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11月24日放送「言いたい放題金曜ナイト」ダイジェスト »

教育基本法を巡る議論(3)

食の教育を論じたのは民主党の山田正彦衆議院議員である。

 学校給食は小学校で99%、中学校で70%が実施されているが、そのうち和食の割合はそれぞれ46.8%と48.5%だという。山田議員は平成14年から地場産の食材を使って完全和食を始めた長野県真田町の小学校の例を挙げてこう述べた。

 「最初は大変な抵抗があった。まず子供が嫌だと言うし、父兄も嫌だと言うし、みんなが嫌だと言ったんだけれども、その教育長さん、多分強引に押し切ったんでしょうが。それでやってみると、まず第一に言えることは、キレる子がいなくなったと言うんです。普通、荒れた学校ですといろいろな形で暴れたり何なりしますけれども、あるいは先生に向かったりということがありますが、食べ物でこんなに変わるんですよと。そして、小魚、例えばイワシとかサンマとか、そういった魚を丸ごと食べられるようにしている。必ず魚を中心として、しかも骨を食べられるようにし、いわゆるミネラルとかカルシウム、そういったものを十分にとらせるようにしましたと。もちろん、みそ汁もですね。それによって、最初は学校給食の担当者も大変嫌がっておりましたが、子供たちが食べ残しも少なくなったし喜ぶようになったと言うんですね」

 さらに山田議員は日本の農業の自給率を高め、農業の振興を図る意味からも、学校給食を地元産の食材を使いそれを地元で消費する「地産地消」の対象にして、その事を教育基本法に書き込むべきだと主張した。

 「これは非常に大事なことだと思うのですが、学校給食における地産、いわゆる地場産物というのは、これをちょっと調べさせていただきましたら、例えば長崎県の場合は長崎県全体のものを、県産のものを使っている、そういう都道府県の県産、都道府県内産と言っていいんですかね、それを使用しているというのが21.2%。ところが、本当の、例えば真田町だったら真田町のすぐそばの地産地消でできたものを使っているというところは、この統計から見ると、何%にしかならないんじゃないかと思います。

 そうすると、かけ声だけで地産地消、学校給食にと叫んでもどうしようもない。そして、今申し上げましたように、御飯食、和食にしても、望ましいと言うだけで、指導すると言うだけでもしようがない。
 
 やはり、本当にここは、学校給食を教育基本法の中にきちんとうたって、その方向を示す必要があるんじゃないかと思います」。山田議員はそう述べた。

 学校給食というと筆者の世代はコッペパンに脱脂粉乳というメニューを思い出す。和食の学校給食などお目にかかることはなかった。戦後の食糧難という事情があったのかもしれないが、当時は今とは逆に「子供の健康にはパンと乳製品が適している」という教育が盛んに行われた。

 「ご飯を食べるとビタミンB1が不足して脚気になる」とか、「ご飯を食べると頭がぼける」とまことしやかに教えられた。高名な学者が栄養学の見地からそのように説いて、学校の教師もそう教えた。戦後、日本の家庭の朝食が圧倒的にパン食になったのは、そのせいだと思う。

 しかし後年、我々が学校給食でコッペパンと脱脂粉乳を食べさせられた背景には、余剰農産物を日本に売りつけるアメリカの意図があったことを知った。

 1981年、筆者はアメリカが水田面積を増やしていることを知り、その理由を取材するためアメリカに行った。アメリカの最大のコメどころはアーカンソー州のミシシッピー川流域である。地平線まで続く広大な水田で米作が行われていた。飛行機で種をまき、コンバインで刈り取る。「最も汗をかかずに作れる作物だ」とアメリカの農民は言った。日本の田植えの話をすると、「日本には飛行機がないのか」と聞いてきた。

 アメリカがコメ作りに励むようになった理由は二つあった。
 
 一つはコメが戦略物資になるからである。第二次大戦後の戦争は朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争など、いずれもコメを主食とする地域で起きた。従ってコメはその地域への援助物資として戦略的に有効である。

 もう一つは、ヨーロッパがECを形成して関税障壁を撤廃し、農産物がヨーロッパ国内で自由に流通するようになった。そのためヨーロッパへの農産物の供給国であったアメリカは深刻な打撃を受けた。アメリカはヨーロッパで生産できない農作物を探し、コメに目をつけた。コメはスペインとイタリア南部でしか作れない。ヨーロッパにアメリカのコメを輸出するため、スイスを拠点に米食普及運動が始められた。

 そのときの宣伝文句は「コメは完全栄養食品。子供の健康にはコメを!」というものだった。アメリカはライスピザ、ライススパゲティ、ライスサラダなどの料理法をヨーロッパに広めようとしていた。
 
 こうした運動を始めたのは、戦後日本で子供の食事をパン食にすることに成功したからだとアメリカ農務省の元役人が話してくれた。学校給食はそのための道具であった。

 80年代からアメリカでは和食ブームが始まった。理由は一にも二にもヘルシーだからである。「スシ・バー」がいたるところに開店し、ホテルの朝食にもご飯、味噌汁、鮭の塩焼きなどの和食メニューが登場した。

 麦はコメに比べて栄養価が低いため、副食物で栄養を補う必要がある。副食の採りすぎ、特に肉食に偏ることが病気の素だといわれるようになった。それに比べて日本の伝統的な食べ物は理想的な健康食品である。何よりも日本人の長寿がそれを証明している。和食が世界的に見直されるようになった。

 一体、我々が子供のころに受けた「コメを食べると頭がぼける。健康にはパンと乳製品だ」という教育はなんだったのだろう。当時日本を支配していたのはGHQである。だからアメリカの余剰農産物を学校給食にしたことは仕方がないにしても、高名な学者や学校の教師がアメリカのパン食普及運動の手先となり、権力におもねったことを許す気持ちにはなれない。

 食い物の恨みから言うわけではないが、だから教育は恐ろしいと思う。だから権力に迎合しない教育を確立しなければならないと思う。最近では「学の独立」という言葉をとんと聞かなくなった。
 
 もう一方で学校で教えられたことを鵜呑みにせず、社会の中からも判断材料を得て、自分の頭でものを考える力を身につけさせることが教育には最も重要なことではないか。
 
 教育基本法改正案は不正常な状態で衆議院を通過してしまったが、そういうことをまだまだ議論してもらいたいと思う。

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Profile

田中良紹(たなか・よしつぐ)

-----<経歴>-----

1945年宮城県仙台市生まれ。
1969年慶應義塾大学経済学部卒業。
同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。
TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。
2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。

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-----<著書>-----


『裏支配─いま明かされる田中角栄の真実』
2011年1月、電子書籍


『メディア裏支配─語られざる巨大マスコミの暗闘史』
2005年3月、講談社

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『憲法調査会証言集─国のゆくえ』
2004年7月、現代書館

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