麻生首相も05年10月15日に九州国立博物館の開館記念式典で「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と発言しており、中山氏と同じ歴史認識を持っていると思われる。

一方、日教組への批判については「撤回したという考えはない」と述べ、「日教組を解体しないといけない」とあらためて宣言した。

その裏側には中山氏の厳しい選挙事情がある。中山氏の選挙区である宮崎1区は次の総選挙で民主党と社民党が選挙協力をする予定で、日教組批判を繰り返すことで保守票固めを狙ったのだろう。ただ、日教組批判をするとネット上では人気が出るが、実際の選挙でどのような影響を与えるのかは不明だ。
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【関連リンク】
○日教組発言、関心引きたかった=国交相一問一答
○小熊英二著『単一民族神話の起源』書評(松岡正剛の千夜千冊)
○単一民族国家(Wikipedia)

【日本の前途と歴史教育を考える議員の会】
○「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」記者会見(YouTube)
○メンバー一覧
http://blog.goo.ne.jp/dazaiyukio/e/244384093739c6a5b03e3f28b061b855 (反政治的政治論)
http://akiz-e.iza.ne.jp/blog/entry/177661/ (iza)

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「持論というか持病というのでは仕方がない」 9/28

中山の地元=宮崎の自民党県連会長が「性格からして、言いたいことを言ったのだろう。持論というか、持病」と語っている(28日付朝日新聞社会面)。これが一番分かりやすい解説だった。持論であれば思想信条の問題として論じることが出来るけれども、持病というのでは、つまりは心の病気であって、精神分析医の診断を受けた方がいいという話になって真面目な議論の対象とはならない。「日教組を解体しなきゃいかん」と言うこと自体が、日教組への過大評価だとは思うが、まあそれはいいとして、「日教組は民主党の最大の支持母体」と言うのは事実誤認だし、そこからすぐに飛んで「小沢民主党も解体しなければいけない」というところまで行き着いてしまうのは、やっぱ頭が壊れている。
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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「こんな大臣はいらない! 辞任は当然だ」 9/28

中山国交相の一連の発言は確信犯だ。発言は本来の職務である国土交通大臣の枠組みを踏みこえていて、はたして彼にそんなことを言う資格があるのだろうかと思う。

中山は森元首相をトップとする文教族。今回口出しをしている内容はすべて教育関係についてで、辞め文句に日教組潰しの先頭に立つというようなことを言っているが、そういう考えで国交大臣をやるのなら、こんな大臣はいらない。

そもそも中山は、今回の組閣で最初に行革担当大臣を打診された。これに対して「自分は官僚ファミリーだからそれには向いていない」というようなことを言って断った。それを聞いたときにダメだと思っていたが、これでは辞任は当然である。

2008年9月27日

福田ほどにも追い風が吹かない麻生内閣の出発 ――それでも11月総選挙に賭ける政権の命運

takanoron.png 25日に麻生太郎内閣が発足し、まだ何もしていないうちに世論調査をするのも酷だとは思うが、27日付各紙が申し合わせたように一斉に発表した新内閣支持率は、ほどほどというか、「う~ん、まあ、こんなものか」という結果でしかなかった。

sijiritsu.png
※カッコ内は前回比
※日経の「望ましい政権の形」の質問項目には「自民と民主が参加する連立政権」という回答項目があり、50%が大連立を支持している


 発足時の支持率としては、幻想混じりのブーム高揚の中で登場した安倍には及ばなくとも、その安倍末期よりかはマシかという程度の期待度だった福田は上回りたい、というのが麻生のホンネだったろう。しかし結果は、各紙共通して福田発足時を下回り、最近歴代では、密室談合で政権を受け継いだ森を上回るにとどまった。発足時の不支持率を見ても、例えば日経では、安倍17、福田27、麻生40で、麻生が突出的に高く、初めから期待していない人が極めて多いことが分かる。

●総裁選へのシラケた気分

「賑やかに総裁選をやってほしい」というほとんど唯一の遺言を残して福田康夫前首相が辞意表明した後、真っ先に手を挙げた麻生としては、その総裁選を大いに盛り上げる中で圧倒的にトップ当選を果たして国民的な“麻生ブーム”を巻き起こし、その勢いに乗って臨時国会冒頭解散に打って出るというのがベスト・シナリオだったろう。しかし、総裁選は思いのほか盛り上がらず、むしろ世界的金融危機や国民の不満鬱積の中で5人が本当のところ何を競っているのかも定かでないまま同じバスに乗って手を振っている緊張感のない姿は人々をシラケさせるに十分で、それを反映して、地方の党員・党友による予備投票は投票率が53.9%、つまり党員・党友でさえ新総裁選びに関心を持たないという異常事態となった。これでは、形の上では麻生圧勝となったものの、ブームが起こらないは当然で、その時点で早くもベスト・シナリオは消えた。

 この総裁選が国民にも党員にも真面目なものと受け止められなかった最大の要因は、本誌No.459で指摘したように、自民党政権が2度に渡って1年で崩壊するという前代未聞の連続スキャンダルと、しかもそれが単に個人の資質の問題でなく自民党そのものの構造的劣化の問題であることについて、麻生はもちろん他の4人も一言も触れずに通り過ぎようとしたことにある。21日のサンデー・プロジェクトで私がそれを問うた時、麻生は「1人目の方は病気ということがあったんで別だが、2人目の方は、大連立のことで(小沢一郎に)裏切られ、日銀総裁人事で反対され、誰と話をしたらいいか分からなくなって、だんだんやる気をなくしていった」などと、まるで民主党の我が儘がいけなかったかのような幼稚極まりないことを言っていた。毎日新聞の川柳欄に「小沢がネお手々つないでくれないの」というのがあったが、麻生までがこんな程度のことを言っているのでは国民に馬鹿にされても仕方がない。

 しかも、麻生は安倍辞任の時も福田辞任の時もNo.2の幹事長であって、その大失態に責任の半分を負うべき立場にありながら、お詫びも反省もなく、真っ先に次の候補に手を挙げる有様で、野中広務が17日付毎日新聞のインタビューで指摘したように「幹事長の職務が分かっていない」。

 25日付毎日のコラムで与良正男もこう指摘する。「2人ともほとんど誰にも相談せずに辞任表明した。……首相が1人で勝手に悩み、勝手に辞めてしまっても、その首相を選んだ人たちからは『責任を感じる』といった言葉は聞かれない。もう過去の話とばかりに『さあ、次は誰が首相なら自分の選挙に有利か』と走り始めるのだ」と。

 これでは、国民が麻生に対して「2度あることは3度ある」かもしれないと不安を抱くのも当然である。麻生ブームは起こりようもなかった。

●それでも麻生の“顔”で勝負?

 それでも自民党は、あたかも麻生ブームが起きているかのようなつもりで、麻生の“顔”を前面に押し出して選挙に立ち向かわざるを得ない。上述の世論調査で、「比例区でどの党に投票するか」あるいは「総選挙でどの党に勝たせたいか」という問いに、久方ぶりに自民が民主を上回るスコアを得たこと、その要因の1つとして考えられるのがブームとは言えないもののそこそこの麻生人気で、その証拠に「次の首相として誰がふさわしいか」の問いに、読売でも毎日でも麻生がダブルスコアで小沢を引き離していることは、多少はご祝儀分が混じっていたとしても、自民党にとって救いである。

 新任の河村建夫官房長官は「総選挙は次の総理を選ぶ選挙。『麻生を選ぶのか小沢を選ぶのか』という戦略を立てていたところだから、その方向で進んでいく」と語った。その心は、小沢が専ら「誰がなっても自民党は同じ。自民党政権では世の中変わらない。政権交代こそが必要」と、自民党を選ぶのか民主党を選ぶのかと訴え、ほとほと自民党にあきれ果てている長年の自民党支持層にも一定の共感を引き起こしていることへの対抗である。「ここはもう自民党はいったん野党になって出直すしかないんじゃないか」という心情の広がりに歯止めをかけるには、「いや、麻生で自民党は変わったんだ」という強烈な印象を作り出さなければならないが、それには麻生は、人間的には個性的だが政策的には平凡というより反改革という意味では後ろ向きで、この戦略もなかなか思うに任せない。

 人格的には、確かに、麻生の軽快・饒舌に対して小沢の鈍重・口下手という対照が成り立って、それはメディア時代の選挙には有利に働くかもしれないが、裏返せば、麻生のどこまで真面目なのかと疑わせるほどの軽さやそれゆえの失言癖と、小沢の愚鈍なまでに本筋だけを訴え続ける生真面目さと重厚さというコントラストに転化しかねない。いつもは自民党機関紙のような読売が今回珍しく麻生に辛口で、25日付1面の橋本五郎特別編集委員の「拝啓麻生太郎様」というコラムは、祖父=吉田茂にも数々の失言が残っているが「問題は質です。吉田の失言にはある種の信念、確信がありました。麻生さんの失言には『軽さ』が目立ちます。失言にも器量が出てくるのです。『たかが失言』ではありません。言葉の重みがなくなり、政治への信頼が一気になくなります」と、早々と麻生が失言でコケる危険に言及しているのが面白い。

 党・内閣人事の1つの特徴も、麻生の際だたせで、総理を支える両輪となる官房長官には河村、党幹事長には細田博之と、いずれも声の大きくない実務型の人物を据えて麻生が食われないよう配慮してある。

●「小泉改革」への死刑宣告

 政策面での最大特徴は、「小泉改革」の完全終息宣言である。とりわけそれは、積極的な財政出動で思い切った景気対策をと一貫して主張してきたこと、その考えを共有する同志=中川昭一を財務相に据えたばかりか、何と、小泉以前からの改革の原点である「財金分離」を否定して、彼に金融相をも兼任させたことに、はっきりと現れている。

 財金分離については、日銀総裁人事の迷走との関わりで本誌NO.432でも詳しく述べているが、まさに明治以来百数十年に及ぶこの国の発展途上国型の官僚専横体制の頂点に立つ旧大蔵省権力を真っ二つに断ち割って、官僚の政治に対する支配を打破していこうとする決定的な第一歩だったのであり、それを麻生が「世界中で金融危機対応を検討する時に、日本の財務相だけが金融に関係していないのは機能的でない」などという理由でなし崩しにしようとしているのは、改革そのものを正面から否定しているに等しい。象徴的には、橋本行革から始まって小泉改革に受け継がれた自民党政権によるそれなりの「改革」は、この一事を以て終わるのであり、それを見て小泉純一郎元首相が「もはやこれまで」と思い、今期限りで国会を離れることを決めたのも、大いに理解できることである。

 時代の課題、従って総選挙の「本当の争点」は、NO.459で述べたように、過去百数十年の惰性としての官僚支配に対する全線に渡る対決である。麻生は、それはやらないと宣言し、小沢はそれをこそやるために政権を手に入れると決意している。そこが争点であることを国民が見定めれば、この選挙は、官僚と戦えそうにない自民党か、官僚と戦えるかもしれない民主党かという選択となる。補正予算審議は、その対立構図を具体的な問題を通じて国民に分かりやすく理解して貰う絶好の機会となろう。それに成功すれば、民主党の地滑り的勝利も夢ではなくなるだろう。▲

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【関連記事】
■これでは選挙ができない!内閣支持率結果一覧(9/26)
■田中良紹:選挙に勝たないための戦術(9/25)
■岸井成格:麻生新政権、意外だった最初の要人事(9/24)
■辺真一:麻生政権で日韓、日朝は?(9/24)
■麻生氏圧勝の自民党総裁選 その裏側を探る(9/23)

2008年9月26日

これでは選挙ができない!内閣支持率結果一覧

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※カッコ内は前回比
※日経の「望ましい政権の形」の質問項目には「自民と民主が参加する連立政権」という回答項目があり、50%が大連立を支持している

