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国会TVダイジェスト『政局放談』12月20日放送 »

多極化時代の日本外交(1)

 国会は与党と野党が争う所、野党が政府を攻撃する所というのが一般的な見方だと思う。
 
 議会制民主主義は国の未来のためにどのような政策を選択するかを政党が競い合う仕組みなので、党派性が前面に出て争う事になるのは避けられない。
 
 しかし党派性がすぎると、党利党略のために重箱の隅をつつくような質問が繰り返されたり、スキャンダル追及に拍車がかかったりで、かえって国民をうんざりさせることにもなる。
 
 ところが国会には与野党が一緒になって日本の進路を考え、議論をする場がある。参議院に設置されている「調査会」で、委員会と違い法律をつくる所ではない。国家の将来について基本的な方向を形成するための勉強会のようなものだ。法案の審議でないためメディアが取り上げることはほとんどなく、国民はその内容を知らない。現在参議院には「国際問題調査会」、「少子高齢調査会」、「経済・産業・雇用調査会」の三つの調査会が設置されていて、それぞれが日本の中長期的課題を3年がかりで議論し、報告書にまとめることになっている。

 メディアが伝えることのない調査会の議論を紹介したいと思う。ニュースにならないことが意味のないことではないからだ。今回は「多極化時代の日本外交」というテーマに取り組んでいる国際問題調査会のある日の議論を紹介する。日本外交のあり方を巡って議員個人個人の考えと思いが伝わってくる。

 議論の口火を切ったのは大阪日々新聞社長から政治家になった自民党の田村耕太郎参議院議員である。田村議員は外交政策に対する批判の元は何かという点から話を始めた。
 
 「日米関係、日中関係、日韓関係に限らず、ほぼすべての外交政策に対する批判の源泉は二つの過剰な期待からくると思っております。相手の国に対する過剰な期待と日本の外交能力に対する過剰な期待。日米関係でいえば、アメリカはもっとこうすべきだ、アメリカはこう言えばこうしてくれるだろう。日本はこういう毅然とした物の言い方をすべきだ。こういうものが外交政策の批判の源泉にあるのではないかと思います」。

 批判から望ましい外交関係が生まれる訳ではない。外交を考える際には相手の国力とお互いの立場をしっかり認識する事から始めるべきである。田村議員は日本にとって最も重要な二国間関係である日米関係について、まずアメリカと日本の国力を比較してみせる。

 アメリカの人口は世界の5%にすぎないが、GDP(国内総生産)は世界の3分の1以上を占め、2位の日本から6位の中国までの合計を上回る。世界貿易に占める割合も、輸出で12.3%、輸入で19%と、2位のドイツの倍以上ある。特許件数も世界の約3割がアメリカのものであり、世界の売上げ上位500社のうち192社がアメリカ企業、株式時価総額上位1000社のうち488社がアメリカ企業である。またアメリカには国民の活力の源泉である若さがある。2050年の人口の中央値はアメリカが36.2歳、ヨーロッパは52.7歳になる。
 
 次に軍事力。アメリカの軍事費はおよそ4300億ドルで、これは世界全体の45%を占める。軍事支出2位から11位までの国の合計より大きい。先端的な軍事技術の研究開発費に至っては英独仏総計の倍以上を掛けている。
 
 経済力と軍事力だけではない。ソフトパワーで見ると、インターネット情報のうち英語が占めるのは85%、ハリウッド映画の割合は世界映画全体の85%、2002年度のハリウッド映画の売上げは約510億ドルで、延べ観客数は26億人。アメリカ文化の典型と言われるマクドナルドは世界100か国以上に延べ3万店以上の店舗を抱える。 

 アメリカは人類史上ずば抜けた大国である。今アメリカは横暴でわがままで独り善がりだと言われるが、もし、我々日本が今のアメリカと同じぐらいの国力を持つ立場だったら、今のアメリカよりも寛大で謙虚で国際協調的になるだろうか。過去のローマ帝国やモンゴル帝国などと比べて、アメリカは極端に傲慢で国際協調無視と言えるだろうか。

 それでは日本の国力はどうか。経済力では世界第2位だが、人口規模とその若さを失いつつあり、経済でも中国やインドに今世紀中に追い越される可能性が高いと言われる。
 
 政治力についても、アジアの盟主候補と言われながら、隣国との関係も行き詰まったままである。
 
 軍事力に関しては、軍事支出は多いが、ほとんどが人件費で、軍備に使われるのはそのうちの約3割、アメリカから突出した対潜哨戒能力、防空能力ばかりを求められ、そのための高額兵器、イージス艦とか哨戒機とかパトリオットの購入を求められてきたので、その他の兵器購入に回せるお金はほとんどなく、自立できる軍事力ではない。
 
