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2012年9月28日

中盤の序盤の締めくくり

 来年夏の参議院選挙までを一区切りとする大政局は、中盤の序盤の締めくくりとなる自民党総裁選挙が終了した。結果は安倍晋三氏の総裁返り咲きとなったが、投票の結果に自民党の現状が浮き彫りになった

 地方票で投票数の55%を獲得しトップとなった石破茂氏が、国会議員票では17.3%しか獲得できずに第三位。一方、国会議員票で29.4%を獲得しトップとなった石原伸晃氏が、地方票では12.7%しか取れずに第三位と対照的な得票結果を見せた。つまり自民党は中央と地方が見事なほどにねじれた。

 そして中央と地方の双方で二位の座にあった安倍氏が総裁に選ばれた。しかし決選投票で上乗せされた議員票は石破氏より安倍氏が1票少ない。自民党の期待を担って選ばれたとは言い難い選挙結果である。波乱の種が至る所に播かれているように見える。

 そもそも総裁続投に意欲を見せていた谷垣禎一氏を引きずり下ろして自民党総裁選挙は始まった。引きずり下ろした勢力は「選挙の顔」として石原伸晃氏を総裁に据えようとしていた。3党合意の延長上に大連立を志向するためである。それが地方の自民党員から嫌われた。2年間も自民党幹事長を務めたにもかかわらず、石原氏は全体の1割程度の地方票しか集められなかった。

 その原因として、谷垣総裁を支える立場にある者が引きずりおろす側に回った「明智光秀」のイメージ、また「福島原発第一サティアン」など問題発言を繰り返す軽佻浮薄さ、そして保守の陣営からは石原東京都知事が火をつけた尖閣購入が、その裏で息子を自民党総裁に据え野田民主党との大連立を図る仕掛けではないかと見られたことが挙げられる。

 最後の部分は少し説明を要するが、石原都知事の尖閣購入に賛同して寄付を行った人の中から、知事が野田総理と「極秘会談」を行って国有化を認めた事に批判が出ており、それが息子を自民党総裁にして民主党との大連立を目指す動きではないかと見られた。右派勢力は石原伸晃氏の総裁実現を認めず安倍総裁実現に力を入れた。

 そのため当初は「石破対石原の戦い」と見られた総裁選挙が、安倍氏も交えた三つ巴の戦いとなり、最後は地方の自民党員や保守陣営に嫌われた石原氏と、党の長老グループから嫌われた石破氏の「嫌われ石・石」が脱落して安倍氏の返り咲きとなった。

 これまでの自民党なら過半数の党員票を獲得した候補を決選投票で打ち負かす事はやらない。党員の声を尊重して2位の候補は決選投票を辞退するのが通例である。しかし安倍氏は辞退せず決選投票に臨んで逆転勝利を得た。一回目の投票で石原氏に投票した額賀派が結束して安倍氏に入れたことが大きい。

 この選挙結果に地方から不満の声があがった。自民党秋田県連の4役は「民意が反映されていない」と役職を辞する意向を表明した。自民党の中央と地方のねじれは、野党に転落した自民党が反省するどころか何も変わっていない印象を国民に与え、さらに5年前の参議院選挙で自民党を惨敗させた「顔」を再び党の総裁に戻したのである。

 安倍氏は石破氏を幹事長に起用したが、地方の不満を抑えて党運営を行うには「選挙の顔」を石破氏に託すしか方法はない。このため安倍―石破の総幹コンビがどれだけ共同歩調をとれるかに自民党の今後はかかっている。

 二人は安全保障問題などでタカ派の似た者同士と見られているが、石破氏が民主党との対決色を抑制する考えを打ち出しているのに対し、安倍氏は対決色を打ち出すタイプである。特に右派陣営から強く支持されているだけに民主党との宥和路線は取りにくい。

