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2010年3月31日

世界は「民から官」

 「資本主義経済が破綻して危機に瀕した時、それを救済出来るのは国家である」と歴史は教えている。「民」に任せれば破綻は拡大する。従って危機の時に「官から民へ」を叫ぶのは歴史に逆行する間抜けな話である。

 1929年10月24日、ニューヨーク証券市場が大暴落した時、共和党のフーバー大統領は「政府は経済に介入すべきでない」との姿勢を取り、そのため破綻は拡大して世界に波及した。各国の金融機関が倒産、それに伴い企業も倒産、失業と貧困が街に溢れた。これが世界恐慌である。今で言う「小さな政府」の政策が世界を不況のどん底に陥れた。

 フーバー大統領に代わって登場したF・ルーズベルト大統領は、それまでの政策を「新規まき直し(ニュー・ディール)する」と宣言し、国家が経済に介入する政策に切り替えた。ケインズ経済学の修正資本主義路線を採用、国家が税金を使って公共事業を興し、ダムや道路を造った。同時に貧困に苦しむ国民を救済するため、税金を使って福祉を充実させた。今で言う「大きな政府」の政策である。

 その方向は正しかったが、社会主義の計画経済に比べれば効果は薄かった。スターリンの共産主義や、ヒトラーの国家社会主義の計画経済は世界恐慌の影響を受けなかった。結局アメリカ経済が立ち直るのは日本の真珠湾攻撃によってアメリカが戦争に突入し、軍需産業が盛んになってからである。不幸なことだが20世紀の世界恐慌は戦争によって解決された。いずれにせよ危機になれば、国家が経済に介入しないと回復はおぼつかない。それが資本主義の宿命であり、世界恐慌が教える歴史の教訓である。

 リーマンブラザーズの破綻に端を発するアメリカの金融危機は、瞬く間に先進資本主義国の経済を直撃し、「百年に一度」とグリーンスパン前FRB議長に言わせる規模となった。そうした時期に大統領に就任したオバマの経済政策が「大きな政府」になるのは当然である。

 だが社会主義を嫌うアメリカ国民の心情に配慮して、オバマ政権は「大きな政府」とは言わずに「賢い政府」と言った。しかし巨額の財政出動によって政府が破綻企業を救済し、経済の安定を主導する政策は「小さな政府」の対極である。アメリカは今や「官から民へ」ではなく「民から官へ」の政策を採っている。

 ヨーロッパ諸国は元来福祉国家を目指してきたのでいずれも「大きな政府」の政策である。英国病から脱するため「小さな政府」を導入したサッチャー時代のイギリスも、今ではサッチャー路線を採っていない。こうして先進資本主義諸国はいずれも政府が経済運営で大きな役割を担うようになった。

 しかし政府が湯水の如く税金を使える訳ではない。何もしなければ経済は破綻するが、税金を投入して危機を回避しようとすれば、今度は財政が破綻して国家そのものが破産する可能性がある。かねてから巨額の財政赤字を抱えるアメリカは、それでも危機回避のためには巨額の財政出動を迫られており、その舵取りは極めて難しい。アメリカ政府は今、喉から手が出るほど金が欲しい。

 戦後、西ドイツと共に「反共の防波堤」と位置づけられた日本は、アメリカの「ソ連封じ込め戦略」によって経済的繁栄を約束された。第二次世界大戦の敵国でありながら、西ドイツも日本もアメリカの手によってアメリカに次ぐ経済大国に育て上げられた。とりわけ日本は80年代に世界最大の債権国となり、逆にアメリカは世界最大の借金国に転落した。その日本は今、国家財政は赤字だが個人には1400兆円の金融資産がある。

 冷戦が終結すると当然ながらアメリカの政策は一変した。まずは日本経済を「ソ連の次の脅威」と位置づけ、次に日本が官僚主導の計画経済体制である事から、旧大蔵省と旧通産省の力を削いで計画経済の枠組みを崩し、日本の金融資産を民間ベースに取り込む工作に取りかかった。

