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2006年6月25日

Ethel という弦楽アンサンブルのかっこよさ

ワシントンDCに住んでいた時に知った弦楽四重奏のグループでEthelというのがいる。これが何しろ途轍もなくカッコいいので、CDをいろんなひとに奨めている。米インディーズ系のレーベルに、Cantaloupe Musicというのがあって、(www.cantaloupemusic.com)ここに所属している。全盛期のクロノス・カルテットも尖っていてよかったけれども、今は、メンバーチェンジなどでちょっと大人しくなったような印象だ。やっぱりEthelじゃないと。9月にはオーストラリアのメルボルンで行われる音楽祭にも参加するようだ。見に行きたいけれども、無理か?

2006年6月23日

しりあがり寿画伯の掛け軸

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青林工藝社Tさんのご厚意で、長らく切望していた、しりあがり寿画伯特製のオリジナル掛け軸をいただいた。あまりにも素晴らしいので、職場の自席の後ろに掛けさせていただく。ありがたや、ありがたや。双子のオヤジが掛け軸の下部に鎮座している。素晴らしい!

これが芸術でなくて何であろうか。さらに大胆な毛筆の筆遣いで「いらっしゃいませ。」と大書されているのだ。この掛け軸をみるだけで、その日の気分が大いに改善される効能があるのだ。近く、しりあがり寿画伯の墨絵展があるという噂を聞いたが、まだ未確認だ。

2006年6月21日

写真こそが捉える世界の現実がある

東京都写真美術館の「世界報道写真展2006」をみる。今年の写真展のポスターにも使われている大賞の写真は、アフリカ・ニジェールの飢餓をとらえた写真だ。会場の入り口からしばらくは、アフリカ諸国の現状をとらえた写真が続く。日本にとってアフリカは本当に遠い国だ。距離的にも意識のうえでも。ただし、アフリカ諸国は今、政治的混乱と飢餓に覆われている。21世紀になって、グローバル化が進んでいるがゆえの冷徹な現実がそこにはある。いくつか心に止まった写真がある。イラク戦争で米軍に両親を撃ち殺され泣き叫ぶ少女サマール・ハッサン。イラク北部のタルアファールでの出来事だという。夜間パトロール中の米兵から車を停めるように命じられたが、すぐに停車しなかったため発砲され、運転席と助手席にいた2人が射殺された。これは殺人ではないのか。おびたたしい数のイラク人が、戦争という大義名分の下で「合法的に」殺されている世界の現実がある一方で、この国では今、ひとりの人間を死刑にせよという声に溢れ返っている。沈思黙考することが必要な時がある。動く映像の中の饒舌よりも1枚の写真こそが世界の現実を捉え得ることがある。再び、沈思黙考。

2006年6月17日

シカラムータの疾走を久しぶりに

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熱演するジンタらムータ(撮影:金平茂紀)

大熊ワタル率いるシカラムータのヴァリアント、ジンタらムータのライブを新宿のNaked Loftでみる。決して広くないスペースに90人近くでびっしり超満員。ライブ開始ギリギリに会場に着いたので当然立ち見。こういう熱気も久しぶりだけれど、客層がバラバラなのがいい。若い人たちはどこでシカラムータと出会ってきたんだろう? 新大久保駅近くの無国籍風の場所柄か、ライブ中にいろんな人が会場の外で足を止めてライブをみつめていた。彼らの演奏を聞きながら、「楽隊(がくたい)」という言葉を思い出す。「Turkish Dance」とか「青髭の憂鬱」とかの懐かしい曲を聴いてすっかりいい気持ちになる。ラストの「Bon Voyage」までたっぷりの大サービス。シカラムータはまだまだ疾走中だ。あったり前のことだが、彼らは上手いし楽しいし、とんがっているし、楽隊のプロとしての誇りももっている。もうずいぶん前からニッポンの音楽状況は超資本主義にやられて醜悪な様相を呈しているけれど、村上世彰やホリエモンも、こういう音楽につられて踊り出すことになったら面白いのにね。全くシカラムータは「ハメルンの笛吹き」みたいに危険で魅力的だ。

2006年6月11日

入門書の楽しさ 小熊英二『日本という国』

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『日本という国』
2006年4月、理論社

義務教育である学校がまともに機能していない、つまり教えるべき本当のことを教えていないので、理論社の中学生向け新書シリーズ「よりみちパン!セ」のような試みは、とても有意義だ。小熊英二の『日本という国』は、そのなかでも出色の出来だと言っていい。小熊も本書のなかで言うとおり、義務教育は初めは「強迫教育」と言われていた。国家が国民を強迫して子供を学校に送り込ませたのだ。その理由から説く本書は、近代国家・ニッポンの成り立ちを実に的確に言い当てている。凡百の教科書よりも本当のことをあられもなく直言しているので、読み終えるとすっきりしてある種の爽快感さえ覚えるくらいだ。

