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2008年1月30日

笠井叡の手の残像がストロボのように

笠井叡のソロと聞くと、うかうかしてはいられない。けれども25分も遅れてしまった。当然立ち見しかない。くそっ! 三軒茶屋のシアター・トラムは超満員。ピアニスト高橋悠治の演奏するバッハの『フーガの技法』全曲と、笠井のソロダンスの絶妙な組み合わせだ。『透明迷宮』が今日のタイトル。笠井のソロダンスをみるのは『花粉革命』以来だから随分久しぶりだ。あの時もこの会場だったよなあ。観客に若い世代が多い。こういう素晴らしいものが前の世代からあったことを、しっかりと見ておいて欲しいと思ってしまう。静謐なバッハの曲にからだが感応して、笠井の全身で表現されたものは、時に異形なかたちを見せるものの、あるいは異形であるがゆえに、品位が刻印されている。激しく弧を描く腕と手の残像がストロボを使ったように美しく浮かび上がる。何という気高さだろう。衣装が笠井のダンスごと3種類変わるのだが、どれも気品に充ちていて引き込まれる。大昔の笠井の著書に『天使論』があったが、本箱のどこにあるのやら。あの頃の本は宝物になっている。ワシントンDCのケネディ・センターのジャパン・ウィークで『花粉革命』の公演を行うとのこと。ワシントンに行きたくなった。

2008年1月27日

コーエン兄弟の旧作をみる

ワシントンDCの友人から送られてきて長いこと放置したまんまだったコーエン兄弟の旧作『Oh Brother, Where Art Thou?』(2000年)をみる。この作品がハリケーン・カトリーナの大惨事以前に作られた作品であることが黙示的である。スパイスの効いた娯楽作品だ。さらに、今アメリカを賑わしているバラク・オバマVSヒラリー・クリントンの大統領候補争いの底流にあるものを撃っている点でも、実に意味のある作品だと思う。この破天荒なロードムービーをみて、そう思ったのだ。コーエン兄弟はいいぞ。最新作の『No Country』も楽しみだ。オバマはサウスカロライナで圧勝したので、これからが本当の戦いになる。南部諸州で勝てば、大いに希望が出てくる。そういう歴史的な場面がみられるかどうか。アメリカという国の底力をみせつけられる思いがする。タレント=弁護士が知事になるどこかの国との強烈な落差を感じる。

2008年1月25日

ソウルの練習問題・応用編

きのうから韓国のソウルに来ている。東京とは10度近い気温差。とても寒い。けれどもソウルの街並みは東京よりも何だか活気があるようにも見えるから不思議だ。こちらで今人気があるというワンダーガールズ(韓国版のモー娘。みたいなもんか?)でも聞いてみるか。街を歩いている人々の表情が何だか相当に東京と違う。濃いのだ。こちらの人に聞いたら、日本人はすぐに見分けがつくという。ひとつはズボンの丈が短い(ソウルの感覚ではそれは相当にダサいらしい)のは日本人。鞄の持ち方がちょっと違うらしい。女の子は髪型がかなり違うらしい。そうか、そういうものなのか。このビミョーな違いが面白い。
韓国も先の大統領選挙の結果、イ・ミョンバクが圧勝して、2月には就任式が行われる。何かあちらこちらでチェンジの兆候が起きているらしい。そんななかでこちらで聞いた話。NHKの新会長人事が、日本では、経営委員会主導で民間から登用され話題になっているが、こちら韓国の放送局でも、政権交代にともない、国営のKBSの社長、MBCの社長がすげ替えになるというのが、もっぱらの噂だ。両方の放送局のトップとも、ノムヒョン政権に近いスタンスと見られていて、それがイ・ミョンバク新大統領にとっては我慢がならないというのだ。そういうものか。KBSの社長に至っては、まだ任期が1年半も残っているというのに、新政権への「引き継ぎ委員会」が露骨に嫌がっているらしいとのこと。政権交代のたびに放送局のトップすげ替え人事が行われるようじゃ、放送局の独立・自律なんてあったもんじゃない。東京ではないこの街頭を歩きながら、何かの応用問題を解いているような気分になった。

2008年1月22日

 村木良彦さんが亡くなられました。

TBSの大先輩で、日本の先駆的なドキュメンタリストのひとり、なおかつ、テレビマン・ユニオンを創設した村木良彦さんがお亡くなりになったという一報を、今から2時間ほど前に受け取りました。謹んでお悔やみ申し上げます。非常に動揺しています。

残る小説、残らない小説

年末・年始にベトナム旅行をした際、たくさん本を抱えて行ったが、今回ばかりはなかなか本が読めなかった。けれども何とかジャック・ケルアックの新訳『オン・ザ・ロード』(河出書房新社)と、イーユン・リーの『千年の祈り』(新潮社)だけは読んだ。2冊とも読後にこころの深いところにずしりと残る作品だ。『オン・ザ・ロード』の路上での追い越しシーンは、ハノイでの信号機のない道路上での、力にものを言わせるルールにすぐに平行移動した。『千年の祈り』の重厚な歴史感覚。中国の現体制を「独裁」ときっぱりと言い切る意志。これはアメリカでは受けるんだろうな、と思った。その一方で、アメリカの中のマイノリティとしての自覚から、こういう小説が生まれてくる素地があるんだろうなとも思った。何しろすごい作品集である。こういう小説は残る。ティッシュペーパーのように大量消費されて汚水と一緒に流されるナントカ小説群とは違って、絶対に残る。今は、マリオ バルガス=リョサだ。こういうのに接すると、長い小説を読む甲斐があったと思う。

2008年1月18日

『4ヶ月、3週間と2日』はすばらしい!