 それが野田内閣を解散総選挙に追い込む戦略にどう影響するか。安倍氏が幹事長代行に側近の菅義偉氏を起用したあたり石破氏に党運営のすべてを任せる考えではないようだ。その菅氏は通常国会で野党6党が提出した野田内閣不信任案に対し自民党の方針に造反して賛成した。つまり3党合意に反対したのである。これまでより野田政権との対決姿勢は強まる事が考えられる。

 民主党と協力する3党合意と民主党と対立する解散の両方を同時に進めなければならない政局で、谷垣前総裁は最後に矛盾した行動にはまり込み、野田内閣を解散に追い込むどころか総裁選に出馬する事が出来なくなった。谷垣氏は野田氏との政局に敗れた事になる。それでは安倍氏は野田氏との政局に勝つことが出来るだろうか。

 硬軟両様を使い分けなければならない政局で、民主党との対決色を強めれば「何も決められない政治」が再来し、自民党に逆風が吹く可能性がある。また提携が噂される大阪維新の会との関係でも、主張が近ければ近いほど、選挙では同じ支持層を食い合う事になり、組織の末端で近親憎悪が激しくなる。活路を切り開くのはそれほど容易ではない。

 これで大政局の中盤の序盤は自民党も民主党も「選挙の顔」ではないリーダーが党を率いる事になった。「選挙の顔」にならない党首の誕生というのも妙な話だが、それで選挙が「近いうち」と言われるのもまた妙な話である。

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2012年9月23日

「日米対中国」と考える愚かさ

 尖閣諸島の国有化を巡り、日中が衝突すればアメリカは日本の側につくと考える日本人が多いようだ。アメリカがその地域を「日米安保の適用範囲」と発言しているからである。しかしだからと言ってアメリカが日本の側につくとは限らない。アメリカは自らの国益を考えて利益のある方につく。それが国際政治の現実である。

 まず現在の日本の領土がどのように確定されたかを考える。確定させたのは1951年に締結されたサンフランシスコ講和条約である。第二次世界大戦で連合軍に無条件降伏した日本は領土についてすべての権利を放棄し処分権を連合国に委ねた。

 そこで日本が支配していた朝鮮半島をはじめ日清、日露、第一次大戦で領有した台湾、澎湖諸島、南樺太、千島列島、南洋諸島、南沙諸島のすべての権利を日本は放棄させられた。また北緯30度以南の南西諸島や小笠原諸島はアメリカの信託統治領となった。その南西諸島の中に尖閣諸島はある。

 一方、サンフランシスコ講和条約と同時に日米は安保条約を締結し、米軍が日本国内の基地に駐留する事になった。領土問題とは言えないが日本国家の主権が及ばない米軍基地が首都近郊を含め日本の至る所に作られた。

 現在日本が抱える領土問題の相手国は、北方領土がロシア、尖閣諸島が中国、竹島が韓国といずれも第二次大戦の戦勝国か戦勝国の側である。そして今回の竹島への韓国大統領上陸と尖閣諸島への香港活動家の上陸は、日本が敗戦国である事を思い出させる8月に決行された。

 中国の習近平国家副主席がアメリカのパネッタ国防長官との共同記者会見で、日本の尖閣諸島国有化を「第二次世界大戦以降の戦後秩序に対する挑戦」と発言したのは、まさに日本は敗戦国、中国とアメリカが戦勝国である事を指摘し、領土問題で米中は同じ側に立つことを強調したのである。 

 これに対してパネッタ長官が「日米安保の適用範囲」と言うのは、サンフランシスコ講和条約から1972年までその地域をアメリカが統治し、その後日本に返還したのだから当然である。しかしそれはこの問題でアメリカが日本の側に立つことを意味しない。

 なぜならアジア地域でのアメリカの基本戦略は日本に近隣諸国と手を組ませないようにする事だからである。日本がアメリカだけを頼るようにしないとアメリカの国益にならない。そうした事例を列挙する。