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【関連記事】
田中良紹:選挙に勝たないための戦術(9/25)
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辺真一:麻生政権で日韓、日朝は?(9/24)
麻生氏圧勝の自民党総裁選 その裏側を探る(9/23)

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麻生内閣の発足を受け、新聞各紙の全国緊急世論調査の結果が発表された。
内閣支持率は45~53%と発足時の福田政権を下回り、総裁選を盛り上げることで支持率の上昇を狙っていた政府与党としては、前途多難なスタートとなった。(詳細は上記表)

なかでも注目すべきは総選挙での投票先をたずねる項目。すでに各紙とも自民と民主の数字が拮抗しており、政権交代を望む国民の声の大きさがそのまま結果となってあらわれている。

国民の関心の高い「事故米」「年金・保険」「金融」の3点セットを放置したまま総選挙に突入すると、与党が過半数割れに追い込まれる可能性は十分にある。その場合、麻生首相は在任期間が戦後最短の首相として日本の歴史に汚点を残すことになりかねない。

11月2日の総選挙の日程は既定路線となりつつあるが、麻生内閣はどういった政策でこの逆風を跳ね返すのか。それとも2009年9月の衆議院任期満了まで総選挙を延期する奇策を打つのか。これからの対応が注目される。

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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「自民、民主ともに過半数割れのケースも」(9/26)

自民党からすればあと5~10ポイント高い数字であってほしかった。そうでなければ解散総選挙は厳しい。これは、安倍も福田も1年で政権を放り出してしまったことに対し、国民が麻生にあまり期待していないということだろう。

毎日新聞の調査では「どちらが首相にふさわしいか」が麻生太郎首相42%、小沢一郎代表19%。しかし「次期衆院選で勝ってほしいのはどちらの党か?」という質問では自民41%、民主37%と拮抗している。

この他にもいろいろな世論調査がある。そこでは民主党の単独政権を望む人は意外と少ない。逆に自民党中心の連立、あるいは民主党中心の連立、場合によっては自民と民主による大連立への支持率も高くなっており、選挙の予測を難しくしている。これは選挙後におこるかもしれない政権再編について、政治家も国民も予感し始めているからだろう。

国民には今のねじれ現象を何とかしてほしいという思いがある。一方で、一気に政権交代を望んでいるかというとそうでもない。おそらく有権者はまだ迷っている状態なのではないか。

我々の最近のシミュレーションで可能性が最も高いと考えられているのは、自民党も民主党も過半数に届かないケースだ。そうなると公明党がキャスティングボードを握ることになるが、そこで公明党がどちらの政党と手を組むのか。さらには、公明党が協力しても過半数が取れないケースもありうる。その時はどうするのか。選挙後にはこういった初めての経験がおこりうる状況になってきている。

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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
何とも微妙な「麻生内閣支持率」(9/26)

 26日付の朝刊各紙が一斉に発表した麻生内閣の支持率は、何とも微妙な結果だった。福田内閣末期よりも大きく上がったのは当然として、福田内閣発足時には及ばず、また安倍内閣発足時には遠く及ばないというのは、麻生と自民党にとっては寂しいことで、「う~ん、もうちょっと行くと思ったのに」という苦い失望が広がっている。

 幻想混じりのブーム高揚の中で登場した安倍に及ばないのは仕方がない。しかし、その安倍が1年で人格崩壊した後に、「まあ地味だけども安倍のようなことにはならないだろう」という程度の期待度を背負って登場した福田をも上回ることが出来なかったのは、個人的人気が売り物の麻生としてはかなりショックだったろう。発足時の不支持率を見ても、例えば日経では、安倍17、福田27、麻生40で、麻生が突出的に高く、初めから期待していない人が極めて多いことが分かる。

 読売によると、自民党幹部は「微妙な数字だ。早期解散の戦略は規定通りと思うが、かといって焦って解散するほどでもない」と語ったという。とはいえ徒に解散を先延ばしても支持率が上がる見通しがある訳でもなく、むしろ失言や不祥事、それに年金、事故米等々喫緊の問題が山積みという中では下がる可能性の方が大きい。従って、補正予算案通過後、11月2日ないし9日投票という基本線は変わらない、というか変えられない。その中で、補正審議をめぐる攻防の中身が選挙を大きく左右することになろう。

小泉元首相の引退発表 今後は闇将軍をめざす?

小泉元首相は25日、次期衆議院選に出馬せず、政界を引退する意向を表明した。

読売新聞によると、小泉氏は森喜朗氏に電話で「まだ政治活動はやめない。国会活動をしないだけだ」と語っており、今後も引き続き政界になんらかの影響を与えるものと思われる。後継者には小泉氏の秘書をつとめる次男・進次郎氏(27)が神奈川11区から出馬する。

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【関連ニュース】
麻生内閣初日に小泉元首相当てつけ引退!(日刊スポーツ)
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麻生首相:小泉元首相の引退表明「前々から言っていた」(毎日新聞)
サプライズ終演 小泉元首相 構造改革派に打撃(東京新聞)
小泉元首相後継は27歳次男進次郎氏(日刊スポーツ)

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岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)
「小泉構造改革の功罪は総選挙の争点になるはずだった」(9/26)

小泉純一郎元首相の突然の引退表明には驚いた。
小泉流美学から言うと「決断したら間髪入れず」ということで行動したのだろう。

たしかに小泉は首相在任中から、「首相を辞めたらどうするのか」という質問に「オレは選挙も出ないし、政界を引退するよ」と言っていた。

しかし今度の自民党総裁選では小池百合子元防衛相を応援したり、総選挙後に政界再編の可能性もあり、小泉がその主役を演じるのではないかと囁かれていた。そのため、ここ1年ぐらいは政界引退の話はどこかに行ってしまったと私は感じていたが、やはり初志貫徹だった。

●なぜ、昨日(25日夜)に発表したのか

昨日のタイミングでの表明には、言われているように小泉が次男に議員の座を譲ることを決めたという話に関係する。

私自身も世襲に反対だが、次男が後継者になることは支持者にも戸惑いがあるはずだ。そうなると、表明のタイミングを間違えるわけにはいかない。そのため、決断した後すぐに発表したのではないか。

一方で、小泉政権を支えた麻生首相からすると「国連に行っている留守中になぜそんな話をしたんだ」という気持ちはあるかもしれない。だが自民党は今、後がないくらい崖っぷちに立たされていて、小泉改革の「光と影」の影の部分である格差問題で、選挙は相当厳しい。だから麻生政権としては小泉改革を修正していかなければならない。

皮肉な見方をすると小泉が麻生の留守中に当てつけたと考えられるが、二人の関係からすればそうではないだろう。むしろ、麻生が東京にいた場合に与える影響を心配し、麻生が留守中だからこそ昨日に発表したのではないか。

だから、引退の表明は昨日しかなかった。

●総選挙にどのような影響を与えるか

この引退劇は、選挙に善し悪しの両面の影響があるだろう。国民新党の亀井静香代表代行が「当面の最大の敵がいなくなって、肩すかしを食ったようだ」と述べたように、小泉構造改革の功罪が総選挙の争点になるはずだった。

そのシンボリックな人間が姿を消したことによる影響は計り知れない。小泉は自由な立場で発言することができるようになり、選挙応援でも引っ張りだこになるだろう。あるいは、地域によっては小泉構造改革の影の部分が大きいから、応援には来ないでほしいという人もいるかもしれない。

今後、総選挙で小泉がどういう応援体制をとるのか、そしてそれが選挙全体にどういった影響を与えるのかが注目される。

2008年9月23日

麻生氏圧勝の自民党総裁選 その裏側を探る

asou080922_2.gif22日午後に実施された自民党総裁選は、麻生太郎氏が2位の与謝野馨氏に5倍以上の差をつける351票を獲得して圧勝し、第23代自民党総裁に選出された。

内訳は麻生氏351票、与謝野氏66票、小池百合子氏46票、石原伸晃氏37票、石破茂氏25票。

“茶番劇”とも呼ばれた今回の総裁選だが、その裏側では一体何ががおこっていたのか。テレビや新聞では報道されない総裁選の真相について、THE JOURNALが緊急徹底分析を行う。

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【コメント】
■堀江貴文(元ライブドア社長) 「日本の未来は明るくない」
■田中良紹(ジャーナリスト) 「小泉グループはこれから暗い時代を迎える」
■二木啓孝(ジャーナリスト) 「盛り上がったのは永田町だけ」

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【関連記事】
■田中良紹:小泉政治を終わらせた自民党総裁選 (9/22)
■野中広務が命懸けで問題にする麻生太郎の人権感覚(9/20)
■民主党255議席の単独過半数?!という『FLASH』予測の驚愕 (9/17)
■これでいいのか!? 自民党総裁選 (9/15)

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堀江貴文氏(元ライブドア社長) 「日本の未来は明るくない」 9/23

●堀江氏が出馬したときとの自民党と今の自民党はどう違う?
中身は基本的に変わらないと思いますが、どこかの政治評論家が言っていた通り、勝ち馬に乗るというのが、自民党の議員の本質で、あの時は小泉さんの改革路線に乗ってたし、今は麻生さんに乗るってことなんでしょう。
だからそのとき、総裁選で一番人気になる人の政策に自民党の政策はなってしまうってことなんでしょう。
ただ、自分の方針を変えずに郵政選挙の時は離党を余儀なくされた人たちが、総裁選に出ることをほのめかしたり、大臣になっているってのは違和感を禁じ得ませんが、それもまた自民党の本質ということなんでしょう。

●自民党のこれからの戦略は?
選挙に勝つしかないでしょう。
というか、今の自民党は昔の社会党以上に社会党っぽい政策の気もしますし、民主党は自民党+社会党みたいな政党なわけですし、政権交代云々言っていますが、交代しても、あんまり変わらない気もしますね。

●麻生首相で日本に未来はある?
未来がどうなるか、といえば未来は明るくはないでしょう。
だからといって、総裁選に立候補した誰が首相になっても同じと思うし、民主党が政権とって小沢総理になっても同じでしょう。特に大きな差はないでしょう。
目先の選挙のことが最優先で、そのためにお金をばらまくと。

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田中良紹氏(ジャーナリスト) 「小泉グループはこれから暗い時代を迎える」 9/22

●小泉純一郎の敗北

今回の総裁選の結果は、小泉政治の終わりを意味する。小泉には政界再編を仕掛ける力はなくなった。

構造改革路線の石原と小池は党員票で1票しか取れなかった。これは党員・党友が構造改革にNOと言っていることを意味する。議員票を見ても、石原が37票で小池が46票。これを国会議員に占める割合でみると、石原は9%で小池が12%。足して21%。つまり、自民党全国会議員の中で小泉構造改革を支持する議員は2割しかいないということだ。

この結果は致命的である。小泉は小池を応援すると言って表に出てきたにもかかわらず、その神通力は2割しかなかった。まさに完敗だ。これでは、自民党に「分裂するぞ!」と脅しをかけることすらできない。中川秀直をはじめとする小泉グループは、これから暗い時代を迎えることになるだろう。

●泡沫候補の石原と石破は他候補への刺客だった

今回の総裁選は麻生と与謝野の戦いだったが、小泉構造改革派は自分達で小池を担ぎ出した。

だが、小池に対して刺客がやってきた。それが石原である。投票の結果で小池を2番手にしたくないという人間が石原を立てたのだ。その人物は、おそらく森喜朗だ。
小池に票が集まりすぎて2位になると、自民党が真っ二つに割れてしまう危険性がある。そうさせないために、石原が担ぎ出された。結果的に、小池と石原は票を割ることとなった。