 一次エネルギーの自給率は2割に満たず、食料自給率は4割ほど。冷静な現状認識を持てば、アメリカに物を申して、アメリカにこっちの言うことを聞けよという立場ではない。
 
 では日本はどうすればよいのか。そこで田村議員は超大国アメリカの外交政策に影響を与えるためのネットワークづくりを行うよう提案する。
 
 「チャーチルがこう言っています。アメリカは常に正しいことをする、ただしすべての代案を試みた後にだという名言を残しました。
 
 長い目で見れば、分断された世論や政策がぶつかり合いながら、失敗しながら、最後は世界にとって望ましい政策を取ってくる傾向が今まで強かったわけです。しかしながら、過去に比べて影響力がけた外れに大きいため、試行錯誤の過程で多大な迷惑をたくさんの国に掛けているというのが現状ではないかと思うんです。ただ、アメリカの外交は常に変化するという認識を我々は更に持たなければならないと思います」。
 
 「この調査会にもアメリカ留学した議員が増えていますし、官僚もアメリカ留学経験者がたくさん出てきています。アメリカは、学閥意識は日本以上だと思います。そのネットワークを生かす、こういうことが大切ではないかと思います。
 
 参議院は6年の任期があります。フランスや南米では、議員を議員のステータスのままアメリカの大学院に派遣して滞在させ、そのステータスを利用して人脈づくりをさせている国もあります。より任期が長い参議院こそ、長期的視野が不可欠な外交をやがては担うべきだと私は思っています。超党派でアメリカに一定期間、国としてネットワークづくりのために議員を派遣する、こういうこともいいのではないかと思いますが、皆さん、いかがでしょうか」。

 アメリカの外交政策は決して不変のものではなく柔軟に変わりうるものなので、その外交政策に内側から影響力を行使することを考えたらどうかという提案である。

 現在のブッシュ政権の外交政策に影響力を与えているネオコンはユダヤ系アメリカ人が創設した。そのためアメリカ外交は極端にイスラエル寄りになったと言われている。
 
 ローマ帝国の昔から帝国の内懐に入り込んで影響を与えようとしたユダヤ人がいたことを歴史は教えている。それは他民族の攻撃にさらされ続けてきたユダヤ民族が生き残るために生み出した知恵なのだろう。ローマ帝国やアメリカのような中核国家に対する周辺国家としてユダヤと日本は共通しながら、鎖国によって平和を享受してきた日本人にユダヤ人の真似は出来ない。幕末の黒船来航以来、日本人は「攘夷」と「開国」の間を揺れ動き、その後も「鬼畜米英」から「アメリカ万歳」へ、そしてまた「反米」、「嫌米」と「対米従属」の間を揺れ続けている。
 
 しかし今、アジアの超大国になろうとする中国もアメリカに多くの留学生を送り込み、アメリカの要人との間にパイプをつくりながら、将来に備えようとしている。
 
 田村議員の言うように日本もアメリカと相対するだけでなく、アメリカの内懐に入り込み、アメリカの外交方針に影響を与えるような戦略を持つべき時に来ているのではないだろうか。

 その上でこの戦略を効果的にするために日本が持たなければならないカードとして田村議員は二つのことを挙げている。
 
 一つは隣国である日中、日韓の課題をできる限りスムーズに解決し、成長するアジアの利益を代表してアメリカに物申すようにするため、アジア経済のための自由貿易協定や更なる経済統合の中核となること。
 
 もう一つは日本が戦略的にアメリカの安全保障上の根拠地であることを最大限に利用することである。アメリカ軍の装備をサポート出来る工業力や技術力を持ち、地理的にもアメリカの安全保障上の戦略拠点に位置している日本はアメリカにとって必要不可欠の存在である。それを自覚し対米カードに使おうという考えである。
 
 後者はその通りだろうが問題は前者である。日本が果たして中国、韓国との関係をスムーズに改善し、アジアの利益を代表する立場に立てるのか。ここで対アジア外交をどうするかという問題が浮上してくる。

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12月28日(木)夜9時から今年最後の「コール・イン」番組が放送されます。ゲストは高野孟インサイドライン編集長です。どうぞご質問をお寄せ下さい。

来年政治の世界は選挙一色になり、とても政策を冷静に議論する年にはなれません。国会も対決色が強まります。その前に国会は対決だけではないという内容のコラムを2回にわたり紹介します。

それでは皆様良いお年をお迎え下さい。

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公明党がポリシーを与党圏にいたいとしたことから チェンジングサイクルが働かなくなったようなきがしているけど どうなの高野さん

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

BookMarks

日本初の政治専門チャンネル!
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国会TV
http://kokkai.jctv.ne.jp/

-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

-----<編書>-----


『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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