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総理の頭は「政局だらけ」 »

ロボット総理の党首討論

 11月28日の党首討論を見て、麻生総理の言っている事がさっぱり理解出来なかった。なぜ理解できないかを考えると、どうも総理の発言は誰かが作った想定問答を丸暗記して、それを機械的に繰り返したために、他人に理解させることが出来ない言葉の羅列になったからではないか。

 党首討論で小沢代表が突いてくると予想された第一は、「政局よりも政策」と言って解散を先延ばししたのに、政策を裏付ける第二次補正予算案をなぜ今国会に提出しないのかという点である。これに対して麻生総理は、年末までの資金繰りは第一次補正で何とかなる。第二次補正は来年3月の資金繰り用だ。だから今国会には提出しないという論理で応じた。

 本当にその通りかどうか疑問もあるが、仮にそうだとしても、それなら何故10月30日にあんなに大袈裟に経済対策を打ち出したのかが疑問になる。あの時スピードが大事だとは言ったが来年3月用とは言わなかった。年内に解散が出来ないほど政策実現に全力を挙げる口ぶりだった。どこかで事情が変わったのではないかと素朴な疑問が湧く。ところがその疑問を解消する説明はされない。

 代わりに麻生総理が言い出したのは、金融機能強化法成立の必要性である。これがないと第一次補正だけでは経済が悪化する。その後に第二次補正に加えて来年度予算も成立しないと景気はおかしくなると言った。麻生総理は金融機能強化法案と第二次補正と来年度予算は「三段ロケット」だと繰り返す。まるでロボットが言葉をインプットされたかのように何度もそれを繰り返した。

 これで小沢代表との話がかみ合わなくなる。就任以来の総理の考えを論理的に理解しようと思って聞いているこちらもそこで話が分からなくなった。しかし麻生総理が一番言いたい事がこの「三段ロケット」だと言うことだけは良く分かる。とにかく「金融機能強化法と第二次補正と来年度予算が成立しないと困る」と言いたいのだ。要するに総理はこれからの国会が気になって仕方がない。「三段ロケット」のうちどれが成立しなくとも政局は解散か総辞職になるからだ。

 だから何とか小沢代表から民主党の対応の感触を聞き出せと誰かに指南された。出来れば成立に協力する前向きの言質を引き出せと言われた。その事だけが総理の頭にあるから話の筋道が立たない討論になる。中でも想定問答を暗記しただけだと思わせたのは、解散もせずに総理交代が続いている事を突かれたら、イギリスのトニー・ブレアとゴードン・ブラウンの例を挙げろと誰かに言われたことだ。普段頭にない事を言うものだから「議院内閣制」を「議会制民主主義」と言い間違えてその事に気づかない。

 何故メディアが注目しないのか不思議なのだが、私が驚いたのは親米派であるはずの麻生総理がアメリカ政治のあり方を否定し、アメリカの金融危機対応を批判した事である。麻生総理は「危機に政治空白は許されない」と言い続けてきた。しかし危機の火元であるアメリカは、危機の最中に大統領選挙と上下両院議員選挙をやっていた。麻生総理はこれを痛烈に批判したのである。「金融災害と言われる中で政治空白を作るというような事は(やるべきでない)。アメリカは(選挙なんかやっているから)誰が最終決断者か分からないと言う厳しい事になっている。我々は第二位の経済大国としてそのような事をすべきではない」と発言した。

 金融危機の最中でも大統領選挙をやっていたのはアメリカ合衆国憲法の定めによるものである。この発言はまかり間違えば日本の総理がアメリカ民主主義を全否定したと受け取られかねない。かつて宮沢総理は「国会でアメリカ人を怠け者だと発言した」と報道されてアメリカ議会を怒らせた。「もう一度原爆を落としてやろう」と息巻く議員もいた。怒りを和らげるために周囲は苦労した。

 第一選挙を「政治空白」と言う方が民主主義を知らない。国家の行方を国民の意思で決めるのが民主主義である。国民が参加できる選挙こそ民主主義の基本中の基本なのだ。だから原理的には国家が危機にあるときこそ選挙をやる必要がある。しかしこの総理はそういうことを理解していない。それが世界に知れたら恥ずかしい。