一方、麻生の対抗馬として与謝野を担いだのは津島派の青木幹雄だが、こういった中で同じ津島派内で石破擁立の動きが出てきた。

青木幹雄が与謝野を支持したために、青木に反発する津島派の議員が石破を担いだのだ。これは津島派の分裂である。石破を擁立したのは野中広務で、野中のとつながりが深い小坂憲次らが推薦人として動いた。

また、野中は麻生嫌いとしても有名で、地方票を独占する麻生に対して鳥取選出の石破をぶつけた。石場は「対与謝野」「対麻生」という2重の刺客として、総裁選に出馬したのだ。

本来であれば、与謝野を擁立するのは津島派と古賀派だった。しかし、古賀の選挙区が九州であることから、古賀派が表立って反麻生になることができなかった。もし、古賀が与謝野を支持していれば、選挙の結果はもっと互角の戦いになっていただろう。

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二木啓孝氏(ジャーナリスト) 「盛り上がったのは永田町だけ」 9/22

総裁選を通して驚いたのは、とにかく人が集まらないこと。
初日(11日)の渋谷では5000人の聴衆がいましたが、これは昨年同じ場所で麻生氏・福田氏・谷垣氏が行った街頭演説会の半分以下。どうみても自民党の関連諸団体の動員がきいていないし、私が後ろで見ていても歩く人で立ち止まる人はいなかった。

最終的には全国17ヶ所で演説会をしましたが、どの場所でも聴衆は少なく、高知では300人しか集まらなかった。小池氏が最後に演説したときは約150人しかいなかったということです。

これほど金をかけて「政策論争12日間」という見出しをつけても、盛り上がったのは永田町だけ。地方は盛り上がりに欠け、岡山県では党員の投票率が46.35%と5割を切りました(前回は52.49%)。これは、いざ総選挙となったときに中心となって活動するはずの地方党員達の半分以上がまったく動かなかったことを意味します。

今回の総裁選で私が注目したのは、総裁として「誰が選ばれれたか」ということではなく、「動員力の衰退」という自民党にとって最も深刻な事態です。

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2008年9月22日

耐震偽装事件の余波で日本の伝統木造家屋が作れない?

22日付毎日新聞「暮らし」欄が、日本古来の木組みによる「伝統構法」で木造家屋を建てたいと思っても、耐震偽装事件を受けて07年6月に建築基準法が改定され建築確認申請の審査が厳格化された影響で、時間も費用もかかって、施主がためらわざるを得ない状況が生まれていると伝えている。建築基準法改定で審査に無闇に時間がかかって住宅着工が大幅に遅れ、建築業界に打撃を与えているのみならず、景気の足を引っ張る原因の1つとさえなっていることは前から指摘されていたが、それが特に伝統構法の家づくりに危機をもたらしていることは余り報道されてこなかった。

この法改定自体は、羮(あつもの)にこりて膾(なます)吹くの伝で、国土交通省の役人が自分らの責任を問われることを回避するために、机上の空論で法律上の文言だけを変えて「厳しくやっています」というポーズをとる一方、それでスムーズに審査が行われるよう人員配置などの具体的措置を講ずるでもなく、結果的に国民に大迷惑を及ぼしているという、典型的な官僚的自己保身願望の結末に過ぎないが、これでは、いま田舎暮らしブームとも相俟って伝統的な木造家屋の価値に人々の関心が高まっているという国民の関心と合致しないばかりか、国産木材の活用のため用途拡大を図ろうとする農水省の政策や、伝統的な職人の匠の技を残し継承させようとする経済産業省の政策とも矛盾する。政治のイニシアティブによる早急な見直しが必要である。

毎日によると、法改正によって、専門知識を持った構造計算適合判定員による点検制度(ピアチェック)が義務づけられ、その結果、以前は構造計算で安全性が証明されれば建設できた伝統構法にもピアチェックが必要とされた。が、各地方の風土の中で独自に発達してきた伝統構法は、木材の質や木組みの方法などが千差万別で、構造解析が難しく、それまで3週間程度だった建築確認に35~70日もかかるようになった。しかも伝統構法の構造解析を行える機関が少なく、たらい回しにあうことも多く、費用も15~20万円程度かかる。そのため、それでなくとも廃りつつあると危惧されてきた伝統構法による家づくりが危機に瀕している。

日本の木造住宅は、戦後、アメリカやカナダで発達した簡便な2×4工法が普及してきたが、本来日本の風土・気候に最も適合しているのは、柱・梁を金具を使わずに木組みして竹の下地に土壁を塗り固めた伝統構法で、夏の高温多湿にはその通気・通風性が、また地震に対してはその柔構造性が優れているということで、その方法で新築したり古民家再生を図ることに関心が高まっている。が、他方、何百年の歴史の中で培われてきた大工の技は次第に絶滅に近づいていて、その保全が叫ばれてもいた。国交省の方向はこれに逆行するもので、そもそも、毎日も言うように、伝統構法はその土地土地に応じて、地元の材を使って、その土地の環境条件に相応しい形で構造的な安全性を確保する様々な技が歴史の試練を経て生き残ってきたわけで、それをピアチェックとかいう小賢しいやり方で一律に審査しようとすること自体に無理がある。地元の大工の智恵に任せるのが一番なのだ。

批判に直面して、国交省も「3年をめどに」実験と調査を重ねて、伝統構法を阻害しない評価基準を定めようとしているらしいが、そんなに時間を費やしていては、その間にも大工の智恵と技がますます衰退するし、しかもどうせロクな基準しか出てこない。実験や調査なんて何百年も重ねられてきているのだ。役人の愚行から日本の住宅文化を守らなければならない。

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【関連記事】
■伝統構法で家を建てたい。(毎日新聞)

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中島健一郎氏(ジャーナリスト 元毎日新聞社会部・外信部記者)
「伝統構法の素晴らしさ」 9/28

 僕は今、千葉県の山の中に、地元の土、砂、ワラ、杉材を使った地産地消の家を建てる計画だ。地元の宮大工、左官らの職人の伝統技術を生かして、伝統構法で作りたい。
 そうしないと、日本の素晴らしい職人の技が継承されないのだ。僕に協力してくれる地元の職人さんらは全員が60歳以上。あと10数年も経つとそうした高齢化した職人さんたちは徐々に現場から去ってしまう。だから若者で学びたい人たちを募って、職人の知恵と技を60歳を越えた職人さんらに伝えてもらおうとも考えている。
 奈良の法隆寺は木造建築だが、1000年以上びくともしていない。姫路城は伝統木構造と左官の技術で、あの高さと美しさを保ち、世界遺産に指定されているのだ。
 ところがそんな素晴らしい日本の職人の技を壊滅させる愚かなことを日本は行っているというのだ。9月22日の毎日新聞の朝刊によると、耐震偽装事件を受けた07年6月の改正建築基準法施行により、日本の伝統的な技術を用いた木造住宅の新築や移築が難しくなっているというのだ。詳しくはその記事を読んでいただきたいが、建築確認に手間取り、金物を使わない軸組み建築や土壁・左官の構法が敬遠され始めているというのだ。
 地震国日本で伝統構法は総持ち構造で、筋交いなどで持たせる2X4(ツーバイフォー)に代表される工法とは違う。筋交いは金物で留めるので一見丈夫に見えるが、金物は湿気を帯びると木を腐らせて数十年もすると、がたがたになるのだ。それに対して釘などを使わない軸組みの伝統構法は何百年も持つのである。
 日本の気候・風土にあった日本の伝統を建築基準法の規制で破壊するのは、なんとも切ない話だ。日本の伝統的な家屋は木や土壁が湿度の調節をしてくれ、健康によい。新建材や化学塗料でのシックハウス症候群もない。通気がよいため夏は涼しく、冬は土壁が寒さを防いでくれる。
 日本では戦後まもなく作られた法律が、政治家や官僚の怠慢で、時代にそぐわなくても改正されていない。例えば田舎でも一定以上の開発では公園を作り、ブランコや滑り台など遊具を設置しなければならない。でもその田舎は自然に溶け込んだそれ全体が大きな公園のような場所なのである。
 官僚は耐震偽装のような事件が起こるとあたふたと法律を改正する。それは「何もやっていない」といわれないためのイクスキューズのようなもので、日本の将来を見据えたものではないのだ。改正建築基準法のお粗末な部分は、しっかりした見識を持って直ちに直すべきだ。  
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高野孟氏(THE JOURNAL主幹)
「3年かけて実験と調査? クソ食らえだ」 9/22

私が昨年、房総半島・鴨川の山中に建てたのは伝統的な木組みに珪藻土混じりの土壁と国産杉板を使った、純粋な伝統構法とは言えないがそれに準ずる家だが、実を言うと、建築確認申請を出していないし、従って許可も得ていない。不法建築? いや、この一帯は「地滑り防止区域」で、そこで木造2階建て以下の家屋を建てる場合は確認申請は不要――というか、役所が「出さないでくれ」と言う。出されて許可して、後で地崩れが起きて家が壊れたら「なんで許可したんだ」と役所が責任追及されるから、最初から出してくれるな、勝手に建てろ、というわけだ。もちろんこの一帯には昔からいくらでも寺社も一般家屋も建っていて、昔からの基本は多数の松杭を狭い間隔で打ち込んで土台にするというやり方で、それで稀には予想外の地崩れで壊れたり、地盤の僅かな流動で傾いたりすることもないではないけれども、それは都会近郊の安物の2×4工法の家が欠陥住宅として問題になる頻度に比べれば何百分の一か何千分の一の確率で安全らしい。私はさすがに松杭で土台を作ることにはためらいがあって、頑丈なコンクリート基礎を築いたが、まあことほど左様に、安全基準というのは役所に決めて貰うことではなくて大工と相談しながら自分で責任を持つことなんだと心得ている。3年かけて実験と調査? クソ食らえだ。どこで実験するかで大違いなのだから、万全の実験をやろうとすれば100年もかかるだろう。

2008年9月20日

汚染米問題:10の疑問(後編)

疑問6:”あま~い”立ち入り検査の実態とは
 農政事務所が三笠フーズに対して行った検査のズサンさには信じがたいものがある。その実態については、三笠フーズの九州工場(福岡県筑前町)の男性従業員が9日、読売新聞の取材に応じ、「国の定期検査のたびに、汚染米を別の倉庫に移し替えていた」と隠ぺい工作の手口を証言している。証言した男性によると、帳簿上、汚染米が倉庫に残っていては矛盾するため、毎月1回、農政事務所の検査が行われる際には、その汚染米を(焼酎などの加工用の食用米を保管する)他の倉庫の床下に置き、その上に食用米を積んで検査官の目をごまかしていたという。さらに、最もシンプルで重大な問題は、農政事務所が立ち入り検査の約1週間前に事前連絡をしていたことだろう。前出の男性従業員は、「(事前連絡があったので)隠ぺい工作の準備は簡単にできた。汚染米を食用米に混ぜる役割の従業員もいた」と話している。

疑問7:農水省役員は本当に試験に合格したの?
 すでに、農水省の職員が三笠フーズから接待を受けていたことが判明しているが、もし、農水省が汚染米の食用転売を知らなかったとしたら、立ち入り検査をした農水省の職員は相当、無能な人物だといえるだろう。もちろん、癒着でも大きな問題だが、三笠フーズの九州工場の男性従業員は、「汚染米を床下に置き、その上に食用米を積んで検査官の目をごまかした」と証言している。癒着か無能か。どちらにせよ、お粗末な話だ。

疑問8:三笠フーズ・冬木社長の経歴詐称疑惑
 三笠フーズの冬木社長は、食用に転売した理由を「経営が厳しかったから」と弁明したが、週刊新潮(9月25日号)によると、同社の財務担当の古谷幸作氏は「うちの会社が苦しかったことはない」と証言しており、冬木社長は高級ブランド服を着て外車を乗り回す”セレブ”な人生を送っていたという。また、同誌によると、冬木社長は自身の経歴を「日本電機学校卒」と述べているが、「10代半ばにはもう大阪で働いていた。専門学校に通ったとは聞いていないし、卒業していないはず」と、少年時代の冬木社長を知る人物が証言している。冬木社長が偽造したのは米や経営状態だけではなかったようだ。

