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2010年7月16日

一度の選挙では政権交代にならない国の構造

 選挙が終わって参議院のあり方を考えている。今回の選挙で「大勝」と言われた自民党は実は比例では議席を減らした。自民党が議席を伸ばしたのは選挙区で、それも都市部ではなく地方の1人区である。前回の6議席を21議席に増やしたから自民党の15議席増は1人区の成果そのものと言える。言い換えれば自民党は日本全体では負けたが地方で勝ったのである。

 今回の選挙で1票の格差は5倍を超えた。裁判所が選挙無効の判決を下してもおかしくない。1票の重みの少ない地方で勝利した政党が、政権与党を追いつめる議席を得た事になる。何故なら民主党は参議院で過半数を失い、参議院で否決された法案は衆議院の三分の二で再議決されない限り廃案になるからである。民主党には再議決する議席がない。再三指摘してきたが、日本国憲法は衆議院に優位性を認めながら、実際には参議院が政治をコントロールできる仕組みを作っている。

 従って政権与党が安定した政権運営を行うためには参議院の過半数確保が絶対に必要である。それがないと衆議院選挙で国民に公約した政策を実現する事が出来なくなる。参議院で過半数割れした政権は連立を組むか、部分連合を目指すしかないが、いずれにしても他党の要求を受け入れざるを得ない。選挙で国民に公約した政策をストレートに実現する事が出来ず、政権に押し上げた国民の期待を裏切る事になる。

 今回の選挙で民主党は44議席に減らしたが、これを過半数の122議席に引き上げるには78議席が必要となる。民主党は3年前の参議院選挙で大勝したがそれでも66議席だった。3年後の参議院選挙で過半数を超えることは到底不可能である。民主党が政権与党であり続ける限り自前の政権運営が出来るのは良くても6年先以降である。それまでは悩ましい政治が続く事になる。

 それでは自民党に政権を託す方が良いのか。実は自民党も同様である。今回51議席を獲得したが、過半数にはあと71議席が必要である。自民党の長期低落傾向が変わっていない事を考えると3年後の参議院選挙で71議席を獲得する事もまた不可能である。今後自民党が衆議院選挙で政権を奪還しても連立を組むしかないから自前の政策は実現できない。二大政党による政権交代を目指すと言いながら、民主党も自民党も国民に公約した政策を実現するには非力な政権にしかならないのである。

 今、自民党は「ねじれ国会」を利用して民主党を解散・総選挙に追い込み、政権奪還を狙うとしている。実際、解散に追い込むことは可能である。民主党が初めて自前で組む予算案を来年の通常国会で立ち往生させることが出来る。予算は衆議院が優先だが、予算関連法案は違う。関連法案が参議院で否決されれば予算が通っても執行は出来なくなる。総理は政治責任を問われ、総辞職か解散を選択せざるを得なくなる。

 ところで今回の参議院選挙の得票数をそのまま衆議院選挙に当てはめた共同通信社のシミュレーションによれば、民主党は衆議院で306議席を獲得して大勝するという。今回の国民の投票が決して自民党政権を望むものではなかった事が分かる。ただし公明党が自公選挙協力に踏み切れば民主党は135議席しか取れずに惨敗するという。このシミュレーションが本当ならキャスティングボートを握っているのは公明党である。

 自民党にとっても民主党にとっても公明党の取り込みが必須の課題となり、消費税導入の前提として両党が掲げている「議員定数の削減」など絵に描いた餅になる可能性がある。もっとも今回の選挙で消費税の導入が遠のいたと見れば、「議員定数の削減」も直近の課題でなくなる可能性がある。

 さて問題は民主党も自民党も非力な政権にしかなり得ないこの国の政治構造である。それは衆議院選挙に勝利して政権を握っても参議院で過半数を得なければ力を行使できない仕組みから来ている。そのため政権交代には3回の選挙が必要になる。まず参議院選挙で与党を過半数割れに追い込み、「ねじれ」でよれよれになった与党を衆議院選挙で交代させ、次の参議院選挙で過半数を維持しないと国民に公約した政策を実現する体制にならない。民主党は政権交代10ヶ月後に3回目の選挙で失敗した。

 これでは国民が政権交代の意味も分からぬうちに政権がよれよれになる。要するに日本では一度の選挙で政権交代という訳にはいかない構造があり、それが理解されていないため政治に対する不満が高まる。このままだと民主党が政権を取っても自民党が政権を握っても不満だらけの悩ましい政治が続くことになる。問題はなぜ再議決に過半数でなく三分の二が必要なのかである。

 憲法改正が出来ないのも衆参両院の三分の二の賛成が必要とされるためだが、三分の二と言うのは高すぎるハードルである。それが参議院に力を与えた。参議院が何のためにあるかと問えば、大抵の人は「良識の府として衆議院の暴走を押さえるため」と答える。しかし衆議院の暴走を押さえるためなら再議決は三分の二でなく過半数で良い。衆議院の決定に異議を唱えるだけで衆議院の決定を覆す力まで与える必要はない。

