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大連立を見てみたかった
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« 小沢代表辞任表明の衝撃
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勘違いが続いている »

大連立を見てみたかった

 いったん辞任を表明した民主党の小沢代表だが、党内からの慰留要請を受け入れて辞任を撤回した。続投を正式表明した民主党の両院議員懇談会の様子を見ていると今回の小沢氏の行動はまだ理解されていないように思われる。民主党の中で理解されないのだから国民にはもっとよく分からない。「小沢代表は無責任だ」とか「国民の期待を裏切った」と言う声が巷に溢れている。

私はかねてから「大連立話は政府与党が政権交代をさせないための罠だ」と思っていたから、初めは小沢氏がその話に乗ったことに驚いたが、4日に行われた小沢氏の辞任会見を聞いて、全く考えを一転させた。小沢氏が言う「大連立が政権交代の早道」というのは極めて説得力があり検討に値する話だった。

 勿論、国民が投票する選挙によって政権交代を果たすというのが正論である。だが次の選挙でそれが実現する保証はどこにもない。自民党にとって政権の座から滑り落ちる事は地獄を意味するから、全身全霊をかけて、あらゆる手段を使って選挙に勝とうとするだろう。民主党のスキャンダルを徹底して暴露してくるかもしれない。マスコミが民主党の候補者に二重丸の予想をつけて落選させる方法もある。今回の大連立を仕掛けた人物が会長をしている新聞社の記者から、「上司からの命令で上層部が気に入らない政治家を落選させるため、予想を二重丸に変更させられた」という話を聞いた事がある。二重丸をつけられた候補者は圧倒的に選挙で不利になるのである。

 とにかく次の衆議院選挙で民主党が過半数を獲得する事はそう簡単ではない。そのことを小沢氏は十分承知している。それでもその方法でやるしかないというのも正しい理屈だが、政権交代まで何年かかるか分からない。小沢氏は次の選挙に政治生命を賭けると言っているから、仮に次の選挙で民主党の議席を今の2倍に増やしても政治家を辞めなければならなくなる。

 そこに新聞社の会長から話があった。国家国民のためにねじれ国会をこのままにしておくわけにはいかない。大英断を持って連立を組むべきという話だったのだろう。福田総理からも会いたいと言ってきた。参議院選挙で惨敗したときから既に自公政権は「死に体」で、野党の協力なしに政権運営は全く出来ない。だから会いたいと言って来るのは当然だが、もしかすると自分を陥れる罠かもしれない。しかしどのような提案をしてくるのか会ってみる価値はある。小沢代表はそう思ったのではないか。政治の世界では古今東西どんな民主主義国でも機微に触れる重要会談をオープンでやる馬鹿はいない。余人を交えず密室でやるのが常識だ。特に交渉事であるならばなおのことそうだ。今回の党首会談はやる事を公表した上で行われた。それを密室談合と批判する人たちがいる。他の野党にとっては自分たちが排除される話だから批判するのは当たり前だが、メディアの中にそのような批判をする者が多いのに驚いた。いろいろな国の政治を見てきたが今回の党首会談を密室談合と呼ぶのはいささか政治を知らない素人の議論ではないか。

 鳩山幹事長が「大連立話は王手飛車取りのような陰謀だ」と言ったが、大連立を仕掛けた側にはそうした狙いがあったのだろう。小沢氏が大連立に応ずれば政権交代はなくなり、いずれは小選挙区制での大連立はおかしいという話にして中選挙区制に戻す。そうすれば昔の自民党単独政権時代と同じ政治構造になる。もし小沢氏が大連立を拒否すれば、会談に応じた小沢氏に対して反発を誘う情報を流して民主党を分断する。

 ところが小沢氏は仕掛けられた大連立をまったく逆に転換する事を考えていた。大連立に乗ることで自公政権を自分の手の中に入れ、民主党の政策を次々実現させたうえ、次の衆議院選挙は自民と民主が別々のマニフェストを掲げて戦い、民主が過半数をとれば自民と手を切って政権交代を実現し、過半数にいかなければそのまま連立を続ける。新聞社の会長や自民党とは全く逆の思惑で事を進めようとしたのではないかと会見を聞きながら思った。
 
