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節電の夏は本を読んでしのぐのだ。

kanehira110708.png

 うんざりする。何もかにも。

 「3/11」は、私たち日本人にとって「9/11」どころではない「切断点」=世界が変わった日、だと思っていた。この巨大な悲劇の、重さが、汲み取るべき教えが、意味が、人間の営みへの謙虚な自省が、社会が、経済が、文化が、地域が、土着が、歴史が、矜持が、戦後が、何もかも恐ろしい勢いで「空無化」されていく。<戦後>から<災後>へと時代が変わったのではなかったのか。この期に及んで、何という情況だ。

 誠実であろう。身近な大切なひとと話をしよう。時間をもっと大事にしよう。そして、本を読もう。さいわい「3/11」以降、よい本にめぐりあえた。

 在米の日本人が書いた<戦後>に関する2冊。青木富貴子さんの『昭和天皇とワシントンを結んだ男』(新潮社)は、元「ニューズウィーク」東京支局長、コンプトン・パケナムの日記を入手した筆者の執念の戦後史の裏面を追った調査報道の素晴らしい成果だ。パケナムを軸に、ハリー・カーン、昭和天皇の側近・松平康昌、鳩山一郎、岸信介らの織りなす点と線を丹念に追う情熱に舌を巻く思いだ。

 この本とは対照的な文体で書かれた室謙二の『天皇とマッカーサーのどちらが偉い?』(岩波書店)も、実に面白いエピソードにあふれた戦後史本だ。べ平連というユルい市民組織に所属していた室さんが、自分史を追うことで戦後の一側面が浮かび上がってくる。室さんはその後、アメリカ人になった。In-betweenの視点というものが、ものごとを考えるときにどれだけ自由を与えてくれるか。そのことをこの本は証明してくれている。Rigidではなく、歴史を語ること。この本にも大いに魅了された。

 「3/11」を共有した私たちが「この神話的な破壊を叙述することばをさっぱりもちあわせていない」と喝破したのは作家の辺見庸だった。その「3/11」に向き合った、あるいはあらかじめ向き合っていた本にも出会った。とりあえずの3冊。

 『津波と原発』(講談社)は何ともベタなタイトルだが、ノンフィクション作家・佐野眞一の「3/11」に対峙する思いは、突き抜けている。その通りだ、現場にも行かずに何がジャーナリストだ。「今回の大災害を論評する連中の言葉には、被災者たちの沈黙に匹敵するだけの重みも深みもなかった」(本書より)。この怒りを原点に現場に突き進み等身大の言葉を紡ぎだす佐野の姿勢に、ひとまず、負けてたまるか、とも思う。対照的に、辺見庸の『水の透視画法』(共同通信社)は、故郷・石巻の壊滅的被災の状況を、遠く離れた場所から、体の不自由さを抱えながら、時事刻々と知り、ただただ慟哭するしかなかった筆者の、あらかじめの向き合いと、その後の向き合いの書である。「その前後」で、かくも一貫した人間がいることを示した書物があるだろうか。福島市在住の高校国語教師、和合亮一の『詩の黙礼』(新潮社)は、圧倒的な破壊の現実に対して、ただただ「黙礼」するしかない人間の言葉が連なる。「黙礼。 祈るしかない。 見えない津波」(本書より)。これは詩だろうか。いや、詩なのだ。

 上記の本を読み連ねる間に、僕はカズオ・イシグロの『私を離さないで』(ハヤカワepi文庫)を読んでいた。僕にとって「3/11」後の現実に、ひょっとして最も釣り合っていたと感じたのは、この本だったのかもしれない。

 ふたたび、現実へ。僕の横にあるテレビが言っている。「・・・・・・原発再稼働への不安から、電力会社株が軒並み値を下げています・・・・・・」

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金平 様

3.11を契機にして、生きるとはどういうことか、また、現在の生活規範である法律制度が、戦後どのような状況からつくられてきたのか、本質的に考え直そうという空気が出ていることに共感を覚えます。

「昭和天皇とワシントンを結ぶ男」と「薬害エイズ事件の真実」など3冊が田中塾で紹介され、今読み始めているところです。

薬害エイズについては、安部医師に対する想像を絶する悪者工作を仕掛けた毎日新聞、櫻井よしこ氏、保田弁護士は、陸山会事件がダブッテ見られます。武藤、弘中両氏の共同著作であるが、この裁判に臨んだ意気込みがよく伝わってきました。特に弘中氏の真実追求の不屈の精神は、陸山会事件も同じく無罪に導いてくださると、信じて疑いません。

