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弛緩国家
おumaちゃん 08/19
urayomi 08/23

« 政治は女性を口説くに良く似たり
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権力者になりきれない総理が小泉政治と決別か »

弛緩国家

 今夏の日本列島は猛暑に焼き尽くされて緊張感を持続することもままならないが、参議院選挙の結果を受けて緊張感を高めたはずの日本政治もまたそれを持続できずに迷走が始まっている。

 迷走劇の主役の一人は安倍総理で、選挙大敗に抗して続投を宣言し、それならば延命のための策を次々に繰り出すかと思いきや、改造人事を8月末に先送りするなどして沈黙を守り、権力者としての存在感を日に日に弱めている。

一方で安倍総理とは対照的に存在感を誇示するようになったのがもう一人の主役、小池百合子防衛大臣である。小池大臣は参議院選挙後初の臨時国会が召集されたその日に訪米し、ゲーツ国防長官、ライス国務長官、チェイニー副大統領などと会談した。参議院選挙で大勝した民主党の小沢代表が11月1日で期限の切れるテロ対策特別措置法の延長に反対を表明していることから、アメリカ側は政府要人が総出で小池大臣を歓迎したが、これに気を良くしてか小池大臣は小沢代表を「湾岸戦争の時からカレンダーが止まっているのではないか」と痛烈に批判した。要するに野党第一党の党首を「時代錯誤の政治家だ」と馬鹿呼ばわりしたのである。

 安倍総理をはじめ政府与党がそろって「民主党の言い分にも耳を傾ける」と言っているときに、小池大臣だけがひときわ目立つ挑発をして見せた。小沢代表にとって許せる物言いではない。何が狙いなのかを考えて見たくなる。小池大臣の発言は民主党との修正協議の道を閉ざし、テロ特措法が通りにくくなる状況をわざわざ作り出した。これが許されるなら、政府与党も本気でテロ特措法を延長させようとは思っていないのかもしれない。延長させないことで小沢代表を「良好な日米関係を破壊する者」に仕立て上げ、民主党内の反小沢グループと小沢代表との離反を図り、民主党分裂のきっかけにしようと考えている可能性がある。テロ特措法の延長問題を政略に使おうとしているのは小沢民主党代表だけではない。安倍政権の背後でもそうしたシナリオが練られていることを小池発言は示して見せた。

 小池大臣はまたライス国務長官と「姉妹関係」だと親密振りをアピールし、その挙句に「私をマダム・スシと呼んで」と意味不明のことを言った。かつての「ロン・ヤス」や「ジョージ・ジュンイチロウ」にあやかろうとしている。ただの防衛大臣では終わらないと言いたいようだ。しかしライス国務長官はすでに死に体となっているブッシュ政権の閣僚で、あと数ヶ月で権力の座から離れることになる。去り行く人との親密振りをアピールしても意味がないと思うのだが、それともライス国務長官が政権を去る前に、年内にもライス長官に匹敵するポストを狙うつもりなのか。

 訪米から帰国した小池大臣は、今度は防衛省の守屋事務次官を退任させ警察庁出身の西川官房長を後任に当てようとして当の守屋事務次官と全面戦争に入った。「防衛省の天皇」と呼ばれる次官の首を取ろうというのだから、周到な準備と覚悟がなければ出来るものではない。一部にこの対立劇をかつて外務事務次官を更迭しようとした田中真紀子元外務大臣の例になぞらえる向きもあるが、私は全く違うと思う。前者は自分の思い通りにならない官僚機構に腹を立て、大臣の人事権を行使して官僚に対抗しようとしたが、最後はさらに上位の任命権者によって両者が共に更迭されることになった。しかし今回は大臣就任後に確執が始まったというような個人的事情ではない。はじめからこの交代劇は予定されていたと見るのが妥当である。

イージス艦の機密情報が漏洩した問題でのけじめ、沖縄の普天間基地移設問題での次官に対する地元の反発、さらには防衛利権を巡るスキャンダルの存在などが背景にあると噂されているが、権力機構の内側でこの交代劇のシナリオは書かれ、いわば「刺客」として小池氏が防衛大臣に送り込まれたと私は見る。蚊帳の外に置かれた塩崎官房長官は反発したが、事は表の権力ではなく裏の権力によって動かされている。私の目にはそのように見える。
 
