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2007年10月27日

頭の整理

 ここ数年、’60年世代の私達の間では、小泉政権から安倍政権へと続く流れの中で、「改憲」についての危機意識が高まったということがあった。
 齢60才を超えた者達が、人生最後の政治参加の機会として、つまり死に場所として、この「改憲」反対の運動に過剰なる思い入れをしていた。

 しかし、私は、同世代のこの種の発想には、ほとんど共鳴することができなかった。その理由は、この国においては、どのようなスローガンをかかげた運動であっても、キャンペーン型の運動の域を出ないのであって、それは意味がないと考えるようになったからだ。

 もちろん、ある個人や、ある団体が政治目標をかかげて、広く国民を覚醒させるべく行う啓蒙型の活動があってもそれは自由ではある。私が問題とするのは、その活動を行う人々の中にある、「目覚めた私と眠った民衆」という旧態依然たる発想のことである。この発想の中には、「正しい自分」が存在している。これをつきつめていくと、「自分は正しいが、他人は間違っている、間違っているとは言わないまでも、わかっていない」ということになる。この発想が私は嫌いなのである。

 私は人間などというものは、実にいいかげんなものであって、何度も何度も間違いを犯して人生を歩むものと思う。だから「自分は正しい」などとは、恥ずかしくて言えないと思う。’60年代の友人達がこの点について自己切開なしに「新しい」スローガンをかかげることに共鳴できない理由はここにある。頭の中を整理することから私は始めようと思う。

2007年10月20日

台湾で民主主義を考えた

 5年ぶりの台湾である。
 10月に入って、親しかった徐さんと陳さんが相次いで、それも同じ10月4日に永眠してしまった。

 今回の訪台は、徐さんの告別式に出席するためだ。
 さて、台湾に来ていつも思うのは、民主主義という考え方のなかでは重要とされる選挙という「制度」が、台湾の民衆の歴史にとっては、私達が考えるほどの「有効性」を持たなかったのではないかということだ。

 自分が投票する1票が指導者を決定するということよりも、私の知るかぎりの台湾の友人達は、「英雄」としての指導者が出現してくれることを待望している。「制度」ではなく「人」が重要という考え方だ。

 なるほど、「制度」というものは、本当の意味での「人」を潰してしまうことが多い。つまり、選挙という制度では英雄を生むことはない。このジレンマのなかで、民衆の歴史は漂流し続けるのではないかと私は思う。

 私などは例えば、個人崇拝を条件反射的に否定してきた世代だ。ところが、私は今の齢に達して逆に、個人崇拝ができることの「幸福」もあるのではないかと思いはじめた。民主主義では許容されることのない領域の中で持つ喜怒哀楽こそが、人間本来のものであって、民主主義の下では成立しない情念が存在しても、それはおかしなことではないと考える。

 台湾の友人が毛沢東の個人崇拝を苦々しく思いつつも、毛沢東が「英雄」であったことは否定しないのもわかる気がした。

 さて、来春台湾では選挙が行われる。友人達の姿を見に訪れようと思った。

Profile

宮崎 学(みやざき・まなぶ)

-----<経歴>-----

1945年、京都のヤクザの家に生まれる。
早稲田大学法学部に進むが、学生運動に没頭して中退。
週刊現代記者として活躍後、京都に戻り家業を継ぐが倒産。
「グリコ・森永事件」ではキツネ目の男に擬され、重要参考人Mとして警察にマークされる。
自身の半生を綴った「突破者」で作家デビューを果たした。
2005年には英語版「TOPPA MONO」も翻訳出版された。
最近は、警察の腐敗追及やアウトローの世界を主なテーマにした執筆活動を続けている。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
http://miyazakimanabu.com/

魚の目(魚住昭責任編集)
http://uonome.jp/

-----<著書>-----


『ラスト・ファミリー 激論 田岡由伎×宮崎学』
2010年1月、角川書店


『談合文化論』
2009年9月、祥伝社


『近代ヤクザ肯定論―山口組の90年』
2007年6月、筑摩書房


『安倍晋三の敬愛する祖父 岸信介』
2006年9月、同時代社


『法と掟と』
2005年12月、洋泉社


『近代の奈落』
2005年12月、幻冬舎


『TOPPAMONO』
2005年9月、Kotan Pub


『万年東一(上)』
2005年6月、角川書店


『万年東一(下)』
2005年6月、角川書店



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