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東大話法に騙されるな

マル激トーク・オン・ディマンド
マル激トーク・オン・ディマンド
第564回(2012年02月04日)
東大話法に騙されるな
ゲスト:安冨歩氏(東京大学東洋文化研究所教授)

 「東大話法」なるものが話題を呼んでいる。東大話法とは東京大学の安冨歩教授が、その著書「原発危機と東大話法」の中で紹介している概念で、常に自らを傍観者の立場に置き、自分の論理の欠点は巧みにごまかしつつ、論争相手の弱点を徹底的に攻撃することで、明らかに間違った主張や学説をあたかも正しいものであるかのように装い、さらにその主張を通すことを可能にしてしまう、論争の技法であると同時にそれを支える思考方法のことを指す。

 「人体には直ちに影響があるレベルではありません」「原子炉の健全性は保たれています」「爆発することはあり得ない」等々。3・11の原発事故の直後から、われわれは我が耳を疑いたくなるような発言が政府高官や名だたる有名な学者の口から発せられる様を目の当たりにした。あれは何だったのか。

 さらに、人口密度が高い上に地震国であり津波被害とも隣り合わせの日本で、少し考えれば最も適していないことが誰の目にも明白な原子力発電が、なぜこれまで推進されてきたのか。一連の政府高官や学者の言葉や、最も原発に不向きな日本で原発が推進されてきた背後には、いずれもこの東大話法があると安冨氏は言う。今日にいたるまで原子力村が暴走してきた理由、なぜがわれわれの多くが原発の安全神話を受け入れてしまっていた理由、そしてわれわれが原発を止めることができなかった理由を考える上で、東大話法は貴重な視座を与えてくれる。

 安冨氏は東大話法の特徴を1)自分の信念ではなく、自分の思考に合わせた思考を採用する、2)自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する、3)都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする、4)都合のいいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す、5)どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自分満々で話す、6)自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人と、力いっぱい批判する、7)その場で自分が立派な人間だと思われることを言う、8)自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する、など20の項目にまとめ、そのような技法を駆使することで、本来はあり得ない主張がまかり通ってきたと言う。そして、その最たるものが、原発だと言うのだ。

 実際、このような不誠実かつ傍観者的な論理は原発に限ったものではなく、今日、日本のいたるところで見受けられる。しかし、それが東大ではより高度なレベルで幅広く行われているという理由から、安冨氏は自身が東大教授でありながら、あえてこれを東大話法と名付けたそうだ。

 東大話法の最大の問題は、いかなる問題に対しても、あくまで自らを傍観者としての安全な場所に置いた上で、自分という個人が一人の人間としてその問題についてどう思っているのかという根源的な問いから逃げたまま、自分の社会的な立場からのみ物事を考え、そこから発言をしているところにある。そこには人間としての自分は存在しないため、人間としてはあり得ないような論理展開が可能となってしまう。当然、その論理は無責任極まりないものになる。そして、そのような人間としてあり得ないような論理を正当化するためには、その問題点や矛盾点を隠すための高度な隠蔽術が必要になる。そのような理由から、東大話法が編み出され、洗練されていったと安冨氏は言う。

 安冨氏は、東大話法の存在を知り、その手の内を理解することで、東大話法に騙されなくなって欲しいと言う。そうすることで、日頃から違和感を感じながらも、まんまと東大話法の罠に嵌り、おかしな論理を受け入れてしまっている様々な問題について、自分本来の考えをあらためて再確認することが可能になるかもしれない。

 しかし、それにしてもなぜ東大話法なるものが、ここまで跋扈するようになってしまったのだろうか。現在の日本が多くの問題を抱えていることは言うまでもないが、その多くについてわれわれは、必ずといっていいほど「誰かのせい」にしている。そして、その論理を説明するために、実は自分自身に対してまで東大話法を使って自分を納得させてはいないだろうか。東大話法を知ることで、自分もまた無意識のうちにそのような論理を振り回していることにより自覚的、かつ自省的になることも可能になるはずだ。

