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政治とカネの本当の話(3)

 「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介は、戦前商工省のエリート官僚として満州で「産業開発5カ年計画」を主導し、その成果を日本に持ち帰っていわゆる「1940年体制」を構築した。官僚が企業を隅から隅まで統制して計画経済を行う仕組みである。それが戦後の経済成長モデルとなり日本を世界第二位の経済大国に押し上げた。官が司令塔となり、政治が後押しをして自動車、家電製品の輸出でカネを稼ぐ仕組みだが、現在の金融危機によってその構造は崩壊しかかっている。

 岸信介が「妖怪」と呼ばれた理由には色々あるが、一つはロッキード事件、グラマン事件、インドネシア賠償など「金権スキャンダル」の噂が絶えなかったにもかかわらず、一度も逮捕されなかった。岸は「政治資金は濾過器を通せばきれいになる」と語っていた。「濾過器」とは何か。官僚支配のこの国では官僚機構が関与した政治資金は「きれいになる」と言うのである。

 ロッキード事件は全日空が購入したトライスターと防衛庁が導入した対潜哨戒機P3Cの選定を巡って海外から日本の政界に55億円の賄賂が流れたが、摘発されたのは民間の部分だけで防衛庁が絡む疑惑には一切手がつけられなかった。政治家では田中角栄だけが5億円の収賄容疑で逮捕され、50億円の行き先は解明されなかった。

 岸信介とは対照的に「濾過器」を通さずに政治資金を集めた政治家が田中角栄である。田中は総理在任中の1974年に月刊誌「文芸春秋」が特集した「金脈研究」で失脚したと世間では思われているが、本人はロッキード事件で逮捕された後も金権批判を全く意に介していなかった。それどころか「俺は自分でカネを作った。だからひも付きでない。財界にも官僚にも借りはない」と胸を張っていた。しかし「濾過器」を通さなかった事で田中は「金権政治家」のレッテルを貼られた。

 官僚が国民を支配するノウハウには色々ある。前に説明した「誰も守ることの出来ない法律を作り、摘発は裁量によって行う」のも一つだが、他には「すべての施策を官僚が行い、民間にはやらせない」というのもある。そのため民間人が資金力を持ち、その金で社会活動を行うことを官僚は極度に嫌う。要するに「寄付」行為を認めない。

 欧米では税金も寄付もどちらも国民が社会に対して行う貢献である。社会にお世話になり、社会から利益を受けている以上、自分の収入に見合って社会を維持するコストを払う。税金と寄付との間に差はない。だから税金で貢献するか寄付で貢献するかを国民は選択できる。寄付をすればその分税金は控除される。金持ちは税金を払うより自分の名前を冠した劇場を寄付したり、公園を寄付したりする。つまり個人が自分の金で社会的施策を行う。

 ところがこれは著しく官僚支配を弱める。人々が国家より金持ちを頼るようになる。官僚国家の日本では「寄付」は「邪悪な考えの金持ちが私欲のために行う」と考えられ、好ましくないとされる。だから寄付をすると同じ金額の税金を取られる制度が作られ、日本に「寄付」の習慣がなくなった。その考えがそのまま政治の分野にも適用され、「政治献金」は「悪」だとする風潮が生まれた。

 かつて税制上認められていた政治献金は企業の「交際費」である。与党の1年生議員は当選すると企業を回って歩き、後援会への入会と政治献金を求めた。まだ企業が総会屋に利益供与を行うことが認められていた時代には、総会屋を担当する総務部が政治家も担当した。企業にとって政治家は総会屋と変わらず、何かの時の保険で、積極的にはお金を出したくない存在だから、政治家が企業から献金を受けるのは大変だった。

 そうした時に頼りになるのが官僚組織である。民間企業の許認可権を持つ役所が口を利けば、企業は直ちに献金してくれる。議員が大臣になりたがるのは、大臣になればそれ以降は役所がずっと面倒を見てくれるからだ。献金も集めやすくなる。選挙の票も集めてくれる。そして情報も教えてくれる。これが官僚組織が政治家をコントロールする手口である。こうして族議員が生まれてくる。

