昼の凶行が日本中を震え上がらせた。8日、東京・秋葉原の歩行者天国にトラックが突入、車から降りてきた男がサバイバルナイフで通行人や警察官を次々に殺傷、7人が死亡、10人が負傷した。また、逮捕された加藤智大容疑者は携帯電話専用サイトの掲示板に犯行予告を投稿しており、計画性の高さにも衝撃が走った。
25歳の青年が無差別殺人に行き着いた理由とは。また、同様の犯罪を防ぐ手段は存在するのか──
●二木啓孝(ジャーナリスト)
「納得できる理由がみつからない」
●小宮信夫(立正大教授・犯罪社会学)
「今回のような事件を防ぐための特効薬はありません」
●玉井仁(臨床心理士)
「人生のなかで他人を殺したいと思う事だってある。それを言葉にすればいい」
●井上トシユキ(ITジャーナリスト)
「ネット側ではなく現実社会で努力を」
●亡くなった武藤舞さん(21歳・東京藝術大学4年生)の指導教員だった亀川徹准教授
「『なんで』とか『信じられない』と言うしかありません」
●亡くなった川口隆裕さん(19歳・大学生)、藤野和倫さん(19・大学生)の友人
「神様…僕らが何をしたの?運命だから?そんなの残酷すぎる…」
●秋葉原殺傷事件
掲示板への犯行予告&ニュースのまとめ
●二木啓孝(ジャーナリスト)
「納得できる理由がみつからない」
犯人は静岡県で派遣会社に勤め不安定な生活を強いられていたということですが、それが秋葉原までトラックで走って通り魔殺人にまでつながるとは理解が難しい。
過去にあった類似の事件として、ピストルで4人を連続射殺した永山則夫事件(1968年)がありました。永山則夫は高度成長期に田舎から集団就職し、「金の卵」と呼ばれて社会からもてはやされたのに、実際には仕事がないことが原因の一つでした。
この事件がおこったとき「高度経済成長は人をモノとして扱う、どこが金の卵なのか」と多くの日本人がショックを受け、立ち止まって事件の背景について考えました。「犯罪は社会の矛盾」という言葉も、ある程度の説得力を持っていました。
●小宮信夫・立正大教授(犯罪社会学)
「今回のような事件を防ぐための特効薬はありません」
加藤容疑者が犯罪を犯す前の状況を考えてみると、やはり疎外感や孤立感が犯行の大きな原因になったと考えられます。彼が犯行前に書き込んだ掲示板には『一人の虚しさは異常』、『友達は、できないよね』など現実社会で孤立していた様子が見て取れます。そういった孤独さからくる怒りを殺人という行為で社会への復讐と位置づけたのではないでしょうか。
インターネットや携帯電話の掲示板利用者は大きく2つのタイプに分けられます。ひとつは現実社会で話し相手がおらず自分の気持ちを表現する場として利用するタイプ。もうひとつは現実社会に友人がいて、友人と話すのと同じ感覚で書き込むタイプです。加藤容疑者は典型的な前者のタイプです。
例えば、自分の書き込んだメッセージに対して、「お前はバカだ」と書き込まれたとします、書き込んだ本人は深く考えずに書いたとしても、そういった心無い一言が想像以上に彼のような人間を傷つけていることもあります。まさに顔の見えないコミュニケーションの怖さです。
今回の事件を海外では日本の安全神話崩壊というテーマで報じているようですが、加藤容疑者のような若者が日本に数多く存在していることは間違いないでしょう。世界に冠たる集団主義を誇った日本も個人主義化が進み、安全な国と言えなくなる日もそう遠くないのかもしれません。
今回のような事件を防ぐための特効薬はありません。欧米ではメンタリングという制度を企業や学校が活発に取り入れています。新入社員などにマンツーマンで指導する先輩社員をあてがうことで人間関係や人材育成の向上を目指す手法です。同じ団体に所属する人間が彼のような人間を目の前に無理やりにでも友人関係を作るといった意識を持たなければ、今後もこういった事件は増加していくでしょう。
●玉井仁・臨床心理士
「人生のなかで他人を殺したいと思う事だってある。それを言葉にすればいい」
ここ数年、私のところにも孤独や疎外感をかかえた相談者が多く訪問してくるようになりました。そういった方々には何よりも安心できる環境を提供することが大切です。子供の頃は親がそういった環境を整えますが、大人になるにつれ自分の居場所は自分自身で作り上げなければならない。私のようなカウンセラーに相談することも選択肢の一つですが、職場や学校での人間関係のなかで意識的に自分が安心できる場所を作ることが重要です。