 英国議会の貴族院はそうした存在である。下院の決定に異議を唱える事はあっても決定は覆せない。あくまでも下院の決定が決定となる。しかし下院の決定に異議を唱えた事実は国民に影響を与えるから下院の暴走を押さえる効果はある。参議院が衆議院の暴走を押さえる役割ならば衆議院に「再考」する時間を与えるだけで、衆議院の決定を尊重するのが参議院のあり方ではないか。

 ところが日本の参議院には衆議院の決定を否定する力がある。それによって参議院は「良識の府」どころか「政局の府」になった。佐藤栄作氏ではないが「参議院を制する者が日本政治を制する」となれば、政党や派閥が参議院で勢力をしのぎ合うのは当たり前である。総理は参議院の実力者の意向を無にする事が出来なくなり、参議院の実力者は陰で「天皇」とか「法皇」と呼ばれるようになる。

 参議院選挙の敗北で民主党政権はこれから参議院の壁に阻まれる。自民党は参議院の力を得て政権交代のための攻め手を考える。しかしその自民党が政権を取ればまた参議院で民主党から攻められるのである。マニフェスト選挙などと言ってみたところで、参議院で過半数割れした政党の公約は連立次第で空証文になる。それでは国民が選挙で政権選択する意味も虚しい。こうした構造を変えないと日本の政治はいつまでも混迷を続ける事になる。

 再議決の三分の二を過半数に変えれば衆議院の決定が決定となり、政権は今よりも安定する筈である。総理の首をころころ代えなくても済む構造になると私は思う。政権が安定すれば選挙で掲げた公約の効果を多少は見極める事も出来る。そうなって初めて国民が選挙で政権を選べる体制が生まれるのではないか。ただし変えると言っても問題は憲法に関わる話であるから簡単でない。少なくも民主党と自民党とが一致しなければ実現しない。

 どうせ民主党も自民党も今の枠組みのままなら、どちらの政党が政権を取っても当分は参議院で過半数を握れない事情がある。それなら目の前の政争に明け暮れるより一度この国の政治構造を根本から考え直してみたらどうか。それとも今の枠組みを壊してしまえば、参議院の過半数割れから逃れる政党が誕生する可能性はある。

2010年7月14日

悩ましい選挙の悩ましい結果

 敗者が誰かははっきりしている。しかし勝者が誰かとなると良く分からない悩ましい選挙結果だった。一応自民党が15議席増やして改選第1党になった事から勝者に見える。党の幹部らが人指し指を立てて笑顔を振りまけばそう思う。しかし比例の結果を見ると、自民党は惨敗した3年前よりさらに得票率と当選者数を減らしている。

 3年前の自民党は得票率28%で14人を当選させた。しかし今回は24%で12人しか当選していない。因みに6年前は30%で15人が当選した。比例を見る限り自民党の長期低落は変わらず、今回の選挙で史上最低を記録した。

しかも議席を増やしたとは言え自民党は非改選と合わせて84議席と参議院242議席の3分の1をわずかに上回る程度である。55年体制下で万年野党の社会党は「3分の1政党」と言われたが、自民党はその程度なのである。

自民党が議席を増やす事が出来たのは選挙区、とりわけ1人区で民主党との攻防を制したからである。3年前に23対6で民主党に負けたのを21対8と逆転した。1人区だけで15議席増やした。その理由を私は民主党の路線転換と自公選挙協力にあると見ている。

>>続きは「Infoseekニュース 内憂外患」で

2010年7月 5日

悩ましい日本の政治構造

 参議院選挙も折り返しを過ぎていよいよ終盤に入った。菅総理の「消費税発言」によって野党第一党の自民党は攻め手を失ったが、一方でそれは菅政権の支持率を押し下げ、民主党の中にも「反消費税」を訴える候補がいて選挙は複雑な様相を見せている。07年の参議院選挙、09年の衆議院選挙のように国民の心に突き刺さる要素はなく盛り上がりを欠くが、しかし選挙の帰趨を決める1人区では多くの所で民主党と自民党とがデッドヒートを繰り広げている。与党が勝つか野党が勝つかは全く予断を許さない。

 菅内閣発足当初は民主党の単独過半数獲得が現実になるかと思われた。「ニュー民主党」の出現は自民党のみならず並み居る新党を吹き飛ばすに十分なインパクトがあった。しかし「消費税発言」でそれが一変した。自民党が「抱きつき作戦」と言うように、それは自民党との対立点をなくしたが、一方で07年の参議院選挙と09年の衆議院選挙で民主党を勝利に導いた「政治は生活が第一」路線を消し去り、風前の灯火だった新党がこれで息を吹き返した。

>>続きは「Infoseekニュース 内憂外患」で

Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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