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国会TV〜ゲスト・鳩山由紀夫民主党幹事長 »

悲壮感あふれる幹事長

 「参議院選挙に負けたら、もう二大政党政治は無理です。それをさせない覚悟をどれだけ我々が国民に示せるかだ」と悲壮感あふれる決意を披露したのは民主党の鳩山由紀夫幹事長である。参議院選挙投票日のちょうど2ヶ月前に当たる5月22日、国会TVの「政治ホットライン」に出演した鳩山幹事長は終始固い表情を崩さなかった。電話で質問してきた視聴者から「今日の鳩山さんの顔はレ・ミゼラブルですよ」と言われたほどだ。
 
 昨年末以来下がり続けてきた安倍内閣の支持率が上昇傾向にあり、それに比べて民主党の支持率が上向かない状況がそうさせているのだろうか。

 安倍内閣の支持率上昇について鳩山幹事長は、「安倍さんは就任以来慎重な対応を見せていたが、かねてからの支持者がそれに不満を示すと、数に物を言わせて国会で次々に法案を成立させるなど信念に基づいてやっているという姿勢を見せつけるようになった。それが国民に好感されている。しかし国会で強引に法案を成立させていることは、国民のためにならない。竹下政権も圧倒的多数の議席を持っていたが、国会は野党のためにあると言って、強引な手法はとらなかった。安倍政権はそれとは逆の事をやっている。極めて危険なことだ」と述べた。

 鳩山幹事長が言うように、強引な国会運営が国民の支持を集め、野党の支持につながらないとすれば、野党にとって確かに事は深刻である。強引な国会運営をやめさせるために審議拒否などの戦術で徹底抗戦すればさらに国民の支持を失うことにもなりかねない。野党第一党の幹事長はそうしたジレンマの中にいるようだ。

 郵政選挙で圧倒的な議席を得た与党に対抗するためには、やはり選挙に勝って議席を増やしていくしかない。それでは参議院選挙の準備は万全なのか。「準備万端整った、と言いたい所だが、出来つつあるというのが実情だ」と鳩山幹事長は誠に正直にものを言う。

 ここにきて自民党は参議院選挙の候補者として女性アナウンサーやサッカー選手などの著名人に声をかけ、「ふるさと納税」や「サマータイムの導入」など選挙を意識した話題づくりを行っている。与党に対抗するために「民主党は何もしないのか」と問うと、鳩山幹事長は「単なる選挙目当てではなく、きちんとしたメッセージ力を持った人に声をかけている」と応えて、「ついさっきも田中康夫さんと会って、民主党に入党しないか」と誘いをかけた事を明らかにした。

 そして「ふるさと納税の考えは、本来は国税を地方に回すというのが正しい。かつて国民がふるさとに寄付すれば国税の方で控除される構想を提案したことがある。しかし財務省の壁が厚く実現しなかった。今回自民党が言い出したのは国税には手をつけず、住民税の中で納付先を移動させるだけ。問題の本質的な解決にならない。まゆつばものだ」と批判した。
 
 「郵政改革もそうだったが、見せかけの改革に国民はだまされ続けている」。それが鳩山幹事長の言いたいことである。しかし国民を責める訳にはいかない。そのことを国民に理解させない責任は野党にもあるからだ。そこで民主党は与党と民主党の政策の違いを説明する政策ビラを作成しているという。イラスト入りでわかりやすくするので期待をして欲しいという話だった。

 終盤国会で民主党が最も力を入れようとしているのは、「消えた年金」問題である。社会保険庁の手続きミスで5千万件の年金記録が宙に浮いていると言われ、年金の支給を受けられない国民が多数存在する。それを政府が責任を持って調査し、救済する必要があると民主党は主張しているが、これに対して安倍総理は「再調査を行い、何らかの客観的な証拠があれば救済する」事を表明した。「そのためにも社会保険庁を解体して民間の組織にする改革が必要だ」と主張している。