 アメリカはまず北方領土問題で日ソ間に平和条約を結ばせないようにした。そもそも北方領土問題を作ったのはアメリカである。真珠湾攻撃の翌年からアメリカはソ連に対日参戦を要求し、その見返りとして日露戦争で日本に奪われた南樺太と千島列島を返還する密約をした。

 サンフランシスコ講和条約で領土が確定された時点での日本政府の認識は千島列島に国後、択捉島を含めており、日本領と考えていたのは歯舞、色丹の2島だった。従って2島返還で日ソ両国は妥協する可能性があった。
 
 ところが米ソ冷戦下にあるアメリカのダレス国務長官はこれを認めず、4島返還を要求しなければアメリカは沖縄を永久に返さないと日本に通告した。これに日本は屈し4島返還を要求するようになり日ソは妥協する事が出来なくなった。

 小泉政権の日朝国交正常化に横やりを入れたのもアメリカである。日本は200億ドルともいわれる援助の見返りに北朝鮮と国交を結ぼうとしたが、アメリカのブッシュ大統領はこれを認めなかった。国交正常化の可能性ありと見て金正日総書記がいったんは認めた拉致問題もそれから進展が難しくなった。

 韓国の李明博大統領がしきりに持ち出す従軍慰安婦問題にもアメリカの影がある。2007年にアメリカ下院はこの問題で日本政府に謝罪を要求する決議を行った。中東のメディアは「アメリカは日本と中国、韓国の間にわざとトラブルを起こさせようとしている」と解説した。

 日本がアメリカの戦略に反した唯一の例が日中国交正常化である。中ソの領土紛争を見て分断を図れると考えたアメリカは、中国と手を組めば泥沼のベトナム戦争からも撤退できると考え電撃的なニクソン訪中を実現させた。しかし台湾との関係をどうするかで国交正常化に手間取る隙に、先に中国との国交正常化を成し遂げたのが日本の田中角栄総理である。中国と極秘交渉を行ってきたキッシンジャー国務長官は激怒したと言われる。それがロッキード事件の田中逮捕につながったとの解説もある。

 アメリカは中国に対し日米安保は日本を自立させない「ビンのふた」であると説明し、中国はそれを共通認識として米中関係はスタートした。従って尖閣周辺の海域で米中が軍事的に睨み合う形になったとしても、それは日本のためにではなく、米中双方の利益のために何が最適かを導き出すための行動となる。

 ところでパネッタ長官の訪中は米中の軍事交流を深めるのが目的である。その一方でアメリカは日本に対し中国の軍事力の脅威を宣伝し、オスプレイの配備など日本領土の基地機能強化を進めている。中国の脅威を言いながらアメリカは中国との軍事交流を深めているのである。小泉政権時代の外務大臣が米中軍事交流に抗議するとアメリカから「そういう事はもう一度戦争に勝ってから言え」と言われたという。

 領土問題は力の強いものが勝つ。それが国際政治の現実である。話し合いで解決するにしても力の強い方に有利になる。力とは軍事力だけを意味しない。むしろ経済力、外交力、そして国民の意思の力が重要である。ところが「日米安保の適用範囲」という言葉にしがみつく日本人は何の保証もないアメリカの軍事力にしがみついているのである。それは日本が経済力、外交力、国民力に自信がないことを露呈しているに過ぎない。

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2012年9月16日

中盤の序盤2

 ダブル党首選の顔ぶれが出揃い選挙戦がスタートした。一言でいえば勢いのない候補者の勢揃いである。

 民主党には野田総理を再選させるしかない事情があり、勢いがないのも仕方がないが、自民党は出馬に意欲を見せていた谷垣総裁の足を引っ張っての選挙戦だから、もっと勢いが出るかと思ったが、迫力に乏しい「お坊ちゃま」たちの勢揃いとなった。

