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これからわれわれは3・11とどう向き合うか

マル激トーク・オン・ディマンド
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第569回(2012年03月10日)
これからわれわれは3・11とどう向き合うか
ゲスト:本多雅人氏(真宗大谷派蓮光寺住職)

 3月11日の大震災から1年が過ぎようとしている。メディア上では震災1周年特集企画が乱立しているが、復興も原発事故の収束も道半ば。このまま、この大きな節目を境に震災が急速に風化していく気配さえ感じられる。誰でも悲惨なできごとを脳裏から消し去りたいとの思いはあるだろうが、これだけの大きな震災と事故を、単なる過去の悲惨なできごとで終わらせていいはずがない。この震災が、これまでのわれわれのあり方の根幹を問う大切な教訓を多く与えていることだけは、まちがいないからだ。

 この先われわれは3・11といかに向き合うべきかと考えるヒントを求めて、東京亀有の蓮光寺に本多雅人住職を訪ねた。

 真宗大谷派の僧侶として親鸞聖人の教えを説く本多氏は、今回の震災は人知の闇を明らかにしたもので、直接被災したか否かにかかわらず、われわれはこの震災を、人間の無明性(わかったつもりになること)や人知の限界と向き合う機会としなければならないと説く。3・11は近代以降の科学万能主義と経済至上主義の考え方に疑問を投げかけたばかりか、今までそれをよしとしてきた人知のあり方そのものまで深く問われることになった。そして、原発に賛成か反対かを問う以前に、人間そのものが問われ、人間が根本的に抱える無明性の問題にまで深く切り込んでいかないと、この震災が露わにしたわれわれの問題の本質が見えなくなってしまうと考える。

 親鸞聖人の教えに「自力作善(じりきさぜん)」がある。これは、自分が何とかできるとか、自分が何かをわかったつもりになってしまうことを指す言葉で、浄土真宗では誤った態度として戒められている。本多氏はわれわれの多くが自力作善に陥り、本当は何もわかっていないのに、すでにわかったこととして、自分の中に固定化した考えを知らず知らずのうちに作り上げていたのではないか。そして、その「わかっていたつもり」が、今の政治、経済、社会の状態を生み、そしてそれがこの震災によって打ち砕かれた状態にあるのではないかと指摘する。まずは、大震災と原発事故という大惨事を目の当たりにして、何が正しくて何が間違っているのか、何が救いで何が幸せなのかがよくわらからくなって動揺している自分と向き合わなければならないと言う。 本多氏が言う自分と向き合うとは、どういうことなのだろうか。人間はついついわかったようなつもりになり、自分の外に「正義」や「善」を作り出して、それにしがみついてしまう。しかし、その正義も所詮は自分が、あるいは人間が作ったものに過ぎない。それが本当の善なのか、それが本当の正義なのかどうなのか、本当のところは誰にもわからないはずだ。常に「自分は愚かである」という自覚が必要になる。自分が愚かであることを認めた上で、気がつけば自分を正当化することばかりに熱中している人知の愚かさに対して自覚的になることが大切なのだと本多氏は語る。

 これは決して闇雲に人知を捨てろとか、自助努力を一切しなくていいということを意味するものではない。所詮自分は愚かな凡夫に過ぎないのだから、自力や人知だけで突き進むことには自ずと限界があるし、そこには危ない面があるということに、常に自覚的・自省的であれということだ。

 本多氏は繰り返す。「とにかくわかったつもりにならないこと。所詮はご縁が決めることだから」と。そのご縁とは、この世には人知を超えた仏智があり、それはすべてをお見通しの上で「如来の智慧の眼」で私たちを見ている。それは原発や遺伝子組み換えのような科学技術についても言えることだし、物事の善悪の判断基準についても同じだ。愚かな凡夫に帰り、人間が設定した善悪を常に問い直すことで、初めて見えてくる、あるいは聞こえてくるものがあり、そこに新しい世界が開けてくると本多氏は言う。

 これから3・11と向き合っていく上で、日本人の心に広く根ざした親鸞の教えを説く本多氏に、その見方、考え方のヒントをいただいた。

(藍原寛子さんの福島報告は、今週はお休みいたします。)

<ゲスト プロフィール>
本多 雅人(ほんだ まさと)真宗大谷派蓮光寺住職
1960年東京都生まれ。1983年中央大学文学部卒。83年高校教員。2000年より現職。元親鸞仏教センター研究員。東本願寺同朋会館教導。宗祖親鸞聖人750回御遠忌企画運営委員。著書に『本当に生きるとはどこで成り立つのか』『人間といういのちの相』、共著に『今を生きる親鸞』。

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コメント (1)

神保氏の、今回の要点は、「所詮自分は愚かな凡夫にすぎないのだから、自力や人知だけで突き進むことにはおのずと限界があるし、そこには危ない面があると言うこと、常に自覚的、自省的であれということだ」と、理解しています。

自省的であり、自己の内面に目が向けられるほどの人は、今回の3.11に限らずあらゆる機会に、今生きていることの理由を問いかける機会を何度も持つのが普通ではないか。

私が、最初にぶつかった人生的疑問は、受験勉強でした。何故、暗記すればだれでもできる勉強によって、その人の人生を左右しかねない合格、不合格を判断するのかということでした。

受験者という当事者を過去のこととして眺めている現在の自分は、馬鹿な制度だと見ることができますが、その馬鹿な制度が幅を利かせている現在、同じように現在の受験生は私が経験したと同じように疑問を感じているのかどうか。

物事は、当事者でなければ見えないこともあるが、当事者なるがゆえに見えないことがあり、そのことを自覚しているかどうかが、物事の真実を追求できるかどうかの分かれ道であり、根本的なあり方が問われているような気がしています。物事を分別すること、物事に執着することが、無明性の本質と理解しています。

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Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
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『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


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2006年1月、春秋社、共著

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2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

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1997年11月、築地書館

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1995年11月、ほんの木

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