 そもそも日本の銀行や証券会社は全く「民業」とは言えない。旧大蔵省管理下の「護送船団」で、競争のない既得権益であるから叩けばいくらでもホコリは出る。特にバブル期に積み上げられた不良債権が顕在化すると、アメリカから不良債権処理を最優先にするよう要求された小泉政権は、金融再生法によって銀行を次々国有化し、それをアメリカの民間ファンドに売却した。

 アメリカの最大の狙いは郵貯と簡保である。その300兆円の資産が国家の管理から解き放たれれば、様々な金融商品の対象に組み込む事が出来る。小泉政権はアメリカの筋書に沿う形で郵政民営化も実現した。しかし昨年の政権交代でアメリカの思惑は外れた。もとより自民党政権にうんざりだったアメリカは、一方で政権交代を歓迎しつつ、しかし郵便局が国営化されて巨額の資金が国家の管理下に置かれるのは困る。そこで民主党政権に厳しい姿勢を取るようになった。それが普天間問題である。

 かつて沖縄返還を巡ってどれだけの経済的要求を日本が飲まされたかを思い起こせば、アメリカにとって沖縄は有力な経済カードである事が分かる。あの時日本は沖縄返還と引き替えに繊維製品の対米輸出を規制され、かつ航空機の購入も約束させられた。それが後のロッキード事件につながる。そして近年明らかになった「密約」によれば返還費用も肩代わりさせられていた。民主党政権が名護移設を受け入れられない事を百も承知だからこそアメリカは名護移設にこだわる。アメリカにとって名護にメリットがあるからではない。他に目的があるからだ。

 そこで郵政民営化の見直しである。日本がこの経済危機から脱するためにはやはり財政出動が必要だが、国の財政はアメリカほどではないにしても巨額の赤字を抱えている。これを乗り切るには国債に頼るしかない。赤字国債と言えば聞こえは悪いが、それが無用な公共事業ではなく、オバマの言う「グリーン・ニューディール」や将来の日本を支える科学技術や教育投資に使われるのなら有用である。

 そのために郵貯や簡保を国の管理下に置こうとする郵政改革法案は「民から官へ」の動きで、現在の世界の流れに符合している。そして財政赤字に苦しむアメリカの国債を郵貯資金で購入すれば、アメリカが当初目論んだ資金の流れとは異なるが、アメリカの経済要求に応える事が出来る。それは普天間問題にも影響する筈だと私は思う。

 ところがこの動きを「官の肥大化につながる」とか、郵貯の預け入れ額の引き上げを「民業圧迫だ」という批判が民主党内から起きた。全く民主主義を理解しない人間の戯言である。政治家が主導して政府の管理を強める事のどこが「官の肥大化」なのか。国民の代表である政治家が主導する限り、それは国民主権の行使であり、「官」は政治のコントロール下に置かれている。

 また日本の銀行を「民業」と言う認識にも驚いた。日本の銀行は民間ではあるが、1927年の銀行法制定以来、厳しい官の統制下にあり、官僚に手取り足取りして貰わないと何も出来ない。それが「メインバンク制」という企業を官僚組織の支配下に置く装置として使われた。世界に名だたる「日本株式会社」の特殊構造である。

 政府の管理を強めたり、官僚の権限を強めることが「官の肥大化」になるのは、政治家より官僚が政府を支配する国の話である。政治家が官僚をコントロールする国家では官僚が民間企業に「天下る」事も何ら問題でない。アメリカでは有能な人間がある時は官僚になり、それが民間企業の経営者に「天下り」し、また官僚に戻ったりする。ところが日本では、日銀総裁人事でも日本郵政の社長人事でも、官僚OBと言うだけで大騒ぎした。

