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不思議な国会だった

 168臨時国会は不思議な国会だった。「まさか」と思われる異常な出来事が相次いだのに、その真相は何も明かされず、今では誰もそれを問題にしていない。
 「まさか」が起こる出発点は参議院選挙の結果にある。与党が惨敗して過半数を割り込み、民主党が第一党に躍り出た。議長をはじめ議院運営委員長など国会運営の主要ポストが自民党から民主党に移ることになった。

 民主党はほぼ参議院を制したのだが、しかし過半数の議席を得た訳ではなく、力の程度は限定的である。肝心なところでは国民新党、共産党、社民党の協力を得なければならない。選挙後、小沢代表は無所属議員らの民主党会派入りを熱心に進めたが、過半数にはまだ2議席が足りない。そうした状態で政治の世界は168臨時国会を、いわゆる「ねじれ国会」を迎えた。

 選挙惨敗の責任者である安倍前総理が続投を表明したことも首を傾げたくなることではあったが、それよりも不退転の決意で続投したはずの総理が選挙後1ヶ月間の政治空白を作った事が不思議の第一だった。
 表向きの理由は内閣改造のための「身体検査」にあるとされた。そんな話をまともに信ずる者はいないと思っていたら、それがまかり通って誰も政治空白の理由を追及しなかった。この政治空白によってテロ特措法の延長は不可能となり、いったんインド洋から海上自衛隊が引き上げて来ることが確実となった。ところが安倍前総理は海上給油の継続に政治生命を賭けようとして、テロ特措法の延長ではなく新法で対応しようとしている与党から孤立していた。

 その安倍総理は所信表明演説で、翌年の洞爺湖サミットへの意欲を表明しながら、代表質問直前という信じられないタイミングで辞任を表明した。その時点で安倍前総理は「新法だと海上給油は中断せざるをえなくなり、その時点で辞任すると国民に混乱を与える」とか「新たな総理の下で新法を推し進める方が良い」などと辞任の理由を説明したが、周りは「病気のため」ということにして本人を入院させ、最近では本人までが雑誌にそのような手記を発表している。しかし「本人の言う事がもっとも信じられない」のが古今東西政治の常識である。この信じられない総理辞任の背景に何があったのか。真相は明かされないままとなっている。

 新たに登場した福田総理は安倍前総理と逆の事をやることが政権延命の要だと思っているようだ。民主党との対決色を出さず、霞が関との対決色も封じて、ひたすら低姿勢に徹している。「60年安保」で国民の怒りを買った岸総理に代わる池田総理が「寛容と忍耐」を掲げてひたすら低姿勢に徹したことと似ているが、しかし池田総理は低姿勢だけではなかった。「所得倍増論」を打ち出して国民に夢を与えた。福田内閣にはその部分がない。何をやる内閣なのかが分からない。

 その福田総理と民主党の小沢代表との間で「大連立」が話し合われた。選挙によって「ねじれ」を解消出来ない自民党にとって連立は唯一の解決手段である。これまでも過半数を割り込んだときには常に連立でしのいできた。「自さ社」、「自自」、「自自公」、「自公」と、この15年間は連立の歴史でもある。しかし昨年の選挙結果では参議院で過半数までに17議席の開きがあり、国民新党や社民党との連立だけでは問題が解決できない。自民党にとっての選択肢は参議院で第一党となった民主党との大連立以外なくなった。だから大連立が話し合われたのは少しも不思議ではない。

 しかし大連立が民主党の反対で頓挫してから、小沢代表の辞任表明、辞任撤回と続く中で、党首会談の経緯や内容を巡って様々な情報が錯綜し、さながら情報戦の様相を呈した。大連立を持ちかけたのはどちらか、連立協議の条件は何だったのか、そもそも本気でやろうとしたことなのか、結果としての損得勘定はどうなっているか、分からない事だらけの中で連立話に終止符が打たれ、「ねじれ国会」は対決モードになった。しかし対決色が強まったと言われながら、実態はそれとは逆で海上給油の再開に道を開く新テロ法案で総理の問責決議案は提出されず、国会終盤になって初めて行われた党首討論では福田総理と小沢代表がお互いをいたわりあう姿勢を見せた。誠に不思議な国会であった。

 選挙によって「ねじれ」を解消できるのは民主党だから、民主党が「大連立」を否定して選挙による政権交代を目指すのは分からなくはない。しかし選挙による政権交代は口で言うほど簡単でない。衆議院選挙の結果、単独で過半数を獲得できれば良いが、それはなかなか難しいと小沢代表も認めている。衆議院第一党を目指すのが現実の目標のようだ。すると政権交代は他の野党との連立なしには実現出来ない。共産党との連立はないだろうから国民新党か社民党との連立である。その場合政権交代が実現しても閣内統一が維持できるかどうか不安定で短命な政権になる可能性がある。

