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「半商品」で暴力的市場経済を空洞化する

フリーランスの哲学者・内山節さんが、いまから10年近く前、こんなことを語っていた。

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「私はこれからは、農業にかぎらず、どんな分野でも、商品を半商品に変えていく関係づくりをしていったほうが面白いと思っています。そのことによって、暴力的な力を持っている今日の市場経済を、内部から空洞化させていくことができたら、私たちは今日の市場経済の支配から大分自由になることができるでしょう」(1998年「農村文化運動148」)

内山さんは、「半商品」の概念を、1992年に92歳で亡くなった明治生まれの経済社会学者・渡植彦太郎氏に教えられたという。

「彼は私と会うと、よくこう言っておりました。『明治の人間は、町に半商品が沢山あった時代を知っている。それが明治の人間の強みだ』と」

「半商品」とは、商品として流通はしているが、それをつくる過程や生産者と消費者との関係では、「よりよいものをより安く」というような商品としての合理性(経済合理)が必ずしも貫徹していない商品のこと。具体的に言えば、3月5日のこのコーナーで紹介した「鳴子の米プロジェクト」もそう。消費者が60キロ2万4000円の「東北181号」を買い、農家に1万8000円を渡し、差額6000円を、後継者の育成や「鳴子の器」づくり、「鳴子のおむすび」開発など、米にまつわるたくさんの「小さな仕事」の開発に充てようというこのプロジェクトでは、鳴子の米を買うことは地域の未来に対する「投資」でもある。多分に遊び要素も含むが、四国独立リーグ・百姓スポンサーの「一俵入魂 百勝の会」もそうである。ここでは「買う」ことはたんなる「消費」ではなく、つくり手と食べ手が共通の夢と志を実現する――よりよい世界をつくるための営みでもあるのだ。

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80年代後半から90年代後半にかけて全国に1万2000カ所もできた農産物直売所もまた、ダンボールに詰められ、都市に大量出荷される「商品」農産物を、農家のじいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんとの対面販売を復活させ「半商品化」する働きをもっていた。そこではいま、売り上げの1%を基金として、たとえば就農希望の研修生受け入れ、地域の料理写真集作成などの夢と志の実現につかおうという動きも起きている。まさしく「商品を半商品に変えていく関係づくりをしていったほうが面白い」のだ。

同様に「働く」ことについても「半商品」的な側面があったと内山さんは言う。

「職人は経済の合理性だけでものをつくってはいなくて、自分の誇りにかけて、自分の納得のいくものをつくっている。そのために大変な日数をかけ、日当計算をすれば赤字になってしまうこともある。消費者もただ商品を買いに来ただけではなく、そういう職人のつくるものだから手に入れたいと考えている。つまりここでも商品でありながら、生産者も消費者も商品の論理だけで動いていないという関係が成り立っている。すなわち半商品の世界があるのです」

ここでは働く=労働力を「売る」ことも、よりよい世界をつくるための営みであった。

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だが、「買う」ことも働く=労働力を「売る」ことも、より世界を悪くするための営みに変質しているとしたら……。3月17日に紹介した「高円寺一揆・素人の乱」の若者たちは、そのような売り買いを拒否し、大量生産・大量消費・大量投機の経済の歯車を少しでもスローダウンさせようと、「リサイクルショップ」「古着屋」などを生業としている。そこでのリサイクル品や古着もまた「半商品」ではないだろうか(そういえば、「貧乏上手」とも言うべき若者の変化――少なく働き、少なく消費する――を一番はじめに感じたのは、2000年末、明治公園でのフリーマーケットに偶然遭遇したときだった)。

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アメリカでは、身にまとう服から航空券まで、生活のすべてをdumpster diving(ゴミ箱あさり=無駄の回収)で得ている若者たちもいるという――「抵抗食の会(仮)」ブログからの情報。

どうやら世界は、買う、働くといった日常の営みを、「半商品」の視点で根本的に考え直すべきところに来ているのではないか――そんな話を、来週行われる集まりでできたらと思っている。

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Profile

甲斐良治(かい・りょうじ)

-----<経歴>-----

1955年宮崎県生まれ。
九州大学経済学部卒。
社団法人・農山漁村文化協会(農文協)「増刊現代農業」編集主幹。
『定年帰農 6万人の人生二毛作』『田園住宅 建てる借りる通う住まう』『田園就職 これからは田舎の仕事が面白い』『帰農時代 むらの元気で「不況」を超える』の「帰農4部作」で、1999年農業ジャーナリスト賞受賞。
その後も『青年帰農』『団塊の帰農』『若者はなぜ、農山村に向かうのか』などの「帰農シリーズ」で新しい農的生き方を追究するとともに、「地元学」(ないものねだりではなく、あるもの探し)による各地の地域づくりにかかわる。
都市と農山漁村の共生・対流推進会議運営委員、100万人のふるさと回帰支援センター・里山帰農塾講師。
建築家・石山修武氏、民俗研究家・結城登美雄氏と「21世紀型農村研究会」05年に結成。

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