 このような総理を生み出す国だから国民もその程度である。世論調査で選挙と景気対策を選択させると国民は圧倒的に景気対策と答えると言う。選挙になれば与党も野党も必死になって景気対策を作る。今より良い政策が出来る事は間違いない。そして国民は良いと思う景気対策を選ぶ事が出来る。国民が景気対策作りに参加出来るという事だ。選挙を選ばずに景気対策を選ぶ国民は現在の政府に全て丸投げする事になる。そのくせ麻生内閣を支持する国民よりも不支持が多いと言うのだから訳が分からない。こういう国民を愚民と言う。

 愚民を作り出すのはメディアである。勝敗判定をはっきりさせれば良いのだが、あっちも駄目だがこっちも駄目だ式の判定が多い。ひどいのは「政局ばかりで国民の事を考えていない」と国民の味方面をするメディアである。判定を逃げて保身を図っているくせに正義を売り物にする。眉間にしわ寄せキャスターの番組ではコメンテーターが「外国では政局の議論でなく、どうやってジョッブ(仕事)を作るか、まともな議論をしている」などと言っていた。何を見たのか知らないが、私が知っている英国議会の「クエスチョンタイム」は「政局」だらけである。

 大体30分しかない討論時間で「政策」の議論など出来るはずがない。労働党も保守党もやっている事は選挙を意識した相手攻撃である。サッチャーは労働党党首の事を「お前は古臭い共産主義者だ!」と金切り声で罵倒していた。それで議場が盛り上がる。それが本場の党首討論である。今回も「あんたは信用できねえ」、「それはチンピラの言いがかりだ」とやればイギリス並みだった。

 選挙で勝たなければどんなに良い政策も実現しない。選挙で勝つために与党も野党もしのぎを削る。民主主義とは「政策ではなく政局」である。それが政権交代を繰り返す先進諸国の民主主義で、政権交代のない国だけが「政局よりも政策」などと言って国民を洗脳する。

 「党首討論を毎週やったら」と書いた新聞もあったが、私は全く反対である。ロボットのように丸暗記した言葉を羅列する総理がいる限り、党首討論をする意味はない。しかも外交問題に発展する発言でもされたらそれこそ国家の一大事である。今回の党首討論が終った後で与党の幹部たちは「ホッ」と胸をなでおろしたと言うがそれは甘い。もうこれっきりにした方が間違いは起きないと私は思う。

 
お知らせ
第7回銀座田中塾(忘年会付)
テーマ;今年の総括と来年の見通し
日時;12月4日又は11日
    午後6時半~9時
場所;中央区銀座6-13-16
    銀座ウォールレジデンス401号室
    (いつもと場所が違います)
会費;3500円(忘年会費込み)
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申し込みは
電話:03-3357-0858
Email:morim-p@gol.com
楽しくやりたいと思いますので
どちらかの日を選びぜひご参加ください

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コメント (7)

本当に、麻生氏の答弁は意味不明でした。迷走ぶりがはっきりと表れています。
小沢代表の討論、お見事の一言です。歯切れ良く、
麻生総理・与党の無策を突く、素晴らしい討論でした。
延長国会で参院に提出する緊急経済・金融危機対策7法案も、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081130-00000002-mai-pol
明解で見事です。政権担当能力があると見えます。
このタイミングに、機能不全の与党に対してチェスで言う所の、「チェックメイト」と言える一手と思います。
この法案に対し、裏付けをしっかりと説明し、国会で本当にどちらが「やる気があるか」、明解で実行期限付きの経済対策を話し合い、それでも自民が経済政策に対して非協力的・何の明確な対案もなしとあれば、国民の生活への対策に無関心な麻生総理に対する不信任動議をかけ、強く国民の信を問うという流れに舵を切るべきです。
自民党が長く国民を蚊帳の外に置いた「政府ごっこ」をやり続けたせいで、日本では弱肉強食が広がり、社会不安が生まれ、国は物心両面にわたり、色々な面で体力を失ってしてしまいました。自民・民主、どちらがよいかは国民自身が選択します。政治家はおごらずに即刻国民の信を問うていただきたい。何によって議員生命を有しているかと言えば国民の信任であるからです。この国は憲法が規定する議会制民主主義国家なのです。

自民自黒党は愚だ愚だ言はずに解散今すぐ総選挙をすべき。

政治空白って何が?内閣がなくなるのか麻生が居なくなるのか?でーじんが居なくなるのか?