疑問9:1日でも早く辞めさせたかった太田農水相
 三笠フーズによる事故米の不正転売が発覚してから約2週間。今月19日、太田農相は報道陣を前に、自らの辞意を表明した。24日に予定される福田内閣の総辞職まで、あとわずかだが、なぜ辞任を決断したのか。太田農水相は「汚染米の流通先がおおむね判明したことや、再発防止策の骨子もまとまったので、一つの節目ではないかと考えた」と説明したが、周囲からは「この先、いろいろ問題が出てくる前に辞めた。無責任辞任だ」と批判する声が少なくない。政治ジャーナリストの田中良紹氏は、「汚染米問題は耐震偽装問題に匹敵する国家犯罪です。けれど、太田農水相には、今後、相次ぐだろう諸問題に対応する能力がない。03年の『集団レイプ元気がある』発言や今回の『ジタバタ』発言に代表される、おそまつな対応をされると総選挙にも影響がでる。1日でも早く辞めてほしかったというのが首相官邸の本音でしょう」

疑問10:「汚染米が肝臓癌急増の原因」は嘘?
 インターネットの掲示板「2ちゃんねる」では、10年前から西日本で急増している肝臓癌と汚染米の関係を指摘する声が上がり、大きな話題を呼んでいる。その根拠となっているのが、国立がんセンター(東京都中央区)が公開している都道府県別の肝臓癌の死亡者数の都道府県別グラフと年次推移グラフで、グラフによると、肝臓癌の死亡者は汚染米が流通していた西日本に多く、また、三笠フーズが汚染米を食用として販売し始めた10年前から急増しているという。確かに、今回の汚染米に発見されたアフラトキシンは肝臓癌を引き起こすといわれている。農水省は、アフラトキシンについて「三笠フーズがカビの塊を取り除き、米粒を洗浄するなどして出荷しており、健康被害の心配はない」としているが、本当のところはどうなのか。詳細は、内科医のNATROM氏のブログに記載されているが、結論からいうと、今回の汚染米と関西での肝臓癌の急増に相互関係はなく、「肝臓癌の死亡者数が95年で不自然に上昇している理由は、死因統計分類のルールが変わったことによるもので、94年までは肝硬変として分類されていた死亡者の一部が、95年から肝臓癌として分類されるようになったから増えた」ということらしい。専門家の間でも、単なる偶然の一致とする見方が優勢だという。

汚染米問題:10の疑問(前編)

疑問1:そもそも汚染米(事故米)とは
 汚染米(事故米)とは、国が購入した政府米のうち、輸送途中に水に濡れカビが生えたり、残留農薬などで汚染されたりして食用に適さなくなった米のこと。その多くはMA米(ミニマムアクセス米)から生じている。MA米とは、93年のGATT(ガット)・ウルグアイラウンド農業合意に基づき、日本政府が輸入を義務付けられた米のことで、現在では年間約77万トン輸入されている。

疑問2:なぜライスロンダリングはおきたのか
 三笠フーズ(大阪市北区)がばら撒いた農薬入り米は、焼酎メーカーから菓子、福祉施設や保育園の給食まで広範に拡大している。同社の冬木三男社長は、汚染米の入札のため全国どこにでも自ら出向いたというが、そもそも汚染米を巡る”ライスロンダリング”は、なぜ起こったのか、その構図を分析する。まず、三笠フーズは政府から1キロ約10円(通常の米の約15分の1)で仕入れた汚染米を、工業用としてキロ約39円で仲介業者に販売。米は工業用のまま、キロ約44円で食材卸業者に転売され、その後、伝票上のダミー取引を経て、工業用から食用として転売された。米は最終的にキロ約百数十円で関西や九州などの米穀店に出荷されたという。工業用が食用になるまで、いくつかの業者を経ているが、実際には三笠フーズの九州工場から食用の販売ルートに乗せた業者まで直接運ばれていた。ちなみに、政府が03年から08年に三笠フーズへ販売した汚染米は合計で約1700トン。仮に、全てをキロ10円で仕入れて、最終的に150円で販売したとすれば、03年から08年に行われた一連のライスロンダリングによる利益は約2億3800万円となる。二束三文の汚染米が宝の山に化けたのだ。

疑問3:工業用糊に汚染米は使用されていなかった
 農水省によると、汚染米を入札した業者は「食用に転用しない」という誓約書のほか、業者を管轄する農政事務所が発行する製粉設備などの保有を裏付ける「証明書」を提出する義務があるという。その誓約を破ったのが三笠フーズだが、そもそも工業用糊に需要はあるのだろうか。工業用糊の大手メーカー「不易糊工業」(大阪府八尾市)がサンデー毎日(10月5日号)の取材に対し、「うちはトウモロコシが原料のコーンスターチを使用しており、米は使いません。あえて使うと高コストになってしまうので、米を使うことは通常考えられない」と証言している。また、工業用糊の大手である「住友3M」(東京都世田谷区)と「ヤマト」(東京都中央区)も、週刊ポスト(10月3日号)の取材に、「糊の製造に米は使用していない」と答えた。食用にも使えず、工業用糊としての需要もないのに、ライスロンダリングによる巨額の利益を得るために、三笠フーズは汚染米を購入したのだ。

疑問4:農水省職員への接待は年に5、6回
 週刊ポスト(10月3日号)は、これまでに報じられた05~06年にかけての三笠フーズによる農水省職員に対する接待に加えて、「農水省の本部の職員はもっと大きな接待があった」という三笠フーズ幹部のコメントを掲載している。その幹部によると、05年~06年の接待は三笠フーズ傘下の居酒屋で1人3000円程度の安い店で行われ、さらに自分は同席していないものの、農水省の本部がある東京や汚染米を扱う福岡では、もっと大きな接待があった可能性があり、「同社の冬木社長は年に5、6回は1人で東京に行っていた」と証言している。

疑問5:検査日にも昼食接待?
 各地の農政事務所は、管轄地域の業者が行う加工作業に立ち会い、在庫量や加工数量、販売状況などを帳簿で確認する。しかし、規定には抜き打ち検査や販売先の調査はなかった。「検査の時間を調べてみると、そのほとんどが11時から12時の間に行われていた。これはなぜなのか。農政事務所は、事前に三笠フーズに検査日を電話で連絡し、検査の後には一緒にゆうゆうと昼ごはんでも食べていたのではないか。調査を担当していた近畿農政局大阪農政事務所の課長(当時)が05~06年にかけて、冬木社長らから飲食接待を受けていたと報じられているが、もしかしたら、昼食接待なんかもあったのかもしれない」(週刊朝日編集長・山口一臣氏)

>>後編に続く

汚染米問題:10の疑問(後編)は・・・
・”あま~い”立ち入り検査の実態とは
・農水省の役員は本当に試験に合格したの?
・三笠フーズ・冬木社長の経歴詐称疑惑
・1日でも早く辞めさせたかった太田農水相
・「汚染米が肝臓癌急増の原因」は嘘?

野中広務が命懸けで問題にする麻生太郎の人権感覚

 毎日新聞が17日から連載している「自民党総裁選/もの申す!!」シリーズの第1回に野中広務=元自民党幹事長が登場し、「野中さんは現役時代から麻生さんに厳しかった」という問いに答えて、こう言っている。

「人権を踏まえた視点がありますか。華麗な家柄だけど、人を平等に考えない。国家のトップに立つ人として資質に疑問がある」

 余りに一般論というか上品すぎる発言で、過去の2人の間の経緯を知らずにこれだけ読んでも何のことやら分からない。と考えて編集部が急遽差し替えでもしたのか、あるいは単なる偶然かは不明だが、19日発売の『週刊ポスト』10月3日号がトップ特集記事「野中広務を激怒させた人権感覚/麻生太郎の『部落差別発言』『朝鮮半島出身者強制労働』という問われる過去」で、毎日インタビューに詳しい解説を与える形になっている。

 政界事情に詳しい向きには周知のことだが、『週刊ポスト』に沿ってもう一度おさらいすると、01年3月に政権行き詰まりで森喜郎首相が辞任表明(考えてみれば、森派から4人続けて総理が出て、途中で放り出さなかったのは小泉だけだったんですね)、自民党総裁選が繰り上げ実施されることになって、当時最大派閥の橋本派では、後継総裁に自派から野中を推そうという空気がある一方、他派ながら麻生を支持しようという動きもあった。結果的には、橋本派は野中が引いて橋本龍太郎会長自身が出馬し、麻生、ハグレ烏の小泉純一郎との戦いになって、意外や意外、小泉政権が誕生することになるのだが、その過程で、野中の主張によれば、麻生は、旧河野派の会合(もしくは会合後の雑談)で「野中のような部落出身者を日本の総理には出来ない」と発言した。伝え聞いた野中は激怒し、会合出席者3人に裏をとった上で麻生発言をメモにして配付、自民党総務会の場で麻生を目の前にして指弾したり、その他の場面でも繰り返しこれについて言及し、魚住昭『野中広務/差別と権力』(講談社文庫)にもその経緯が述べられている。最近では、今年8月24日のTBS『時事放談』で「私は、私個人のことについても、麻生総理総裁ができたら、自分の生命に賭けて国民に分かるようにしますよ」と執念を燃やしている。なお麻生は一貫して、そのような発言をしたことは全くないと、事実無根で押し通している。

 もう1つの麻生に絡む人権問題は、「筑豊の炭鉱王」と言われた麻生家の巨富の源泉となった麻生炭鉱に、第2次大戦中を通じて延べ1万人の朝鮮人労働者が強制労働させられていたことで、もちろん当時幼かった麻生自身に直接の責任があるわけではないものの、彼が「創氏改名は朝鮮の人たちが『苗字をくれ』といった」とか、「ハングル文字は日本人が教えた」とか、戦前日本の朝鮮人に対する差別・抑圧がなかったかのように言いくるめようとする発言をしばしば繰り返していて、総裁選での麻生優勢が伝えられるにつれ、韓国で「彼は日帝植民地時代の強制動員で悪名高かった麻生炭鉱の後継者」(韓国日報社説9月3日付)といった批判が出始めている。

 野中は若き頃に京都で強制連行された朝鮮人労働者の悲惨を見て怒り、それが自分の政治家としての原点だと公言してはばからない人物で、自分を含めた部落出身者や強制連行された朝鮮人への麻生の差別観を我慢が出来ないのだろう。さて麻生総裁誕生で野中の怨念の戦いは激発するのか?

2008年9月19日

金正男が北朝鮮の後継者就任を拒否!

北朝鮮指導者の後継者として有力視されていた金正日総書記の長男・金正男(キム・ジョンナム)氏が、同国の指導者になることを拒否したという。

コリアレポート編集長の辺真一氏は、「金正男は叔父の張成澤党行政部長と今春、アフリカに旅行に行きました。そこで、張部長が正男に後継者になるつもりはないかと勧めたのですが、正男はあっさり断った」と語る。

金正男氏は全身ブランドの服を着ることで有名だが、指導者になればそういった自由な行動はもちろん制限される。そういったことも総書記への就任を拒否する理由の一つとなった可能性もある。

現在金正男氏は北京に滞在しており、昨日、その様子をフジテレビのカメラがとらえた。とっぴな行動がいつも話題となる正男氏だが、彼は北朝鮮でこれから先どのような働きを担うのか、それとも周辺の説得に応じて総書記に就任するのか、今後の行動が注目される。

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【関連記事】
金正男に後継者の気はないようだ(辺真一:ぴょんの秘話)
金正男氏と推定される人物、北京で目撃(中央日報)

世紀の茶番劇 自民党総裁選討論会の全発言!

