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小沢秘書逮捕と見るに堪えない政局 »

"醜態政治"では許されない外交モメンタムと「戦後枠組」の転換期

中川昭一財務・金融担当大臣のローマ先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での記者会見の醜態ぶりにはショックで呆れかえるだでなく、世界に日本の恥をさらすという本当に悲しいものだった。

マスコミも何で今頃言い出したんだと批判されてるが、中川は普段からどちらかというとアル中ぎみで酒癖が悪い。当初表向きに釈明したような、風邪薬や腰痛の鎮痛剤のせいかといえば、確かにアルコールと薬の相乗効果でおかしくなることはあるだろう。だが記者会見でのあの様子は薬の作用といった程度の低いものではなく、どう見ても泥酔だ。そうなると、飲ませた同行記者らの問題もあるし、そのまま会見させた財務省の責任は重い。もう無理だと判断がついたはずだから、体張ってでも止めなければいけなかった。

これだけでも日本の国益をもの凄く損ねたが、これに事態は止まらない。あれだけ言われている今の100年に一度の経済危機の状況下。だからこそ世界中が今回のG7がどういう方向性を導き出すのかと固唾を飲んで見守っていた。その時に経緯はどうであれ、その担当大臣がこういう醜態を演じたことは、日本という国自体に全く危機感がないということを表した。

中川辞任騒動も二転三転した。私から見れば職務を全うすることはもう無理なのに、中川本人にそのつもりはなく、麻生総理もこれを支持した。その後「衆議院で予算と関連法案が通過してから辞める」と言った。いくら野党が国会の予算審議を政策より「戦術優先」でやっているじゃないかと批判してみても、担当大臣がこんな国際的スキャンダルを演じていて、もはや担当能力が無いのは明らかなのに、その大臣相手に「審議をやれ」と主張するほうがおかしい。

結局、総理官邸も、野党が問責決議を出して、これはもう持たない、乗り切れないとなって、ようやくそのことに気付いて辞任した。

これはやはり麻生総理の判断の誤りで、本当ならば中川には「何をやっているんだ、自分の自己管理もできないのか」と怒り狂ってでも、直ちに更迭しなければいけなかった。

だから今回の騒動は、中川は自分の自己管理もできなかった、財務省は危機管理もできなかった、そしてその進退において官邸は危機管理すらできなかったということだ。政権からいえば二重三重の失態で、これで一気に麻生内閣は退陣秒読みに入ったというぐらいの痛手だろう。

この直前、小泉純一郎元総理が痛烈に麻生内閣批判をやって、政局に火をつけたばかりだった。麻生は郵政民営化をめぐって「自分は反対だった」と発言し、皆が“えっ”と思ったし、その担当大臣だったかどうかでさえ発言は二転三転し、「2年間勉強して、最後は賛成した」と言ってこの問題はそれで終わったのかと思われた。ところがまた、郵政分社化について「3分社化が良いとか4分社化が良いと」やって、そこに「かんぽの宿」の疑惑も出てきた。

小泉からすればこのままでは自分の命を賭けた「郵政民営化」の流れがストップされ、逆行する危機を感じるのだろうし、麻生発言についてはこれに限らず「最近の麻生総理の言葉を聞いていると、怒るというよりは笑っちゃう、ただただ呆れている」とまで言った。この「最近の発言」とは、消費税を巡る二転三転、定額給付金をめぐる迷走ぶりを全部含めて言っている。

定額給付金についても「3分の2で再議決するような問題か、最終的にはもしそうなったら自分は欠席する」と言ったが、これには今の国会運営を見て、衆参が対立するのはどれだけのことか、何で話し合いもしないんだという気持ちが表れているのだろうと思う。

小泉の「総理が信用されなければ選挙にならないが、最近の麻生総理の言動は、後ろからどころか前から鉄砲を撃っているようなものだ」というのは相当な言い方で、結論から言えば、麻生を信頼していないし、あなたでは選挙はもう戦えませんよと宣告したようなもので、ある意味宣戦布告である。

定額給付金は与党はもう後には引けないだろうが、本当にやる必要があるのかと、どこかで皆そう思っている。再議決への小泉同調者は少ないかもしれないが、これは党内の若手だけでなく、国民有権者の声を代弁しているわけだから、政局的にはもの凄く重要な布石である。少なくとも予算成立まではじっと我慢するけれども、成立した途端に一気に麻生退陣、そこから新総裁を選出して選挙をするのか、しないのかということになる。