 東大話法に騙されることなく、「自分の心の声を聞け」と訴える異色の東大教授安冨氏と、東大話法とその背景を議論した。

今週のニュース・コメンタリー
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•エネルギー関連有識者会議続報
 原子力規制庁が機能するための条件とは

<ゲスト プロフィール>
安冨 歩(やすとみ あゆむ)東京大学東洋文化研究所教授
1963年大阪府生まれ。86年京都大学経済学部卒業。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。博士(経済学)。住友銀行勤務を経て、京都大学人文科学研究所助手、ロンドン大学滞在研究員、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学東洋文化研究所教授。09年より現職。著書に『生きるための経済学』、『原発危機と東大話法』など。

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コメント (3)

神保 様

東大話法の延長なのでしょうか。現実のこの世の中が、わけのわからない総無責任状況で推移しているのではないか。

景気が下がると、企業業績確保のため、政府に財政出動を促し、自動車家電など大手企業の販売を促進するためエコ減税などの名目で消費を過剰に刺激してきた。テレビなどはデジタル化促進のため過剰なエコ補助をしたため、今年の販売は惨憺たる状況にあり、損益予想は過去最大赤字になる企業もある。政府も政府なら、企業も企業、あまりにも目先の利益にとらわれすぎた結果が如実に表れたと見るべきでしょう。

一方、国民の国家に対する期待は年金から、医療、介護、子育てまで多くの分野に亘りとどまることがありません。年金で生活費を賄えるように要求し、医療はほとんどただに等しい金額で受けられるように要求しています。自己努力、自己責任の考え方が全くないのです。自分の老後の生活費、医療費のすべてを他人が全面的に面倒を見れということです。

どこかが狂っているのですが、狂っていることに気がつかないと言うより、自己責任、自己努力を無視し続けているのです。現在年金の問題が話題になっているが、支える人が少なくなっては現在の支給額を100%支給することが難しくなっているのは分かり切っているのですが、選挙が怖くて本当のことを言う国会議員が皆無です。

ギリシャの現実的姿を直視すべきであり、どこかで日本も破綻することは分かっているのに、個人的権利の自己主張を強めるだけ、マスコミはいつものことながらの無責任報道です。暗闇の中でわいわいがやがややっているうちに、その時が近づいているのでしょう。

東大話法というより、国内に蔓延する東大無責任現象であって、知識としては分かっているが、変化する社会にあって、流動的に自己責任としての対応の取れない未成熟な人間の集合体を連想してしまいます。

「東大話法」が諸悪の根源という議論は、きわめて矮小化された議論でしかない。原発問題一つにしても政・財・官・学という強固な権力構造が推進母体となって推進されて来たものであって、単なる「話法」の次元で論じることはあまり意味が無い。
安富氏の経歴から言えば、京大・名古屋大などで奉職してきた自らの経験を下にして、そのカルチュア・ショックの表現として「東大話法」という造語が生まれたということではないのか。「官僚養成大学としての最高学府・東大(閥)の論理」がそこに集中的に表現されていることは確かであるが、それが単なる「話法」ということなら、騙された方がバカだということにしかならない。権力構造の問題を「話法」の次元で論ずること自体、あまり意義があるとは思えない。権力側の使う手法・論法を暴き出すことは決して無意味ではないが、それが権力構造の実体の解明にどこまでつながるのか、きわめて疑問である。

とても大真面目に論じるようなテーマではありません。これは米国人が好きなディベートの論法にもあった話ですし、それが東大話法だからというのも変な話です。それこそ昔の学生運動やオーム真理教でも結構この手の輩がおったように思う。故にむしろ騙される方が悪いとも言えるし、気がつけば、政治家にも官僚にも評論家にも記者にも教授にも、この手の輩がいる。別にわざわざ東大だからということもない。むしろ戦後60年を過ぎて、この国はさまざまな問題があっても、先送りしたりしっかり向き合わなかったことが、今日の混乱を生んでいると言える。もっとも混乱はどこの国でもあって、米国でも指導者がこの程度かとため息をつく程にひどい状況だが。

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神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
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2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

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『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

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1997年11月、築地書館

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1995年11月、ほんの木

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