 騒ぐのは今回と同じで民主主義を知らないのである。しかし自民党にも民主党にもそういう政治家が一杯いる。それが「改革派」を自称する。しかしそれこそ民主主義を壊す存在である事を国民は良く覚えて置いた方が良い。

2010年3月23日

毎度バカバカしい日本のメディア

 私が「液状化する自民党」を書いた翌日に自民党の鳩山邦夫衆議院議員が地元で谷垣執行部を批判し、翌15日に自民党に離党届けを提出した。同じ日に自民党の幹事長代理を務めていた園田博之氏も役職を辞任した。鳩山邦夫氏は自民党の中枢から外れた人間であるが、幹事長代理は自民党執行部の一角をなす要職である。その要職にあった園田氏の辞任は既に自民党執行部が崩れ始めた事を意味する。

 ところがメディアは園田氏の辞任には目もくれず、鳩山邦夫氏の一挙手一投足を追いかけた。離党したのだから新党結成に動くと見たのだろう。しかし多少でも政治を知る者なら新党結成がどれほど容易でないかを知っている。ただのパフォーマンスに近い行動より、崩れ始めた自民党内部の力学に目を凝らす方が政治取材の本道だと思うのだが、今のメディアはそうならない。

 自民党が崩れ始めたのは今のままでは参議院選挙に勝てる見込みがないからである。「政治とカネ」をいくら追及しても、民主党にダーティなイメージを植え付けて支持率を下げさせても、それだけでは選挙に勝てない事を自民党は知っている。長年政権の座にあって権力を知り、「政治とカネ」の攻撃を受けてきた経験からそう考える。選挙はイメージだけでは動かない。選挙は生活そのものであるからだ。

 政治の奥深さを知る自民党が今のままでは選挙に勝てないと考えているのに、民主党の方にも今のままでは参議院選挙に勝てないと叫ぶ連中がいる。こちらは政治を知らない未熟児であるため世論の動向で選挙が動くと信じている。しかし選挙は国民が生活を賭けて判断するものである。スキャンダルを批判してもそれでメシが食える訳ではない。メシを食わせてくれる政治かどうかを考えて国民は1票を入れる。

 最近の政治報道は「世論」の動向ばかりを喧伝している。おそらくメディアが散々利用された小泉政治のマインドコントロールから抜けられずにいるからだろう。小泉純一郎氏はなる筈のない総理になったため、自民党内に全く権力の足場がなかった。そこでメディアを利用して「世論誘導」を行い、自民党の外に足場を作った。「世論」だけが頼りの政治が始まり、政治の本道が見失われた。すると生活にひずみが出始め、そこで国民は気付いたのである。昔からの熱心な支持者ほど自民党から離れた。昨年の総選挙で自民党が野党に転落したのはそのためである。

 国民が民主党に政権を取らせたのは、「民主党らしさ」に期待を寄せたからではない。亀井静香氏に言わせれば、「民主党がコペルニクス的転換を図った」からである。小沢一郎氏が代表に就任して「生活が第一」を選挙スローガンに掲げた事が民主党に勝利をもたらした。国民は「世論」の人気だけを得ようとして「生活」に目もくれなくなった小泉政権以来の自民党に「ノー」を突きつけたのである。

 だから旧体制の権力は小沢一郎氏を狙い撃ちにする。明治以来「毎度おなじみの手法」で攻撃が仕掛けられた。中央公論の4月号でオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏が指摘しているように、戦前の天皇制官僚国家は選挙で選ばれた政治家の力を骨抜きにするために非公式の政治システムを作り、それが第二次世界大戦後も連綿と続いてきた。官僚制度を防御するための装置はメディアと二人三脚で動く検察である。

