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権力者の妻 »

再び鳩山発言を吟味してみる

 11月19日に日本記者クラブで鳩山由紀夫民主党幹事長のランチョンスピーチが行われた。11月2日の党首会談後、小沢代表と民主党役員との間でどのようなやり取りが行われ、どういう理由で役員たちが自民党との政権協議に反対したかを知りたくて出かけた。

 鳩山幹事長によると党首会談を終えた小沢代表は福田総理が安全保障政策で小沢氏の年来の主張を受け入れたことに高揚していたという。小沢氏は新テロ法案についても福田総理がこだわらないと述べたと言って政策協議に入ることを提案した。これに対して役員たちは「自民党はそんなに甘くない。大きな政党と小さな政党が一つになると結局は大きな政党に利用されるだけに終わる」と言って反対した。特に自社さ連立政権のにがい経験を持つ旧さきがけの菅代表代行や旧社会党の赤松選挙対策委員長が強く反対したという。

 鳩山幹事長は、自社さだけでなく小沢代表自身が経験した自自公連立も結局は自民党に利用された事を例に挙げ、民主党は大連立にはあくまでも反対との立場を改めて強調した。
鳩山氏の話を聞いて現在の「ねじれ」に対する認識がやはり私とは異なることを再確認させられた。今回の大連立は自社さや自自公の時とはまるで次元が違う状況になったからこそ出てきた話であり、自社さや自自公の経験と比べる事は全く意味がないと思うのだが、そこがどうも私と違っている。

 そこでまず自社さ連立政権と自自公連立政権とはどのようなものでなぜ崩壊したかを検証してみる。自社さ連立政権も自自公連立政権も大連立ではなかった。まずこれが重要なポイントである。自社さ政権には野党第一党として新進党が存在し、自自公政権には民主党という野党が存在していた。従って鳩山幹事長が言うとおり大きな政党を小さな政党が補完する連立であった。今の民主党のように参議院第一党の力を持つ大野党との連立ではない。だから自民党に好きなように操られた。

 自社さ連立は1994年に細川、羽田と続いた小沢主導政権から自民党が権力を奪い返すために仕組まれた。しかし1996年の総選挙で社会党とさきがけが大幅に議席を減らした時から自民党にとって連立の意味はなくなり、1998年に連立が解消された。社さ両党からは総選挙前から離脱者が出て民主党を結成していた。そもそも自民党が議席を増やせば連立の必要はない。しかし1996年の総選挙で自民党は過半数を得られなかった。そこで自民党は野党第一党の新進党から議員の引き抜きを行い衆議院の過半数を確保した。しかし何度も指摘しているようにわが国の特殊な政治構造は、衆議院で過半数を取っても参議院で過半数を越えない限り政権は「死に体」となる。だから自民党は参議院で過半数を得るために次の連立相手を探さなければならなかった。

 それが1999年の自自連立である。野中広務元自民党幹事長は「悪魔にひれ伏す」と言って小沢自由党と連立した。ただこのとき自民党は既に水面下で公明党を連立に引き込む工作に着手しており、自自連立はそれまでのつなぎであった。自公が連立すれば参議院で過半数を越える事が出来る。だから小沢自由党は用済みになった。こうして2000年から現在に至る自公連立政権が続いてきた。ところが今年になってこの政治構造が破綻した。参議院選挙で自公が過半数を割り込み、政権運営が続けられなくなったのである。

 参議院選挙前に国民新党の綿貫代表が「神様になるかもしれない」と言われたことがある。自公政権にとって厳しい選挙になる事が予測されたため、自公に協力して過半数を越えさせてくれる政党を自公が「神様とあがめてひれ伏す」事を意味していた。今でも参議院で17議席を持つ政党があれば「神様」になることが出来る。ところが17議席以上を持つ政党は民主党しかない。自民党と共産党が組むケースを除外すると、自民党は国民新党4、社民党5、無所属10の中から17人を引きずりこむ必要がある。その工作は当然行われる。小沢代表が参議院で国民新党や新党日本、無所属議員らに会派入りを働きかけたのは、そうした工作に対する対抗措置である。

 その結果自公政権は民主党と組む以外に政権運営を続ける選択肢がなくなった。前から言うように自公政権は選挙で「ねじれ」を解消できない。いくら衆議院選挙をやっても参議院の過半数割れは変わらない。参議院に解散はないから早くても6年後にしか過半数を獲得するチャンスは来ない。野党が支配する参議院が否決すれば全ての法案が廃案になる。それを避けるため衆議院で再議決すれば内閣総辞職か解散に追い込まれる。自公政権には日本の政治を機能させる手立てがないのである。だから民主党はかつての社会党やさきがけや自由党と違って今や「神様」の地位にいる。自民党は民主党にひたすらひれ伏すしかないのである。政権協議で簡単に民主党の政策を飲むはずがないと鳩山幹事長は言ったが、それなら連立を解消すれば良いだけで、困るのは自公政権の方だ。かつて自自連立で自民党は自由党の言うことを簡単には聞かずにずるずるしたというが、それは公明党が次の連立相手として控えていたからだ。今の自民党には民主党以外に全く選択肢がない。それなのにずいぶん自分たちの力を過小評価していると鳩山幹事長の話を聞きながら思った。

