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「くに」より先に「むら」がある

 私が編集している「増刊現代農業」は一号一テーマの特集主義で、次号は「山・川・海の『遊び仕事』」(7月13日書店発売)。これまでこのコーナーでも紹介してきた地蜂獲りやイセエビ生け簀漁、郡山の「奇跡のむら」の堰上げのほか、山菜採り、川漁、鴨猟など、さまざまな「採る」「獲る」「遊び仕事」のオンパレード。

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1部900円 年間購読3600円(送料サービス)

 もちろん、山・川・海での「採る」「獲る」行為をつきつめていくと、入会権や漁業権などの「所有と利用」や「コモンズ」の問題とも関係し、また、経済的価値観だけではとらえられない自然・身体・労働の関係性が見えてくる面白みもあります。
 
 今回は、その取材過程で、きわめて貴重な史料を「発見」することもできました。それが写真の「定置網漁業免許状」。大分県宇佐市長洲の新開基国さんのお宅に保管されていた「石干見」という漁法についての免許状です。

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撮影・高橋陽子さん
 
 まず、「石干見」について大分在住のフリー記者・高橋陽子さん取材の文章で説明すると、こんな漁法――長洲の人が「ひび」とよぶ伝統漁法は、正式には「石干見」と呼ばれるもので、浜から海へ弧を描くように石を積んだ、海中の石の囲いである。高さ1mほどに積みあげた石垣は、満潮時には海面の下に沈み、干潮時には姿をあらわす。潮に乗って海岸近くにやってきた魚が、エサを食べているうちに潮が引いてしまい、取り残される仕組み。干満の差の激しさを逆手にとった魚のトラップ、石の定置網と称する人もいる。長洲では最大で弧の長さ約600m、海に400mもせり出したものもあったとされている。ひびの中央部には一カ所「宿口」と呼ばれる出口が設けられていた。ここに網や竹のスノコなどを張り、引っかかった魚や、逃げきれずに内海で泳ぐ季節ごとの獲物を網やタブ(たも)などで生け獲る。

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諫早・中島安伊さんの「スクイ」 撮影・竹島真理さん

 この「石干見」漁は、遠くミクロネシア起源といわれ、古代から沖縄(カチ)、有明海(スクイ)、豊前海(石ひび)、五島列島(スケアン)などとして行なわれてきた素朴な漁法ですが、埋め立てやノリ養殖などの海面利用で昭和40年ころまでに廃れてしまい、現存するのは長崎県諫早市の中島安伊さん(87歳)所有のものだけ(写真)――ただし、石垣島白保地区では5月に復活し、大分・長洲では9月に復活の予定。

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撮影・高橋陽子さん

 今回「発見」した史料で何が面白いかというと、その日付。免許期間が「自明治35年7月1日」「至明治55年6月30日」となっていますが、発行は明治44年7月5日。じつは明治35年7月1日というのは、旧漁業法(明治漁業法)施行の日。それから9年も遅れて、「免許状」が発行されているのです(また免許期間20年で、明治55年予定の更新が実際には大正11年に、大正31年予定の更新が昭和17年に行なわれた史料も見つかり、地元紙全国紙地方版のニュースにもなりました)。

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マレナ集落の慣行的土地利用

 つまり、漁業「権」、入会「権」などというと、いかにも国家が漁民や農民に与えた権利のように見えますが、昨日の「『奇跡のむら』にインドネシア人がやってきた」で、Gさんが、「たぶん入会は耕作以前の縄文時代からあったんだと思う。『国』なんかできる前からあったんだ」と語っているように、また、マレナ集落の慣行的土地利用によってつくられた景観と、行政による不自然な線引きとの落差が示すように、「『くに』より先に『むら』があった」のであって、いわば漁業権、入会権は「日本先住民の当然の権利」なのだと思うわけです。