 「検察とメディアにとって、改革を志す政治家たちは格好の標的である。彼らは険しく目を光らせながら、問題になりそうなごく些細な犯罪行為を探し、場合によっては架空の事件を作り出す」(中央公論4月号「日本政治再生を巡る権力闘争の謎」)。最も手強い小沢氏さえ排除できれば後は簡単である。その他の民主党議員を訴追できるネタはいくらでもある。しかもそれらの議員はネタを表に出さなくても、裏で脅せば思い通りに操ることが出来る。こうして誰にも気付かれずに「政治主導」と思わせながら「官僚主導」を続けられる。

 検察は小沢氏を起訴することが出来なかったが、それと二人三脚のメディアを使って旧体制の権力は次の攻撃に入った。小泉政治が得意とした「世論誘導」である。「世論調査」を「世論誘導」の道具にした。だから毎週の如くに世論調査が行われる。「世論調査を信ずるバカ」でも書いたが、毎週の如く行う調査に金は掛けられない。安い費用で雇われた下請け会社が発注元の期待に添う結果を出すため、顔の見えない相手を電話で誘導尋問する事などいとも簡単である。その程度の調査をもっともらしく見せるため、新聞は一面トップで、テレビもトップ項目で扱う。嘘も百回言えば本当になるように、インチキも大々的に見せれば信ずるバカが出てくる。

 そのレベルの報道だから、国民には日本政治の「山の形」も「森の形」も見えなくなる。せいぜいが1本の木の、それも葉っぱ1枚の動きに右往左往する事になる。ウォルフレン氏の日本政治を見る目は私と共通するが、不思議なのは日本のジャーナリストが自国の歴史を踏まえて政治の現状を見ようとしない事だ。「利益誘導型政治」や「金権政治」がどこから出てきた言葉なのか、「政治とカネ」のスキャンダルがどのように作られてきたかを全く見ていない。

 昨日、公明党の神崎武法元代表と坂口力元厚生労働大臣が任期途中で議員辞職する事が明らかになった。「体調のため」とされているが、それを信ずる者はいないだろう。二人は自公連立を象徴する政治家である。その二人が政界から姿を消すことは、鳩山邦夫氏の離党などよりずっと政治的意味を持つと思う。農協も財界もどこを向いているかを考えると、参議院選挙に向けた布石は着々と打たれている。そして「風頼み」でしか選挙の出来ない連中だけが、得体の知れない「世論」という幻想にすがって政治をやろうとしているのである。

2010年3月14日

液状化する自民党

 昨年9月に「政権交代」が起きた時、自民党が再び政権を取り戻すためにはどうすれば良いかを考えた。初めて国民の手で「政権交代」が起きたわけだが、民主党政権が永続するようでは、それは歴史の逆行になる。出来れば先進諸国のように定期的に政権交代が繰り返されていく事が望ましい。

 欧米諸国の政権交代のインターバルは大体8年から10年である。思わぬ事が起きて早まる事があっても4年位はかかる。選挙に敗れた野党はそういう時間軸で復権を考える。政権与党は選挙で国民の信任を得た訳だから、それを選挙直後から批判すれば国民を敵に回す事になる。まずは相手の勝利にエールを送り、政権運営に協力する姿勢を見せるのが欧米では普通である。次の選挙では与党支持者を切り崩して自分の味方に付けなければならないのだから、将来味方になる国民まで敵に回す必要はない。

 そして10年後に最高権力者になりうる人材を発掘し育成する。政権を取った与党はこれから厳しい現実と立ち向わなければならない。国際政治の荒波をかぶり、国民の様々な要求に応えていくためのエネルギーは、持つとしても10年が限度である。丁度その頃に政治家として脂ののりきった野党の党首をぶつければ政権交代は確実になる。

 現在の国際環境下では、政策はどの政党が担当しても大差はない。例えば自民党の小泉政権が打ち出した「小さな政府」は、かつて小沢一郎氏が唱えた「普通の国」の焼き直しであり、「官から民へ」も中曽根政権以来の政治の流れを踏襲している。政策遂行の順序と手法とスピード、それにスタイルが違うだけである。従って自民党は民主党の政策を頭から否定するより、じっくり見極めてから自らの政策を作る方が賢明である。拙速に批判をすると自分が政権を取った時に逆に縛られて身動きが取れなくなる。

