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年金問題の本質

マル激トーク・オン・ディマンド
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第570回(2012年03月17日)
年金問題の本質
ゲスト:鈴木亘氏(学習院大学経済学部教授)

 年金が危ない。このままでは早晩破綻することがわかっているのに、誰も手を打とうとしない。野田政権が消費税増税という政治的なコストを払ってまで意欲を見せる「社会保障と税の一体改革」は年金問題の本質にはまったく切り込んでいない。

 年金制度に詳しい学習院大学の鈴木亘教授によれば、本来950兆円ほど積み上がっているはずの年金積立金が、110兆円程度しか残っていない。しかも、年金は保険料を支払う労働人口の減少と受給する高齢者の増加のために、毎年赤字が膨らみ続けている。つまり、今も僅かに残った100兆円あまりの年金積立金を切り崩しながら運営されているため、今後、さらに少子高齢化が進めば、2030年代には積立金が枯渇し、年金が支払えなくなることが確実だと言う。

 現行の年金制度は2004年に「100年安心プラン」などという触れ込みで改変され、国庫負担金も3分の1から2分の1に増額された。それが、あと20年と持たずに破綻が確実な状態にあると言うのだ。

 しかし、さらに問題なのは、今回野田政権が提案している「社会保障と税の一体改革」は、現行の年金制度が抱える根本的な問題には何ら手をつけていないことだ。消費税を増税をして「社会保障と税の一体改革」なるものが断行されたとしても、はやり年金が2030年代には払えなくなることに変わりはない、と鈴木氏は言う。

 年金問題の本質とは何か。鈴木氏は、政府は現行の年金制度を「賦課方式」などという言葉でごまかしているが、もともと賦課方式ではなかった。しかし、1970年代に給付を大盤振る舞いしたために、積立金が切り崩されてしまい、結果的に賦課方式のような形になっているだけだと指摘する。その大盤振る舞いによって生じた800兆の債務を確定させ、それを何らかの形で返済することで、年金を再び本来の積み立て方式に戻すことこそが、年金問題の本質だと言う。

 現在の「疑似賦課方式」では、今後、少ない若者が多くの老人を支えなければならなくなる。その若者たちは、「1人の若者が1人の老人を支える」ぼどの重い負担を強いられた上に、自分たちが年金受給年齢に達した時には、自分たちが払ってきた保険料すら回収することすらできなくなる。年金は破綻が必至な上に、重大な世代間格差問題を抱えている。しかし、年金を従来の積み立て方式に戻すことができれば、人口の動態にかかわらず、自分が支払った保険料は老後、必ず受け取ることができるようになるし、少ない若者が多くの老人を支えなければならないなどという、世代間のアンフェアな分配も解消される。

 鈴木氏は過去の大盤振る舞いのために消えてしまった総額800兆円からの年金積立金の欠損、つまり債務を埋めるためには、債務を年金会計から分離し、100年単位の時間をかけて税金によって補填していく方法しかないだろうと言う。

 しかし、はたして今の政治に800兆の債務を解消して、一旦不作為によって賦課方式に陥ってしまった現在の年金制度を、再度、積み立て方式に戻すなどという大技が期待できるだろうか。800兆の債務を分離し、ぞれを税で返済するという話になれば、当然その大穴を作った厚労省の責任問題も浮上する。また、税方式に移行することになれば、年金の管理が厚労省から財務省に移ってしまうため、厚労省は何が何でもこれに抵抗してくるはずだ。

 ということは、このような提案は、年金を管轄している厚労省からは、何があっても出てくるはずがない。経済財政諮問会議のような形で、厚労省外部からこのような年金改革案があがってくる枠組みを作り、さらに厚労省の徹底抗戦に遭いながらそれを断行するためには、想像を絶するほどの政治力が必要になるだろう。しかし、それができなければ800兆の債務はさらに大きく膨らみ続け、積立金が枯渇した段階で年金が払えないという事態を迎えることになる。

 鈴木氏と、現在の日本の年金制度が抱える本質的な問題は何かを考えた。

<ゲスト プロフィール>
鈴木 亘(すずき わたる)学習院大学経済学部教授
1970年兵庫県生まれ。94年上智大学経済学部卒業。同年日本銀行入行。98年退職。経済学博士。社団法人日本経済センター研究員、東京学芸大学准教授などを経て09年より現職。著書に『だまされないための年金・医療・介護入門』、『年金は本当にもらえるのか?』など。

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コメント (1)

年金問題の根幹にふれる制度の本質に触れられており、考えさせられるところが多い。

確かに今のまま擬似賦課方式で支給を続けるならば、2030年代には年金制度が破綻してしまうとのご指摘は、当然の帰結なのでしょう。

現在の年金制度での根本的間違いは、田中政権の時、年金金額を倍増させてしまったが、その後年金収入をはるかに超える金額が支出させており、積立金のうち800兆円が消え去り、100兆円しか残っていないとの御指摘と理解します。支給金額と0金利政策が重くのしかかっていると言えます。

現状の年金制度を客観的に見るとき、積立をするにしても、金利が低く大きな利息配当が全く期待できないことが大きな問題ではないか。
日本は、資本主義の国というより社会主義国家といった方がてきせずであり、株式市場を正しい見方で見ているとはとても思えない。したがって、株式市場が正常に機能せず、外国人が主体的に支配をしています。

国家の市場に対する関心が薄く、株式市場を活性化させると金利が上がり、企業に打撃が大きいと言うことで、長年0金利を続けています。
体制的には社会主義体制をしきながら、政策的には企業第一であり、国民のこと、国民の生活のことなど考えていないことです。

政策を変換し国民第一にすれば、金利が上がり、内需を喚起することになり、年金などの積み立ても正常な姿が期待できるのです。現状のままでは、個人が積み立てるにしても金利が0%では大きな成果は期待できません。

一方401Kなども株式市場が活性化しなくては将来性に疑いが出てきます。金融市場を外国人に支配されるのではなく、日本政府が主体的に支配する体制にしなければ、金融を土台にする年金制度など成り立たないと言いたい。

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神保哲生(じんぼう・てつお)

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1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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