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経済を動かすのは政治である

 株価の下落がすさまじい。1月22日には日経平均株価が2年4ヶ月ぶりに1万3千円を割り込んだ。これに対して福田総理は「アメリカのサブプライム問題の影響で、日本経済の実態からくるものではない」と「冷静な対応」を呼びかけている。しかし専門家からは「サブプライム問題の被害が最も少ない日本で株価がこれほど下がるのは、日本経済の先行きを悲観した日本売りだ」という声が上がっている。現状に対して政治は冷静であって良いのだろうか。

 今年の通常国会の冒頭に行われた福田総理の施政方針演説はインパクトに欠けるものだったが、大田経済財政担当大臣の経済演説は印象に残った。日本経済が一流でないことを初めて国会で認めたからだ。ただ残念なのは何故一流でなくなったのか、どこに責任があるのか、最も知りたいことには何も触れなかった。

 日本経済が一流でないことを政府は認めたくなかったのだろうが、世界はとっくにそう見ている。アメリカでは10年以上も前から「日本経済は一流でない」と言われていた。
 1985年に世界一の債権国となった日本経済を、いったんアメリカは旧ソ連に代わる最大の脅威と見ていた。クリントン政権の初期の目標はアメリカが日本経済に「追いつき追い越す」ことだった。しかしバブル崩壊後は一転して見方が変わる。何が日本経済を駄目にしたとアメリカは見ているのか。

 10年ほど前、共和党のギングリッチ下院議長が日本の電電公社民営化を例に挙げて「日本は情報化社会で一流になれない」と演説した事がある。情報化社会では電話料金があらゆる産業のコストに反映される。だから経済競争に勝ち抜くためには電話料金を下げることが鍵になる。アメリカはレーガン政権が独占企業AT&Tを7社に分割し、クリントン政権がその7社を自由競争にさらした。結果として電話料金は10分の1ほどに下がりインターネット社会が花開いた。ところが日本では中曽根政権が電電公社を民営化したものの既得権益を守ろうとする自民党族議員に妥協して分割が出来ず、結果として電話料金は下がらなかった。そこに日米の政治の差がある。

 「既得権益を守る日本にビル・ゲイツは生まれない。そんな国にアメリカが負けるはずがない」とギングリッチは言った。アメリカでは政治は新規参入の側に立ち既得権益の側に立たない。それが競争を加速し、経済を活性化し、消費者の利益を生む。資本主義は放って置くと強いものがますます強くなる。企業は自らの利益を考えれば競争をしたくない。しかしそれでは消費者が損をして経済は成長しない。だから政治は大企業IBMよりもベンチャー企業マイクロソフトの側に立ち、マイクロソフトが巨大化すれば今度はそれに分割命令を出す。ところが日本の政治は常に既得権益の側に立っている。それでは経済が活性化するはずがない。日本経済を二流にしたのは政治のせいだとギングリッチは言っているのである。

 景気の「気」は気持ちの「気」である。国民の気持ちを変えて景気を上向かせるのは政治の力だという事を実感させてくれたのもアメリカだった。
 パパ・ブッシュの時代、アメリカは不況のどん底だった。若者は職にあぶれ、企業や商店が次々潰れていく。私は月に1,2度ワシントンに通っていたのだが、行く度に夜の景色が変わっていた。ネオンの明かりが減っていくのである。デパートが潰れた時など街の一角に突如として巨大な暗闇が現れる。日本ではついぞ見たことのない光景だった。

 その頃大統領選挙が行われた。湾岸戦争に勝利して支持率が80%を越える現職大統領に民主党の大物はみな尻込みをして立候補しなかった。若い田舎の州知事がひたすら「経済」と「変革」だけを訴えて選挙を戦った。11月の投票では予想を覆して初の戦後生まれの大統領が誕生することになった。すると不思議なことにアメリカの空気が一挙に明るくなったのである。気持ちの「気」が明るくなると、デパートや商店に買い物客が増えて、その冬のクリスマスは街に買い物客が溢れた。そうなるとあれよあれよと言う間に経済が好転し、アメリカは未曾有の好景気に突入して行った。
 一つの選挙を機に国の空気ががらりと変わり、景気もまた変わることをこれほどまで実感出来た事はない。つくづく経済は政治が作り出すものだと思った。

 今国会はガソリン税の暫定税率で与野党が対立している。民主党はこの問題で3月政治決戦を挑む構えで、福田政権を解散に追い込もうとしている。しかしそれだけで解散に追い込む事はなかなか難しいのではないかと私は書いた。解散に追い込むためには何かが足りないという気がするからだ。ところがこの株価の動きと政治の対応を見ているうちに、あるいはこの経済の動きが解散に追い込むための何かになるかもしれないと言う気がしてきた。

 国民に冷静な対応を訴えて何もしないことも一つの判断ではある。あわてて何かをする事がかえって国民の不安をあおる可能性があるからだ。しかし一方で何もしない事が国民の失望を買い不安を増大させる事もある。景気が悪いのに物価は上がるというスタグフレーションの到来が囁かれているわけだから、この状況はガソリン価格の問題とも絡まりあう。どのような手を打つかによって政治は思いも寄らぬ方向に動き出すかもしれない。この対応はなかなかの見ものである

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コメント (1)

3流の政治や2流の官僚が、一流半だった経済の足を引っ張るから困ってしまう。
昨年のダボスのメインは、シティのチャールズ・プリンスやブラックストーンのスティーブン・シュワルツマンなど、金融ファンド関係者。プリンスは辞任し、シュルツマンは、「わたしは最近、楽観的で自己満悦的な気分にはどうしてもなれない」と語っている。今年は、SWF関係者かと思っていたが、微妙だ。オイルも100ドルで高値を付けた様で、一、二年後を目指して、50ドルあたりへ…。この先金融恐慌になるかは判らないが、相当、ネガティブな感じだ。アメリカ政策担当筋からは先を読んでの発言が出てきているが、不動産市況は持ち直す訳はない。本来は、日本発で無いので、日本が一番下がると言う事は避けられるはずだけどその可能性は無い。この春に掛けて何が起こるかは判らない。アメリカの力が弱まるのは結構な事で、本来なら次の時代へのシナリオを考えて行動するチャンスなのだが…。(巻き込まれ過ぎている)

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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