NYタイムズ紙に「口紅つけても豚は豚」とまで揶揄された今回の自民党総裁選。

5人の総裁候補は19日、都内の外国人記者クラブで公開討論会を開いたが、22日投開票を前にしてすでに麻生太郎氏の当選は確実な情勢で、なんとも盛り上がりに欠ける消化試合となった。

一方、討論会の中で注目を集めた発言は、大手新聞があいついで報じた10月26日総選挙説を麻生氏が否定したこと。麻生氏は出席した外国人記者に向かって「(10月26日総選挙説を)本社に打電すると間違える可能性が高い」と警告を発した。

この発言の狙いは、総理大臣の“伝家の宝刀”である解散権を事前に封じ込めようとする自民党と公明党によるリーク工作に対し、「総選挙の日程を決めるのは自分だ!」と抵抗したものと思われる。

また、与謝野馨氏も「(10月26日総選挙説は)先週まで」と、世界中が金融不安を抱えるなか早期の解散は難しい考えを示し、麻生氏に同調した。(※発言の詳細はMovie5)

●自民党総裁選討論会 全発言(英語での発言部分を除く)
Movie-1(YouTube)

Movie-2(You Tube) 「麻生太郎はなぜクリスチャン?」「日中関係」ほか
Movie-3(You Tube) 「金融危機」「靖国神社に参拝するか」
Movie-4(You Tube) 「自民党総裁選」「麻生セメントの強制連行問題」ほか
Movie-5(You Tube) 「解散総選挙はいつ行うか(麻生・与謝野)」ほか

2008年9月18日

アメリカ発世界金融危機 「血の日曜日」に世界が震え上がった

アメリカ第4位の証券会社リーマンブラザーズが破綻した。同社の救済にはバンク・オブ・アメリカが乗り出すと考えられていたが、最終的にバンク・オブ・アメリカはリーマンより大手のメリルリンチを買収し、リーマンは破産せざるをえなくなった。アメリカのメディアは今回の破産を「血の日曜日」と報道している。

リーマンの破産を受け、NYダウの平均株価は500ドル以上下落。日本の株式市場も年初来安値を更新中だ。

昨年7月のサブプライム問題に端を発した今回の金融危機は、1年を経過して大きな試練を迎えることとなった。

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【コメント】
■水野和夫(三菱UFJ証券 チーフエコノミスト)
 「アメリカにとって公的資金の注入は40年間の敗北宣言に等しい」

■高野孟(THE JOURNAL主幹)
 「なぜ公的資金投入をリーマンを倒れるに任せたのかは大きな謎」

■田原総一朗(ジャーナリスト)
 「アメリカの戦略に乗ってはいけない」

■金融関係者から編集部宛に届いたメールを公開!
 「中国の銀行はいったん歯車が逆回転すると危ない」

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【関連記事】
■高野孟:サブプライム問題ごときでなぜ世界がガタガタするのか?
  ──電子的金融カジノのふしだらさ(INSIDER No.440 08/5/31)

■「世界同時不況」に脅える世界の国々(News Spiral 08/7/29)
■速報記事一覧

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水野和夫(三菱UFJ証券 チーフエコノミスト)(9/18)
「アメリカにとって公的資金の注入は40年間の敗北宣言に等しい」

●なぜアメリカ政府はリーマンを救済しなかったのか

金融システムを守るという観点からすれば、本来は公的資金を早い段階で注入して救済した方がよかった。

なぜリーマンを救済しなかったかというと、アメリカは、新自由主義で進んできたこの40年間を否定できなかったからではないでしょうか。

ブッシュ政権は、レーガン・サッチャーに続く新自由主義政権です。
欧米社会は、ケインズを葬りるために古文書に入ったようなハイエクとフリードマンの理論を持ち出し、レーガン・サッチャー政権ははそれを採用しました。そのために2人にノーベル賞も与えました。クリントン政権も民主党政権でありながらルービン氏を採用し、新自由主義を採用しました。

そして、最後のブッシュ政権は、新自由主義の経済の価値観にネオコンという道徳的な部分を補強し、新自由主義をさらに先鋭化させました。

しかし、その結果が今回の金融不安です。ですが、それを政府が救済してしまえば、新自由主義で進んできたこの40年間の失敗を認めることになってしまう。ベアスターンズは突然襲ってきたからFRBが支援しましたが、今回もまた政府が全面的に支援するとなると、これはこの40年間の敗北宣言に等しい。

その意味では、ブッシュ政権というのはイデオロギーとともに心中する政権なんでしょう。公的資金の本格的な投入も次の政権に持ち越しです。しかし、イデオロギーと心中した結果として金融市場まで巻き込まれては困ります。後はただ、祈るばかりです。

●今後も金融不安は今後も続く?

この問題はまだ尾を引きます。7月末の時点でIMFが4000億ドルの不良債権処理が進んだと発表しました。今回の破綻で約1000億ドルぐらい積み増しましたから、これで5000億ドルが償却できるでしょう。でも、サブプライムの不良債権がトータルでいくらになるかは終わってみないとわからない。

私の試算では、トータルで1兆3000億ドルぐらいだと考えています。ということは、残り8000億ドルをこれから償却しないといけない。

アメリカでは地方の銀行が危険視されていますが、それだけで8000億ドルの償却はできないでしょう。不良債権の処理というのは7~8合目が心臓破りの35キロの丘などと言いますが、今はまだ4割の償却が終わった程度。まだ折り返し地点にもきていません。ということは、メリルリンチとリーマンの他にも大きな金融機関が経営難に陥る可能性は十分にあります。

サブプライム問題というのは、後から振り返ってみると一つの大きな転機となるのではないでしょうか。新自由主義はスタグフレーションなどの資本主義の抱えてる問題を克服するために登場しましたが、結局はダメだった。資本主義は、またもや振り出しに戻ったのです。

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高野孟(THE JOURNAL 主幹)(9/17)
「なぜ公的資金投入をリーマンを倒れるに任せたのかは大きな謎」

 今年3月のベアスターンズの破綻の際には米政府は300億ドルの公的資金を投入することを条件にJPモルガン・チェースに救済買収させることで危機を回避し、また9月9日には経営が行き詰まっている政府系住宅金融2社に対して2000億ドルの公的資金枠を設けて政府管理下に置くことを決定した。なのに、ベアスターンズより遙かに影響が大きいことが予想される今回のリーマン・ブラザーズの破綻に対し、恐らく600億ドル程度の公的資金を注げばそれを条件にバンク・オブ・アメリカが救済買収に応じたであろうに、敢えてそうしなかったのはなぜなのか、謎である。

 リーマンに限らず米金融機関は、サブプライム関連証券などの債券に、破綻時に備えたクレジット・スワップ・スワップ(CDS)という債券保険を掛けていて、お互いにそれを大量に発行し持ち合っていて、その市場規模は60兆ドル、保険金総額は400兆ドルにも上る。金融工学の計算上ではそれによってリスクが回避されることになっているが、リーマンの破綻によって他の金融機関がCDS保険金の支払いが出来なくなって経営破綻を早める危険がある上、現実には、そのCDSをさらに束にして1つのコラテラライズド・デット・オブリゲーション(債務担保証券=CDO)という新しい商品としてどこかへ売り飛ばしてしまって誰が持っているか分からないという状態であるため、その影響は複雑系モデルの領域に突入して訳の分からない連鎖倒産を引き起こす危険が濃厚である。サブプライム債券を証券化して売り、その保証のためのCDSも証券化して売ってしまうという米国式金融資本主義のふしだらは、この決定によってさらに激しく崩壊する。繰り返すが、なぜ米政府がここで公的資金投入を拒んでリーマンを倒れるに任せたのかは大きな謎である。

 今後数ヶ月の金融市場の大破綻を見て、結局米政府は、今注げば最小で済んだ公的資金をその何倍も使って食い止めようとすることになるのではないか。ところがその原資は、史上空前の財政赤字の下では、当然、国債増発に頼るしかない。水野和夫(三菱UFJ証券チーフエコノミスト)が『エコノミスト』9月 23日号「米国の落日、やがて来るドル危機」で指摘しているとおり、その「国債の買い手は外国人投資家しかいない」が、償還の当てもない国債を彼らが買い続けるかどうかは疑わしい。かと言って、これまで中東やシンガポールや中国の政府系ファンド(SWF)に奉加帳を回して米金融機関に出資を仰いで穴埋めするという方式も、すでにそれに応じたSWFが米金融機関の株価下落で多大な損失を出している現状では、もはや通用しない。水野が言うように「78年のドル危機時に、当時のカーター政権が欧州通貨建ての米国債(カーター・ボンド)を発行したように、米国が為替リスクを負う外貨建てで米国債の発行を迫られる可能性」もある。基軸通貨国=米国がドルで国債を発行できないという屈辱的事態の中でドル危機が深まり、ドル体制を支えてきた柱の1つである中東湾岸諸国も、かねて検討を進めてきた自国通貨をドルにペグする制度を止めて複数通貨のバスケット方式による通貨管理に移行するプランを実行に移し、さらにその先、原油取引のドル建て制そのものの見直しに進むかもしれない。

 いよいよもって世界は、米金融帝国の崩壊にどうしたら飲み込まれずに生き残れるかの自己防衛策を競い合わなければならなくなった。ノーテンキとも見える自民党総裁選はその課題に応えていない。

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田原総一朗(ジャーナリスト)(9/16)
「アメリカの戦略に乗ってはいけない」

アメリカの財務長官であるポールソン氏くは、ファニーメイとフレディマックは約22兆円の公的資金で救済したが、次に破産した金融機関は救済しないと言っていた。その結果、リーマンブラザーズは本当に救済されなかった。

だが、リーマンが救済されなかったら、その損害額は約200兆円とも言われている。なので、現段階ではリーマンを5~6つに解体し、公的資金の注入やアメリカ金融機関による買収ではなく、世界の金融機関が買収するのではないかと言われている。買収者の候補には、野村證券の名前も挙がっている。

野村證券が本当に買うかどうかはまだまだわからない。だが、買収した場合「積極的な判断」との評価もできるが、裏を返せばこれはアメリカの押し付けでもある。

これが日本の苦しいところで、リーマンが倒産して200兆円以上の損害を出したら、世界経済は無茶苦茶になる。だから、結局は日本やフランスなどの他国がある程度リーマンの負債を負担せざるをえない。負担せざるを得ないという苦しいところに、アメリカは逆にそれを押し付ける。

これから先の対処方法が世界の同時経済危機を防ぐことになるのか、それとも世界がアメリカの戦略にそのまま乗ってしまうのか、ここを注意して見なければならない。

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金融関係者から編集部宛に届いたメールを公開!
「中国の銀行はいったん歯車が逆回転すると危ない」

そうですね。金融業界はひっくり返って慌ててますね。
本来であれば、邦銀にとって大チャンス到来といったところなのでしょうが、ひとまず、事の成り行きを見守りたいと言うのが本音ではないでしょうか?