加藤容疑者がそうだったこどうかは断定できませんが、社会のなかで孤独を感じている方には、自分の居場所を他人から与えてもらうものだと考えている方が多い。孤立して寂しいという思いを他人のせいにして、それが怒りとなり事件を起こし、自分を社会にアピールする。いわば究極の甘えともいえます。
私の相談者の中には、今回の事件を受けて「私もやりかねない」とおっしゃる方がいました。私はそれでいいと考えています。人生のなかで他人を殺したいと思う事だってある。それを言葉にすればいい。そこから、一線を越えないための可能性や自分の行動は自分自身の責任だということを話し合っていくんです。
地道な作業で簡単にできることではないですが、ネットや掲示板ではなく人と人が対面で語り合うことが、こういった事件を起こさせないために最も重要なことだと考えます。
●井上トシユキ・ITジャーナリスト
「ネット側ではなく現実社会で努力を」
【ネット予告は110番を 警察庁、業界団体に要請】(産経新聞)
まず、誰が通報するんだという問題があります。おそらくユーザーからの通報やプロバイダーのパトロールを当てにしているのでしょうが、書き込まれたとしてもそれが本当かどうかを判断することは不可能でしょう。
愉快犯からのいたずらを含めて通報するとなると、通報先の警察がその真偽を選別できるのかどうかが不安です。犯罪予告は予告にしか過ぎないので、実際に行われるかどうかは犯罪が起きてからじゃないと分からないのですから。
いまネット掲示板の『2ちゃんねる』には、そういった犯行予告が書かれたらユーザーが報告するカテゴリーが作られています。そこを見ていると一日に3,40件の報告があったりするんですが、それを改めてチェックしてみると、どこの誰が書き込んだのかを突き止めるのには相当な手間がかかります。
いまや『2ちゃねる』は1000万人ほどのユーザーが利用し有名になっていますが、今回のような携帯電話の掲示板には2ちゃんねるのような有名なサイトが存在しません。例えば、加藤容疑者が書き込んでいた掲示板は一日に数人しか見ていない小さな掲示板でした。そうなると外部から発見することが難しいうえに、発見しても略語を使用していたり匿名であったりすれば、いたちごっこになることは目に見えています。
犯罪は起こそうとする人間を減少させるためには、ネット側ではなく現実社会の人間関係のなかで努力するほうが現実的だと考えます。
●亡くなった武藤舞さん(21歳・東京藝術大学4年生)の指導教員だった亀川徹准教授
「『なんで』とか『信じられない』と言うしかありません」
武藤さんは頭の回転が早く、はきはきとした明るい学生だった。何かを失敗したという話を聞いたことがなく非常にしっかりとした学生でした。
音楽環境科では、録音技術など演奏家をバックアップするようなことを学んでいました。本人も学んだことを生かしつつ、コンサートや企画などのマネジメントを行い、地方の活性化を目指していたようです。
3年生の頃から秋葉原にある電器屋さんでアルバイトをしていたようです。就職について9日(月)の夕方に相談を受けることになっていました。
犯人に対しては一言、『なんで』とか『信じられない』と言うしかありません。
●亡くなった川口隆裕さん(19歳・大学生)、藤野和倫さん(19・大学生)の友人
「神様…僕らが何をしたの?運命だから?そんなの残酷すぎる…」
「今日は空の境界を観たあと秋葉原にいった。
・・・最悪だった。
今日は人生で、生涯で一番最悪な日だろう。
僕は大切な人を二人失いました。
大学の友達・・・
こんなにもあっさりと・・・
今日は行くあてもなく適当に歩いていた。
緑信号の横断歩道。
いつも通りのグダグダな雑談。
どこにでもある平和で普通な話。
思い出すと涙が止まらない。
・・・トラックが自分らに猛スピードで突っ込んできた。
・・・ほんの一瞬だった。
隣にいた友達と俺はぎりぎりでよけて腰の打撲だけで済んだ。
本当に死線だった。
すぐ振り返った。
後ろにいた友達二人が・・・いない。
ゾッとした。
震えがとまらなかった。
その直後発せられた「逃げろ!」
ナイフを持った男?通り魔?