自民党総裁は総理になる可能性があるとして、メディアはしきりに政策の中身を聞こうとするが、前も書いたように自民党が政権をとっても「ねじれ」は解消されず、掲げた政策が実現される保証はない。だから政策を鮮明にすると自らを縛ると考えるのか、主張は似たり寄ったりで逃げの姿勢が見える。

 ただ党首選には、今後の政局を占うための動きも見えるので、私なりの見方を書いておきたい。9月に入ると民主党では細野豪志環境大臣の代表戦出馬説が出回った。6日には有志議員が本人に出馬を要請する模様がニュースで流され、野田総理に強力な対抗馬が現れたと報道された。しかし7日には細野氏が不出馬を表明、一転して野田総理の再選が固まった。

 これが何を意味するか。私には輿石幹事長の続投が固まり、総理の解散権にかんぬきがかけられたと見える。解散・総選挙を考えると民主党国会議員の多くは「選挙の顔」として野田氏より細野氏を担ぎたい。それを野田総理に見せつけたのが6日の動きである。そこで野田総理が「選挙の顔」が自分でない事を認めれば、細野氏に不出馬を言わせ、野田再選を固める。そのシナリオに見えた。

野田総理にはやり残した課題がある。「税と社会保障の一体改革」ではない。赤字国債発行法案と選挙制度改革法案の成立である。赤字国債発行法案が成立しないと政府の財布は空っぽになり国家は何もできなくなる。期限は「10月末」だそうだから、それまでには何としてもこれを成立させなければならない。

それを新しい「選挙の顔」ではなく野田総理にやらせようというのである。10月に開かれる臨時国会で野田総理問責に賛成した自民党は野田総理にどう対応するか。問責を盾に赤字国債発行法案の審議に応じなければ政府の財布は空っぽになる。民主と自民の我慢比べが始まる。最悪の場合は総理の首を差し出して実現させるところまでいく。それが10月政局の第一の攻防である。

 自民党候補者の中で石破氏だけが無条件で赤字国債発行法案を認め、問責決議にも否定的な姿勢を見せた。野田総理にすれば石破氏の総裁就任が望ましい事になる。しかしその他の候補はそうではない。問責を可決した自民党内もそれで収まるとは思えない。

 10月第二の攻防は選挙制度改革法案の成立で、これが成立しないと解散・総選挙は難しい。問題は消費増税で国民に負担を強いる3党が「身を切る定数削減」に踏み込めるかどうかである。自民党総裁候補は全員が「0増5減」で済ませる方針を示した。さらに40議席を削減しようとしている民主党とは対立する。この処理も問責を受けた野田総理にやらせた方が得策と民主党は考えている。

 報道によれば細野氏に出馬を促し、その後に出馬を止めさせたのは輿石氏に近い議員だという。その人たちが出馬を止めさせたのは目的が達せられた事を意味する。目的は輿石幹事長の続投である。つまり今回の民主党代表選は、野田総理が去年の「どじょう演説」で輿石幹事長就任を約束し代表の座を勝ち得たのと同様に、輿石幹事長続投を約束した事で再選が約束されたと私は見る。

 しかし政治の世界に裏切りは付き物である。それをさせないため3人が代表戦に出馬して強弱の違いはあるが野田批判をする。特に去年の代表戦で事前の予想を覆し野田代表誕生に最も尽力した鹿野元農水大臣が対抗馬として出馬しているところに、再選はさせるが勝手なことをすると包囲網を作るという意図を感じる。紆余曲折はあるだろうが「近いうち」は「選挙の顔」が代わってからではないか。

 自民党の谷垣総裁は醜態をさらした。直前まで意欲を示していたのに党内に支える勢力が少なく不出馬を表明した。谷垣総裁を屈辱の不出馬に追い込んだのは「選挙の顔」にならないという自民党の都合である。政党支持率で民主党を上回ったとはいえ、大差がある訳ではないし、野田総理になってからの民主党政権に谷垣総裁は決して「押し」が強いとは言えなかった。