入門書とは本来がこの本のように楽しいものだった。もう一冊、今ゆっくり読み進んでいる入門書がある。2005年度の放送大学の教科書で『現代思想の地平』(財団法人 放送大学教育振興会)だ。石田英敬さんがまとめた本だが、これがとても読み応えがある入門書になっていて面白い。今、出版業界でブームになっている新書の質があまりにヒドいので、こういう入門書にあうと一安心する。

2006年6月10日

イラク戦争の時代の「慈善」と「偽善」

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永井愛の『やわらかい服を着て』(新国立劇場小ホール)をみる。イラク戦争下の日本で、戦争の被害をこうむったイラク国民へのささやかな人道支援活動を企図するNGOに集う若者たちの姿。人道支援とかNGOとか反戦と聞くだけで、「ああ、あの手の人たちね」とわかったような口をきく人々が大多数になってしまっている今の日本の大状況のなかで、よくぞ挑発的なテーマを選んだものだと思う。とは言っても、そのNGOの小集団内においてもやはり人間同士の葛藤が生じる。そこを直視することがこの劇のテーマだ。わずか2年ほど前には、「自己責任」とかいう語が世間を闊歩していた。「慈善」を企図する人間たちをひたすら「偽善」と罵倒するあれらの人々の病的な「独善」を今更思い出すのも不愉快だが、時代はもっともっと悪くなっている。『亡国のイージス』や『おとこたちの大和』といった映画がヒットする世の中だ。自衛隊が撤収しようがしまいが、ひたすら「見ざる、言わざる、聞かざる」を貫き、次のバッシングの餌食を見つけだそうとネット上を彷徨うあれらの人々が、次に辿り着く場所はどこなのだろうか。ステージの上の役者たちはそれぞれが生き生きしていた。吉田栄作は好演だったが、陰影が薄い二枚目すぎてNGOのリーダー役としてはどうなの?というのが正直な印象だった。小島聖や大沢健の演技に好感がもてた。劇が終わってから会場外に展示されていたイラクの子供たちが描いた絵をみて、こころのなかに微妙な変化が起きていることを実感した。やはり演劇には何かを変えるちからがあるのだと思う。

2006年6月 3日

ネット時代でも読むに値するまともな雑誌

ネット時代になって、日本の週刊誌、月刊誌のレベルがますます劣悪化していることは、読者であれば誰にでもわかることだ。読むに、見るに値しないヒドい、えげつない内容が跋扈する。出版元の経営者らも、すでに恥とか品性という感覚を喪失しているので、「あれは週刊誌の連中の勝手にやったこと」だの、「編集権は現場におろしている」だの、もっともらしい言い訳を繰り返しているが、要するにこの国の出版文化の低劣化に目をつぶっているにすぎないのだ。けれども、なかには面白い挑戦を続けている雑誌もわずなながらある。

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http://moura.jp/scoop-e/courrier/

講談社が毎月第1・第3木曜日に出している『クーリエ・ジャポン』は、このネット時代でも読むに値するまともな内容が掲載されている雑誌だ。編集長の古賀義章さんはパリ遊学中、9/11事件を特集で報じたフランスの『クーリエ』を読んでこんな雑誌が日本にも欲しいものだ、と考えていたのだという。最新号#014をみても、英インデペンデント紙のロバート・フィスクのイスラエル・ロビーに関する記事や、NYタイムズ紙のNSA(国家安全保障会議)盗聴事件の記事などが満載されている。これらの報道は、本来ならば日本のメインストリームのメディアが報じているべき内容なのだが、今の雑誌ジャーナリズムは見向きもしないので、『クーリエ・ジャポン』がこのようにピックアップして報じると実に新鮮なのだ。

記事のソースは、英米だけに偏らず、『シュテルン』や『フィガロ』、ポーランドやアラブ世界、ロシアのメディア、さらにはアジアの有力紙誌にまで及んでいて、こころざしが実に高い。

ちゃんと生き残って欲しい雑誌だ。

Profile

田原総一朗(たはら・そういちろう)

-----<経歴>-----

1934年、滋賀県彦根市生まれ。
早稲田大学文学部卒。
岩波映画製作所、テレビ東京を経て、77年フリーに。
テレビ東京時代の連続番組「ドキュメンタリー青春」で、取材対象者に肉薄する独特のインタビュー手法で注目を浴びる。
現在は政治・経済・メディア・IT等、時代の最先端の問題をとらえ、活字と放送の両メディアにわたり精力的な評論活動を続けている。
テレビジャーナリズムの新しい地平を拓いたとして、98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)を受賞した。
2002年より母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生や社会人の指導にあたっている。

-----<出演>-----

『朝まで生テレビ!』
(TV朝日、毎月最終金曜25時?)

『サンデープロジェクト』
(TV朝日、毎週日曜10時?)

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