意味がわからなかった。
直後ひかれた友達にすぐさま駆け寄った。
・・・立ち尽くした。
素人でも分かる、重体。
自分はなにもできなくて
ただ大声で、何度も何度もそいつの名前を呼んだ。
やがて応急処置の知識のある人達があつまりだした。
・・・すごいなと思った、半面、情けない。
そんな中
回りを見回すと
カメラ、携帯、カメラ、携帯・・・
なんなんだよお前ら、馬鹿ばっか・・・
カメラぶっ壊してやろうかと、携帯逆折りしてやろうかと
そう思った。
「不謹慎です、やめてください!」
とりあえずやめさせようとした
無視された。
嫌な顔もされた。
・・・なんで?
悔しくて涙が止まらなかった。
その後救急隊が到着した。
・・・と、すぐに口から出た言葉。
「この子は"黒"だから搬送は後だな」
二人の身体に告げられた。
黒・・・馬鹿でもわかる、イメージできる。
白より、嫌な色。
重体なら先に助けてよ。
こんなに血が、意識もなくて・・・
可能性があるほうから・・・
わかってる。
そのほうが賢明だってことくらい
・・・ただ悔しかった。
俺と軽症の一人が
一人づつ付き添いで
病院にいくことになった。
なのに
事情調査、事情調査、事情調査
名前は?住所は?生年月日は?電話番号は?状況は?
同じ質問を何度も何度も何度もされた。
その間友達は運ばれてしまった。
「彼の友達なんです、連れていってくださいっ!!」
「混雑してるから無理だね」
何度も懇願した
あげく
「手術室には入れないし、行っても・・・意味ないよ?」
意味・・・いらない
最期かもしれないんだ、孤独なんてかわいそうすぎる。
結局、なにもできず、別の病院に搬送された。
俺はただの打撲、レントゲンとって湿布はって終わり。
待合室で電話がきた。
双子から。
友達が一人亡くなった・・・。
ボロ泣きだった。
その後病院を出た後。
事故にあった友達の携帯を
自分が預かっていた。
その携帯が鳴った。
・・・友達の親だった。
「■■君?あのね、○○・・・死んじゃった・・・。」
号泣でいわれた。
涙が止まらない。
ぷよぷよで俺涙目にするんじゃなかったのか?
ギルティー今日どっちが強いか決めるんじゃなかったのか?
くだらないけど、叶わない夢。
今後永遠に。
神様・・・僕らが何をしたの?
運命だから?
そんなの残酷すぎる・・・
明日・・・当たり前の日常が消えている
怖い・・・
犯人・・・ネット上で予告してたらしい
人を殺すために来た?
アホか
死ねよ・・・カス・・・
(亡くなった川口隆裕さん(19歳・大学生)、藤野和倫さん(19・大学生)の友人のブログより引用)
秋葉原殺傷事件 掲示板への犯行予告&ニュースのまとめ
●掲示板の書き込み6月3日
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/29.html
●掲示板の書き込み6月4日
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/25.html
●掲示板の書き込み6月5日
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/26.html
●掲示板の書き込み6月6日
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/27.html
●掲示板の書き込み6月7日
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/28.html
●犯人の犯行予告か? 2ちゃんねるへの書き込み
【ニュース】秋葉原で忍者姿の痴漢が刀振り回し大惨事!
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/ghard/1211823579/
●朝日新聞
http://www2.asahi.com/special2/080609/
●毎日新聞
http://mainichi.jp/select/jiken/akihabara/
●読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080608-2810266/index.htm
●しんぶん赤旗「加藤容疑者の動き」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-06-10/2008061015_01_0.html
●「酒鬼薔薇と同じ年、怖い」母は加藤容疑者におびえていた…秋葉原通り魔事件(スポーツ報知)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080610-00000092-sph-soci