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絶妙な落としどころ

お久しぶりです。ウサーマ・ビン=ラーディンが「殉教した」ので、ちょっとメモ書きです。
 この事件についての私の感想は「四方丸く収まった」。一年ちょっと前に書いた「アル=カーイダの衰退」の流れの延長線上です。わが国政府では想像もしがたい安保外交の「妙技」を見せつけられた思いです。
 

 どう「丸かった」のか。いまの段階では不確定な情報、推測も交じりますが、私の大筋の読みです。

 ビン=ラーディンは長患いの病死ではなく、イスラーム圏(パキスタン)で異教徒とのジハード(銃撃戦)で亡くなるという最高の栄誉を得た。

 そのビン=ラーディンを売ったパキスタンの軍統合情報部(ISI)は、舞台裏で米国から事実上の(アフガンでの)ターリバーン政権復活について了解を得ていたと思います。これは、ISIがいままで自国政府にも頑として譲らなかったラインです。ターリバーンは実子、アラブ義勇兵(アル=カーイダ)は所詮、生意気な義理の子です。

 ターリバーンは表向き、きっと反発する。でも口先だけでしょう。アル=カーイダ追放を歓迎する理由がある。それはおそらく米国がビン=ラーディン殺しを口実にアフガンからの撤退を早晩、始めるからです。そうなれば、これまでの復活に弾みがつき、権力掌握は時間の問題です。
 これを分かっている傀儡のカルザイ(アフガン)大統領は早速、ターリバーンに停戦を訴えています。カルザイは願わくば、ターリバーン新政権の片隅に置いてほしい。それが叶わぬなら、せめてアラブの湾岸諸国にでも亡命したいところでしょう。

 そして、米国はこれでやっとイラクに続いてアフガンからの泥沼から足を抜く道筋が付けられます。オバマは前任者のブッシュと違い、就任時点から「ターリバーンはけしからん」とは一言も言っていません。言っていたのはアル=カーイダ退治だけ。だから、これで目標達成です。ブッシュ時代の尻拭きも一段落です。そして、なによりオバマにとっては再選に向けた追い風になります。タイミングもその遊説の直前。9.11から10年。ISIもうまい時期に売り付けたものです。

 つまり、殺されたウサーマも、ISIも、ターリバーンも、米国もみなバンザイ。アラブ諸国で無政府的なデモの足音が響く中、一つの時代に区切りがつけられたように感じています。

 それにつけても、私たちはカーイダより桁外れに恐ろしい原発事故に直面している。近代の科学信仰の破産に比べれば、ウサーマの一件は分かりやすい。時代は私たちにも区切りを求めているのかもしれません。


 短信のあいそなしでした。ご寛恕下さい。

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おはようございます(いま5月3日7:55頃です)

あまりに上手く行き過ぎてるんで、ちょっと懐疑的でした。
だけど、それぞれの思惑が一致したというわけですね。
ある意味、偶然ともいえるし、必然ともいえることだったのでしょうね。
それは中東情勢も同じ。
混迷を極めているようにもみえるし、ある必然性があるような気がします。

田原さん、こんにちは。

たいへん勉強になります。

【つまり、殺されたウサーマも、ISIも、ターリバーンも、米国もみなバンザイ。】という【安保外交の「妙技」】なのですね!

【アラブ諸国で無政府的なデモの足音が響く中、一つの時代に区切りがつけられたように感じています】と。
次の時代はどうなるのか、とても気になります。

丸く収まったのかどうか、私などには全く解りません。

ただ、合衆国内のお祭り騒ぎは、ありゃ一体・・・。
言葉が、有りません。
「・・・殺した。・・・正義は果たされた。」
これが、総指揮者の言葉です。

伊藤博文を「殺した」犯罪者(英雄)に対する称賛、
幕末のめったやたらな暗殺、
マリー・アントワネットの斬首、etc...
みんな異なる状況での「殺人」ですが、観衆の熱狂は同じです。

それが、今行われている。
何と言ったらいいのか解らないが、馬鹿をおだてて木に登らせている奴らの姿だけは解る気がする。
そして、それを称賛する我が総理殿の姿も見える。