その点、他のアジアの銀行は結構ヤバイかも知れませんよ。
中国の銀行は、時価総額No1とかいって威張ってますけれど、国からの援助がないと大量の不良債権でとうの昔に破綻してるほど資産内容が悪いですし、香港や台湾、韓国の銀行なんかも、国民性なのでしょうが、結構アグレッシブに経営を行っていて、いったん歯車が逆回転すると、大変なことになりかねません。

中国が先日サプライズ利下げしましたが、そういう文脈の中で捉える必要があると思います。

お金を効果的に使えれば、日本としては、オーラスで役満ツモったぐらいのパンチ力がある攻撃ができると思うのですが。。。

そういう意味では、日本の金融機関で一番の金持ちであるニッセイに注目してます。
東京海上は先日既にお買い物してましたしね。
みずほも本来は何かお買い物したいところですよ。
ゴールドマンサックスを日本人が買っちゃったら、どうでしょう。
ユダヤ人に叩かれそうですね。

いずれにせよ、米国は、巨大銀行の倒産まで行くと見てます。
米国版ニッセイ(AIG)が国有化したわけですから、もう何が起こっても不思議はありません。

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【速報記事】
●日経平均株価リアルタイム速報
●バークレイズ、リーマンの主要事業買収で合意(日経新聞)
●米国に依存しない新たな金融秩序が必要=中国紙(ロイター)
●米AIGの存続が再び焦点に、格下げと世界の株価急落で(ロイター)
●オバマ氏とマケイン氏、金融政策で舌戦(日経新聞)
●思い上がりと破滅の悲劇 リーマン破綻(フィナンシャル・タイムズ)
●NY州、FRBと交渉 AIGへのつなぎ融資実施で(日経新聞)
●リーマン救済の意思なかった 米財務長官、公的資金は最小限に(47NEWS)
●米リーマンが破産法適用を申請、メリルはバンカメに身売り(ロイター)

2008年9月17日

民主党255議席の単独過半数?!という『FLASH』予測の驚愕 ――自民党は自力では小選挙区で33人しか勝てない?

takanoron.png『FLASH』は女の子の裸と芸能人のスキャンダルばかり載せている写真雑誌だが、今週号は珍しく大真面目に、「本誌の算出したデータ」を元に「300選挙区当落予測/民主惨敗!自民惨敗!」という記事を載せていて、これが面白い。

 結論は、民主党が小選挙区175、比例80、計255と単独過半数を突破し、自民党は同じく106、58、164と惨敗、公明党が現状維持の8、23、31と健闘しても、与党合計は195に止まるというものである。

 算出方法はこうだ。

(1)07年参院選比例の市区町村別の得票数をベースに、それを衆院選の小選挙区ごとの自民、公明、民主の得票数を割り出した。05年衆院選=郵政選挙の数字を元にしなかったのは“小泉旋風”によるバイアスが大きいためだ。
(2)03年衆院選の読売新聞による出口調査などから、小選挙区で自民党に投じられた“公明党の協力度”を約60%と想定した。
(3)次期衆院選で自民vs民主の一騎打ち型となると予想される269選挙区について、[民主得票数-自民得票数+公明得票数×0.6]を算出した。マイナスの数字が大きいほど苦戦となる。
(4)それに基づいて、編集部の判断も加えて、自民候補者について、
◎:学会票がなくても当選可能性がある=有力
○:学会票が60%自民に流れた場合に当選可能性がある候補=やや有力
△:学会票が70%自民に流れないと当選可能性がない候補=苦戦
▲:学会票が70%自民に流れても当選が厳しい候補=かなり苦戦
に分類し、統計上は△以上を当選として集計した。
(5)自民vs民主対決型ではない小選挙区が31あり、公明を自民が推薦するとか、社民・国民新党を民主が推薦するとかの形をとるケースがほとんどだが、これらについても自民、公明、民主の得票数に基づいて編集部が当落を判断した。

 すると驚くべきことに、◎すなわち学会票の流入なしに自力で当選の見込みがある自民候補はわずか33人しかいない。○すなわち自公協力が巧くいって学会票の60%が予定通り流入すれば当選の見込みがある自民党候補は58人だが、この中には例えば東京17区の平沢勝栄のように「私は公明党の支援を一切受けていない」と豪語する者もいて、そういう場合も学会票が60%流れたものとして機械的に○になっているけれども、実際には、上記算出方法による自民票は7万1369に対して民主票は8万5040で、公明票の60%=2万1524は平沢票に上積みされないから、彼は落選確実ということになる。ことほど左様に、自民候補の中には自公協力を採っていない者もいて、自民プラス公明票の6割という計算だけですべての当落予想がつくわけではないが、自民党の学会票依存の深刻さを知るにはまことに有用で、大いに参考にすべき基礎データである。

 △すなわち公明が相当気合いを入れて学会票の70%を自民に流すことに成功すれば当選の見込みのある自民候補は15人である。

 自民党総裁になることが確実な麻生太郎の福岡8区を見ると、麻生は▲で、すなわち学会票の70%が上積みされても当選が難しい。自民票は5万 1315に対して民主票は8万5275で、学会票の60%2万5585が上乗せされても-8376と足りず、あと10%、つまり学会票の70%が回っても8万1164で、民主票に-4111で届かない。この選挙区事情を知れば、麻生が自民党幹事長でありながら臨時国会の召集時期などについて福田総理の意向に従わず、公明党寄りの立場をとって結果的に福田のプッツンをもたらした理由も、またこの総裁選で決死の覚悟で圧勝を目指している理由も理解できる。つまり麻生は、自民党総裁で“麻生ブーム”を演出して存在感を示しつつ、その勢いを駆って総選挙に打って出て、かつ学会票の70%以上をかき集めなければならない。が、これでは何とか当選しても事実上、公明・学会のロボットになる危険があるということである。

 私がしばしば指摘してきたように、自公選挙協力は自民党を蝕んできた。それ以前の連立相手はことごとく自民党に食い尽くされて消滅してしまったが、自民党が最後に食らいついた公明党はそうは行かず、逆に自民党が侵されて、学会なしでは選挙が出来ない組織体質の劣化が進み、やがては自民党にとっての基本政策さえ公明党の要求を容れて曲げなければならない事態が必ず訪れることは目に見えていた。今がまさにその時で、例えば、福田vs麻生・公明の臨時国会会期の設定とインド洋への海上自衛隊派遣のためのテロ特延長問題で、テロ特は流れてもいいから会期短縮、早期解散・総選挙を主張する公明に、テロ特は断固やるべしが持論のはずの麻生が引きずられていく有様にそれが表れている。私はもちろんテロ特に反対だが、それでもこのようにして自民党総裁になるべき人が、総裁になっても落選する危険に直面して、なりふり構わず公明党に寄り添っていこうとする姿を見るのは忍びない。

 やはりここは、潔く自公選挙協力を解消して、33議席になってもいいから一旦野党に下って、自力で近代的な保守政党として蘇生してくる道を選ぶのが、長い目で見て自民党自身と日本政治にとって望ましいことなのではないか。

 蛇足。こういうことを言うと、また「ほら、あいつは民主党寄りだ」と言われるだろうが、私は96年の最初のいわゆる鳩菅民主党の結成に参画し、その最初の綱領的文書を執筆した人間であることを隠していない、公然たる民主党寄りである。しかしそれは、日本に本格的なリベラル政党が出来て、それに対抗して自民党もまたまともな保守政党に脱皮することを通じて、小選挙区制をフル活用した政権交代ある政治が実現することなしには日本の民主主義はこれ以上前に進めないという戦略的な判断からのことで、その立場から民主党にも自民党にも厳しく注文を付けるのはジャーナリストとして当然である。だから、いつも民主党が正しく自民党が間違っていると言い募るような単純な民主党寄りというのとは違う。今は、政権交代を目撃できる絶好の機会だから民主党頑張れと言っているのは事実だけれども、本当に民主党が政権を獲れば恐らくそれには相当批判的にならざるを得ないだろう。私が民主党結成に参画したのは、ジャーナリストの則を超える行為であったことは間違いなく、そのために当時、サンデー・プロジェクトも1カ月の出演禁止措置を食らったりしたのだったが、(これはちょっと難しい話で、本当は丁寧な説明が必要なことなのだが、簡単に言うと)私はジャーナリストは政治に対する単なる観察者ではなく、書いたり発言したりすることを通じて既に政治の当事者としてそれに関わっている運動者でもあって、そのように自分も関わって動いている政治をもう1人の自分が観察しているという「相対性原理」に立っている。INSIDERおよびTHE JOURNALでの私の論説を、単純な意味でどっち寄りというような低俗な次元で見て頂きたくないので、一言付け加えておく。▲

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田原総一朗:安っぽさばかりが目立つ総裁選 (9/10)

2008年9月15日

これでいいのか!? 自民党総裁選

北京五輪後の星野仙一批判特集では各週刊誌が飛ぶように売れたのに、福田電撃辞任の大ニュースでは、ほとんど部数が伸びがなかった・・・
一国の首相を決める選挙なのに、あまりにも関心の低い今回の総裁選に、関係者はあきれ返っている。田中良紹氏に“おバカ総裁選”とまで言われた今回の選挙。いったい、この国の政治には未来があるの?

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二木啓孝(フリージャーナリスト)
「街頭演説なんかやらなくていい」

●今回の総裁選は関心度が低い

11日に渋谷で行った総裁選候補者による第一発目の街頭演説で5000人が集まった。ところが、去年の今ごろ福田、麻生、谷垣の3氏の総裁選での街頭演説では、(同じ渋谷で)1万3000人が集まった。つまり、今回の演説は約半分の人出だった。
その理由は、自民党の党員が言うことをきかない。立ち止まる人が少ない。で、5人も出てるのに一目見ようという人が少ないからです。

報道では5人の候補者の違いを一生懸命探しているけれども、普通の人から見ればみんな一緒。せいぜい読み取れるのは小池百合子氏が小泉改革を進めると言い、麻生太郎氏が景気対策をやるというくらいで、あとはほとんど一緒だよね。

たとえば、外交安保問題。日米同盟を大事にしながらアジアを安定すると全員が同じように言う。じゃあ、国民がこれが関心があるかというと、大半の人は日米同盟堅持しながらアジアと仲良くしたいと思っているわけで、なんだか総裁選にはリアリティーがまったく全くない。

●重要なテーマが総裁選の論点になっていない

なぜかというと、私たちが思っていることが総裁選のテーマになっていないんです。たとえば、汚染米の話はどんどん広がっているのに、これどうするのかという話はない。それから、年金問題。厚生年金の改ざん問題が出てきているわけだから、社保庁をどうするのか。この問題について「安心できる社会を」なんて話をされてもリアリティーがない。それから、後期高齢者医療制度の手直しとかいってるけど、具体的にどうするのか。一番知りたいのはそこであって、逆に誰もどうして何も言わないのかが素朴な疑問です。そこに全部回答を持っていきなり言い出せば、相当いけると思うんだけどね。

それにしても、(今回の総裁選は)結局内向きなんだよね。もともと総裁選は内向き選挙なわけだから、こういう議論は国民にはピンとこない。

内向きの選挙なんだから、街頭演説なんかやらなくていいんですよ。

2008年9月11日

金正日は死んでいる!?

先月から噂されていた金正日の重体説が、確信に近いものになってきた。
いまや話題の中心は「病状がどの程度なのか」。一方、展開によっては北朝鮮で政変がおこる可能性もあり、各国で緊張感が高まっている。

【関連記事】
ポスト金正日は軍による集団指導体制?(朝鮮日報)
●金正日総書記、既に「死んでいる」?(サンスポ)
●金正日が倒れたのは三男・正雲のため(中央日報)
●中国新聞社が北朝鮮・金正日総書記「病気説」を報道(サーチナ)

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辺真一(コリアレポート編集長)
「核問題も拉致問題も年内は凍結」

●重病説の信憑性は高い?

今回の重病説の信憑性は高い。病気としか考えられない。

脳卒中で倒れたということは、オシム前サッカー日本代表監督と小渕元首相の2つのケースが考えられる。オシム前監督のように回復すれば、若干仕事の量を減らすなどして公務に戻ることができる。しかし、小渕元首相のように回復できなかったら、北朝鮮は大変なことになる。

現状では詳しい病状については確かな情報はないが、仮に金正日に意識がなければ、外交も軍事も政治もしばらくは動かすことはできない。米朝間の交渉も、アメリカの大統領選挙が終わり、次の政権が北朝鮮政策を立案・遂行するまで半年から1年かかるだろうから、その間に北朝鮮は後継者の受け皿づくりを進めることになるだろう。

つまり、金正日が早期に回復しない限り、核問題も拉致問題も年内は凍結したままということだ。

●後継者は誰に?

