Calendar

2007年3月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Recent Comments

Recent Trackbacks

« 2007年2月 | メイン | 2007年4月 »

2007年3月27日

国会TVダイジェスト・ゲスト 森本 敏(拓殖大学海外事情研究所長)

今回の国会TV「政治ホットライン」には、拓殖大学海外事情研究所長・森本 敏さんをお迎えして、安倍政権の安全保障政策についてお聞きしました。

ダウンロードmp4
ダウンロードwmv

国会TVの視聴は年額¥10,500・月額¥945<税込>です。
お申し込み、詳細はこちらをごらんください。

2007年3月24日

世論誘導プロジェクト

1月29日、最高裁判所主催の「裁判員全国フォーラム」で、産経新聞大阪本社と千葉日報社が金を払って参加者を動員していたことが明らかになった。新聞社はフォーラムの共催団体で、一人あたり3千円から5千円で人材派遣会社などに参加者動員を依頼していた。記者会見した新聞社幹部は、空席を作らないために独自の判断で行ったもので、費用もフォーラムの事業費ではなく新聞社の経費から支出し、質問のやらせはないとしながら、報道機関としては「あるまじき行為だった」と謝罪した。

このニュースですぐ思い出したのは小泉内閣時代に行われたタウンミーティングのやらせ問題である。

小泉内閣は「国民との対話」と称して、政権のスタート当初から教育改革や司法改革などをテーマにタウンミーティングを行ってきたが、参加者を動員し、発言者を事前に用意して、一部には5千円の謝礼金を支払っていた事実が、昨年の臨時国会での教育基本法案の審議過程で明らかになった。

タウンミーティングの運営を請け負ったのは広告代理店「電通」、それに朝日新聞の子会社である「朝日広告社」で、1回のタウンミーティングに1千万円から2千万円という多額の費用が使われていた。国民の声を吸い上げる目的のタウンミーテイングで、国民の税金を使って政府の意向を代弁する人間が雇われ、それが普通の国民の顔をして発言していた。

そのときメディアは「決して許されない行為」、「あきれかえる税金の無駄遣い」、「国民軽視もはなはだしい」などと政府を批判していたが、その裏側で新聞社も似たようなことをやっていたのである。なぜ新聞社は自腹を切ってまでフォーラムの参加者を動員しなければならなかったのか。

「週刊現代」2月24日号にジャーナリストの魚住昭氏が寄稿した記事がその疑問を解き明かしてくれる。魚住氏は元共同通信記者だが、古巣の共同通信と電通が組んで巨額の政府広報予算を地方紙に流すための組織「全国地方新聞社連合会」が1999年に設立され、8年前から電通、霞が関、共同通信、全国の地方紙が一体となった世論誘導プロジェクトが作動していたというのである。

政府が世論形成を行いたい場合にシンポジウムなどの開催が決まると、共催者となった新聞社は、まず紙面に開催告知の「社告」を掲載する。次に「予告公告」を2度有料で掲載する。次に開催を伝える社会面用の記事を載せる。そして紙面の3分の2を使っての特集記事と3分の1を使っての広告を掲載する。特集記事は広告でありながら一般の記事の体裁をとる。政府公報であることが分かると世論形成に効果がなくなるためである。

こうして2005年度に裁判員制度導入のための広報で地方紙に使われた税金は3億数千万円にのぼる。裁判員制度フォーラムが1回開かれると新聞社には8百万円近い金が入る。1人5千円の金を払って動員しても十分に儲かる仕組みになっているのである。これは裁判員制度の広報の例だが、各省庁の広報でも同様のことが行われている。産経大阪本社と千葉日報に続いて河北新報社や西日本新聞社も同じような動員の事実を認めて謝罪した。

テレビやインターネットに押されて広告収入が激減している新聞社が政府広報予算に飛びつくのは分からなくもない。しかし金を払って「サクラ」を動員しながら、「会場には多数の市民が参加した」とか「聴衆は真剣に耳を傾けていた」とかの記事を書いたとしたら、これは読者を欺くねつ造である。また政府から広告費を受け取って掲載している特集記事を広告と明示しないのは、偽装によって政府の世論誘導に加担する行為である。今回の問題はそうしたことが8年前から継続して行われていたことを明らかにした。

