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年金問題の闇
A亭 07/01
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年金問題の闇

 宙に浮いた年金記録が5000万件もあったという事実は参議院選挙の行方をも左右する大問題となっているが、社会保険庁のお粗末さだけに目を奪われていると、とんでもない落とし穴にはまり込んでしまう危険があると私は思っている。

 それは3年前に大騒ぎとなった年金未納問題が、当時審議されていた年金法案から国民の目をそらさせ、福田康夫官房長官、菅直人民主党代表らを次々辞任に追い込み、小沢一郎氏の民主党代表就任を阻み、最後は社会保障財源として消費税導入に道を開く「三党合意」に民主党が組み込まれるなど政略の道具に使われた記憶があるからだ。

 当時の政治の流れを見ていると誰かのシナリオに国中が乗せられているのではないかと思った。誰かというのは個人ではない。権力のシナリオと言う意味である。

 3年前の通常国会を思い出して欲しい。イラクへの自衛隊派遣と年金改革法案が最大の焦点で、しかも夏には参議院選挙が予定されていた。そのため国会は今年と同様に冒頭から荒れ模様だった。国会の前半でイラク支援法が強行採決され、年金改革法案が審議入りしたのは4月1日である。法案の中身は少子高齢化に対応するため年金保険料の負担は増えるが、給付の方は必ずしも上がらないというもので、国民には喜ばれない内容のものであった。それをどのようにして政府・与党は成立させたのか。

 まず小泉総理が審議入り直前の3月28日の「サンデー・プロジェクト」にテレビ出演して、「将来は年金一元化が望ましい」と民主党の年来の主張に合わせる発言をした。この発言に民主党は翻弄される。後で考えれば「三党合意」のための布石が打たれたと思うのだが、当時は小泉総理が自ら提出した年金法案の不十分さを認めたとして民主党はその事だけを攻め立てた。
 
 次に4月14日、年金審議の最中に東京地検特捜部が贈収賄事件で元社会保険庁長官を逮捕する。これによって世間には社会保険庁という役所は解体する必要があるという認識が広まった。
 
 そして4月23日、麻生太郎、中川昭一、石破茂氏ら三閣僚の年金未納の事実が発覚する。いよいよ未納フィーバーの始まりである。年金法案の中身の議論はどこかへ吹き飛んでしまった。民主党の菅代表はひたすら「未納三兄弟」を国民に訴える。参議院選挙を意識したためだが、政府・与党には好都合の展開であった。誰が年金未納の情報をリークしているかといえば、情報を知りうるのは権力の側である。リークしている側はある意図を持ってシナリオ通りにリークしているのである。にもかかわらず民主党はこの情報に踊らされて、未納問題をことさらに大きくした。
 
 4月28日、法案の中身の議論がないまま衆議院の委員会では与党単独で法案が採決された。審議入りしてから採決まで与野党がそろって出席したのはわずかに6日間である。

 そうした中で小泉総理とは外交方針を巡ってことごとく対立していた福田康夫官房長官の未納が週刊誌で暴露され、次いで菅民主党代表の名前も明らかになった。その頃のマスコミは年金問題など眼中になくなり完全に未納糾弾モードだから、福田官房長官が辞任を表明すると菅代表の辞任もまた「絶対」でなければならなくなった。代表辞任が迫られる中で年金法案絶対反対を主張していた民主党は、反対どころか「年金一元化のための協議機関をつくる」という名目で「三党合意」に署名してしまう。これでシナリオを書いた側の目的は達成された。

 法案が参議院に移ると、驚いたことに小泉総理も、公明党の幹部も、法案を作成した厚生労働副大臣も、衆議院厚生労働委員長も年金未納であることが明らかになった。しかし菅民主党代表が辞めた後では、誰も辞任が必要だとは言わなくなる。ただ菅代表の後任と見られていた小沢一郎氏が自ら未納の事実を明らかにして代表就任を辞退した。権力の側は小沢氏の未納のことも知っていたはずだから、仮に小沢氏が就任していれば当然未納の情報はリークされることになっていたはずである。

 こうして国民に喜ばれない内容の法案は未納騒ぎのために関心の外になり、無事に成立を果たすことが出来た。さらにこの過程で社会保険庁の解体が決定的となり、民主党は社会保障政策での共同責任を負わされることになった。一石三鳥の見事なシナリオだと私は思った。後に民主党は「三党合意」を反故にしたから、もしかするとまんまと乗せられたことに気づいたのかもしれない。

 そうした3年前の記憶があるため、今回の宙に浮いた年金記録問題も素直に野党の追及によってあぶりだされたと考える気になれない。民主党の長妻議員が時間をかけて追及してきた成果であることは間違いないが、しかし5000万件という衝撃的な数字をなぜ社会保険庁は公表したのか。問題解決と称してやろうとしていることは何なのか。そこらを見極めないと「未納三兄弟」の時のように足元をすくわれることにもなりかねない。その裏側に何があるのかを見つけ出さなければならないと思う。

 今回も国民の関心は年金記録問題の方にだけ向いて社会保険庁改革法案には向かなかった。社会保険庁を解体して新組織にすることが一体何を意味するのか、新組織は年金記録問題を解決できるのか。年金記録問題よりも大きな闇を葬り去るために新組織を作るのではないか。国鉄民営化の時のように膨大な赤字を解消するために税金を投入することはないのか。様々な問題点を指摘されながら法案は強行採決された。
 
 年金問題を巡る情報のほとんどは実は隠されたままである。我々は氷山の一角だけを見て議論している事を忘れてはならない。年金問題にはまだ闇の部分があるはずなのだ。それをいかにして日の光に当てる事が出来るか。それが最大の問題なのである。

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コメント (3)

田中康夫は国家公務員に嫌がられることをどんどん実行していくので立派な人物だ彼は適役パーソンだな
参議院選には投票用紙に 日本 とだけ描けばまちがいがなく新党日本の田中康夫 有田氏 +
に投票したことになると強調していっていた 

『権力のシナリオ』とても興味深く読ませていただきました。このシナリオライターはいったい誰なんでしょうか?官僚と財界人トップの複合体で、政治家はその下で操られているという構造なのですか?それは実体のない、共同幻想的なものが、政財界のトップにあり、個人がエスタブリッシュメントの仲間入りしたという自覚が生まれた瞬間に(たとえばキャリアーで入省、入閣、基幹産業のトップになるなど)、その考えに共鳴するような感じなんですか?

それはTV放送で批判できない アレだな 現在共産党だけにしか批判できない アレ だ

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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