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2012年7月14日

大飯原発直下の活断層を直ちに調査せよ

マル激トーク・オン・ディマンド
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第587回(2012年07月14日)
大飯原発直下の活断層を直ちに調査せよ
ゲスト:渡辺満久氏(東洋大学社会学部教授)

 夏の電力不足への懸念から、野田総理自らが責任を取ると明言した上で今月9日に再びフル稼働状態に入っていた大飯原発3号機の直下に、活断層が存在する疑いが浮上している。なぜ今になってと思われる向きもあろうが、12日には国会議員108人の連名で首相と枝野経産相に、大飯原発敷地内の活断層の再調査の要望書が提出されるなど、現実に事態は広がりを見せている。

 今回のゲストの渡辺満久東洋大学社会学部教授(変動地形学)は、2006年頃から日本各地の原発施設付近の活断層調査を行い、危険なものについては警鐘を鳴らしてきた。そして、先月27日に、有志議員らと大飯原発の施設に実際に入って観察をした結果、現在稼働中の原発の直下に活断層が存在する疑いが非常に高くなったと言う。2日後の29日、枝野経産大臣は、この問題を専門家会議で確認する考えを示しているが、7月3日の会議(「地震・津波に関する意見聴取会」)では、関西電力側が、関係資料が見当たらないとして、検討が次回聴取会へ持ち越されるなど、そもそも現行の原子力行政システムで、この問題にまともに対処できるかどうかさえ、疑わしい状況となっているのだ。

 大飯原発については、3、4号機を建設するための設置許可申請の際に、関電から保安院に提出されたとされる地質調査結果の「スケッチ」の中に明らかに活断層の存在が疑われるデータが含まれていた。しかし、当時の原子力安全・保安院も原子力安全委員会もこれを問題にせず、3、4号機の建設許可は降りてしまった。今回の福島第一原発の事故を受けて、再稼働を前にストレステストやバックチェック審査が行われたが、その審査には問題となった「スケッチ」は提出されていなかったことも、保安院と市民団体(グリーンアクションら)との間の交渉の中で明らかになったと言う。

 要するに審査をする側、すなわち保安院と安全委員会の監視機能も働いていなければ、審査を受ける側、つまり関電からも適切な情報提供が行われていないために、建設段階で活断層の存在が見過ごされたばかりか、今回の事故を受けたバックチェックでもその問題は浮上すらしなかったというのが、実情のようなのだ。

 言うまでもないが、断層とは地層の「ずれ」のことで、プレートがぶつかり合う圧力によって生じる。そのうち比較的最近「ずれ」が生じたと推定される断層を「活断層」と呼び、再びずれが起きる可能性が否定できないものと位置づけられる。現在の原発に関する安全指針では、過去約12.5万年以内にずれがあった断層を、再びずれが起きる可能性がある「活断層」と認定している。

 断層のずれが地震の原因であることはよく知られているが、活断層の真上に建造物があった場合、単に地震の揺れによる破壊では済まされない問題が生じると、渡辺氏は言う。地震による破壊には「揺れ」による破壊と「ずれ」による破壊があり、仮に地震の揺れには耐えられる建造物であっても、それが立つ地盤が上下や左右に「ずれ」てしまえば、建造物へのダメージは単なる揺れよりも遙かに大きくなるというのだ。つまり、例え原子炉が強い揺れに耐えられるよう設計されていたとしても、それが立っている地盤そのものが隆起したり捻れたりすれば、原子炉やその他の原発関連施設が損傷を受けたり破壊される可能性が否定できないのだ。

 しかし、それにしてもなぜよりによって活断層の上に原発が建設されてしまうのだろうか。確かに日本は地震国で活断層は日本中至るところに広がっているのは事実だ。しかし、自らを「反原発派ではない」と語る渡辺氏は、活断層のない場所に原発を建設したければ、それが可能な場所はいくらでも存在すると指摘する。例えば、若狭湾周辺は日本でも最も活断層が多く集中する場所だが、そこが同時に日本の原発の3割近く(50基中14基)が集中する原発銀座であることはよく知られている。これではあたかも活断層が多い場所を選んで原発を建設しているようにさえ見えてくる。実際渡辺氏は、日本のすべての原発のうち、玄海原発を除くほとんど全ての原発が活断層の「上」または付近にあるのが現実だと言う。

 原発行政に不信感をお持ちの向きは、そろそろどこに問題の本質が隠れているかにお気づきのはずだ。日本のほとんどすべての原発が活断層の上に建設されてしまう理由は、渡辺氏が「普通の地質学者が常識的に見れば明らかな活断層」といえる断層が、電力会社の調査では見つからなかったとして報告されていなかったり、報告されていても、それを審査する側の原子力安全保安院、原子力安全委員会側の専門家たちが、それをそのままスルーしているからなのだ。そして、保安院、安全委員会の下でこの問題を審査する「有識者」らからなる専門委員会は、ほぼ例外なく電力会社や原子力産業との間で利益相反問題を抱える委員が多数を占めていたり、実質的に彼らによって牛耳られているのが実情であり、「とにかくいろいろ背負っている人が多すぎる」と渡辺氏は笑う。

 情報隠蔽+御用学者+利益相反=危険な原発。この問題は原発が内包する構造的問題をあまりにもくっきりと浮かび上がらせている教科書的事例であると同時に、その問題が3・11の事故を経験した後も、いまだに続いていることを示唆しているという意味で、われわれはあらためてこれを深刻に受け止める必要があるのではないだろうか。

