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2008年は選挙の年か »

緊張感なき越年国会

 168臨時国会は史上2度目、14年ぶりの越年国会となったが、小選挙区制導入を巡って細川政権と野党自民党とが鋭く対立した前回と比べ、今回は異例の越年国会と言われながら全く緊張感が感じられない。前回は政権の命運を賭けた政治改革法案がいったんは参議院本会議で否決され、会期末ぎりぎりの党首会談でようやく合意に漕ぎ着けるという緊迫した国会だった。そのため予算案の編成も成立も大幅にずれ込むことになったが、今回はそういうこともないようだ。

 福田政権が臨時国会を再延長して越年とした理由は新テロ法案を成立させるためだが、この法案は衆議院通過後60日が経てば自動的に参議院で否決したとみなされ、衆議院で再議決ができる。そのため衆議院で三分の二以上の議席を持つ与党にとっては国会会期内の再議決と法案成立は自明のことで、海上自衛隊の給油活動は3ヶ月近くの中断を経てまもなく再開される事が既に固まっている。

 一方参議院で野党が新テロ法案を否決した場合には、野党が衆議院の再議決に抗して総理の問責決議案を可決し、解散総選挙に追い込む事もありえたが、民主党は海上給油を争点とする早期解散よりも年金やガソリン税の引き下げが焦点となる3月以降の政治決戦を有利と判断しているために、越年国会が与野党決戦の舞台とはならなくなった。こうしたことが越年国会の緊張感を著しく失わせる要因となっている。
 
 そのため国会の日程も年末は27日まで、年明けは8日から実質審議再開という具合で、残された審議日数はわずか1週間程度に過ぎない。そんな緊張感のない越年国会に突如としてC型肝炎薬害被害者を救済する法案が提出されることになった。

 薬害肝炎訴訟を巡る和解協議は、福田総理が原告被害者から「司法の判断」を越えた「被害者全員の一律救済」を求められていたが、司法の枠内での回答しか行わなかった事からいったんは決裂していた。しかしその後総理が議員立法による被害者救済を指示して問題を立法府に委ね、法案の作成過程で与党と被害者との合意が成立したため一転して薬害肝炎訴訟は全面解決となった。長年訴訟を続けてこられた被害者には喜ばしい限りだと思う。

 救済法案は1月7日に国会に提出され9日には成立する見通しである。被害者の速やかな救済を考えれば良しとしなければならないが、ただこれを政治の問題として考えた時にただただ喜ぶだけで良いのかという気がする。

 「C型肝炎訴訟が全面解決した」と言っても薬害問題が全面解決されたわけではない。大事な事は今回の問題解決を契機に再び薬害問題を起こさない体制に近づける事が出来たかという点である。そのため今回の法案成立に当たって国会では時間的制約があるとは言えそれなりの議論が尽くさなければならないと思う。

 原告被害者らは当初「司法の判断」を越える「政治決断」を福田総理に求めていた。これに対して総理は「司法の判断」を尊重し、それを越える提案は出来ないとの考えを示した。あくまでも裁判所が示す和解案に依拠する姿勢であった。それはどういう理屈によるもので、また原告被害者らの要求は筋の通らないものだったのかどうか。これが議論してもらいたい第一の論点である。

 そして今回福田総理は内閣総理大臣として「政治決断」をせずに、自民党総裁として「政治決断」をした。これはどのような意味なのか。それを是非福田総理には明確にしてもらいたい。

 また与党がまとめた救済法案では国の責任と謝罪について、「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、心からおわびすべきだ」と前文に表記されることになった。ここに書かれた国の責任とはどのような責任なのか。そしてどのような場合に国は責任を問われることになるのか。それも明らかにしてもらいたい。

 薬害事件はこれまでにもサリドマイド、スモン、クロロキン、エイズと続いてきたが、これらに共通するのは薬の知識を医者や患者が知らされていたかどうかという問題だと思う。薬の副作用を知らされずに投与されて薬害にかかった被害者には何の責任もない。知っていて教えなかった製薬会社や国の専門家には加害責任がある。しかし専門家にしか分からないところに問題の恐ろしさがある。専門家はお互いが利害関係者で情報を隠蔽できる立場にある。だから官僚も含めて専門家が最も嫌がることだが問題解決の鍵になるのは情報公開だと思う。そのための制度作りを立法府がやるべきではないだろうか。そのこともこの際にぜひ議論してもらいたい。

 しかしとてもこの延長国会で議論するだけの時間的余裕はない。だからといって議論しなくて良いとはならない。時の最高権力者が本来は自らに投げかけられた問題を立法府に委ねたことで、立法府は薬害被害者の救済法案を成立させる機会を得た。それを「この問題を解決できるのは立法府しかない」との神の啓示と受け止めて、法案が成立した後も議論を続け、この問題の解決に徹底的に尽力すべきではないだろうか。それこそが緊張感のない越年国会での唯一の賜わり物になると思うのだが。

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コメント (2)

タイミングがいいですね…。
田村秀昭氏亡くなる
http://www.melma.com/backnumber_142868_3566307/ (花岡メールより)
それにしても改造も無しですか?どこまで粘れるのだろうか…。
攻めにも守りにも弱い内閣で終わるのかな?

政治家とはどうあるべきか悩ましいですね。どういう政治家が良いのだろうか?政治家は少なくして、官僚システムを、もう一度良い物にするのがベターかも?
http://blog.goo.ne.jp/inuhide/d/20080104

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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国会TV
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-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2005年3月、講談社+α文庫


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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