 勿論、老獪な自民党のことだからかつて新進党から引き抜きを行ったように、連立を機に参議院の民主党議員を誘い込む可能性はある。しかしそれを恐れているのならそれもまた何と自信の無い政党だろうという気がする。もう目の前に民主党政権実現の可能性が来ているのに自民党に鞍替えする議員がいるのなら、それはやはり今の民主党に政権担当能力において欠陥がある事を証明している。それなら国民のためにも政権を取らない選択をする方が正しい。いずれにしても鳩山幹事長の話からは「ねじれ」の現状認識が感じられず、7月以前の感覚で語っているように思われた。

 鳩山幹事長はもう一つ気になる話をした。スピーチの冒頭で民主党議員の元に寄せられた支持者からの手紙を紹介した。それには「今回の小沢代表の行動はあせりすぎ。民主党は自民党と戦って政権を獲得すべき。徳川幕府を倒せと叫ぶ声が上がってから実際に倒れるまで百年以上かかった。何年かかっても戦って自民党政権を倒すべし」という趣旨が書いてあったという。鳩山幹事長はおそらく「民主党の支持者は自民党とは全面対決して選挙で政権を勝ち取ることを望んでいる」と言いたかったのだろうが、これも聞いて困ったものだと思った。

 徳川打倒が叫ばれてから倒れるまで百年以上もかかったのはこの国が鎖国をしていたからである。その証拠に黒船が来たらあっという間に倒れた。それもたった4隻の黒船で。しかし今の日本には毎日何百隻以上もの黒船が押し寄せてきている。そういうことに目をつむり何年かかっても選挙で自民党を倒せというのは自分勝手な暴論だ。もう一度日本が鎖国をするのなら自民党政権打倒を百年かかって叫んでもかまわない。しかし今の日本には政治の機能麻痺は一刻たりとも許されない。選挙で政権交代するのは正論だが、そのために政治の機能を麻痺させても良いとなれば本末転倒もはなはだしい。

 選挙を考えると政治家は支持者の言いなりになる。しかし自分の支持者以外の全ての国民の面倒を見なければならないのが政権を担当する側の政治家である。だから与党となった政治家は自分の支持者を裏切る側に立たなければならない時がある。今の民主党議員にその覚悟はあるのだろうか。鳩山幹事長が紹介した民主党支持者は民主党のことしか考えていない。日本の機能が麻痺することを望むかのような感覚だ。その人たちだけを向いた政治家に国政は任せられない。

 よく政治家を判断するのに「保守」か、「リベラル」かという選択肢がある。ほとんどの人はそれが国の行方に影響する基準だと思い込んでいる。しかし私はその事にほとんど意味を感じていない。政権交代をしている国の政治を見ていると、野党でいる間は保守やリベラルの主張を過激にやるが、政権を取ると必ずその主張を薄めて中道になる。国家がやらなければならない政策は誰が政権を取ろうともそれほど変わらない。優先順位が多少違うだけでメニューは同じである。発展途上国は別だが、先進国の政治が政権交代の度に極端に右に揺れたり左に揺れたりする事はないし、国際情勢がそうはさせない。それが政権交代をする先進民主主義国の政治である。

 私が政治家の判断基準として最も重要だと思っているのは「自分の支持者だけを向いている」か、「国民全体を向いている」かという点である。よく言われる「ポリティシャン」と「ステイツマン」の違いだ。選挙で選ばれる政治家にとって「ステイツマン」になる事は口で言うほど簡単でない。選挙で落選することも覚悟の上で行動する勇気が要る。野党でいる間は気楽なもので支持者だけを向いて過激な発言も出来る。「ステイツマン」になる必要は無い。しかし族議員などを見れば分かるように、政権側の政治家もたいていは「ステイツマン」になれない。自分の選挙が優先してしまう。

 民主党の議員は野党だから族議員を批判しているが、権力を取った後でも本当に「ステイツマン」になる事が出来るのか、鳩山幹事長が紹介した民主党支持者の手紙はそのことを考えさせてくれた。大連立の意味を理解できる国民は少ない。「大政翼賛会」と同義語に考えている人も多い。だから深く考えることもなく単純思考で大連立に反発している。あるいは日本中の選挙情勢を知っているわけでもないのに、自分の周囲の雰囲気だけで次の選挙は民主党が圧勝すると思い込んでいる。そうした支持者に反発されたくないために大連立に賛成と言えないでいる民主党議員もいるのではないか。そんなことも考えてみた。

 鳩山幹事長はさらにもう一つ重要な発言をした。国会が大幅延長になっても60日条項を使って自然に新テロ法案を否決するのではなく、参議院本会議で投票で否決すると言った。鳩山幹事長は問責決議案提出には言及しなかったが、再議決されれば常識的には参議院で福田総理の問責決議案提出と可決のシナリオが生きてくる。鳩山幹事長の言うとおりならば年末から来年初頭にかけて政局は解散・総選挙含みの展開になる。その選挙で民主党が過半数を越えられれば良いが、越えられないといよいよ政治は機能しなくなる。その時民主党はどういう行動にでるのだろうか。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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