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覚醒なき国家に未来はない(3)

湾岸戦争が終わると、アメリカと覇権を争ってきたソ連が崩壊し、地球の半分を支配してきた帝国は12カ国の独立国家共同体(CIS)になった。一方のアメリカは一国で世界を支配する超大国となる。

なぜゴルバチョフ書記長が「ソ連解体」を決断したか。ジェームズ・ベーカー元国務長官は「湾岸戦争でアメリカが使用した精密誘導兵器が原因」と言った。ベトナム戦争で大量破壊兵器を非難されたアメリカは、ハイテク技術を駆使する精密誘導兵器の開発に力を入れ、それを湾岸戦争で初めて実戦に使用した。新型兵器を世界に誇示するため、アメリカは戦争のテレビ実況中継を行った。

核兵器だけを作り続けてきた計画経済国家には到底追いつけない技術と思われた。シェワルナゼ外相がゴルバチョフに「帝国の解体」を進言したのだとベーカー氏は言った。一方、アメリカの政治家達は「ビル・ゲイツを生み出す国が計画経済に勝った」と新規参入を奨励するアメリカ資本主義を自慢した。それならアメリカを脅かす計画経済国家日本にも勝てる筈である。

アメリカ議会は「ソ連の次の脅威である日本経済をいかに封じ込めるか」の議論を始めた。日本経済の構造が分析され、大蔵省と通産省が司令塔となり、政界と財界がそれに協力し、国が一丸となって輸出を進める構造が解明された。

その議論はブッシュ(父)政権からクリントン政権へと引き継がれ、やがてクリントン大統領は「大蔵省、通産省、東大」を「日本の三悪」と呼ぶのである。すると不思議な事に東京地検特捜部が「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」をマスコミにリークし、「大蔵省・日銀接待汚職事件」を摘発した。

産経新聞の石塚健司記者が書いた『「特捜」崩壊』(講談社刊)によると、逮捕された大蔵省のキャリア官僚は全く無実の「人身御供」であると言う。大蔵省の天下り先を法務・検察関係が奪うことになるが、この事件によって官僚に対する国民の信頼は一気に崩れた。バブル崩壊後の金融不祥事と相まって、司令塔不在の日本経済は「失われた時代」をずるずると引きずる事になる。アメリカの日本経済封じ込めは思惑通りになった。

一方でソ連の崩壊はアメリカに安全保障体制の全面的な変更を迫った。2年から3年の時間をかけてアメリカ議会が議論したのは、ソ連の核をどう管理するか、CIAを廃止すべきか、軍の組織をどう変えるか、そして米軍の世界配備の見直しなどである。

最大の問題はソ連が管理してきた核物質、核技術、核科学者の流出をどう防ぐかであった。ソ連崩壊は核拡散の危険を増大させていた。アメリカの目はソ連以外の地域にも向けられ、そこで北朝鮮の核疑惑が浮上した。

ソ連の核の脅威を探るために作られたCIAの任務は終わったが、冷戦後の世界には民族主義の台頭が予想され、脅威は拡散すると考えられた。CIAは廃止されるどころか増強され、CIA長官は他の諜報機関を束ねる地位に就くことになる。

ピラミッド型の軍の組織はコンピューター時代に対応し、前線の個々の兵士とアメリカ本土の司令部が直結するネットワーク型に変更された。そして冷戦を前提とした米軍の世界的配備も全面的に見直される事になった。要するに半世紀に亘って続いてきた体制は悉く変更される事になった。

ところが日本は冷戦後の時代にどう適応するかの議論を全く行わなかった。当時の宮澤喜一総理は「冷戦の終結で平和の配当が受けられる」と気楽な事を言い、国会は相も変わらず「政治とカネ」の議論に終始していた。心配になった筆者が外務省高官に霞ヶ関の対応を聞くと、そこでも組織立った議論は行われていないと言う。日本は国全体が冷戦が終わった事に無関心だった。

冷戦の終結で「反共の防波堤」としての日本は不要になった。日米安保も本来の役割を終えた。アメリカの分析通り、冷戦後の世界では各地に民族主義が台頭し、隣の韓国や台湾も例外ではなかったが、日本だけはそうした動きもなかった。一時は日本をソ連に代わる脅威と見たアメリカが、日本が自立できない国である事を知ると、アメリカの軍事力に守られて蓄積した富を搾り取る対象と考えた。

そのためアメリカ自身は冷戦時代と異なる思考で世界を睨みながら、日本には冷戦時代の思考を残すようにした。アジアには台頭する中国と核疑惑の北朝鮮がある。だから「アジアの冷戦は終わっていない」というロジックで駐留米軍は維持され、日本はアメリカにすがるしかないと思わされた。

しかし中国、北朝鮮はかつてのソ連と同じではない。「ソ連封じ込め」でアメリカは日本経済を強化したが、「中国封じ込め」はその逆である。米中は経済で緊密に提携し、お互いがなくてはならぬ存在になっている。例えば電気自動車に使用するリチウム電池技術を共同開発し、先行する日本を叩きつぶす戦略を立てている。北朝鮮も対米外交を重視し、日本を無視する国家である。両国ともアメリカと対立はしていても対日問題となるとアメリカと手を組む可能性があるのである。

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田中良紹(たなか・よしつぐ)

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1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
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1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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