 先進諸国の政権交代を見てきた私が考えたのは以上の事である。そのため知り合いの自民党関係者に、自民党はまず「官僚主導からの脱却」で民主党に協力すると宣言し、一緒に政治主導の体制を作る。その上で政策の対立軸を作っていくのが野党としての王道ではないかと言った。「官僚主導からの脱却」はかねてから自民党も主張してきたが、党内の族議員の抵抗にあって実現できずに来た。それを党外の国民に訴えて人気を博したのが小泉純一郎氏である。ならばその点で民主党と同じであることをアピールした方が賢い。

 選挙の時の延長で「子供手当」や「農家戸別補償」や「高速道路無料化」を批判しても、選挙の結果はそれに国民が賛同したことを示している。そして議院内閣制の国会では党議拘束があるから与党の法案成立を野党が阻むことは出来ない。自民党がやるべきは、成立を阻止するのではなく修正案を出して国民にアピールするか、でなければじっくりお手並みを拝見し、次の選挙用にそれを上回る政策を出して国民にアピールする事である。

 さらに自民党には放置できない課題がある。小泉政治の総括である。如何なる政策を打ち出すにしても小泉路線との関係が必ず問題になる。それを乗り越えないと党内は一枚岩になれない。しかも金融危機以降「小さな政府」を主張する政権は世界中ない。英国保守党もサッチャー路線を放棄した。そのように自民党関係者に言ってみたが、反応は日本ならではのものであった。「野党になったのだから、野党らしさを出して徹底的に民主党を攻撃する」と言うのである。

 自民党は昔の社会党になると言うことだ。それでは永久に選挙で政権を取る事は出来ないと私は思った。社会党は選挙で政権を取らない事を本旨とした政党だから、「何でも反対」で徹底した自民党攻撃をやった。それにどれほどの意味があったかは歴史が証明している。しかしそれでも自民党はそれをやるのだという。そうすると自民党は欧米諸国のような道筋は取らずに、選挙でない方法で政権を奪還しようと考えている事になる。

 93年に誕生した細川政権から政権を奪還した時もそうだったが、スキャンダル攻撃で総理を辞任に追い込み、同時に与党の実力者である小沢一郎氏を徹底批判して与党を分裂させる。今回もその方法で行こうと言うわけだ。かつては連立政権から反小沢の社会党とさきがけを引き剥がして自民党と連立を組み、選挙を経ずに権力を奪還した。

 今回も鳩山総理と小沢幹事長のスキャンダルがあぶり出された。しかし前回と異なるのはスキャンダルが表に出た事である。細川総理は何がスキャンダルなのか分からないまま総理を辞任した。一応、東京佐川急便からの献金問題だと言われているが、そんな程度のスキャンダルで細川氏が総理の座を投げ出したとは思えない。それでは細川氏が政治家として余りにひ弱過ぎる事になる。もっと深刻な攻撃があったと私は想像している。

 実はスキャンダル攻撃は表に出さずに裏で脅しを掛けて政治家を操る方が効果的である。表に出たら脅しにならない。出された側は全力で戦う事になる。本当のスキャンダル攻撃は誰にも気付かれないまま行われ、しかも本人のスキャンダルとは限らない。家族や親族のスキャンダルの方が効果的な場合がある。細川総理の辞任の理由を最も良く知っているのは攻撃を仕掛けた自民党だが、その中心人物は亀井静香氏である。それが今や民主党の連立政権を支えている。だから自民党は同じ手法を使えない。

 スキャンダルが表に出れば潰すか潰されるかの戦争になる。表にスキャンダルが出て潰された例としては竹下政権がある。リクルート事件で野党は徹底した審議拒否を行い、予算は5月になっても衆議院を通らなかった。竹下総理はやむなく予算と引き替えに総理を辞任した。今回の自民党はこれと同じ事を考えたのだろう。しかしそのためには国民の怒りを盛り上げて国会を大混乱に陥れ、予算を通さなくするしかない。