2007年のカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)受賞作品、ルーマニア映画『4ヶ月、3週間と2日』をみた。さすがに受賞するだけはあるわい、と大いに納得した。すばらしい作品である。クリスティアン・ムンジウの監督・脚本。この人のことは何も知らない。1994年までジャーナリストだったという。まだ39歳である。チャウシェスク政権下の1987年のルーマニアが映画の舞台。ユーゴにエミール・クストリッツァがいたように、ルーマニアにはクリスティアン・ムンジウがいるぞという感じだろうか。やっぱり東欧だな、人のリアルな姿がみえるのは。人間のなまの姿をこれほどまでに絶望を直視しながら描き切った作品は最近ではまれだ。なぜならば、絶望をなるべく直視しないようにとしないようにと、ニッポンのような「豊かな」国の映画産業、メディアは腐れ果てているから。抑圧的な政治体制は抑圧的な人間関係を再生産する。その意味で、チャウシェスク体制とは何だったかをきちんと描いた作品だ。いくつも心に刻まれるシーンがある。恋人の母親の誕生パーティーのシーンや、主人公があることを遂行するために街中をせっぱ詰まって彷徨うシーンの生々しさ。現代史を直視する地点から日本映画は(わずかな例外をのぞいて)ほど遠い、残念ながら。アナマリア・マリンカというヒロインの強烈な意志が美しい。ローラ・ヴァシリウという女優の演じる女性の弱さと鈍感さの完璧な演技に拍手。

2008年1月17日

 川上さん、芥川賞とっちゃったね!よかった!

二日酔いで頭がガンガンしているのだ%%%%%。川上未映子さんの芥川賞受賞という、めでたいニュースを昨夜%%知ってから、%%%%%%ピッチがどんどんあがってしまった。この「業務外日誌」でも、これまでに4回ほど川上さ%%%%%%%%%%んについては書いてきたけど(2007年7月15日、 8月23日、 11月20日、 11月27日)。めさんこ%%%嬉しいなあ。突っ張って、突っ張って、突っ張りまくって%%%%欲しいものだ。よかった、よかった、よかった。ついでに。今回がちょうど300本目の「業務外日誌」エントリー記事になります。

2008年1月14日

若い写真家たちには希望があるかも

写真美術館のシリーズ、日本の新進作家VOL.6『スティル/アライブ』をみた。屋代敏博の≪回転回LIVE!≫というのはへんてこりんな参加型イベントだが、楽しいことは確か。でもそれだけだなあ。大橋仁の少女娼婦のイノセンスの方にどうしても惹かれてしまった。まあ、ある意味で一番古典的な写真的モチーフと写真的表現。だから落ち着くんだろうな。とにかく、若い写真家たちには希望があるかも。

このごろずっと、写真家でもないのに、写真って一体何なんだろう、と考え続けている。というのは、僕らの日常はほとんど写真=撮影することでがんじがらめに包囲されているし、ケイタイにカメラ機能がついているから、誰でもどこでも撮る。デジカメは本当に枚数の心配なんかせずにガシガシ写せる。こないだ、テレビのCMをみていて驚いたのは、被写体の人物が笑顔を浮かべたときだけシャッターがおりて撮れるというカメラ機能まで登場してきているのだ。猫目なんか簡単に修正できるし、デジカメの登場は明らかにリアリティ=本当らしさの質的転換をもたらしている。テレビ映像にしても、実はフィルムとVTRのあいだには根本的な質的変化があったのだが、それはもう過去のこととしてやり過ごされた。その分だけ人間の想像力が減退した、と考えるのは僕だけだろうか。

2008年1月11日

南方熊楠という巨人の片鱗を垣間見ると

博物学者、植物学者、民俗学者とか思想家とかそういう括りでは、とても収まり切らないスケールの奇人・怪人・巨人。南方熊楠の履歴を振り返る「クマグスの森」展がワタリウム美術館で開かれているので、ちょっとのぞいてみた。おそるべき早熟ぶりと博覧強記。さらに知的好奇心の拡がり。独特の宇宙観に圧倒される思いがする。1時間程の短時間ではこの巨人の片鱗を垣間見ることしかできない。大体が19歳でいきなりアメリカへ出奔し、サンフランシスコやシカゴ、フロリダ、キューバと放浪を続け、ついにはロンドンにまで渡ってしまうという破天荒ぶりは何なんだ? 33歳までの14年間の海外放浪ってすごい。帰国後、南紀に住みながらキノコや植物、神社の合祀反対闘争と何でもやってしまっている。日記をみても彼は一種の記録魔である。個人的には、セクソロジーに関する展示が面白かったが、こういうスケールの「知の巨人」は今のニッポンじゃ絶対に出現しないだろうなあ。