 政治家が自分で金を作ることや、民間が政治家を育てることは司法によって摘発の対象となった。そして「濾過器」を通らないと「汚れたカネ」として摘発の対象になる。これが政治を官僚組織に従属させ、国民を支配する官僚のノウハウなのである。

 ロッキード事件で丸紅の政治献金が賄賂と認定されると、日本の大企業は政治献金を嫌がるようになった。そこで政治献金の主体が大企業から中小企業やベンチャー企業に移るようになった。その代表がリクルート・グループである。そして三木内閣が政治資金の金額の「規制」に踏み込んだことから、政治献金の形が普通ではなくなった。

 本来、政治資金規正法の主旨は金額の「規制」ではなく、カネの「入り」と「出」を透明化することである。誰からいくら貰い、何に使ったかが分かれば、その政治家の働き振りが分かる。大して仕事をしない政治家は「入り」も「出」も少ない。政治活動を活発に行う政治家は金額が大きくなる。その使い道を見て有権者は政治家として有能かどうかを判断する。ところが三木内閣は「クリーン」を売り物に、世界の民主主義国がやらない金額の「規制」に踏み込んだ。これは政治の力を弱めたい官僚には都合が良かった。

 リクルート・グループは現金ではなく値上がりが確実の未公開株を政治家に提供し、売れば確実に金が手に入るようにした。この手法が違法として摘発されると次に絵画を政治献金に使う手法が現れた。絵画には高価な物もあり、現金を移動しなくとも所有権を移転するだけで献金をしたことになる。竹下登が関わったとされる「金屏風事件」でその一端が明るみに出た。

 金額を「規制」した結果、政治資金は次第に闇に潜るようになり、暴力団の世界と結びつくようになった。バブル期に日本の銀行が軒並みヤクザに絡め取られ、不良債権を累積させたように、政治の世界にもヤクザの資金が入るようになった。恐ろしい話である。それなのに何か不祥事が起きるたびに「もっと規制を強めろ」と言う声が上がるばかりで、「透明化が大事だ」と言う声は聞かれない。政治とカネの関係は国民の見えないところで地下経済と結びついている。


第11回銀座田中塾
日時:4月2日又は17日
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場所;東京都中央区銀座6-13-16
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会費;2500円(飲み物・軽食付)
申込み:銀座モリギャラリー
電話03-3357-0828
Email:morim-p@gol.com
都合の良い日をお申し込みください     

  

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コメント (7)

そうですね。規制を強化すれば地下にもぐるというのは、政治献金の話に留まらず、いろいろなところに見れる世の理ですね。風俗も規制を強化すれば地下にもぐる。建前と本音の例えに良く使われます。アメリカは性に関する表のコードはものすごい厳格だが、実際のコードはそんなことはないと言われる。何も知らない純粋培養で育った子供達が、いきなり現実のコードにぶつかると、大怪我をしてしまう。政治も表のコードと裏のコードがもはや必要だと議論された時代がありました。そうしないと現実に対応出来ないと。マスメディアが表のコードで建前ばかり書き続けるので、かつては裏のコードとして週刊誌の役割が機能していた時代があったのでしょうか?優秀な記者程、不満がたまり、匿名で週刊誌に記事を書いていたと聞いたことがあります。現代ではもはやインターネットがシャドウメディアの役割をある種になっているのでしょうか。ネット上であふれる情報は裏も表もなんでもかんでもひっくるめて登場しているようで、本当に必要な情報はどこで動いているのか正直わかりにくい時代です。

濾過器・・・ウーム
与謝野大臣は今回の事件を、企業献金の禁止という一般論とするべきではなく云々のことをおっしゃったようで、まさにその通りだと思います。
ただ、この事件の発端は西松建設の10億円に上る外為法違反だったはずです。
このお金は、今回報告書等に記載されている献金の原資となっているのでしょうか?社員のボーナスを裏金から支給していたのでしょうか?
そんなことはできないだろうとなると、10億円はどこに渡ったのでしょうか?
いろいろな情報が紙・誌面やネットにあふれていますが、それに踊っていると問題の本質から離れていくような気がします。
今話題の事件の解決が、外為法違反の件のみならず、大分の問題、優生の問題などの「濾過器」とならないよう願うばかりです。