 党首討論では3党合意を迫る野田総理に押し込まれ、3党合意との引き換えに解散を約束させる事も出来なかった。ただそこには無理からぬ事情もある。3党合意と解散の取引より、民主党分裂が前面に出たため、それを奇禍とした自民党は確かな解散の保証もないまま3党合意に引きずりこまれた。それが最終的に3党合意を否定する野党7会派の問責決議案に賛成する異様な決断に至るのである。

 民主党に協力する3党合意と民主党と敵対する解散という2つの異なる要求が自民党内にあり、両方を同時に成し遂げなればならない立場に谷垣氏は立たされ、それが谷垣氏を追いつめた。また谷垣氏は野田対小沢という対立構図が生み出す政局にも勝てなかった。対立していると見て突き進むと足をすくわれる政局である。最後は小沢氏らが提出した問責決議に賛成するはめになった。

 自民党総裁選に名乗りを上げた候補者たちは告示の日に、異口同音に谷垣総裁の仕事ぶりを讃え、ねぎらいの言葉を口にしたが、それがかえって白々しく聞こえた。しかし間もなく選ばれる総裁は谷垣氏と同じ立場に立たされ、3党合意と解散の両立を迫られるのである。

 自民党総裁選の候補者たちに勢いを感じさせないもう一つの理由は、1年生議員の小泉進次郎青年局長の存在である。小泉氏は「野党に転落した自民党はすぐに政権に復帰しようとせず、真剣に反省して解党的出直しを図らなければならない」とか、「どこかと組む事を考えるのは、自民党を駄目だと言っているようなものだ」など至極もっともな事を言い、3党合意に批判的なスタンスをとっている。

 その小泉氏がキングメーカーの役割を果たそうとした。19日に行われる青年局主催の討論会を聞いて誰に投票するかを表明すると発言したのである。これで混とんとする総裁選の行方に小泉氏が大きな影響力を持つことになり、総裁選の主役が候補者ではなく1年生議員になりかかった。

 後にそうした考えは撤回されたが、しかしこれで小泉氏は十分に存在感をみせつけ、それと比べて候補者たちの迫力のなさが印象付けられた。小泉氏が言う通り、自民党は野党転落の原因を徹底的に究明し、民主党を批判するより民主党を超える政策を国民に提示しなければならない。

 それもせずただ問責決議を連発してきた自民党から脱皮する事こそ次の総裁の課題である。それが見えないと自民党総裁選は目先の解散・総選挙を求める党利党略だけが浮き彫りになる。

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2012年9月 3日

中盤の序盤

 私の見立てで来年夏の参議院選挙までを一区切りとする大政局は、今月「中盤の序盤」を迎えた。8日までは通常国会が開かれており、重要法案が積み残されているというのに「中盤の序盤」はもはや民主、自民の党首選一色である。

 これまでは激しい党首選を国民に見せる事が政党の宣伝となり、無風よりも政党の人気度を高めると見られてきた。しかし今度の党首選で国民に見えてくるのは、「決められる政治」とは「増税を決めるだけの政治」であり、それ以外は「何も決められない政治」が続くという現実である。

 民自公の3党合意で消費税法は成立した。その時に3党は胸を張って「決められる政治が始まる」と宣言した。しかしその舌の根も乾かぬうちに「決められない政治」が再現する。赤字国債発行法案と選挙制度改革法案を巡って3党は対立したのである。

 赤字国債発行法案は国民生活に直結する重要法案である。これが通らないと予算の執行ができなくなる。昔は「刑務所の飯が出なくなる」と言ったが、国家機能が麻痺して日本経済は打撃を受ける。

 政治の責任としてそれだけは避けなければならない。昨年は無能の烙印を押された菅総理の退陣と引き換えに成立を図る事が出来た。しかし今年は自公が野田総理の退陣ではなく解散・総選挙を迫っている。その方が自分たちの党利に見合うからである。

