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未体験ゾーンは続いていく »

鳩山発言を吟味してみる

 鳩山発言と言っても法務大臣の「アルカイダ」ではなく民主党幹事長の「大連立」を巡る発言である。週末のテレビ番組で鳩山幹事長は次のように発言した。
1.衆議院選挙前に民主党から大連立を持ち出す事はない。
2.しかし衆議院選挙後に衆参が身動き取れない状況になれば大連立構想が再浮上する可能性がある。
3.大連立は党首二人で決めるのではなく、国民の意見を聞きながら時間をかけてやるべきだ。

 これを聞くと鳩山幹事長の政治家としての資質が良く分かる。
 まず民主党から大連立を持ちかける事はないと言っているがそれは当り前だ。この前の党首会談でも持ちかけたのは総理の側で、小沢代表は持ちかけられた提案を逆利用して民主党が選挙で勝利するための高等戦術を考えた。ところがそれを鳩山幹事長をはじめとする民主党役員が理解しなかった。だから小沢代表は辞任を表明した。そのような経緯だから民主党は日本政治の機能不全には目をつむりつつ、自民党との対決姿勢を強めてあくまでも衆議院選挙での勝利を目指すしかなくなっている。

 しかし次の選挙で勝利を目指すと言いながら鳩山幹事長は多少は現実を見ていて、選挙で過半数を越えない可能性も頭の片隅にある。そうなると政治がますます「身動きとれない状況」になる事も理解している。そして鳩山幹事長はその段階になれば大連立を考えても良いと考えているようだ。大連立に対する国民の理解が今よりは進んで抵抗が無くなると思っているのだろうか。

 私は逆だと思う。次の選挙では民主党が間違いなく大幅に議席を伸ばす。しかし過半数には届かない可能性がある。新聞の見出し的には「民主大躍進、しかし政権には届かず」という状況だ。そうなると国民はますます政権交代が現実的になったと思うのではないか。それなのに民主党が自民党と連立を組めば、国民にはいよいよ訳が分からなくなる。大連立には今以上に反発が出る可能性がある。国民の声を重視する姿勢を変えない限り大連立は組めない。そして困るのは解散権は自民党の総理にあるから任期切れの4年後まで解散はなくなる。選挙で政権を変える事はしばらく出来ない。ねじれは解消されないまま続く。その間政治は機能しなくなる。法案ごとの政策協議だけで本当にこの国はやっていけると考えているのか。

 最後に鳩山幹事長は大連立は党首二人で決めるのではなく、時間をかけても良いから国民の意見を聞きながらやるべきだと言った。国民の声を聞く事が何よりも大切との考えだ。
 先日公明党の太田代表が面白い事を言った。「これまでの政治は足し算、引き算、掛け算、割り算で解決できた。しかしねじれの政治はそれでは解決しない。微分・積分よりもっと難しい」。つまり普通の人には理解できない高等数学の世界が始まったというのだ。日本政治が未体験ゾーンに入ったというのはそういうことである。これまでとはまるで違う複雑な数式を解かなければならないが、それを国民は理解できるのだろうか。国民の理解を得ながらでは出来ない未知の世界に日本政治が入りこんだのが現状ではないか。

 国民を無視して政治が出来ないのはその通りだ。しかし変革期には国民の声を無視してでも決断をしなければならない事が政治にはある。それが私の考えである。適切な事例かどうか分からないが、反共の闘士だったニクソン大統領がある日突然共産主義の中国と手を組んだ。誰にも知られぬ秘密交渉の結果である。このときニクソンは国民の声など気にしただろうか。今まで言ってきた事とは違うといって非難する国民がいたとしても、やると決めた事をやったのではないか。評価は後からついてくれば良い。同じように旧ソ連を「悪の帝国」と呼んで軍事的な対決姿勢を強めたレーガンがゴルバチョフとの間で冷戦を終わらせるテーブルについた。そのときもレーガンは国民の声を聞いてやったわけではない。それが政治ではないか。

 国民の声を聞きながら十分に時間をかけて党首会談をやるほど、日本は平穏な世界情勢の中にいる訳ではない。隣の朝鮮半島では残された最後の冷戦体制が終焉の時を迎えようとしている。台頭するインドと中国の経済成長は著しい。その中で日本経済にかつての力はない。経済大国が並の国になりつつある。一方で人口減少と高齢化は深刻だ。年金、医療、介護の仕組みを抜本的に見直す必要がある。政治の機能麻痺を長々と続けるわけにはいかないのだ。

 民主党が大連立に乗らなかったことで民主党は千載一遇のチャンスを逃した。今頃になって「大連立は増税のための陰謀だった」などというためにする情報が流されているが、これはそんな「木を見て森を見ない」話ではない。日本を機能させるためにどうするかという政治の基本に関わる問題である。

 しかしこうなったら鳩山幹事長は次の選挙で過半数を得るため全力をあげるしかない。それが大連立を拒否して小沢代表の辞任騒動を引き起こした執行部の責任である。なるべく早く解散総選挙に追い込み、選挙で過半数を越えて政権交代を実現する。それが出来なければ国民の声を無視してでも直ちに大連立に取り組み、政治の機能麻痺を避ける。
 そして「大連立をすると選挙で戦えなくなる」という間違った考えを早く払拭してほしい。かつて鳩山幹事長も経験しているはずだが、中選挙区制度の時代、自民党議員の最大の敵は同じ選挙区の自民党議員だった。両者に政策の違いはないから選挙区で誹謗中傷を繰り広げ、憎しみをあらわにして選挙を競い合った。それでも選挙が終われば力を合わせて政権を支えた。だから連立を組んで協力し合っても選挙では政策の違いを鮮明にして激しく戦う事は何も不思議でない。ドイツだって大連立を組んでいるからといってキリスト教民主同盟と社会民主党が次の選挙で戦わない訳ではないだろう。それが先進民主主義国の政治である。大連立にアレルギーがあるのは政権交代の経験がない未成熟な民主主義国の未知への恐怖でしかない。幹事長にはくれぐれも大連立で選挙が出来なくなるなどと誤った考えを広めないでほしいと思う。

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コメント (1)

(インタビューより)―大連立の狙いは。

 首相は連立なら特措法さえも譲って構わない、憲法解釈も180度転換しても構わないと、そこまで言い切った。農業政策、年金、子育て、高速道路無料化など、我々の目玉政策ものむかもしれない。画期的なものが民主党の主張で実現できれば、選挙に絶対有利だ。だが、みんなどうせ実現できないと思っていて民主党議員でさえそんな気がある。それは権力を知らないからだ。僕は権力をとれば簡単にできることを知っている。
http://www.asahi.com/politics/update/1116/TKY200711150399.html 

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田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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