権力が世論を都合の良い方向に導こうとするのは不思議ではない。しかしメディアが横並びで権力に協力し、しかも偽装や記事のねつ造まで行うというのはあってはならない話で、独裁国家のメディアと変わらない。いや独裁国家の国民は初めからメディアを権力の道具と見ているが、我が国のメディアはジャーナリズムの顔をしているからこちらの方が罪は重い。

こうした世論誘導プロジェクトのスタートが8年前というのが気になる。その前年に自民党は「報道モニター制度」をスタートさせた。テレビ・ラジオ・新聞の内容をチェックして、自民党にとって問題と思われる内容にクレームをつける仕組みである。こちらは世論誘導ではないが、メディアに報道内容を自主規制させる効果を持つ。それと政府広報の世論誘導プロジェクトがほぼ同時期にスタートしていた。

自民党がメディア対策に力を入れ始めたのは、93年の総選挙で野党に転じた事による。自民党はこの選挙で初めて過半数を割り込んだ。しかし数を減らしたのは小沢一郎、羽田孜氏らが自民党を割って出たためで選挙のせいではない。選挙に負けたのは社会党でこちらは議席が半減した。旧ソ連の消滅が選挙に大きく影響したのである。

過半数を割り込んだと言っても自民党は第一党で、他の野党と連立を組めば政権は維持できたのだが、小沢一郎氏の政治力がそれを上回った。いち早く8党派をまとめあげて細川政権を誕生させた。

ところがテレビ朝日の報道局長が「我々は非自民政権が生まれるように報道した。細川政権を生みだしたのはテレビだ」と豪語した。野党に転じた自民党がこれに過敏に反応する。報道局長は国会に証人喚問され、テレビ朝日はすぐに自民党に頭を下げた。報道機関の見識ではなく所詮は視聴率のために反自民を売り物にしただけだった。しかしこの時から自民党はテレビをどう利用するか、メディア・コントロールを強く意識するようになる。メディアは自ら墓穴を掘ったのである。

ところでこの最高裁判所の広報予算の問題を国会で追究しているのは社民党の保坂展人衆議院議員である。保坂議員は3月5日国会TVに出演してこう語った。

「最高裁は日本の司法の最高位の組織である。ところが裁判員制度を国民に理解させるため10億円を越える広報予算を手にしたところからおかしな事が起こり始めた。広報を請け負ったのは電通だが、選ばれる過程に談合まがいの不明朗さがあり、契約の仕方にも疑問がある。しかも予算は全額消化されておらず、3億円が行方不明になっている。やっているのが裁判官なので問題は深刻だ。これは日本の民主主義に関わる重大問題。情報をすべて開示してもらわなければならない。さらに税金を使った世論誘導が許されるのか、政府広報のあり方についても真剣に議論すべきだ」。

全くその通りでこの国の根本に関わる重大問題なのだが、メディアはこの問題をほとんど報道していない。追究している国会議員も保坂議員だけだ。そして最高裁判所の広報予算が組み込まれた平成19年度予算案はすでに衆議院を通過してしまった。

今、松岡農林水産大臣の「水」の問題で、メディアも議員も大騒ぎしている。国民受けする問題だから騒いでいるのだろう。それはそれで良いが、国民受けする低俗な問題を騒げば騒ぐほど、実は国家の基本に関わる重大問題を国民の目からそらす事が出来るという一面もある。権力はいつもそうした手法で生き延びてきた。

権力が世論を誘導しようとするのは古今東西変わらない。真理と言っても良い。一方で監視をしなければ権力は必ず腐敗する。それも不変の真理である。だからメディアと政治家が存在している。しかし「世論誘導プロジェクト」について誰も騒いでいないのはどうしたことなのか、そこにこの国の問題が

---------------------------------------------

3月30日(金)夜9時からの「言いたい放題・金曜ナイト」はインサイドライン編集長の歳川隆雄氏が出演。
26日に平成19年度予算案が参議院で成立。その後は「安倍カラー」の法案が次々登場。まずは国民投票法案と米軍再編法案が注目される。

2007年3月20日

国会TVダイジェスト~東京大学名誉教授の月尾嘉男氏

今回の言いたい放題金曜ナイトは、東京大学名誉教授の月尾嘉男氏をお迎えし、日本の食糧自給率、エネルギー自給率の今後についてお話を伺いました。

ダウンロードmp4
ダウンロードwmv

国会TVの視聴は年額¥10,500・月額¥945<税込>です。
お申し込み、詳細はこちらをごらんください。

2007年3月19日

北方領土二等分論

 戦後日本が解決しなければならない外交課題として、北朝鮮との国交正常化とロシアとの平和条約締結がある。北朝鮮との国交正常化のためには日本統治時代の「過去の清算」と拉致問題の解決が前提となり、ロシアとの平和条約締結のためには北方領土問題が解決されなければならない。
 