どうやったら、こんな連中から逃れる事が出来るのだろう。

丸く収まったとは到底思えません。今後も泥沼は延々と続くでしょう。
元株やさん、
こんな連中からは、どうやっても逃れることはできないでしょう。なぜならそれが人間の本質の一部だからなのだと思います。自分の心の中をのぞいても、<邪魔ものを排除したい>という気持ちはありますし、そういう気持ちの延長線上で、今のアメリカのお祭り騒ぎがあるのだと思います。
そうして争いは起き、戦争は起き、戦争を起こすことが出来る、ということなのでしょうね。何とも切ないですが、今のアメリカのお祭り騒ぎを否定することはできないです。
ただ、justiceは相対的なもの、ということだけは自分の心の中に持っておきたいと思っています。

田原さんの読みどおり、どうも米軍の作戦は、始めから逮捕より殺害にあったらしい情報が出てきていますね。
作戦実行部隊がsealだったのも、まず水葬ありきだったからでしょうか。もし万が一自首するとかで生け捕りにしてしまったら、そのままアメリカへ護送することもあったのかもしれませんが、恐らくパキスタン側の意思もできるだけ殉教者にすることにあったであろうと思います。

田原さんが、以前にもここでアル=カイーダの置かれている難しい立場について書かれていましたので、こういう日がいつか来るだろうなとは思っていました。しかし、まさか米軍に売るとは思いませんでした。もっと密かに身内の仕事で終るのかなと考えていたのですが。
また、一番高値で買う所に、一番高値でれるタイミングで売ったものだと思います。
裏切りと言えば裏切りでしょうが、古今あいも変わらぬ国際政治の非情さよという感想を覚えます。

 
 
田原(2011年5月 2日 23:04)氏
> ビン=ラーディンは長患いの病死ではなく、イスラーム圏(パキスタン)で異教徒とのジハード(銃撃戦)で亡くなるという最高の栄誉を得た。
> それはおそらく米国がビン=ラーディン殺しを口実にアフガンからの撤退を早晩、始めるからです。


 これから数年も経てば あの時の米国のあの時の行動は そんな理由だったのか。。
ソ連邦が破綻して アメリカが唯一の超大国となってしまった。
ところが アメリカ自身が移民政策にもかかわらず 衰退している。
(日本も移民政策の末路を 認識すべきです。)
アメリカは 対外的な面子を保てる“すべてからの撤退”が 国内的に至上命題になっております。
これはビン=ラーディンに無関係な 本流です。

 ビン=ラーディンはジハード的最高の栄誉を得た?????
これには 違和感があります。
10年前の9月11日のワールド・トレードセンター崩落後 パレスチナの地で歓喜するパレスチナ人がいた。
一面的にジャスミン革命は インターネットによって 個人が世界同時的に情報を共有できる環境がもたらせたものです。
(中国政府の インターネット対応を見れば 自明。)
10年前とは 異なる環境があるように感じます。

 この度の ニュースに接して 真っ先に感じたことは、、、、
何故ビン=ラーディンはイスラマバード近郊50kmに潜伏していたのかということ1点。。
彼は山岳地帯などには 住まう事の出来ない人間だった。
革命家ではなく 無差別殺戮者でしかなかった。
ジハードの一戦士ではなかった。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110507/asi11050717320001-n1.htm
 
 

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Profile

田原 牧(たはら・まき)

-----<経歴>-----

1962年生まれ。
新聞記者。
87年に中日新聞社入社。
社会部を経て、95年にカイロ・アメリカン大学に語学留学。
その後、カイロ支局に勤務。
現在、東京新聞(中日新聞東京本社)特別報道部デスク。
同志社大学・一神教学際研究センター共同研究員。
日本アラブ協会発行「季刊アラブ」編集委員。

BookMarks

-----<著書>-----


『ほっとけよ。』
2006年8月、ユビキタスタジオ


『ネオコンとは何か』
2003年7月、世界書院


『イスラーム最前線』
2002年3月、河出書房新社

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