新総裁を立てる場合、現段階で有力と言われる与謝野馨財務・金融・経済財政相なら、そこに小沢民主党が加わって、変形の大連立・選挙管理内閣で大型補正予算と金融経済政策を超党派でまずはやる。必要なやるべきことはどんどんやる。その上で話し合い解散というのも、考えられる選択肢ではある。だが現実的にはここまでくると民主党はのらないだろう。

民主党にとってもこれにはもの凄く迷うところで、本音では麻生で総選挙を戦いたい。そうすれば確実に勝てると思っているからである。だからあんまり麻生を追い込んで退陣させると、次の人が誰になろうと多少の空気が変わる心配がある。とくに嫌なのが小池百合子元防衛相で、キャンペーンでアメリカが初の黒人大統領、日本が初の女性総理と言ってやられることを、国民有権者はそんなことで動くことがあるとは思えないが、選挙は水ものだからと言って心配するのである。だったらむしろ超党派の選挙管理内閣をやるなかで、経済金融政策での担当責任能力を示してから選挙をという動きも出てくる。

だから本当に色んなことが考えられるのだが、どちらにしろ小泉発言に続いての中川大臣の辞任で、政局一気には流動化した。予算成立後は何が起きてもおかしくないという状況に突入した。

今回の中川騒動で、もうひとつ忘れてはならないのが、アメリカのオバマ新政権の外交スタートとなったヒラリー・クリントン国務長官の訪日と、その翌日の麻生総理とロシアのメドベージェフ大統領との首脳会談だ。この二つは日本にとっては非常に大事な外交の”モメンタム”であった。しかしこれも中川騒動が潰してしまった。これは大失態で、こんなことが起きる事態、本当に悲しいことである。

麻生総理とメドベージェフ大統領との首脳会議で、北方領土問題について合意したことについて、産経新聞がなぜ4島一括返還を要求しなかったかと書いたが、私としても唐突奇異に感じた言葉として、麻生が会見で言った「新しい大胆かつ独創的アプローチが必要だ」というものがあった。

私はこれについて、直接川村建夫官房長官に、4島一括同時返還というこれまでの日本の方針を棚上げするか、或いは転換したのかと聞いた。その答えはそうでなく、あくまでもロシアに4島の帰属を認めてもらい、その上でどうなるかということだった。そこで2島、3島返還とか共同管理だとか、そういうこともまずは想定しているのかと聞いたら、そうだと答えた。これは大ニュースである。

一時期大問題になった鈴木宗男新党大地代表の2島先行返還論とか、麻生外務大臣時代の3島+択捉島の25%という面積二分論というものがあった。政治家はこういうことを軽々しく言ってはいけないという問題もあるが、いずれにしろ日本が4島、ロシアが2島でガチンコで向き合ってやっているかぎり、何も前進しない。どこかで政治決断が必要だと言われればびっくりしても、それでも確かに今回のサハリンのエネルギー問題と同時並行で、この問題が進むきっかけになるもかもしれない。

21世紀の覇権争いのなかで、今後ロシアは戦略的に徹底的に日本にアプローチしてくる。中国の急速な台頭による東アジアの力の均衡を考えると、ロシアは日米、日中、米中という関係に楔を打ち込みたいし、その最たる武器が日ロ関係となるからだ。今回のサハリン2で積極的に日本の麻生総理を招待したこともその表れだし、一方の日本もこれまで森喜朗元首相と小泉を通じての二重チャンネルでやっていて、今度はプーチン首相が日本にやってくる。

一方のアメリカも今、日本を最重視している。クリントンが最初に訪問先として選び、ホワイトハウスを最初に訪問する首脳に麻生総理を選んだ。もちろん、ロシアの思惑、アメリカの思惑というのはそんな簡単なものではないし、日本は今、外交的に急にモテモテだからといって、これに浮かれているようでは甘い。次に注目するポイントとして、これで中国がどう動くかというものもある。

だがこれらは日本外交の歴史で初めての“モメンタム”という、そういう重要な転機であり、21世紀の新しい力関係と構築できる機会を迎えていることであることを忘れてはならない。