 この局面でも安倍総理はいったんは問題の決着を組閣の後に先送りしようとした。さすがにそれでは指導力のなさを印象付けてしまうと思ったのか、17日になって急遽守屋事務次官を退任させることを決め、後任に防衛省生え抜きの増田好平人事教育局長を当てることにした。両者痛み分けの決着とマスコミは報道しているが、小池大臣は更迭されたわけではない。田中真紀子元外務大臣のケースとは全く異なる。結局はこの過程でやはり安倍総理の指導力のなさが浮き彫りにされた。

 8月15日、安倍総理は靖国神社参拝を行わず、それと共に閣僚も1名を除いて参拝を自粛した。安倍総理の支持者の中には「らしさ」が失われたと感じた人も多かったに違いない。一方で小泉前総理は去年に続いて二度目の「8・15参拝」を行った。日ごろ異常なほどマスコミの前に姿を見せない小泉氏がわざわざカメラに撮影させて自分の存在をアピールした。「あいまい」な安倍総理と「ブレない」小泉前総理が対比される形となった。前総理ならばせめてこっそり参拝してその事実も公表しない方がよほどふさわしかったのではないかと私は思う。安倍総理には酷な1日だった。
 
 安倍総理は19日から25日までインドなどアジア3カ国を歴訪するが、小池大臣もまた21日から25日までパキスタンとインドを訪問するという。同じ時期に同じ地域を総理と大臣が別々に訪問するというのも珍しいが、27日の内閣改造を前に二人の発信力がどれほどのものかを見比べてみたい気がする。通常なら当然総理の方に軍配が上がる筈なのだが、最近の二人を見ている限りどうもそういう感じがしないからだ。

 しかしこのような状況が続いている国家とは一体何なのだろうか。何も今更始まった事ではないと言われるかもしれないが、この弛緩した国家を見ていると、緊張感を取り戻すためにはとてつもないことをしでかさなければならないような気がしてくる。テロとの戦いは必要だとか、国際協調が大事だとか、日米同盟は絶対だとか、そんなレベルの話はどうでも良い。例えばアメリカの核の傘から脱却して自力で生き抜く決意をし、そのために持てる力の全てを動員して外交を研ぎ澄ます、そんなことでもしない限りこの国は永遠に弛緩したまま朽ち果てていくのではないか。猛暑のせいか頭にはそのような思いが去来した。

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コメント (2)

暑中お見舞いわざわざありがとうございます。我が競馬界も政界と同様に弛緩国家ならぬ弛緩競馬となってます。先日、松岡さん事件を切欠に、良い意味で天下りから離脱して、一応生え抜きのJRA理事長が決まりました。今の理事長がノーパンしゃぶしゃぶだっただけにやっとかという事です。そのすぐ後、馬インフルエンザの発生で、危機感を試されてますが、危機感欠如、判断遅い、対応策もいい加減でどこまで行くか最悪状況です。こんな対応では民間では倒産です。それはともかく、政治でも早く、弛緩・稚拙なとこから脱して強かな段階へ進んで欲しいものです。社長もこの際たっぷり充電してどこかで力を発揮してくれることを期待しております。

『裏の権力』となんなんでしょか?実態のある組織なんでしょうか?共同幻想的なものなんでしょうか?霞ヶ関のトップと自民トップ政財界のトップ、メディアのトップなどどが、国民に見えないところで密談しているというイメージなんでしょうか?しかし、これらのトップは具体的に人名が分かるので、裏には回れないような気がします。そう考えていくと、なんとなくマッドさんの陰謀史観にはまってしまいそうです。それとも、官僚など、省益を基本に考える内向きの権力志向が、ゆるやかに連帯した、いわば「あ・うん」状況の実態のない組織なんでしょうかね?日本の権力構造を眺めていると、『影の権力』というのが、ありそうで、その実態がまったくわからないのが不思議でしかたないです。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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