 ところが解散をして選挙をやれば憲法違反の国会議員が誕生する。最高裁は現在の「一票の格差」を憲法違反状態と判断してその解消を求めている。日本国民の政治的権利はないがしろにされていると司法は判断しているのである。

 その解消を目指す選挙制度改革法案は、従って国民の権利に関わる重要法案で、これが通らないまま衆議院選挙を行うと、最高裁は選挙結果を無効とする可能性が高い。日本にかつてない政治空白が訪れ、それはまた国民生活に大きな影響を与える。

 私に言わせれば「税と社会保障の一体改革」より喫緊の課題を置き去りにしたまま党首選が始まる。何が争点になるかと言えば、3党合意によって作られた与野党の協力体制と相違点を巡る競い合いである。

 自民党総裁選挙では、消費増税法案に反対した候補者はいないから、3党合意と消費増税は争点にならない。候補者同士の競い合いは民主党との違いを見せつけるところになる。解散・総選挙が近いと思えば尚のこと外交・安全保障や経済政策を巡って民主党との違いを鮮明にする。

 自民党の総裁候補は、民主党に協力するのは消費増税だけだと口々に言い募る。そして民主党との違いを強調する。しかし総裁に選ばれれば3党協力体制は継続して「税と社会保障の一体改革」だけはやり遂げると約束する。とにかく増税だけは決まるが、それ以外では民主党と対立する図式が国民に示される。

 少し先の話まですれば、そうして選ばれた総裁の下で仮に自民党が衆議院選挙に勝ったとする。しかし現状は参議院で自民党が過半数に35議席足りない。公明党を加えても16議席足りない。民主党と対立すれば「ねじれ」で政権運営は行き詰まる。決められるのは増税だけとなる。

 自民党政権が出来ても民主党と大連立しない限り何も決める事はできない。自民党が民主党と大連立する事になれば政策のすり合わせが必要になる。民主党は自民党に政策の変更を要求できる立場に立つ。すると民主党との違いを鮮明にして選挙に勝った自民党が民主党の政策に「増税以外では」屈する事になる。

 一方の民主党代表選挙は小沢一郎氏の離党によって対立軸を失い活力を削がれた。世界各国とも熾烈な権力闘争を戦い抜いた者だけが国のリーダーになれる。アメリカも中国もロシアも政治家を鍛え上げるのは権力闘争である。しかし小沢氏のいない民主党では代表選挙が再び学級委員選びのレベルに戻る。

 昨年の代表選挙では候補者に名乗りを上げた面々が小沢詣でを行い、小沢氏が誰を推すかに注目が集まり、そして「どじょう演説」の番狂わせがあった。我々はその裏で繰り広げられた権力闘争の臭いに注目をさせられた。しかし今や権力闘争の香りもない民主党代表選挙に興味を抱く気が起きない。

 民主、自民の党首選挙と並行して大阪維新の会が国政参加の動きを強めている。民主、自民、みんなの党の現職国会議員と連携する他、地方自治体の首長や自民党の安倍元総理などとも接触を図っている。こちらは民自公3党合意や大連立路線と対立する政界再編路線を促す動きになる可能性がある。

 メディアは安倍元総理との関係に最も関心を寄せているが、大阪維新の会の動きは安倍氏に自民党からの離党を促すもので、大げさに言えば自民党分裂を誘っている。安倍氏に離党する気はなく、むしろ大阪維新の会との関係をプラスに作用するとみて自民党総裁選に意欲を見せている。

 しかしそのことは自民党最大派閥の町村派に分裂をもたらし、しかも民自公大連立路線にも水を差すことになるため自民党の分裂模様が国民に見えてくる。大阪維新の会と安倍氏との関係が自民党にプラスに作用するかマイナスに作用するかは「中盤の序盤」の見どころの一つになる。
 

Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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