 小泉前総理は北朝鮮との国交正常化に意欲を見せ、自らが平壌に乗り込んで日朝平壌宣言に調印したが、北朝鮮のミサイル実験や核実験によって宣言は有名無実のものとなった。安倍総理は拉致問題の解決を政権の最優先課題としているが、すでに解決済みとする北朝鮮の前にこちらも状況は容易でない。対北朝鮮外交が思うに任せない中、昨年末に麻生外務大臣が北方領土問題の解決策として北方領土面積二等分論に言及したことが注目された。

 12月13日の衆議院外務委員会で、麻生外務大臣は民主党の前原誠司議員の質問に答えてこう発言した。

 「二島だ、三島だ、四島だという話になると、これはこっちが勝って、こっちが負けだという話みたいになって、双方ともなかなか合意が得られない(中略)したがって、半分だった場合というのを頭に入れておりました(中略)現実問題を踏まえた上で双方どうするかというところは、十分に腹に含んだ上で交渉に当たらねばならぬと思っております」

 日本が固有の領土だと主張している歯舞、色丹、国後、択捉の四島のうち、歯舞と色丹の二つは北海道の属島とも見られ、1956年の日ソ共同宣言でも平和条約締結後の返還が確認されている。しかしこの二島の面積は北方四島全体の7%に過ぎない。次いで北海道に近い国後島を加えても36%、択捉島の四分の一を加えるとちょうど50%位になる。したがって面積二等分論を島の数で表現すると三・二五島返還論ということになる。

 これまで四島返還という原則は原則として、交渉の落としどころとして鈴木宗雄議員が主張した二島先行返還論や河野太郎議員が主張した三島返還論などがあったが、面積二等分論は領土面積で言えばそれより四島返還に近くなる。

 ところで面積二等分論を最初に主張したのは麻生大臣でも前原議員でもない。公明党の高野博師参議院議員である。高野議員は昨年4月5日、参議院決算委員会で麻生外務大臣に対し、中国とロシアが戦略的パートナーシップを結ぶため、プーチン大統領と胡錦濤国家主席との間で国境線問題がどのように解決されたかを説明した。それが面積二等分のやり方である。中国はベトナムとの間でもそのやり方で国境線を画定している。そして高野議員はこう言った。

 「1999年の世論調査ですが、国民の80%は日ロ平和条約は不可欠(と考え)、しかし82%の人はその阻害要因は領土問題だと(考えている)、2000年の場合には二島返還が34%、四島返還が32%、二島返還の方が少し増えている。一方で26%の国民は日本は領土問題に固執すべきではないという意見も強くなりつつある。多くの日本人は日本とロシアのパートナーシップ、友好関係、これが領土問題よりも重要だという、こういう現実があります。
 
 また一方で、ビザなし交流もかなり進んでいますので、相互の理解というのも相当進んでいる。ロシア人と共生することもできるという日本人も地元地域では増えている。(中略)今現在ロシアは景気はいい。しかし、いずれにしても資源に依存した経済構造ですから、構造改革をやって安定的な経済成長ができるようにする必要がある。そのためには日本の技術と資本が必要だという考えはあるだろう、シベリアの開発も日本とやる、やりたいという希望はあるだろうと思います」

 つまり原則論をぶつけあって現状を固定したままでいるよりも、双方の利益になる解決方法を考えるときロシアのプーチン大統領が中国との間で行った面積二等分は有効な方法で、日本の国民世論を考えても実現の可能性があると説いたのである。
 
 この発言に対して麻生外務大臣は「初めて聞いた説だが、頭が柔らかくてうらやましい」と感心して見せた。

 3月1日の国会TV「政治ホットライン」にその高野博師参議院が出演した。高野議員は外交官出身だが、勤務したのは主に中南米の大使館で、ゲリラに誘拐された日本人人質の救出に活躍したこともある。しかし外交官としてロシアとは無縁だった。
 