日本の政治スタイルを変えないままで「個人献金のみを認める」という事にしてしまったら、「浄財」を資金源にする宗教系団体の影響力が高まる事は容易に予想できます。
現在の「個人献金移行論」の背後には、何らかの誘導があるのではないかと危惧しています。

小沢氏の企業・団体献金全面禁止論は、牽制球でしょう。案の定、自民から共産までみんな反対したでしょ。相撲界でモンゴル勢が強くて日本の相撲界がピンチだと騒ぎになったときに、デーモン小暮閣下が、「本当に相撲が好きで何とかしたいと思うなら、自ら優秀な力士の卵を見つけて推薦するなり、バックアップしてくれ。それをせずに文句ばかり言うのはおかしい」といったでしょ。これと同じだと思いますよ。個人献金論でもなんでも良いが、【じゃあ、あんたは地元の優秀な青年を見出し、ちゃんとバックアップするのか?】と。ついこの間まで、田舎ではバスに乗って温泉にゆくことが利益誘導の政治というなんとも寂しい現実があり、都市部では商工業事業者が商店街単位で地元の政治家との結びつきのようなものもありましたが、いずれも政治との結びつきを感じられるものが、是々非々は別にしてありましたよね。でも都市住民や組織社会で働くものたちの中には、政治との疎外感を感じて、いつのまにか無党派のような流れを形成してしまった。サラリーマン新党なんてのもありましたが・・・。もともと今日の新保守の勢力が形成された流れのひとつに、自民党が都市住民にたいする政策の失敗が大きな動因になりましたよね。献金論も本来は国民の政治に対する参加意識というものをベースに考えないと、結局は個人献金論もデモクラシーといっしょで、【外からやってきた文物】で終わってしまうと思います。

 怒涛の連載、ありがとうございました。筆者の論考が郷原信郎氏記事等と共に多数のαブロガーに参照・リンクされ、その頃から(産経新聞を除く)マスメディアも「検察リーク=正義」の垂れ流し報道が改まってきた感があります。大久保秘書の拘留期限24日が迫り、検察が「ガダルカナル化」しないことを祈る日々です。

 政治とカネの本当の話、「企業献金=悪」でない論。堪能しました。
 大統領選関連でのオバマの政治資金収支(OpenSecrets.orgやPublic Citizenに詳しい)について、デモクラシー・ナウのキャスター、エミー・グッドマンの報告(http://www.truthdig.com/report/item/20081022_change_big_donors_can_believe_in/ *ワシントンポスト紙による連邦選挙管理委員会データ分析に依拠)等を読むと、オバマへの個人献金の多さが喧伝されているけれど、少額の個人献金、200ドル未満の献金総額は全体の693億円(7億4500万ドル)の1/4に過ぎず、圧倒的部分はゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェイス、リーマン・ブラザーズ、 シティ・グループなど、軍需産業や多国籍企業、ウオール街から大口献金を受けていた事実が明らかにされています。政党への企業献金、いわゆるソフトマネーも多くが選挙に流れ、たとい個人献金を是としたところで献金額上位に名を連ねるのはそういった大企業経営陣であり、ソフトマネーを規制すべく制定した2002年マケイン・ファインゴールド法も有名無実化しています。とどのつまり政治には金が掛かるということでしょう。そもそも貧困層に献金する経済的ゆとりはないはずで、ノンポリ層は献金する気がない訳ですが、企業献金を原資として選挙キャンペーンを盛り上げ、実際に盛り上がってはじめて、彼らも自らの態度を表明する形で献金をすることになります。民主主義の大義たる(貧困層も巻き込んだ)多数の民意を選挙に反映させるためにも企業献金は必要であり、欠くべからざるものです。ハレの選挙ならまだしも、ケ(日常)の議員活動においては一般からのカンパは当てにできない。大企業や富裕層の献金で活動資金の大半を賄っている事実は変わりません。
 日本では「紐付きにならない個人献金だけで政治資金を賄うべきだ」との意見が少なくないようです。高野孟氏は寄付だけで集まりにくい実情を鑑み、移行期の措置として制限付きで取り敢えず企業献金を認めるご意見ですが、例えば「将来廃止する前提で、本来違憲の自衛隊を容認する」風な施策では自衛官の士気が上がらないのと同様に、企業献金を悪としてはならないと思います。どうやら私たちの社会では、看板に非営利とか公務・公益を掲げた組織は善、営利組織たる民間は悪と、いつのまにか刷り込まれたようです。宗教団体やNPOはすべからく善でしょうか、官僚や公務員は清廉潔白でしょうか。国会審議中継を株式会社がやってはいけませんか。個人商店なら商売の自由として容認されても上場すれば厳しい社会的責任を負わされ、社会貢献も要求されます。芸術文化支援は善で、政治献金は悪か。善悪は入口の看板にあらず、出口たる実績や収支を公開して判断を国民に委ねるべきでしょう。