 大連立と聞いてすぐ「大政翼賛会だ」とか「中選挙区制に戻る」と短絡する人がいるが、余りにも単純すぎる。連立を決めたら2つの政党が直ちに1つになるわけではない。まず政権協議が行われて、連立の条件が話し合われる。今回の連立は与党の側が必要としているから与党が譲る形の政権協議になる。小沢代表が言うように安全保障政策の大転換が図られた可能性は高い。次に参議院選挙で民主党が国民に約束をした年金法案、子育て支援、農業政策も自民党が飲む可能性がある。

伝えられているところでは大臣ポストが民主党に6つ用意されたという。年金の厚生労働大臣、子育ての少子化担当大臣、農業の農林水産大臣を当然小沢氏は要求しただろう。その上財務大臣などが取れたらその意味は大きい。国の財政を民主党が握れることになる。小沢副総理という話もあったというが、小沢氏ならば副総理でも十分総理を超える力量を発揮した可能性がある。自民党の一部に大連立を危惧する声があったのは、庇を貸して母屋を乗っ取られる恐れがあったからだ。その危惧は当たったのではないか。
 
 大連立になれば選挙は限りなく遠のく。2009年の任期切れまで選挙はない。その間民主党の若い政治家も官僚機構を内側から十分に知る事が出来る。政権を取れば野党のときとは違い、正論を吐いて国民に訴えるだけが仕事ではなくなる。弁舌だけで出来る仕事ではない。明治から続く岩盤のような官僚機構と戦わなければならない。一方で野党からの攻撃もかわさなければならない。さらに権力を持つ者には蟻が蜜に集まるように得体の知れない人々が近づいてくる。本人にではない。家族、兄弟、親戚、秘書らにおいしい話が次々持ち込まれて落とし穴が用意される。そうしたことを潜り抜ける鍛錬もしなければならない。

 そして小沢氏は、選挙になれば自民党と別々のマニフェストを掲げて戦うという。ここがおそらく国民には最も分かりにくいのかもしれないが、現在公明党と自民党は別のマニフェストで選挙を行っている。連立でも別のマニフェストを掲げる事は出来る。小泉政権では自民党が郵政民営化を巡って分裂選挙をやった。昭和27年には自民党の前身である自由党が吉田派と鳩山派に分かれ、再軍備賛成と反対で真っ二つに割れて分裂選挙をやった。連立を組んだから小選挙区制は駄目で中選挙区制でなければならないと小沢氏は考えていないのではないか。民主党が中選挙区制を拒否すれば中選挙区制は絶対実現しない。連立を組んでいても選挙が近づけば民主党は自民党との違いを鮮明にして国民に選択肢を与えることも出来る。

 選挙の結果、過半数を越えれば自民党と別れて民主党単独政権が出来る。過半数を越えられなければ、自民党はそれでも連立を必要とするからまた政権協議をすればよい。自民党が約束を守らなければさっさと連立を解消する。かつて小沢氏は小渕政権でもあっさりと連立を解消した。あのときは公明党がその穴埋めをしたため自民党も別れられたが、今度は民主党に逃げられたらどうやっても参議院の過半数を自公が回復する事は出来ない。だから自民党は民主党の要求を飲むしかない。

 この大連立構想に問題があるとすれば国民が求めたものではないということだ。その点で怒っている国民が多いと思う。しかし国民の求めるものが常に正しく、国家にとって良いことなのか。民主主義は国民が政治の主役である。しかし同時に民主主義は国民を信用しているわけではない。国民の言うとおりにすると間違う可能性があるというのも民主主義の考えの基本なのだ。だからギリシアの昔から直接民主主義ではなく間接民主主義が採用されている。国民の間違いを直す役目を負っているのが政治家なのである。国民の言うことを聞き、国民に人気のある政治家が優れた政治家とは限らない。国民に不人気の政治家こそ本物の政治家として評価された例はいくらでもある。だから政治家は時には国民の声を無視して事を決断することもある。最近の政治家を見ていると、国民の声を聞き、毎日街頭で国民に訴えるのが良い政治家だと勘違いしているのが一杯いるが、政治はそんな単純なものではない。