 それが何故北方領土問題に関心を持つようになったのかと言えば、2年前に知床半島が世界遺産に指定され、当時環境副大臣の高野議員が現地視察をしたことに始まる。知床から見る国後島は思っていたより近く、そちらからゴミが流れてきたりする。知床の海の環境を守るためにはロシア側にも協力してもらわなければならない。こうして高野副大臣はロシア大使館を訪れるようになり、それが北方領土問題を考えるきっかけとなった。

 中ロの国境線画定の経緯を見て面積二等分を「落としどころ」と確信するようになったが、「落としどころ」であるため公言するわけにはいかない。じっと胸に秘めていた。しかし北方領土問題には何の進展も見られない。当時の小泉総理に打診してみたが小泉総理は四島返還論者だった。そこで昨年4月に思い切って国会で質問をしてみたという。

 安倍政権が誕生した後、最初の予算委員会で安倍総理にも面積二等分論をぶつけてみた。しかし安倍総理からも慎重な反応が返ってきた。ところが昨年11月に大田公明党代表とモスクワを訪れた際、会談したロシアのデニソフ第一外務次官が「プーチン大統領は領土問題を凍結するつもりはない」と述べ、さらに中国との間で面積を二等分して政治決着した話をしてきた。高野議員が「北方領土でもその方式が取れないか」というと、デニソフ次官は「いい質問だ。ただ線を引けばいいという問題ではない。世論の問題もある」と言い、そこで話は終わった。

 高野議員は「プーチン政権の力の強さを考えれば、ロシアの世論はプーチン次第である。問題は日本の世論だが、国会で質問した後も思ったより反発は少なかった。プーチン政権の力の強いうちに実現させるのが一番で、それなら今年前半がチャンスだ」と番組で語った。

 考えてみれば安倍政権が最も力を入れている拉致問題は今のところ全くのこう着状態である。日本は次の一手が打てない。アメリカに協力を求める話ばかりが聞こえてくるが、アメリカが金正日政権を打倒して北朝鮮の体制を変えようとしているのならばともかく、そうでなければ協力にも限界がある。アメリカ、中国だけでなくロシアとの関係を強化して北朝鮮を揺さぶる方法も考えなければならない。
 
 豊富なエネルギー資源によって経済成長が著しいロシアは中国、インド、ブラジルと並ぶ新興経済国家の一つである。今後の経済発展を考えれば日本の技術力は魅力であるに違いない。そしてロシアは歴史的な経緯からして北朝鮮に影響力を行使できる強力な存在である。
 
 実は昨年11月にロシアの二つの諜報機関のトップが来日し、官邸の要人や警察庁長官と密かに会談したという情報がある。拉致問題での協力関係を話し合った可能性が高い。

 安倍政権が拉致問題と領土問題の解決をリンクさせて日ロ外交を進展させることが出来れば、支持率低下を反転させ政権浮揚のきっかけを作ることが出来る。領土問題の解決は平和条約の締結という歴史的偉業につながり、日本にとっては水産資源と海底資源の確保という経済的メリットもある。
 
 高野議員は今年前半がチャンスだと言ったが、それは7月の参議院選挙前を意味する。そう考えると日ロ関係の進展、とりわけ領土問題の解決は一石二鳥どころの話ではない。安倍政権にとって厳しい情勢の参議院選挙を勝利に導く切り札となる可能性もある。うまい事ずくめの話だが、北方領土面積二等分論が本当に転がりを見せる事になるのだろうか。これまで全く進展のなかった領土問題である。

 2月28日、日ソ共同宣言に署名した故鳩山一郎元内閣総理大臣の銅像がロシアから日本に寄贈され、東京・音羽の鳩山会館に於いて除幕式が行われた。式典には来日中のロシアのフラトコフ首相、安倍総理大臣、麻生外務大臣らが出席した。式の後で民主党の鳩山由紀夫幹事長は「四島返還を主張しているだけでは千年経っても北方領土は返らない」と発言した。そして安倍総理は3月7日に行われた内閣記者会との会見で、今後の課題として北方領土問題の解決を強調して見せた。

---------------------------------------------

3月22日(木)の夜9時からの「政治ホットライン」は拓殖大学海外事情研究所長の森本敏氏が出演します。

2007年3月15日

国会TVダイジェスト~社民党衆議院議員の保坂展人氏

今回は社民党衆議院議員の保坂展人さんをスタジオにお迎えしました。保坂氏は最高裁の裁判員制度の問題について、今国会で鋭く追及をしていますが、何が問題なのか詳しくお聞きしました。

