Calendar

2008年2月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29  

« アメリカという国(1)
メイン
アメリカという国(3) »

アメリカという国(2)

 戦後の冷戦体制が崩壊した理由には色々ある。衛星放送の電波が国境を越え、厳しい情報統制下にあった東側国民に西側世界を知らしめたことが民主化運動に拍車をかけたことや、ソ連共産党の内部にマフィアが入り込み、一党独裁の社会主義体制に腐敗が蔓延していたことなども要因として挙げられるが、「最終的にゴルバチョフ書記長がソ連邦の幕引きを決断したのは、アメリカが核兵器に代わる精密誘導兵器を完成させ軍事力の優位を万全にしたからだ」とベイカー元国務長官は語っている。

 ベイカー氏によると湾岸戦争に突入する直前、アメリカは密かにソ連のシュワルナゼ外相を呼んで湾岸戦争に使用する予定の精密誘導兵器を見せたと言う。極秘の部分を見せたのは一種の賭けに近い外交手法だったが、この時シュワルナゼは即座にアメリカとの軍事競争は無意味であることを悟り、帰国してゴルバチョフにソ連邦解体を進言したと言う。

 湾岸戦争でソ連は静観の構えをとり、アメリカは精密誘導兵器の威力をテレビの実況中継で全世界に見せつけた。戦争の実況中継を行ったのは老舗の三大ネットワークではなく新興のCNNで、これによってCNNは世界にアメリカ情報を発信する巨大メディアとなった。CNNが流した映像には意図的にサダム・フセインを悪者に仕立て上げる世論操作情報が含まれていて後に問題となるが、これ以降の世界はアメリカの情報操作の下に置かれる事になった。

 実は湾岸戦争での精密誘導兵器の命中精度は7割程度でしかなかった。しかしその8年後にクリントン大統領が「人権のため」と称して介入したコソボ紛争では命中精度が9割にまで上がったと言われる。ところが何故かこのときは中国大使館誤爆事件をはじめ誤爆のニュースが多く世界に発信された。その意図がどこにあったのかは分からない。ただアメリカには命中精度が上がったにも関わらず誤爆の情報を流す必要があったということである。このようにアメリカは実態とは異なる情報を流すことがある。

 冷戦の崩壊によってアメリカは世界唯一の超大国となった。議会では連日冷戦後の世界を構築するための議論が精力的に続けられた。アメリカ一国で世界を管理するために何が必要か。議会での議論もさることながら私は首都ワシントンD.C.にシンクタンクが続々と誕生したことに注目した。当時私はアメリカ議会の近くに事務所を構え現地従業員を置いて東京とワシントンを往復していた。ダレス国際空港と市内までの距離は車で40分程度だが、その途中には雑木林が延々と続いている。それが行くたびに風景が変わっていくのである。雑木林に次々建物が建っていく。そしてそれらは皆シンクタンクなのであった。

 もとよりワシントンは情報の街である。政治家と官僚だけでなくロビイスト、ジャーナリスト、弁護士、研究者、活動家など情報を扱う人々が交錯する街である。毎日いたるところでセミナー、講演会、シンポジウムなどが催され、そこでの情報が世界各地の情報機関、メディア、企業などに売られていく。そのワシントンが冷戦の崩壊と同時にそれまで以上に情報機能を強化しようとしていた。世界を支配するために必要なものは何よりも情報力であることをこの国は熟知している。ソフトパワーを最も重視しているのがアメリカなのである。

 議会ではソ連が持つ膨大な数の核兵器と核技術者をいかに拡散させないかという現実的課題から冷戦後の世界を構築していく議論が始まった。その延長でこれまで目が届かなかった中東や北朝鮮の核開発にも注意が向けられた。一方でソ連を主要ターゲットとしてきた軍の組織体制の変更、諜報機関の体制一新などの議論は結論が出るまでにほぼ2年をかけた。CIAは廃止を前提とする議論から始まり、最終的にはバラバラだった複数の諜報機関を統括する中心的な上部機関へと格上げされる事になる。

 なぜならソ連邦の消滅はアメリカにとって平和の到来を意味するものではなく、逆に「脅威の拡散」を意味すると認識されたからである。東西対立がなくなることで世界の枠組みが緩み、これまで封印されてきた民族主義が各地に台頭、イデオロギーに代わる宗教、文化などの複雑な対立関係が現れると予想された。それは国家間の戦争とは異なるテロとの戦いを余儀なくさせ、「非対称」の戦争の時代が訪れると結論付けられた。従って世界的な米軍再編と軍組織の変更、それに伴う諜報機関の強化は当然なのであった。

 精密誘導兵器に見られるようにコンピューターを利用した軍事技術革命は軍の組織を大きく変えた。従来のピラミッド型の指揮命令系統は不必要になり、指令を発する本国の中枢部分と実戦を行う現地の前線部隊とが直接結びつくネットワーク型の組織体制に変更された。こうした軍の組織変更は直ちに民間企業にも波及した。パソコンを使うことで経営中枢が直接現場労働者から意見を吸い上げる一方、直接に指示を下す事も可能となり、中間管理職が不要となった。高給を食んできた部長クラスのリストラは「ダウンサイジング・オブ・アメリカ」と呼ばれ、企業コストを圧縮して国際競争力を高める一方、ホワイトカラーの失業という深刻な社会問題を生みだした。

 アメリカ議会でこうした議論が連日行われている頃、日本の国会ではこれに見合う議論が全くなかった。当時の宮沢政権は冷戦の終結を「平和の配当が受けられる」という認識で受け止め、政権の関心はもっぱらバブル崩壊後の不況対策だった。また国民の関心も佐川急便事件などの政治腐敗にあって、選挙制度をどうするかという政治改革論議に目を奪われていた。