 そう考えてみると、「農村と都市」という問題の立て方よりも、「農村と国家」「むらとくに」という問題の立て方のほうがより本質的に物事が見えてきて、都市は「むら」と「くに」、どっちにつくのかという選択しかない非主体的な存在でしかないように思えてきます。たとえば、食料自給率の問題をとっても、よく高野さんが「国の自給率なんて心配したってしょうがない。それよりわが家の自給率だ」と、おっしゃっているように、ポチの訪米手土産に牛肉輸入解禁を持って行くような「くに」をあてにしてもそれはまったくの「ないものねだり」であって、都市に暮らす人が「わが家の自給率」を上げるためには、自分でつくるか、気心の知れた農家、あるいはむらにお願いするしかないのではないかと思うのです。

 7月3日に「山・川・海の『遊び仕事』」の出張校正を終え、ヌケガラ状態で上記のようなことをボンヤリ考えていたら、本日、地元学つながりの水俣・相思社・遠藤邦夫さんから「ごんずい」94号が送られてきて、それに掲載されていた、漁師で水俣病認定申請を取り消した緒方正人さんのインタビュー「ほんとうの『くに』を求めて」を読んだらハゲシク共感してしまいました。

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水俣・茂道の海

(以下引用)
緒方 もっと端的な言い方をすれば、(水俣病)50年に際して国を捨てたらどうなんだと考えました。国にいつまでも幻想を持っているから組み込まれていく。我々の方から「もう国はいらないから出ていってくれ」と言いたい。

遠藤 水俣病の運動には相手があります。国の悪口を言いますが、裏を返せば実はこうして欲しいという期待だったりするんですよね。

緒方 そうです、それが依存関係なんです。そうしてほんとうの生命存在としての「命の国」からは遠ざかってしまっている。へたをすれば裏切っているかもしれない。命を育む山河を忘れて、幻想的な国家に引きずられ組み込まれて行く。

遠藤 国には物理的に国土があるし、制度としての官僚や政治家がいます。ほんとうの国とは何でしょうか?

緒方 おれは国には二つあると思っている。システム社会としての幻想の国と、山河・命に育まれた「くに」というか、生命世界のことを言っている。「命のつながる『くに』で自分たちで自治をやっていく。だから国家は口も手も出すな、出て行ってくれ」ということだと思うんです。

遠藤 明治までは国なんてのは、「お上が確かにあるらしい、たまに不幸がくるから」とこの程度だった。明治の国民国家成立以降、自治ができなくなっていったと思う。

緒方 家のおふくろなんかもそうだった。国会議員がいるらしい、東京には政府があるらしいだった。だから「俺らの村」ではということで、自治としてのもやいが生きていた。本来の共同体があったんです。
(引用終わり)

緒方さんの言う「命の国」は、私の考えている「むら」とほぼ同義だと思います。「東京には政府があるらしい」「どうやら漁業法というものができたらしい」――その象徴が9年遅れの「定置漁業免許状」ではないかと思います。

 この「ごんずい」の緒方さんのインタビューはネットでも読むことができるのですが、今回はぜひ、実物を取り寄せてご一読いただけたらと思います。

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■ごんずい 年間6回発行/購読料2100円1部315円 財団法人水俣病センター相思社 〒867-0034 熊本県水俣市袋34 電話0966-63-5800 FAX0966-63-5808 郵便振替01990-8-25341

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茂道のエビスさん

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Profile

甲斐良治(かい・りょうじ)

-----<経歴>-----

1955年宮崎県生まれ。
九州大学経済学部卒。
社団法人・農山漁村文化協会(農文協)「増刊現代農業」編集主幹。
『定年帰農 6万人の人生二毛作』『田園住宅 建てる借りる通う住まう』『田園就職 これからは田舎の仕事が面白い』『帰農時代 むらの元気で「不況」を超える』の「帰農4部作」で、1999年農業ジャーナリスト賞受賞。
その後も『青年帰農』『団塊の帰農』『若者はなぜ、農山村に向かうのか』などの「帰農シリーズ」で新しい農的生き方を追究するとともに、「地元学」(ないものねだりではなく、あるもの探し)による各地の地域づくりにかかわる。
都市と農山漁村の共生・対流推進会議運営委員、100万人のふるさと回帰支援センター・里山帰農塾講師。
建築家・石山修武氏、民俗研究家・結城登美雄氏と「21世紀型農村研究会」05年に結成。

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