国会TVの視聴は年額¥10,500・月額¥945<税込>です。
お申し込み、詳細はこちらをごらんください。

ダウンロードmp4

ダウンロードwmv

2007年3月12日

すきま風

不思議なコメントだった。3月7日夜、安倍総理と小泉前総理、中川幹事長が帝国ホテルで食事を共にした後の中川幹事長のコメントである。官邸と党の間にすきま風が吹いていると言われていることについて、小泉総理は「俺が総理の時は暴風雨だった。官邸と党が一体となってどんどん大きな台風を吹き荒れさせたらいい」と言ったというのである。そう言われて安心したような口振りの中川幹事長に誰もが首をかしげたのではないか。 

小泉時代の自民党と官邸の間には確かに嵐が吹き荒れていた。小泉政権の5年間は自民党抵抗勢力との闘いの連続だった。その結果「小泉前総理は改革者である」というイメージを国民に抱かせる事が出来た。抵抗勢力がいなければあれほどの国民的人気は得られなかった。「自民党をぶっ壊す」という小泉前総理のその言葉に国民は熱く期待した。自民党は反小泉を象徴する悪役だった。しかしそうした時でも自民党の幹事長は常に小泉前総理に絶対的に服従する側近であった。

小泉政権がスタートしたとき、小泉総理は党内少数派でしかなく、群れることの嫌いな一匹狼には仲間も子分もいなかった。唯一心を許せたのは絶対的忠誠を誓う山崎拓幹事長である。だから反小泉勢力は陰に陽に山崎幹事長の失脚を狙った。自民党内が森元総理まで含めて山崎幹事長の続投を認めない包囲網を敷き、それに抵抗できないと思ったとき、小泉前総理は山崎幹事長を副総裁に棚上げし、安倍官房副長官を幹事長に抜擢する人事を行って周囲を驚かせた。安倍幹事長もまた小泉総理には絶対服従である。というより安倍幹事長は表向きの顔で、事実上党内の取り仕切りは山崎副総裁が行ったと私は思う。そして安倍幹事長の次はこれも誰もが驚く武部幹事長の登場だった。本人も認めるように小泉前総理のイエスマンであることだけが取り柄の人物だ。

だから自民党と小泉前総理の間に嵐が吹き荒れていても、幹事長と総理の間にはすきま風など吹くはずがなかった。ところが今問題になっているのは安倍総理と中川幹事長の間に吹いているすきま風のことなのである。まさか小泉前総理がそれを台風にしろと言ったわけではあるまい。

安倍政権にはそもそも成り立ちからして小泉前政権の時のような抵抗勢力はいない。しかし最近の支持率低下に伴って党内に不満がくすぶり始めた。小泉前総理がそのことを指して言ったのだとすれば、それは今言われているすきま風とは違う話である。

総理を辞めて以来一切表に出ないことで、これまでの総理経験者とは異なるある種の美学を感じさせてきた小泉前総理がなぜこの時期にこのようなパフォーマンスに付き合わなければならないのか。

私はかつて予想外の選挙大勝が小泉前総理に総裁任期の延長よりも裏にまわっての政界再編工作の仕掛けを決意させたのではないかと書いたことがある(「小泉二代目政権」)。

だから若い安倍総理を表に立て、自分は裏にいてじっと政局の行方に目をこらす。考えるのは自民、民主両党の分裂と再編である。小さな政府と大きな政府、成長重視と分配重視、単独外交と国際協調、そうした形で二大政党制をもう一度やり直す。言い換えれば小沢一郎主導で始まった二大政党制の流れを消して、小泉純一郎が主導する二大政党制の流れを作る。そうした作業を行うために表から姿を隠して裏にまわる。そう予想した。しかし重大な節目には必ず姿を現す筈で、それがいつ、どのような形で登場するかに注目しているとも書いた(「見えない二人」)。

そう書いた時には時期としては参議院選挙の直前で、しかも劇的な形で登場するのではないかと予想していた。しかしシナリオに狂いが出るほど安倍政権がピンチに立てばその限りではない。どうもそのような事態が訪れてきたのではないか。
2月7日の赤坂「津やま」での中川幹事長、竹中平蔵氏との会食、2月20日の国会内での塩崎官房長官、中川幹事長との会談、これらはいずれね中川幹事長からの要請によるものであった。今回の会食は、表向き安倍総理が呼びかけたとされているが、しかし最もその必要があったのはやはり中川幹事長である。そして小泉総理にもその必要があった。