金正日が目の黒いうちは、長男、次男、三男のなかから後継者を選ぶことは間違いない。だが、すでに彼が植物人間のような状態なら、息子を後継者にするのは早いと考え、しばらくは暫定政権をたてることもありうる。

暫定政権は、最高人民会議常任委員会委員長の金永南氏、軍人である国防委員会第一副委員長の趙明録氏、あるいは金正日の妹の夫である労働党の張成沢氏も候補だ。
また、暫定政権を政府、軍、あるいは日本の国会に当たる最高人民会議から出し、それぞれのトップにいる人間が暫定政権を運営する可能性もある。となると、暫定政権で話がまとまらないければ、当然権力抗争もおきる。

いずれにせよ、金正日総書記が回復するのかしないのか、それによって今後の展開が大きく変わることは間違いない。

本当の争点はどこにあるのか?――自民党総裁選を巡るマスコミの浮かれ具合への疑問


takanoron.png 自民党総裁選は10日告示され、本命視されている麻生太郎幹事長に対して他の4人が挑戦する賑やかな図式となって、「総裁選を派手にやってくれ」という無責任男=福田康夫首相の“遺言”は満たされることになったものの、それにまたマスコミが軽々しく同調している有様はいかがなものか。

●2度あることは3度あるのでは?

 第1に、5人の候補者にまず問われるべきことは、自民党の総理・総裁が2代続けて、わずか1年でプッツンして職務放棄をするという、世界と国民に対する前代未聞の恥さらしをどう総括するのか、である。それを抜きにして、総選挙での負けを少なくするにはどの「顔」がマシかとか、どの政策が受けそうかとかいった浮ついた視点で総裁選を仕組んでも、人々には不真面目なショーとしか映らない。

 御厨貴=東大教授は9月9日付日経「経済教室」欄への寄稿でこう述べている。

「『失敗も2度繰り返せば、そこには構造がある』という名せりふもある。2度にわたる首相の職務放棄は、この国の政治の崩壊が構造化されていることを露呈させたといってよい」

「折からの自民党総裁選がにぎにぎしく行われようとも、先人2人の失敗を十分に吟味しない限り、宴の後に『2度あることは3度ある』事態がこないとは限らない」

 その通りで、この2度のプッツンは、2人の資質の問題もあるけれども、それ以上に自民党そのものの構造的劣化の問題であり、そこに正面切ってメスを入れて自己切開するのでなければ、誰が出て来ようと同じことになって、国民生活と日本の国際的信用にまたも大打撃を与えることになりかねない。

 INSIDERが繰り返し述べてきたように、この構造的劣化問題のポイントは次の3つである。

▼本質論的次元――自民党は明治以来100年超の「官僚政治」体制の随伴物の最後の形態であり、まさにその官僚政治体制を克服する全面的な改革を進めなければこの国が陥っている閉塞を打破出来ないという時代の中心課題の担い手とはなり得ない。1889年に明治憲法が出来て翌年に第1回衆院選が行われてからこの100年間、政治は薩長藩閥政治29年間、大正政党政治14年間、昭和前期軍部政治13年間、戦後過渡期10年間、自民党単独政権38年間、(細川・羽田政権の10カ月を挟んで)自民党中心の連立政権14年間と変遷してきたが、そのすべてを通じて、中央官僚体制が実質的に政策や予算を決定し、政治家はその周りをうろついて利権を漁ることにばかり関心を注いできたことに変わりはない。この政治の官僚への従属を根本的に転換しない限り、この国がどんな問題も解決できないということが、例えば社保庁のデタラメ、道路特定財源の肥大化やガソリン税の値下げ・再値上げ、日銀総裁人事の迷走、後期高齢者医療制度の酷薄、政治家の金権腐敗といった形で全線にわたって吹き出して、総理を立ち往生させるのである。

▼実体論的次元――しかしそうは言っても、政治家が予算を分捕って地元や関係業界にバラ撒くという古い自民党政治が成り立つ余地は急速に狭まってきて、同党の伝統的支持基盤は崩壊に瀕している。それに代わってこの9年間、自民党の選挙を実質的に支えてきたのは公明党との選挙協力であり、今や自民党の最大の支持基盤は創価学会であるという珍妙なことになっている。93年に自民党最後の単独政権だった宮沢内閣が崩壊、自民党分裂、総選挙敗北、細川反自民改革政権の成立というドラマティックな転換があり、本来であればそこで自民党は、予算に触れない野党の立場に身を沈めて徹底的な自己改革に取り組んで近代的な保守政党として再生することを目指すべきだったのに、その我慢が出来ず、細川・羽田政権を10カ月で陰謀的に転覆して、以後、社会党、さきがけ、自由党、保守党など野党がバラバラであることを利用して次々に連立に引き込んでは食いつぶし、さらには新進党や郵政造反組などから一本釣りで復党させて補充するなどして政権の延命を図ってきた。が、03年に小沢=自由党が民主党と合流して野党バラバラ状態がほぼ解消されて2大政党制的な構図が出来てきたことによって、自民党が食らいつけるのは公明党だけになった。これが自民党にとっては罠で、公明党はこれまでの小政党とは違って食いつぶせず、逆にそれが自民党の体質を一層蝕んでいくことになる。福田辞任はその1つの結末である。

▼現象論的次元――自民党政治は本当は宮沢政権で終わっていたし、その後の連立による延命も森政権で終わっていた。それをさらに延命させたのは、小泉・田中真紀子の“変人”コンビによる政治のワイドショー化で目前の01年参院選を乗り切ろうという奇策の成功である。こんな大芝居を打てる役者は小泉以外になく、その意味で、当時INSIDERが指摘したように、小泉は自民党にとって「最後の切り札」だった。奇策の後に奇策はなく、最後の切り札の後にさらに隠された最後の最後の切り札があるわけもなく、だから安倍も福田も人格崩壊するしかなかった。

 とすると、次の自民党総裁候補は少なくとも、官僚政治の打破という大課題を担う覚悟と方策を語り、公明党中毒を脱して自民党を再生させる道筋を示し、単なるショーでない真面目な総裁選を演じなければならない。そうなっているかどうか、またマスコミはそのような歴史的=構造的視点を持って報道しているかを国民は見極めなければなるまい。

●景気と消費税は争点か?

 マスコミは総じて、自民党がそのような歴史的=構造的な次元で問われているということに触れずに、いきなり各候補の景気対策や消費税アップの賛否などを争点に仕立て上げている。例えば10日付日本経済新聞の一面トップは「自民党総裁選/景気・財政規律が争点」と言うが本当なのか。

 麻生が「景気対策重視」で、そのためには「消費税増税」はもちろん「2011年基礎財政収支の黒字化」の小泉政権以来の目標を先送りすることも辞さずという路線であるのに対し、与謝野は「財政規律重視」で、それには「消費税増税」の議論を避けるべきでなく、ましてや基礎収支均衡目標を棚上げにするなどとんでもないという立場で、そこには確かに1つの対抗軸が形成されてはいるけれども、それは本質的には、選挙前にはともかくも目先のバラマキをするしかないという麻生と、そうは言っても無闇なバラマキは無理だという財務省の代弁者的な与謝野との、古い自民党体質の枠内での伝統的な対立図式であって、麻生とて、選挙後にはたちまち「消費税増税」賛成に回りかねない安易さを含んでいる。

 それに対して、小泉=中川秀直流の「構造改革重視」の立場に立って「消費税増税」より前に構造改革を通じた行政改革と支出削減を先行させるべきだという路線は、一応、石原伸晃と小池百合子に体現されているのだが、ならばその路線を体系的に表明している中川自身が出馬しないで、なぜその陣営から石原と小池の2人が、しかもいずれも自分の言葉としてその路線を語らないまま、出てくるのかは理解不能である。そこに働いているのは、「差し迫る総選挙でどの顔を立てて戦えばより負けが少なくて済むか」というショー化の原理でしかない。結果的には出なかったけれども、山本一太のような誰が考えても今の日本の総理大臣たり得ない連中までが、出てみようかと思ってしまい、またマスコミがそれをもてはやすところに、ショー化の不真面目さが露出している。

●民主党は小沢一本化で当然

 その自民党の空疎なにぎにぎしさに比べて、民主党の代表選は早々に小沢一郎の無投票再選が決まって、それが何か「民主的でない」かのような論評が罷り通っているのもおかしなことである。田中良紹が《THE JOURNAL》のブログで書いているように、そもそも政党の党首選が頻繁に行われなければならない理由はなく、また党首選をやらなければ党内の政策論争が活発化しないという理由もない。民主党が政権奪取の絶好の機会を目前にして、代表選のショー化を選ばすに小沢再選で一本化したのはむしろ当然と言える。

 第1に、これもINSIDERが書いてきたように、小沢は、積極面で言えば、政治の面白さも怖さも熟知した練達の政治家であり、また選挙とは何かを身にしみて知っていて、その政治的凶器性は他の者で補うことは出来ない。消極面で言えば、菅直人がかつて言ったように「代表に置いておかないと大連立とか小連立とか何をするか分からない」から代表にしておいて政権獲りの先頭に立たせておいた方がいい。逆に見れば、小沢のいい面も悪い面も分かった上で民主党が彼を使いこなすという成熟した暗黙の了解が成り立っているということである。

 第2に、小沢は93年に自民党を割って出て細川政権を作り、政権交代ある政治を目指して小選挙区制度を作った張本人であるし、またその細川政権を崩壊させ、野党の四分五裂を招き、結果として自民党の連立による延命を許してきた最大の責任者である。その「政治における空白の15年」に責任をもって終止符を打つのは、彼が負っている宿命のようなものであり、それを自覚しているからこそ彼は誰よりも激しく政権交代に賭けるのであって、それを民主党が活用しない手はない。

 第3に、マスコミの報道は焦点がボケているけれども、小沢が無投票3選が決まった9日の会見で語ったことの核心は次の言葉である。

「私は『革命的改革』という言葉を使っている。明治以来百数十年の官僚機構を変えるという、決死の思いを表現しているつもりだ。官僚諸君は自分たちが政治・行政すべてをやってきたかのような錯覚とうぬぼれに囚われてきたが、最近は行政官と政治家の役割が違うことを認識してきている。我々が明確なビジョンと政策を示せば、心ある官僚諸君は必ず理解し、共に仕事をしてくれると自信を持っている」

 それを実現する具体的な手段として、代表選公約では、「国民自身が政治を行う仕組み」として、(1)国会審議は国民の代表である国会議員だけで行う、(2)与党議員を100人以上、副大臣、政務官などとして政府の中に入れる、(3)政府を担う議員が政策・法案の立案、作成、決定を主導する、を盛り込んでいる。

 小沢は、上に「本質論的次元」として述べた官僚政治の革命的転覆こそ時代の中心課題であることを理解し、その具体策も提起している。民主党代表選と自民党総裁選は両々相俟って秋の総選挙の言わば予備選であり、小沢が先行してこの本質的議論を提起したのに対して自民党の5人の候補者はそれにどう応えるのか。そこに現在の論戦の本当の争点があるのであって、経済政策のディテールなどどうでもいいとは言わないけれども、副次的な争点でしかない。▲

2008年9月10日

安っぽさばかりが目立つ総裁選

「この人には首相になってほしくない」
政治の話題がこれほどニュースをにぎわしているのに、聞こえてくる世間の反応は冷めたものばかりだ。

その理由はただ一つ。総裁選に出馬表明した自民党議員の力量不足だ。
多くの国民は沈没間近の日本丸を任せられる適任のリーダーが見つからず、もはや政治に対する期待はなきに等しい。