青木冨貴子氏の本はまだ半分位しか読んでいませんが、表では知りえなかった戦後の重要な事実を追跡し、一つのストーリーを明確に提示した素晴らしい本であると思います。

金平さまと同じように、3.11は、折角自己を見つめる機会を提供してくださったのであるから、私自身も静かに唯心的思考を深めながら、政治を見直して見ます。

お願いがあります
昨日 北海道新聞に大々的に報道されたことがあります
玄海町の町長の弟が経営する土木業者と原発のお金の関係
そして 電力会社からの天下り
大きなニュースになるとばかり思っていました
でも、テレビではゼロ 新聞は読売と西日本新聞で取り上げられただけでした
ヤフーニュースには読売のものが出ていましたが 半日でどこかへ消えました

金平さんの報道特集で取り上げていただけませんでしょうか
報道特集は素晴らしい番組だと思います

暑い夏に読書、いいですね。
私は2006年ぐらいの本「フラット化する世界」というのを今ごろ読んでいて、今度は違うテイストのここでお薦めのどれかを読みます。
3.11から日本は変わる・・はずなんですけど、どちらかと言えば停滞していますね。国中が溶け出しているっていうか。原発廃止に向かってもっと勢いがあるかと思いきや、静かに何かを待っているような。
炉心溶融、原子炉の心臓部にあたり原子炉を保護する重要な部分がメルトダウン。これって今の日本。
まず暑さのせい。暑い。28度じゃ涼しくない。でも我慢。
政府、溶けてる、溶けてる。政治家の顔、みんな溶けてる。
それからまだ何も終わっていない。戦後の復興のようにはいかない。
最後に不安。これから何かあるよねってみんな、どこかで不安に思っている。後から見れば3.11はovertureかもしれない。いつ、どこ、誰も知らないけれど、これが最後ではないはずって。
ひとつ、3.11がもたらした大きな変化があります。自転車!です。午前中表参道を車で走ると、1車線に追いやられるほどの自転車の流れです。しかもママチャリじゃない、どれもかっこいい。乗っている人たちもさりげなくおっしゃれ~。東京もNY並みになってきたと思います。清志郎さんも空からいいバイクを探しているかも、なんて思ったり。

Longoさま。カズオ・イシグロの小説は面白い!『わたしを離さないで』に続いて『日の名残り』『わたしたちが孤児だったころ』とハマってしまいました。おかげで寝不足になり、暑さを忘れられる。つまり、眠気>暑苦しさ となっています。自転車に乗ってからだに感じる風も、きっと気持ちがいいのでしょうね。

金平様
はじめまして。ご隠居です。
先日暑い中、永田町界隈をうろつきまして、大学の後輩の記者連中や民主党党本部にいる連中と暑気払いをしてきましたが、その時の話をしましょう。

この男いつ観念するのか??というテーマでお話しますと:


①先日国会記者クラブ連中のお気に入り中華食堂で耳にした噂話:

読売、産経の熟年記者連中が久しぶりに官邸に対し菅との少人数での食事会をかねた会合を申し入れたところ、菅からは、総務大臣の片山大臣、
経産省の次官を同席させたいとの申し出があり、記者連中はこれを断ったらしい。
実質、用済みの菅に対するきついしっぺ返しといえる。
永田町のタリバンと揶揄される菅にとっては、なんとも淋しい話ではある。
東京新聞の加藤論説に言わせると、菅は脱原発を担いだ性質の悪い政局テロリストであるらしい。実に上手いレッテル張りである。

②一方民主党の事務局内部では来月の中旬までに議員総会を開催し同時に
党の代表選挙を実施するための準備が密かに進行中である。現状では菅はこれをつぶせる力がないため,90%代表戦において追放される公算が大である。ただし、菅にはこの前に、反原発で解散を打つ可能性が残されている。菅にしては実に鈍感な政治的な感覚であるが、多くの国民は脱原発で解散に打って出れば、国民世論をバックに生き延びることが出来るとそろばんをはじいているようであるが、そうは問屋がおろすまい。世論はすでにこの人物のリーダーとしての無能さ、インチキさを見抜いており、結果としては惨敗することになる。死ぬ気でがんばれ! と、エールを一度は送ったが、どうにも拙い。

はい、大好きです。私は「日の名残り」で出会って、他数冊を読みました。
英語のお好きな方なら原作で読むのもいいですね。

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Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりアメリカ総局長としてニューヨーク勤務。コロンビア大学東アジア研究所の客員研究員。2010年9月に帰国。10月より同局「報道特集」キャスター兼TBSテレビ執行役員。

BookMarks

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『NY発 それでもオバマは歴史を変える』
2010年11月、かもがわ出版


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2009年5月、かもがわ出版、共著


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2004年7月、青弓社、部分執筆


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1997年12月、太田出版

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