 確かに自民党執行部は予算委員会を「政治とカネ」一色にし、攻撃の的を鳩山・小沢に絞り、民主党の分断を図りながら総理退陣を実現しようとした。メディアもそれに同調して連日「政治とカネ」を叩き続けた。しかし結果はどうであったか。たった3日間の審議拒否で腰砕けとなった。自民党に対する国民の反発が強かったという。このため予算成立は確実となった。もはや国会で政権を追いつめることは出来ない。自民党が狙ったスキャンダル攻撃は裏の脅しも出来ず、表の攻撃も不発に終わったのである。

 そこで子供手当の支給や高校の授業料無償化を参議院選挙後に遅らせようともがいてみせたが、これも国民の賛同を得られるとは思わない。残るは普天間問題で鳩山政権が立ち往生するのを期待するしかなくなった。しかし日米関係がこじれて政権が倒れるなどということは常識的にあり得ない。紆余曲折をして見せながら最後は両国の首脳同士が納得できる解決策を提示するのが外交である。これまで続けられた前座芝居はそろそろ打ち止めにして、来月に予定されている核サミット当たりから本格的な交渉が始まる。普天間問題も落ち着くところに落ち着く筈である。

 メディアだけが参議院選挙での民主党の劣勢を喧伝するが、このままでは自民党に勝ち目がないことを自民党自身が告白している。でなければ「執行部交代」や「新党結成」の話は出て来ない。もとより谷垣執行部は参議院選挙までの暫定体制だと私は言ってきた。谷垣体制によって衆議院選挙の傷を癒しながら、その後の本格体制の準備を進めるべきだと言ってきた。しかしそうはなっていないようである。準備どころか混沌として分裂含みである。自民党が自らに目を向けず、民主党批判にばかり力を入れていると、益々液状化していくのではないかとそれを怖れている。


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2010年3月 3日

利益誘導こそ民主主義の基本

 民主党の「箇所付け問題」で1日に国会審議が行われた。その中で「公共事業予算が国土交通省からではなく民主党県連から公表された」ことについて、野党から「利益誘導政治だ」と批判されたが、「利益誘導政治は民主主義を損ねる」かのような物言いであった。これに対して鳩山総理は「遺憾なこと」として国土交通大臣を処分したが、これも日本の民主主義の未熟さを物語っている。


 箇所付けがこの時期に与党から公表された事の是非を論ずる前に、民主主義政治とは何かを考えたい。民主主義でない政治は国家の政策形成に国民は関与出来ない。王様や将軍や独裁者が優秀な官僚に政策を立案させ、それがそのまま国の方針になる。優秀な官僚が「正しい政策」を作成するから、政策形成に余計な調整も時間も必要ない。その代わり政策で救われる国民と切り捨てられる国民が出て、切り捨てられる国民の利益は全く無視される。切り捨てられた国民が自分たちの求める政策を実現するためには力で政府を転覆するしかない。

 これに対して民主主義政治は、優秀な官僚が「正しい政策」を作成して国民に押しつける政治ではない。国民が求める政策を実現するために選挙で代表を国会に送り込む。代表は国政の場でそれぞれの要求を主張する。農村の利益、都市の利益、若者の利益、年寄りの利益、企業の利益、労働者の利益など多岐に渡る利益を代表する議員がいて、なかなか調整はつかない。民主主義の政策実現は時間がかかる。そのうち利害の近い者同士が集まって徒党を組む。そうして出来た政党に国民は政策を託すようになる。