安倍総理の側には小泉総理から激励される姿を国民に見せなければならない必要があったとは思えない。支持率が低下している事は気にしているだろう。しかしだからこそ最近の安倍総理は自分の思い通りに強気に事を進めるパフォーマンスを繰り広げているのである。

国会では、最重要法案と位置づけられた国民投票法案で、与党は昨年まで民主党との協力関係を何よりも優先していた。民主党の要求を丸飲みするのもやぶさかではなく、民主党も5月3日までの成立を暗黙のうちに了解していた。ところが独自色を打ち出したい安倍総理は憲法改正を参議院選挙の争点にすると表明した。選挙の争点と言われれば野党もすんなり協力するわけにはいかない。さらに与党は国民投票法案の単独採決も辞さないと言い出した。こうなると国会は他の法案も含めてことごとく数の力で押し切ろうとする構えに見える。

国会運営だけではない。人事でも柳沢厚生労働大臣の辞任要求をはねのけたのに続いて、今度は松岡農林水産大臣が光熱水費の説明を拒んでいる問題で、安倍総理はこれも養護する姿勢を示した。

さらに衛藤晟一氏の復党問題では、自民党党紀委員会が10対7という僅差で認めた事について、「(党内に)不満なんかくすぶってませんよ。誰がいます?いないんですよね」とコメントしてみせた。

驚くほど強気である。その安倍総理が何故マスコミ注視の中で小泉総理から激励を受けるパフォーマンスをして見せなければならないのか。

夕食の席で小泉総理は「万が一参議院選挙に負けたからと言って、政権選択の選挙ではない。堂々と胸を張って、野党の主張にも耳を傾けてやりますと言えば良い」と述べたと中川幹事長はコメントした。安倍総理は黙って聞いていたという。中川幹事長のコメントによると、安倍総理が選挙の帰趨を心配して小泉総理に助言を求めたかのように聞こえるが、選挙の帰趨を最も心配しているのはむしろ中川幹事長の方ではないか。ウイングを左に広げることで幅広い支持を獲得し、選挙を有利に進めようとした戦略が、安倍総理によって否定されつつある。

おそらく小泉前総理からすれば、初めは慎重すぎるほどの安全運転をしていた安倍総理が、支持率低下を契機に急にスピードを上げて走り出し、それが自分が考えていたのとは違う方向に暴走する可能性が出てきたので、まずは平常心を取り戻せと諌める必要を感じたのではないかと思う。

いずれにしても中川幹事長のコメントはこれまでその一つ一つが安倍総理のひ弱なイメージを国民に向けて発信するものであった。それが安倍総理と中川幹事長のすきま風の一因となり、そのため逆に安倍総理は強気一辺倒を打ち出すことになったのではないか。これが続くとすきま風は本当に暴風雨になる可能性がある。

---------------------------------------------

3月14日(水)夜9時は花岡信昭元産経新聞論説副委員長が出演する「政治ホットライン」、16日(金)夜9時には月尾嘉男東京大学名誉教授が出演する「言いたい放題・金曜ナイト」を放送します。

2007年3月 9日

国会TVダイジェスト「言いたい放題・金曜ナイト」

3月2日に放送した「言いたい放題・金曜ナイト」をダイジェストでお送りします。今回は、毎日新聞編集委員の村田昭夫さんをお迎えし、支持率が急落した安倍政権がこの先、どうなっていくのか、読んでいきます。

国会TVの視聴は年額¥10,500・月額¥945<税込>です。
お申し込み、詳細はこちらをごらんください。

ダウンロード(mp4)
ダウンロード(wmv)

2007年3月 5日

徹夜の攻防

平成19年度予算案が徹夜の与野党攻防を経て3日未明に衆議院を通過した。予算案が未明に可決されたのは20年ぶりというから、与野党馴れ合いの55年体制末期以来ということになる。55年体制では、選挙で勝つことを放棄した野党が、時の政権を揺さぶる唯一の手段として予算を成立させない戦術を使った。予算委員会の審議に一切応じず、会計年度が始まる4月を過ぎても予算が成立しないと、政府の機能は麻痺状態になる。よく「刑務所の飯が出なくなる」と言われたが、行政の長である総理大臣は責任をとらざるを得なくなる。1989年、5月に入っても予算が成立しなかったため、竹下総理は予算の成立と引き換えに退陣した。しかし総理の首を取ったからといって野党が権力を握れるわけではない。自民党内の他の実力者が権力者になるだけで、自己満足のために野党は国民生活にもプラスにならない審議拒否をやってきた。