理解不能の発言ばかりいい加減にして欲しい

「ため息が出る」
党首討論を聞き終えて麻生氏は説得力のある説明ができず言い訳ばかり、聞くに堪えなかった。小沢氏に分があったが、与党幹部の面々のコメントからは麻生氏の読み違いや失言、さらにはとんでもない勘違い発言がなかったと安堵している様子がありありと見て取れた。しかしながら、それにしても、物足りない討論だったと評価せざるを得ない。
ほぼピタリと45分の時間内に終わったが、中身は5~10分もあれば語りつくせるような内容。そもそもなぜ時間制限をするのか?米国の大統領候補者のディベートのように、決着がつくまでやれば良いのではないか?と素朴な疑問がわく。質問者も議員はもとより、有識者・ジャーナリストも交えて質問席を設定し、各分野に広げて討論をすれば良いのではないか?・・それでないと短期はもとより長期に政党として何をしようとしているのか国民には見えない。もっとも、そうなると小沢氏は体力的に持たない、麻生氏は知識面・知性面でもたない、両党とも拒否でしょうな。
自民では既に来期予算がらみで各族議員が予算の分捕りあいを始めているとの報道があった。彼らは誰の何のための政治をしているのか?ため息が出る。

Mr. Nara さん

米国の大統領候補者のというよりディベートと投手討論は基本的に違うと思いますよ

党首討論は国会でやる事であり党首同士の考えをぶつけ合うところ小泉が違うようにして国民がそれを支持しておかしくなったのですが

これで如何に国民が政治民主主義が分かってないかを欲理解しました
分りやすい言葉だけを好んだ国民が今の状況を作ったのですから

話がそれましたがディベートは一人に質疑応答するものであり党首討論と比較するものではないと思いますがいかがでしょうか?

「首相の討論能力が低いから恥ずかしい」と言って、党首討論をせずに隠す。そういう発想に基づく限り、次もまた同じような能力のトップができあがる。そういう「隠蔽体質」にこそ、問題がある。現実にレベルが低い討論しか出来ないのが日本のトップなら、それを晒せば良い。それを恥じて、論戦をできる政治家が必ず育って来る。人間同様、民主政治もミスを犯しながら育つ。議論、討論は民主主義の基本だ。繰り返しだが、無能な総理だから党首討論をさせずに隠してしまえ、などという発想をこそ恥ずべきだ。

麻生首相は「案外行けるかも」と思っていましたが,ここに来てもう厳しいとしかいいようがありません。知性がなさすぎることが判明してしまいました。韓国のシステムではときどき理解不能な首相も誕生してくるが,中国の指導部では絶対あり得ない。
しかし,本音で社会が動くとでも思ったのでしょうか。個人的にはいいところを突いていると思っているのですが,ネット社会では許されても実社会は許さないということでしょう。支持率も今考えればそんなに悪くなかったのに,慢心でしたね。
「民主党は岡田までもう一回待たないといけないかな」と思っていましたが,首相の一人相撲で次の選挙での小沢一郎の勝ち目が出てきた。しかも,密室型と思われてきた小沢氏がこんな形で優位に立つとは思いもよらなかった。本人は過半数を取れないと踏んでいるようだが・・・。
わからないもんですね,政治は。自民党の逆転の切り札あるかな?年末解散せざるを得なくなったりして?

このところ、大阪の若手三世議員が、麻生さんと写っているポスターをどうのこうのとTVで言ってますが、親父の大臣秘書、小池さんの政策秘書を経て議員へ。しかし、この手の人が多い。それにしても、総裁選で小池氏を選び、そして、このようなポスターを作った。麻生さんの資質が判った上でこれを作ったのだから、こんな事を平気でTVに取らせる神経は?A級ライセンスを持ち、ポルシェ3台を含め殆ど外車で計11台を保有する人には、麻生さんと同じ様に思えてしまう。彼も一度、大政翼賛会に反対して落選したお爺様、そして長崎活水の精神を持っていた、おばあ様を振り返って欲しいものだ。
 それにしても、鳩山由紀夫さんの口の軽さはどうしたものだろう?小沢さんも飲み会であっても良く考えて発言して欲しいですね。それとも漏れる事を意図して発言したのなら…。
 若い政治家には特に、例えば小泉子供が受かったとして、そこで、自分ひとりで全国を回って欲しい。そして、親父の遣ったことの良い事悪い事を判断してこれからに繋げて欲しい。親父さんの何かを切ってまで進もうとするパワーは評価できる面もあるが少し足りない人がやると世の中にとって悲惨であるから…。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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日本初の政治専門チャンネル!
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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2005年3月、講談社+α文庫


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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