 小沢氏は国民の不人気も覚悟しながら大連立に乗ろうとしたのだろうが、私の想像通りならば、私は大連立を見てみたかった。民主主義を無視しているようで逆に民主主義を強くした可能性もある。残念ながら頓挫したことで、これからは法案ごとの政策協議でねじれを解消するしかなくなった。竹下政権以降小粒な政治家のちまちました政略ばかりを見せ付けられてきたが、今回の騒動は久しぶりにダイナミックな政治の駆け引きを見せてくれた。ただそれが理解されていない事が何ともさびしい。

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コメント (5)

ここまで考えていたのなら見てみたかった。個人的には、引っ掛けて出てきたら交渉しながら切る程度かと思っていたけど…。
 昼の番組で、猪瀬氏が、小泉氏が選挙前に、勝っても負けても小沢さんが選挙後連立を仕掛けてくると言っていた事を話していた。今回のような理由を言ってなかったが…。いずれにしても、小さな小沢党ならできたけれど、これぐらい大きくなると難しい。少なくとも仕掛ける前から、鳩山・菅・それに反対勢力の誰かに話して(漏れた時に判るようにしながら)遣れば良かったのに…。福田二次内閣で、自民党が許容できない事で追い詰め、崩壊、解散に追い込む。これが大逆転の300議席に唯一辿り着きやすい方法だったのかもしれない。 
 長妻厚生労働大臣か…。

辞任会見をみたときは、私も「政権交代の近道に成る。生活主体の政策が実現する」ということになるのなら、大連立はアリなのかも、とは思いました。思いましたが、あまりにも唐突です。

小沢代表は来る総選挙に備えた最前線にいますから、その現実感からの判断には説得力が有ります。しかし、どのような内容が福田小沢の間で話されていたのか分からない状況から、いきなり大連立、政権交代能力の弱さ、また大連立のメリットを、それまで「政権交代」と訴えてきた口から言われたら、短絡とか単純とかいわれても、(そのメリットのアナウンスは疎か噂すら無かったところにいきなりなのですから)そのような反応が起きるのは当然のことではないでしょうか。

確かに多数決民主主義は正しい道を選ぶ手段ではありませんが、それを無視して進められたら、国民はまた政治に対して興味を失ってしまいます。国民により適切な方向を選ばせる為にも、(オフレコの会談を良しとしても)そういった選択肢や方法論を、事前に訴えるなり伝えるなりのことは必要だったと思います。

小沢一郎という人は、頭はいいかもしれませんが(よすぎるからかもしれないけど)、それを伝える努力を面倒がるのか、あるいは「これくらい当たり前の帰結だろう」と高をくくっているからなのか、一人で走り出すところが昔からあったように思います。
個人的には、その複雑な思惑を、できるだけ分かりやすく国民に伝えてほしく思います。

私は小沢とて弱い人間の一人であることをアピールして弱者の心模様と同調させる効果を無意識にとった小沢であると読む

小沢辞任会見で,久々に政治家を見て,ドキドキした数少ない?人間ですが,(あの会見を実現するためには,辞任劇が必要だったのかとかと思いました。)小沢さん,連立で数々の法案を通し,その後,安全保障で両党を分裂させ,政界大再編の後に総選挙,とまで夢見たというのは,考え過ぎですかね?

小沢辞任会見を見て言い訳めいた言が殆ど無かった事に感心しました。多くは語っていませんが余計な事は言わずに必要な事はきちんと話しているなとも感じました。自身で口べたと言っていますが、思いつきでものを喋らないと言うだけで口下手ではないでしょう。

いつも田中さんの解説には目から鱗の思いで読ませて頂いています。今回の解説も成る程と思いました。テレビでも新聞でも小沢氏の行動を容認する解説は一つも見当たりません。私は前から心の中で小沢氏を応援していますので、今度の行動(連立容認)についても我々素人には分らない深い考えがあったのではと思っていました。

高野孟さんの解説にも常に敬意を払って読んでいるのですが、昨日の解説で小沢氏が大局を読み違っているのではという指摘があり、がっかりしていたのですが田中さんの解説を読んで少し救われた気分です。何れにせよ小沢氏にはもう少し頑張ってもらい政権交代を実現して欲しいものです。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

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『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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