20年ぶりという異例の徹夜国会について、与党は「大義なき抵抗戦術」と野党を批判し、野党は「数の暴力で採決が強行された」と与党を批判している。一体何が起きたのか、3月2日の出来事を時系列で紹介する。

この日与党は午前9時から始まる予算委員会で平成19年度予算案の締めくくり質疑と採決を予定していた。予算の年度内成立にはこの日がタイムリミットである。野党は事務所費問題で辞任した佐田前行革担当大臣と違法な就労形態が指摘されているキャノンの御手洗富士夫会長の参考人質疑を行わない限り採決には応じないとして、これを拒否していた。しかし前日に金子一義予算委員長が職権で開会を決めた。

午前9時、締めくくりではなく一般質疑ということで野党も出席し委員会が開かれた。冒頭、馬淵澄夫議員が松岡農水大臣と高市内閣府担当大臣に質問を求めたが、二人とも不在のため2時間にわたって審議がストップした。11時すぎに二人が出席して審議が再開され午後1時すぎまで質疑が行われた。午後2時過ぎからいよいよ締めくくり質疑が行われたが、質疑者は自民党議員一人で、30分ほどで質疑は終了、委員長は野党に質問を求めるが野党は質疑者の名簿を提出しない。委員長席を野党の理事が取り巻いた状態のまま3時間近くが経過した。午後5時半、金子委員長が質疑終了を宣言すると野党議員が委員長席にどっとつめかけ、マイクを奪うなどしたため、委員長は討論なしで採決を行い怒号が飛び交う中で予算案は可決された。その後総務委員会と財務金融委員会が相次いで開かれ、いずれも与党議員だけが質疑を行い、野党議員が委員長席を取り巻く中で予算関連法案が可決された。

午後5時から予定されていた本会議は開会が夜の10時半にずれ込んだ。野党は予算委員長、総務委員長、財務金融委員長の解任決議案を提出、いずれも「記名投票」を要求したことから、これだけで5時間以上の審議が必要だと思われた。野党は徹夜の国会にする覚悟だ。しかし既にこの時点で参議院では5日の月曜日に予算委員会を開くことを与野党が合意しており、予算が衆議院を通過することは全員が分かっている。分かってはいるが野党は「抵抗する」姿勢を見せようというわけだ。誰に見せるかと言えば国民である。それならば国民の共感を呼ぶ見せ方をしなければならない。

本会議ではまず民主党の枝野幸男議員が予算委員長解任決議案の理由を述べた。これがいけない。時間を長く引っ張って予算の採決時間を先延ばししようと言う意図なのだろうか、だらだらと冗漫な演説が続いた。これでは国民の共感を得るどころか、これを見たら民主党の支持率がまた下がってしまうような演説だ。

外国議会でも長い演説を行って野党が抵抗する戦術はある。しかしその場合でも、演説によって議場にいる議員達を説得しようとする情熱がなければ、ただ反発を呼ぶだけで何の効果もない。

演説をするのも政権批判をするのも政治家だけの仕事ではない。評論家やジャーナリストも同じ事をやっている。しかし政治家の演説が他と違うのは、常に「命がけ」でなければならないという事だ。選挙の当落に直結するという意味で政治生命にかかわり、さらには文字通り命を狙われることもある。だから政治家には演説に魂を込めて欲しいと思う。口先ばかりの人間は本来政治家には最もふさわしくないと言わなければならない。ところが最近の政治家には弁舌をテクニックとして考えるタイプが多い。テレビ局のアナウンサーやタレントの言葉が耳には心地良くとも心に残らないように、弁舌さわやかでも心に響く弁論が少ない。むしろ年配議員の方に木訥でも印象に残る言葉を吐く人が多い。

