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権力者の妻

 案の定と言うか予定通りと言うべきか、守屋前防衛事務次官が防衛商社の元専務から接待を受けた見返りに便宜を図ったという収賄容疑で東京地検に逮捕された。守屋前次官と防衛商社との不適切な関係はかなり以前から噂されており、7月はじめに久間元防衛大臣が辞任した時から既に予定されていた逮捕劇だと思っていたので驚くには当たらないが、守屋前次官の妻が一緒に逮捕された事にはいささか驚いた。 

 何の役職もない妻が収賄容疑で逮捕されるのは極めて珍しい。しかし権力者に取り入って利権を得ようとする者が権力者の妻をターゲットに工作を行い、そこから権力者との接点を作って関係を深める例は珍しくない。常套手段といっても良い。権力者が身ぎれいにしようとしていても妻を介して近づいてきた者に絡め取られていくケースである。
 守屋夫妻の話はそれとは違うようだが、権力者が謹厳であればあるほど近づきにくければにくいほど利権を狙う者は本人でなくその周辺、特に妻を対象に工作を行う。「将を射んとすれば馬を射よ」という教えである。権力者の妻を狙った接近工作の事例は私もたくさん見てきた。

 例えば将来の総理候補と目された自民党議員の場合、その妻が周囲から勧められてゴルフを始めた。始めたばかりということもあって本格的にコースをまわる機会はない。そこに目をつけたベンチャー経営者がいた。ゴルフ場を経営しながらIT分野にも進出しようとし、政界にも人脈を作ろうとしていた。彼は自らのゴルフ場で催すコンペに様々な手づるを使って議員の妻を招待した。初めてのコンペとあって議員の妻はスコアーのつけ方も、ルールも良くは知らない。そこでプロ3人とメンバーを組んでプレイすることになった。議員の妻はプロに教えられながらコースをまわった。スコアーもプロがつけてくれた。その結果、議員の妻は初めてにも関わらずコンペで優勝した。ゴルフにはハンディキャップがあるから優勝はありえないことではないが、本当に優勝したのかどうかは誰も知らない。優勝商品として高価なアクセサリーが贈られた。議員の妻は感激してその喜びを議員の後援会誌に書いた。こうしてベンチャー経営者は議員との接点作りに成功した。

 政治家ではないが超大企業経営者の場合、この人物は謹厳実直で有名だった。贈り物を受け取る事をせず、接待にも応じない清廉な人柄だった。しかしこの経営者に取り入ろうとする者は大勢いた。その人たちが狙ったのは彼の妻と年老いた彼の姉である。妻は和服が趣味であった。取り入ろうとする者は妻の趣味につけ込む。いつしか妻は夫に「あの人にお世話になっている。一度会ってお礼を言ってほしい」と言うようになる。姉は売れない絵描きであった。ところが弟が大企業の社長になってから突然その絵が売れ始める。姉は弟に「あの人にお礼を言ってほしい」と言ってくるようになる。このようにして大企業の利権のおこぼれにありつく人たちが接点を作ったのである。

 政治の世界では人事の季節になるとポストを求めて権力者のところに政治家がせっせと通う。それだけでなく権力者の妻のところに通う政治家も出てくる。下手をすると権力者の妻の一言が人事を左右する場合もある。私の知る中には国会議員以上の影響力を持つ権力者の妻もいた。そうした妻には金融界もすり寄ってくる。絶対に損をさせない金融商品を持って近づいてくる。こうして権力者の知らないうちに本人が得体の知れない者に取り囲まれていくことも珍しい事ではない。

 或る権力者に向かって「政治家の妻が政治に口を出すのはおかしくないか」と言った事がある。すると権力者は即座に「そんな事は絶対ない。女房が言いたい事は勝手に言わせておくが、こちらは聞く耳を持たない。そこはピシッとしている」と言った。しかしあるときその権力者はこんな事も言った。「年寄りになるとなあ、女房が一日中不機嫌な顔をしているのが一番つらいんだよ」と。

 かつての55年体制の時代。自民党と社会党が表で対立しながら水面下で手を握っていた時代。自民党が社会党を手なづける手段の一つに使ったのも政治家の妻だった。国会が休会中に夫人同伴の海外視察を与野党共同で行い、旅行中に与野党を超えた家族ぐるみの交際が始まる。帰国してからもその関係は続く。何かにつけて「奥さんへの贈り物」が功を奏するようになる。政治の表舞台で夫同士は対立しているが、妻同士の関係はそれとは別ということになり、水面下での友好関係は保たれる。そうして始まった関係がいつしか審議拒否をした野党に現金を渡して審議を再開させる仕組みにまで発展して行った。

 さて今回の防衛省疑惑だが、これを「逆ロッキード事件」とか、政界を巻き込む大疑獄事件になるという人がいるが、これまでのところ私には何かそういう感じがしてこない。
 事件は始まったばかりでこれから何が出てくるか分からないため軽々には言えないが、現在の情報だけだと常識を越える接待と言ってもたいした金額でなく、その見返りがCXエンジンの受注やヘリコプターの水増し請求への便宜供与だったという話ではとても大疑獄事件という話にならない。なにかちまちまとしたスケールの汚職事件だ。

 守屋前次官が証人喚問で名前を出した二人の政治家も、出してもかまわない政治家だから名前を出したような気がする。そこから事件が発展していくように思えない。今の守屋氏にとって権力と敵対してでも真実を述べる必要があるとは思えない。将来の事を考えれば、かつて防衛利権を握っていた勢力の話はしても、これからも権力を持ち続ける勢力とは敵対しない方が得だとの計算が働いているように見える。

 防衛利権を解明するというのなら、東京地検には普天間基地の移設問題で国から沖縄に投入される予算を巡り、多くの国会議員が暗躍している実態こそ暴いてもらいたいと思う。橋本総理大臣と米国のクリントン大統領との間で普天間基地の移設が決まった時、これから莫大な国費が沖縄に投入されることになると分かった国会議員たちが次々現地に事務所を開設した。口利きをして国費の一部をピンはねしようという思惑からで、沖縄になんのゆかりもない元官房長官や元官房副長官らが事務所を開いたと言われている。
 守屋氏はこの基地移転問題に最も深く関わってきた人物だから、ゴルフ接待の話よりも沖縄を巡る疑惑の方が本筋だと思うのだが、そうはならないのだろうか。

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コメント (4)

国会TV以降も楽しみに読んでおります。既存メディアや政治評論家の論評と比較しながら、その読みの検証をするにつれ、権力が敵に回したくない最近数少ないジャーナリストだなあと改めて感心します。これからもすばらしい論考宜しくお願いします。

ジェームズ・アワーさんと額賀さんは、飯を食った事は無いのだろうか、悪い意味での関係は無いとしても、このような事で、お互いの国の利害関係の修正ができているのだろうか?
 それとも、やはり、アメリカが言った事が通るというシステムにここでもなっているのだろうか?アワーさんやアーミテージと言った人には、様々な機会で意見を交わす必要があるのではないだろうか?外務省のようにならないで、防衛という現場は、組織や個人の為ではなく、もう少し強かにやって欲しい。ただ、それにしても、天下り問題を解決しないと全ての問題は解決できないのではないだろうか?防衛人が50歳で勝手にどっかへ行けと言われても困りますよね。

沖縄の移設の方が大きな問題だ。が分かりました。田中さんの解説は分かり易いです。有り難うございます。

沖縄に10年で2000億円としたら、5%で100億円。物凄い話だ。みんな沖縄事務所を作るのが判る。沖縄ならまだしも、それをグアムに伸ばすような事をすれば、相手(米)に弱みを握られる事になる

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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