 さもなければ自民党の一部を切り崩して政権に引き込む事が考えられる。政界再編に道を開く話だが、それを可能にするためには選挙のテーマそのものが自民党の分裂を誘うようなものでなければならない。果たしてそのような選挙が出来るだろうか。しかもそのときには民主党自体も分裂の可能性がありなかなか簡単ではない気がする

 そしてそれ以前に解散に追い込む事が出来るのかという問題がある。相手は何としても早期解散を避けたい自民党である。解散に追い込むためには国民に圧倒的に支持されるテーマを選び、そのテーマで全面対立に持ち込み、参議院で総理の問責決議案を可決して国会を機能麻痺の状態に持ち込まなければならない。そのとき仮に内閣支持率が一桁に下がったとしても総理がじっと耐えて解散しなければどうなるだろうか。政治が機能麻痺に陥ってそれが長期に及ぶときそれでも国民は民主党を支持するだろうか。民主党の中に亀裂が走らないだろうか。そうしたことを総合的に考えた上でないと解散に追い込むことも難しい。

 18日に召集される通常国会は「ガソリン国会」だと言う。ガソリンの暫定税率廃止を民主党が主張して、その事が政府与党との対立軸になると言われている。民主党の主張どおりになれば1ℓ当たり25円ガソリンが安くなり、それはプラスの経済効果を生むという。一方で2兆6千億円の道路財源がなくなり、地方自治体は財源不足に苦しむことになるとも言われている。これが果たして民主党の言う3月政治決戦のテーマになるのだろうか。

 1月18日に通常国会が召集されるのは極めて珍しい。通常なら月末に召集されるものを早めに召集した。それは「ねじれ」に対応するためで、予算関連法案を月末までに衆議院を通過させ、仮に参議院で否決されても60日条項を使って必ず3月末までには再可決させるためだと言われていた。ところがここにきて奇妙な事が起きている。自民党の伊吹幹事長は予算関連法案を1月末までに衆議院を通過させるのが難しいと言いはじめた。予算関連法案の衆議院通過は2月中旬になると言う。そうなると何のための18日召集なのか、訳が分からなくなってきた。ガソリン税の暫定税率が1時的に期限切れになる可能性もある。何やらインド洋の海上給油をわざわざ中断してまた復活したのと似たような話である。

 2月中旬までの間に民主党とこの問題で話し合いを行い、妥協点を探るためだとも言われているが、そうなると何度目かの「まさか」を考えてしまう。「まさか民主党の主張を丸呑みするのではないだろうか」と。もしそうなれば民主党は解散に追い込むカードを失い、3月政治決戦はあっという間に消滅する。その一方で自民党がこれから作成する自衛隊の海外派遣の恒久法を巡って小沢代表の年来の主張に擦り寄れば、あの消えた大連立話が形を変えて復活し、民主党にとって閣僚ポストの配分などの「おいしい」話はなくなるが、自民党は任期満了近くまで衆議院選挙を封じ込める事が出来る。

 私の妄想は妄想であるからその通りになるかどうかは分からないが、これまでの政治が「足し算、引き算、掛け算、割り算」で解決できたとすれば、未体験ゾーンにある今の政治は「微分・積分」の高等数学でしか解決できないという言葉をかみ締める必要がある。おそらくそれほどに不思議な国会が続いていく。

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コメント (1)

小泉・安倍時代の異様な国会討論からなかなか脱しできない感じ。政策とはイエスかノーという単純な事で決まる訳無いから、政治家の役割があるのに…。
 野党は情報と言う点で歯が立たない。与党も、もう少し役人情報に対してそれを活かし切ろうとしないから何を遣っているのか判らなくなる。
 本来ならマスコミに期待したいのだが、それも99%不可能。
 状況が良い時なら外圧を利用して何かを変えさせる遣り方もあるのだが、外圧の方が強かに成り過ぎて危ない。
 今となっては何なのですが、加藤の乱の時にもう少し何かが起こっていれば、自民党の寿命も終わっていたのに…谷垣G・古賀派の統合があったけれど、谷垣G離脱なんて話も無くなった。これからは更に選挙の為に虚しい事が起こるのだろうけれど、こうなったら早くやれる事を願うのみです。小沢さんも、マスコミと子供の様な喧嘩は程々にして、強かにやった方が良いのでは?政権をとれば更に、役人やアメリカなどと今以上に強かな闘いが待っているのだからね。(産みの苦しみは続く)

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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