権力者になりきれなかった総理の不幸
安倍総理が突然辞任を表明した。辞任を表明するのは本人の自由だが、国会を召集し、月曜日に所信表明を行い、それに対する各党の代表質問が行われる直前の辞意表明である。あまりに非常識という他ない。この総理は国会というところを、総理の責務を、いやそもそも政治というものを何だと思っているのだろうか。
召集されたばかりの国会は中断されることになり、おそらく次の総理が決まるまで開く意味がなくなった。日本中が迷惑を蒙る。そのことが分かっているのだろうか。分かってやったとしたら、周囲のみんなを困らせてやろうと駄々っ子が考えるようなタイミングだった。何故こんなことが起きたのか。
安倍総理が記者会見で述べた辞任の理由は、「テロとの戦いを継続させるために、自分が総理を辞任して局面の転換を図り、新たな総理の下で新法を推し進める方が良いのではないかと判断した」というものだった。そして自分では駄目だという理由を「本日、民主党の小沢代表に党首会談を申し入れたが断られた」と述べた。
まるで理由にならない。テロとの戦いだけが国政ではない。そんなことを理由に辞めるなら総理は日本国民の事を何も考えていなかったということになる。さらに党首会談を断られたというのは言いがかりに過ぎない。交渉ごとが簡単にまとまるものなら誰にでも政治家が務まる。
ただ私は記者会見の終わりのところで、安倍総理が「自衛隊の給油活動を中断されてはならないと考えて先般シドニーで『職を賭す』と言った。(テロ特措法の延長ではなく)新法で継続を図っていく考えが党のほうにありますが、新法ですと日程的に言って一時的に中断の可能性が高い。その時に判断するよりも、今判断をしたほうが、党が改めてスタートする上ではむしろその方が良いだろう。国民の皆様に対しましても混乱を招かないで良いだろうと判断した」と述べたところに注目した。
「運命の168臨時国会(1)」でも書いたが、与党の中には国会にテロ特措法の延長ではなく給油活動継続の新法を提案し、それに民主党の主張も取り入れて民主党を揺さぶる材料にし、それでも反対の小沢代表と民主党の一部との間に楔を打ち込み、国会がもめて11月1日を過ぎても成立が図れなければ、いったんは自衛隊を撤退させ、他国から日本批判の声を出させ、その責任を民主党の小沢代表に負わせて民主党の分断を図る、そんなシナリオがあると私は見ていた。ところが安倍総理がシドニーで給油活動を継続できなければ自らが責任を取ると発言したので、それならば小沢代表より前に安倍総理が辞めなければならなくなる。それとも二人が相討ちになるシナリオがあるのかと書いた。
安倍総理は辞任表明の記者会見で、新法だと11月に自分が辞めなければならなくなる事を認めている。さらに今辞めるよりもその方が国民を混乱させると述べている。この発言は何を意味しているのか。そのときには小沢代表を引きずりおろす政争が始まり、自分がその一方の当事者になることが予定されていることを知ったのではないか。安倍、小沢二人相討ちの「党のほう」のシナリオである。それに賛同できないので今辞任を決断したと言っているように聞こえる。「党のほう」と言えば麻生幹事長の事だ。
今回の内閣改造人事は麻生幹事長主導の人事だった。それより先、参議院選挙の結果に関わらず安倍総理に続投を進言したのも麻生幹事長である。それは安倍総理のためと言うより自分が次を狙うためだった。そして麻生幹事長は安倍総理を次第に小泉政治の継承者から引き離していこうとしている。小泉改革路線は急速に影を薄め、安倍氏は麻生、与謝野ラインの上に乗らざるを得なくなった。自分は単なるシャッポに過ぎないことに気づかされた。
もう一人、選挙の結果に関わらず続投を勧めていたのは小泉前総理である。しかしこちらも総理の後継者として小池百合子氏を育て上げようとしている。そのために時間が必要で、そのために自分に続投を勧めている。
1年前には自民党全体が自分を支持し、歓呼の声で総理の座についたはずなのに、気がついてみると周囲には誰も自分を支える人間がいなくなった。しかもこれからは小泉前総理と麻生幹事長との間で熾烈なる路線闘争が始まろうとしている。とても自分には耐えられない。そんな思いが連日心の中に去来していたのではないか。自民党が参議院選挙に勝つために促成栽培された「戦う政治家」は、「孤独」になれない、「ワル」にもなれない、権力者にはなりきれない人間だった。
それにしても権力者には不向きな人間を小泉前総理は後継者に選んだ。その任命責任は非常に重い。それとも「自民党をぶっ壊す」と叫んだ人だから、狙い通りの人事だったと言うことか。



コメント (1)
本当の権力者になれなかった安部氏が、密かに進むクーデターに対して、最後のプレゼントをあげたのでは?自分の体調(過敏性大腸炎)が、いつも以上に落ち込み、更には、安部洋子さんの体調まで先週から悪化した中、方法がこれ位しか浮かばなかったのかも?麻生の裏にアメリカがいるとしたら、小泉側は、動くだろうか?このまま、麻生に渡すのを良いとしていない人もいるだろう…。安部本人も麻生へ渡したくないと今現在思っている1人だろう(だまされた…)。
投稿者: おumaちゃん | 2007年9月12日 23:42