 官支配を打破し政治主導にすると叫んできた小沢代表の思いは、普段の筆者の主張そのものだったこと、この事態を想定していたことが明らかになりました。官の「お目こぼし」統治、検察の「別件微罪容疑で関係者をいきなり逮捕、マスコミ操作、本丸へ強制捜査→社会的抹殺」プロセスに断固抗議し、不公正を世間に知らしめる展開へと進みつつあります。企業献金禁止検討を党内へ指示したのも、正々堂々収支を公開したにもかかわらず、政治団体側の不正を見抜かなかった不作為で政治家が処罰されるなら、いっそのこと一切の企業献金を禁止にすればよい。政権を担う気のある(万年野党に甘んじていない)議員であれば、誰も企業献金を止めるべきだとは言えない。政党支部への企業献金が支部代表の政治家へ渡っている実態を暴かないで許されるのか。小沢代表としては、自民と民主が政策で戦う選挙より、寧ろ、望む政治改革に向けて追い風になったかもしれません。

 「かんぽの宿、官による不動産ビジネス」「政治任用」「西松献金事件」等を通して、内閣官房副長官事務、人事院総裁、検事総長の存在がクローズアップされました。いずれも認証官である所に、140年に及んだ、無謬なる天皇の代理機関「官僚」支配の終焉を予感させます。

マスコミでは、いろいろな方向から、小沢氏を、辞任させようと、煽っています。天木直人氏は、議員辞職すれば、自民党の尾*氏たちも、道連れにできると、書いていましたが、そうは、ならないと、思います。代表を、戦略的に、辞めるなら、ともかく、議員辞職したら、何を、仕掛けてくるか、わからない。田中先生も、書かれているように、自民党では、金の集め役の、党人政治家と、きれいにしてもらった、金を使う、元官僚政治家に、役割分担されていたといいます。自分で、金を集め、総理にまでなったのは、田中角栄氏だと、田原総一郎氏が、著書に、書いています。今、自民党の方に、実質的に、企業献金が、多いのに、西松だけを、取り上げるのは、やはり、意図的なものですよね。他の業種、例えば、金融とか、不動産とかも、調べて欲しい。日本は、官僚、大資本家、外*つと、戦わないと、一般国民が、以前のような安心できる生活に、戻れないと思うと、困難さに、震えます。民主党が、具体的に、政策を、アピールすれば、するほど、どんな妨害が、されるか、分からないからです。田中先生だけは、いままでのように、まっとうな意見を、出し続けて下さい。

こちらは、「国会TV」以来の懐かしい所ですね。
さて難しい事は分かりませんが、「昭和の妖怪」と言われたお方のその後の消息ですが「富士霊園」で本田総一郎さんと安部晋太郎さんらと隣り同士で眠っておられるそうですよ。
本田の退職社員が墓参に行ってビックリしたそうです。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
↓ ↓ ↓
国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

→ブック・こもんず←



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