いずれにしてもだらだらと1時間半ばかり演説が続いたところで河野議長が延会手続きのため休憩を告げた。日をまたいで午前0時半に本会議が再開され、冒頭で自民党の二階国対委員長らから解任決議案の説明を15分以内にする緊急動議が提出された。枝野議員の長演説に対する対抗措置である。ところが休憩の間に民主党の小沢代表が議場から退出したようで、反対討論に立った自民党の馳議員がそのことを指摘する。確かに徹夜の攻防は体にこたえる。それならば何故そんな戦術をとるのか辻褄が合わない。午前1時50分、予算委員長解任決議案は大差で否決。続いて2時半頃、総務委員長の解任決議案否決。河野議長が退場し横路副議長に交代したところで、なにやら与野党折衝が始まり、しばし議事は中断。結局、財務金融委員長の解任決議案は提出されないことになる。徹夜も辞せずだった筈が、結局は早くやめようという訳だ。午前3時前にいよいよ平成19年度予算案が議題となる。民主党の馬淵澄夫議員の反対討論は良かった。怒りが伝わってきた。松岡農水大臣の秘書が二つの名前を使い分けているという奇怪な事実の暴露もあった。この人の演説はうまくはないが、何かを伝えようという気迫がある。これが政治家の弁舌だと思う。こうして午前3時52分、予算案が可決された。

本会議後の民主党鳩山幹事長のコメントの中に「こうなったら選挙で国民に判断を求めよう」というのがあったが、ちょっと待ってくれと言いたい。国会はまだ終わっていない。予算が衆議院を通過しただけだ。それで山場を超えたという考えは55年体制の「予算を人質に政権を揺さぶる」という悪しき慣行に毒されてはいないか。これから安倍政権が「安倍カラー」と考える重要法案が次々に出てくる。それに対して国民の心に響く弁論を展開して欲しい。最後は多数を占める与党に勝てるわけはないのだから、成立を阻止は出来ないが、国民の心に残る言葉を発する事が出来れば、それが選挙で生きてくる。それこそが野党のやるべき事ではないか。

大体が今度の参議院選挙はの争点は憲法でも格差是正でもないと私は思う。衆議院で三分の二を占める巨大与党に、今後もやりたい放題やらせるようにするかどうかを国民に判断させる事ではないか。与党が参議院を制すれば、それこそ何でも出来るようになる。それで良いのかと国民に問うことではないのか。そう考えれば、野党がやるべき事は与党にやりたい放題にやらせ、その問題点を浮き彫りにし、それに対するメッセージを国民に発する事だと私は思う。

もう一つ言わせてもらえば、あれもこれもと取り上げて問題を拡散させてはいけない。問題を絞り込むことが必要だ。去年の通常国会では4点セットと称して、耐震偽装、官製談合、BSE、ライブドア問題を取り上げたが、かえって何がなんだかわからないまま偽メール問題で沈没した。

臨時国会の教育基本法改正案でも、愛国心、いじめ問題、タウンミーティングのやらせ問題と色々追及したあまり、肝心の「教育への国の関与」の問題を浮き彫りにすることが出来なかった。

通常国会もここまでは、何を中心に追及しようとしているのか、政治とカネの問題なのか、厚生労働大臣の失言問題なのか、財務大臣と沖縄の問題なのか、雇用の問題なのか、社会保障の問題なのか、今のところよく分からない。問題を色々取り上げるのは良いが、それを並列に並べるのではなく、立体的に組み立てて見せなければ国民には届かない。

政府与党にしてみれば、スキャンダルがどんどん出てきてくれた方が、問題が拡散されて政権運営が楽になると言う面もある。野党には組み立てる構成力が必要なのだ。

徹夜の攻防を見ていたためか野党に文句を言いたくなった。国民の共感と離れた所で物理的抵抗を続けてみても、ほとん
ど意味がないことを野党は認識して欲しい。

---------------------------------------------

3月5日(月)は社民党の保坂展人衆議院議員が「政治ホットライン」に出演、最高裁の広報費問題からタウンミーティング問題の核心部分まで、税金を使った世論誘導の実態など話してもらいます。

2007年3月 2日

国会TVダイジェスト「言いたい放題・金曜ナイト」

2月23日(金)の「言いたい放題・金曜ナイト」の模様をダイジェストでお送りします。ゲストはインサイドライン編集長の歳川隆雄氏。テーマは支持率低下がとまらない安倍政権の行方、安倍首相と中川自民幹事長の冷え切った関係の行方について、歳川氏が鋭く読み解きます。(文責・事務局)

国会TVの視聴は年額¥10,500・月額¥945<税込>です。
お申し込み、詳細はこちらをごらんください。

ダウンロード(mp4)
ダウンロード(wmv)

Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
↓ ↓ ↓
国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.