Calendar

2011年1月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

Recent Comments

<忘却>ということ
《THE JOURNAL》編集部 10/30
yamadataro 10/31
em5467-2こと恵美 10/31
太郎 10/31
梅光 11/01
太郎 11/02
本田 勉 11/02
元株や 11/04
sawa 11/04
yamadataro 11/06

Recent Trackbacks

Category

« 2010年12月 | メイン | 2011年3月 »

2011年1月16日

アリゾナ・トゥーソンの悲劇の深い傷跡

 日本では政局報道のかげであまり大きく報じられなかったが、アメリカ・アリゾナ州トゥーソンで起きた政治集会での銃乱射事件から1週間が過ぎた。現在のアメリカ社会が抱える問題の根深さを象徴する衝撃的な事件だった。アメリカ以外の国からみれば、あれほど銃器が日常生活に無造作に入り込んでいる社会のあり方自体が異常なのであり、それをいまだに変えられないアメリカという国は絶望的な文明後進国だ。だがアメリカ人にはそれがわからない。アメリカ全土では2億7千万丁の銃が私的に所有されているという。銃による武装・自衛という開拓時代の掟がアメリカ人のDNAにしみついているのだ。それが戦争に関するかの国の考え方にもつながっている。だが、それ以上に深刻なのは、今回の事件によって、政治的対立が直接的な暴力を引き起こすまでの「臨界点」に達してしまっていること、すなわちアメリカ社会が病的なまでに分裂をきたしている現実を、まざまざと全世界に見せつけたことだろう。オバマの登場以来くすぶり続けているアメリカの保守底流の不満のマグマが不幸な形で噴出したとでも言おうか。

 6人の犠牲者のなかのひとりの9歳の少女が2001年の9月11日生まれ、つまり同時多発テロ事件発生の日に生まれた少女だった偶然の「符合」がメディアでは語られている。また、サラ・ペイリン元アラスカ州知事が、去年11月の中間選挙前に自身の政治活動キャンペーン・サイトで、今回の政治集会で狙撃された民主党ガブリエル・ギフォード下院議員らを名指しで「落選させたい重点候補」に挙げ、アリゾナ州の地図上に銃の照準をあしらったマークを付していたことから、ペイリンに対して一斉に非難の声が上がった。事件を誘発した責任がある、と。

kanehira100115_1.jpg
↑ ペイリンが掲げていた「標的」リスト

 危機を察したペイリンは自身に向けられた非難に対して堂々とビデオで反論し、「ジャーナリストや評論家は、憎しみや暴力を煽る『血の中傷』(Blood Libel)をでっち上げるべきではない」と責任をリベラル系のジャーナリストらに転嫁している。ひどいものだ。ペイリンは、フォックスニュースのグレン・ベックらとともに、いわゆるティパーティー運動の動員役を果たしており、集会でも「撤退するな。代わりに弾丸をつめろ」と盛んにアジっていた事実がある。「弾丸をつめろ」はまさに直接的な表現である。比喩でも何でもない。こういう人物が副大統領候補だった国なのだ。また、かなりの支持者が彼女の周囲にいる国なのだ。そしてティーパーティ運動が中間選挙で民主党を敗北させたのだ。何かが狂い始めている。アメリカにおいても。

kanehira100115_2.jpg
↑ ロフナー容疑者の写真

 公開された22歳のジャレッド・ロフナー容疑者の写真をみると、スキンヘッドで笑みを浮かべており、どこか狂気が漂っている印象だ。オバマ大統領は、1月12日の追悼式での演説で「われわれを分断する力よりも、一つに結び付ける力の方が強いと信じている」と結束を呼びかけていた。だが、オバマ大統領自身が身の危険を感じているのではないか。来年には再選をかけた大統領選挙がある。2億7千万丁の銃が偏在する中で、オバマはSPに守られているとはいいながら、素手で有権者に握手を求めていかなければならないのだから。

Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりアメリカ総局長としてニューヨーク勤務。コロンビア大学東アジア研究所の客員研究員。2010年9月に帰国。10月より同局「報道特集」キャスター兼TBSテレビ執行役員。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
↓ ↓ ↓

『NY発 それでもオバマは歴史を変える』
2010年11月、かもがわ出版


『報道再生 グーグルとメディア崩壊』
2010年12月、角川書店


『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
↓ ↓ ↓

『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.