2008年1月 9日

ガラパゴス化、マダガスカル化する日本

ニューハンプシャー州の予備選でヒラリー・クリントン候補が巻き返して勝った。アイオワ党員集会で勝ったオバマ候補は連勝で勢いをつけたい所だっただろう。でもこれで、米大統領選は俄然面白くなってきた。何だか途轍もないエネルギーを感じる。ブッシュ政権は完全にレイムダック(lame duck=足の不自由なアヒル=死に体)化していて、史上もっとも不人気な大統領(the most hated President)として退任することになるようだ。何しろあのニクソンよりも支持率が下回っているのだから。内側から変わるというアメリカ社会のエネルギー。アジアにしても、ベトナム旅行の際にも感じたあの国のすさまじいエネルギー。北京五輪を迎える中国のエネルギー。それが今の日本にはない。岡本行夫氏が教えてくれたのだが、この世界の潮流から孤絶した独特の進化(退化?)をたどっている日本の現象を「ガラパゴス化」あるいは「マダガスカル化」と言う人がいるらしい。マダガスカルに住む人々にとってはいい迷惑だろう。ガラパゴス諸島のイグアナだって嫌がるだろう。日本と一緒にしないでくれって。世界に目を向けずひたすら内向きのことがらに専心するありさまは、かなりヤバい。政治も経済も停滞、文化の発信力も「クール・ジャパン」のアニメ以外に見るべきものなしというのでは。何か想像力がシュリンクしているんだ。こういう時にこそ元気にならないといけないのが、本当はジャーナリズムなんだけれどなあ。何とかしなきゃ(と自分に言っている)。

2008年1月 3日

ベトナムにおける2007年

現在、この地球上にある国家で、国名に「社会主義」の語が入った国は2つしかない。ひとつは、カダフィが率いるリビア(大リビア・アラブ社会主義人民ジャマヒリア国)で、もうひとつはベトナム(ベトナム社会主義共和国)である。そのベトナムに年末から滞在していると、なるほどこれでも社会主義って言うんだな、といろいろなことを感じさせられる。「Viet Nam New」という英字新聞があって、国営ベトナム通信社が発行している新聞だが、この新聞が伝えた2007年の国内外10大ニュースをみると、なるほどここは社会主義国だわい、と実感する。以下が、ベトナム国営通信社が選んだ内外10大ニュース。

<国内>
①故ホーチミン国家首席の遺徳を学び継承するキャンペーンの成功
②ベトナムが国連安保理の非常任理事国に選ばれたこと
③ベトナム国会議員選挙の実施
④ベトナムのGDPがこの10年で最も高い8.5%の伸びを記録
⑤ベトナム国民の21.24%にも及ぶインターネットの急速な普及
⑥毎月1100人の死者を出す交通事故の急増。バイクでのヘルメット着用義務化
⑦ベトナムの公務員の汚職が440件摘発されたこと
⑧ベトナム中部を襲った嵐と洪水により126人の死者が出た惨事。
⑨ベトナム史上最悪の建設工事事故。建設中の橋が崩れ54人が死亡。
⑩東南アジアスポーツ大会でのベトナムの大活躍。しかし最も肝心なサッカーで敗北。

<世界>
①ASEAN首脳会議で初の憲章が制定・署名される
②国連主導で2009年までの地球温暖化防止対策が合意
③中東和平交渉の再構築作業進む
④大統領や外相選出を含むEU統合に向けた合意の進展
⑤朝鮮半島の非核化に向けた6ヶ国協議の成功
⑥中国共産党の全人代開催、胡錦涛主席を再選
⑦ロシアのプーチン与党が議会選挙で圧勝
⑧金と原油の価格が高騰
⑨日米の研究者が「万能細胞」の生成成功
⑩パキスタンのブット元首相暗殺

これらの項目で、やっぱり国内のトップニュースが、ホーチミンの顕彰キャンペーンだというのが、中国・北朝鮮的だよな、と思う。ちなみにハノイ市内にはまだレーニン像がしっかり建っておりました。ベトナム戦争当時の反米プロパガンダ・ポスターは、1枚8~15ドルで、西欧人の観光客がどんどん買っておりました。僕も観光客なのでよくわからないが、街中の活気は、日本よりも相当にあって、何だか不思議な感じがする。ガンバレ、ベトナムとでも言いたくなるような。

Profile

田原総一朗(たはら・そういちろう)

-----<経歴>-----

1934年、滋賀県彦根市生まれ。
早稲田大学文学部卒。
岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。
テレビ東京時代の連続番組「ドキュメンタリー青春」で、取材対象者に肉薄する独特のインタビュー手法で注目を浴びる。
現在は政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)を受賞した。
2002年より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生や社会人の指導にあたっている。

-----<出演>-----

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日、毎月最終金曜25時?)

『サンデープロジェクト』
(TV朝日、毎週日曜10時?)

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