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2011年5月 9日

一体どこの国の外務省なのか?

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 東日本大震災や福島原発事故、ビンラディン殺害など超弩級のニュースが続く中で、いささか埋没してしまった印象もあるが、朝日新聞のウィキリークスからの日本関係公電の入手及び分析を経た報道はきわめて衝撃的な内容を含むものだ。なかでも沖縄普天間基地移転と連動して進められていた在沖米海兵隊のグアム移転計画に関する公電の報道は、読む者に「日本という国は果たして独立国なのか? この国の外務省はどの国の利益のために働いているのか?」という根本的な疑問を突き付けるものだ。朝日新聞が入手した日本関係の公電数は6963本。約3か月の分析裏付け作業を経ての報道(5月4日付け朝刊)だ。既存メディアの「底力」を素直に評価するしかない。僕も既存メディアで働く者の端くれとして、去年の12月6日に、この『茫界偏視』において、ウィキリークスが外交公電を暴露し始めた時に次のように記した。

さて、日本のメディアは今後どのような報じ方をしていくのか。自分自身にも突きつけられた問題である。さまざまな評価を見極めるプロの目が必要になる。今後、東京の米国大使館発の公電5697点の内容が明らかになれば、日米関係の生々しい実相が明らかになる可能性がある。アメリカが鳩山政権をどう見ていてどうしたのか、菅政権をどう評価しているのか、普天間基地をめぐって何が行われていたのか、小沢一郎についてどう評価していたのか、またアメリカ大使館の「協力者」たちの顔触れがどのような人たちなのか等など。冷静に情報を見極めよう。すべてが始まる前に、国家安全保障とか、プライバシーとかを言いだしているあれらのジャーナリストたちの言動も僕らは注視しよう。(「WikiLeaksをめぐる動きは現代版のペンタゴン文書事件だ」より)

 朝日新聞は、組織を挙げてその取り組みを成し遂げたのであり、僕らはできなかった。他紙はそもそもやる気がなかったのだろうか。朝日に素直に脱帽するしかない。グアムへの移転経費に本来不必要な経費を水増し計上して、日本側負担率を低く見せかけるテクニックなど、まるで1972年の沖縄返還時にまつわる日米密約とおんなじことを両政府はいまだにやっているのだ。何ということか。これでも日本は独立国なのだろうか。本来は怒って見せなければならないような屈辱的な仕掛けを、日本政府高官たちがそろいもそろってアメリカ側に同調し、それを自民、民主の政治家たちも追認している。なかでもひどいのが外交公電に記されている外務省高官たちの動きである。一体どこの国の外務省なのか? 民主党政権誕生前後に、アメリカ大使館のカウンターパートの外交官らに対して「民主党政権に譲歩するな」とか「既に対等なのに何が念頭にあるのか分らない、愚かだ」など「本音」を伝えているとは言語道断だ。朝日紙面に実名で発言を暴露された薮中三十二事務次官、梅本和義北米局長、斉木昭隆アジア大洋州局長、高見沢将林防衛政策局長ら(いずれも当時の肩書き)の米国への「忠勤」ぶりに茫然とするばかりだ。

 朝日報道に実はいま政府も外務省もあわてている。5月7日に首相官邸に外務省幹部が訪れ、今後の同省方針を伝えたようだ。と言っても政府として「コメントも確認もしない」ということを確認しただけだが。まるで核兵器の存在の有無を「否定も肯定もしない」米政府みたいだ。

 国民に嘘をつく愚民化政策は破局的な事態を日本という国にもたらしてきた。そのことは今現在、原発事故や津波被害対策で、僕らは嫌というほど思い知らされているではないか。

2011年5月 3日

ひとを殺して歓喜する国民にはなりたくない

 ビンラディン殺害の第一報を聞いたのは、津波で壊滅した岩手県陸前高田市の取材中で、県立高田高校校舎に向かう車中でのことだった。強い風が吹き荒れていた。津波に抗して景勝地に一本だけ生き残った松原の松の木もようやく立っているという感じだった。オバマ大統領がまもなく演説を行うという知らせだった。米軍特殊部隊がパキスタンでビンラディンを殺害した。生きて捕捉するオプションは元々なかったという。つまり、「見つけ次第、殺せ」とオバマ大統領は命じたのだ。

 「Justice has been done.」とオバマ大統領はテレビ演説の締めくくりで言った。ニューヨークのグランド・ゼロやホワイトハウス前にたくさんの人々が集まり「USA!」を連呼した。ひとを殺して歓喜する国民がそこにいる。

 10年前の9月11日のワールド・トレードセンター崩落後に世界中に配信された映像があったのを覚えている。事件後、パレスチナの地で歓喜するパレスチナ人たちの様子だった。そのテレビ映像をみて「文明国」の人々は言った。何という人々だ。あんな悲劇に歓喜する人々がいるなんて。だから僕らはいま同じように言おう。ひとを殺して歓喜する国民にはなりたくない。今朝の新聞をみた。朝日新聞に最上敏樹が「拘束・裁判が世界の潮流」と主張し、今回の国家の明確な意志による「暗殺」を容認しない意見も紹介している程度で、他紙にはほとんどそのような主張はみられなかった。わずかに毎日新聞が「人々が一人の死を喜ぶ姿に少しうろたえている」というコネティカット州の9・11遺族の談話を載せていたくらい。日本政府は「テロ対策の顕著な前進を歓迎し、関係者の努力に敬意を表する」との談話を発表した。

 世界はもっともっと危険な方向に漂流しだしている。大震災後と現在進行形の原発事故のなかにある日本でそのように思う。

Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりアメリカ総局長としてニューヨーク勤務。コロンビア大学東アジア研究所の客員研究員。2010年9月に帰国。10月より同局「報道特集」キャスター兼TBSテレビ執行役員。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
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『NY発 それでもオバマは歴史を変える』
2010年11月、かもがわ出版


『報道再生 グーグルとメディア崩壊』
2010年12月、角川書店


『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

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『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

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