 クリントン政権が北朝鮮の核施設を空爆しようとした事がある。1994年6月で日本にも連絡があり羽田政権は朝鮮半島での戦争をいったんは覚悟した。しかし韓国の要請もあり空爆は直前になって回避され、カーター元大統領と金日成国家主席が会談することになった。因みにこのとき北朝鮮空爆を議会で強く主張したのが今回共和党の大統領候補に確実視されているマケイン上院議員である。
 最終的にはアメリカなどが軽水炉建設に協力することの見返りに北朝鮮は核開発を凍結するという米朝枠組み合意が成立した。しかしその後北朝鮮は核兵器保有宣言を行って枠組み合意は破られた。
 
 クリントン政権の弱腰を批判して北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだブッシュ大統領だが、本気で北朝鮮の金正日政権を打倒する気があるかと言えば全くそうではない。イラクで手一杯だなどと言い訳しながら実はやる気がない。金正日政権を倒してもアメリカにメリットはなく、むしろ存続させて日本に脅威を与えさせる方が国益になる。北朝鮮のミサイルがアメリカに届くのなら問題だが、今のところその危険はない。北朝鮮を脅威に感じているのは何と言っても日本で、日本は北朝鮮のミサイルが上空を飛んだことに慌ててアメリカのMD(ミサイル防衛)計画を受け入れた。

 北朝鮮の存在は日本に米軍再編計画を受け入れさせるためにも都合が良い。MD兵器購入と併せて再編のための莫大な費用を日本に負わせることが出来る。北朝鮮という国はアメリカにとってこれまで以上に日本をアメリカの軍事戦略に組み込み、かつ日本から抵抗なく金を引き剥がすための一石二鳥の存在である。そしていずれ北朝鮮政権を解体する必要が出てきたときにはそのための費用をまた日本から引き出す事が出来る。過去の植民地支配の清算をしなければならないという理由で。

 衝撃的な「9・11」によってアメリカは「テロとの戦い」に立ち上がり、イラク戦争が開始された。イラクとアルカイダに関係があるかのように思わせ、大量破壊兵器が存在すると主張して始めた戦争だが、本当の理由はそんなところにはない。私が最も納得できる理由は、イラクのサダム・フセインがユーロで石油取引の決済をしようとしていたことだ。これはアメリカが許せることではない。アメリカが世界を支配できるのはドルが世界の基軸通貨であること、軍事力が世界最強であること、情報を操る事が出来ること、そしてエネルギー資源を押さえていることである。

 エネルギーをはじめ資源を支配しようとするアメリカの欲望にはすさまじいものがある。地球だけでなく宇宙の資源を押さえる方法についてもすでに着々と計画が立てられている。ところがサダム・フセインはフランスのシラク大統領とユーロで石油取引を行うことを決めた。それでなくともドルの基軸通貨としての地位を脅かしつつあるのはユーロである。このままユーロ決済が増えていけばドルがその地位を失う日が近づく。現在のアメリカにとってユーロは「仮想敵」なのである。そのユーロが中東諸国の石油決済に使われることになればアメリカの地位は大きく揺らぐ。イラクをヨーロッパから引き離しアメリカの支配下に置かなければならない。それがイラク戦争に踏み切った本当の理由ではないかと私は思っている。だからフランスとドイツはイラク戦争の開始に強く反対し、その後もアメリカを批判し続けた。

 しかしアメリカは「テロとの戦い」を表看板にすればどの国も反対できないことを利用して、イラク戦争のためと称しながらタジキスタンやウズベキスタンなど中央アジアの国々に次々米軍基地を作っていった。これらの基地は地理的に見るとロシアと中国とをにらむ絶好の位置にあり、イラク戦争のためというより中国、ロシアに向いた軍事基地と見る事が出来る。しかもこれらの地域は地下資源の宝庫とも見られている。

 「9・11」はやらせだという説もあるが、「テロとの戦い」を名目にしてアメリカは様々な権益を確保している。そしてアメリカの凄いところは、イラク戦争であれだけアメリカと反目したフランスとドイツの指導者が今ではサルコジ、メルケルという大いなる親米派に代わったということだ。選挙による国民の選択までアメリカは操作できるということなのだろうか。(続く)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/3610

コメント (1)

自分も他のとこは兎も角ペンタゴン突入を見ただけで、前からやらせだと思いましたが、それにしても、その後遣る事が裏目に出ているのか、それも想定内なのか?そこのとこは判らない。なんだかんだと言って、軍事以外の最大の産業である、フィナンシャルシステムを壊すだけでなく、乗っ取られるまでは行かぬとも、これだけ高利で出資して貰っているのは、計算外なのか?ロバートルービンの「強いドルは国益」を壊してまで何をしたいのか?週末、シティバンクの540億円程度のヘッジファンドが資金凍結になった。たったこれぐらいの小型ファンドさえ、計画破綻さえできなくなった米金融界とはこれから何を手段に食っておこうと考えているのか?本当に判らない事だらけだ?駄目なように駄目なようにしているのは何か理由があるのだろうか?4年前の大統領戦の時、ひっくり返る可能性高いと見てたけれど、結局は4年継続。その時日本内では、ひっくり帰った時の米国側の窓口が無いと散々言われていた。最近も、歳川さん始め何人かの話を聞いていると、その時から全く進歩してないような…。ジュニアパートナーから変われるチャンスなのに、米軍は一部残っていて構わないけれど海兵隊の様なものは(事件発生とは関係なく)全く必要ないし、事実上日本を守っているのは、自衛隊なのだから、そこは、自民党と外務省が強かにやれば何か出来たはず…だけど?。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
↓ ↓ ↓
国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.