“Xデー”は近い。昨年から続くサブプライムローンによる混乱が、ここにきて重大な局面を迎えている。
アメリカ連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は15日、アメリカ議会で証言し、株価暴落で破綻間近といわれている政府系住宅金融機関(GSE)2社に「金融市場が正常に機能するように助ける」と、あらためて公的資金の注入の可能性を示唆した。
だが、このアメリカ住宅公社2社が保有している証券等は約550兆円で、ここまで大きくなった金融機関の破綻危機を国家による公的資金の注入だけで防ぐことが出来るのかは不透明だ。
日本国内でも三大銀行を中心に20兆円以上のGSE債権を保有しており、これまでサブプライムローンの影響が小さいと考えられていた日本の金融機関も、莫大な金額の不良債権を抱える可能性が出てきた。すでに、欧州や日本では先週末から銀行株が軒並み低下ししており、日経平均株価も15日には1万3000円を割り込んだ。
各国は未曾有の金融危機の可能性に備え、緊急態勢に入っている。
◎GSEとは(はてな)
◎米ファニーメイとフレディマックは資本不足(ロイター)
◎米住宅金融救済 金融相「対岸の火事ではない」(朝日)
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中国駐在・某銀行ディーラー
「全てはITバブル崩壊から始まった」
全ての始まりはITバブルの崩壊だった。
マエストロと賞賛された前FRB議長のグリーンスパンが始めた米低金利政策。ニューエコノミーとまで持ち上げたIT産業という経済の牽引役を失った米国は、市場まれに見る低金利政策を導入、いわゆる「マネー」の力で経済を立て直そうとした。
01年1月から03年6月まで2年以上かけて5.5%もの利下げを行ったマエストロ。異例の金融緩和は未曾有のマネーを生み出す引き金となった。そしてそのマネーは、米国の“高度な”金融技術の集大成とでも言うべき証券化商品になだれ込んだ。その行き先の一つが、悪名高きサブプライムローンである。
マネーの力はアジアにも及んだ。香港や上海の住宅バブルや株価急騰は巨大なマネーの力により作り出された。アジアの代表的な株価指数である香港ハンセン株価指数は05年から07年にかけておよそ3倍に、上海総合指数はおよそ6倍にまで上昇、中国に大勢のミリオネアを生み出した。今や香港では4世帯に1世帯が億万長者だという統計もあるくらいだ。
(格付けが)AAAだから大丈夫、投資対象は分散化が図られているので安心、といった謳い文句で世界中のマネーを飲み込んだ証券化商品。米国の高度な金融技術は、同時に米系金融機関に巨大な富をもたらした。金融政策とマネーに支えられ、米国はこの世の春を謳歌した。
いま、その証券化商品の存在価値が根底から揺らいでいる。言い換えれば、米国式金融技術自体に疑問符が投げかけられている格好だ。行き先を失ったマネーは、ご承知の通り今度は原油を中心としたコモディティに流れ込み、資産価格上昇という経路を経て、世界のパワーバランスにまで変化をもたらそうとしている。
事実上の世界標準を握り続けてきた米国。世界最強の軍隊を持ち、世界共通の言葉を使い、決済基軸通貨であるドルを発行することが出来る。ドルの暴落は、三本の柱のうち一本を失うことを意味する。香港は昨年、中国返還10周年を迎えた。香港人は利に聡い。そして今、香港に居てこそ感じることがある。香港は、西側の秩序から離脱するリスクを負ってでも、新しい秩序にスリ寄る必要を感じた。だからこそ、宗主国を英国から中国に変更したのではないか?オリンピックを控えて香港はいま中国ブームである。香港は中国の一部だが、50年は資本主義を維持する“一国二制度”を確約されている。しかし、実はもっと早く中国化が実現するかもしれない。
冒頭でも述べたが、全てはITバブル崩壊から始まったと思っている。落ちぶれたとはいえ、米国は依然として世界のインフラを握っている。しかし、仮に米国主導の世界秩序が崩壊した場合、それは同時に資本市場主義経済のひとつの限界点を迎えることになるのかもしれない。
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山﨑養世(シンクタンク代表)
「民間主体でちゃんとした救済がはたしてできるのか」
住宅金融機関の救済や国有化という話も出ていますが、(バーナンキ議長の方針は)今まで言ってきたことの法制化ですので、当然の措置だと思います。
「金融機関は市場に委ねられた競争的な業界」というのはあくまで平時の話であり、有事の場合にはこういった形で国家が保護することは、ほぼ準備が完了しつつあるということでしょう。
ですので、狭い意味で言って、昔の大恐慌のようなことはおきない。国家が「潰さない」という強い姿勢を示しているわけだし、60年代に日本が証券会社の救済をやりましたけど、それと似たような政策がアメリカでも行われるということです。FRBの権限もこれまでは狭かったのですが、今回はそれが強くなっています。これは世界的な流れとも言えます。
問題は、「それで救済が完了するのか」ということです。というのは、完全に破綻してくれた方が救済はしやすい。中途半端な形で潰さず、あくまで「民間主体で」という形でちゃんとした救済がはたしてできるのか。そういうリスクも出てきてますので、ますます先行きは不透明になっています。
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某メガバンク内部関係者
「一度潰れないと、日本の銀行は生まれ変わることはできない」
今回、破綻寸前と言われている政府系住宅金融大手2社(ファニーメイ、フレディマック)が保有したり保証したりしている証券化商品は約550兆円と言われています。
破綻が現実となれば、その影響は今年3月に経営が行き詰った米ベア・スターンズ証券の比ではありません。
日本のメガバンクも確実に影響を受けます。国内の銀行は、両社の商品をアメリカ国債と同じような感覚で保有していて、3兆円相当の債権を保有している銀行もあります。これらがもし不良債権化すれば、とてもおそろしいことです。
しかし、本当にこんなことになってしまったら、全世界が金融危機に陥ってしまいます。最悪の事態を回避するためにも、アメリカをはじめとする世界中の政府は公的資金注入を含めたあらゆる手段を講じるはず。ただ、あまりにも規模が大きすぎるので、完全に対処できるという確証はありませんが・・・
一方、日本のメガバンクがこの事態にちゃんと対処できるかどうか、とても疑問です。金融を取り巻く世界はどんどん変化しつつあるのに、あいもかわらず意思決定は遅く、緊急時に適切な対応ができないのではないでしょうか。
内部の人間が言うのもおかしなことですが、いっそのこと一度潰れて買収されてしまった方が、日本の金融業界にとってよいことなのかもしれません。まったく新しい銀行として生まれ変われるきっかけとなるはずです。