 議院内閣制では、選挙で多数を占めた政党が権力を握る。言い換えれば国民が政党に権力を与える。権力を与えられた政党は自分たちが掲げる政策を思い通りに実現する。では野党を支持した国民の利益はどうなるか。国会で野党は修正を要求する。話し合いが付けば互いに譲歩して修正が実現する。しかし付かなければ多数決で与党の思い通りになる。野党は次の選挙まで政策を磨き国民の支持が得られるように切磋琢磨する。そうして国民の支持を得られればまた権力を握れる。民主主義が王様や将軍や独裁者の政治と違うのは国民が政策を選べ、力で政府を転覆しなくとも政権を変えられる事である。

 議員の仕事は自分を代表に押してくれた国民の利益を最大限に主張することである。支持者のために利益誘導する事こそ民主主義政治の基本である。自民党が権力を握っていた時代に予算配分を決められるのは自民党であり、民主党はどんなに頑張ってもいくばくかの修正を勝ち取るしかない。それを不当だと言えば国民主権の冒涜になる。民主党が政権を取れば今度は立場が逆転する。それが民主主義政治である。

 しかし民主党が自分たちの支持者だけの利益に固執し、その結果国民の多数が不満を持てば選挙で政権交代が起こる。民主党は幅広い国民の利益を考えなければ政権から転がり落ちる。だから野党時代のマニフェストと政権獲得後の政策に違いが出るのは当たり前である。政権交代を繰り返している国の政治を見れば、頑なにマニフェストに固執するような愚かな真似はしていない。

 「利益誘導政治」を否定するのは官僚の論理である。官僚は愚かな国民の要求を吸い上げて政策を作るより、最高学府を出た自分たちの頭脳で作る政策が「正しい」と思っている。更に言えば愚かな国民の要求を聞いていたら国は滅びると思っている。だから「利益誘導政治」を全否定する。それがこの国では明治の時代から続いてきた。毎度紹介しているが、官僚勢力から「利益誘導政治家」、「金権政治家」のレッテルを貼られたのは自由民権運動の流れを汲む星亨や原敬である。二人とも地域経済活性化のために公共事業を行い、鉄道建設に力を入れた。それが「利益誘導」と批判された。

 戦後になって「利益誘導」、「金権政治」のレッテルを貼られたのは田中角栄である。戦前の自由民権運動政治家と同じレッテルを貼られたのは、官僚を脅かす存在と見られたことになる。では官僚の作成する政策は優れているのか。政策形成のスピードは確かに速い。高度成長期の日本には有効だったと思う。現在の中国の驚異的な成長は、高度成長期の日本と同じで独裁体制の官僚が民主主義のコストを掛けずに経済計画を作成しているからである。

 日本の高度成長を支えたもう一つの理由は冷戦体制によるアメリカからの恩恵である。日本は安全保障のコストを掛けずに1ドル360円という有利な為替レートで貿易立国路線を確立した。しかしそれらの条件は今やない。明治以来の官僚は「欧米に追いつき追い越せ」で日本を経済大国に押し上げたが、これからの日本には真似をすべきモデルがない。いわば解答のない問題を解くに等しい。解答のある問題を解くのは優等生の頭脳だが、解答のない問題を解けるのは人間の欲望の裏表に通じた政治家の知恵しかない。「官僚主導からの脱却」が叫ばれ、政権交代が起きたのは、そうした時代の必然である。

 ところで「箇所付け」だが、これに自民党が鋭く反応したのは、それが権力を握る者の特権である事を知っているからである。昔はその情報欲しさに自民党議員は役所の言うことを何でも聞く「族議員」になった。「族議員」は役所の別働隊となり、官僚の既得権益を守るために働いた。その事に国民が気付くようになり、自民党は国民よりも官僚に「利益誘導」していると思われた。それが昨年の総選挙で鉄槌を食らった理由である。従って問題は「箇所付け」で民主党議員が役所の「族議員」に成り下がるかどうかである。それがなければ国民から権力を与えられた民主党が公共事業予算の配分に関与するのは至極当たり前の話である。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
↓ ↓ ↓
国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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