言い古されてきたことだが「戦後の終わりの始まり」という言葉がある。

戦後政治の基本的枠組みである政権政党・基盤政党、その政権政局の枠組みの中心といった自民党が担ってきたものがいよいよ壊れ、大連立もある、政界再編もある、二大政党制のもとにおける野党第一党が選挙に勝って政権を担当するという、文字通りの「政権交代」と、いずれも戦後初めてのことが起こる。歴史的にもその戦後の枠組み転換の政局がスタートした、そういう位置づけになるのだろう。

それにしても政治の劣化は酷い。まさに勝海舟の「いつからこの国に人がいなくなったのか」という典型である。

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コメント (7)

大変示唆に富む記事で、混迷する政局を分かり易く分析しておられる。
個人的に目を引いたのが、やはり「中川」の1件で、なぜあのような事態を招く前に、誰であれそこで歯止めをかけることができなかったかという点である。
まさに「危機管理能力」の欠落、それを露呈したことになった。

与謝野総理で救国内閣、大変興味深く読ませて頂きました。
実際、昨日のサンプロで与謝野氏は、経済界・労働界・文化界・野党を含めて、この国の経済立て直しに一丸とならなければならない。と、連立を示唆されていました。
また、小沢代表も「大変、一生懸命にやられている」という趣旨で与謝野氏にエールとも取れる発言をしていました。
まさか、大連立?がまさかではなく、本当になってしまうかもしれません。
もし、そういう事態になったら、共産党・社民党・国民新党も含めなければ本来の救国内閣とはならず、またまた生ぐさい自・民の大連立→政界再編になるかも、です。やっと、1票で政治を動かせるかもと考えている私にとって、おいおい、それはないでしょうと、いいたくなります。
岸井さんの記事には、随行スタッフがなぜ止めなかったかとありますが、普段から酒乱の人を止めることは不可能かと・・・ましてや大臣です。それをいったら可愛そうでしょ。
責めを受けるは中川氏本人と、知りながら2代目を担いだ地元後援会、そして麻生総理、さらには中川氏を当選させた北海道の有権者でしょう。

どうでもいいが、新聞の編集委員が「アル中」なんて言葉使っていいのか? 恥ずかしいから早く訂正したら。

日本が外交的にモテモテに見えるのは、各国お金が欲しいからですよね。日本はチョロイ、ちょっともてはやせば政治家も官僚も保身のためになるなら、あるいは票が取れるならすぐに金を出してくれる、ということと思いますが。就職難、リストラ旋風なご時世、職にあぶれてしまう人々の援助よりも外国には惜しみない寄付・援助の数々。なんて悲しい国なのか。皆さん、選挙行きましょうね!

ただの一度も麻生内閣の政策についての記事がないのは取材してないからですか?

パワーゲームを楽しんでるのはあなたをはじめとしたマスコミにしか見えません。

結論は「日本が北方領土4島返還をあきらめたのがうれしい」
ということですよね?

なんの北朝鮮に何の賠償をするんでしょうか?
朝鮮に懇願されて、併合してやったんですけど?

岸井さん。
北朝鮮に支払うべき賠償金の法的根拠をぜひともご教示ください。

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Profile

岸井成格(きしい・しげただ)

-----<経歴>-----

1944年東京生まれ。
東京都出身。
慶応大学法学部卒業。
1967年毎日新聞社入社。
熊本支局を振り出しに、政治部、ワシントン特派員を経て、85年に論説委員。
その後政治部長、編集局次長、論説委員長を歴任、特別編集委員。

-----<出演>-----

『筑紫哲也 NEWS23』
(TBS/月~木曜22:54~金曜23:30~)
『サンデーモーニング』
(TBS/毎週日曜8時~)
『みのもんたの朝ズバッ!』
(TBS/月~金曜5:30~)
『サンデープロジェクト』
(TV朝日系/毎週日曜10時~)
『森本毅郎・スタンバイ!』
(TBSラジオ/月~金曜6:30~)

BookMarks

MSN-Mainichi INTERACTIVE 岸井成格のページ

-----<著書>-----


『大転換』
1998年6月、毎日新聞社


『永田町の通信簿』
1996年12月、作品社

→ブック・こもんず←



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