福田首相の政権放り出し宣言から総裁候補者に7人乱立と、予想通りのお祭り騒ぎとなった今回の自民党総裁選挙。各メディアも一国の首相を決める選挙を無視するわけにもいかず、緊張感のない選挙をあたかも一大イベントであるかのうように報じている。

題して、“枯れ木も山の賑わい”自民党総裁選。

本日10日告示で、いざスタート。

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田原総一朗(ジャーナリスト)
「立候補者は本気で首相になる気があるのか?」

戦後、東京出身で首相になったのは鳩山一郎だけだが、今回の自民党総裁選は与謝野馨氏、小池百合子氏、石原伸晃氏と3人が東京出身だ。

その理由は、東京では地方に比べて自民党に対する危機感が強いことにあるだろう。だが、もう一つ大きな理由があって、自民も民主もすでに総選挙に活動の照準を合わせていることにある。

もう、この時期は政治家は地元に張り付いて必死に活動をしている。だから、地方選出の議員は総裁選に出る余裕などない。一方、東京が選挙区であれば、東京で総裁選の運動をしていれば、それが同時に総選挙の運動にもなる。こういうことも今回の総裁選が安っぽく見えてしまう理由だ。

今回の総裁選は「自民党大売出し総裁選」。国民は、2年続けて政権を放り投げた自民党に対して「なんでこんな人を総理大臣にしたのか」と思っているのに、次がこんな自民党大売出しでいいのか。出たい人が出るのは悪いことではないが、全員が本気で総裁になる気があるとは思えない。実際、すでに2人(山本一太氏、棚橋泰文氏)が脱落してしまった。

今の時代の流れはすでに「政権交代」である。官僚べったりで問題が噴出する自民党に国民はあきれ果てていて、ここまでくると民主党に任せたほうがいいと思っている。

それが、自民党大売出しの総裁選で流れを逆転できるのか。立候補を表明した7人は、自民党を「こう変えるんだ!」と説得する力量、もっと言えば“真剣さ”があるのか。祭の人出のように気軽に出てきているようでは、国民はさらにシラけるばかりだ。

2008年9月 3日

着々と進む反麻生包囲網

麻生禅譲は幻だったのではないか。2日午後からそういった観測が永田町情報通の間で話題になっている。

清和会(町村派)は、派閥を総動員して特定の候補者を支援する考えがないことを明らかにし、山崎派では石原伸晃氏を候補者として推す動きも出てきた。石原氏には参議院のドン・青木幹雄氏が協力するとの未確認情報も入ってきており、反麻生包囲網は着々と進んでいる。

各都道府県の約半数が麻生氏支持で固まっていることから、現段階では麻生氏の優位は変わりにないが、今後の展開によっては総裁選が大荒れになる可能性もある。


【福田“逆ギレ”辞任 関連記事】
●高野孟:福田首相もプッツン辞任――10月解散・総選挙か?
「自民党には、もう切り札がない」

●田中良紹:やはり奇妙な夏が再来した
「自分を追い詰めた自民党内の勢力に対する抗議の辞任」

●辺真一:福田総理辞任で再調査の行方は?
「北朝鮮の再調査開始は9月中旬以降に延びる」

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田原総一朗(ジャーナリスト)
「総裁選はワンサイドゲームにならない」

総裁選は麻生さんのワンサイドゲームと報道されているけれども、僕は違うと思う。

もし麻生さんのワンサイドゲームになったら、総選挙は民主党が勝つ。安倍前首相に続いて福田首相も政権を投げたしたことで、国民は自民党政権に完全にシラケているからだ。

自民党は、そのシラケを熱狂に変えなければならない。だから、今度の総裁選は実力伯仲、スリル満点の“お祭り”にして国民を熱狂させる。そこに自民党は賭けるだろう。

では、いったい誰が総裁選に出るのか。麻生さんが一人だけ出るのでは何も面白くない。私の予測では、小池百合子さんが出る。それから、石原伸晃さんも出る。

となると、石原、小池、麻生で相当いい勝負になるのではないか。ワンサイドゲームで麻生さんが勝つのではなく、もしかすると逆転の可能性もある。

もちろん、総裁選という大祭りがうまくいっても選挙で勝てるとは限らない。だが、この総裁選は、自民党が国民に訴える“最大にして最後のチャンス”となるはずだ。

そして、22日の総裁選以降に国会が再開したら、早めに解散するのではないか。祭りの熱が冷めたら、自民党には何も残らない。熱狂をそのままで、下手をすると9月中の解散もあるだろう。

2008年9月 2日

福田首相もプッツン辞任――10月解散・総選挙か?

takanoron.png「野党に相手にして貰えなかった」……一国の指導者として信じられないほど幼稚な全く同じグチを吐いて、安倍晋三前首相よりももっと短い任期で、福田康夫首相が辞任した。これで、政権交代含みの政局波乱は一気に加速され、最も早ければ、自民党が9月21日頃に麻生を新総裁を選んで直ちに国会で首班指名を受け、景気対策を盛った補正予算だけを通して10月に解散・総選挙、という展開となろう。しかもこの福田の自己崩壊的な辞め方で、総選挙で民主党が大勝して政権交代が実現する可能性は一層強まった。自民党から見て、単に無責任な敵前逃亡というよりほとんど利敵行為に近い犯罪的な辞め方である。

●3重の“ねじれ”に耐えきれず

 対テロ特措法の延長はじめ、福田が国民向けの“目玉”と想定した消費者庁設置法案など重要法案が民主党の反対で成立の見通しが立たないという国会の“ねじれ”は、1年前と何の変わりもない。それに加えて今回は、連立相手の公明党が福田に見切りをつけ、「辞めるんなら辞めろ」と言わんばかりに「対テロ特措法延長は流して年末解散を」と迫るという、連立政権内部の“ねじれ”が生じ、さらには、福田が1カ月前の改造で支持率向上の決め手として幹事長に迎えた麻生太郎が、事もあろうにその公明党と歩調を合わせて官邸と対立し、国会会期の短縮、景気対策への定額減税盛り込みを押し通すという、与党と官邸の間の“ねじれ”まで表面化した。国会と連立内部と自民党中枢の3重の“ねじれ”に気力も何も尽き果てたというのが福田の心境だろう。

 安倍と同じじゃないかと会見で問われて、福田はムキになって「安倍と違って私は健康に問題はない」と胸を張って見せたが、それならなお悪いのであって、安倍の場合はまだ体のことがあるだけ同情の余地もあったのに対して、福田が体は元気なのにこんな挙で出るというのは安倍以上に心が病んでいたという証拠である。首相就任直前の福田は安倍の政権放り出しについて、「決断の時期を間違えられたと思う。本当に苦しい道を自身が歩む決断がなければ(参院選敗北直後の続投の)決断をしてはいけなかった」と痛烈とも言えるほどの批判を口にしていたが、その言葉はそのまま今の福田に跳ね返る。「本当に苦しい道を歩む決断」がなければそもそも政権を引き受けるべきではなかったし、1カ月前の内閣改造も行わない方がよかった。彼は安倍よりももっと酷く「決断の時期を間違えた」。

●もう切り札がない自民党

 事の本質は、もうすでに自民党は賞味期限が過ぎているということである。2001年春の段階で森喜朗政権の人気が地に落ちて、「こままでは夏の参院選は戦いようがない」ということで、自民党は急遽、総裁選を繰り上げ実施し、はぐれ者の奇人とか一匹狼とか党内で評されて本人もまさかと思っていた小泉純一郎を総理に担ぎ上げ、さらに変人の田中真紀子を抱き合わせるという奇策によって、取り敢えず参院選を乗り切ろうとした。が、これが意外と図に当たって小泉時代が5年半も続いて、その分、自民党は延命した。しかし、小泉政権発足当時に本誌が書いたように、小泉は自民党にとって「最後の切り札」だったのであり、その後にさらに別の切り札があるはずがなかった。安倍も福田も、1年も経たずに切り札とならないことが野党はもちろん国民からも見抜かれてしまった。誰がやっても本質的には同じことで、麻生とて、多少は“国民的人気”があるのかもしれないが(毒舌が面白いという以外に何があるのか不明で、しかもそれは失言癖と紙一重である)、小泉を超える切り札になるはずもない。

 2日付朝日新聞で星浩編集委員が書いているように、2度に渡って「この党の政権担当能力が衰弱していることを露呈」した後では、「自民党がいま国民のためになすべきことは、自民党内の政権たらい回しではない。民主党に政権を譲り選挙管理内閣によって衆院の解散・総選挙で民意を問うことである」。星によると、吉田茂の時代に首相が退陣して野党に政権を渡し、解散・総選挙を行った先例があるのだという。それほどのこれは失態で、本来は星が言うのが筋ではあるけれども、今の自民党にその勇気はない。結局、麻生を選んで、補正予算だけでも通して解散・総選挙へという方向を辿るしかない。ところがその補正を巡っても、中川秀直ら小泉系「上げ潮」派はこれまでは「福田が選んだ麻生だから」と多少とも手控えていた批判を噴出させるだろうから、与党内合意の達成は簡単でない。しかも、「安倍も福田も総選挙の先例を受けておらず、その上またもや与党内で政権をたらい回しするのか」という声も高まるに違いなく、麻生は否応なく早期の解散へと追い込まれる公算が大きい。

 8月の各種予測では、次の総選挙で民主党が100以上も議席を伸ばすけれども単独過半数には届かないというのがほぼ共通の結果だったが、こうなると民主党の単独過半数突破もありうる情勢となってきた。政治における「空白の15年」が終わって、国民は初めて、選挙による堂々の政権交代を年内にも目の当たりにすることになるかもしれない。▲

2008年9月 1日

【政治】福田首相が電撃辞任 その3つの理由

福田首相の辞任には以下の3つの理由がある。

(1)公明党との亀裂
(2)テロ特措法の成立の見通しが不透明になった
(3)次の国会で「事務所費」「年金問題」「後期高齢者医療制度」の問題に対処できない

いずれも1日23時時点で考えられる理由だが、これらが福田首相電撃辞任のひきがねになったと考えられる。

(1)公明党との亀裂
7月の洞爺湖サミットが終了した段階から、その亀裂がクローズアップされていた。いまや公明党は与党の最大の影響力を持つ派閥であり、首相といえどもその意向は無視できない。自民党内にも公明党の協力なしには次回の総選挙を闘えない候補が多数いて、公明党から支持されない政治家は、総理大臣になることができない。

(2)テロ特措法の成立の見通しが不透明になった
臨時国会の開会が9月12日が有力になったことにより、テロ特措法の成立が不透明になった。アメリカの主導する「テロとの戦い」は、小泉政権以来の国際公約。それを実現することのできない福田首相は、自身の辞任をもってしかアメリカに顔向けができなかった。

(3)次の国会で「事務所費」「年金問題」「医療制度」の問題に対処できない
太田農相の不透明な事務所費計上疑惑、いっこうに解決しない年金問題、西濃運輸をはじめとする企業保険の破綻連鎖、矢野恂也元公明党委員長の証人喚問など、次の国会では野党の攻撃材料が手に余るほどある。国会が始まれば福田内閣の支持率の低下は避けられず、それなら次の首相に早めにバトンタッチをしようと考えた。

上記3つの理由は、現段階で考えられる福田首相電撃辞任の理由である。
辞任に至った真の理由は福田首相の胸の中にのみあるが、かなり前から辞任のタイミングを計算していたことは間違いない。

次期首相には麻生太郎幹事長が有力とされているが、麻生氏が次期首相に就任したとしても、この3つの要因が次の政権を苦しめることは間違いない。

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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