 しかし、嘆いてばかりもいられない。直下に活断層が存在する可能性高い大飯原発は既に臨界状態でフル稼働している。関電や政府はボーリング調査には何ヶ月もかかるとの理由から今のところ調査には前向きではないようだが、渡辺氏は活断層の存在は1日や2日の調査で十分確認ができると言う。もちろん原発を止めることなく調査はできるのだそうだ。であるならば、一刻も早く大飯の調査を早急に行った上で、信頼できる新しい原子力行政の下で、全国の原発の活断層調査を早急に行う必要があるだろう。衝撃的な事実を淡々と指摘する孤高の地質学者渡辺氏に、ジャーナリストの神保哲生と哲学者の萱野稔人が、原発の活断層問題とその背景にある問題構造を聞いた。

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<ゲスト プロフィール>
渡辺 満久(わたなべ みつひさ)東洋大学社会学部教授
1956年新潟県生まれ。80年東京大学理学部卒業。90年東京大学大学院理学系研究科地理学専攻博士課程修了。理学博士。東洋大学社会学部助教授などを経て2002年より現職。共著に『活断層地形判読』、『活断層詳細デジタルマップ』など。

2012年7月 7日

リオの精神は死んだのか

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第586回(2012年07月07日)
リオの精神は死んだのか
ゲスト:古沢広祐氏(国学院大学経済学部教授)

プレビュー

 20年前のリオ地球サミットの熱気や楽観論は一体どこに行ってしまったのだろう。

 日本が原発の再稼働問題や増税法案をめぐる国会の混乱に揺れる6月下旬、ブラジルのリオデジャネイロで世界中の政府関係者や産業界、市民団体の代表者ら総数4万人以上の人々が集まる一大イベントが開催された。20年前に同地で開催されたリオ地球サミット(国連環境開発会議)にちなんで「リオ+20」(国連持続可能な開発会議、6月20~22日)と呼ばれ、リオサミットやそれ以降に合意された国際的な貧困撲滅や環境保全の取組みの成果などが検証されたほか、将来の目標などが話し合われた。

 しかし、20年前の地球サミットの熱気は既に過去のものとなり、さしたる成果がないまま閉幕することとなった。国際NGOなどを中心とした市民の側からは早くも「失敗」だったとの批判が出ている。

 1992年と2012年の両方の会議に参加した国学院大学の古沢広祐教授は、20年前と比べて今回の会議を取り巻く人々の熱気は10分の1に萎んでしまったと語る。1992年の地球サミットでは、半世紀に及ぶ冷戦が終わり、平和を取り戻した世界で人々はようやく環境や人権、途上国の貧困など地球的課題に向き合うことが可能になったというのが、サミットに参加した人々の共通認識だった。会議でも「環境と開発に関するリオ宣言」が採択され「持続可能な開発」というキーワードの下、多くの行動計画がとりまとめられた。また、会議期間中に「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」の署名が開始されるなど、リオ・サミットは人類にとって環境や開発に関する国際的な取組みにおけるターニングポイントとなるはずだった。

 しかし、その後の世界の20年は、明らかにリオで多くの人が期待したようなものにはならなかった。冷戦の終結で軍事費の大幅削減が可能になり、それが「平和の配当」として、貧困や環境問題解決のために使われることが期待された。確かに1998年頃までは軍事費はある程度減少傾向にあったが、その後増加に転じ2011年には1兆7275億ドルに達している。これは冷戦末期を上回る金額だ。

 世界全体のCO2排出量は1990年から2010年の間に50%近く増加している。貧困問題については、東アジアを除き2000年のミレニアム・サミットで合意された「1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年比で半減させる」目標すら達成できていない。

 今回の「リオ+20」では持続可能な開発を実現するための方策として、環境に配慮した生産や消費を奨励する「グリーンエコノミー」の促進や国連の制度改革などが提案されたが、参加国間の対立が根深く、ほとんど具体的な成果は得られなかった。グリーンエコノミーという考え方でさえ、先進国と途上国の間には大きな認識の開きがあることが明らかになった。

 20年前のリオサミットで合意された約束はほとんど実行されず、冷戦が終結しても世界には依然として深い対立が残ったまま、われわれは地球規模の様々な問題に対して有効な手立てを打つことができていない。同時に気候変動や生物多様性問題は深刻の度合いを増し、もはやポイント・オブ・ノーリターン(元には戻ることが不可能な地点)を超えてしまったとの悲観論も聞こえる。貧困問題も解決からほど遠い。

 更に日本には、それ以前の問題が山積し、政府の指導者にも一般市民の間でも、地球規模の問題を真剣に考える余裕すら残っていないようにさえ見える。

 リオの精神は本当に失われてしまったのか。リオ以降、地球では何がかわり何が変わらなかったのか。人類はこのまま地球規模の問題に手をこまねいたまま、破局への道を突き進んでいくのか。国連に代わる新たな合意形成の方法はあり得るのか。「リオ+20」から帰国された古沢氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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<ゲスト プロフィール>
古沢 広祐(ふるさわ こうゆう)国学院大学経済学部教授
1950年東京都生まれ。74年大阪大学理学部生物学科卒業。89年京都大学大学院農学部農学研究科修了。農学博士。目白学園女子短期大学生活科助教授などを経て95年より現職。93年JACSES(「環境・持続社会」研究センター)参加、2003年より代表理事を兼務。著書に『地球文明ビジョン「環境」が語る脱成長社会』、共著に『共存学:文化・社会の多様性』など。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
http://www.videonews.com/

ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

マル激!メールマガジン
↓ ↓ ↓


-----<著書>-----

新刊!
↓ ↓ ↓

『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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