 しかし社会保険庁を解体してしまえば、宙に浮いた年金記録を再調査することも難しくなるのではないか。しかも民間の組織になれば国会で追及する事も難しくなる恐れがある。

 だから消えた年金問題を解決するのが先で、社会保険庁を解体するのはその後だというのが民主党の立場だが、どちらの主張に国民が耳を傾ける事になるのか、それがこれから最大の注目点となる。

 鳩山幹事長は「次の参議院選挙で負けたら二大政党は無理だ」と悲観的な事を言ったが、1994年に小選挙区制度が導入されて以来、日本の政治は間違いなく二大政党制の方向に進んでいる。ただ小選挙区とは言っても比例代表並立制を採用しているため、単純に選挙で政権交代する形にならない。小党にも存立する余地があり、自民党と公明党が連立しないと参議院で過半数を越えないように、連立の時代が続いている。

 二大政党制に向かっているとは言え選挙による政権交代をまだ日本国民は経験していない。普通ならば小選挙区制を導入した国はそれほど時間を経ずに政権交代を経験することになるのだが、日本に本当にそれが起きるかどうか実は予断をゆるさない。

 2005年の郵政選挙で自民党は分裂選挙に持ち込むことで国民を熱狂させ、衆議院で三分の二を超える議席を獲得するという大勝を果たした。その選挙結果に一番驚いたのは当の自民党である。トータルの獲得票数ではさほど民主党と差がないのに、1位だけが当選出来る小選挙区制のなせる技で大勝利となった。このまま小選挙区制を維持すると逆の事が起こりかねない。いつの日か民主党政権が誕生することになる。そして連立相手の公明党にとっても小選挙区制は都合の良い選挙制度とは言えない。小選挙区制をかつての中選挙区に戻したいと考える勢力は消えていないのである。中選挙区制に戻れば政権交代はなくなり、一つの政党内での党首の首のすげ替えという擬似的政権交代に戻ることになる。

 さらに政権交代を阻むより大きな障害は日本の統治構造の頂点に位置する官僚勢力である。鳩山幹事長は「自民党の改革はことごとく改革らしく見せかけたまゆつばものだ」と批判したが、実は改革と言われるアイディアのほとんどは官僚の入れ知恵による。例えば「人材バンク構想」も財務省の官僚が作成したと言われる天下り批判をかわすためのアイディアである。それを官僚作成と思われないように官僚達は表では大反発をしてみせ、それをメディアに報道させる。官僚の大反対でつぶされそうだとメディアが報道すると、官僚にとって実は都合の良い改革案なのに国民はそれが本物の改革だと錯覚してしまう。

 かつての自民党と社会党が表で激突しながら、裏では手を握っていたように、この国の統治構造はいつもそのような目くらましを続けてきた。メディアは概ね統治構造の一端を担わされていることに気づいていない。

 自民党と官僚の合作である改革を「見せかけだ」として批判する民主党に連力が移ることを官僚が認めるはずはない。この壁を突き崩さない限り政権交代は難しい。民主党がやらなければならない事は、官僚組織の抵抗をいかに無にするかという事だ。そのためには正面から官僚と激突する事も必要だが、同時に官僚が今よりも希望を持てるような仕組みを創設することも必要になる。その知恵が出せるかどうか。政治は脅したりすかしたりしながら進めていくものだ。

 この原稿を書いているうちに安倍内閣の支持率が急落というニュースが飛び込んできた。消えた年金問題や松岡農林水産大臣も疑惑をもたれている官製談合事件の摘発があったからだと思われる。政治は一夜にして逆転する。悲壮感溢れた幹事長の表情も一変したのであろうか。

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5月28日(月)の「政治ホットライン」は下村博文官房副長官、30日(木)の「政治ホットライン」はインサイドライン編集長の歳川隆雄氏が出演します。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

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http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2005年3月、講談社+α文庫


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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